特許第5656844号(P5656844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5656844ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子、塗料組成物、及び、塗装物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5656844
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子、塗料組成物、及び、塗装物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20141225BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20141225BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCES
   C08L23/04
   C08L23/12
   C08L29/04 Z
   C08L33/02
   C08L33/08
   C08L33/12
   C08L71/02
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D5/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-529934(P2011-529934)
(86)(22)【出願日】2010年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2010065015
(87)【国際公開番号】WO2011027818
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-204583(P2009-204583)
(32)【優先日】2009年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船引 裕平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博史
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−045295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08L 23/04
C08L 23/12
C08L 29/04
C08L 33/02
C08L 33/08
C08L 33/12
C08L 71/02
C09D 5/00
C09D 7/12
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100質量部と、水40〜1500質量部と、重量平均分子量4000〜30000のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体3〜30質量部とを混合し、前記ポリオレフィン系樹脂の最高融点以上の温度で乳化させた後、前記ポリオレフィン系樹脂の最高結晶化温度よりも少なくとも25℃高い温度から、前記ポリオレフィン系樹脂の最低結晶化温度よりも少なくとも25℃低い温度まで、0.2℃/min以上の速度で冷却することにより得られる球状粒子であって、
前記ポリオレフィン系樹脂は、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物と、その他のポリオレフィン系樹脂とを含有し、かつ、前記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物を5〜70質量%含有する複合樹脂である
ことを特徴とするポリオレフィン系複合樹脂球状粒子。
【請求項2】
その他のポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、及び、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子。
【請求項3】
エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物は、酢酸ビニルに由来するセグメントの含有割合が0.5〜20質量%であり、かつ、酢酸ビニルに由来するセグメントのケン化度が30〜98モル%であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項5】
請求項4記載の塗料組成物を基材に塗装してなることを特徴とする塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料に用いることにより、つや消し効果及びソフト感を有し、かつ、耐傷付き性に優れる塗膜を得ることができるポリオレフィン系複合樹脂球状粒子に関する。また、本発明は、該ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂とを含有する塗料組成物、及び、該塗料組成物を基材に塗装してなる塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用品、自動車内装部品、OA機器、建築材料、電気製品等の基材には、つや消し効果や高級感を付与したり、質感を向上させたりする目的で塗料が用いられており、例えば、自動車の内装部品のプラスチック成型品や金属製品等の表面塗装には、ビニル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が使用されている。
塗膜につや消し効果や高級感を付与する方法として、例えば、特許文献1には、ワニス、カラーポリマービーズ、シリカ及び/又はポリエチレンワックスの微粉末を塗料に添加する方法が開示されており、特許文献2には、特定の物性を有するポリオレフィン微粒子を塗料に添加する方法が開示されており、特許文献3には、平均粒子径が300μm以下の球状セルロースを塗料に添加する方法が開示されている。
【0003】
ソフト感を付与して質感を向上させる方法として、例えば、特許文献4には、ラノリン付着ポリウレタン樹脂微粒子を塗料に添加する方法が開示されており、特許文献5には、発泡ポリウレタン樹脂粉末を塗料に添加する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜5に開示されている方法により得られる塗料組成物は、得られる塗膜のつや消し効果及びソフト感が充分に満足できるものではなかった。
これに対して、特許文献6には、ポリオレフィン系樹脂と、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体と、水とを、特定の条件で乳化及び冷却することにより製造されるポリオレフィン系樹脂粒子が開示されている。一方で、近年では更に、擦れ等によって、塗膜表面から粒子が脱落することで、傷付き箇所が白っぽくなり、傷として目立ってしまうという問題が生じていた。このような問題に対して、塗膜表面から粒子が脱落しにくく、傷の発生を抑制することのできる(耐傷付き性に優れるともいう)塗膜に対する要求が高まっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−17164号公報
【特許文献2】特開昭59−187027号公報
【特許文献3】特開平3−162465号公報
【特許文献4】特開2003−212947号公報
【特許文献5】特開昭62−149767号公報
【特許文献6】特開2006−45295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塗料に用いることにより、つや消し効果及びソフト感を有し、かつ、耐傷付き性に優れる塗膜を得ることができるポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、該ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂とを含有する塗料組成物、及び、該塗料組成物を基材に塗装してなる塗装物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
項1. ポリオレフィン系樹脂100質量部と、水40〜1500質量部と、重量平均分子量4000〜30000のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体3〜30質量部とを混合し、前記ポリオレフィン系樹脂の最高融点以上の温度で乳化させた後、前記ポリオレフィン系樹脂の最高結晶化温度よりも少なくとも25℃高い温度から、前記ポリオレフィン系樹脂の最低結晶化温度よりも少なくとも25℃低い温度まで、0.2℃/min以上の速度で冷却することにより得られる球状粒子であって、前記ポリオレフィン系樹脂は、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物と、その他のポリオレフィン系樹脂とを含有し、かつ、前記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物を5〜70質量%含有する複合樹脂であるポリオレフィン系複合樹脂球状粒子、
項2. その他のポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、及び、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する項1記載のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子、
項3. エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物は、酢酸ビニルに由来するセグメントの含有割合が0.5〜20質量%であり、かつ、酢酸ビニルに由来するセグメントのケン化度が30〜98モル%である項1又は2記載のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子、
項4. 項1、2又は3記載のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂を含有する塗料組成物、
項5. 項4記載の塗料組成物を基材に塗装してなる塗装物、
に関する。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物を特定量含有するポリオレフィン系の複合樹脂と水とエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体とを混合し、特定の条件で乳化及び冷却することにより得られるポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を含有する塗料組成物を用いた場合、つや消し効果及びソフト感を有し、かつ、耐傷付き性に優れる塗膜を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子は、後述するポリオレフィン系樹脂、水、及び、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の所定量を分散槽中で混合し、該ポリオレフィン系樹脂の最高融点以上の温度において攪拌して乳化させ、更に、後述する方法で冷却することにより得られる。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂は、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物を5〜70質量%含有する複合樹脂である。
上記ポリオレフィン系樹脂中における上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が5質量%未満であると、得られる塗膜が耐傷付き性の低いものとなる。上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が70質量%を超えると、粒子自身の耐溶剤性が低下し、傷付き易くなる。上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量の好ましい下限は7質量%、好ましい上限は65質量%であり、より好ましい下限は10質量%、より好ましい上限は60質量%である。
【0011】
上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物における、酢酸ビニルに由来するセグメントの含有割合は特に限定されないが、好ましい下限は0.5質量%、好ましい上限は20質量%である。上記酢酸ビニルに由来するセグメントの含有割合が0.5質量%未満であると、要求する塗膜成分との接着性能が発揮されないことがある。上記酢酸ビニルに由来するセグメントの含有割合が20質量%を超えると、熱安定性が低下することがある。上記酢酸ビニルに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は1質量%、より好ましい上限は18質量%である。
【0012】
上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物における、酢酸ビニルに由来するセグメントのケン化度の好ましい下限は30モル%、好ましい上限は98モル%である。上記ケン化度が30モル%未満であると、得られる塗膜の耐傷付き性が不充分となることがある。上記ケン化度が98モル%を超えても耐傷付き性に対して更なる効果は得られない。上記ケン化度のより好ましい下限は35モル%である。
【0013】
上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物と複合されるその他のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、オレフィンと他のモノマーとの共重合体樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、例えば、オレフィンの単重合体、異なるオレフィンの共重合体、及び、これらの酸変性物等が挙げられる。
上記オレフィンの単重合体は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
上記異なるオレフィンの共重合体は特に限定されず、例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−オクテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン共重合体等が挙げられる。
上記オレフィンの単重合体や上記異なるオレフィンの共重合体の酸変性物は特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
【0014】
上記オレフィンと他のモノマーとの共重合体樹脂を構成するオレフィンは特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
上記他のモノマーは、上記オレフィンと共重合可能なモノマーであれば特に限定されず、例えば、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩、α,β−不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
上記ビニルエステルは特に限定されず、例えば、酢酸ビニル等が挙げられる。
上記α,β−不飽和カルボン酸は特に限定されず、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記α,β−不飽和カルボン酸無水物は特に限定されず、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記α,β−不飽和カルボン酸の金属塩は特に限定されず、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩やマグネシウム塩等が挙げられる。
上記α,β−不飽和カルボン酸エステルは特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」、とは「アクリ」又は「メタクリ」を意味する。
【0015】
上記オレフィンと他のモノマーとの共重合体樹脂は、具体例には例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル/無水マレイン酸共重合体、及び、これらの金属塩等が挙げられる。
【0016】
なかでも、上記その他のポリオレフィン系樹脂としては、安価で加工しやすいことから、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸メチル共重合体が好適に用いられる。
【0017】
上記エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物と上記その他のポリオレフィン系樹脂とを複合する方法としては、樹脂溶融状態で練りこみができればよく、例えば、二軸ロール、単軸押出機、二軸押出機等を用いる公知の方法が挙げられる。なかでも、より均一に樹脂を複合させることができることから、二軸押出機が好適に用いられる。
【0018】
上記水は、分散媒としての役割を有する。上記水の配合量は、上記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、下限が40質量部、上限が1500質量部である。上記水の配合量が40質量部未満であると、上記ポリオレフィン系樹脂を乳化させることが困難となる。上記水の配合量が1500質量部を超えると、容積効率が悪化し、生産性が低下する。上記水の配合量の好ましい下限は75質量部、好ましい上限は500質量部である。
【0019】
上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は、主として乳化のための界面活性剤としての役割を有する。
上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の重量平均分子量の下限は4000、上限は30000である。上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の重量平均分子量が4000未満であると、上記ポリオレフィン系樹脂を乳化させることが困難となる。上記重量平均分子量が30000を超えるエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体は入手が困難であり、実用的ではない。上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の重量平均分子量の好ましい下限は6000、好ましい上限は20000であり、より好ましい下限は8000、より好ましい上限は16000である。
なお、本明細書において、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、TSK GEL HHR(東ソー社製)等が挙げられる。
【0020】
上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の配合量は、上記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、下限が3質量部、上限が30質量部である。上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の配合量が3質量部未満であると、上記ポリオレフィン系樹脂を乳化させることが困難となる。上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の配合量が30質量部を超えても、配合量に見合うだけの効果は得られず効率的でない。上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体の配合量の好ましい下限は5質量部、好ましい上限は20質量部である。
【0021】
上記エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体中のエチレンオキシドに由来するセグメントの含有割合は特に限定されないが、好ましい下限は40質量%、好ましい上限は95質量%である。上記エチレンオキシドに由来するセグメントの含有割合が40質量%未満又は95質量%を超える場合、上記ポリオレフィン系樹脂を乳化させることが困難となることがある。上記エチレンオキシドに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は45質量%、より好ましい上限は90質量%である。
【0022】
上記分散槽は、上記ポリオレフィン系樹脂の最高融点以上の温度にまで加熱できる適当な加熱手段と、内容物に充分な剪断力を与えることのできる撹拌手段とを備えた耐圧容器であればよく、例えば、撹拌機付き耐圧オートクレーブや耐圧ホモジナイザ、二軸押出機等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂は、上記分散槽中で最高融点以上に加熱されて溶融し、攪拌による剪断力を受けて真球状に微粒子化される。
上記ポリオレフィン系樹脂の最高融点とは、示差熱分析計にて融点として1又は2以上示される吸熱ピーク値のより高い値を示す温度のことを言う。
【0023】
上記ポリオレフィン系樹脂を乳化させた後、冷却することにより、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の水分散液が得られる。上記冷却の際、上記ポリオレフィン系樹脂の最高結晶化温度よりも少なくとも25℃高い温度から、上記ポリオレフィン系樹脂の最低結晶化温度よりも少なくとも25℃低い温度までの範囲を0.2℃/分以上の速度で冷却することにより、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の凝集を抑制することができる。得られたポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の水分散液を、ろ過、洗浄、乾燥することにより真球状のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を得ることができる。また、用途によっては、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の水分散液のままで使用することも可能である。
上記ポリオレフィン系樹脂の最高結晶化温度とは、示差熱分析計にて結晶化温度として1又は2以上示される発熱ピーク値のより高い値を示す温度のことを言い、上記ポリオレフィン系樹脂の最低結晶化温度とは、示差熱分析計にて結晶化温度として1又は2以上示される発熱ピーク値のより低い値を示す温度のことを言う。
【0024】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の体積平均粒子径の好ましい下限は3μm、好ましい上限は50μmである。上記体積平均粒子径が3μm未満であると、得られる塗膜中にポリオレフィン系複合樹脂球状粒子が埋没しやすくなり、つや消し効果及びソフト感が発現しないことがある。上記体積平均粒子径が50μmを超えると、得られる塗膜の表面が粗くなり、塗膜の外観や触感が悪くなることがある。上記体積平均粒子径のより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は30μmである。
なお、本明細書における体積平均粒子径とは、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、コールターマルチサイザー)にて測定された体積平均粒子径である。
【0025】
本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂とを含有する塗料組成物もまた、本発明の1つである。
本発明の塗料組成物は、本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を含有することにより、つや消し効果、ソフト感を付与するとともに、耐傷付き性にも優れた塗膜を形成することができる。
【0026】
本発明の塗料組成物中における本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の配合量は特に限定されないが、塗料組成物中の塗料樹脂100質量部に対して、好ましい下限は1質量部、好ましい上限は50質量部である。本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の配合量が1質量部未満であると、得られる塗膜の表面に露出するポリオレフィン系複合樹脂球状粒子が少なくなり、つや消し効果及びソフト感の付与が不充分となることがある。本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の配合量が50質量部を超えると、得られる塗膜の外観や触感が悪くなるとともに、塗膜強度が低下することがある。本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の配合量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は30質量部である。
【0027】
上記塗料樹脂は特に限定されず、一般に使用されているものを用いることができる。具体的には例えば、セルロース系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。これらの塗料樹脂の中でも、得られる塗膜のソフト感が向上するため、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂が好適に用いられる。これらの塗料樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の塗料組成物中における上記塗料樹脂の濃度は特に限定されないが、得られる塗料組成物の粘度や、得られる塗膜の厚さの観点から、好ましい下限は5質量%、好ましい上限は99質量%である。上記塗料樹脂の濃度が5質量%未満であると、得られる塗料組成物の粘度が低下し、基材に塗装する際に液ダレ、ハジキ等が発生することがある。上記塗料樹脂の濃度のより好ましい下限は10質量%である。
【0029】
本発明の塗料組成物は、様々な形態の塗料に適用することができる。具体的には例えば、アクリルラッカーやニトロセルロースラッカーのような溶剤が蒸発して塗膜を形成する揮発乾燥型塗料;アクリルエマルジョン塗料(水性、溶剤性)のような溶剤が蒸発する際に樹脂粒子が凝集、融着する融合乾燥型塗料;湿気硬化型ウレタン樹脂塗料やアクリルシリコーン樹脂塗料のような空気中に存在する水分と反応しながら硬化する湿気硬化型塗料;二液型ウレタン塗料やニ液型エポキシ塗料のような主剤と硬化剤が反応して塗膜を形成する重合乾燥型塗料;熱硬化性ウレタン樹脂塗料;熱硬化アクリル樹脂塗料;粉体塗料;電着塗料のような加熱による溶剤の揮発や樹脂の反応により硬化する高温反応硬化型塗料;モノマー、オリゴマー、紫外線開始剤を含んだアクリル化合物を紫外線硬化させる紫外線硬化型塗料等が挙げられる。
【0030】
本発明の塗料組成物は、塗装時の作業性の観点から、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤は特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられる。また、上記融合乾燥型塗料に適用する場合、分散媒としては、水及び/又は水溶性有機溶剤等が挙げられる。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水溶性アルコール類や、グリコール類や、グリコールエーテル類等が挙げられる。
【0031】
本発明の塗料組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等からなる樹脂粒子、シリカ、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機粒子、顔料、染料、レベリング剤、濡れ剤、高分子分散剤、増粘剤等を添加させてもよい。
【0032】
本発明の塗料組成物を基材に塗装してなる塗装物もまた、本発明の1つである。
【0033】
上記基材は特に限定されず、例えば、金属、木材、紙、フィルム製品、プラスチック成型品、エラストマー等が挙げられる。
上記金属は特に限定されず、例えば、ステンレス、アルミ、銅、真鍮等が挙げられる。
上記フィルム製品及び上記プラスチック成型品は特に限定されず、例えば、全芳香族ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、セルロース、ポロエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、不飽和ポリエステルからなるもの等が挙げられる。
上記エラストマーは特に限定されず、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等の熱加硫ゴムや、オレフィン系、スチレン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の熱可塑性のエラストマー等が挙げられる。
【0034】
本発明の塗料組成物を上記基材に塗装する方法は特に限定されず、例えば、はけ塗り、ローラー塗工、スプレー塗工等が挙げられる。更に、塗装効率を向上させる目的で、静電スプレー塗工、カーテン塗工、ロールコーター塗工、浸漬塗工等を用いることもできる。
【0035】
本発明の塗装物の塗装膜厚としては、本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子が塗膜の表面に露出すればよいが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmであり、より好ましい上限は50μmである。上記塗装膜厚は、公知の塗装方法により、上記好ましい範囲内とすることができる。
【0036】
本発明の塗料組成物により本発明の塗装物に得られる塗膜が、つや消し効果及びソフト感を有し、かつ、耐傷付き性に優れている理由は明らかではないが、以下の理由に基づくものと推測される。
すなわち、塗料樹脂にエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物とその他のポリオレフィン系樹脂を複合したポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を配合することでソフト感が発現し、更に、表面に凹凸を有する塗膜が形成されることで適度なざらつき感が発現するものと考えられる。また、形成した塗膜表面に向かって照射された光の一部が塗膜表面で乱反射することにより、光沢が抑制され、つや消し効果が得られるものと考えられる。更に、エチレン/酢酸ビニル共重合体の部分ケン化されたヒドロキシル基部が塗膜成分となじむことでポリオレフィン系複合樹脂球状粒子が塗膜と結着し脱離し難くなり、耐傷付き性が向上できるものと考えられる。
【0037】
一方で、本発明のポリオレフィン系複合樹脂球状粒子に代えて、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物からなる球状粒子と、その他のポリオレフィン系樹脂からなる球状粒子とを、それぞれを所定の割合でブレンドした粒子混合物を塗料組成物に添加し、塗膜を形成させた場合、つや消し効果及びソフト感は示すものの、耐傷付き性には劣るものとなる。これは、ポリオレフィン系樹脂の複合が進んでいないことにより、塗膜との密着性が改質できていないことによるものと考えられる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、塗料に用いることにより、つや消し効果及びソフト感を有し、かつ、耐傷付き性に優れる塗膜を得ることができるポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を提供することができる。また、本発明によれば、該ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂とを含有する塗料組成物、及び、該塗料組成物を基材に塗装してなる塗装物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0040】
(アクリル樹脂塗料の調製)
アクリル樹脂塗料(武蔵塗料社製、「プラエース」)100質量部と、合成樹脂シンナー(武蔵塗料社製、「プラエースシンナー」)40質量部とを混合し、アクリル系塗料樹脂を25質量%含有するアクリル樹脂塗料を調製した。
【0041】
(アクリルウレタン樹脂塗料の調製)
アクリルウレタン樹脂塗料(DIC社製、「アクリディックA−801P」)100質量部と、酢酸ブチル28質量部と、トルエン72質量部とを混合し、アクリルウレタン系塗料樹脂を25質量%含有するアクリルウレタン樹脂塗料を調製した。
【0042】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの調製)
ポリエチレン(住友化学社製、「スミカセンG−807」、樹脂融点105℃、結晶化温度90℃)とエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物(東ソー社製、「メルセンH6822X」、酢酸ビニルに由来するセグメントの含有量5.5質量%、ケン化度80モル%、樹脂融点100℃、結晶化温度86℃)とを、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が30質量%となるようにブレンドした樹脂について、二軸押出機(テクノベル社製、「KZW−15TW」)を用いて溶融混練を行い、複合樹脂を作製した。
直径50mmのタービン型撹拌羽根2枚を備えた内径94mm、高さ230mmの内容積1.6リットルの耐圧オートクレーブに、得られた複合樹脂0.16kg、水0.216kg、及び、重量平均分子量15500のエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(ADEKA社製、「プルロニックF108」、エチレンオキシド含有割合80質量%)0.024kgを仕込み密閉した。引き続き、オートクレーブ外部より加熱を行い、オートクレーブ内部の温度を樹脂融点以上の160℃まで昇温し、タービン型撹拌羽根を用い、200rpmで30分間撹拌して樹脂を乳化させた。次いで、内温が120℃から60℃となる範囲の冷却速度を0.4℃/分となるように調整して冷却した。得られたポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の水分散液を、ろ過、乾燥してポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aを得た。
【0043】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Bの調製)
複合樹脂におけるエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量を10質量%となるようにしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Bを得た。
【0044】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Cの調製)
複合樹脂におけるエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量を5質量%となるようにしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Cを得た。
【0045】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Dの調製)
複合樹脂におけるエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量を70質量%となるようにしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Dを得た。
【0046】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Eの調製)
ポリエチレン(住友化学社製、「スミカセンG−807」)とエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物(東ソー社製、「メルセンH6410M」、酢酸ビニル含有量17.5質量%、ケン化度36.4モル%、樹脂融点75℃、結晶化温度71℃)とを、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が30質量%となるようにブレンドしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、複合樹脂を得た。得られた複合樹脂について、冷却速度を調整する温度範囲を120℃〜45℃としたこと以外は、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして微粒子化を行い、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Eを得た。
【0047】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Fの調製)
エチレン/アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン社製、「レクスパールEAA A210M」、樹脂融点100℃、結晶化温度90℃)とエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物(東ソー社製、「メルセンH6822X」、酢酸ビニル含有量5.5質量%、ケン化度80モル%)とを、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が30質量%となるようにブレンドしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、複合樹脂を得た。得られた複合樹脂について、乳化の際のオートクレーブ内部の温度を190℃としたこと以外は、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして微粒子化を行い、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Fを得た。
【0048】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Gの調製)
エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(住友化学社製、「アクリフトWD−301」、樹脂融点100℃、結晶化温度82℃)とエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物(東ソー社製、「メルセンH6822X」、酢酸ビニル含有量5.5質量%、ケン化度80モル%)とを、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が30質量%となるようにブレンドしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、複合樹脂を得た。得られた複合樹脂について、乳化の際のオートクレーブ内部の温度を190℃とし、冷却速度を調整する温度範囲を120℃〜55℃としたこと以外は、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして微粒子化を行い、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Gを得た。
【0049】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Hの調製)
複合樹脂におけるエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が3質量%となるようにしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Hを得た。
【0050】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Iの調製)
複合樹脂におけるエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が75質量%となるようにしたこと以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Iを得た。
【0051】
(ポリオレフィン系複合樹脂粒子Jの調製)
乳化させた後、内温が120℃から60℃となる範囲の冷却速度を0.1℃/分となるように調整して冷却した以外はポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aと同様にして操作を行ったが、得られた水分散液中の粒子は凝集しており、ろ過ができなかったため、固体状の粒子を取得できなかった。
【0052】
(ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子の粒子径及び粒子形状)
得られたポリオレフィン系複合樹脂球状粒子A〜I0.1gを、それぞれ水10gに分散させ、電気検知式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザー」)にて体積平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
また、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−6390LA」)を用いて50〜300倍の倍率で粒子形状を観察したところ、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子A〜Iは全て真球状であった。
【0053】
(実施例1)
調製したアクリル樹脂塗料10gに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aを0.25g添加して混合し、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0054】
(実施例2)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0055】
(実施例3)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0056】
(実施例4)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0057】
(実施例5)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0058】
(実施例6)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0059】
(実施例7)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0060】
(実施例8)
調製したアクリルウレタン樹脂塗料10gに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aを0.25g、及び、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(DIC社製、「バーノックDN980」)を0.5g添加して混合し、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0061】
(実施例9)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Bを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0062】
(実施例10)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Cを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0063】
(実施例11)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Dを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0064】
(実施例12)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Eを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0065】
(実施例13)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Fを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0066】
(実施例14)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Gを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0067】
(比較例1)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径11μmのポリエチレン粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0068】
(比較例2)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径9μmのポリメタクリル酸メチル粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0069】
(比較例3)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径8μmのウレタン粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0070】
(比較例4)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径8μmのポリエチレン粒子と粒子径9μmのエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物粒子とを、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が30質量%となるようにブレンドした粒子混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0071】
(比較例5)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0072】
(比較例6)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂塗料組成物を調製した。
【0073】
(比較例7)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径11μmのポリエチレン粒子を用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0074】
(比較例8)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径9μmのポリメタクリル酸メチル粒子を用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0075】
(比較例9)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径8μmのウレタン粒子を用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0076】
(比較例10)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、粒子径8μmのポリエチレン粒子と粒子径9μmのエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物粒子とをエチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物の含有量が30質量%となるようにブレンドした粒子混合物を用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0077】
(比較例11)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Hを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0078】
(比較例12)
ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Aの代わりに、ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子Iを用いたこと以外は実施例8と同様にして、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を調製した。
【0079】
<評価>
(評価用塗装物の調製)
アクリル板(三菱レイヨン社製、「アクリライト」)を7cm×10cmに切り出し、アセトンを用いて脱脂を行ったものを基材とした。
ベーカー式アプリケーター(日本シーダースサービス社製、「No−B−2」)を用い、実施例及び比較例で得られたアクリル系塗料組成物、並びに、アクリルウレタン系樹脂塗料組成物を、乾燥後の塗膜層が20μmとなるように基材に均一に塗装し、室温(約25℃)で24時間乾燥させ、評価用塗装物を調製した。
得られた評価用塗装物について、以下の評価を行った。結果を表2、3に示す。
【0080】
(1)つや消し効果
得られた評価用塗装物について、ハンディグロスメーター(日本電色工業社製、「PG−1M」)を用いて、JIS Z 8741−1997に準じた方法によって60度光沢度を測定することにより、塗膜のつや消し効果を評価した。
なお、60度光沢度が、30度以下であると、つや消し効果があると判断できる。
【0081】
(2)ソフト感(なめらかさ)
得られた評価用塗装物の塗膜表面を手で触ったときの触感について、良好なソフト感がある場合を「2」、わずかにソフト感がある場合を「1」、ソフト感がない場合を「0」として10人の被験者が判定し、その平均値を求め、塗膜のソフト感を評価した。
【0082】
(3)耐傷付き性
得られた評価用塗装物の塗膜表面を爪の甲で擦り、塗工面の角度を変えても傷付き箇所が判らない場合を「2」、塗工面の角度を変えないと傷付き箇所が判らない場合を「1」、傷付き箇所が白く変色し目立つ場合を「0」として10人の被験者が判定し、その平均値を求め、塗膜の耐傷付き性を評価した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表2、3から、実施例の塗料組成物による塗膜は、つや消し効果、ソフト感を有するだけでなく、耐傷付き性にも優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、塗料に用いることにより、つや消し効果及びソフト感を有し、かつ、耐傷付き性に優れる塗膜を得ることができるポリオレフィン系複合樹脂球状粒子を提供することができる。また、本発明によれば、該ポリオレフィン系複合樹脂球状粒子と塗料樹脂とを含有する塗料組成物、及び、該塗料組成物を基材に塗装してなる塗装物を提供することができる。