特許第5658759号(P5658759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5658759吸水性樹脂粒子の製造方法及び吸水性樹脂粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5658759
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子の製造方法及び吸水性樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/32 20060101AFI20150108BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20150108BHJP
   C08F 265/02 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C08F2/32
   C08F20/06
   C08F265/02
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-539558(P2012-539558)
(86)(22)【出願日】2010年11月24日
(86)【国際出願番号】JP2010070905
(87)【国際公開番号】WO2012053121
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2013年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2010-233906(P2010-233906)
(32)【優先日】2010年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平郡 篤
(72)【発明者】
【氏名】谷村 健二
(72)【発明者】
【氏名】小野田 裕一
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−227301(JP,A)
【文献】 米国特許第07713623(US,B1)
【文献】 特開平03−056502(JP,A)
【文献】 特開平07−188327(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096268(WO,A1)
【文献】 特開2009−132755(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025235(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/004529(WO,A1)
【文献】 特開2006−342306(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/083284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 20/00− 20/70
C08F 265/00−265/10
C08L 1/00−101/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合して吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
(A)水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行う工程、
(B)更に中間架橋剤を加えて中間架橋反応を行う工程、
(C)前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、内部架橋剤の非存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第二回目の逆相懸濁重合を行い、吸水性樹脂前駆体を作製する工程、及び、
(D)前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を有し、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩である
ことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
HLBが8〜12の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
中間架橋剤が、グリシジルエーテル化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
中間架橋剤の添加割合が、水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して、0.0001〜0.026モル%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする吸水性樹脂粒子。
【請求項6】
平衡膨潤性能が12〜28mm、吸水速度が1〜5秒、生理食塩水保水能が20〜60g/g、及び、中位粒径が100〜400μmであることを特徴とする請求項5記載の吸水性樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子に関する。更に詳しくは、特定の製造条件を経ることで、優れた吸水速度及び高い平衡膨潤性能を有し、かつ、粒径が適度な大きさでハンドリング性に優れた吸水性樹脂粒子を得る製造方法、それにより得られる止水性能に優れた吸水性樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料用、ペットシート等の日用品、保水材、土壌改良材等の農園芸材料用、ケーブル用止水材、結露防止材等の工業資材用等、種々の分野に広く使用されている。このような用途に使用される吸水性樹脂粒子の種類としては、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物等が知られている。一般的に、吸水性樹脂粒子に求められる性能としては、高い吸水量、優れた吸水速度、高い膨潤性能及び用途に応じた適切な中位粒径等が挙げられる。
【0003】
このうち、ケーブル用止水材は、2枚以上の液体透過性シートの間に、必要に応じて粘着剤等を用いて吸水性樹脂粒子を固定したものであり、電気、通信産業の発展に伴って、需要が増大している。ケーブル用止水材は、電力ケーブルや光通信ケーブルの中心部を巻いて保護するように用いられ、更に外周をゴム等の素材で覆ってケーブルが形成される。電力ケーブルや光通信ケーブルでは、外部素材が劣化し、発生した亀裂から漏れこんだ水分がケーブル中心部に達すると、電力低下や通信ノイズに繋がることから、これを防止するため、水を吸収するとともに、膨潤してケーブル内に圧力を持たせることで、ケーブル中心部に水が到達するのを防止するものである。
【0004】
電力ケーブルや通信ケーブルに用いられる止水材用途の吸水性樹脂として求められる性能としては、ケーブルの破損による外部からの浸水を早期に防止すること、長期に渡る止水効果を維持することに加えて、効率よく製造できることや、製造の際に粉体としてのハンドリング性に優れること等も求められている。従って、止水材用途に使用する吸水性樹脂粒子には、これらの性能を実現するため、高い膨潤性能を有し、吸水速度が速く、かつ、粒子径が適度な大きさでハンドリング性が良好であることが求められている。
【0005】
吸水性樹脂粒子の膨潤性能を向上させる方法としては、吸水性樹脂粒子の架橋密度をコントロールする方法が考えられる。例えば、アクリル酸/アクリル酸塩水溶液をHLB8〜12の界面活性剤共存下に逆相懸濁重合させたのち(重合後直ぐに)架橋剤を加えて架橋反応を行う方法(特許文献1参照)等が提案されている。
また、高い吸水量及び高い膨潤性能を有し、かつ、粒径の小さい吸水性樹脂粒子を製造する方法としては、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させる方法において、1段目の重合後、界面活性剤及び/又は高分子保護コロイドが炭化水素系溶媒に溶解している状態で、2段目に用いる水溶性エチレン性不飽和単量体を添加して、重合する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−131608号公報
【特許文献2】国際公開WO2004/083284号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている方法によっても、近年止水材用途に求められるような膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子を得るには至っていなかった。
また、特許文献2に開示されている方法により得られる吸水性樹脂粒子は、粒子径が小さいため、ハンドリング性が低いという問題があった。
本発明の目的は、優れた吸水速度及び高い平衡膨潤性能を有し、かつ、粒径が適度な大きさでハンドリング性に優れた吸水性樹脂粒子の製造方法、及びそれにより得られる吸水性樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示すとおりの吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子に関する。
即ち、
項1.水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合して吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、(A)水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行う工程、(B)更に中間架橋剤を加えて中間架橋反応を行う工程、(C)前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、内部架橋剤の非存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第二回目の逆相懸濁重合を行い、吸水性樹脂前駆体を作製する工程、及び、(D)前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を有し、前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩であることを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法、
項2.HLBが8〜12の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする項1記載の吸水性樹脂粒子の製造方法、
項3.中間架橋剤が、グリシジルエーテル化合物であることを特徴とする項1又は2記載の吸水性樹脂粒子の製造方法、
項4.中間架橋剤の添加割合が、水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して、0.0001〜0.026モル%であることを特徴とする項1、2又は3記載の吸水性樹脂粒子の製造方法、
項5.項1、2、3又は4記載の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする吸水性樹脂粒子、
項6.平衡膨潤性能が12〜28mm、吸水速度が1〜5秒、生理食塩水保水能が20〜60g/g、及び、中位粒径が100〜400μmであることを特徴とする項5記載の吸水性樹脂粒子、である。
以下に本発明を詳細に説明する。

【0009】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、まず、(A)水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行う工程を行う。
【0010】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタアクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及び、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好適に用いられる。
【0011】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることができる。前記水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%〜飽和濃度の範囲であることが好ましい。また、W/O型(Water in Oil型)逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高くなるという観点から、30〜45質量%がより好ましく、35〜45質量%であることが更に好ましい。
【0012】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する場合、その酸基をアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和しておいてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化アンモニウム等の水溶液が挙げられる。これらアルカリ性中和剤は単独で用いても、併用してもよい。
【0013】
前記アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで膨潤能力を高め、かつ、余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性等に問題が生じないようにする観点から、10〜100モル%の範囲が好ましく、30〜90モル%の範囲がより好ましく、50〜80モル%の範囲が更に好ましい。
【0014】
前記水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これら水溶性ラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記水溶性ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して0.005〜1モル%である。前記水溶性ラジカル重合開始剤の添加量が0.005モル%未満であると、重合反応に多大な時間を要するので、好ましくない。添加量が1モル%を超えると、急激な重合反応が起こるので、好ましくない。
なお、前記水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄及びL−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0016】
また、吸水性樹脂粒子の膨潤性能を制御するために、連鎖移動剤を添加してもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0017】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行うことを第一の特徴とする。
水溶液重合では、内部架橋剤の非存在下で重合反応を行うと、吸水性樹脂粒子の膨潤性能、特に平衡膨潤性能を高めることが可能となるが、重合後に得られる吸水性樹脂前駆体が非常に粘調で、裁断が困難となるため、後工程の乾燥工程や粉砕工程で多大な負荷が掛かり、膨潤性能が良好で、かつ、適度な粒子径を有する吸水性樹脂粒子を得ることは困難であった。
また、従来の逆相懸濁重合では、重合反応時に内部架橋剤を使用しなくても吸水性樹脂前駆体が得られるものの、部分的に塊状物が生成したり、乾燥工程において粒子同士が粘着して凝集したりする傾向があった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、内部架橋剤の非存在下、特定の界面活性剤、石油系炭化水素分散媒、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を用いて逆相懸濁重合を行うことで、止水材用途に好適な形態の粒子がより簡便に得られることを見出した。更に、得られた粒子に特定の架橋反応、後架橋反応を行うことで、止水材用途に好適な高性能の吸水性樹脂粒子が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
なお、本発明において、内部架橋剤とは、単量体の重合中に高分子鎖間の橋架け構造を形成するのに寄与する化合物のことをいう。具体的には、前記水溶性エチレン性不飽和単量体と重合可能な重合性不飽和基を分子内に2個以上有する化合物、前記水溶性エチレン性不飽和単量体中に含まれる官能基(例えば、前記アクリル酸の場合はカルボキシル基)と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物等のことをいう。
【0018】
本発明では、HLBが8〜12の界面活性剤を用いる。前記HLBが8〜12の界面活性剤を用いることで、W/O型逆相懸濁の状態が良好となり、好適な粒子径を有する粒子が得られる。なお、前記界面活性剤のHLBは8.5〜10.5が好ましい。
【0019】
前記界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル〔(ポリ)とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。以下同じ〕、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、等のノニオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤のなかでも、W/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径の吸水性樹脂粒子が得られる観点、工業的に入手が容易という観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルが好適に用いられ、なかでも、得られる吸水性樹脂粒子の吸水速度の観点から、ソルビタン脂肪酸エステルがより好適に用いられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記界面活性剤の添加量は、W/O型逆相懸濁の状態を安定させ、かつ懸濁安定化効果が得られる効率的な添加量を選択する観点から、第一回目の逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましい。
【0021】
本発明では、W/O型逆相懸濁の状態を安定させる目的で、前記界面活性剤と高分子保護コロイドとを併用してもよい。前記高分子保護コロイドとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、W/O型逆相懸濁の安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体が好ましい。これらの高分子保護コロイドは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記高分子保護コロイドの添加量は、W/O型逆相懸濁の状態を安定させ、かつ懸濁安定化効果が得られる効率的な添加量を選択する観点から、第一回目の逆相懸濁重合で添加される水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましい。
【0023】
前記石油系炭化水素分散媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの石油系炭化水素分散媒のなかでは、工業的に入手が容易である観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びシクロヘキサンが好適に用いられ、なかでも、本発明におけるW/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径の吸水性樹脂粒子が得られる観点、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能も良好な観点から、n−ヘプタンがより好適に用いられる。
【0024】
前記石油系炭化水素分散媒の添加量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは50〜600質量部、より好ましくは100〜550質量部である。
【0025】
本発明において、第一回目の逆相懸濁重合を行う際の反応温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤の種類によって異なるので、一概には決定することができない。通常、該反応温度は、重合を迅速に進行させることで重合時間を短くし、かつ重合熱を除去することが簡単で、かつ円滑に反応を行う観点から、好ましくは20〜110℃、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。
【0026】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、(B)更に中間架橋剤を加えて中間架橋反応を行う工程を行う。このような工程を行うことで、第一回目の逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂粒子を架橋することにより、後述する(C)工程において水溶性エチレン性不飽和単量体を添加した際に、重合後の粒子が添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収することを防ぐことができ、吸収することにより起こる吸水性樹脂粒子の表面状態の変化、吸水性能の悪化を防ぐ。すなわち、吸水速度が遅くなり、膨潤性能が低くなることを防ぐこととなる。
なお、前記(B)工程及び後述する(C)工程は、1回以上行い、必要により2回以上行ってもよい。
【0027】
前記(B)工程の中間架橋反応において用いられる中間架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。
これらの中間架橋剤のなかでも、反応性に優れている観点から、ジグリシジルエーテル化合物が好ましく、なかでも、水溶性が高く、中間架橋剤としてのハンドリング性が良いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルがより好ましく、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能が高いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルが更に好ましい。これらの中間架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記(B)工程において用いられる中間架橋剤の添加量は、前記(B)工程の中間架橋剤を添加する直前の重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量に対して、0.0001〜0.026モル%が好ましく、0.0005〜0.021モル%がより好ましく、0.0025〜0.015モル%が更に好ましい。前記中間架橋剤の添加量が0.0001モル%未満であると、後述の水溶性エチレン性不飽和単量体を添加した際に、重合した粒子が水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収した状態で次の重合に付されるため、得られる吸水性樹脂粒子の表面状態が変化して、吸水性能が悪化するおそれがある。すなわち、吸水速度が遅くなり、膨潤性能が低くなる傾向がある。また、前記中間架橋剤の添加量が0.026モル%を超えると、過度に架橋反応が進行し、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能が低くなるおそれがある。
なお、「前記(B)工程の中間架橋剤を添加する直前の重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量」とは、(B)工程が1回目の場合は、前記(A)工程において添加した水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量を意味し、(B)工程が2回目以降の場合は、1回前の(C)工程において添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を意味する。
【0029】
前記(B)工程において、中間架橋剤を添加する場合の溶媒としては、中間架橋剤を均一に分散させることが可能であれば特に限定されず、水を用いてもよく、親水性有機溶媒を用いてもよい。前記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
前記(B)工程における中間架橋反応の反応温度は60℃以上であることが好ましく、70℃〜前記重合に使用した溶媒の沸点までがより好ましい。前記反応温度が60℃未満であると、中間架橋反応が進みにくく、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低くなるおそれがある。
前記(B)工程における中間架橋反応の反応時間は、反応温度、前記中間架橋剤の種類及び添加量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜200分間が好ましく、5〜100分間がより好ましく、10〜60分間が更に好ましい。
【0031】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、(C)前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、内部架橋剤の非存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第二回目の逆相懸濁重合を行い、吸水性樹脂前駆体を作製する工程を行う。
なお、本(C)工程における内部架橋剤の非存在下とは、(C)工程の重合反応において内部架橋剤を添加しないことを意味する。
本発明では、逆相懸濁重合を複数回行うことで、膨潤性能に優れた吸水性樹脂粒子を生産性高く製造することができる。
【0032】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好適に用いられる。
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることができる。前記水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%〜飽和濃度の範囲であることが好ましい。また、W/O型(Water in Oil型)逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高くなるという観点から、30〜45質量%がより好ましく、35〜45質量%であることが更に好ましい。
【0033】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する場合、その酸基をアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和しておいてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化アンモニウム等の水溶液等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
前記アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで膨潤能力を高め、かつ、余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性等に問題が生じないようにする観点から、10〜100モル%の範囲が好ましく、30〜90モル%の範囲がより好ましく、50〜80モル%の範囲が更に好ましい。
【0035】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量は、前記(A)工程において重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、50〜200質量部が好ましく、70〜180質量部がより好ましく、90〜150質量部が更に好ましい。前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量が50質量部未満であると、重合反応時間に対する生産性が低くなることがある。また、前記(C)工程の重合反応の操作に用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量が200質量部を超えると、重合反応時間に対する生産性は高いが、重合反応に用いる水溶性エチレン性不飽和単量体の量が多くなり、重合反応の制御が困難となるおそれがある。
【0036】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体は、前記(B)工程の中間架橋反応が終了した反応混合物中において、前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、添加する必要がある。前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解していない状態で添加すると、重合した粒子が添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収し、凝集して一体化(塊状化)してしまう。
「前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態」は、例えば、前記中間架橋反応が終了した反応混合物の温度を制御することにより、作り出すことができる。前記反応混合物の温度は、前記界面活性剤の種類により異なるので一概には決定することができないが、例えば、好ましくは40〜65℃であり、より好ましくは50〜60℃である。反応混合物の温度が40℃未満であると、界面活性剤が析出することにより界面活性効果が低くなり、重合した粒子が添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収し、凝集して一体化(塊状化)することがある。また、反応混合物の温度が65℃を超えると、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加している際に重合反応が起こる等の危険があるので好ましくない。
【0037】
前記(C)工程において用いられる水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記(C)工程において用いられる水溶性ラジカル重合開始剤の添加量は、重合開始剤の種類や、反応条件によって異なるので、一概には決められないが、通常、前記(A)工程において添加する水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量に対して0.005〜1モル%である。水溶性ラジカル重合開始剤の添加量が0.005モル%未満であると、重合反応に多大な時間を要するので、好ましくない。水溶性ラジカル重合開始剤の添加量が1モル%を超えると、急激な重合反応が起こるので、好ましくない。
なお、前記水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0039】
前記(C)工程では、吸水性樹脂粒子の膨潤性能、特に平衡膨潤性能を高める観点から、内部架橋剤非存在下で重合反応を行う。
また、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能を制御する観点から、連鎖移動剤を使用してもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
前記(C)工程において、反応温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤の種類によって異なるので、一概には決定することができない。通常、該反応温度は、重合を迅速に進行させることで重合時間を短くする観点、重合熱を除去することが容易である観点、円滑に反応を行う観点から、好ましくは20〜110℃であり、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。
【0040】
通常、前記(A)〜(C)工程を経て得られる吸水性樹脂前駆体は、球状、顆粒状、破砕状、金平糖状及びそれらの凝集物などの様々な形態で得られるが、本発明においては、乾燥工程において粒子同士が粘着して凝集しにくく、かつ、止水材用途に好適な形態の粒子がより簡便に得られる観点から、吸水性樹脂前駆体は顆粒状で得られることが好ましく、表面に一様な凹凸のある顆粒状がより好ましい。
【0041】
また、後述の(D)工程の直前に粒子径をコントロールする観点から、非晶質シリカを添加し凝集粒子にすることもできる。非晶質シリカとしては、乾式シリカや、湿式シリカ等が挙げられ、これらの非晶質シリカの中でも湿式シリカが好適に用いられる。
非晶質シリカの添加量としては、前記(A)工程及び(C)工程において重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1質量部、より好ましくは0.001〜0.5質量部、更に好ましくは0.01〜0.2質量部である。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の総質量は、重合反応に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求めることができる。
【0042】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、(D)前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を行う。
【0043】
前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整する方法(以下、単に1次乾燥ともいう)としては、特に限定されないが、前記吸水性樹脂前駆体が石油系炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留による脱水を行う方法、デカンテーションにより吸水性樹脂前駆体を取り出し、減圧乾燥する方法、フィルターにより吸水性樹脂前駆体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。なかでも、製造工程における簡便さから、重合により得られる吸水性樹脂前駆体を石油系炭化水素分散媒に分散し、共沸蒸留による脱水を行う方法が好ましい。
【0044】
前記1次乾燥工程を行った後、得られた吸水性樹脂前駆体に後架橋剤を添加し、後架橋反応を行う。前記のようにして得られた吸水性樹脂前駆体に対して、特定の条件での後架橋反応を施すことにより、優れた膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる。
【0045】
前記後架橋剤としては、前記水溶性エチレン性不飽和単量体中に含まれる官能基(例えば、前記アクリル酸の場合はカルボキシル基)と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物であり、また、好ましくは水溶性の化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの後架橋剤のなかでも、反応性に優れている観点から、ジグリシジルエーテル化合物が好ましく、なかでも、水溶性が高く、架橋剤としてのハンドリング性が良いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルがより好ましく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルがさらに好ましい。
なお、前記後架橋剤は、前記中間架橋剤と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0046】
前記後架橋剤の添加量は、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して、0.001〜3モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が更に好ましく、0.02〜0.5モル%が特に好ましい。前記水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対する後架橋剤添加量が0.001モル%未満であると、架橋が弱いために、吸水性樹脂粒子表面が、吸水時に粘性をおびやすく、初期膨潤性能が低くなる傾向があり、3モル%を超えると、得られる吸水性樹脂粒子の保水量が低下し、それに伴い膨潤性能が低くなるおそれがある。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の総モル量は、前記(A)工程及び(C)工程で用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量から、計算により求めることができる。
【0047】
本発明において、前記吸水性樹脂前駆体と後架橋剤との混合は、前記吸水性樹脂前駆体の水分率を特定の範囲に調整した後に行う。このように、吸水性樹脂前駆体と後架橋剤との反応時における水分率をコントロールすることにより、より好適に後架橋反応を進行させることができる。
【0048】
後架橋工程における吸水性樹脂前駆体の水分率は、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%であり、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜80質量%である。前記水分率が30質量%未満であると、後架橋剤が吸水性樹脂前駆体に均一に分散しない。前記水分率が100質量%を超えると、吸水性樹脂前駆体の表面層を架橋することが困難となり、膨潤性能等の性能が低下する。
なお、前記水分率は、重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、1次乾燥工程により外部に抽出された水分量を差し引いた量(1次乾燥ゲルの水分量)に、後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水分量を合計することにより、吸水性樹脂前駆体の水分量を算出した後、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の質量に対する吸水性樹脂前駆体の水分量の割合を算出することによって求めることできる。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の質量は、前記(A)工程及び(C)工程で用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求めることができる。
1次乾燥ゲルの水分量に対する、後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水分量は、乾燥工程を合理的に短縮してプロセスの経済性を高めつつ、後架橋剤を均一に分散させる観点から、100:0〜60:40が好ましく、99:1〜70:30がより好ましく、98:2〜80:20が更に好ましく、98:2〜90:10がより更に好ましい。
【0049】
前記吸水性樹脂前駆体と後架橋剤との混合の際には、後架橋剤を均一に分散させるための溶媒として、水を用いてもよく、親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、必要に応じて、水と混合したり、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
前記吸水性樹脂前駆体を後架橋剤で後架橋反応させる際の反応温度は60℃以上であることが好ましく、70〜200℃がより好ましく、80〜150℃が更に好ましい。反応温度が60℃未満であると、後架橋反応が進みにくく、反応に過大な時間を要する傾向があり、反応温度が200℃を超えると、得られる吸水性樹脂粒子の分解や、吸水性樹脂粒子の着色が発生するおそれがある。
前記後架橋の反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜300分間、好ましくは5〜200分間である。
【0051】
本発明の方法により、高い膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる理由は明確ではないが、内部架橋剤の非存在下で適度な粒子の大きさを有する吸水性樹脂前駆体を得たのち、特定の水分率に調整した吸水性樹脂前駆体に、特定条件の後架橋反応を施すことにより、吸水性樹脂粒子の表面近傍と内部の架橋密度バランスが最も好適になるためと考えられる。
【0052】
本発明では、前記(D)工程の後架橋反応を行った後、熱等のエネルギーを外部から加えることにより、水分、有機溶媒等を蒸留により除去することによって、乾燥工程を行ってもよい(以下、この乾燥工程を2次乾燥ともいう)。このような2次乾燥を行うことで、粉末状の吸水性樹脂粒子が得られる。
【0053】
前記2次乾燥の方法としては、特に限定されず、例えば、石油系炭化水素分散媒に分散した後架橋反応後の樹脂粒子の混合物を、蒸留することにより水分と石油系炭化水素分散媒を同時に除去する方法、デカンテーションにより樹脂粒子を取り出し、減圧乾燥する方法、フィルターにより樹脂粒子をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。なかでも、製造工程における簡便さから、石油系炭化水素分散媒に分散した後架橋反応後の樹脂粒子の混合物を、蒸留することにより水分と石油系炭化水素分散媒を同時に除去する方法が好ましい。
【0054】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いることで、優れた吸水速度及び高い平衡膨潤性能を併せ持ち、かつ、粒径が適度でハンドリング性が良好である吸水性樹脂粒子を得ることができる。このような吸水性樹脂粒子もまた本発明の1つである。
【0055】
本発明の吸水性樹脂粒子は、平衡膨潤性能が10〜28mmであることが好ましい。このように高い膨潤性能を有することで、ケーブル外部素材の亀裂による初期浸水を防止した後、長時間の浸水防止効果を維持し、かつケーブルの素材劣化を促進しない程度の適度な膨潤圧力を発揮することができる。また、前記平衡膨潤性能は、11〜24mmであることがより好ましく、12〜20mmであることが更に好ましく、13〜18mmが特に好ましい。
【0056】
本発明の吸水性樹脂粒子は、生理食塩水の吸水速度が1〜10秒であることが好ましい。このように優れた吸水速度を有することで、ケーブルの亀裂による浸水をより速く防止することができる。また、前記吸水速度は、1〜8秒がより好ましく、1〜5秒が更に好ましい。
【0057】
本発明の吸水性樹脂粒子は、中位粒径が100〜400μmであることが好ましい。このような中位粒径を有することで、止水材の製造時における粉体としてのハンドリング性を良好に保ち、かつ、止水材を薄くすることができる。また、前記中位粒径は、120〜350μmがより好ましく、130〜300μmが更に好ましい。
【0058】
本発明の吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能は特に限定されないが、より多くの水を吸収するほうが好ましいことから、20〜60g/gが好ましく、25〜55g/gがより好ましい。
【0059】
本発明の吸水性樹脂粒子の平衡膨潤性能、生理食塩水の吸水速度、生理食塩水保水能及び中位粒径は、いずれも後述する実施例に記載の測定方法によって測定したときの値である。
【0060】
本発明の吸水性樹脂粒子には、更に目的に応じて、耐熱性安定剤、酸化防止剤、抗菌剤等の添加剤を添加してもよい。
前記添加剤の量は、吸水性樹脂粒子の用途、添加剤の種類等によって異なるが、前記(A)工程及び(C)工程において添加された水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の総質量は、重合反応に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求めることができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、優れた吸水速度及び高い平衡膨潤性能を有し、かつ、粒径が適度でハンドリング性に優れた吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】膨潤性能測定装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
(第一回目の逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン360gをとり、界面活性剤としてのHLBが8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名:ノニオンLP−20R)1.47gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、内温を47℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)を加えて溶解し、第一回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
撹拌機の回転数を450r/minとして、前記第一回目の重合用の単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第一回目の逆相懸濁重合を1時間行った。
【0065】
(中間架橋反応)
第一回目の逆相懸濁重合反応の終了後、得られた反応混合物に、中間架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.41g(0.000047モル)を添加して、75℃で30分間、中間架橋反応を行った。
【0066】
(第二回目の逆相懸濁重合)
次に、前記第一回目の重合用の単量体とは別に、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら26.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液114.7gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)を加えて溶解し、第二回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は115.7gであった。
前記中間架橋反応の終了後、撹拌機の回転数を1000r/minとして、中間架橋反応終了後の反応混合物を60℃に冷却し(ソルビタンモノラウレートが、n−ヘプタンに溶解している状態)、14℃に調整した前記第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、滴下が終了したときの系内温度(47℃)に保ちながら、前記回転数で30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第二回目の逆相懸濁重合を1時間行い、吸水性樹脂前駆体を得た。
【0067】
(後架橋反応)
得られた吸水性樹脂前駆体を含有する液体を、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、197.3gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.36g(0.00085モル)を添加した。このときの水分量は74.6gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は、41質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を190.5g得た。
【0068】
[実施例2]
実施例1の(中間架橋反応)において添加する中間架橋剤として、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.41g(0.000047モル)に代えて、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.24g(0.00014モル)を用い、更に実施例1の(後架橋反応)において、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、系外に抜き出す水の量を、197.3gから198.1gに変更した(吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は、41質量%)以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を188.5g得た。
【0069】
[実施例3]
実施例1の(第二回目の逆相懸濁重合)において、中間架橋反応終了後の反応混合物の冷却温度を60℃から50℃に変更し、かつ、滴下が終了したときの系内温度を47℃から41℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い(吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は、41質量%)、顆粒状の吸水性樹脂粒子を189.5g得た。
【0070】
[実施例4]
(第一回目の逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン400gをとり、界面活性剤としてのHLBが8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名:ノニオンLP−20R)1.30gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、内温を47℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液81g(0.91モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液130.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.0892g(0.00033モル)を加えて溶解し、第一回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は80.2g、水分量は130.9gであった。
撹拌機の回転数を450r/minとして、前記第一回目の重合用の単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第一回目の逆相懸濁重合を1時間行った。
【0071】
(中間架橋反応)
第一回目の逆相懸濁重合反応の終了後、得られた反応混合物に、中間架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.36g(0.000041モル)を添加して、75℃で30分間、中間架橋反応を行った。
【0072】
(第二回目の逆相懸濁重合)
次に、前記第一回目の重合用の単量体とは別に、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液81g(0.91モル)を入れ、これを氷冷しながら26.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液101.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.0892g(0.00033モル)を加えて溶解し、第二回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は80.2g、水分量は101.9gであった。
前記中間架橋反応の終了後、撹拌機の回転数を1000r/minとして、中間架橋反応終了後の反応混合物を60℃に冷却し(ソルビタンモノラウレートが、n−ヘプタンに溶解している状態)、14℃に調整した前記第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、滴下が終了したときの系内温度(50℃)に保ちながら、前記回転数で30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第二回目の逆相懸濁重合を1時間行い、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。
【0073】
(後架橋反応)
得られた吸水性樹脂前駆体を含有する液体を、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、181.8gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液6.48g(0.00074モル)を添加した。このときの水分量は、57.6gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は35.9質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を164.7g得た。
【0074】
[実施例5]
実施例1の(第二回目の逆相懸濁重合)を行った後に得られる吸水性樹脂前駆体を含有する液体に、非晶質シリカ粉末(徳山ソーダ株式会社製、商品名:トクシールP)0.04gを添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、粒子が凝集した顆粒状の吸水性樹脂粒子188.6gを得た。
【0075】
[実施例6]
実施例1の(後架橋反応)において、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、系外に抜き出す水の量を、197.3gから120.8gに変更した、更に添加する後架橋剤として、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.36g(0.000845モル)に代えて、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.84g(0.000211モル)に変えた、以外は、実施例1と同様の操作を行い、(吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は、80質量%)顆粒状の吸水性樹脂粒子を191.1g得た。
【0076】
[実施例7]
実施例1の(後架橋反応)において、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、系外に抜き出す水の量を、197.3gから159.0gに変更した、更に添加する後架橋剤として、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.36g(0.000845モル)に代えて、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液3.68g(0.000423モル)に変えた、以外は、実施例1と同様の操作を行い、(吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は、60質量%)顆粒状の吸水性樹脂粒子を191.3g得た。
【0077】
[比較例1]
(逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン453gをとり、界面活性剤としてのHLBが8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名:ノニオンLP−20R)1.90gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、内温を47℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液48.5g(0.54モル)を入れ、これを氷冷しながら22.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液76.7gを滴下して80モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.13g(0.00037モル)を加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は48.6g、水分量は76.6gであった。
撹拌機の回転数を700r/minとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、逆相懸濁重合を1時間行った。
【0078】
(後架橋反応)
逆相懸濁重合反応の終了後、得られた反応混合物に、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液5.0g(0.00057モル)を添加した。このときの水分量は、81.5gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して167.9質量%であった。その後、75℃で30分間、後架橋反応を行った。
次いで、得られた反応液を120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、65.0gの水を系外へ抜き出し、その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂粒子50.0gを得た。
【0079】
[比較例2]
(逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン453gをとり、界面活性剤としてのHLBが8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名:ノニオンLP−20R)1.104gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、内温を47℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)を加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
撹拌機の回転数を700r/minとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、逆相懸濁重合を1時間行い、吸水性樹脂前駆体を得た。
【0080】
(後架橋反応)
得られた吸水性樹脂前駆体を含有する液体を、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、125.8gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液5.52g(0.00063モル)を添加した。このときの水分量は、28.2gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して31質量%であった。後架橋剤を添加後、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を94.5g得た。
【0081】
[比較例3]
(第一回目の逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン360gをとり、界面活性剤としてのHLBが8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名:ノニオンLP−20R)1.47gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、内温を47℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)を加えて溶解し、第一回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
撹拌機の回転数を450r/minとして、前記第一回目の重合用の単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第一回目の逆相懸濁重合を1時間行った。
【0082】
(中間架橋反応)
第一回目の逆相懸濁重合反応の終了後、得られた反応混合物に、中間架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液5.0g(0.00057モル)を添加して、75℃で30分間、中間架橋反応を行った。
【0083】
(第二回目の逆相懸濁重合)
次に、前記第一回目の重合用の単量体とは別に、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)を加えて溶解し、第二回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
前記中間架橋反応の終了後、撹拌機の回転数を1000r/minとして、中間架橋反応終了後の反応混合物を60℃に冷却し(ソルビタンモノラウレートが、n−ヘプタンに溶解している状態)、14℃に調整した前記第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、滴下が終了したときの系内温度(47℃)に保ちながら、前記回転数で30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第二回目の逆相懸濁重合を1時間行い、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。
【0084】
(後架橋反応)
得られた吸水性樹脂粒子前駆体を含む反応混合物に、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液5.0g(0.00057モル)を添加した。このときの水分量は、163.6gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して169.5質量%であった。その後、75℃で30分間、後架橋反応を行った。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、125.0gの水を系外へ抜き出し、その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を190.7g得た。
【0085】
[比較例4]
実施例1の(第一回目の逆相懸濁重合)の終了後に、中間架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
しかしながら、第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下している際に、攪拌機の攪拌負荷が大きくなり、攪拌できない状態になったので、以降の工程をとりやめた。
【0086】
[比較例5]
(第一回目の逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン340gをとり、界面活性剤としてHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S−370)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解させたのち、内温を35℃にした。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.092g(0.00034モル)を加えて溶解し、第一回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
撹拌機の回転数を700r/minとして、前記第一回目の重合用の単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第一回目の逆相懸濁重合を1時間行った。
【0087】
(中間架橋反応)
第一回目の逆相懸濁重合反応の終了後、得られた反応混合物に、中間架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.41g(0.000047モル)を添加して、75℃で30分間、中間架橋反応を行った。
【0088】
(第二回目の逆相懸濁重合)
次に、前記第一回目の重合用の単量体とは別に、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.092g(0.00034モル)を加えて溶解し、第二回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
中間架橋反応の終了後、撹拌機の回転数を1000r/minとして、中間架橋反応終了後の反応混合物を50℃に冷却し(ショ糖脂肪酸エステルが、n−ヘプタンに溶解している状態)、14℃に調整した前記第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、滴下が終了したときの系内温度(47℃)に保ちながら、前記回転数で30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第二回目の逆相懸濁重合を1時間行い、吸水性樹脂前駆体を得た。
【0089】
(後架橋反応)
得られた吸水性樹脂前駆体を含有する液体を、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、250.0gの水を系外に抜き出した後、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液5.5g(0.000631モル)を添加した。このときの水分量は、52.9gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は29.1質量%であった。後架橋剤を添加後、80℃で2時間保持した。その後、n−ヘプタンと水とを加熱留去することにより、真球状の吸水性樹脂粒子191.1gを得た。
【0090】
[比較例6]
実施例1の(中間架橋反応)において添加する中間架橋剤として、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.41g(0.000047モル)に代えて、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.24g(0.00014モル)を用いた。更に実施例1の(第二回目の逆相懸濁重合)において、中間架橋反応終了後の反応混合物の冷却温度を60℃から30℃に変更し、かつ、滴下が終了したときの系内温度を47℃から28℃になった以外は、実施例1と同様の操作を行った。(第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下する際、ソルビタンモノラウレートはn−ヘプタンに未溶解の状態であった。)
しかしながら、第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下している際に、攪拌機の攪拌負荷が大きくなり、攪拌できない状態になったので、以降の工程をとりやめた。
【0091】
[比較例7]
(第一回目の逆相懸濁重合)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn−ヘプタン360gをとり、界面活性剤としてのHLBが8.6のソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名:ノニオンLP−20R)1.47gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、内温を47℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)とエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0082g(0.000047モル)を加えて溶解し、第一回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は148.6gであった。
撹拌機の回転数を450r/minとして、前記第一回目の重合用の単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素ガスで30分間置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第一回目の逆相懸濁重合を1時間行った。
【0092】
(第二回目の逆相懸濁重合)
次に、前記第一回目の重合用の単量体とは別に、500mL容の三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を入れ、これを氷冷しながら26.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液114.7gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.101g(0.00037モル)を加えて溶解し、第二回目の重合用の単量体水溶液を調製した。なお、この単量体水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の質量は91.0g、水分量は115.7gであった。
第一回目の逆相懸濁重合反応の終了後(架橋反応の終了後)、撹拌機の回転数を1000r/minとして、第一回目の逆相懸濁重合反応終了後の反応混合物を60℃に冷却し(ソルビタンモノラウレートが、n−ヘプタンに溶解している状態)、14℃に調整した前記第二回目の重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、滴下が終了したときの系内温度(47℃)に保ちながら、前記回転数で30分間攪拌を行うと同時に系内を窒素ガスで置換した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、第二回目の逆相懸濁重合を1時間行い、吸水性樹脂前駆体を得た。
【0093】
(後架橋反応)
得られた吸水性樹脂前駆体を含有する液体を、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸することにより、n−ヘプタンを還流しながら、196.9gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.36g(0.00085モル)を添加した。このときの水分量は74.6gであり、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して37質量%であった。後架橋剤混合物を調製後、80℃で2時間保持した。その後、n−へプタンを蒸発させて乾燥することによって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を190.5g得た。
【0094】
[比較例8]
実施例1の(後架橋反応)において、水とn−ヘプタンとを共沸することにより、系外に抜き出す水の量を、197.3gから71.6gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、(吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対する水分率は、110質量%)顆粒状の吸水性樹脂粒子を191.0g得た。
【0095】
(評価)
実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0096】
(1)吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能
500mL容のビーカーに、0.9質量%食塩水(生理食塩水)500gを量り取り、600r/minで撹拌させながら、吸水性樹脂粒子2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。前記回転数で撹拌させた状態で30分間放置し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。その後、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行ない、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂粒子の質量(g)
【0097】
(2)吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水速度
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行った。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂粒子の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂粒子の吸水速度とした。
【0098】
(3)吸水性樹脂粒子の中位粒径
吸水性樹脂粒子100gに、滑剤として、0.5gの非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、商品名:Sipernat 200)を混合した。
上記吸水性樹脂粒子を、JIS標準篩の目開250μmの篩を用いて通過させ、その通過量が50質量%以上の場合には(A)の篩の組み合わせを、その通過量が50質量%未満の場合には(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒径を測定した。
(A)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
(B)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒径とした。
【0099】
(4)吸水性樹脂粒子の平衡膨潤性能
吸水開始から10分後の平衡膨潤性能を、膨潤性能測定装置を用いて測定した。膨潤性能測定装置の概略説明図を図1に示す。図1に示した膨潤性能測定装置Xは、移動距離測定装置1と凹型円形カップ2(高さ30mm、内径80.5mm)、プラスチック製の凸型円形シリンダー3(外径80mm、吸水性樹脂粒子との接触面に直径2mmの貫通孔7が均等に60個配設)及び不織布4からなっている。膨潤性能測定装置Xは、レーザー光6により距離の変位を0.01mm単位で測定することができるようになっている。凹型円形カップ2は、所定量の吸水性樹脂粒子を均一に散布することができるようになっている。凸型円形シリンダー3は、吸水性樹脂粒子5に対して90gの荷重を均一に加えることができるようになっている。
凹型円形カップ2に試料(吸水性樹脂粒子5)0.1gを均一に散布し、その上に不織布4を敷く。凸型円形シリンダー3を不織布4の上に静かにのせ、移動距離測定装置1のセンサーのレーザー光6がシリンダーの中央部にくるように設置する。予め20℃に調節したイオン交換水130gを凹型円形カップ2内に投入し、吸水性樹脂粒子5が膨潤して凸型円形シリンダー3を押し上げた距離を測定する。吸水開始から10分後における凸型円形シリンダー3の移動距離を平衡膨潤性能とした。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示すように、実施例1〜7で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも、優れた吸水速度及び高い平衡膨潤性能を有し、かつ、中位粒径が適度であることがわかる。一方、比較例で得られた吸水性樹脂粒子は、吸水速度や膨潤性能が充分ではないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品、ペットシート等の衛生材料用、保水材、土壌改良材等の農園芸材料用、電力・通信用ケーブル用止水材、結露防止材等の工業資材用等種々の分野で使用することができ、特に電力・通信用ケーブル用止水材等の工業資材用に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0103】
1 移動距離測定装置
2 凹型円形カップ
3 凸型円形シリンダー
4 不織布
5 吸水性樹脂粒子
6 レーザー光
7 貫通孔
X 膨潤性能測定装置
図1