(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654687
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】継電器又は接触器の動作能力を予測する方法
(51)【国際特許分類】
H01H 47/00 20060101AFI20141218BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20141218BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20141218BHJP
B60L 3/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
H01H47/00 C
H01H47/00 E
H01H9/54 C
B60R16/02 650J
B60L3/00 S
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-532097(P2013-532097)
(86)(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公表番号】特表2014-500570(P2014-500570A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011065097
(87)【国際公開番号】WO2012045532
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2013年6月3日
(31)【優先権主張番号】102010041998.2
(32)【優先日】2010年10月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung SDI Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ステック、アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ピスコル、ラルフ
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−011277(JP,U)
【文献】
特開2000−134707(JP,A)
【文献】
特開2004−198503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00−47/36
H01H 9/54
B60L 3/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継電器又は接触器(19)の動作能力を予測する方法において、前記継電器又は前記接触器(19)を通って流れる電流、及び/又は、前記継電器又は前記接触器(19)に印加される電圧が繰り返し測定され(11、12)、測定された測定値が監視ユニット(22)へと伝達され、前記監視ユニット(22)は、前記測定値及びモデルに基づいて、前記継電器又は前記接触器(19)の前記動作能力についての予測を行い、前記測定値及び前記モデルに基づいて、前記継電器又は前記接触器(19)の現在の温度を推定し、
前記継電器又は前記接触器の前記推定された温度が温度閾値を上回る場合には(S13、S17)、警報信号が生成される(S14)ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記継電器又は前記接触器(19)の劣化(S15)を計算するため、又は、前記継電器又は前記接触器(19)の溶着(S13)を予測するために利用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記継電器又は前記接触器の周囲温度が測定され(13)、前記周囲温度の測定値が前記監視ユニット(22)へと伝達される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記継電器又は前記接触器を通って流れる前記電流、及び/又は、前記継電器又は前記接触器に印加される前記電圧は、前記継電器又は前記接触器の切り替え動作の間に測定される(S12、S16)、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記継電器又は前記接触器を通って流れる前記電流、及び/又は、前記継電器又は前記接触器に印加される前記電圧は、前記継電器又は前記接触器が閉鎖されている間に測定される(S15)、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
監視ユニット(22)は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を実施するよう構成されることを特徴とする、監視ユニット(22)。
【請求項7】
継電器又は接触器(19)と、請求項6に記載の監視ユニット(22)と、を備えたバッテリ(100)。
【請求項8】
請求項7に記載のバッテリ(100)を備えた車両。
【請求項9】
前記車両は電気自動車である、請求項8に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継電器又は接触器の動作能力を予測する方法、及び、本発明に係る方法を実施するよう構成された監視ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
将来的に、(例えば風力発電所のような)定置型の利用において、及び、(例えばハイブリッド車及び電気自動車のような)自動車内で、非常に高い信頼性が求められる新しいバッテリシステムが益々使用されるようになることは明らかである。このような要請の背景には、バッテリシステムの故障がシステム全体の故障(例えば電気自動車のメインバッテリの故障)、又は、安全性に関わる問題となりうることがある(風力発電所の場合には、例えばバッテリが、強風の際に動翼の調整によって、許容しえない駆動状態になることから発電所を護るために使用される)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
接続された消費機器、例えば車両電力系統からのバッテリシステムの分離を可能とするために、通常では、継電器(又は接触器)が2つのバッテリ極に対して直列に設けられる。この継電器は、負荷が掛かった状態でのこのようなバッテリシステムの度重なる停止を可能にする必要がある。この高い要求に対応するために、この継電器の機能を診断し予測できなければならない。
【0004】
継電器内及び接触器内では、切り替え可能な電磁石が、電気負荷の作動、停止、及び切替のための接点を操作するための駆動力として役に立つ。ここで、接点は、電気負荷の作動時に様々な大きさの摩擦にさらされ、この摩擦は、中規模の電力から大きな電力による負荷が掛かった際に著しく増大する。その際に、接点同士が摩擦し合って貼り付き、著しく危険な状況に繋がる可能性がある。従って、スイッチ接点の状態を監視し、適切な電気負荷の停止措置をさらに導入する必要がある。
【0005】
独国実用新案第20310043号明細書には、監視される継電器に対して、継電器のコイルのための制御要素が割り当てられる監視装置が記載されている。ここでは、制御素子は、コイルが駆動されているか否かについての情報を伝達する。このことは、制御要素が、磁場に対して感度の良い構成要素を含み、コイルの作動時にはその形成された磁場を通るようにコイルの近くに配置され、これによりコイルの磁場が制御要素を作動することによって可能となる。ここでは、リード接点が制御要素として設けられる。このような構成の欠点は、必然的に、監視される継電器上に追加的な構成要素を設けなければならないことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
継電器又は接触器の動作能力を予測するための本発明に係る方法は、基本的に以下の工程を含む。即ち、継電器又は接触器を通って流れる電流が、繰り返し測定され、測定値が監視ユニットに伝達される。測定値及びモデルに基づいて、監視ユニットが、継電器又は接触器の動作能力についての予測を行う。
【0007】
電圧測定は、継電器又は接触器を通って流れる電流に対する帰納的推測を可能とし、又は、電流測定は、継電器又は接触器に印加される電圧に対する帰納的推測を可能とするため、本方法は同様に、継電器又は接触器に印加される電圧を測定することによっても実施されうる。このことは基本的に、様々な段階での(閉鎖されていく間、及び、閉鎖されている状態の間の)継電器又は接触器の(等価)抵抗が公知である場合に可能である。従って、電流値又は電圧値が監視ユニットによって評価され、その際に、監視ユニットはこれに基づいて典型的に、継電器又は接触器上で作用する電力を計算する。さらに、2つの物理的変数の測定値を同時に監視ユニットによって評価することも可能であり、このことは、これに伴う冗長性により有利でありうる。
【0008】
監視ユニットにより利用されるモデルは例えば、印加される電力、又は、存在する電位差により発生するアーク放電と、継電器又は接触器上での変化と、を関係付ける特性曲線に基づいていてもよい。
【0009】
本発明に係る方法は、特に、継電器又は接触器の劣化を計算するため、又は、継電器又は接触器の溶着を予測するために利用することが可能である。
【0010】
好適に、監視ユニットは、測定値及び上記モデルに基づいて、継電器又は接触器の現在の温度を推定する。継電器又は接触器の温度を監視ユニット内で計算することによって、継電器又は接触器上に配置された温度検出素子により温度を測定する必要が無くなる。むしろ、本発明は基本的に、温度検出素子を使用せずに実施される。但し、継電器又は接触器の現在の温度の推定は、継電器又は接触器の周囲温度を測定し、周囲温度の測定値を監視ユニットへと伝達することによって改善することが可能である。しかしながらその際に、継電器又は接触器の近傍にではなく継電器又は接触器の外部に配置された温度検出素子を設けることで十分である。例えば、バッテリ内での本方法の適用の際には、バッテリ管理ユニットにより検出されたバッテリ温度を監視ユニットへと伝達することが可能である。
【0011】
継電器または接触器を通って流れる電流、もしくは、継電器または接触器上に印加される電圧は、様々な段階で測定することが可能であり、即ち、開放状態から閉鎖状態へと(又は閉鎖状態から開放状態へと)継電器または接触器が変化する継電器または接触器の切り替え動作の間に、もしくは、閉鎖されている状態の間に測定することが可能である。
【0012】
継電器又は接触器の推定された温度が温度閾値を上回った場合には、警報信号を生成することが可能である。警報信号により又は類似した措置により、継電器又は接触器の溶着を防止することが可能であり、このことは、安全性及び信頼性における利点である。
【0013】
本発明の更なる別の観点は、本発明に係る方法を実施するよう構成された監視ユニットと、本発明に係る監視ユニットを備えたバッテリ、好適にリチウムイオンバッテリと、本発明に係るバッテリを備えた車両と、に関する。
【0014】
車両のバッテリシステム内での適用の他に、本発明は好適に他のシステム、例えばエンジンストップスタートシステム内で、継電器又は接触器の寿命を予測するために利用することが可能である。エンジンストップスタートシステム内には、始動機の前に作動される始動制御部のための継電器が設けられる。この場合にも、作動プロセスの間に、継電器の接点に損害を与えうる高い電流が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施例が、図面及び以下の明細書の記載によってより詳細に解説される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、全体に符号100が付されたバッテリのブロック図を示す。複数のバッテリセル10が直列に接続され、任意に、各用途のために所望の高い出力電圧及びバッテリ容量を達成するために追加的に並列に接続される。バッテリセルの陽極と、正のバッテリ端子14と、の間には充電及び分離素子16が接続される。追加的に、バッテリセル10の陰極と負のバッテリ端子15と、の間には分離素子17が接続される。分離及び充電素子16と分離素子17とはそれぞれ接触器18又は19を備え、この接触器18又は19は、バッテリ端子を零電位で接続するためにバッテリ端子14、15からバッテリセルを分離するために設けられている。分離及び充電素子16と分離素子17とが接触器18又は19を備えない場合には、直列接続されたバッテリセルの高い直流電圧のために、保守員等にとっては非常に危険になる可能性がある。充電及び分離素子16内には、充電接触器20に対して直列に接続された充電抵抗21を備える充電接触器20がさらに設けられる。充填抵抗21は、図示されない直流中間回路にバッテリが接続される場合には、充電電流を制限する。このために最初に、接触器18が開放されて充電接触器20が閉鎖される。正のバッテリ端子14の電圧がバッテリセル10の電圧に達する場合には、接触器19を閉鎖し、場合によっては、充電接触器20を開放することが可能である。接触器18、19及び充電接触器20は、それらの信頼性、及び、それらが供給する電流に対する要求が高いため、バッテリ100のためのコストを著しく増大させる。
【0017】
接触器18、19上での各接続過程及び各作動過程によって、接触器は劣化する。従って、故障を予防するために接触器の寿命を推定し、いつ接触器18、19、20のうちの1つを交換する必要があるのかを診断する必要がある。このために、接触器18、19、20のいずれに対しても適用可能な本発明に係る方法が実施されるが、ここでは、(負の)接触器19に関してのみ解説される。
【0018】
バッテリ100、又は、より詳細に示されないバッテリ管理ユニットは、バッテリ電流及び接触器19を通って流れる電流を測定するよう構成された電流測定
素子11と、接触器19に印加される電圧を測定するよう構成された電圧素子12と、バッテリ温度を測定するよう構成された温度測定素子13と、を備える。本発明に係る方法を実施するためには、電流測定素子11による又は電圧素子12による測定で十分であり、従って、温度測定素子13のような各他の測定素子は、冗長な情報又は演算を改善する情報を伝達する。
【0019】
電流測定素子11と、電圧素子12と、温度測定素子13とは、本発明に係る方法を実施する監視ユニットとしての役割を果たし又はそのような監視ユニットを備える制御装置22へと、自身の測定値を伝達する。
【0020】
図1では、監視ユニットは、バッテリ100、特にバッテリ管理ユニットの一部として設けられる。しかしながら監視ユニットは、バッテリ100の外部に配置することも可能であり、例えば、車両の主制御装置に含まれていてもよい。
【0021】
監視される接触器19の近傍に、温度検出素子13を配置する必要はない。温度監視素子13は、接触器19の温度を直接的に測定するのではなく、周囲温度、例えばバッテリセルの近傍の温度を測定する。
【0022】
図2は、
図1に示したバッテリ100内に実現された接触器の動作能力を予測するための本発明に係る方法の実施例を示す。全過程の間、電流測定素子11と、電圧素子12と、温度測定素子13とは測定データを収集して監視ユニット22へと伝達する。同様に全過程の間に、監視ユニット22によって、接触器19の現在の温度が計算され又は推定される。比較的長い周期に渡って電流が接触器19を通って流れない場合については、推定された接触器19の温度が、周囲温度と同等に扱われる。
【0023】
ステップS11では、接触器19は開放された状態にある。電流は接触器19を通って流れないため、接触器19の更なる加熱は起こり得ない。
【0024】
ステップS12では、接触器19が閉鎖される。切り替え動作の間に、接触器19の接点を加熱する弧絡が起こる。弧絡の間の電流パルスが測定され、これに関連する接触器19内での温度上昇が、監視ユニット22によって計算される。
【0025】
特に、短時間の間に接触器19の開閉が繰り返される場合には、接触器19の温度は、接点が溶接過程により貼り付いてしまうほど上昇する。従って、ステップS13では、推定された接触器19の温度が、所定の温度閾値と比較される。推定された接触器19の温度が所定の温度閾値よりも高い場合には、ステップS14で、例えば、交換の提案が発話される警報信号が生成され、これにより、接触器19の誤動作を防止することが可能である。その際に、接触器19内での温度上昇の推定は、電流バルスと、当該電流パルスに伴う温度上昇と、を互いに関連付ける温度モデルを基礎として行われる。
【0026】
推定された接触器19の温度が所定の温度閾値よりも高くない場合には、ステップS15において、接点が閉鎖されている場合に、駆動中に接触器19を通って流れる電流の推移が記録される。その際に、接触器19は、流れ続ける駆動電流によって加熱される。接触器19へのこの加熱は、監視ユニット22により利用されるモデルによって予測される。その際に、接点への加熱が大きいほど、接点に対する既に存在する損傷が大きいことも考慮される。接点への加熱から、厳密には、推定される接点19の温度の時間的経過から、接触器19の劣化を予測することが可能である。
【0027】
ステップS16では接触器19が再び開放され、このことが、ステップS12のように弧絡に繋がる。発生したアーク放電に起因する温度上昇が大き過ぎる場合については(S17)、警報信号が生成される(S14)。発生したアーク放電に起因する温度上昇が大きくない場合には、本方法の開始点であるステップS11へと戻り、その際に、このステップS11は、接触器19が
開放された状態に相当する。
【0028】
監視ユニット22により利用されるモデルは、接触器の製造業者により提供される真理値表であって、通常では、一定の負荷電流に従った、(複数の切り替え動作において測定された)継電器又は接触器の寿命がどのくらい長いのかを示す上記真理値表により改善することが可能である。しかしながら、上記の記述に対して、監視ユニット22により利用されるモデルは、電流が可変的である場合にも劣化予想が行えるように、従って例えば、所定の負荷電流での第1の切り替え動作が実行され、その後に、負荷電流が10倍大きい第2の切り替え動作が実行される場合を考慮しうるように構成される。
【0029】
接触器19の劣化及び溶着に関する予測は、監視ユニット22によって、データ接続を介して、特にバスシステムを介して他の制御装置、例えば車両の主制御装置に報知される。