特許第5654227号(P5654227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5654227乳脂肪含有可塑性油脂組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654227
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】乳脂肪含有可塑性油脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   A23D7/00 500
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-248004(P2009-248004)
(22)【出願日】2009年10月28日
(65)【公開番号】特開2011-92061(P2011-92061A)
(43)【公開日】2011年5月12日
【審査請求日】2012年9月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】三浦 理沙
(72)【発明者】
【氏名】久保内 宏晶
(72)【発明者】
【氏名】植松 寛文
(72)【発明者】
【氏名】野田 正幸
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−193974(JP,A)
【文献】 特開2009−005619(JP,A)
【文献】 特開2008−289404(JP,A)
【文献】 特開2007−274997(JP,A)
【文献】 特開2008−125358(JP,A)
【文献】 特開2005−176738(JP,A)
【文献】 特開2005−054092(JP,A)
【文献】 特開昭64−047342(JP,A)
【文献】 加藤秋男編,パーム油・パーム核油の利用,株式会社幸書房,1990年 7月31日,初版,第1刷,第73−74頁
【文献】 科学技術庁資源調査会編,五訂 日本食品標準成分表,独立行政法人国立印刷局,2004年 1月 9日,初版,二刷,第262−263頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
C11B
C11C
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳脂肪を3〜50重量%、トランス酸含量が20重量%以下である高融点油脂を0.6〜18重量%含有し、かつ、トランス酸含量が5.0重量%以下である乳脂肪含有可塑性油脂組成物を容器へ充填後、12℃以上25℃未満の温度下で24〜72時間保持することを特徴とする乳脂肪含有可塑性油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記乳脂肪含有可塑性油脂組成物がスプレッドであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳脂肪含有可塑性油脂組成物(乳脂肪を配合した所謂「コンパウンドタイプ」の可塑性油脂組成物)及びその製造方法に関する。特には、容器への充填時に発生する小固形物が消失し、さらに保存中に発生する組織のザラザラとしたザラツキが抑制された、良好な組織を有する乳脂肪含有可塑性油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スプレッド類やショートニング等の可塑性油脂組成物は、配合−乳化(ショートニングは除く)−急冷−捏和により製造される。急冷−捏和を行う装置としては、冷却して結晶化を行う掻き取り式冷却機と、捏和を行う捏和装置により構成される連続式冷却捏和装置があり、この装置で急冷−捏和することでマーガリンやショートニングが可塑性を示すようになる。
【0003】
急冷−捏和工程の諸条件が可塑性油脂組成物の組織に与える影響は大きい。例えば、特許文献1には、掻き取り式冷却機(Aユニット)と捏和装置(Bユニット)を有する連続式冷却捏和装置を用いて可塑性油脂組成物を製造する方法において、該Aユニットの最初の冷却ユニットであるA1ユニットを通過させる際の油脂組成物の平均冷却速度を5℃/秒以上とすることで、均一な組織を有し、更に可塑性、スプレッド性の良好な可塑性油脂組成物が提供できることが開示されている。
【0004】
また、急冷−捏和以外の工程においても、可塑性油脂組成物の組織を改善することができる。例えば非特許文献1には、ショートニングの製造工程において、製品の融点より5〜6℃低い温度(25〜30℃)の恒温庫で長時間保持することで、結晶形を安定化させ、保存中の組織の変化を抑制する方法が開示されている。これは熟成と呼ばれ、ショートニングの製造において必要な処理である。結晶形の定まっていない時に急激な温度変化を受けると組織の一部が溶解、再凝固をくり返して全体が粗結晶の組成となることを防ぐために行われる。熟成によって融点の異なる複数のグリセリド分子から同質の結晶がつくられ、全体が安定化されると言われている。
【0005】
また、油脂組成物に配合する原材料を改変し、油脂組成物のトランス酸含量を低くする手法も開示されている。特許文献2では、パーム系油脂を分別することによって得られる分別油脂を適宜配合して、トランス酸含量が低い油脂組成物を得る方法を開示している。また、特許文献3では、パーム油起源の固体脂とラウリン系油脂とを非選択的エステル交換した油脂を用いることにより、実質的にトランス酸を含まない可塑性油脂組成物を得る方法を開示している。さらに、特許文献4では、トランス酸含量が低い油脂組成物に特定の脂肪酸組成を有したポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することで、保存中の組織劣化が抑制されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−92833号公報
【特許文献2】特開2004−121114号公報
【特許文献3】特開2001−262181号公報
【特許文献4】特開2008−125358号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「マーガリン ショートニング ラード 可塑性油脂のすべて」 P384中津君敏著:株式会社光琳発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
乳脂肪含有可塑性油脂組成物は、良好な風味や口どけを有するが、トランス酸含量が低い高融点油脂を配合した場合、容器への充填時に0.5〜2mm程度の小固形物が発生し、保存中に組織のザラザラとしたザラツキが発生することが問題となっている。
【0009】
特許文献1の方法では、A1ユニットを通過させる際の油脂組成物の平均冷却速度を5℃/秒以上にすることで、可塑性油脂組成物の組織を改善する手法が開示されている。しかし、トランス酸含量が低い高融点油脂を配合した乳脂肪含有可塑性油脂組成物では、A1ユニットの平均冷却速度を5℃/秒以上にするとやや小固形物は減少したものの、完全には消失しなかった。また、非特許文献1の方法では、ショートニングの製造工程において、製品の融点より5〜6℃低い温度(25〜30℃)の恒温庫で長時間保持し、保存中の組織劣化を抑制する手法が開示されている。しかし、一般的なスプレッドを25℃以上で長時間おくことは、品質の面から不適切と考えられる。
【0010】
また、特許文献2、3の方法では、これらの手法を用いて得られた油脂組成物は、パン生地への練りこみやクロワッサンやパイ等の層状小麦粉膨化食品製造に適した性状であるため、可塑性や作業性等の物性は良好であるものの、組織が良好であることまでは言及されていない。特許文献4の方法は、容器への充填時の発生する小固形物を抑制することまでは言及していない。さらに、これらの文献では配合材する原料を工夫することによって解決しており、製造方法等による記載や示唆は認められない。
【0011】
よって、本発明の目的は乳脂肪含有可塑性油脂組成物において、トランス酸含量が低い高融点油脂を配合した場合においても、小固形物量、保存中の組織のザラザラとしたザラツキが少ない乳脂肪含有可塑性油脂組成物を提供することにある。
【0012】
上記に述べた「小固形物」とは、容器への充填時に発生する0.5〜2mm程度の油脂の塊である。また、上記に述べた「ザラツキ」とは、充填後のスプレッドを冷蔵下(5℃〜10℃)で保存した際に微細な結晶が多数発生し、スプレッド組織が粗いザラザラとした状態である。「ザラツキ」が発生するとスプレッドの光沢が消失する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、下記の構成からなる発明である。
(1)乳脂肪を3〜50重量%、トランス酸含量が20重量%以下である高融点油脂を0.6〜18重量%含有し、かつ、トランス酸含量が5.0重量%以下である乳脂肪含有可塑性油脂組成物を容器へ充填後、12℃以上25℃未満の温度下で24〜72時間保持することを特徴とする乳脂肪含有可塑性油脂組成物の製造方法。
(2)前記乳脂肪含有可塑性油脂組成物がスプレッドであることを特徴とする(1)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トランス酸含量が低い高融点油脂を配合した場合においても、容器への充填時に発生した小固形物を保存中に消失させることができ、また保存中の組織のザラザラとしたザラツキの発生も抑制された乳脂肪含有可塑性油脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における乳脂肪含有可塑性油脂組成物とは、油脂組成物中の油脂量を40〜90重量%、水分量を10〜60重量%含有するものをいう。本発明では、油脂組成物中に乳脂肪を3〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%、また、トランス酸含量が低い高融点油脂を0.6〜18重量%、好ましくは5〜15重量%含有することを特徴とする。この他に、トランス酸含量が低い中融点油脂を0〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、また、液状油が50重量%以下、好ましくは35重量%以下含有することを特徴とする。また、該油脂組成物中のトランス酸含量は5.0重量%以下、好ましくは3.5%重量以下であることを特徴とする。
【0016】
乳脂肪とはウシ等の乳由来の脂質であり、バターやバターオイルを原材料として用いることができる。
【0017】
本発明における高融点油脂とは、上昇融点が35℃以上の性質をもつ油脂のことである。また、当該油脂中のトランス酸含量が20重量%を超えず、好ましくは15重量%を超えないものであり、低いほど好ましく、技術的に可能であればトランス酸含量が0重量%のものを用いることができる。このトランス酸含量に加えて、5℃での固体脂含量が少なくとも60%であることが好ましい。この高融点油脂としては、可塑性油脂組成物の原料として利用できるものであれば特に限定されない。例えば、ヤシ油、パーム核油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油、牛脂極度硬化油等のトランス酸含量が低い高融点油脂、または、ヤシ油、パーム核油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油、牛脂極度硬化油、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油、紅花油、牛脂、大豆硬化油、菜種硬化油の食用または食材用の油脂のうち2種類以上の油脂のエステル交換によって得られるトランス酸含量が低いエステル交換油脂を例示することができる。トランス酸含量が低い高融点油脂は、複数種を併用して利用することもでき、例えば、1〜4種類、好ましくは1〜2種類を用いることができる。
【0018】
本発明における中融点油脂とは、概ね上昇融点が15℃以上の性質をもつ油脂のことである。また、当該油脂中のトランス酸含量が20重量%を超えず、好ましくは15重量%を超えないものであり、低いほど好ましく、技術的に可能であればトランス酸含量が0重量%のものも用いることができる。このトランス酸含量に加えて、5℃での固体脂含量が少なくとも30%であることが望ましい。この中融点油脂としては、可塑性油脂組成物の原料として利用できるものであれば特に限定されない。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油等のトランス酸含量が低い中融点油脂、または、ヤシ油、パーム核油、菜種硬化油、大豆硬化油、牛脂硬化油、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、綿実油、紅花油、牛脂の食用または食材用の油脂のうち2種類以上の油脂のエステル交換によって得られるトランス酸含量が低いエステル交換油脂を例示することができる。トランス酸含量が低い中融点油脂は、複数種を併用して利用することもでき、例えば、1〜4種類、好ましくは1〜2種類を用いることもできる。
【0019】
液状油とは、5℃での固体脂含量が0%であることを特徴とし、具体的には大豆白絞油、菜種白絞油、コーン白絞油、紅花油等を例示することができるが特に限定されるものではない。液状油は複数種を併用して利用することもでき、例えば、1〜4種類、好ましくは1〜2種類を用いることができる。
【0020】
乳脂肪含有可塑性油脂組成物の水相を形成するための水分には、可塑性油脂組成物を製造する場合に通常用いられるもの、例えば、脱脂粉乳、全脂粉乳、発酵乳、食塩、呈味剤、乳化剤等を必要に応じて配合することができる。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びレシチン等を用いることができるが、特に限定されるものではない。これらの配合割合は、乳脂肪含有可塑性油脂組成物における本発明が目的とする効果を損なわない範囲内で、これらを配合する目的に応じて適宜選択できる。
【0021】
乳脂肪含有可塑性油脂組成物は、材料の配合から容器への充填までは一般的な可塑性油脂組成物の製造方法により製造することができる。すなわち油相部と水相部を配合した後これらを混合し、乳化、急冷、捏和により油脂組成物を得ることができる。製造は、一般的な可塑性油脂組成物製造機、例えばブレンダー、パーフェクター、コンビネーター等を用いることができる。
【0022】
所定の工程、機器条件で製造された乳脂肪含有可塑性油脂組成物を12℃以上25℃未満、好ましくは15℃以上20℃以下の温度下に、24時間〜72時間、好ましくは48時間〜72時間保持し、その後10℃以下で保持することが好ましく、例えば、5℃にて3日以上保持する。12℃未満で保持を行った場合は、小固形物は消失せず、組織も光沢が無く、ザラザラとしたザラツキが発生した状態であり好ましくない。また、25℃以上の温度保持を行うと、風味の劣化及び物性の変化が認められ、好ましくない。なお、保持時間は、目的の効果が得られるように、温度との関係により設定することが好ましい。小固形物消失及び保存中の組織劣化の抑制を目的とした乳脂肪含有可塑性油脂組成物の保持は、上記温度に設定した恒温庫、インキュベーターもしくは倉庫等で実施するのが好ましい。
【0023】
なお、乳脂肪含有可塑性油脂組成物中の固体脂含量は、例えばNMR法によって測定できる(基準油脂分析試験法−日本油化学協会制定−日本油化学協会編)。すなわち、試料を70℃の恒温槽で加熱溶解し、均一に試験管に入れ、ゴム栓をする。試験管に詰めた試料を60℃に30分保持し、更に26℃に移し30分保持する。再び0℃に移して30分保持した後、測定温度に30分保持して、それぞれの試料のNMRシグナルを読み、固体脂含量を算出する。
【0024】
また、乳脂肪含有可塑性油脂組成物中のトランス酸含有量は、例えばガスクロマトグラフ法を用いて測定できる(基準油脂分析試験法−日本油化学協会制定−日本油化学協会編)。すなわち、三フッ化ホウ素−メタノール試薬でメチルエステル化した試料を、水素炎イオン化検出器(FID)を備えた恒温ガスクロマトグラフにより、分離・定量した脂肪酸組成から算出する。
【0025】
以下に実施例を示し、本発明について詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
原材料油脂は乳脂肪含有可塑性油脂組成物に対して乳脂肪15重量%、トランス酸を5.0重量%含む高融点(融点45℃)のエステル交換油脂5重量%、中融点のエステル交換油脂30重量%、液状油30重量%になるように配合し、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)を適量溶解して油相部用の材料とした。また、水に脱脂粉乳及び食塩を適量溶解した水溶液を水相部用の材料とした。この油相部用の材料(80重量%)と水相部用の材料(20重量%)を混合して、W/O乳化物を得た。このW/O乳化物を連続式冷却捏和装置によって冷却、捏和し、乳脂肪含有可塑性油脂組成物を調製し、製品用容器に充填し、対照品1とした。なお、対照品1中にはトランス酸が2.0重量%含まれていた。
【0027】
得られた乳脂肪含有可塑性油脂組成物を10℃(比較品1)、12℃(実施品1)、15℃(実施品2)、20℃(実施品3)、24℃(実施品4)の温度で72時間保持した。なお、温度保持は充填直後である必要は無い。また、対照品1では、充填後すぐに5℃の恒温庫に2週間保持した。温度保持後の乳脂肪含有可塑性油脂組成物は、対照品1と同程度の硬さになるように全て5℃の恒温庫で2週間保持したが、この時の温度及び保持時間は評価に影響しない。以下、評価までの一連の温度管理を温度処理という。
【0028】
表1に温度処理後の評価結果を示した。また、対照品1は、充填後すぐに5℃の恒温庫で2週間保持した後の評価結果である。表中の小固形物量、組織は以下の基準で評価した。
小固形物量の評価基準
◎:縦5×横5cmの範囲内に小固形物が無い。
○:縦5×横5cmの範囲内に小固形物が1〜2個ある。
△:縦5×横5cmの範囲内に小固形物が3〜4個ある。
×:縦5×横5cmの範囲内に小固形物が5個以上ある。
【0029】
組織の評価基準
◎:光沢があり、ザラザラとしたザラツキがほとんど無い。
○:光沢がやや無く(光沢はあるが、◎に対して光沢感が劣る)、ザラザラとしたザラツキがややある。
△:光沢がほとんど無く(光沢はあるが、○に対して光沢感が劣る)、ザラザラとしたザラツキがある。
×:光沢が無く、ザラザラとしたザラツキがかなりある。
【0030】
【表1】
【0031】
結果を表1に示した。対照品1では、製品用容器に充填直後に、縦5×横5cmの範囲内に小固形物が5個以上発生した。さらに、対照品1では、5℃で2週間保持した場合、小固形物は消失せず、光沢がほとんど無く組織のザラツキがあった。比較品1の小固形物量は対照品1と同様に縦5×横5cmの範囲内に5個以上認められ、さらに、光沢が無く組織のザラツキもかなりあった。一方、実施品1では、対照品1と比較して小固形物の消失が認められ、光沢、組織のザラツキが改善された。さらに、実施品2、3では、対照品1と比較して小固形物が完全に消失し、光沢、組織のザラツキが著しく改善された。なお、実施品4では、小固形物が消失したが、実施品2、3と比較して光沢がやや劣った。また、温度保持後の油脂組成物に若干オイルオフ跡が認められた。なお、これ以上の温度で保持したものは油脂組成物が溶解し、風味及び物性の面で不適切である。
【0032】
(実施例2)
原材料油脂は乳脂肪含有可塑性油脂組成物に対して乳脂肪3重量%、トランス酸を14重量%含む高融点のエステル交換油脂(融点42℃)18重量%、中融点のエステル交換油脂19重量%、液状油を40重量%になるように配合し、乳化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を適量溶解して油相部用の材料とした。また、水に脱脂粉乳及び食塩を適量溶解した水溶液を水相部用の材料とした。この油相部用の材料(80重量%)と水相部用の材料(20重量%)を混合して、W/O乳化物を得た。このW/O乳化物を連続式冷却捏和装置によって冷却、捏和し、乳脂肪含有可塑性油脂組成物を調製し、製品用容器に充填し、対照品2とした。なお、対照品2中にはトランス酸が3.5重量%含まれていた。
【0033】
得られた乳脂肪含有可塑性油脂組成物を15℃で24時間(実施品5)、48時間(実施品6)、72時間(実施品7)保持した。なお、温度保持は充填直後である必要は無い。また、対照品2では、充填後すぐに5℃の恒温庫に2週間保持した。温度保持後の乳脂肪含有可塑性油脂組成物は、対照品2と同程度の硬さになるように全て5℃の恒温庫で2週間保持したが、この時の温度及び保持時間は評価に影響しない。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に温度処理後の評価結果を示した。小固形物量、組織は実施例1と同様の基準で評価した。対照品2では、製品用容器への充填時に、縦5×横5cmの範囲内に小固形物が5個以上発生した。さらに、5℃で2週間保持した場合も小固形物は消失せず、光沢がほとんど無く組織のザラツキがあった。一方、実施品5では、対照品2と比較して小固形物の消失が認められ、光沢、組織のザラツキが改善された。さらに、実施品6、7では、対照品2と比較して小固形物が完全に消失し、実施品7では光沢があり、組織のザラツキが著しく改善された。
【0036】
(実施例3)
原材料油脂は乳脂肪含有可塑性油脂組成物に対して乳脂肪50重量%、トランス酸を19重量%含む高融点のエステル交換油脂(融点45℃)0.6重量%、中融点のエステル交換油脂4.4重量%、液状油を20重量%になるように配合し、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)を適量溶解して油相部用の材料とした。また、水に脱脂粉乳及び食塩を適量溶解した水溶液を水相部用の材料とした。この油相部用の材料(75重量%)と水相部用の材料(25重量%)を混合して、W/O乳化物を得た。このW/O乳化物を連続式冷却捏和装置によって冷却、捏和し、乳脂肪含有可塑性油脂組成物を調製し、製品用容器に充填し、対照品3とした。なお、対照品3中にはトランス酸が2.5重量%含まれていた。
【0037】
得られた乳脂肪含有可塑性油脂組成物を20℃で24時間(実施品8)48時間(実施品9)、72時間(実施品10)保持した。なお、温度保持は充填直後である必要は無い。また、対照品3では、充填後すぐに5℃の恒温庫に2週間保持した。温度保持後の乳脂肪含有可塑性油脂組成物は、対照品3と同程度の硬さになるように全て5℃の恒温庫で2週間保持したが、この時の温度及び保持時間は評価に影響しない。
【0038】
【表3】
【0039】
表3に温度処理後の評価結果を示した。小固形物量、組織は実施例1と同様の基準で評価した。対照品3では、製品用の容器への充填時に縦5×横5cmの範囲内に小固形物が5個以上発生した。さらに、5℃で2週間保持した場合も小固形物は消失せず、光沢がほとんど無く組織のザラツキがあった。一方、実施品8〜10は、対照品3と比較して小固形物が完全に消失し、光沢、組織のザラツキが著しく改善された。