(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658059
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】熱型赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
G01J1/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-47007(P2011-47007)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2012-184969(P2012-184969A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀次
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰生
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 直博
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−077728(JP,A)
【文献】
特開2003−149045(JP,A)
【文献】
特開2003−344156(JP,A)
【文献】
特開平11−142245(JP,A)
【文献】
特開2010−238822(JP,A)
【文献】
特開2010−219363(JP,A)
【文献】
特開2005−221483(JP,A)
【文献】
特開2003−131015(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0222218(US,A1)
【文献】
実開平01−074834(JP,U)
【文献】
実開昭60−145335(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、5/00−5/62、11/00
H01L 31/00−31/024、35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過窓が形成されたキャンと、
前記キャンが取り付けられ、当該キャンとともに内部空間を形成するステムと、
前記内部空間内に収容されており、シリコン基板の一方の面に温接点部及び冷接点部が形成されたサーモパイル素子と、
前記内部空間内に収容されており、前記赤外線透過窓及び前記温接点部との間において当該温接点部へと赤外線を入射させるための貫通孔が形成された金属製のシボリと、を備え、
前記サーモパイル素子が、前記一方の面に形成された冷接点部を前記シボリに熱的に接続させて取り付けられているとともに、前記シリコン基板の他方の面と前記ステムとの間には熱伝導によって熱が直接移動しないよう隙間が形成されており、
前記シボリが、前記ステムに熱的に接続させて取り付けられているとともに、前記キャンとの間には熱伝導によって熱が直接移動しないよう隙間が形成されていることを特徴とする熱型赤外線センサ。
【請求項2】
前記シボリが、金属製の複数の薄板部材から構成されており、各薄板部材を前記赤外線透過窓と、前記ステムとの間において積層して各面板間が拡散接合されている請求項1記載の熱型赤外線センサ。
【請求項3】
前記シボリが、前記貫通孔が中央部に形成された板状の天板部と、前記天板部の周辺部から前記ステムへと延びて当該ステムと接触する脚部と、を備え、
前記サーモパイル素子の前記冷接点部が、前記天板部において前記脚部が設けられている側の面に熱伝導性接着剤により取り付けられている請求項1又は2記載の熱型赤外線センサ。
【請求項4】
前記ステムと接触し、前記サーモパイル素子との間には隙間が形成されるように設けられたヒートシンクを更に備え、前記ヒートシンクが前記シボリと同じ材質であるとともに、当該シボリと接触するように設けられた請求項1、2又は3記載の熱型赤外線センサ。
【請求項5】
前記ヒートシンクが、前記サーモパイル素子と対向する面が凹面状である請求項4記載の熱型赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモパイル素子を用いた熱型赤外線センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、
図7に示すような赤外線透過窓41Aを有したキャン4Aと、平板状のステム1Aとからなる容器の内部空間内に、シリコン基板WAの表面に温接点及び冷接点が形成されたサーモパイル素子2Aと、前記サーモパイル素子2Aと、前記ステム1Aとの間を接続する伝熱部材5Aとを備えた赤外線センサが示されている。このような赤外線センサでは温接点のみ赤外線により温度上昇し、冷接点は一定温度に保たれることを前提にしているが、実際には赤外線により冷接点にも温度上昇が生じることがある。また、外気温の変化によっても冷接点の温度が変化することもある。このように冷接点に温度変化が生じると、前記赤外線センサからの出力が異常な値になる等、誤動作が生じるので、前記サーモパイル素子の冷接点の温度を一定に保つ必要がある。
【0003】
このため特許文献1に記載の赤外線センサ100Aは、前記冷接点で温度上昇等が生じたとしても、前記サーモパイル素子2Aの冷接点とステムとの間で熱が速やかに移動して、すぐに前記ステム1Aと略同じ温度になるように、前記サーモパイル素子2Aの前記シリコン基板WAの裏面と、前記ステムとを伝熱部材5Aによって接続している。つまり、このものは、前記冷接点で生じた熱を、まずシリコン基板WAの表側から裏側まで移動させ、さらに伝熱部材5Aを通過させて、最終的にステム1Aに到達するという経路で移動させるように構成されている。
【0004】
しかしながら、サーモパイル素子を構成するシリコン基板は、金属に比べて熱伝導性が劣るものであり、シリコン基板の表側から裏側への熱の移動はそれほど速やかには行われないので、このような構成の赤外線センサでは、温度変化に対する応答性に関する問題を解決しきれない。言い換えると、上述したような熱の移動経路においてサーモパイル素子を構成する基板の表側から裏側へと移動する部分が存在すると、この部分が熱の移動のボトルネックとなってしまい、温度変化に対する応答性の向上に限界が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−221483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような問題を鑑みてなされたものであり、冷接点における温度上昇や外気温の変化等があっても、サーモパイル素子の冷接点から速やかに熱を移動させることができ、正常な出力を行うことができる熱型赤外線センサを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の熱型赤外線センサは、赤外線透過窓が形成されたキャンと、前記キャンが取り付けられ、当該キャンとともに内部空間を形成するステムと、前記内部空間内に収容されており、シリコン基板の一方の面に温接点部及び冷接点部が形成されたサーモパイル素子と、前記内部空間内に収容されており、前記赤外線透過窓及び前記温接点部との間において当該温接点部へと赤外線を入射させるための貫通孔が形成された金属製のシボリと、を備え、前記サーモパイル素子が、前記一方の面に形成された冷接点部を前記シボリに熱的に接続させて取り付けられているとともに、前記シリコン基板の他方の面と前記ステムとの間に隙間が形成されており、前記シボリが、前記ステムに熱的に接続させて取り付けられているとともに、前記キャンとの間には隙間が形成されていることを特徴とする。ここで「熱的に接続する」とは、例えば前記冷接点部と前記シボリとが直接接触して熱の移動が行われること、又は、前記冷接点部と前記シボリとが接着剤等を介して間接的に接触して熱の移動が行われることの両方の概念を含むものである。
【0008】
このようなものであれば、前記冷接点部の熱は、前記サーモパイル素子を構成する基板の一方の面から前記シボリを介して、前記ステムまで移動するので、前記基板の一方の面から他方の面へと移動する経路が存在しない。従って、金属に比べて熱伝導性の劣る基板を通過しないようにすることができるので、熱の移動についてボトルネックが生じるのを防ぐことができる。しかも、前記シボリは金属製のため、従来のより素早く冷接点部から熱を移動させることができる。このため、前記冷接点部において温度上昇が生じたり、外気温に変化が生じたりしても速やかに前記冷接点部の温度を前記ステムを基準として一定に保つことができる。
【0009】
さらに、前記サーモパイル素子と前記ステムとの間に隙間が形成されているとともに、前記シボリと前記キャンとの間にも隙間が形成されているので、前記冷接点部からの熱の移動は、前記シボリを介して前記ステムに到達する1つの移動経路に略限定される。このため、前記冷接点部の温度基準がステムだけにあることが明確になり赤外線の検出精度をより確かなものにすることができる。
【0010】
前記サーモパイル素子に入射する赤外線の量を厳密に所定量とできるように、エッチング等による前記貫通孔の加工精度を良くしやすくするとともに、熱伝導にも悪影響を与えないようにするには、前記シボリが、金属製の複数の薄板部材から構成されており、各薄板部材を前記赤外線透過窓と、前記ステムとの間において積層して各面板間が拡散接合されているものであればよい。このようなものであれば、一枚の厚い板材に貫通孔を形成するのに比べて加工精度を向上させることが容易であり、前記各部材は拡散接合されているので、各薄板部材間での結晶成長が生じていることから略一体物の場合と同じ熱伝導性を持たせることができる。ここで、「拡散接合」とは、接合する部材同士を密着させ、接合する部材の融点以下の温度条件で,塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して,接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合することを言う。
【0011】
特に前記サーモパイル素子に入射する光の量に大きな影響を与える部材のみ高い加工精度で貫通孔の加工を行えるようにし、前記シボリ全体の製造コストを抑えられるようにするには、前記薄板部材のうち、前記赤外線透過窓と対向する薄板部材が他の薄板部材に比べて最も厚みが小さく設定されていればよい。
【0012】
前記冷接点部から前記シボリを介して前記ステムへと熱をスムーズに移動させるための前記シボリの具体的な態様としては、前記シボリが、前記貫通孔が中央部に形成された板状の天板部と、前記天板部の周辺部から前記ステムへと延びて当該ステムと接触する脚部と、を備え、前記サーモパイル素子の前記冷接点部が、前記天板部において前記脚部が設けられている側の面に熱伝導性接着剤により取り付けられているものが挙げられる。
【0013】
前記熱型赤外線センサの出力を温度補正する際において、冷接点部の状態をより正確に反映させて温度補正を行うことができるようにするには、温度補正用のサーミスタが、前記サーモパイル素子の冷接点部にのみ接触させて更に設けられていればよい。
【0014】
前記サーモパイル素子の周囲の部材からの放射熱の影響を均一にし、赤外線の検出精度をより向上させるには、前記ステムと接触し、前記サーモパイル素子との間には隙間が形成されるように設けられたヒートシンクを更に備え、前記ヒートシンクが前記シボリと同じ材質であるとともに、当該シボリと接触するように設けられたものであればよい。
【0015】
前記ヒートシンクに反射鏡としての機能を付加し、前記サーモパイル素子への放射熱の影響を均一にするには、前記ヒートシンクが、前記サーモパイル素子と対向する面が凹面状であればよい。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明の熱型赤外線センサによれば、前記サーモパイル素子の冷接点部からまず前記シボリへと熱が直接移動し、金属製の前記シボリにより速やかに前記ステムへと移動するように構成されているので、前記冷接点部に温度上昇が生じたり、外気温が急激に変化したりしたとしても、冷接点部の温度は、前記ステムを基準として速やかに一定に保つことができる。その結果、センサ出力に誤動作が生じることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱型赤外線センサの模式的分解斜視図。
【
図2】同実施形態における熱型赤外線センサの模式的拡大断面図。
【
図3】同実施形態におけるシボリ及びサーモパイル素子の周辺の模式的拡大断面図。
【
図4】同実施形態における前記サーモパイル素子の構造を示す模式図。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る熱型赤外線センサの模式的拡大断面図。
【
図7】従来の熱型赤外線センサの模式的拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態の熱型赤外線センサ100は、例えば放射温度計として用いられるものであり、
図1の斜視分解図及び
図2の拡大縦断面図に示すように、土台から上方に向かって順に、ステム1、サーモパイル素子2、シボリ3、キャン4の順に平面視において各部材の中心点が一致するように並べて構成してある。より具体的には、前記ステム1と、当該ステム1をキャップして覆うように設けてあるキャン4とによって形成される内部空間内に、前記サーモパイル素子2と、前記シボリ3とを収容してある。なお、以下の説明における断面図では、図面の見やすさのためリードピンP及び、前記リードピンPが挿入される前記ステム1に形成された挿入孔については図示を省略している。
【0021】
前記ステム1は、円周近傍は薄く形成してあるとともに中央部側を肉厚に形成して突出している概略平円盤状の台座であって、前記サーモパイル素子2において熱起電力により生じる信号を取り出すためのリードピンPが複数本貫通して設けてある。このステム1は例えば、コバール等の鉄系合金で形成されており、後述する他の部材に比べてその熱容量が大きくなるように構成してある。また、前記ステム1に設けられた前記リードピンPが挿入される図示しない挿入孔の内側周面には絶縁層が形成してあり、前記リードピンPから前記ステム1へと電気が流れないようにしてある。
【0022】
前記キャン4は、上面が蓋をされ、下面が開口している概略薄肉円筒状の形状をしたものであり、前記上面に赤外線透過窓41が形成してある。そして、このキャン4の下面開口部が、前記ステム1の中央部と嵌合することによって内部空間を形成するようにしてある。また、前記キャン4も例えばコバール等の鉄系合金を用いている。加えて、前記リードピンP、前記ステム1はハーメチックシール等が施されており、前記内部空間が密閉空間となるようにしてある。
【0023】
前記赤外線透過窓41は、前記キャン4の上面において矩形状に切除して形成された開口に、シリコン、ゲルマニウム等の熱伝導性が良好な半導体を母材として、その両面にコーティング膜を形成して赤外線のみを透過するようにしてある。
【0024】
図3は、前記シボリ3、前記サーモパイル素子2について分かりやすさのために厚み方向の長さ寸法を3倍にして表示したものである。また、
図4(a)は温接点と、冷接点とを結線した状態を模式的に示したものであり、
図4(b)は、前記サーモパイル素子2における温接点、冷接点のある場所を想像線により模式的に示した図である。前記サーモパイル素子2は、
図3、
図4の模式図に示すように概略正方形状のチップであって、薄板状のシリコン基板Wの表面(一方の面)に複数の熱電対が直列に接続されたサーモパイルが形成されており、前記シリコン基板Wの中央部には複数の温接点211からなる温接点部21が形成されており、前記シリコン基板Wの周辺部には複数の冷接点221を備えた冷接点部22が形成されたものである。
【0025】
より具体的には、前記サーモパイル素子2は、前記基板Wの中央部を薄肉化して平面視で正方形状のダイヤフラム構造が形成されている領域内に温接点部21が形成してある。この温接点部21は、
図4(b)に示すように想像線で示される複数の温接点211を具備し、それら温接点211の配置が、ダイヤフラムが形成されている領域内において、その中心から所定半径の円周上となるようにしてある。更にこのダイヤフラムが形成されている中央部の領域内にカーボンブラック膜等が形成されることで、赤外線を受光すると前記温接点部21が加熱される受光部212が形成してある。
【0026】
前記ウエハWの表面において前記温接点部21の外側に形成された冷接点部22は、前記シリコン基板Wの中心から前記ダイヤフラム構造よりも外側の領域において複数の冷接点221が正方形状に設けてあるものである。これらの冷接点221は、前記サーモパイル素子2が前記シボリ3に取り付けられる際に当該シボリ3と接触させるようにしてある。なお、この冷接点部22には、出力電圧の温度補償を行うためのサーミスタTが取り付けてある。
【0027】
前記シボリ3は、前記赤外線透過窓41及び前記温接点部21との間において前記サーモパイル素子2の受光部212に入射する光の量を所定量にするためのものであり、前記受光部212から見た視野を決定するものである。言い換えると、前記赤外線透過窓41と前記温接点部21との間に介在することにより、前記サーモパイル素子2に前記赤外線透過窓41へと赤外線が入射できる光軸に対する角度を制限するものである。前記シボリ3の全体形状としては、中心軸に貫通孔31を備えた概略円筒形状をしたものであり、その下面が凹部を有したものである。すなわち、前記シボリ3は、前記貫通孔31が中央部に形成された概略平円板状の天板部33と、前記天板部33の裏面の円周部から前記ステム1側へと延びるリング状の脚部34と、を備えるものである。そして、平面視において前記脚部34の内部に前記サーモパイル素子2を配置してあり、かつ、前記サーモパイル素子2の表面にある前記冷接点部22が前記天板部33の裏面と接触するとともに、前記温接点部21が前記貫通孔31から見えるように配置してある。ここで、前記シボリ3は、前記ステム1及び前記サーモパイル素子2にのみ接触させて熱的に接続してであり、それらとの間は熱伝導性接着剤Gにより接着してある。前記キャン4との間には隙間が形成してある。加えて、前記サーモパイル素子2は、前記シボリ3にのみ接触するとともに、前記ステム1とは直接接触せず、当該ステム1との間には少なくとも0.2mm以上の隙間が形成してある。
【0028】
このような前記シボリ3は、銅からなる4枚の円盤状の薄板部材32a、32b、32c、32dを重ね合わせて前述した形状を構成してあるものであり、一番上に配置され、前記赤外線透過窓41と対向する薄板部材32aは4枚の中で最も薄くしてある。そして、これらの薄板部材32a、32b、32c、32dは、まず分離している状態で予め前記貫通孔31を形成しておいた後に、拡散接合により一体の前記シボリ3に形成してある。このようにすることで、例えばエッチングにより前記貫通孔31を形成する場合、薄い状態の程加工精度を担保し易く、特に前記最上面の薄板部材32aにおいて、貫通孔31の寸法精度を高めることができる。従って、前記貫通孔31の寸法精度を高くすることができるので、前記赤外線透過窓41から前記温接点部21に入射する光の量を厳密に制限することができるので、前記サーモパイル素子2から出力される電圧も正確な値となる。
【0029】
このように構成された本実施形態の熱型赤外線センサ100によれば、シリコン基板Wの表側に温接点部21、冷接点部22が形成されたサーモパイル素子2について、前記冷接点部22と銅製の前記シボリ3とを接触させるとともに、前記シボリ3が前記ステム1に接触させてあるので、
図5に示すように、冷接点部22からシボリ3を経由し、前記ステム1へと速やかに熱を移動させることができる。言い換えると、熱伝導の障害となるシリコン基板W内の熱の移動が存在しないため、前記赤外線透過窓41からの赤外線により仮に前記冷接点部22に熱が加えられたとしても、前記冷接点部22の熱を熱容量の大きい前記ステム1へ速やかに移動させることができ、前記冷接点部22の温度をほとんど変化させないようにすることができる。
【0030】
さらに、
図5から明らかなように前記サーモパイル素子2は前記ステム1と隙間が設けてあり、前記シボリ3も前記キャン4と隙間が設けてあることから、図示している経路以外のその他の経路で熱が移動することはない。つまり、温度基準が前記ステム1だけに存在することになり、測定されている温度等の信頼性を高めることができる。
【0031】
別の実施形態について説明する。前記実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0032】
図6に示すように、前記実施形態にさらにヒートシンク5を設けても構わない。このヒートシンク5は、概略平円板形状をしたものであり、前記脚部34に締まり嵌めで嵌合するとともに、前記ステム1と接触し、前記サーモパイル素子2との間には隙間が形成されるように設けてある。さらに、このヒートシンク5が前記シボリ3と同じ材質であるので、前記シボリ3と、前記ヒートシンク5との境界で熱の移動はスムーズに行われることになる。加えて、このヒートシンク5は、その上面に凹面が形成されている。このように構成する事で、前記サーモパイル素子2の周囲は同じ材質の部材で囲われていることになるので、各部材からの放射熱も均一となり、前記冷接点部22に不均衡な温度上昇等を生じさせないようにすることができる。従って、より温度変化の生じにくい出力の安定した熱型赤外線センサ100となる。
【0034】
前記実施形態では、前記シボリは複数の薄板部材から構成されていたが、許容できる寸法精度によっては、例えば鍛造等により形状を成形してもよいし、切削により前記貫通孔を形成してもよい。また、前記実施形態では、放射温度計として熱型赤外線センサを使用しているが、例えば、単に赤外線を検知するために用いても構わない。前記ヒートシンクの上面の形状は前記実施形態に限られるものではなく、放物面や球面であっても構わない。また、前記シボリは熱伝導性のよい金属であればよく、銅に限られるものではない。
【0035】
その他、本発明の趣旨に反しないかぎりにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行ってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
100・・・熱型赤外線センサ
1 ・・・ステム
2 ・・・サーモパイル素子
21 ・・・温接点部
22 ・・・冷接点部
3 ・・・シボリ
4 ・・・キャン
5 ・・・ヒートシンク