(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
量子化回路から出力された出力信号をアナログ変換して演算回路にフィードバック信号を出力する請求項1又は2に記載のD/A変換器を備えていることを特徴とするΔΣ型A/D変換器。
複数段カスケード接続された残差演算ステージにおいて、サブA/D変換器により変換されたデジタル信号を再びアナログ信号に変換する請求項1又は2に記載のD/A変換器を備えていることを特徴とするパイプライン型A/D変換器。
逐次比較レジスタのビット列をアナログ変換して演算回路にフィードバック信号を出力する請求項1又は2に記載のD/A変換器を備えていることを特徴とする逐次比較型A/D変換器。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器に対する小型化の要求はますます強くなっている。プリント基板上の実装面積の削減や部品コストを抑えるため、電子機器に搭載される電子部品において、負電源電圧を生成するチャージポンプ回路を内蔵することによって、出力信号及び入力信号のDCカット用コンデンサを不要としたD/A(デジタル/アナログ)変換器及びA/D(アナログ/デジタル)変換器がある。
【0003】
チャージポンプ(Charge pump)回路は、複数のコンデンサとスイッチで構成され入力電圧によってあるコンデンサ(フライングコンデンサともいう)を充電し、フライングコンデンサに蓄えられた電荷を別のコンデンサ(出力コンデンサともいう)に転送することにより、入力電圧を昇圧、降圧、もしくは極性反転した電圧を発生するための電子回路である。スイッチングによって電圧生成の動作をする電源生成回路としては、スイッチング電源、DCDCコンバータ等もここでいうチャージポンプ回路に含まれる。
【0004】
D/A変換器及びA/D変換器は、電子機器のオーディオの機能などに多く利用される電子部品であり、特に、ノイズ対策が必要とされる電子部品であるが、チャージポンプ回路は、このチャージポンプ回路内で充放電するコンデンサにスイッチング操作による急峻なオン/オフ電流が流れることによって、周期的なスイッチングノイズを発生することが知られている。
【0005】
A/D変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路で、A/Dコンバータ(ADC)ともいう。この逆がD/A変換回路である。変換方式の一種として見た場合は、A/D変換はパルス符号変調で、A/D変換のような操作をより一般にはデジタイズという。
基本的なA/D変換の操作は、まず、サンプリング周波数で入力を標本化し、それを量子化することで行われる。標本化にともなう折り返し雑音は、重要な問題である。また、量子化にともなう量子化誤差による量子化雑音もある。A/D変換の操作によって種々の型に分類されている。以下に、その代表的な例について説明する。
【0006】
まず、逐次比較型及びパイプライン型は、比較器の他にD/A変換器も用意し、入力とD/A変換器の出力とを比較しながら1bitずつ精度を上げていく。したがって、nbitの場合は、n回の比較を行う必要があるが、比較器1つを用いてループ状にn回の操作を行う場合が逐次比較型である。つまり、A/D変換器の一種で、一つのコンパレータ(比較器)で大小比較を何度も繰り返し実行する手法が逐次比較型である。この逐次比較型のA/D変換器は、コンパレータと逐次比較レジスタとD/A変換器でと構成されている。回路構成はシンプルであるが、分解能を高めるほど比較回数が増えるため高速動作は苦手である。
【0007】
これに対して、パイプライン処理のように、n段階の回路構成で処理する場合がパイプラン型である。A/D変換器の一種で、各ケタの判定用に1ビット〜1.5ビットといった低分解能のA/D変換回路を多段用意してパイプライン動作で行うことで,1クロックで複数の処理を進める。パイプラインの各ステージには,D/A変換器とサブADC(比較器)が集積されている。
【0008】
パイプライン型A/D変換器では,各段で入力レベルの位置を判定する。「1」の場合は、その分だけ入力レベルを差し引いた後で増幅(1ビットの場合は2倍)し、次段で次のケタの値を判定する。このため常に演算増幅が必要になる。この演算増幅の精度が悪いと、後段のA/D変換の精度が悪化するため、オペアンプと負帰還回路を用いて精度を高めている。例えば、サンプル・ホールド回路と第1ステージのD/A変換器で構成される初段は、10ビット分解能であれば出力電圧の誤差の許容値が1/2
10以下と非常に厳しい値が求められる。
【0009】
次に、ΔΣ(デルタ・シグマ)型は、アナログ信号をデジタル符号に変換する際に、高速で標本化した量子化雑音のパワースペクトル密度(PSD)分布の形状を整形し、通過帯域のダイナミックレンジを向上させることによって、より小さな量子化語長数で符号化する回路形式全体を指す場合と、量子化雑音を整形する部分(ノイズシェーピング)を指す場合とがある。近年の半導体技術の発達や精度の必要なアナログ的な部分が少ないなどの点から音声処理用のA/D変換(ADC)及びD/A変換(DAC)で多用されている。
【0010】
図1は、従来のD/A変換器(信号範囲;VDD〜VEE)を説明するための回路構成図で、下側参照信号Vref_L(第2の参照信号)にチャージポンプ回路で生成した負電源電圧VEEを印加したD/A変換器を説明するための回路構成図である。このD/A変換器は、後述するサンプリング回路160と制御回路(クロック信号供給部)159とを備えており、サンプリング回路160の上側参照信号Vref_H(第1の参照信号)には、電源電圧VDDを印加し、下側参照信号Vref_L(第2の参照信号)には、チャージポンプ回路(図中に“CP”で示す)170で生成した負電源電圧VEEを印加している。
【0011】
例えば、VEEは(VSS−VDD)の電位で表される。サンプリング回路160において、キャパシタ111pには、スイッチ151p〜155pによってサンプリングされた参照信号Vref_H,Vref_Lが加えられ、VSS基準で電荷が蓄積される。キャパシタ111pに蓄積された電荷は、スイッチ151p〜155pの切り替えにしたがって演算増幅器1501の反転入力端子に入力される。
【0012】
同様に、キャパシタ111nには、スイッチ151n〜155nによってサンプリングされた参照信号Vref_H,Vref_Lが加えられ、接地電圧VSS基準で電荷が蓄積される。キャパシタ111nに蓄積された電荷は、スイッチ151n〜155nの切り替えにしたがって演算増幅器1501の非反転入力端子に入力される。演算増幅器1501は、反転入力端子と非反転入力端子とから入力された信号をアナログの出力信号Pout,Noutとして出力する。
【0013】
図2(a),(b)は、
図1に示したD/A変換器のレベルダイヤを説明するための図である。
図1に示したD/A変換器の出力信号は、VSS基準にVDD〜VEEの範囲で出力される。また、D/A変換器140の後段には、一般に出力波形の平滑化のためにスムージングフィルタ回路(図中に“SMF”で示す)141が設けられている。このD/A変換器140は、デジタル部150cと、コンテニアス部150aとサンプル・ホールド部150bとからなるサンプリング回路160と、制御回路(クロック信号供給部)159とで構成されている。サンプリング回路160の下側参照信号Vref_L(第2の参照信号)には、チャージポンプ回路(図中に“CP”で示す)170で生成した負電源電圧VEEを印加している。
【0014】
しかしながら、上述したチャージポンプ回路で生成した負電源電圧VEEをD/A変換器の下側参照信号Vref_Lとして使用すると、チャージポンプ回路の出力電圧にはスイッチング動作に起因する周期ノイズが重畳しているため、後述するように、参照信号に重畳したノイズがサンプリング動作により折り返されてD/A変換器の出力信号に現れる。
【0015】
D/A変換器のノイズ対策の従来例としては、例えば、特許文献1に記載されたD/A変換器のように、下側参照信号Vref_LにVSSを使用し、D/A変換器を電源電圧VDD〜VSSの範囲で動作させることで負電源電圧VEEのノイズを回避する方法がある。
図3は、従来のD/A変換器(信号範囲;VDD〜VSS)を説明するための回路構成図である。なお、
図1と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0016】
図4(a),(b)は、
図3に示したD/A変換器のレベルダイヤを説明するための図で、上側参照信号Vref_Hに電源電圧VDDを印加し、下側参照信号Vref_LにVSSを印加したD/A変換器とレベルダイヤグラムを説明するための図である。なお、
図2と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
図3に示すD/A変換器は、基準電圧Vcom基準で入力信号をサンプリングすることで、出力信号はVcom信号基準にVDD〜VSSの範囲で出力される。ただし、D/A変換後の出力信号をVSS基準に出力するためには、後段のSMFでレベルシフトする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述したように、従来のD/A変換器は、電源電圧VDD〜VSSの範囲で動作させることで、チャージポンプ回路の出力電圧に重畳しているノイズを回避して、D/A変換器の後段でレベルシフトすることでVSS基準の信号を出力している。そのため、従来例では、新たに基準信号Vcomを生成する必要がある。また、D/A変換器の出力信号はVcom電圧基準であるため、出力信号をVSS基準で出力させるためにはD/A変換器の後段にレベルシフト回路を追加する必要もある。
【0019】
図4(b)に示すように、従来のD/A変換器では、基準信号Vcomで入力信号をサンプリングすると、信号範囲がVDD〜VSSに制限される。これは、信号範囲がVDD〜VEEのD/A変換器と比較すると、信号範囲が1/2となり単純計算で信号対ノイズ比では6dB劣るという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、チャージポンプ回路で生成した負電源電圧VEEを下側参照信号Vref_Lとして使用して信号範囲をVDD〜VEEとするため、チャージポンプ回路の出力電圧のノイズの影響を低減することができるD/A変換器及びそのD/A変換器を用いたA/D変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、デジタル信号を入力するデジタル部と、該デジタル部によって入力されたデジタル信号に基づく
第1および第2の参照信号を
第1クロック(φ1’)にしたがってサンプリングし、サンプリングされた前記
第1および第2の参照信号を
第2クロック(φ2)にしたがって保持して転送するサンプル・ホールド部(150b)と、該サンプル・ホールド部によって転送された信号をアナログ信号として出力するコンテニアス部(150a)とを備えたサンプリング回路(160)と、前記コンテニアス部に対しては、
前記第
2クロック信号(φ2)にジッタを加えることなく供給し、少なくとも前記サンプル・ホールド部に対しては、ジッタを付加した
前記第
1クロック信号(φ1’)を供給するクロック信号供給部(159)とを備え、前記サンプル・ホールド部の
前記第1の参照信号(Vref_H)に電源電圧VDDを印加し、
前記第2の参照信号(Vref_L)にチャージポンプ回路で生成した負電源電圧(VEE)を印加することを特徴とする。(
図11;実施例1)
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記サンプル・ホールド部が、前記
第1および第2の参照信号によって生じる電荷を蓄積するキャパシタ(111p,111n)と、該キャパシタに電荷をサンプリングするスイッチング素子(151p,151n,152p,152n,153p,153n)とを備え、該スイッチング素子は、ジッタが加えられた前記第
1クロック信号にしたがってオン・オフ動作をすることを特徴とする。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、量子化回路から出力された出力信号をアナログ変換して演算回路にフィードバック信号を出力する請求項1又は2に記載のD/A変換器を備えていることを特徴とするΔΣ型A/D変換器である。(
図12;実施例2)
また、請求項4に記載の発明は、複数段カスケード接続された残差演算ステージにおいて、サブA/D変換器により変換されたデジタル信号を再びアナログ信号に変換する請求項1又は2に記載のD/A変換器を備えていることを特徴とするパイプライン型A/D変換器である。(
図13;実施例3)
また、請求項5に記載の発明は、逐次比較レジスタのビット列をアナログ変換して演算回路にフィードバック信号を出力する請求項1又は2に記載のD/A変換器を備えていることを特徴とする逐次比較型A/D変換器である。(
図14;実施例4)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、チャージポンプ回路で生成した負電源電圧VEEに重畳したノイズの影響を低減し、負電源電圧VEEを下側参照信号Vref_Lに使用し、信号範囲をVDD〜VEEとしてVcom信号の追加を不要としたD/A変換器を提供することができる。そして、このような効果を、ジッタが加えられていない第1クロック信号に基づいてコンテニアス部を動作させ、ジッタが加えられた第2クロック信号に基づいてサンプル・ホールド部を動作させることによって得られる。
【0023】
また、本発明のD/A変換器をΔΣ型A/D変換器、パイプライン型A/D変換器、逐次比較型A/D変換器のそれぞれのローカルD/A変換器として用いることにより、チャージポンプ回路で生成した負電源電圧VEEを下側参照信号Vref_Lとして使用して信号範囲をVDD〜VEEとしてVcom信号の追加を不要としたA/D変換器を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各実施例の説明に先立って、本発明のサンプリング回路及びこのサンプリング回路を用いたD/A変換器の考え方について説明する。
以下に説明するサンプリング回路は、各実施例の基礎となるサンプリング回路である。このサンプリング回路は、デジタル部とサンプル・ホールド部とコンテニアス部とによって構成されている。このような構成のうち、デジタル部は、一般的なデジタル回路で構成され、量子化され、離散化された信号を伝達する構成である。サンプル・ホールド部は、一般的なスイッチトキャパシタ回路(SC回路)で構成され、量子化されず、離散化された信号を伝達する構成である。また、コンテニアス部は、一般的な連続信号回路(Continuous回路)で構成され、量子化されず、離散化されていない信号を伝達する構成である。
【0026】
なお、上述した信号の「伝達」とは、信号を他の回路に出力することを意味するものとする。また、本明細書では、標本化とは、連続信号(アナログ信号)を時間的に区切る、所謂サンプリング処理することをいい、量子化とは、信号を振幅値で区切る処理をいうものとする。
各実施例の基礎となるサンプリング回路を説明するにあたっては、説明を分かり易くするためにシングルエンドのサンプリング回路を例に挙げる。
【0027】
図5は、各実施例の基礎となるサンプリング回路を説明するための回路構成図である。このサンプリング回路は、信号をサンプル、ホールドするサンプル・ホールド部とアナログ信号を処理するコンテニアス部として機能する。なお、
図5において、デジタル信号を扱うデジタル部は図示していない。デジタル部は、
図5に示したサンプリング回路のさらに前段に設けられている。
【0028】
図5に示したサンプリング回路は、キャパシタ111,112,113と、演算増幅器121とを備えている。キャパシタ111には、スイッチ101,102によってサンプリングされた参照信号Vref(サンプリング後の参照信号Vrefを入力信号Vinという)が加えられ、電荷が蓄積される。キャパシタ111に蓄積された電荷は、スイッチ101,102の切り替えにしたがって演算増幅器121の反転入力端子に入力される。演算増幅器121は、基準信号Vcom1を非反転入力端子から入力し、出力信号の振幅の中心レベルをVcom1としたアナログの出力信号Voutを出力する。
【0029】
ここで、
図5に示した参照信号Vrefは、
図1及び
図3に示したVref_H/Vref_Lを意味し、図示していないが、デジタル部から供給されるデジタル信号に基づいてVrer_H/Vref_Lが選択される。
ここで、
図5に示す回路構成では、参照信号Vrefと基準信号Vcom1にノイズが重畳した場合、ゲイン0dBで出力波形に現れるためノイズに対する感度が最も高い。各実施例では、参照信号Vrefにノイズが重畳した場合について説明するが、参照信号Vref以外にノイズが重畳した場合でも同様の考察が適用できる。参照信号Vref以外のノイズが重畳し得る信号の一例としては、例えば、基準信号Vcom1が挙げられる。
【0030】
(i)周期ノイズが重畳されていない場合
図6(a)〜(d)は、
図5に示したサンプリング回路の参照信号Vrefに周期ノイズがない場合の動作を説明するための図である。
図6(a)は、参照信号Vrefのサンプリングタイミングを示している。
図6(b)は、キャパシタ111が入力信号Vinによって蓄積された電荷をホールド、放出するタイミングを示し、
図6(c)は、直流電圧である参照信号Vrefを示し、
図6(d)は、演算増幅器121から出力される、アナログ信号である出力信号Voutを示している。
【0031】
なお、
図6(d)において、実線で示した信号がキャパシタ111から転送されてきた電荷によって生じる入力信号Vinであり、キャパシタ112を介したフィードバックによって破線で示した出力信号Voutが生成される。
図7(a)〜(c)は、
図6に示した動作において出力される信号を説明するための図である。
図7(a)に示したグラフは、
図5に示したキャパシタ111から出力される信号を説明するための図で、入力信号Vinをフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
図7(b)に示したグラフは、キャパシタ111が入力信号Vinによって蓄積された電荷をホールド、放出するタイミングを律するクロック信号をフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
図7(c)に示したグラフは、出力信号Voutをフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
【0032】
図7(a)〜(c)に示したグラフのいずれにおいても、縦軸は信号のスペクトルの強度を示し、横軸は周波数を示している。
図7(a)〜(c)のグラフ中に矢線で示した縦軸の位置は、周波数の基準(「0」)を示している。
図7(a)に示したように、キャパシタ111から出力された信号(図中にスペクトルpで示す)は一定の周波数を有している。スペクトルqは、入力信号Vinにおけるノイズシェープされたフロアノイズを示す。スペクトルp,qがスイッチ101,102によってサンプリングされ、ホールド、放出されると、畳み込みによって、
図7(c)に示す出力信号Voutが生成される。出力信号Voutにおいて、スペクトルp,qが対称にミラーされている。
【0033】
(ii)周期ノイズが重畳されている場合
次に、参照信号Vrefに周期ノイズがある場合について説明する。
図8(a)〜(d)は、
図5に示したサンプリング回路の参照信号Vrefに周期ノイズがある場合の動作を説明するための図である。
図8(a)は、参照信号Vrefのサンプリングタイミングを示している。
図8(b)は、キャパシタ111が参照信号Vrefによって蓄積された電荷をホールド、放出するタイミングを示している。
図8(c)は、直流電圧である参照信号Vrefを示している。
図8(d)は、演算増幅器121から出力される、アナログ信号である出力信号Voutを示している。
【0034】
図8(c)に示す周期ノイズN1が参照信号Vrefに発生している場合、サンプリング回路では、出力信号Voutにも周期ノイズN1に対応する周期ノイズN2が発生することになる。
図8(c),(d)に示した周期ノイズを、
図9(a)〜(c)を使って説明する。
図9(a)〜(c)は、
図8に示した周期ノイズについて説明するための図である。
図9(a)に示したグラフは、
図9に示したキャパシタ111から出力される信号を説明するための図で、入力信号Vinをフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
図9(b)に示したグラフは、キャパシタ111が入力信号Vinによって蓄積された電荷をホールド、放出するタイミングを律するクロック信号をフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
図9(c)に示したグラフは、出力信号Voutをフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
【0035】
図9(a)〜(c)に示したグラフのいずれにおいても、縦軸は信号のスペクトルの強度を示し、横軸は周波数を示している。
図9(a)〜(c)のグラフ中に矢線で示した縦軸の位置は、周波数の基準(「0」)を示している。
図9(a)で示したスペクトルを
図5に示したスイッチ101,102でサンプリングし、ホールド、放出すると、周期ノイズN2は折り返され、周期ノイズN2’がDC付近に現れる。そして、
図9(c)のグラフのように、畳み込みによって周期ノイズN2’が対称にミラーされ出力信号Voutが生成される。周期ノイズN2’は、D/A変換器が、例えば、オーディオ機器に用いられる場合、出力音声に使用される周波数領域(以下、in−bandともいう)内に現れる。
【0036】
本発明は、サンプリング回路などの機器を動作させるクロック信号にジッタを加えることにより、他の機器が出力する信号によってin−band内に現れる周期ノイズを拡散し、音声等の出力信号の信号品質が損なわれることを防ぐという技術思想に基づいてなされたものである。
本発明は、上述した目的を実現するため、D/A変換器のサンプル・ホールド部のクロック信号にジッタを加えるようにしたものである。
【0037】
図10(a)〜(c)は、サンプリング回路において、サンプル・ホールド部のクロック信号にジッタを加えた場合の周期ノイズについて説明するための図である。
図10(a)に示したグラフは、
図5に示したキャパシタ111から出力される信号を説明するための図で、入力信号Vinをフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
図10(b)に示したグラフは、キャパシタ111が入力信号Vinによって蓄積された電荷をホールド、放出するタイミングを律するクロック信号をフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
図10(c)のグラフは、出力信号Voutをフーリエ変換により周波数軸に変換したスペクトルを示している。
【0038】
図10(a)〜(c)に示したグラフのいずれにおいても、縦軸は信号のスペクトルの強度を示し、横軸は周波数を示している。
図10(a)〜(c)のグラフ中に矢線で示した縦軸の位置は、周波数の基準(「0」)を示している。
図10(a)に示したように、サンプル・ホールド部にジッタを加えたクロック信号を加えると、折り返し時に変調がかかり、周期ノイズN3’のスペクトルのピークが、周期ノイズN3のスペクトルのピークよりも小さくなっている。このことから、各実施例は、in−band内に発生する周期ノイズを従来例よりも低減できることが明らかである。
【0039】
このように、
図10に示した周期ノイズN3から周期ノイズN3’への変調において周波数拡散効果が得られるため、D/A変換器においてin−band内に発生する周期ノイズを小さくすることができる。この周期ノイズは一例としては、チャージポンプ回路のスイッチング動作に起因する周期ノイズなどが挙げられる。このため、特に周期ノイズが動作に影響する電子部品に、後述する本発明の各実施例を適用し、この電子部品の周期ノイズを低減することができ、電子機器の小型化、構成の簡易化において有利である。
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0040】
図11は、本発明の実施例1に係るD/A変換器を説明するための回路構成図である。なお、
図1と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
本実施例1は、サンプリング回路をD/A変換器に適用したものである。本実施例1のD/A変換器は、サンプリング回路160と制御回路(クロック信号供給部)159とを備えている。サンプリング回路160は、コンテニアス部150aとサンプル・ホールド部150bとを備え、チャージポンプ回路170は、サンプル・ホールド部150bに接続されている。
【0041】
つまり、本発明の実施例1に係るD/A変換器は、デジタル信号を入力するデジタル部と、このデジタル部によって入力されたデジタル信号に基づく入力信号をサンプリングし、サンプリングされた入力信号を保持して転送するサンプル・ホールド部150bと、このサンプル・ホールド部150bによって転送された信号をアナログ信号として出力するコンテニアス部150aとを備えたサンプリング回路160と、コンテニアス部150aに対しては、第1クロック信号φ2にジッタを加えることなく供給し、少なくともサンプル・ホールド部150bに対しては、ジッタを付加した第2クロック信号φ1’を供給するクロック信号供給部159とを備え、サンプル・ホールド部150bの第1の参照信号Vref_Hに電源電圧VDDを印加し、第2の参照信号Vref_Lにチャージポンプ回路170で生成した負電源電圧VEEを印加するように構成されている。
【0042】
図11に示したサンプリング回路160は、Vref_Hの信号パスと、Vref_Lの信号パスとを同時に示し、さらに全差動構成としたものであるが、
図5乃至
図10で示したシングルエンド構成のサンプリング回路におけるノイズ重畳と同様の考察が適用できる。
図11に示したサンプリング回路160は、デジタル部(図示せず)とサンプル・ホールド部150bとコンテニアス部150aとによって構成されている。
【0043】
デジタル部は、一般的なデジタル回路で構成され、量子化され、標本化された信号を伝達する構成である。サンプル・ホールド部150bは、一般的なスイッチトキャパシタ回路(SC回路)で構成され、量子化されず、標本化された信号を伝達する構成である。コンテニアス部150aは、一般的な連続信号回路(Continuous回路)で構成され、量子化されず、標本化されていない信号を伝達する構成である。
【0044】
図11では、上述した構成のうち、デジタル信号を扱うデジタル部は、図示されておらず、コンテニアス部150aとサンプル・ホールド部150bとが示されている。デジタル部は、
図11に示したサンプル・ホールド部150bのさらに前段に設けられている。つまり、
図2及び
図4に示したデジタル部150cに相当している。
サンプリング回路160は、入力されたデジタル信号に基づく入力信号(デジタル信号に基づいてVref_H,Vref_Lが選択され、キャパシタ111pにサンプリングされた参照信号Vref_H、あるいはVref_Lを入力信号Vin_p1、キャパシタ111nにサンプリングされた参照信号Vref_H、あるいはVref_Lを入力信号Vin_n1という)を間欠的にサンプリングし、サンプリングされた信号をホールド、転送するサンプル・ホールド部150bと、このサンプル・ホールド部150bによって転送された信号を、アナログ信号Aoutとして出力するコンテニアス部150aとを備えている。
【0045】
制御回路159は、ジッタを含まないクロック信号φ1,φ2、ジッタが加えられたクロック信号φ1’,φ2’を生成して出力する。クロック信号φ1は、クロック信号φ2と同時にHにならない、ノンオーバーラップ信号である。ジッタが加えられていないクロック信号φ2は、コンテニアス部150aに入力され、ジッタが加えられたクロック信号φ1’は、サンプル・ホールド部150bに入力される。
【0046】
サンプル・ホールド部150bは、入力信号Vin_p1及びVin_n1によって生じる電荷を蓄積するキャパシタ111p,111nと、キャパシタ111p,111nに蓄積するスイッチ151p,152p,153p,151n,152n,153nとを備えている。
つまり、サンプル・ホールド部150bは、入力信号によって生じる電荷を蓄積するキャパシタ111p,111nと、このキャパシタ111p,111nに電荷をサンプリングするスイッチング素子151p,151n,152p,152n,153p,153nとを備え、このスイッチング素子151p,151n,152p,152n,153p,153nは、ジッタが加えられた第2クロック信号φ1’にしたがってオン・オフ動作をする。
【0047】
スイッチ151p及び152n、キャパシタ111p、スイッチ153pは、互いに直列に接続されていて、スイッチ151n及び152p、キャパシタ111n、スイッチ153nは互いに直列に接続されている。スイッチ151p,152p,153p,151n,152n,153nは、クロック信号φ1’にしたがってスイッチング動作を行っている。
【0048】
コンテニアス部150aは、キャパシタ111pと直列に接続されたスイッチ155p、スイッチ155pの一端に反転入力端子が接続された演算増幅器1501と、演算増幅器1501の非反転出力端子Poutとスイッチ151p、キャパシタ111p間とに接続されたスイッチ154pと、演算増幅器1501の非反転出力端子Poutと反転入力端子との間に接続されたキャパシタ112pと、キャパシタ111nと直列に接続されたスイッチ155n、スイッチ155nの一端に非反転入力端子が接続された演算増幅器1501と、演算増幅器1501の反転出力端子Noutとスイッチ151n、キャパシタ111n間とに接続されたスイッチ154nと、演算増幅器1501の反転出力端子Noutと非反転入力端子との間に接続されたキャパシタ112nとを備えている。コンテニアス部150aのスイッチ154p,155p,154n,155nは、ジッタがないクロック信号φ2にしたがってスイッチング動作を行っている。
【0049】
図11に示したサンプリング回路160では、サンプル・ホールド部150bとコンテニアス部150aとがキャパシタ111p,111nを共有している。つまり、キャパシタ111p,111nは、サンプル・ホールド部150bとしても、コンテニアス部150aとしても機能する。
なお、キャパシタ112p,112nを有することによって、コンテニアス部150aにはLPF(Low−pass filter)が形成され、キャパシタ112pとキャパシタ111pの容量比及びキャパシタ112nとキャパシタ111nの容量比、とスイッチング周波数によってLPFのカットオフ周波数が決まる。なお、このようなキャパシタ112p、112nは、本実施例1のサンプリング回路に必須の構成ではない。
【0050】
本実施例1のサンプリング回路160には、上側参照信号Vref_H(第1の参照信号)に電源電圧VDDが印加され、下側参照信号Vref_L(第2の参照信号)にチャージポンプ回路170で生成した負電源電圧VEEが印加される。サンプル・ホールド部150bでは、参照信号Vref_H,Vref_Lをキャパシタ151p及び151nにVSS基準で入力信号Vin_n1,Vin_p1としてサンプリングし、コンテニアス部150aにおいてキャパシタ152p,151nに蓄積された電荷をアナログ出力信号Pout,NoutとしてVSS基準で出力する。
【0051】
このような本実施例1によれば、サンプル・ホールド部150bは離散化された信号を伝達することを特徴としており、信号成分はDC成分であるため、動作クロックに加えられたジッタにより信号成分は変調がかからない。しかし、チャージポンプ回路で生成した負電源電圧VEEを参照信号Vref_Lとして使用した場合、VEEにはチャージポンプ回路のスイッチング動作に起因する周期ノイズが重畳しているがAC成分であるため、動作クロックに加えられたジッタによりノイズ成分には変調がかかり、ノイズ拡散効果が得られる。
【0052】
つまり、STF(Signal Transfer Function)には変化せず、NTF(Noise Transfer Function)のみにジッタによる変調をかけることができ、混入する周期ノイズを信号成分と効率的に分離することができる。
このため、伝達すべき信号にノイズを加えることなく、in−band内のノイズだけを分散し、そのスペクトルのピークを低減することができる。
【0053】
上述した本実施例1によれば、チャージポンプ回路等のD/A変換器周辺の機器から発生するノイズを低減するのではなく、D/A変換器自身のノイズに対する耐性を強化することができる。このため、D/A変換器周辺の他の機器の構成を変更することなく、D/A変換器のみを変更してD/A変換器に対するノイズの影響を低減することができる。これにより、D/A変換器の内部信号範囲をVDD〜VEEとすることができ、内部信号範囲の制限がなくなり、さらに基準信号Vcomの生成を不要とすることができる。
【0054】
また、本実施例1は、デジタル部には、ジッタが加えられたクロック信号φ1’,φ2’を入力するようにしても、ジッタを加えないクロック信号φ1,φ2を入力するようにしてもよく、D/A変換器自身のノイズに対する耐性を強化する効果は全く損なわれることはない。
さらに、本実施例1は、D/A変換器を単体の構成とする場合、
図11に示した制御回路159が1つのサンプリング回路に対応付けて設けられる。また、本実施例1は、
図11に示したD/A変換器のサンプリング回路を他の機器として構成する場合、制御回路159を機器の外部に設けるものであってもよい。
【実施例2】
【0055】
図12は、本発明の実施例2に係るD/A変換器を用いたΔΣ型A/D変換器を説明するためのブロック図である。本実施例2のΔΣ型A/D変換器200は、量子化回路から出力された出力信号をアナログ変換して演算回路にフィードバック信号を出力するD/A変換器を備えている。つまり、アナログ信号の入力信号INとD/A変換器(図中に“DAC”で示す)240からのフィードバック後の差分信号を出力する演算回路210と、この演算回路210からの差分信号を積分するフィルタ回路220と、このフィルタ回路220の出力信号を量子化によりデジタル変換して出力信号OUTを出力する量子化回路230と、この量子化回路230から出力された出力信号OUTをアナログ変換して演算回路210にフィードバック信号を出力するD/A変換器240とを備えて構成されている。
【0056】
ここで、D/A変換器240は、上述した本実施例1で説明したD/A変換器で構成されている。
図12に示したΔΣA/D変換器におけるD/A変換器の出力信号範囲がVDD〜VSSの場合、演算回路210において入力信号INの信号範囲もVDD〜VSSとしなければならない。そのため、入力信号のDCカットコンデンサを不要とするためにチャージポンプ回路を内蔵してVDD〜VEEの信号範囲の入力信号を入力できるA/D変換器であっても、内部信号範囲はVDD〜VSSに制限される。これは、信号範囲がVDD〜VEEのA/D変換器と比較すると、信号範囲が1/2となり単純計算で信号対ノイズ比では6dB劣るといえる。また、VDD〜VEEの入力信号をVDD〜VSSにレベルシフトする際に、新たに基準信号Vcomを生成する必要がある。
【0057】
そこで、上述した本実施例1に示したD/A変換器を用いることにより、チャージポンプ回路の出力信号VEEに重畳するノイズの影響を低減することができ、A/D変換器の内部信号範囲をVDD〜VEEとすることができる。これより、内部信号範囲の制限がなくなり、基準信号Vcomの生成を不要とすることができる。
【実施例3】
【0058】
図13は、本発明の実施例3に係るD/A変換器を用いたパイプラン型A/D変換器を説明するためのブロック図である。本実施例3のパイプライン型A/D変換器300は、複数段カスケード接続された残差演算ステージにおいて、サブA/D変換器により変換されたデジタル信号を再びアナログ信号に変換するD/A変換器を備えている。つまり、複数段カスケード接続された残差演算ステージ310とデジタル回路320によって主に構成されている。このうち、残差演算ステージ310は、サブA/D変換器330(図中に“SADC”で示す)とD/A変換器340(図中に“DAC”で示す)と演算回路350と残差演算増幅器360とによって構成されている。
【0059】
残差演算ステージ310において、入力されたアナログ信号INは、それぞれのサブA/D変換器310によりデジタル信号に変換される。その後、変換結果をD/A変換器340により再びアナログ信号に変換したものと、入力信号INとの差分を取り、これを残差演算増幅器360で増幅する。この一連の演算動作を複数段繰り返し、最後にデジタル回路320で各ステージの出力を演算することで、アナログ入力信号INに対応したデジタル出力信号OUTとして出力される。
【0060】
ここで、上述したD/A変換器340は、上述した本実施例1で説明したD/A変換器で構成されている。
図13に示したパイプラインA/D変換器においてD/A変換器の出力信号範囲がVDD〜VSSの場合、演算回路350において入力信号INの信号範囲もVDD〜VSSとしなければならない。そのため、入力信号のDCカットコンデンサを不要とするためにチャージポンプ回路を内蔵してVDD〜VEEの信号範囲の入力信号を入力できるA/D変換器であっても、内部信号範囲はVDD〜VSSに制限される。これは、信号範囲がVDD〜VEEのA/D変換器と比較すると、信号範囲が1/2となり単純計算で信号対ノイズ比では6dB劣るといえる。また、VDD〜VEEの入力信号をVDD〜VSSにレベルシフトする際に、新たに基準信号Vcomを生成する必要がある。
【0061】
そこで、上述した本実施例1に示したD/A変換器を用いることにより、チャージポンプ回路の出力信号VEEに重畳するノイズの影響を低減することができ、A/D変換器の内部信号範囲をVDD〜VEEとすることができる。これより、内部信号範囲の制限がなくなり、基準信号Vcomの生成を不要とすることができる。
【実施例4】
【0062】
図14は、本発明の実施例4に係るD/A変換器を用いた逐次比較型A/D変換器のブロック図である。本実施例4の逐次比較型A/D変換器は、逐次比較レジスタのビット列をアナログ変換して演算回路にフィードバック信号を出力するD/A変換器を備えている。つまり、演算回路410と量子化回路420と逐次比較レジスタ430とD/A変換器440とによって主に構成されている。
【0063】
逐次比較A/D変換器では、所定ビット数のビット列を持つ逐次比較レジスタ430の各ビットに対して、MSB(Most Significant Bit)からLSB(Least Significant Bit)の順に“1”が設定される。逐次比較レジスタ430の1ビットに“1”が設定される毎に、量子化回路420の結果によって当該1ビットの内容が“0”又は“1”のいずれか一方に確定される。
【0064】
例えば、逐次比較レジスタ430のある1ビットに“1”が設定される毎に、D/A変換器440は、逐次比較レジスタ430のビット列をアナログ出力信号に変換する。そして、D/A変換器440より出力される逐次比較レジスタ430のビット列に応じたアナログ出力信号とアナログ入力信号INとの差分信号を演算回路410で演算し量子化回路420へ入力する。この結果、アナログ入力信号INがD/A変換器440からのアナログ出力信号よりも大きい場合には前記1ビットは“1”に確定され、アナログ入力信号INがアナログ出力信号よりも小さい場合には前記1ビットは“0”に確定される。
【0065】
以上の動作が、逐次比較レジスタ430のビット列の全ビットを対象に行われ、当該全ビットの内容が確定されたときの逐次比較レジスタ430のビット列が、アナログ入力信号INに対応したデジタル出力信号OUTとして出力される。
ここで、上述したD/A変換器440は、上述した本実施例1で説明したD/A変換器で構成されている。
図14に示した逐次比較A/D変換器におけるD/A変換器の出力信号範囲がVDD〜VSSの場合、演算回路410において入力信号INの信号範囲もVDD〜VSSとしなければならない。そのため、入力信号のDCカットコンデンサを不要とするためにチャージポンプ回路を内蔵してVDD〜VEEの信号範囲の入力信号を入力できるA/D変換器であっても、内部信号範囲はVDD〜VSSに制限される。これは、信号範囲がVDD〜VEEのA/D変換器と比較すると、信号範囲が1/2となり単純計算で信号対ノイズ比では6dB劣るといえる。また、VDD〜VEEの入力信号をVDD〜VSSにレベルシフトする際に、新たに基準信号Vcomを生成する必要がある。
【0066】
そこで、上述した本実施例1に示したD/A変換器を用いることにより、チャージンプ回路の出力信号VEEに重畳するノイズの影響を低減することができ、A/D変換器の内部信号範囲をVDD〜VEEとすることができる。これより、内部信号範囲の制限がなくなり、基準信号Vcomの生成を不要とすることができる。
また、本発明の技術的範囲は、図面及び上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施例をも含んでいる。さらに、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲による発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせも含むものである。