特許第5655051号(P5655051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655051
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】スイッチングアンプ
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/217 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   H03F3/217
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-233797(P2012-233797)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-86854(P2014-86854A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】海保 敏夫
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−171450(JP,A)
【文献】 特開2011−061865(JP,A)
【文献】 特開2005−142780(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0151584(US,A1)
【文献】 特開2010−226641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハーフブリッジ増幅器および第2のハーフブリッジ増幅器を駆動するための第1のPWM制御信号および第2のPWM制御信号を生成するPWM制御信号生成部と、
前記PWM制御信号生成部で生成された第1および第2のPWM制御信号の切り替わりタイミングを調整する切り替わりタイミング調整部と、
当該切り替わりタイミング調整部で調整された後の、前記第1および第2のPWM制御信号に基づき、前記第1および第2のハーフブリッジ増幅器を駆動する駆動回路と、を備え、
前記第1のハーフブリッジ増幅器および第2のハーフブリッジ増幅器の出力端の電位差に応じて負荷を駆動するようになっており、
前記切り替わりタイミング調整部は、
前記第1および第2のPWM制御信号のうち、立ち上がりタイミングが先である一のPWM制御信号の立ち上がりタイミングから所定の遅延時間が経過するまでの間継続する立ち上がりマスク信号を生成する立ち上がりマスク信号生成部と、
前記他方のPWM制御信号および前記立ち上がりマスク信号に基づき前記他方のPWM制御信号の立ち上がりタイミングを遅延させる立ち上がり遅延挿入部と、
前記第1および第2のPWM制御信号のうち、立ち下がりタイミングが先である一のPWM制御信号の立ち下がりタイミングから前記遅延時間が経過するまでの間継続する立ち下がりマスク信号を生成する立ち下がりマスク信号生成部と、
前記他方のPWM制御信号および前記立ち下がりマスク信号に基づき前記他方のPWM制御信号の立ち下がりタイミングを遅延させる立ち下がり遅延挿入部と、
を備えることを特徴とするスイッチングアンプ。
【請求項2】
前記PWM制御信号生成部で生成された前記第1および第2のPWM制御信号のうち、予め決めてある一のPWM制御信号の切り替わりタイミングを他方のPWM制御信号に対して遅延させる遅延部を備えることを特徴とする請求項1記載のスイッチングアンプ。
【請求項3】
前記切り替わりタイミング調整部は、
前記一のPWM制御信号を前記遅延部で遅延させた信号と他のPWM制御信号とを、前記第1および第2のPWM制御信号として当該第1および第2のPWM制御信号の切り替わりタイミングを調整することを特徴とする請求項2記載のスイッチングアンプ。
【請求項4】
前記遅延部は、前記立ち上がりマスク信号または前記立ち下がりマスク信号を調整することを特徴とする請求項2または請求項3記載のスイッチングアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ低減を図るようにしたスイッチングアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、音声信号などの入力信号を増幅する回路として、スイッチングアンプが使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
図11は、特許文献1のスイッチングアンプを駆動装置70として例示した回路図である。図11において、駆動装置70は、三角波発生器71と、この三角波発生器71からの三角波と信号基準レベルを中心として上レベルおよび下レベルを相補的に交互に推移する2種類のレベル信号POS、NEGとを比較する比較器72、73と、比較器72の出力であるパルス幅変調信号CMP1から駆動信号V1PおよびV1Nを生成するゲートドライブ回路74と、比較器73の出力であるパルス幅変調信号CMP2を一定時間遅延させる遅延回路75と、遅延回路75の出力である遅延信号CMP2Dから駆動信号V2P、V2Nを生成するゲートドライブ回路76と、ゲートドライブ回路74の出力V1P、V1Nにより駆動されて出力POUTを生成するハーフブリッジ増幅器77と、ゲートドライブ回路76の出力V2P、V2Nにより駆動されて出力NOUTを生成するハーフブリッジ増幅器78と、を備えている。なお、三角波発生器71で発生する三角波とは、立ち上がり傾斜/立ち下がり傾斜の波形が対称となっている信号波である。
【0003】
三角波発生器71と比較器72とで正極用のPWM回路を構成し、三角波発生器71と比較器73とで負極用のPWM回路を構成している。
ここで、遅延回路75をもたない場合、入力信号が非常に小さいこと、または無信号状態であることなどにより、出力POUTと出力NOUTとの立ち上がりまたは立ち下がりタイミングが一致した場合には“POUT−NOUT”からなる差動パルスを生成することができなくなり、規則的な動作周期を維持することができなくなる。このように、規則的な動作を維持することができない場合、規則的な動作が行われている場合には生じることのないノイズスペクトルが発生することになり、このノイズスベクトルの可聴帯域分がノイズとなってユーザに聴こえることになる。
【0004】
このノイズスペクトルの発生を防止するために、正極または負極用のPWM回路の出力側、図11の場合には負極用のPWM回路の出力側に遅延回路75を挿入し、比較器73の出力信号CMP2をパルス幅変調信号として用いるのではなく、比較器73の出力信号CMP2を遅延させたCMP2Dをパルス幅変調信号として用いることによって、規則的に差分パルスを発生するようにしている。
【0005】
図12は、遅延回路75を挿入した場合の、駆動装置70の動作の一例を示す、各部の信号波形を示す図である。
図12(a)に示すように、2つのレベル信号POSおよびNEGが信号基準レベルと同等信号である場合、図12(b)に示すように、比較器72および73で、レベル信号POSおよびNEGを三角波信号TRIANGLEと比較した場合、その出力信号CMP1、CMP2の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングは一致する。そのため、仮に遅延回路75により出力信号CMP2を遅延させない場合には、駆動信号V1P、V1N、V2P、V2Nの切り替わりタイミングが一致し、その結果、出力POUTとNOUTとの切り替わりタイミングが一致し、POUT−NOUTからなる差動パルスを生成することができない。
【0006】
しかしながら、遅延回路75を挿入することによって、比較器73の出力信号CMP2は遅延され、CMP2D(図12(c))としてゲートドライブ回路76に入力されるため、駆動信号V1PおよびV1Nと、V2PおよびV2Nと、で、切り替わりタイミングがずれる(図12(d))。そのため、出力POUTとNOUTとの切り替わりタイミングがずれ(図12(e))、図12(f)に示すように、POUT−NOUTからなる差分パルスが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US6614297B2明細書
【特許文献2】特開2006−94158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、遅延回路75を設けることによって、差動パルスを生成することができる。
しかしながら、駆動装置70を構成する各素子には製造バラツキがあり、この製造バラツキによって、エッジがばらつく可能性がある。
つまり、図13(a)に示すように、図12と同じ2つのレベル信号POSおよびNEGと信号基準レベルとが、比較器72および73に入力されたとしても、比較器72、73の製造ばらつきなどの影響により、比較器72、73の出力信号CMP1、CMP2の切り替わりタイミングが一致せずに、ばらつく場合がある(図13(b))。
【0009】
このように、ばらつきが生じた場合、比較器73の出力信号CMP2を遅延させたCMP2Dを得て、出力信号CMP1と遅延させたCMP2D(図13(c))とを用いてゲートドライブ回路74、76を駆動したとしても、駆動信号V1P、V1N、V2P、V2Nの切り替わりタイミングが一致する可能性がある。図13(d)に示すように、例えば駆動信号V1P、V1N、V2P、V2Nの立ち上がりタイミングが一致した場合には、出力POUTとNOUTとの立ち下がりタイミングが一致し(図13(e))、その結果、図13(f)に示すように、POUT−NPUTからなる負値の差分パルスは発生せず、正値の差分パルスのみ発生することになる。
【0010】
そのため、出力POUTとNPUTとの立ち上がり/立ち下がりタイミングが一致することを確実に回避するためには、製造バラツキを考慮して、遅延回路75では比較器73の出力信号CMP2をある程度大きく遅延させる必要がある。このように、出力信号CMP2をある程度大きく遅延させるということは、すなわち、負荷に印加する電流パルス幅が広がることになるため、必要以上の電流を負荷に供給することになって、無信号時の消費電流を増大させる。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に着目してなされたものであり、消費電流を増大させることなく、差動パルスを確実に発生させるスイッチングアンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、第1のハーフブリッジ増幅器および第2のハーフブリッジ増幅器(例えば図1に示すハーフブリッジ増幅器17、18)を駆動するための第1のPWM制御信号および第2のPWM制御信号を生成するPWM制御信号生成部(例えば図1に示す三角波発生器11、比較器12および13)と、前記PWM制御信号生成部で生成された第1および第2のPWM制御信号の切り替わりタイミングを調整する切り替わりタイミング調整部(例えば図1に示すエッジ検出・遅延挿入回路14)と、当該切り替わりタイミング調整部で調整された後の、前記第1および第2のPWM制御信号に基づき、前記第1および第2のハーフブリッジ増幅器を駆動する駆動回路(例えば図1に示すゲートドライブ回路15、16)と、を備え、前記第1のハーフブリッジ増幅器および第2のハーフブリッジ増幅器の出力端の電位差に応じて負荷を駆動するようになっており、前記切り替わりタイミング調整部は、前記第1および第2のPWM制御信号のうち、立ち上がりタイミングが先である一のPWM制御信号の立ち上がりタイミングから所定の遅延時間が経過するまでの間継続する立ち上がりマスク信号を生成する立ち上がりマスク信号生成部(例えば図5に示すPG立ち上がり検出部53およびNG立ち上がり検出部62)と、前記他方のPWM制御信号および前記立ち上がりマスク信号に基づき前記他方のPWM制御信号の立ち上がりタイミングを遅延させる立ち上がり遅延挿入部(例えば図5に示すNAND回路51および61)と、前記第1および第2のPWM制御信号のうち、立ち下がりタイミングが先である一のPWM制御信号の立ち下がりタイミングから前記遅延時間が経過するまでの間継続する立ち下がりマスク信号を生成する立ち下がりマスク信号生成部(例えば図5に示すPG立ち下がり検出部57およびNG立ち下がり検出部66)と、前記他方のPWM制御信号および前記立ち下がりマスク信号に基づき前記他方のPWM制御信号の立ち下がりタイミングを遅延させる立ち下がり遅延挿入部(例えば図5に示すNOR回路55および64)と、を備えることを特徴とするスイッチングアンプである。
【0013】
前記PWM制御信号生成部で生成された前記第1および第2のPWM制御信号のうち、予め決めてある一のPWM制御信号の切り替わりタイミングを他方のPWM制御信号に対して遅延させる遅延部(例えば図5に示す遅延素子52および56)を備えていてよい。
前記切り替わりタイミング調整部は、前記一のPWM制御信号を前記遅延部で遅延させた信号と他のPWM制御信号とを、前記第1および第2のPWM制御信号として当該第1および第2のPWM制御信号の切り替わりタイミングを調整するものであってよい。
前記遅延部は、前記立ち上がりマスク信号または前記立ち下がりマスク信号を調整するものであってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1のPWM制御信号および第2のPWM制御信号の立ち上がりのタイミングおよび立ち下がりのタイミングのそれぞれについて、第1および第2のPWM制御信号のうちのいずれか一方のPWM制御信号の切り替わりタイミングから予め設定した遅延時間が経過するまでの間、他方のPWM制御信号の切り替わりタイミングを遅延させるようにした。そのため、第1および第2のPWM制御信号どうしの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジはそれぞれずれることになる。その結果、仮に、第1のPWM制御信号および第2のPWM制御信号の切り替わりタイミングが一致していたとしても、第1のPWM制御信号および第2のPWM制御信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジ間に、所定の遅延時間を設けることができ、すなわち、差動パルスを定期的に発生させることができる。また、差動パルスのパルス幅は、パルスとして認識することができればよく比較的狭くてよいため、差動パルスを定期的に発生させることによる消費電流の増加を抑制することができるため、電力効率の低下を抑制しつつ、不規則な差動パルスに起因してノイズが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のスイッチングアンプを説明するための回路ブロック図である。
図2】ゲートドライブ回路の一例を示す回路図である。
図3図1のスイッチングアンプの負荷回路図の一例である。
図4図1の各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図5】エッジ検出・遅延挿入回路の一例を示す回路図である。
図6】切り替わりタイミングが一致する場合の図1の各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図7】切り替わりタイミングのエッジ差が小さい場合の図1の各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図8】切り替わりタイミングのエッジ差が大きい場合の図1の各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図9】切り替わりタイミングのエッジ差が小さい場合の図1の各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図10】切り替わりタイミングのエッジ差が大きい場合の図1の各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図11】従来のスイッチングアンプを説明するための回路ブロック図の一例である。
図12図11のスイッチングアンプの各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
図13図11のスイッチングアンプの各部の信号波形の一例を示す信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のスイッチングアンプの一例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のスイッチングアンプを説明するための回路図であって、スイッチングアンプを駆動装置として例示した図である。
図1において、駆動装置1を構成するスイッチングアンプは、三角波発生器11と、比較器12、13と、エッジ検出・遅延挿入回路14と、ゲートドライブ回路15および16と、ハーフブリッジ増幅器17および18とを備える。
【0017】
三角波発生器11は、立ち上がり傾斜と立ち下がり傾斜の波形が対称となっている三角波信号を発生する。
比較器12は、三角波発生器11から出力される三角波信号と、信号基準レベルを中心として上レベルおよび下レベルを相補的に交互に推移する2種類のレベル信号POSおよびNEGのうち、例えばレベル信号POSとを入力し、レベル信号POSを反転入力端子に入力し、三角波信号を非反転入力端子に入力し、これらの比較結果を、比較器出力CMP1としてエッジ検出・遅延挿入回路14に出力する。
【0018】
同様に、比較器13は、三角波発生器11から出力される三角波信号と、2種類のレベル信号POSおよびNEGのうち、比較器12に入力されるレベル信号とは別の信号、例えばレベル信号NEGと、を入力し、レベル信号NEGを反転入力端子に入力し、三角波信号を非反転入力端子に入力し、これらの比較結果を、比較器出力CMP2としてエッジ検出・遅延挿入回路14に出力する。
【0019】
エッジ検出・遅延挿入回路14は、比較器出力CMP1およびCMP2のエッジのタイミングに応じて、比較器出力CMP1またはCMP2のいずれか一方を遅延させた信号を、パルス幅変調信号PGおよびNGとして出力する。
パルス幅変調信号PGは、正極用の制御信号としてゲートドライブ回路15に入力され、パルス幅変調信号NGは、負極用の制御信号としてゲートドライブ回路16に入力される。このエッジ検出・遅延挿入回路14の構成は後述する。
【0020】
ゲートドライブ回路15、16は、パルス幅変調信号PG、NGに基づき、ハーフブリッジ増幅器17、18を駆動するための正極用の駆動信号V1PおよびV1Nと負極用の駆動信号V2PおよびV2Nとを生成する。そして、生成した駆動信号をそれぞれ対応するハーフブリッジ増幅器17、18に出力する。
図2は、ゲートドライブ回路15、16の一例を示す構成図である。これらゲートドライブ回路15、16は、同一構成を有する。図2では、正極用のゲートドライブ回路15について説明する。
【0021】
ゲートドライブ回路15は、図2に示すように、V1P信号を生成する正極信号生成部21と、V1N信号を生成する負極信号生成部22とを備える。
正極信号生成部21は、並列に接続された一対のPチャネル型MOSトランジスタM11、M12のソースが電源Vddに接続され、ドレインは、Nチャネル型MOSトランジスタM13のドレインに接続される。Nチャネル型MOSトランジスタM13は、Nチャネル型MOSトランジスタM14を介して接地される。
【0022】
MOSトランジスタM11およびMOSトランジスタM14のゲートには、エッジ検出・遅延挿入回路14からのパルス幅変調信号PGが入力される。MOSトランジスタM12およびMOSトランジスタM13のゲートには、後述の負極信号生成部22で生成された駆動信号V1Nが遅延素子31としてのインバータで遅延されて入力される。
そして、MOSトランジスタM11、M12と、MOSトランジスタM13の接続点であるノードN1の電圧が増幅器などからなるドライバ32に入力され、ドライバ32の出力が、駆動信号V1Pとなる。
【0023】
負極信号生成部22は、直列に接続されたPチャネル型MOSトランジスタM21、M22と、並列に接続された一対のNチャネル型MOSトランジスタM23、M24とを備え、MOSトランジスタM22のドレインと、MOSトランジスタM23およびM24のドレインとが接続され、これらが電源Vddおよび接地間に接続される。
MOSトランジスタM21およびMOSトランジスタM23のゲートに、エッジ検出・遅延挿入回路14からのパルス幅変調信号PGが入力され、MOSトランジスタM22およびMOSトランジスタM24のゲートには、正極信号生成部21で生成された駆動信号V1Pが遅延素子36としてのインバータで遅延されて、入力される。
【0024】
MOSトランジスタM22と、MOSトランジスタM23およびM24との接続点であるノードN2の電圧が増幅器などからなるドライバ37に入力され、ドライバ37の出力が駆動信号V1Nとなる。
つまり、正極信号生成部21および負極信号生成部22は、パルス幅変調信号PGに基づき、互いに同期した駆動信号V1PおよびV1Nを生成する。
以上はゲートドライブ回路15の構成であり、ゲートドライブ回路16では、同様の手順で、パルス幅変調信号NGに基づき、互いに同期した駆動信号V2PおよびV2Nを生成する。
【0025】
次に、ハーフブリッジ増幅器17および18について説明する。
図3は、ハーフブリッジ増幅器17および18を含む負荷駆動回路40の一例を示す構成図である。
ハーフブリッジ増幅器17は、図3に示すように、Pチャネル型MOSトランジスタM31とNチャネル型MOSトランジスタM32とが直列に接続されて、直流電圧源Vccと接地との間に接続されてなる。同様にハーフブリッジ増幅器18は、Pチャネル型MOSトランジスタM33とNチャネル型MOSトランジスタM34とが直列に接続されて、直流電圧源Vccと接地との間に接続されてなる。MOSトランジスタM31のゲートには駆動信号V1P、MOSトランジスタM32のゲートには駆動信号V1Nが入力される。同様にMOSトランジスタM33のゲートには駆動信号V2P、MOSトランジスタM34のゲートには駆動信号V2Nが入力される。
【0026】
そして、ハーフブリッジ増幅器17のMOSトランジスタM31およびM32の接続点であるノードOUTPの電圧が出力信号POUTとなる。同様に、ハーフブリッジ増幅器18のMOSトランジスタM33およびM34の接続点であるノードOUTNの電圧が出力信号NOUTとなる。そして、これらノードOUTPおよびOUTN間に負荷として駆動コイルL1が接続される。
【0027】
図4に示すように、出力信号の極性が「POUT−NOUT」の場合を正極性とした場合、駆動信号によりハーフブリッジ増幅器17および18の各MOSトランジスタをオンオフ制御することによって、状態T8a(正極性側から負荷L1に電流を供給)、状態T8b(負極性側から負荷L1に電流を供給)、状態T8cまたはT8d(直流電圧源Vccからの電流供給なし)の3値の出力状態をとるようになっている。
【0028】
このような図1に示す回路構成においては、各部の信号波形は図4に示すようになる。
すなわち、比較器12および13には、図4(a)に示すように三角波発生器11から基準信号である三角波信号TRIANGLEが入力されるとともに、2種類の相補的なレベル信号POSおよびNEGがそれぞれ入力される。そして、比較器12では、三角波信号TRIANGLEとレベル信号POSとが比較され、比較器13では、三角波信号TRIANGLEとレベル信号NEGとが比較される。
【0029】
比較器12の比較器出力CMP1は、三角波発生器11の三角波信号TRIANGLEとレベル信号POSとを比較した結果である。また、比較器13の比較器出力CMP2は、三角波発生器11の三角波信号TRIANGLEとレベル信号NEGとを比較した結果である(図4(b))。これら2つの比較器出力CMP1、CMP2は、エッジ検出・遅延挿入回路14に入力され、エッジ検出・遅延挿入回路14は、比較器出力CMP1、CMP2のうちのいずれか一方を遅延させたパルス幅変調信号PG、NGを出力する。
【0030】
このパルス幅変調信号PGに基づきゲートドライブ回路15から駆動信号V1P、V1Nが得られ、パルス幅変調信号NGに基づきゲートドライブ回路16から駆動信号V2P、V2Nが得られる(図4(c))。
出力信号POUT、NOUT(図4(d))、POUT−NOUT(図4(e))については、出力信号の極性がPOUT−NOUTの場合を正極性とした場合、状態T8a(正極性側から負荷に電流を供給)、状態T8b(負極性側から負荷に電流を供給)、状態T8cまたはT8d(直流電流側からの電流供給なし)の3値の出力状態を表している。
【0031】
出力信号が正極性の場合は、T8aとT8cまたはT8dとの比率により出力振幅が決まる。出力信号が負極性の場合は、T8bとT8cまたはT8dとの比率により出力振幅が決まり、信号無入力時はT8a、T8bの割合が最も小さく、T8c、T8dの割合が最も大きくなる。
次に、エッジ検出・遅延挿入回路14について説明する。
【0032】
図5は、エッジ検出・遅延挿入回路14の一例を示す構成図である。
エッジ検出・遅延挿入回路14は、PG信号生成部41と、NG信号生成部42と、を備える。PG信号生成部41は、比較器12の比較器出力CMP1とNG信号生成部42の各部の信号とに基づき、パルス幅変調信号PGを生成する。同様にNG信号生成部42は、比較器13の比較器出力CMP2とPG信号生成部41の各部の信号とに基づき、パルス幅変調信号NGを生成する。
【0033】
PG信号生成部41は、比較器出力CMP1の立ち上がりエッジを検出し、比較器出力CMP1の立ち上がりエッジに対する処理を行う立ち上がりエッジ処理部41aと、比較器出力CMP1の立ち下がりエッジを検出し、比較器出力CMP1の立ち下がりエッジに対する処理を行う立ち下がりエッジ処理部41bと、を備える。
同様に、NG信号生成部42は、比較器出力CMP2の立ち上がりエッジを検出し、比較器出力CMP2の立ち上がりエッジに対する処理を行う立ち上がりエッジ処理部42aと、比較器出力CMP2の立ち下がりエッジを検出し、比較器出力CMP2の立ち下がりエッジに対する処理を行う立ち下がりエッジ処理部42bと、を備える。
【0034】
PG信号生成部41の立ち上がりエッジ処理部41aは、比較器出力CMP1と後述の立ち上がりマスク信号EDGE_NPとを入力するNAND回路51と、立ち上がりエッジ処理部42aの後述のNAND回路61のNAND出力を遅延させる遅延素子52と、PG立ち上がり検出部53と、インバータ54とを含んでなる。
PG立ち上がり検出部53は、遅延素子53aとNAND回路53bとを含んで構成される。
【0035】
NAND回路53bは、NAND回路51のNAND出力をインバータ54で反転した反転出力PG_Xと、NAND回路51のNAND出力を遅延素子53aで遅延させた遅延出力と、NAND回路61のNAND出力を遅延素子52で遅延させた遅延出力とを入力し、比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングが比較器出力CMP2の立ち上がりタイミングよりも早いときに、比較器出力CMP1およびCMP2の立ち上がりタイミングに所定のずれが生じるように比較器出力CMP2の立ち上がりタイミングを調整するための立ち上がりマスク信号EDGE_PPを出力する。
【0036】
NAND回路51のNAND出力をインバータ54で反転した反転出力PG_Xが、比較器出力CMP1の立ち上がりエッジのみが調整されてなる立ち上がりエッジ調整信号となる。つまり、この立ち上がりエッジ調整信号PG_Xは、比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングを調整した信号である。
同様に、NG信号生成部42の立ち上がりエッジ処理部42aは、比較器出力CMP2と前記立ち上がりエッジ処理部41aのNAND回路53bの出力である立ち上がりマスク信号EDGE_PPとを入力するNAND回路61と、NG立ち上がり検出部62と、インバータ63と、を含んでなる。
【0037】
NG立ち上がり検出部62は、遅延素子62aとNAND回路62bとを含んで構成される。NAND回路62bは、立ち上がりエッジ処理部41aの前記NAND回路51のNAND出力と、NAND回路61のNAND出力を遅延素子62aで遅延させた遅延出力と、NAND回路61のNAND出力をインバータ63で反転した反転信号とを入力し、比較器出力CMP2の立ち上がりタイミングが比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングよりも早いときに、比較器出力CMP1およびCMP2の立ち上がりタイミングに所定のずれが生じるように比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングを調整するための立ち上がりマスク信号EDGE_NPを出力する。
【0038】
NAND回路61のNAND出力をインバータ63で反転した反転出力NG_Xが、比較器出力CMP2の立ち上がりエッジのみが調整されてなる立ち上がりエッジ調整信号となる。つまり、この立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは、比較器出力CMP2の立ち上がりタイミングを調整した信号である。
一方、PG信号生成部41の立ち下がりエッジ処理部41bは、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xと後述の立ち下がりマスク信号EDGE_NNの反転信号とを入力するNOR回路55と、立ち下がりエッジ処理部42bの後述のNOR回路64のNOR出力の反転信号を遅延させる遅延素子56と、PG立ち下がり検出部57と、インバータ58、59とを含んでなる。
【0039】
PG立ち下がり検出部57は、遅延素子57aとNAND回路57bとを含んで構成される。
NAND回路57bは、NOR回路55のNOR出力をインバータ58で反転し、この反転出力を遅延素子57aで遅延させた遅延出力と、NOR回路55のNOR出力と、立ち下がりエッジ処理部42bの後述のNOR回路64のNOR出力の反転信号を、遅延素子56で遅延させた遅延出力と、を入力する。そして、NAND回路57bは、これら信号に応じて、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xの立ち下がりタイミングが立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの立ち下がりタイミングよりも早いときに立ち上がりエッジ調整信号PG_Xと立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの立ち下がりタイミングに所定のずれが生じるように、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの立ち下がりタイミングを調整するための立ち下がりマスク信号EDGE_PNを出力する。この立ち下がりマスク信号EDGE_PNはインバータ59を介してNOR回路64に入力される。
【0040】
そして、NOR回路55のNOR出力をインバータ58で反転した反転出力が、パルス幅変調信号PGとなる。つまり、立ち下がりエッジ処理部41bでは、比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングを調整した立ち上がりエッジ調整信号PG_Xに対して、立ち下がりタイミングを調整しており、これがパルス幅変調信号PGとなる。
同様にNG信号生成部42の立ち下がりエッジ処理部42bは、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xと前記立ち下がりエッジ処理部41bからの立ち下がりマスク信号EDGE_PNをインバータ59で反転した反転出力とを入力するNOR回路64と、NOR回路64のNOR出力を反転するインバータ65と、NG立ち下がり検出部66と、インバータ67と、を含んでなる。
【0041】
NG立ち下がり検出部66は、遅延素子66aとNAND回路66bとを含んで構成され、NAND回路66bは、立ち下がりエッジ処理部41bのNOR回路55のNOR出力をインバータ58で反転した反転出力と、NOR回路64のNOR出力と、NOR回路64のNOR出力をインバータ65で反転し、その反転信号を遅延素子66aで遅延させた遅延出力と、を入力する。そして、NAND回路66bは、これら信号に応じて、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの立ち下がりタイミングが、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xの立ち下がりタイミングよりも早いときに、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xと立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの立ち下がりタイミングに所定のずれが生じるように、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xの立ち下がりタイミングを調整するための立ち下がりマスク信号EDGE_NNを出力する。この立ち下がりマスク信号EDGE_NNはインバータ67を介してNOR回路55に入力される。
【0042】
そして、NOR回路64のNOR出力をインバータ65で反転した反転出力が、パルス幅変調信号NGとなる。つまり、立ち下がりエッジ処理部42bでは、比較器出力CMP2の立ち上がりタイミングを調整した立ち上がりエッジ調整信号NG_Xに対して、立ち下がりタイミングを調整しており、これがパルス幅変調信号NGとなる。
遅延素子52の遅延時間は、遅延素子52の遅延時間が、遅延素子53a、62aの遅延時間以下となるように設定される。また、遅延素子56の遅延時間は、遅延素子56の遅延時間が遅延素子57a、66aの遅延時間以下となるように設定される。また、各遅延素子53a、57a、62a、66aは、例えば、後段のゲートドライブ回路15、16、ハーフブリッジ増幅器17、18を通過する過程において、寄生容量などの影響により「POUT−NOUT」の差動パルスが消失することがなく差動パルスとして認識することができればよく、消費電流も増大しない値に設定される。例えば、携帯機器用途では10ns程度に設定される。
【0043】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
図6は、パルス幅変調信号PGおよびNGのエッジが同時の場合、つまり、比較器出力CMP1およびCMP2をそのままパルス幅変調信号PG、NGとして用いた場合には、パルス幅変調信号PGとNGとで切り替わりエッジが同時となるような比較器出力CMP1およびCMP2が入力された場合の、エッジ検出・遅延挿入回路14の各部における信号波形を示したものである。すなわち、比較器出力CMP1およびCMP2として切り替わりエッジが同時となる信号が入力された場合の信号波形を示したものである。
【0044】
図6に示すように、比較器出力CMP1と比較器出力CMP2との立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングが同時である場合(図6(a))、比較器出力CMP1およびCMP2がともにLOWレベルであるときには、立ち上がりマスク信号EDGE_PPおよびEDGE_NPがHIGHレベルとなり(図6(b))、立ち上がりエッジ調整信号PG_XおよびNG_XはLOWレベルとなる(図6(c))。
【0045】
また、立ち下がりマスク信号EDGE_PNおよびEDGE_NNがHIGHレベルとなり(図6(d))、パルス幅変調信号PGおよびNGはLOWレベルとなる(図6(e))。
その結果、POUT−NOUTは略零となる(図6(f))。
時点t1で、比較器出力CMP1およびCMP2がHIGHレベルとなると、NAND回路61のNAND出力は、NAND回路51のNAND出力よりも遅延素子52の遅延時間相当遅れてPG立ち上がり検出部53に入力される。一方、NAND回路51のNAND出力は、NG立ち上がり検出部62をマスクするため、PG立ち上がり検出部53が立ち上がりマスク信号EDGE_PPをLOWレベルに変化させて、NAND回路61のNAND出力のLOWレベルへの変化を遅延素子53aの遅延時間Δd1相当だけ遅延させる。また、NAND回路51のNAND出力は、比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングでLOWレベルに切り替わることから、立ち上がりエッジ調整信号PG_XもHIGHレベルに切り替わる。
【0046】
遅延素子52の遅延時間によりNG立ち上がり検出部62よりも早くPG立ち上がり検出部53が有効となるため、立ち上がりマスク信号EDGE_PPは、時点t1で比較器出力CMP1およびCMP2が立ち上がった時点から遅延時間Δd1が経過するまでの間、LOWレベルを維持した後、HIGHレベルに切り替わる。このため、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xも、時点t1から遅延時間Δd1が経過した時点t2で、HIGHレベルに切り替わる。
【0047】
また、時点t1で比較器出力CMP1がHIGHレベルに切り替わり、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルに切り替わると、NOR回路55のNOR出力がLOWレベルに切り替わり、結果的に、パルス幅変調信号PGがHIGHレベルに切り替わる。
一方、時点t1で比較器出力CMP2がHIGHレベルに切り替わるが、立ち上がりマスク信号EDGE_PPがLOWレベルとなるため、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは、時点t1ではHIGHレベルに切り替わらず、時点t1から遅延時間Δd1が経過した、立ち上がりマスク信号EDGE_PPが立ち上がる時点t2で、HIGHレベルに切り替わる。時点t2で立ち上がりエッジ調整信号NG_XがHIGHレベルに切り替わると、これに伴いパルス幅変調信号NGもHIGHレベルに切り替わる。
【0048】
その結果、比較器出力CMP1およびCMP2の立ち上がりタイミングは同一であるが、パルス幅変調信号PGおよびNGの立ち上がりタイミングが異なるため、時点t1から時点t2間でPOUT−NOUTが正値となり、すなわち、差動パルスが発生することになる。
つまり、遅延素子53aを設けることによって、比較器出力CMP1およびCMP2がHIGHレベルに切り替わる時点t1のタイミングで、立ち上がりマスク信号EDGE_PPをLOWレベルに切り替え、これにより、図6中にハッチングで示すように、時点t1から遅延時間Δd1の間、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xが変化することを禁止し、遅延時間Δd1が経過した時点でエッジ調整信号NG_Xを切り替え、このエッジ調整信号NG_Xの立ち上がりタイミングで変化するパルス幅変調信号NGを生成している。
【0049】
そのため、パルス幅変調信号NGの切り替わりタイミングが遅延時間Δd1だけ遅れることになり、パルス幅変調信号PGとNGとの立ち上がりタイミングがずれるため、正値の差動パルスを発生させることができる。
この状態から、時点t3で、比較器出力CMP1およびCMP2がともに立ち下がると、立ち上がりエッジ調整信号PG_XおよびNG_Xは、ともにLOWレベルに切り替わり、立ち上がりマスク信号EDGE_PPおよびEDGE_NPはHIGHレベルを維持する。
【0050】
一方、立ち上がりエッジ調整信号PG_XおよびNG_XがLOWレベルに切り替わったタイミングで、NOR回路64のNOR出力は、NOR回路55のNOR出力よりも遅延素子56の遅延時間相当遅れてPG立ち下がり検出部57に入力される。一方、NOR回路55のNOR出力は、NG立ち下がり検出部66をマスクするため、PG立ち下がり検出部57が有効となり、パルス幅変調信号NGがLOWレベルに切り替わるタイミングを遅延させることになる。
【0051】
そのため、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがLOWレベルに切り替わるタイミングで、パルス幅変調信号PGがLOWレベルに切り替わる。また、NAND回路57bの出力である立ち下がりマスク信号EDGE_PNは、遅延素子57aの遅延時間Δd2相当の時間だけLOWレベルを維持した後、時点t3から遅延時間Δd2だけ経過した時点t4でHIGHレベルに切り替わる。
そのため、パルス幅変調信号NGは、立ち下がりマスク信号EDGE_PNが時点t4でHIGHレベルに切り替わった時点でLOWレベルに切り替わる。
つまり、パルス幅変調信号NGの切り替わりタイミングが遅延時間Δd2だけ遅れることになり、パルス幅変調信号PGとNGとの立ち下がりタイミングが異なるため、負値の差動パルスを発生させることができる。
【0052】
そして、この状態から、時点t5で、比較器出力CMP1およびCMP2がともに立ち上がると、上記と同様に、立ち上がりマスク信号EDGE_PPが遅延時間Δd1だけLOWレベルとなった後、時点t6でHIGHレベルに切り替わるため、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは、時点t6で立ち上がることになり、パルス幅変調信号NGの立ち上がりタイミングが遅延時間Δd1だけ遅れる。その結果、正値の差動パルスを発生させることができる。
【0053】
このように、遅延素子53a、57aを設け、比較器出力CMP1、CMP2の変化に対して、立ち上がりマスク信号EDGE_PP、立ち下がりマスク信号EDGE_PNにより、立ち上がりエッジ調整信号NG_X、パルス幅変調信号NGの切り替わりタイミングを遅延させ、比較器出力CMP2の切り替わりタイミングを強制的に遅延させた信号NGを、パルス幅変調信号として用いるようにした。
そのため、比較器出力CMP1およびCMP2の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングが一致する場合であっても、比較器出力CMP2の切り替わりタイミングを調整することによって、正値および負値の差動パルスを交互に発生させることができる。
【0054】
また、一方の比較器出力の立ち上がりタイミングを基準にして他方の比較器出力の立ち上がりタイミングを調整するようにしている。つまり、一方の比較器出力の、バラツキが加味された切り替わりタイミングを基準に、他方の比較器出力の切り替わりタイミングを調整しているため、これら比較器出力CMP1およびCMP2の切り替わりタイミングを調整してなるパルス幅変調信号PGおよびNGに基づき決定される差分パルスにおいて、比較器出力CMP1およびCMP2の製造バラツキによる影響は除去され、差分パルスは主に、遅延素子53a、57a、62a、66aの製造バラツキの影響のみをうけることになる。したがって、差分パルスにおける製造バラツキの影響を抑制することができ、より的確に差分パルスを発生させることができる。
【0055】
なお、図5では、エッジ検出・遅延挿入回路14において、遅延素子52および56を、PG信号生成部41側に設けているため、比較器出力CMP1、CMP2の立ち上がりタイミングまたは立ち下がりタイミングが同一である場合には、パルス幅変調信号PGが優先され、パルス幅変調信号NGの切り替わりタイミングを遅らせるようにしているが、これに限るものではない。
エッジ検出・遅延挿入回路14において、遅延素子52および56を、NG信号生成部42側に設けることで、比較器出力CMP1、CMP2の立ち上がりおよび立ち下がりの切り替わりタイミングが同一である場合に、パルス幅変調信号NGを優先し、パルス幅変調信号PGの切り替わりタイミングを遅らせるように構成することも可能である。
【0056】
次に、図7は、パルス幅変調信号NGに対して、パルス幅変調信号PGの立ち上がりおよび立ち下がりエッジが早い場合であり、且つ立ち上がりのエッジ差および立ち下がりのエッジ差が小さい場合の、各部の信号波形を示したものである。つまり、比較器出力CMP1およびCMP2をそのままパルス幅変調信号PG、NGとして用いた場合には、パルス幅変調信号NGよりもパルス幅変調信号PGが先に切り替わるような比較器出力CMP1およびCMP2が入力された場合であって、さらに、エッジ差が、遅延素子53a、57aの遅延時間よりも短い場合の、エッジ検出・遅延挿入回路14の各部における信号波形を示したものである。
【0057】
図7に示すように、比較器出力CMP2に対して、比較器出力CMP1の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングが早い場合(図7(a))、比較器出力CMP1およびCMP2がともにLOWレベルであるときには、立ち上がりマスク信号EDGE_PPおよびEDGE_NPがHIGHレベルとなり(図7(b))、立ち上がりエッジ調整信号PG_XおよびNG_XはLOWレベルとなる(図7(c))。
【0058】
また、立ち下がりマスク信号EDGE_PNおよびEDGE_NNはHIGHレベルとなり(図7(d))、パルス幅変調信号PGおよびNGはLOWレベルとなる(図7(e))。
その結果、POUT−NPUTは略零となる(図7(f))。
時点t11で、比較器出力CMP1がHIGHレベルとなると、NAND回路51のNAND出力がLOWレベルとなりこれにより、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルとなる。また、NAND回路51のNAND出力は遅延素子53aを介してNAND回路53bに入力されるため、遅延素子53aの遅延時間Δd1だけ遅延されてNAND回路53bに入力される。
【0059】
また、NAND回路61のNAND出力はHIGHレベルのままである。そのため、NAND回路53bの出力である立ち上がりマスク信号EDGE_PPは、図7(b)に示すように、遅延素子53aの遅延時間Δd1だけLOWレベルに切り替わった後、時点t13でHIGHレベルに切り替わる。
立ち上がりマスク信号EDGE_PPがLOWレベルに切り替わるが、比較器出力CMP2はLOWレベルのままであるため、立ち上がりエッジ調整信号NG_XはLOWレベルのままとなる。そのため、パルス幅変調信号NGはLOWレベルのままである。
【0060】
また、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルに切り替わるため、パルス幅変調信号PGはHIGHレベルに切り替わる。
そのため、POUT−NOUTは正値となる。
時点t12で、比較器出力CMP2がHIGHレベルに切り替わると、このとき、立ち上がりマスク信号EDGE_PPは、LOWレベルを維持するためNAND回路61のNADN出力はHIGHレベルを維持するため、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは、LOWレベルを維持する。
【0061】
時点t13で、立ち上がりマスク信号EDGE_PPがHIGHレベルに切り替わり、これに伴い立ち上がりエッジ調整信号NG_XがHIGHレベルに切り替わるとパルス幅変調信号NGがHIGHレベルに切り替わる。
その結果、パルス幅変調信号PGが立ち上がる時点t11からパルス幅変調信号NGが立ち上がる時点t13間で正値となる差動パルスが発生することになる。
【0062】
時点t14で、比較器出力CMP1がLOWレベルに切り替わると、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがLOWレベルに切り替わり、時点t15で、比較器出力CMP2がLOWレベルに切り替わると、立ち上がりエッジ調整信号NG_XがLOWレベルに切り替わる。
時点t14では、立ち下がりマスク信号EDGE_NNはHIGHレベルのままであり、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがLOWレベルに切り替わり、NOR回路55のNOR出力がHIGHレベルに切り替わるため、パルス幅変調信号PGはLOWレベルに切り替わる。また、時点t14でNOR回路55のNOR出力がHIGHレベルに切り替わり、遅延素子57aの遅延出力が、時点t14から遅延時間Δd2が経過した時点でLOWレベルに切り替わる。また、立ち下がりマスク信号EDGE_PNが時点t14〜t16の間、LOWレベルとなり、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは時点t15での比較器出力CMP2の立ち下がりタイミングでLOWレベルに切り替わるが、NOR回路64のNOR出力はLOWレベルを維持するため、インバータ65の出力、すなわち、パルス幅変調信号NGは、HIGHレベルを維持する。
【0063】
そして、時点t16で立ち下がりマスク信号EDGE_PNがLOWレベルに切り替わると、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは時点t15でLOWレベルに切り替わっているため、パルス幅変調信号NGは時点t16でLOWレベルに切り替わる。
そのため、時点t14でパルス幅変調信号PGが立ち下がり、時点t16でパルス幅変調信号NGが立ち下がるt14〜t16の間、負値のPOUT−NOUTからなる差動パルスが発生する。
【0064】
このように、比較器出力CMP1、CMP2の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジどうしの差が比較的小さい場合、すなわち、エッジ差が、遅延素子53a、57aの遅延時間よりも短い場合であっても、パルス幅変調信号PGとNGとの間で、立ち上がりエッジ差および立ち下がりエッジ差を、遅延時間Δd1、Δd2相当だけそれぞれずらすことができる。そのため、POUT−NOUTに差が生じ、正値および負値の差動パルスを発生させることができる。
【0065】
また、このとき、比較器出力CMP2を遅延させてパルス幅変調信号NGを得る場合に、比較器出力CMP2の切り替わりタイミングから遅延時間だけ遅延させるのではなく、図7中にハッチングで示すように、先に切り替わった比較器出力CMP1の切り替わりタイミングから遅延時間だけ遅延させるようにしている。そのため、パルス幅変調信号NGが必要以上に遅延されることを回避することができ、すなわち、差動パルスのパルス幅を、最大でも遅延時間とすることができる。
【0066】
次に、図8は、パルス幅変調信号NGに対して、パルス幅変調信号PGの立ち上がりおよび立ち下がりエッジが早い場合であり、且つ立ち上がりのエッジ差および立ち下がりのエッジ差が大きい場合の各部の信号波形を示したものである。つまり、比較器出力CMP1およびCMP2をそのままパルス幅変調信号PG、NGとして用いた場合には、パルス幅変調信号NGよりもパルス幅変調信号PGが先に切り替わるような比較器出力CMP1およびCMP2が入力された場合であって、さらに、エッジ差が、遅延素子53a、57aの遅延時間よりも長い場合の、エッジ検出・遅延挿入回路14の各部における信号波形を示したものである。
【0067】
図8に示すように、比較器出力CMP1とCMP2との切り替わりタイミングの差が比較的大きいときには、時点t21で比較器出力CMP1がHIGHレベルに切り替わると立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルに切り替わり、時点t23で比較器出力CMP2がHIGHレベルに立ち上がると立ち上がりエッジ調整信号NG_XがHIGHレベルに切り替わる。
【0068】
時点t21では、立ち上がりマスク信号EDGE_NPはHIGHレベルのままであり、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルに切り替わり、NAND回路51のNAND出力がLOWレベルに切り替わるため、遅延素子53aの遅延出力は時点t21から遅延時間Δd1が経過した時点t22でLOWレベルに切り替わる。時点t21では、遅延素子52の遅延出力は引き続きHIGHレベルを維持するため、NAND回路53bの出力である立ち上がりマスク信号EDGE_PPは、時点t21でLOWレベルに切り替わった後、時点t22で遅延素子53aの遅延出力がLOWレベルに切り替わるまで、LOWレベルを維持する。
【0069】
時点t21からt22間では、立ち上がりマスク信号EDGE_PPはLOWレベルとなるが、比較器出力CMP2は、時点t23まではLOWレベルを維持するため、NAND回路61のNAND出力は引き続きHIGHレベルを維持し、時点t23で、比較器出力COM2がHIGHレベルに切り替わり、立ち上がりマスク信号EDGE_PPおよび比較器出力CMP2がともにHIGHレベルとなった時点でLOWレベルに切り替わる。そのため、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは、時点t23でHIGHレベルに切り替わる。
【0070】
そして、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xは時点t21でHIGHレベルに立ち上がり、立ち下がりマスク信号EDGE_NNがHIGHレベルを維持するため、NOR回路55のNOR出力は時点t21ではLOWレベルに切り替わる。また、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは時点t23でHIGHレベルに切り替わり、立ち下がりマスク信号EDGE_PNは、HIGHレベルを維持するため、NOR回路64のNOR出力は時点t23でLOWレベルに切り替わる。そのため、パルス幅変調信号PGは、時点t21でHIGHレベルに切り替わり、パルス幅変調信号NGは時点t23でHIGHレベルに切り替わる。
【0071】
その結果、時点t21でパルス幅変調信号PGが立ち上がり、時点t23でパルス幅変調信号NGが立ち上がるt21〜t23の間、正値のPOUT−NOUTからなる差動パルスが発生する。
同様に時点t24で比較器出力CMP1がLOWレベルに切り替わり、時点t26で比較器出力CMP2がLOWレベルに切り替わる場合には、時点t24で比較器出力CMP1がLOWレベルに切り替わるタイミングから、遅延素子57aの遅延時間Δd2が経過するまでの間、すなわち、図8中にハッチングで示す期間、パルス幅変調信号NGが変化することを防止している。
【0072】
ここで、図8の場合、パルス幅変調信号PGとNGとで、立ち上がりおよび立ち上がりのエッジの差が比較的大きくエッジ差が各遅延素子の遅延時間よりも長い。この場合には、立ち上がりマスク信号EDGE_PPがLOWレベルとなる期間、すなわち、図8中にハッチングで示す、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの変化を防止する期間は、比較器出力CMP2が切り替わるタイミング以前に終了しており、比較器出力CMP2が切り替わるタイミングにおいて、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xが遅延されることはなく、すなわち、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xの切り替わりが禁止されることはない。同様に、パルス幅変調信号NGについても切り替わりが禁止されることはない。
【0073】
したがって、比較器出力CMP1とCMP2とで、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのエッジ差が、差動パルスを得るための十分なエッジ差であるときには、比較器出力CMP2の立ち上がり/立ち下がりタイミングを遅延させることはない。すなわち十分な差動パルスを得ることができる状況において、不必要に比較器出力CMP2を遅延させることはない。
【0074】
次に、パルス幅変調信号PGに対して、パルス幅変調信号NGの立ち上がりおよび立ち下がりエッジが進んでいる早い場合、つまり、比較器出力CMP1およびCMP2をそのままパルス幅変調信号PG、NGとして用いた場合には、パルス幅変調信号PGよりもパルス幅変調信号NGが先に切り替わるような比較器出力CMP1およびCMP2が入力された場合について説明する。
【0075】
図9は、立ち上がりのエッジ差および立ち下がりのエッジ差が比較的小さい場合、すなわち、エッジ差が各遅延素子の遅延時間よりも短い場合の、各部の信号波形を示したものであり、図10は、立ち上がりのエッジ差および立ち下がりのエッジ差が比較的大きい場合、すなわち、エッジ差が各遅延素子の遅延時間よりも長い場合の、各部の信号波形を示したものである。
【0076】
図9に示すように、パルス幅変調信号NGとPGとのエッジの切り替わりタイミングの差が、各遅延素子の遅延時間よりも短いときには、時点t31で、比較器出力CMP2がHIGHレベルに切り替わると立ち上がりエッジ調整信号NG_XがHIGHレベルに切り替わり、時点t32で比較器出力CMP1がHIGHレベルに切り替わると、時点t33で立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルに切り替わるように調整される。
【0077】
時点t31では、立ち上がりマスク信号EDGE_PPはHIGHレベルのままであり、比較器出力CMP2がHIGHレベルに切り替わり、NAND回路61のNAND出力がLOWレベルに切り替わるため、遅延素子62aの遅延出力は時点t31から遅延時間Δd3が経過した時点t33でLOWレベルに切り替わる。遅延素子62aの遅延出力は時点t31では、引き続きHIGHレベルを維持する。そのため、NAND回路62bの出力である立ち上がりマスク信号EDGE_NPは、時点t31でLOWレベルに切り替わった後、時点t33で遅延素子62aの遅延出力がLOWレベルに切り替わるまで、LOWレベルを維持する。
【0078】
一方、比較器出力CMP1は、時点t32でHIGHレベルに切り替わるが、立ち上がりマスク信号EDGE_NPは、時点t31からt33の間でLOWレベルを維持するため、NAND回路51のNAND出力は引き続きHIGHレベルを維持し、時点t33で、立ち上がりマスク信号EDGE_NPおよび比較器出力CMP1がともにHIGHレベルとなった時点でLOWレベルに切り替わる。そのため、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xは、時点t33でHIGHレベルに切り替わる。
【0079】
そして、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは時点t31でHIGHレベルに立ち上がり、立ち下がりマスク信号EDGE_PNがHIGHレベルを維持するため、NOR回路64のNOR出力は時点t31でLOWレベルに切り替わる。また、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xは時点t33でHIGHレベルに切り替わり、立ち下がりマスク信号EDGE_NNは、HIGHレベルを維持するため、NOR回路55のNOR出力はLOWレベルに切り替わる。
【0080】
そのため、時点t31でパルス幅変調信号NGがHIGHレベルに切り替わり、時点t33でパルス幅変調信号PGがHIGHレベルに切り替わるまでの時点t31〜t33の間、負値のPOUT−NOUTからなる差動パルスが発生する。
同様に時点t34で比較器出力CMP2がLOWレベルに切り替わり、時点t35で比較器出力CMP1がLOWレベルに切り替わると、時点t34で比較器出力CMP2がLOWレベルに切り替わるタイミングから、遅延素子66aの遅延時間Δd4が経過するまでの間、すなわち、図9中にハッチングで示す期間は、パルス幅変調信号PGが変化することを防止している。
【0081】
そのため、パルス幅変調信号PGとNGとの間の立ち下がりエッジ間に遅延時間Δd4相当のエッジ差を確保することができる。したがって、パルス幅変調信号NGがLOWレベルに切り替わり、時点t36でパルス幅変調信号PGがLOWレベルに切り替わるまでの時点t34〜t36の間、正値のPOUT−NOUTからなる差動パルスが発生する。
一方、図10に示すように、パルス幅変調信号NGとPGとのエッジの切り替わりタイミングの差が、各遅延素子の遅延時間よりも長いときには、時点t41で、比較器出力CMP2がHIGHレベルに切り替わると立ち上がりエッジ調整信号NG_XがHIGHレベルに切り替わり、時点t43で比較器出力CMP1がHIGHレベルに切り替わると、立ち上がりエッジ調整信号PG_XがHIGHレベルに切り替わる。
【0082】
時点t41では、立ち上がりマスク信号EDGE_PPはHIGHレベルのままであり、比較器出力CMP2がHIGHレベルに切り替わることから、NAND回路61のNAND出力がLOWレベルに切り替わるため、遅延素子62aの遅延出力は時点t41から遅延時間Δd3が経過した時点t42でLOWレベルに切り替わる。時点t41では、遅延素子62aの遅延出力は引き続きHIGHレベルを維持するため、NAND回路62bの出力である立ち上がりマスク信号EDGE_NPは、時点t41でLOWレベルに切り替わった後、時点t42で遅延素子62aの遅延出力がLOWレベルに切り替わるまで、LOWレベルを維持する。
【0083】
一方、比較器出力CMP1は、時点t43でHIGHレベルに切り替わるため、立ち上がりマスク信号EDGE_NPは、時点t42でHIGHレベルに切り替わった時点で、NAND回路51のNAND出力は引き続きLOWレベルを維持し、時点t43で、比較器出力CMP1がHIGHレベルに切り替わり、比較器出力CMP1および立ち上がりマスク信号EDGE_NPがともにHIGHレベルとなった時点で、NAND回路51のNAND出力はLOWレベルに切り替わる。
【0084】
そのため、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xは、時点t43でHIGHレベルに切り替わる。
そして、立ち上がりエッジ調整信号NG_Xは時点t41でHIGHレベルに切り替わり、立ち下がりマスク信号EDGE_PNがHIGHレベルを維持するため、NOR回路64のNOR出力は時点t41でLOWレベルに切り替わる。また、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xは時点t43でHIGHレベルに切り替わり、立ち下がりマスク信号EDGE_NNは、HIGHレベルを維持するため、NOR回路55のNOR出力は時点t43でLOWレベルに切り替わる。そのため、パルス幅変調信号PGは、時点t43でHIGHレベルに立ち上がる。
【0085】
このため、時点t41でパルス幅変調信号NGが立ち上がり、時点t43でパルス幅変調信号PGが立ち上がるまでの時点t41からt43の間、負値のPOUT−NOUTからなる差動パルスが発生する。
同様に時点t44で比較器出力CMP2がLOWレベルに切り替わり、時点t46で比較器出力CMP1がLOWレベルに切り替わる場合には、時点t44で比較器出力CMP2がLOWレベルに切り替わるタイミングから、遅延素子66aの遅延時間Δd4が経過する時点t45までの間、すなわち、図10中にハッチングで示す期間は、パルス幅変調信号PGが変化することが防止される。
【0086】
そのため、パルス幅変調信号PGとNGとの間の立ち下がりエッジおよび立ちエッジ間に遅延時間Δd4相当のエッジ差を確保することができる。
つまり、図9および図10に示すように、パルス幅変調信号PGに対して、パルス幅変調信号NGの立ち上がりおよび立ち下がりエッジが進んでいる場合、比較器出力CMP1がHIGHレベルに切り替わるタイミングで、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xの出力が所定の遅延時間だけ遅延され、立ち上がりエッジ調整信号PG_Xに対して図9および図10中に示すように、遅延時間の間、その変化が防止され、これに伴い、パルス幅変調信号PGの変化も防止され所定の遅延時間が経過した時点でパルス幅変調信号PGが立ち上がる。同様に、比較器出力CMP1がLOWレベルに切り替わるタイミングで、パルス幅変調信号PGの変化が防止され、所定の遅延時間が経過した時点でパルス幅変調信号PGがLOWレベルに切り替わる。
【0087】
そして、比較器出力CMP1、CMP2の立ち上がりエッジの差および立ち下がりエッジの差が、所定の遅延時間よりも短い場合には、図9に示すように、パルス幅変調信号PGの立ち上がりおよび立ち下がりを強制的に遅らせているため、十分なパルス幅を有する差分パルスを発生させることができる。逆に、立ち上がりエッジの差および立ち下がりのエッジの差が所定の遅延時間よりも長い場合には、パルス幅変調信号PGの立ち上がりおよび立ち下がりを遅らせたとしても、比較器出力CMP1とCMP2とのエッジ差が遅延時間よりも長いため、比較器出力CMP1の切り替わりタイミングが遅延されたパルス幅変調信号PGが生成されることはなく、すなわち、パルス幅変調信号PGに影響を与えることはない。
【0088】
以上説明したように、本実施形態では、比較器出力CMP1およびCMP2のうち、後から切り替わる方の比較器出力の切り替わりタイミングで変化するパルス幅変調信号PGまたはNGについて、そのエッジの切り替わりを、先に切り替わった比較器出力のエッジのタイミングから所定の遅延時間相当の間禁止し、遅延時間経過後に切り替える構成とした。
【0089】
そのため、先に切り替わった比較器出力に応じた切り替わりタイミングで変化するパルス幅変調信号と、後から切り替わる比較器出力に応じた切り替わりタイミングで変化するパルス幅変調信号との間に、遅延時間相当のエッジ差を確保することができる。そのため、パルス幅変調信号PGとNGとの間に、遅延時間相当のパルス幅を有する、差分パルスを生成することができる。その結果、立ち上がりおよび立ち下がりエッジのタイミングで差動パルスを定期的に発生させることができる。
【0090】
また、比較器出力CMP1およびCMP2のエッジのタイミングが同一である場合には、遅延素子52および56によって、パルス幅変調信号PGを優先し、パルス幅変調信号PGの方がパルス幅変調信号NGよりも先に切り替わるように、パルス幅変調信号NGの切り替わりタイミングを調整するようにしたため、比較器出力CMP1とCMP2とで切り替わりタイミングが一致する場合であっても、確実に差動パルスを発生させることができる。
【0091】
その結果、差動パルスが定期的に発生しないことに起因して、ノイズスぺクトルが発生することを防止することができる。
また、このとき、一方のパルス幅変調信号を遅延させたとしても、この遅延により生じる差動パルスのパルス幅は最大でも所定の遅延時間相当である。ここで、差動パルスのパルス幅に応じた電流を負荷L1に流すことになるが、差動パルスのパルス幅は最大でも遅延時間相当であるため、強制的に発生された差動パルスにより負荷に供給される電流を増大させることがないため、電力効率の低下を回避することができる。
【0092】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0093】
1 駆動装置
11 三角波発生器
12、13 比較器
14 エッジ検出・遅延挿入回路
15、16 ゲードドライブ回路
17、18 ハーフブリッジ増幅器
51 NAND回路
52 遅延素子
53 PG立ち上がり検出部
53a 遅延素子
53b NAND回路
54 インバータ
55 NOR回路
56 遅延素子
57 PG立ち下がり検出部
57a 遅延素子
57b NAND回路
58 インバータ
61 NAND回路
62 NG立ち上がり検出部
62a 遅延素子
62b NAND回路
63 インバータ
64 NOR回路
65 インバータ
66 NG立ち下がり検出部
66a 遅延素子
66b NAND回路
67 インバータ
CMP1 比較器出力
CMP2 比較器出力
EDGE_NN 立ち上がりマスク信号
EDGE_NP 立ち上がりマスク信号
EDGE_PN 立ち下がりマスク信号
EDGE_PP 立ち下がりマスク信号
L1 負荷
POS,NEG レベル信号
PG,NG パルス幅変調信号
PG_X,NG_X 立ち上がりエッジ調整信号
Δd1,Δd2,Δd3,Δd4 遅延時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13