【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示すとおりの吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子に関する。
即ち、
項1.水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合して吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、(A)水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行う工程、(B)更に中間架橋剤を加えて中間架橋反応を行う工程、(C)前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、内部架橋剤の非存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第二回目の逆相懸濁重合を行い、吸水性樹脂前駆体を作製する工程、及び、(D)前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を有
し、前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩であることを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法、
項2.HLBが8〜12の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、ショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする項1記載の吸水性樹脂粒子の製造方法、
項3.中間架橋剤が、グリシジルエーテル化合物であることを特徴とする項1又は2記載の吸水性樹脂粒子の製造方法、
項4.中間架橋剤の添加割合が、水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して、0.0001〜0.026モル%であることを特徴とする項1、2又は3記載の吸水性樹脂粒子の製造方法、
項5.項1、2、3又は4記載の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする吸水性樹脂粒子、
項6.平衡膨潤性能が12〜28mm、吸水速度が1〜5秒、生理食塩水保水能が20〜60g/g、及び、中位粒径が100〜400μmであることを特徴とする項5記載の吸水性樹脂粒子、である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、まず、(A)水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行う工程を行う。
【0010】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタアクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及び、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好適に用いられる。
【0011】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることができる。前記水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%〜飽和濃度の範囲であることが好ましい。また、W/O型(Water in Oil型)逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高くなるという観点から、30〜45質量%がより好ましく、35〜45質量%であることが更に好ましい。
【0012】
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する場合、その酸基をアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和しておいてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化アンモニウム等の水溶液が挙げられる。これらアルカリ性中和剤は単独で用いても、併用してもよい。
【0013】
前記アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで膨潤能力を高め、かつ、余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性等に問題が生じないようにする観点から、10〜100モル%の範囲が好ましく、30〜90モル%の範囲がより好ましく、50〜80モル%の範囲が更に好ましい。
【0014】
前記水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これら水溶性ラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記水溶性ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して0.005〜1モル%である。前記水溶性ラジカル重合開始剤の添加量が0.005モル%未満であると、重合反応に多大な時間を要するので、好ましくない。添加量が1モル%を超えると、急激な重合反応が起こるので、好ましくない。
なお、前記水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄及びL−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0016】
また、吸水性樹脂粒子の膨潤性能を制御するために、連鎖移動剤を添加してもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0017】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を、内部架橋剤の非存在下、HLBが8〜12の界面活性剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第一回目の逆相懸濁重合を行うことを第一の特徴とする。
水溶液重合では、内部架橋剤の非存在下で重合反応を行うと、吸水性樹脂粒子の膨潤性能、特に平衡膨潤性能を高めることが可能となるが、重合後に得られる吸水性樹脂前駆体が非常に粘調で、裁断が困難となるため、後工程の乾燥工程や粉砕工程で多大な負荷が掛かり、膨潤性能が良好で、かつ、適度な粒子径を有する吸水性樹脂粒子を得ることは困難であった。
また、従来の逆相懸濁重合では、重合反応時に内部架橋剤を使用しなくても吸水性樹脂前駆体が得られるものの、部分的に塊状物が生成したり、乾燥工程において粒子同士が粘着して凝集したりする傾向があった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、内部架橋剤の非存在下、特定の界面活性剤、石油系炭化水素分散媒、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を用いて逆相懸濁重合を行うことで、止水材用途に好適な形態の粒子がより簡便に得られることを見出した。更に、得られた粒子に特定の架橋反応、後架橋反応を行うことで、止水材用途に好適な高性能の吸水性樹脂粒子が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
なお、本発明において、内部架橋剤とは、単量体の重合中に高分子鎖間の橋架け構造を形成するのに寄与する化合物のことをいう。具体的には、前記水溶性エチレン性不飽和単量体と重合可能な重合性不飽和基を分子内に2個以上有する化合物、前記水溶性エチレン性不飽和単量体中に含まれる官能基(例えば、前記アクリル酸の場合はカルボキシル基)と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物等のことをいう。
【0018】
本発明では、HLBが8〜12の界面活性剤を用いる。前記HLBが8〜12の界面活性剤を用いることで、W/O型逆相懸濁の状態が良好となり、好適な粒子径を有する粒子が得られる。なお、前記界面活性剤のHLBは8.5〜10.5が好ましい。
【0019】
前記界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル〔(ポリ)とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。以下同じ〕、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、等のノニオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤のなかでも、W/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径の吸水性樹脂粒子が得られる観点、工業的に入手が容易という観点から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルが好適に用いられ、なかでも、得られる吸水性樹脂粒子の吸水速度の観点から、ソルビタン脂肪酸エステルがより好適に用いられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記界面活性剤の添加量は、W/O型逆相懸濁の状態を安定させ、かつ懸濁安定化効果が得られる効率的な添加量を選択する観点から、第一回目の逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましい。
【0021】
本発明では、W/O型逆相懸濁の状態を安定させる目的で、前記界面活性剤と高分子保護コロイドとを併用してもよい。前記高分子保護コロイドとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、W/O型逆相懸濁の安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体が好ましい。これらの高分子保護コロイドは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記高分子保護コロイドの添加量は、W/O型逆相懸濁の状態を安定させ、かつ懸濁安定化効果が得られる効率的な添加量を選択する観点から、第一回目の逆相懸濁重合で添加される水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましい。
【0023】
前記石油系炭化水素分散媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができ、それらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの石油系炭化水素分散媒のなかでは、工業的に入手が容易である観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びシクロヘキサンが好適に用いられ、なかでも、本発明におけるW/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径の吸水性樹脂粒子が得られる観点、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能も良好な観点から、n−ヘプタンがより好適に用いられる。
【0024】
前記石油系炭化水素分散媒の添加量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、逆相懸濁重合に付される水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは50〜600質量部、より好ましくは100〜550質量部である。
【0025】
本発明において、第一回目の逆相懸濁重合を行う際の反応温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤の種類によって異なるので、一概には決定することができない。通常、該反応温度は、重合を迅速に進行させることで重合時間を短くし、かつ重合熱を除去することが簡単で、かつ円滑に反応を行う観点から、好ましくは20〜110℃、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。
【0026】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、(B)更に中間架橋剤を加えて中間架橋反応を行う工程を行う。このような工程を行うことで、第一回目の逆相懸濁重合により得られる吸水性樹脂粒子を架橋することにより、後述する(C)工程において水溶性エチレン性不飽和単量体を添加した際に、重合後の粒子が添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収することを防ぐことができ、吸収することにより起こる吸水性樹脂粒子の表面状態の変化、吸水性能の悪化を防ぐ。すなわち、吸水速度が遅くなり、膨潤性能が低くなることを防ぐこととなる。
なお、前記(B)工程及び後述する(C)工程は、1回以上行い、必要により2回以上行ってもよい。
【0027】
前記(B)工程の中間架橋反応において用いられる中間架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。
これらの中間架橋剤のなかでも、反応性に優れている観点から、ジグリシジルエーテル化合物が好ましく、なかでも、水溶性が高く、中間架橋剤としてのハンドリング性が良いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルがより好ましく、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能が高いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルが更に好ましい。これらの中間架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記(B)工程において用いられる中間架橋剤の添加量は、前記(B)工程の中間架橋剤を添加する直前の重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量に対して、0.0001〜0.026モル%が好ましく、0.0005〜0.021モル%がより好ましく、0.0025〜0.015モル%が更に好ましい。前記中間架橋剤の添加量が0.0001モル%未満であると、後述の水溶性エチレン性不飽和単量体を添加した際に、重合した粒子が水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収した状態で次の重合に付されるため、得られる吸水性樹脂粒子の表面状態が変化して、吸水性能が悪化するおそれがある。すなわち、吸水速度が遅くなり、膨潤性能が低くなる傾向がある。また、前記中間架橋剤の添加量が0.026モル%を超えると、過度に架橋反応が進行し、得られる吸水性樹脂粒子の吸水性能が低くなるおそれがある。
なお、「前記(B)工程の中間架橋剤を添加する直前の重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量」とは、(B)工程が1回目の場合は、前記(A)工程において添加した水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量を意味し、(B)工程が2回目以降の場合は、1回前の(C)工程において添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を意味する。
【0029】
前記(B)工程において、中間架橋剤を添加する場合の溶媒としては、中間架橋剤を均一に分散させることが可能であれば特に限定されず、水を用いてもよく、親水性有機溶媒を用いてもよい。前記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
前記(B)工程における中間架橋反応の反応温度は60℃以上であることが好ましく、70℃〜前記重合に使用した溶媒の沸点までがより好ましい。前記反応温度が60℃未満であると、中間架橋反応が進みにくく、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低くなるおそれがある。
前記(B)工程における中間架橋反応の反応時間は、反応温度、前記中間架橋剤の種類及び添加量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜200分間が好ましく、5〜100分間がより好ましく、10〜60分間が更に好ましい。
【0031】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、(C)前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加し、内部架橋剤の非存在下、水溶性ラジカル重合開始剤を用いて第二回目の逆相懸濁重合を行い、吸水性樹脂前駆体を作製する工程を行う。
なお、本(C)工程における内部架橋剤の非存在下とは、(C)工程の重合反応において内部架橋剤を添加しないことを意味する。
本発明では、逆相懸濁重合を複数回行うことで、膨潤性能に優れた吸水性樹脂粒子を生産性高く製造することができる。
【0032】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び/又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好適に用いられる。
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることができる。前記水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%〜飽和濃度の範囲であることが好ましい。また、W/O型(Water in Oil型)逆相懸濁の状態が良好で好適な粒径を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高くなるという観点から、30〜45質量%がより好ましく、35〜45質量%であることが更に好ましい。
【0033】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する場合、その酸基をアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和しておいてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び、水酸化アンモニウム等の水溶液等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
前記アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで膨潤能力を高め、かつ、余剰のアルカリ性中和剤の存在により、安全性等に問題が生じないようにする観点から、10〜100モル%の範囲が好ましく、30〜90モル%の範囲がより好ましく、50〜80モル%の範囲が更に好ましい。
【0035】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量は、前記(A)工程において重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、50〜200質量部が好ましく、70〜180質量部がより好ましく、90〜150質量部が更に好ましい。前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量が50質量部未満であると、重合反応時間に対する生産性が低くなることがある。また、前記(C)工程の重合反応の操作に用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量が200質量部を超えると、重合反応時間に対する生産性は高いが、重合反応に用いる水溶性エチレン性不飽和単量体の量が多くなり、重合反応の制御が困難となるおそれがある。
【0036】
前記(C)工程において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体は、前記(B)工程の中間架橋反応が終了した反応混合物中において、前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態で、添加する必要がある。前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解していない状態で添加すると、重合した粒子が添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収し、凝集して一体化(塊状化)してしまう。
「前記界面活性剤が石油系炭化水素分散媒に溶解している状態」は、例えば、前記中間架橋反応が終了した反応混合物の温度を制御することにより、作り出すことができる。前記反応混合物の温度は、前記界面活性剤の種類により異なるので一概には決定することができないが、例えば、好ましくは40〜65℃であり、より好ましくは50〜60℃である。反応混合物の温度が40℃未満であると、界面活性剤が析出することにより界面活性効果が低くなり、重合した粒子が添加した水溶性エチレン性不飽和単量体を吸収し、凝集して一体化(塊状化)することがある。また、反応混合物の温度が65℃を超えると、水溶性エチレン性不飽和単量体を添加している際に重合反応が起こる等の危険があるので好ましくない。
【0037】
前記(C)工程において用いられる水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記(C)工程において用いられる水溶性ラジカル重合開始剤の添加量は、重合開始剤の種類や、反応条件によって異なるので、一概には決められないが、通常、前記(A)工程において添加する水溶性エチレン性不飽和単量体のモル量に対して0.005〜1モル%である。水溶性ラジカル重合開始剤の添加量が0.005モル%未満であると、重合反応に多大な時間を要するので、好ましくない。水溶性ラジカル重合開始剤の添加量が1モル%を超えると、急激な重合反応が起こるので、好ましくない。
なお、前記水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL−アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0039】
前記(C)工程では、吸水性樹脂粒子の膨潤性能、特に平衡膨潤性能を高める観点から、内部架橋剤非存在下で重合反応を行う。
また、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能を制御する観点から、連鎖移動剤を使用してもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
前記(C)工程において、反応温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤の種類によって異なるので、一概には決定することができない。通常、該反応温度は、重合を迅速に進行させることで重合時間を短くする観点、重合熱を除去することが容易である観点、円滑に反応を行う観点から、好ましくは20〜110℃であり、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。
【0040】
通常、前記(A)〜(C)工程を経て得られる吸水性樹脂前駆体は、球状、顆粒状、破砕状、金平糖状及びそれらの凝集物などの様々な形態で得られるが、本発明においては、乾燥工程において粒子同士が粘着して凝集しにくく、かつ、止水材用途に好適な形態の粒子がより簡便に得られる観点から、吸水性樹脂前駆体は顆粒状で得られることが好ましく、表面に一様な凹凸のある顆粒状がより好ましい。
【0041】
また、後述の(D)工程の直前に粒子径をコントロールする観点から、非晶質シリカを添加し凝集粒子にすることもできる。非晶質シリカとしては、乾式シリカや、湿式シリカ等が挙げられ、これらの非晶質シリカの中でも湿式シリカが好適に用いられる。
非晶質シリカの添加量としては、前記(A)工程及び(C)工程において重合に付した水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量100質量部に対して、好ましくは0.0001〜1質量部、より好ましくは0.001〜0.5質量部、更に好ましくは0.01〜0.2質量部である。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の総質量は、重合反応に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求めることができる。
【0042】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法では、次いで、(D)前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整した後、後架橋反応させる工程を行う。
【0043】
前記吸水性樹脂前駆体の水分率を、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%に調整する方法(以下、単に1次乾燥ともいう)としては、特に限定されないが、前記吸水性樹脂前駆体が石油系炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留による脱水を行う方法、デカンテーションにより吸水性樹脂前駆体を取り出し、減圧乾燥する方法、フィルターにより吸水性樹脂前駆体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。なかでも、製造工程における簡便さから、重合により得られる吸水性樹脂前駆体を石油系炭化水素分散媒に分散し、共沸蒸留による脱水を行う方法が好ましい。
【0044】
前記1次乾燥工程を行った後、得られた吸水性樹脂前駆体に後架橋剤を添加し、後架橋反応を行う。前記のようにして得られた吸水性樹脂前駆体に対して、特定の条件での後架橋反応を施すことにより、優れた膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる。
【0045】
前記後架橋剤としては、前記水溶性エチレン性不飽和単量体中に含まれる官能基(例えば、前記アクリル酸の場合はカルボキシル基)と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物であり、また、好ましくは水溶性の化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの後架橋剤のなかでも、反応性に優れている観点から、ジグリシジルエーテル化合物が好ましく、なかでも、水溶性が高く、架橋剤としてのハンドリング性が良いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルがより好ましく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が高いという観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルがさらに好ましい。
なお、前記後架橋剤は、前記中間架橋剤と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0046】
前記後架橋剤の添加量は、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対して、0.001〜3モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が更に好ましく、0.02〜0.5モル%が特に好ましい。前記水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量に対する後架橋剤添加量が0.001モル%未満であると、架橋が弱いために、吸水性樹脂粒子表面が、吸水時に粘性をおびやすく、初期膨潤性能が低くなる傾向があり、3モル%を超えると、得られる吸水性樹脂粒子の保水量が低下し、それに伴い膨潤性能が低くなるおそれがある。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の総モル量は、前記(A)工程及び(C)工程で用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総モル量から、計算により求めることができる。
【0047】
本発明において、前記吸水性樹脂前駆体と後架橋剤との混合は、前記吸水性樹脂前駆体の水分率を特定の範囲に調整した後に行う。このように、吸水性樹脂前駆体と後架橋剤との反応時における水分率をコントロールすることにより、より好適に後架橋反応を進行させることができる。
【0048】
後架橋工程における吸水性樹脂前駆体の水分率は、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分に対して30〜100質量%であり、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜80質量%である。前記水分率が30質量%未満であると、後架橋剤が吸水性樹脂前駆体に均一に分散しない。前記水分率が100質量%を超えると、吸水性樹脂前駆体の表面層を架橋することが困難となり、膨潤性能等の性能が低下する。
なお、前記水分率は、重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、1次乾燥工程により外部に抽出された水分量を差し引いた量(1次乾燥ゲルの水分量)に、後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水分量を合計することにより、吸水性樹脂前駆体の水分量を算出した後、吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の質量に対する吸水性樹脂前駆体の水分量の割合を算出することによって求めることできる。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の質量は、前記(A)工程及び(C)工程で用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求めることができる。
1次乾燥ゲルの水分量に対する、後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水分量は、乾燥工程を合理的に短縮してプロセスの経済性を高めつつ、後架橋剤を均一に分散させる観点から、100:0〜60:40が好ましく、99:1〜70:30がより好ましく、98:2〜80:20が更に好ましく、98:2〜90:10がより更に好ましい。
【0049】
前記吸水性樹脂前駆体と後架橋剤との混合の際には、後架橋剤を均一に分散させるための溶媒として、水を用いてもよく、親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、必要に応じて、水と混合したり、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
前記吸水性樹脂前駆体を後架橋剤で後架橋反応させる際の反応温度は60℃以上であることが好ましく、70〜200℃がより好ましく、80〜150℃が更に好ましい。反応温度が60℃未満であると、後架橋反応が進みにくく、反応に過大な時間を要する傾向があり、反応温度が200℃を超えると、得られる吸水性樹脂粒子の分解や、吸水性樹脂粒子の着色が発生するおそれがある。
前記後架橋の反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜300分間、好ましくは5〜200分間である。
【0051】
本発明の方法により、高い膨潤性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる理由は明確ではないが、内部架橋剤の非存在下で適度な粒子の大きさを有する吸水性樹脂前駆体を得たのち、特定の水分率に調整した吸水性樹脂前駆体に、特定条件の後架橋反応を施すことにより、吸水性樹脂粒子の表面近傍と内部の架橋密度バランスが最も好適になるためと考えられる。
【0052】
本発明では、前記(D)工程の後架橋反応を行った後、熱等のエネルギーを外部から加えることにより、水分、有機溶媒等を蒸留により除去することによって、乾燥工程を行ってもよい(以下、この乾燥工程を2次乾燥ともいう)。このような2次乾燥を行うことで、粉末状の吸水性樹脂粒子が得られる。
【0053】
前記2次乾燥の方法としては、特に限定されず、例えば、石油系炭化水素分散媒に分散した後架橋反応後の樹脂粒子の混合物を、蒸留することにより水分と石油系炭化水素分散媒を同時に除去する方法、デカンテーションにより樹脂粒子を取り出し、減圧乾燥する方法、フィルターにより樹脂粒子をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。なかでも、製造工程における簡便さから、石油系炭化水素分散媒に分散した後架橋反応後の樹脂粒子の混合物を、蒸留することにより水分と石油系炭化水素分散媒を同時に除去する方法が好ましい。
【0054】
本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法を用いることで、優れた吸水速度及び高い平衡膨潤性能を併せ持ち、かつ、粒径が適度でハンドリング性が良好である吸水性樹脂粒子を得ることができる。このような吸水性樹脂粒子もまた本発明の1つである。
【0055】
本発明の吸水性樹脂粒子は、平衡膨潤性能が10〜28mmであることが好ましい。このように高い膨潤性能を有することで、ケーブル外部素材の亀裂による初期浸水を防止した後、長時間の浸水防止効果を維持し、かつケーブルの素材劣化を促進しない程度の適度な膨潤圧力を発揮することができる。また、前記平衡膨潤性能は、11〜24mmであることがより好ましく、12〜20mmであることが更に好ましく、13〜18mmが特に好ましい。
【0056】
本発明の吸水性樹脂粒子は、生理食塩水の吸水速度が1〜10秒であることが好ましい。このように優れた吸水速度を有することで、ケーブルの亀裂による浸水をより速く防止することができる。また、前記吸水速度は、1〜8秒がより好ましく、1〜5秒が更に好ましい。
【0057】
本発明の吸水性樹脂粒子は、中位粒径が100〜400μmであることが好ましい。このような中位粒径を有することで、止水材の製造時における粉体としてのハンドリング性を良好に保ち、かつ、止水材を薄くすることができる。また、前記中位粒径は、120〜350μmがより好ましく、130〜300μmが更に好ましい。
【0058】
本発明の吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能は特に限定されないが、より多くの水を吸収するほうが好ましいことから、20〜60g/gが好ましく、25〜55g/gがより好ましい。
【0059】
本発明の吸水性樹脂粒子の平衡膨潤性能、生理食塩水の吸水速度、生理食塩水保水能及び中位粒径は、いずれも後述する実施例に記載の測定方法によって測定したときの値である。
【0060】
本発明の吸水性樹脂粒子には、更に目的に応じて、耐熱性安定剤、酸化防止剤、抗菌剤等の添加剤を添加してもよい。
前記添加剤の量は、吸水性樹脂粒子の用途、添加剤の種類等によって異なるが、前記(A)工程及び(C)工程において添加された水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。
なお、前記吸水性樹脂前駆体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の総質量は、重合反応に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求めることができる。