(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656264
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】単結晶シリコンの生産方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20141225BHJP
C30B 15/10 20060101ALI20141225BHJP
C30B 15/22 20060101ALI20141225BHJP
C03B 20/00 20060101ALN20141225BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
C30B15/10
C30B29/06 502J
C30B15/22
!C03B20/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-290480(P2011-290480)
(22)【出願日】2011年12月30日
(65)【公開番号】特開2013-139361(P2013-139361A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2013年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100139240
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 江梨子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 剛司
【審査官】
伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−275151(JP,A)
【文献】
特開2007−269533(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/104532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
C03B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンの生産方法であって、
シリカガラスルツボに多結晶シリコンを投入する工程と、
前記多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を得る工程と、
前記シリコン融液から単結晶シリコンを引き上げる工程と、
を含み、
前記シリカガラスルツボが、
側壁部と、
底部と、
前記側壁部および前記底部を連接するラウンド部と、
を備え、
前記シリカガラスルツボの回転軸を通る断面において、前記ラウンド部の内表面の曲率が側壁部から底部の方向に向かって徐々に大きくなるように設けられている、
シリカガラスルツボである、
生産方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生産方法において、
前記単結晶シリコンを引き上げる工程が、
前記側壁部および前記ラウンド部の境目に前記液面が到達する時点の近辺から、前記単結晶シリコンを引き上げる速度を緩める工程を含む、
生産方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生産方法において、
前記シリカガラスルツボの回転軸を通る断面において、前記ラウンド部の内表面が緩和曲線を構成する、
生産方法。
【請求項4】
請求項3に記載の生産方法において、
前記緩和曲線が、クロソイド曲線、3次曲線及びサイン半波長逓減曲線からなる郡から選ばれる1種以上の曲線である、
生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコンの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡単な構造で直胴部上端の内側への倒れ込みを防止することができるシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの開発が精力的に行われている。この種の技術として、例えば、特許文献1には、直胴部外周であって、初期メルトラインより上方に周状の溝を設けたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボが記載されている。この溝は、カーボンサセプターの上端より下方となるような位置に設ける。
【0003】
また、特許文献2には、
図4に示すように、ルツボ湾曲部11の内壁面の曲率R1を100〜240mmとすることにより液面低下時の急激な液面面積の変化を抑制し、さらに、ルツボ湾曲部11の肉厚Wの変化量を0.1mm/cm〜1.2mm/cm、好ましくは、0.2mm/cm〜0.5mm/cmとすることによりルツボ湾曲部11の熱分布を均一にすることが記載されている。この特許文献2には、これらの方法により、シリコンの多結晶化をおさえ、単結晶収率を高めることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−273788号公報
【特許文献2】特開2007−269533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0006】
第一に、特許文献1に記載のシリカガラスルツボでは、シリカガラスルツボを保持するためのサセプターをユーザが独自に用意したり、シリカガラスルツボに投入する多結晶シリコンの量をユーザが独自に決めたりする場合には、初期メルトラインより上方であり、かつカーボンサセプターの上端より下方となるような位置に周状の溝をあらかじめ設けることができない場合があり得る。
【0007】
第二に、特許文献2に記載のシリカガラスルツボでは、ルツボ断面の内表面が複合曲線を形成しているため、直胴部17および湾曲部11の接続部分で内表面の曲率が大きく変化しており、液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性がある。また、湾曲部11および底部13の接続部分においても内表面の曲率が大きく変化しており、液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性がある。その結果、これらの接続部分で液面面積の急激な変化に起因してシリコン融液の液面に波が生じることによってシリコン単結晶に転移が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シリコン単結晶に転移が発生することを抑制し、単結晶収率を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、単結晶シリコンの生産方法であって、シリカガラスルツボに多結晶シリコンを投入する工程と、その多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を得る工程と、そのシリコン融液から単結晶シリコンを引き上げる工程と、を含む、生産方法が提供される。そして、この生産方法で用いられる上記のシリカガラスルツボは、側壁部と、底部と、その側壁部およびその底部を連接するラウンド部と、を備える。このシリカガラスルツボでは、そのシリカガラスルツボの回転軸を通る断面において、そのラウンド部の内表面の曲率が側壁部から底部の方向に向かって徐々に大きくなるように設けられている。
【0010】
この生産方法によれば、ラウンド部の内表面の曲率が側壁部から底部の方向に向かって徐々に大きくなるように設けられているため、単結晶シリコンの引き上げにおいてシリコン融液の液面が低下してきたときに、ラウンド部で内表面の曲率が大きく変化することがないので、シリコン融液からラウンド部にかかる圧力の変動が緩和される。そのため、この生産方法によれば、これらの接続部分で液面面積の急激な変化に起因してシリコン融液の液面に波が生じる可能性が低いため、シリコン単結晶に転移が発生しにくい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリコン単結晶に転移が発生することを抑制し、単結晶収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のシリカガラスルツボの全体構成について説明するための断面図である。
【
図2】従来のシリカガラスルツボの内表面形状を実測した上でその内表面形状の形成する曲率の変化率をビジュアル化した断面図である。
【
図3】実施形態に係るシリカガラスルツボのラウンド部の内表面の形成する緩和曲線について説明するための断面図である。
【
図4】従来公知のシリカガラスルツボの内表面の形成する複合曲線について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
<シリカガラスルツボ>
図1は、シリカガラスルツボの構成の概要について説明するための断面図である。本実施形態のシリカガラスルツボ112は、内表面側に透明層111と、外表面側に気泡含有層114を有するものである。このシリカガラスルツボ112は、チョクラルスキー法(CZ法)などによって単結晶シリコンの引上げに用いられる際には、開口部が上向きになるようにサセプター(不図示)上に載置されている。
【0015】
このシリカガラスルツボ112は、そのシリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、内表面が緩和曲線を形成するラウンド部(別名、コーナー部ともいう)117と、上面に開口した縁部を有する円筒状の側壁部115と、直線または曲率が比較的小さい曲線からなるすり鉢状の底部116を有する。本実施形態において、ラウンド部117とは、側壁部115と底部116を連接する部分であり、ラウンド部117の曲線の接線がシリカガラスルツボ112の側壁部115と重なる点から、底部116と共通接線を有する点までの部分のことを意味する。
【0016】
このシリカガラスルツボ112を用いて単結晶シリコンの生産方法を実行する場合には、シリカガラスルツボに多結晶シリコンを投入する工程と、その多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を得る工程と、そのシリコン融液から単結晶シリコンを引き上げる工程とを順に行うことになる。
【0017】
そして、このシリカガラスルツボ112を用いている場合には、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、側壁部115の内表面および底部116の内表面が、ラウンド部117の内表面が形成する緩和曲線によって折点なく連接されている。そのため、シリコン融液から単結晶シリコンを引き上げる工程において、シリコン融液の液面が低下してきたときに、ラウンド部117近辺でシリコン融液からラウンド部117にかかる圧力の変動が緩和される。そのため、この生産方法によれば、これらの接続部分で液面面積の急激な変化に起因してシリコン融液の液面に波が生じる可能性が低いため、シリコン単結晶に転移が発生しにくい。
【0018】
なお、このとき、上記の単結晶シリコンを引き上げる工程が、側壁部115およびラウンド部117の接続部に液面が到達する時点の近辺から、単結晶シリコンを引き上げる速度を緩める工程を含むことが好ましい。このようにすれば、シリコン融液から単結晶シリコンを引き上げる工程において、シリコン融液の液面が低下してきたときに、側壁部115の内表面およびラウンド部117の内表面の接続部分において液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性がさらに低くなる。その結果、この接続部分で液面面積の急激な変化に起因してシリコン融液の液面に波が生じる可能性がさらに低くなるため、シリコン単結晶に転移が一層発生しにくくなる。
【0019】
このように、このシリカガラスルツボ112では、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、ラウンド部117の内表面の曲率が側壁部115から底部116の方向に向かって徐々に大きくなる(連続的又は断続的に大きくなる)ように設けられている。そのため、単結晶シリコンの引き上げにおいてシリコン融液の液面が低下してきたときに、ラウンド部117近辺で内表面の曲率が大きく変化することがないので、シリコン融液からラウンド部117近辺にかかる圧力の変動が緩和される。その結果、この生産方法によれば、ラウンド部117近辺で液面面積の急激な変化に起因してシリコン融液の液面に波が生じる可能性が低いため、シリコン単結晶に転移が発生しにくい。
【0020】
図2は、従来のシリカガラスルツボの内表面形状を実測した上でその内表面形状の形成する曲率の変化率をビジュアル化した断面図である。このように、本発明者は、上記の実施形態のシリカガラスルツボを開発する過程で、従来のシリカガラスルツボの内表面の3次元形状を正確に実測した。そして、本発明者は、得られた3次元形状の実測値を用いて、シリカガラスルツボの回転軸を通る断面において、内表面の曲線の曲率がどのように変化するかを解析した。その結果、本発明者は、従来のシリカガラスルツボの内表面では、ラウンド部117において曲率の急激な変化が起こっていることに気づいた。この曲率の急激な変化は、従来のシリカガラスルツボのラウンド部の設計図が複合曲線を用いていることが原因であると想定される。さらに、この曲率の急激な変化は、従来のシリカガラスルツボの製造プロセスにおいては、アーク溶融時にラウンド部にシリカガラスが垂れてきて設計通りのラウンド部の形状が得られていないことも原因であると想定される。
【0021】
従来は、シリカガラスルツボの業界では、特許文献2に示すように、ラウンド部の内表面は単一の曲率の曲線で構成することが技術常識であった。すなわち、本発明者は、従来のシリカガラスルツボでは、ラウンド部の内表面が単一の曲率の曲線で構成されていることがシリコン単結晶に転移が発生することの原因であることに気づいて、本実施形態のシリカガラスルツボを設計したのである。
【0022】
なお、ラウンド部117の内表面は、実際には微細な凸凹や小さな歪みなどが存在する場合が多いが、そのような微細な凸凹や小さな歪みなどによる局地的な曲率の急激な変化は基本的に無視して捉えることが好ましい。すなわち、ラウンド部117の内表面は、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、曲線長方向において10mm毎の移動平均によって平滑化された移動平均線で捉えることが好ましい。こうすれば、微細な凸凹や小さな歪みなどによる局地的な曲率の急激な変化は無視して捉えることができるので、ラウンド部117の内表面の曲率が側壁部115から底部116の方向に向かって徐々に大きくなることを大局的に確認することができる。なお、この移動平均を取る間隔は10mm間隔に限定するわけではなく、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mmのいずれの間隔であってもよい。
【0023】
また、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、側壁部115およびラウンド部117の内表面の境目における曲率のずれが1/300mm以下であることが好ましい。この側壁部115およびラウンド部117の内表面の境目における曲率のずれが小さいほど、その境目近傍で液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性を低減できる。その結果、この境目近傍に液面が低下してきたときにシリコン単結晶に転移が発生することを抑制できる。なお、この曲率のずれは、1/300mm、1/400mm、1/500mm、1/600mm、1/700mm、1/800mm、1/900mm、1/1000mm、1/2000mm、1/3000mm、1/4000mm、1/5000mm、1/6000mm、1/7000mm、1/8000mm、1/9000mm、1/10000mmのいずれの値以下であってもよく、これらのうちの任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0024】
また、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、ラウンド部117および底部115の内表面の境目における曲率のずれが1/300mm以下であることが好ましい。このラウンド部117および底部115の内表面の境目における曲率のずれが小さいほど、その境目近傍で液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性を低減できる。その結果、この境目近傍に液面が低下してきたときにシリコン単結晶に転移が発生することを抑制できる。なお、この曲率のずれは、1/300mm、1/400mm、1/500mm、1/600mm、1/700mm、1/800mm、1/900mm、1/1000mm、1/2000mm、1/3000mm、1/4000mm、1/5000mm、1/6000mm、1/7000mm、1/8000mm、1/9000mm、1/10000mmのいずれの値以下であってもよく、これらのうちの任意の2つの値の範囲内であってもよい。
【0025】
このラウンド部117の緩和曲線は、特に限定するものではないが、例えば、クロソイド曲線、3次曲線及びサイン半波長逓減曲線からなる郡から選ばれる1種以上の曲線であることが好ましい。これら3種類の緩和曲線は下記の表1のとおりの特性を有する。
【0027】
図3は、実施形態に係るシリカガラスルツボのラウンド部の内表面の形成する緩和曲線について説明するための断面図である。この図に示すように、直線状(R=∞)の側壁部15および円弧曲線状(R=250mm)の底部の内表面が、ラウンド部117の内表面が形成する緩和曲線(曲率半径が、R=∞、R=1000mm、R=500mm、R=333mm、R=250mmと連続的に変化している)によって折点なく連接されている。
【0028】
そのため、単結晶シリコンの引き上げにおいて、シリコン融液の液面が低下してきたときに、ラウンド部117近辺で液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性を低減できる。そのため、この生産方法によれば、ラウンド部117近辺に液面が低下してきたときにシリコン単結晶に転移が発生することを抑制できる。
【0029】
なお、本実施形態に係るシリカガラスルツにおいて、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、ラウンド部117の内表面は、数学的な意味で完全な緩和曲線となっている必要はない。なぜなら、実際には、CADシステムなどを用いて、側壁部115の内表面および底部116の内表面が、ラウンド部117の内表面が形成する緩和曲線によって折点なく連接されている構造のシリカガラスルツボ112を設計し、そのCADデータを用いてシリカガラスルツボを製造するためのカーボンモールドのCADデータを設計する。そして、そのCADデータをもとにカーボンモールドを製造するわけだが、その際に若干の製造誤差が発生する。そして、さらにそのカーボンモールドを用いてシリカガラスルツボ112を製造するわけだが、やはりその際にも若干の製造誤差が発生する。そのため、実際に製造されたシリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、ラウンド部117の内表面は、数学的な意味で完全な緩和曲線となる場合は少なく、多くの場合にはCADデータとは若干異なる形状になっている。
【0030】
本実施形態に係るシリカガラスルツにおいて、その最大誤差は、CADデータの理想的な形状にくらべてプラスマイナス1mm以下の幅に収まっていればよいものとする。また、その最大誤差は、0.01mm、0.02mm、0.03mm、0.04mm、0.05mm、0.06mm、0.07mm、0.08mm、0.09mm、0.10mm、0.20mm、0.30mm、0.40mm、0.50mm、0.60mm、0.70mm、0.80mm、0.90mm、1.00mm、2.00mm、3.00mm、4.00mm、5.00mm、6.00mm、7.00mm、8.00mm、9.00mm、10.00mm、11.00mmのうちの任意の値以下又はこれらのうち2つの値の範囲内であってもよい。その最大誤差の範囲がこれらの条件を満たす場合には、直線状の側壁部115および円弧曲線状の底部116の内表面を力学的に無理のない構造で折点なくうまく連接することができ、かつシリカガラスルツボ112をシリコン融液の液面がラウンド部117のあたりまで下がってきた場合に、ラウンド部117近辺で液面低下時の急激な液面面積の変化が起こる可能性を低減できるため好ましい。
【0031】
また、シリカガラスルツボ12の回転軸を通る断面において、側壁部115の外表面および底部116の外表面が、ラウンド部117の外表面が形成する緩和曲線によって折点なく連接されていることが好ましい。なぜなら、カーボンモールドのCADデータは、シリカガラスルツボ12の外表面のCADデータにフィットするように設計される。そのため、カーボンモールドのCADデータに基づいて製造されるカーボンモールドのラウンド部の内表面が緩和曲線に近似した曲線になるようにするには、シリカガラスルツボ12のラウンド部117の外表面のCADデータが緩和曲線を形成することが好ましいからである。そして、カーボンモールドのラウンド部の内表面が緩和曲線に近似した曲線になれば、そのカーボンモールドの内表面に天然石英粉および合成シリカ粉を積層してアーク溶融して得られるシリカガラスルツボのラウンド部117の内表面も緩和曲線に近似した曲線になるためである。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0033】
例えば、上記の実施形態では、シリカガラスルツボ112の回転軸を通る断面において、ラウンド部117の内表面の曲率が側壁部115から底部116の方向に向かって徐々に大きくなる曲線として、緩和曲線について説明したが、特に緩和曲線に限定する趣旨ではない。例えば、ラウンド部117の内表面の形成する曲線は、複数の曲率の曲線が連接した複合曲線であってもよい。このような場合にも、ラウンド部117の内表面の曲率が側壁部115から底部116の方向に向かって断続的に大きくなるため、上記の実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、このような複合曲線を採用する場合には、ラウンド部117の内表面の形成する曲線は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100のいずれの数以上の異なる曲率を有する曲線が連接した複合曲線であってもよく、これらの数のうち任意の2つの数の範囲内の異なる曲率を有する曲線が連接した複合曲線であってもよい。なお、いずれの場合においても、多くの異なる曲率を有する曲線が連接している場合ほど、曲率が徐々に大きくなるために好ましい。
【符号の説明】
【0034】
10 石英ガラスルツボ
11 湾曲部
12 直胴部
13 底部
R1 湾曲部の内面曲率
R2 底部の内面曲率
M1 湾曲部の曲率の中心点
M2 底部の曲率の中心点
W 湾曲部の肉厚
111 透明層
112 シリカガラスルツボ
114 気泡含有層
115 側壁部
116 底部
117 ラウンド部