(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658754
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20150108BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150108BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20150108BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20150108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20150108BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20150108BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K47/10
A61K47/34
A61K9/08
A61P35/00
A61P35/02
A61J1/00 330Z
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-522231(P2012-522231)
(86)(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-500321(P2013-500321A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】FR2010051611
(87)【国際公開番号】WO2011012816
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年6月6日
(31)【優先権主張番号】09/03742
(32)【優先日】2009年7月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビユルヌフ,ジヤン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ブナール,ツイアラ
【審査官】
井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/102075(WO,A1)
【文献】
特表2007−533739(JP,A)
【文献】
特表平10−507177(JP,A)
【文献】
特表2002−526424(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/138459(WO,A1)
【文献】
特表2008−519828(JP,A)
【文献】
Pharmaceutical Research,2004年,Vol.21, No.2,p.201-230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61K 9/08
A61K 47/10
A61K 47/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
を含む、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の医薬製剤であって、
エタノールと、
各式:
【化2】
を有し、nが15から16までの範囲の整数である、12−ヒドロキシステアリン酸のポリエトキシレート化モノエステルおよびジエステルの混合物を含む界面活性剤
との混合物に、界面活性剤/エタノール重量比が、25/75から80/20で混合物に可溶化される化合物を含む、医薬製剤。
【請求項2】
式(I)の化合物:
【化3】
を含む、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の医薬製剤であって、
界面活性剤/エタノール重量比が、25/75から80/20のエタノールと界面活性剤マクロゴール15ヒドロキシステアレートとの混合物に可溶化される化合物を含む医薬製剤。
【請求項3】
界面活性剤/エタノール重量比が、73/27から77/23の範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
界面活性剤が、35重量%から55重量%のモノエステルおよびジエステルならびに30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH2CH2)n−OHを含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
界面活性剤が、主成分として、35重量%から55重要%のモノエステルおよびジエステルならびに30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH2CH2)n−OH、ならびに残りを100%に構成する他の化合物も含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
界面活性剤が、10重量%から20重量%のモノエステル、25重量%から35重量%のジエステルおよび30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH2CH2)n−OHならびに残りを100%に構成する他の化合物も含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項7】
界面活性剤/エタノール比が、73/27から77/23、および、式(I)の化合物濃度が、5から25mg/mlの範囲である、請求項1から6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
灌流溶液を形成するように希釈されることを意図した、請求項1から7の一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
下記の段階:
−界面活性剤を液体になるまで加熱する段階;
−エタノールを添加する段階;
−界面活性剤/エタノール混合物を周囲温度まで冷却する段階;
−式(I)の化合物を冷却混合物に添加する段階;
−最終混合物を滅菌する段階を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬製剤の調製方法。
【請求項10】
混合物が濾過滅菌される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の式(I)の化合物:
【化4】
を含む灌流溶液であって、
請求項1から8に記載の医薬溶液1容積を20から500容積の等張溶液で希釈することにより得られる灌流溶液。
【請求項12】
式(I)の化合物:
【化5】
を含む、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の灌流溶液であって、0.01から1.2mg/mlの濃度であり、請求項1から7の一項に定義される界面活性剤を0.48から37mg/ml濃度、およびエタノールを0.35から35mg/ml濃度含み、等張溶液で希釈される灌流溶液。
【請求項13】
ヒトへの投与を意図した、請求項11または12に記載の灌流溶液。
【請求項14】
請求項1から8に記載の医薬溶液1容積を20から500容積の等張溶液で希釈する段階からなる、灌流溶液の調製方法。
【請求項15】
請求項1から8の一項に記載の医薬溶液を含む瓶。
【請求項16】
請求項11から13の灌流溶液を含む点滴バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、活性成分として、式(I)の化合物:
【0002】
【化1】
またはこの化合物の塩と医薬的に許容される酸とを含む医薬製剤に関する。
【0003】
抗癌剤の静脈内投与は、該剤を血流に迅速に拡散できるため、腫瘍学において好ましい投与経路である。該剤が経口などの他経路を経て投与される際に十分な生物学的利用率を示さない場合、静脈内投与は唯一の投与形式となることもある。
【0004】
式(I)の化合物は様々な媒体への溶解度が低い(表I参照)。
【0005】
【表1】
【0006】
しかしながら、操作可能であり、数百mgオーダーの十分および有効な量の式(I)の化合物の投与を可能にさせる安定な医薬製剤を入手できることが必要である。医薬製剤は化学的および物理的に安定であることも必要であり、等張媒体での希釈後に得られる灌流液も同様である。
【背景技術】
【0007】
WO 2007/003765は、溶液形態で投与できる式(A):
【0008】
【化2】
のピリド[2,3−d]ピリミジン誘導体について記載する。
【0009】
WO 08102075は、白血病治療における式(I)の化合物の使用について記載する。該化合物は溶液形態で投与できる。該溶液は下記の1つであり得る:
カスミ1腫瘍を生じるマウスの静注治療用の22% PEG 400/ 5% ソルトール(SOLUTOL)(登録商標)HS15/73% G5であって、G5は5%グルコース水溶液であり;
カスミ1またはKG1腫瘍を生じるマウスの経口治療用の21% ラブラソール(LABRASOL)(登録商標)/5% ソルトール(登録商標)HS15/74% 0.001 N HCl;
EOL−1腫瘍を生じるマウスの腹腔内治療用の5% DMSO/10% トウィーン(TWEEN)(登録商標)80/85% H
2O。
【0010】
従って、記載の製剤は、マウス用に投与され、灌流溶液を形成するように希釈されることを意図しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/003765号
【特許文献2】国際公開第08102075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の式(I)の化合物であって、界面活性剤/エタノール重量比が25/75から80/20、好ましくは73/27から77/23のエタノールと界面活性剤マクロゴール(Macrogol)15ヒドロキシステアレートとの混合物に可溶化される化合物を含む医薬製剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これは、エタノールと、後述の12−ヒドロキシステアリン酸のポリエトキシレート化モノエステルおよびジエステルの混合物を含む界面活性剤との混合物に可溶化される。
【0014】
界面活性剤は、35重量%から55重量%のモノエステルおよびジエステルならびに30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH
2CH
2)
n−OHを含む。これは、主成分として、35重量%から55重要%のモノエステルおよびジエステルならびに30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH
2CH
2)
n−OH、ならびに残りを100%に構成する他の化合物も含む。これは、10重量%から20重量%のモノエステル、25重量%から35重量%のジエステルおよび30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH
2CH
2)
n−OHならびに残りを100%に構成する他の化合物も含む。
【0015】
界面活性剤/エタノール比は、73/27から77/23、および、式(I)の化合物濃度は、5から25mg/mlの範囲である。
【0016】
医薬製剤は、灌流溶液を形成するように希釈されることを意図する。
【0017】
本発明は、下記の段階を含む医薬製剤の調製方法にも関する。
【0018】
−界面活性剤を液体になるまで加熱する段階;
−エタノールを添加する段階;
−界面活性剤/エタノール混合物を周囲温度まで冷却する段階;
−式(I)の化合物を冷却混合物に添加する段階;
−最終混合物を好ましくは濾過により滅菌する段階。
【0019】
本発明は、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の式(I)の化合物を含む灌流溶液であって、1容積の医薬溶液を20から500容積の等張溶液で希釈することにより得られる灌流溶液にも関する。0.01から1.2mg/mlの濃度範囲の式(I)の化合物、0.48から37mg/mlの濃度範囲の界面活性剤および0.35から35mg/mlの濃度範囲のエタノールは、等張溶液で希釈される。灌流溶液はヒトへの投与が意図される。
【0020】
本発明は、1容積の医薬溶液を20から500容積の等張溶液で希釈する段階からなる灌流溶液の調製方法にも関する。
【0021】
本発明は、医薬溶液を含む瓶および灌流溶液を含む点滴バッグにも関する。
【0022】
本発明は、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の式(I)の化合物を含む医薬製剤を調製するため、上記に定義したような界面活性剤の使用にも関し、この製剤は灌流溶液を形成するように希釈されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ソルトール(登録商標)HS15/エタノール製剤についての不純物濃度の経時的変化の曲線。
【
図2】PS80/エタノール製剤についての不純物濃度の経時的変化の曲線。
【
図3】PS80製剤についての不純物濃度の経時的変化の曲線。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態の式(I)の化合物:
【0025】
【化3】
であって、界面活性剤/エタノール重量比が25/75から80/20、好ましくは73/27から77/23のエタノールと界面活性剤マクロゴール 15ヒドロキシステアレートとの混合物に可溶化される化合物を含む医薬製剤に関する。
【0026】
医薬製剤は、
エタノールと、
各式:
【0027】
【化4】
を有し、nが15から16までの範囲の整数である、12−ヒドロキシステアリン酸のポリエトキシレート化モノエステルおよびジエステルの混合物を含む界面活性剤
との混合物であって、界面活性剤/エタノール重量比が、25/75から80/20、好ましくは73/27から77/23の混合物に可溶化される式(I)の化合物を含む。
【0029】
【化5】
は、EP1902054 B1に記載される白血病治療に使用できる抗癌剤である。これは塩基の形態(式(I)を参照)または医薬的に許容される酸の塩の形態であり得る。この点において、「Remington’s pharmaceutical sciences」,17
thed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985 and Berge et al.,「Pharmaceutical salts」 J.Pharm.Sci 1977,66,1−19を参照のこと。1977,66,1−19.
【0030】
使用される非イオン性親水性界面活性剤は、「Synthetic Detergents from Animal Fats.VIII.The Ethenoxylation of Fatty Acids and Alcohols」 A.N.Wrigley J.Am.Oil.Chem.Soc.1957,34,39−43またはJ.V.Karabinos J.Am.Oil Chem.Soc.,1954,31,20−23の教示に従って、K
2CO
3のような塩基性触媒の存在下、約110−165℃で、12−ヒドロキシステアリン酸とエチレンオキサイドを反応させることにより得られる。12−ヒドロキシステアリン酸はヒマシ油の水素化に由来する。EP0017059も参照のこと。
【0032】
【化6】
のモノエステル、
および式:
【0034】
さらに、界面活性剤は、遊離ポリエチレングリコール(C3;H(OCH
2CH
2)
15−16−OH)も含み得る。界面活性剤は、従って、30重量%から40重量%のポリエチレングリコールならびに60重量%から70重量%のモノエステルおよびジエステルを含み得る。
【0035】
界面活性剤は、エトキシル化反応に由来する他の化合物、とりわけ次式:
【0036】
【化8】
を有する化合物も含み得る。
【0037】
例として、使用できる2つの界面活性剤の組成が表IIに挙げられる。従って、界面活性剤は、主成分として、35重量%から55重量%の12−ヒドロキシステアリン酸のモノエステルおよびジエステルならびに30重量%から40重量%のポリエチレングリコールH(OCH
2CH
2)
n−OH、ならびに残りを100%に構成する他の成分も含む。
【0039】
使用できる界面活性剤の例として、BASF社により販売され、J.Pharm.Sci.1998,87(2),200−208,Pharm.Res.2004,21(2),201−230(page 222),Int.J.Cancer 1995,62,436−442、およびCancer Res.1991,51,897−902にも記載されるソルトール(登録商標)HS15が挙げられ、これらの技術情報は添付書類1に見出されるであろう。The European Pharmacopeia(PhEur 6.0)は、マクロゴール15ヒドロキシステアレートとして記載し、これは12−ヒドロキシステアリン酸のモノエステルおよびジエステルと12−ヒドロキシステアリン酸のエトキシル化により得られるマクロゴールとの混合物として記載される。酸と反応させるエチレンオキサイドのモル数は15(名目値)である。これは約30重量%の遊離マクロゴールを含む。これは約30℃で液体になる周囲温度で白色ペーストの形態である。親水性−親油性バランスは約14−16である。臨界ミセル濃度(CMC)は、0.005から0.12%である。他のデータ:融点:25−30℃;鹸化値:56−63;ヒドロキシ値:90−110;ヨウ素価:2;25℃の水における30重量%の粘度:約12mPa.s。
【0040】
本発明の一実施形態に従って、医薬製剤は、液体医薬製剤で通例使用される少なくとも1つの他の添加剤を含み得る。例えば、抗酸化剤、保存剤、緩衝剤などであり得る。本発明の他の実施形態に従って、医薬製剤は、界面活性剤、エタノールおよび式(I)の化合物のみを含む。
【0041】
医薬製剤は下記の方法で調製できる。
−界面活性剤は液体になるまで加熱し;
界面活性剤が液体になる温度は、界面活性剤によって、ならびに適切な場合には遊離ポリエチレングリコールのモノエステルおよびジエステルの割合によって変化する。温度は一般に35から50℃(境界含む。)である。
−エタノールを添加し;
添加量は界面活性剤/エタノール比が上記のような量である。
−界面活性剤/エタノール混合物は周囲温度まで冷却し;
−式(I)の化合物は冷却混合物に添加され;
−最終混合物は滅菌される。濾過滅菌は有利に使用できる。この点において、「Pharmaceutical process validation」,R.A.Nash,3
rdedition,Marcel Dekker Inc,isbn=0824708385,page 119 or 「Validation of pharmaceutical processes」,J.P.Agalloco,3
rdedition,2007,isbn=9780849370557,pages 151−152を参照のこと。濾過滅菌は、加熱滅菌とは違って、感熱性である式(I)の化合物を分解しない。例えば、75/25比の製剤の場合、0.22μmフィルターによる濾過を用いることは可能であった。
【0042】
上述の医薬製剤は、灌流溶液を形成するように希釈されることを意図する濃縮物である。これはガラス瓶に収められ得る。灌流溶液は、灌流に適した等張溶液(例えば、グルコースまたは生理食塩水を含む溶液)で濃縮物を希釈することにより即座に調製される。灌流溶液は一般に投与直前に病院職員により灌流点滴の形態で調製される。灌流溶液は、1容積の濃縮物を20から500容積の等張溶液で希釈することにより得られる式(I)の化合物の過飽和ミセル溶液である。これはヒトの癌治療に使用できる。
【0043】
界面活性剤の機能は、製剤中の式(I)の化合物を可溶化させ、灌流溶液を安定化させることである(ミセル形成)。従って、式(I)の化合物の溶解度は界面活性剤/エタノール比が増加するにつれ増大する。しかしながら、80/20比を上回ると、製剤の粘度は、注射器で試料を採取するのがより困難な程度、または不可能でさえある程度にまで増加する。
【0044】
エタノールは、共溶媒として役立ち、界面活性剤の粘度を下げる機能を有することにより、この操作性を改善する。25/75未満の界面活性剤/エタノール比では、投与されるエタノール量はかなりの量となり、式(I)の化合物の溶解度は低くなり過ぎる。界面活性剤およびPEG 300/400が25/75から50/50までの界面活性剤/PEG比で混和性でないため、または界面活性剤/PEG 300/400混合物が周囲温度および60/40から75/25の範囲の比率で固体であるため、エタノールはPEG 300または400と置換できない。同様に、PEG単独で式(I)の化合物を希釈すると、7mg/mlより大きい溶解度を超過できず、灌流溶液の物理的安定性は十分でない(<24時間)。最後に、化学的安定性の研究は、式(I)の化合物が、とりわけ25℃/60%RH(相対湿度)および30℃/65%RHの加速条件下で、PS80またはPS80/エタノールに基づく製剤より本発明の製剤において、急速に分解しないことを示せた。
【0045】
従って、本発明の製剤は下記の利点がある。
−均質な溶液であり;
−式(I)の化合物が十分な溶解度に到達することを可能にし、数百mgオーダーの量を患者に投与でき;
−操作可能であり、とりわけ注射器で試料を採取することを可能にし;
−式(I)の化合物が他の界面活性剤(表IV参照)と同程度に分解せず;
−該製剤を用いて得られる灌流溶液が少なくとも24時間周囲温度で物理的に安定であり、即ち、任意の沈殿の可視基準を示さず;
−該製剤は濾過滅菌できる。
【0046】
医薬製剤中の式(I)の化合物の濃度は5から25mg/mlに及び得る。事実、溶解度は界面活性剤/エタノール比に依存する。本発明の医薬製剤の例は下記の通りである。
(A)73/27から77/23、例えば75/25の界面活性剤/エタノール比;式(I)の化合物:5−25mg/ml;
(B)界面活性剤/エタノール比:50/50;式(I)の化合物:5−10mg/ml;
(C)界面活性剤/エタノール比:25/75;式(I)の化合物:5mg/ml。
【0047】
灌流溶液は、等張溶液で希釈され、0.01から1.2mg/mlの濃度で式(I)の化合物、0.48から37mg/mlの濃度で界面活性剤、および0.35から35mg/mlの濃度でエタノールを含む。好ましくは、等張溶液で希釈され、0.01から1.2mg/mlの濃度で式(I)の化合物、1.4から35mg/mlの濃度で界面活性剤、および0.4から13mg/mlの濃度でエタノールを含む。
【実施例】
【0048】
本発明の製剤の調製
ガラス反応器において、ソルトール(登録商標)HS15は、40℃で約3時間融解した後、加熱を停止し、管は不活性にされる。管の温度は20℃まで低下し、20℃に戻るのを待つことなく、エタノールをソルトール(登録商標)HS15に添加する。次いで、混合物は30分間ホモジナイズする。式(I)の化合物(塩基形態)を添加し、ソルトール(登録商標)HS15/エタノール混合物に溶解し、得られる混合物は3時間周囲温度で攪拌させる。次に、0.22μm PVDFフィルターで濾過し、溶液は24時間保存する。溶液は、次いで、0.22μm PVDFフィルターにより滅菌濾過にかけられる。
【0049】
他の製剤
式(I)の化合物の幾つかの製剤は、20mg/gの目標溶解度に到達できる製剤を決定するために比較される(表III)。
【0050】
【表3】
【0051】
該製剤についての化学的安定性の研究は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による不純物含量の測定によって実施し、目標溶解度の達成を可能にした。これを行うために、下記の3つの製剤に存在する不純物を経時的に検査した。
ソルトール(登録商標)HS15/エタノール50/50
PS80
pH6/エタノール50/50
PS80
【0052】
結果は表IVに示す。
【0053】
【表4】
【0054】
ソルトール(登録商標)HS15およびエタノールを組み合わせる製剤は3つの中で最も安定であることに留意する。
【0055】
点滴バッグにおける希釈の物理的および化学的安定性
ソルトール(登録商標)HS15/エタノール75/25(重量/重量)濃縮物は点滴バッグで即席希釈される。点滴バッグにおける希釈の物理的および化学的安定性が研究された。様々なパラメータが評価された。
−希釈:0.04mg/mLおよび1mg/mL
−希釈媒体(0.9% NaClまたは5%グルコース)
−保存温度(5℃および30℃)
−保存時間
【0056】
試験条件に関係なく、バッグは少なくとも72時間化学的および物理的に安定であることを示した。
【0057】
【表5】