特許第5659059号(P5659059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659059
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】シリコン基板のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   H01L21/302 106
   H01L21/302 102
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-66342(P2011-66342)
(22)【出願日】2011年3月24日
(65)【公開番号】特開2012-204510(P2012-204510A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】村山 貴英
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080897(JP,A)
【文献】 特開2004−152811(JP,A)
【文献】 特開2000−040696(JP,A)
【文献】 特開平06−151382(JP,A)
【文献】 特表2011−508431(JP,A)
【文献】 特開2007−012894(JP,A)
【文献】 特開平11−251316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線の埋め込まれた凹部を有して該凹部の内面にはバリアメタル層が形成されたシリコン絶縁層を基板上に有するシリコン基板に対して、前記シリコン絶縁層と前記シリコン基板とを貫通する孔を前記配線が含まれる領域に形成するシリコン基板のエッチング方法であって、
前記配線、前記バリアメタル層、前記シリコン絶縁層をエッチングした後に前記シリコン基板をエッチングするとともに、
前記シリコン基板のエッチングを終了する前に、前記シリコン絶縁層のエッチングの終了時には、該エッチングの施された領域を希ガスでスパッタする
ことを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
【請求項2】
前記シリコン基板のエッチングの開始時に、該エッチングの施される領域を希ガスでスパッタする
請求項1に記載のシリコン基板のエッチング方法。
【請求項3】
前記孔を形成する際に、前記シリコン基板のエッチングの開始時には、希ガスによるスパッタ速度を該開始時以降より大きくする
請求項1又は2に記載のシリコン基板のエッチング方法。
【請求項4】
前記シリコン基板上には、複数の前記シリコン絶縁層が積層され、
前記シリコン絶縁層のそれぞれが有する前記バリアメタル層をエッチングする毎に、該シリコン絶縁層の表面を希ガスでスパッタする
請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコン基板のエッチング方法。
【請求項5】
前記シリコン基板上には、複数の前記シリコン絶縁層が積層され、
前記シリコン絶縁層の全てのエッチングの終了時に、該エッチングの施された領域を希ガスでスパッタする
請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコン基板のエッチング方法。
【請求項6】
前記希ガスがアルゴンガスであって、
前記シリコン基板の表面を前記アルゴンガスによってスパッタするときには、
前記アルゴンガスに六フッ化硫黄ガス、臭化水素ガス、及び塩化水素ガスから選択される少なくとも一つのガスを混合する
請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコン基板のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線が含まれるシリコン絶縁層を有したシリコン基板にシリコン絶縁層とシリコン基板とを貫通する孔を形成するシリコン基板のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種半導体デバイスに対する小型化や高密度化の要請から、多層配線層の形成されたシリコン基板同士を積層して半導体デバイスを形成することにより、該半導体デバイスの実装面積を縮小しつつ素子の密度を高める試みが盛んに行われている。これに際して、例えば特許文献1に記載のように、シリコン基板を貫通するシリコン貫通電極(Through Silicon Via :TSV)によって、シリコン基板が有する素子と他のシリコン基板が有する素子とを接続する試みも盛んに行われている。
【0003】
従来のように、シリコン基板間での電気的な接続をボンディングワイヤにて行う場合、上述のような半導体デバイスの実装には、ボンディングワイヤの引き回しに必要な面積とシリコン基板の面積とを足した分だけの面積が必要とされる。これに対し、シリコン基板間の接続をTSVによって行った場合には、上記シリコン基板の面積と略等しい面積のみで半導体デバイスを実装することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−87233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記多層配線層に形成される各種の配線には、半導体デバイスにて電気的な接続に寄与する接続配線の他、電気的な接続には寄与しないダミー配線も含まれている。このようなダミー配線は、通常、ダミー配線以外の配線を形成するときに、これの加工精度を高める目的で形成されるものである。それゆえに、ダミー配線以外の配線が形成された後にあっては、こうしたダミー配線に対して特別な機能は必要とされていない。そこで、素子や接続配線のレイアウトの都合上、ダミー配線が含まれる領域に上述したTSVが形成されることも少なくない。図5は、TSV用の貫通孔が形成される工程の一部を示す工程図であって、TSVが形成される領域に上記ダミー配線が含まれる場合を示す。なお、図5には、貫通孔の加工形状を説明する便宜上、ダミー配線を含むシリコン絶縁層が2層である場合を例示する。
【0006】
図5(a)に示されるように、シリコン基板61上には、第一シリコン絶縁層62と第二シリコン絶縁層63とが積層されている。これらシリコン絶縁層62,63のそれぞれでは、該シリコン絶縁層62,63に形成された溝部62g,63gの内面全体が、タンタルからなるバリアメタル層62b,63bによって覆われるとともに、該バリアメタル層62b,63bで覆われた溝部62g,63gの内部には、銅からなるダミー配線62c,63cが埋め込まれている。
【0007】
ここで、図5(a)の二点鎖線で挟まれる領域にTSVが形成される場合、まず、該領域における第二シリコン絶縁層63の上層が、各種のエッチングにより除去される。次いで、ウェットエッチングによるダミー配線63cの除去、ドライエッチングによるバリアメタル層63b及びシリコン絶縁層63の除去が、この順に行われる。続いて、ウェット
エッチングによるダミー配線62cの除去、ドライエッチングによるバリアメタル層62b及びシリコン絶縁層62の除去が、この順に行われる。これら一連のエッチングにより、図5(b)に示されるように、シリコン基板61の表面のうち、TSVの形成される領域が露出して、この露出した領域に対し、シリコン基板61のエッチングが行われる。
【0008】
この際、互いに異なる材料からなる複数の層の各々が、互いに異なるエッチング条件で連続的にエッチングされるため、一つの層がエッチングされる途中では、該エッチングに用いられるエッチャントによって、他の層の表面が変質することも少なくない。特に、エッチングが進む方向にて、互いに異なる材料が連続するとなれば、こうした材料の変質も生じやすくなる。
【0009】
その結果、図5(b)に示されるように、露出したシリコン基板61の表面のうち、特に溝部62g,63gにおける溝側面の下方には、残渣64が堆積してしまう場合がある。そして、残渣64が存在する状態からシリコン基板61のエッチングが行われると、該残渣64の形成された領域が、他の領域よりもエッチングされにくいために、図5(c)に示されるように、TSVの形成領域には、シリコン基板61のエッチング残り61aが形成されてしまう。つまり、シリコン基板に対してエッチングによる加工の精度が低下してしまうことになる。なお、上記エッチング残りが形成される問題とは、TSVの形成領域に含まれるダミー配線の層数や配線層の形成材料に関わらず、TSVが形成される領域にシリコン絶縁層とダミー配線とが含まれる場合には、概ね共通するものである。
【0010】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリコン絶縁層とシリコン基板とを貫通する孔の加工の精度を配線が含まれる領域にて高めることのできるシリコン基板のエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、配線の埋め込まれた凹部を有して該凹部の内面にはバリアメタル層が形成されたシリコン絶縁層を基板上に有するシリコン基板に対して、前記シリコン絶縁層と前記シリコン基板とを貫通する孔を前記配線が含まれる領域に形成するシリコン基板のエッチング方法であって、前記配線、前記バリアメタル層、前記シリコン絶縁層をエッチングした後に前記シリコン基板をエッチングするとともに、前記シリコン基板のエッチングを終了する前に、前記シリコン絶縁層のエッチングの終了時には、該エッチングの施された領域を希ガスでスパッタすることを要旨とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、シリコン基板のエッチングが終了する前に、シリコン絶縁層及びシリコン基板の少なくとも1つが希ガスでスパッタされる。そのため、配線のエッチングやバリアメタル層のエッチングによって生じた残渣は、希ガスの粒子が該残渣に衝突することによって、シリコン基板上から物理的に取り除かれることになる。このように、シリコン基板のエッチングを阻害する残渣が、物理的に除去されるため、該残渣の構成材料が、配線の形成材料、バリアメタル層の形成材料、及びこれらのエッチングにより生じた生成物等のいずれをどのような割合で含んでいたとしても、こうした残渣をエッチングの領域から除去することが可能になる。したがって、このようなスパッタが行われない場合と比較して、シリコン基板のエッチングを阻害する残渣が少なくなる。その結果、シリコン基板に対するエッチングの加工精度を高めることが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、シリコン絶縁層のエッチングが終了するときに、該エッチングの施された領域が、希ガスによってスパッタされる。これにより、シリコン絶縁層のエッチングの終了までに生じる残渣の全てが、希ガスのスパッタによる除去の対象になる。それゆえに、シリコン基板のエッチングを阻害する残渣が、シリコン絶縁層のエッチング中に生じる場合であっても、シリコン基板のエッチングが開始される前には、こうした残渣を少なくすることが可能である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記シリコン基板のエッチングの開始時に、該エッチングの施される領域を希ガスでスパッタすることを要旨とする。
【0015】
請求項2に記載の発明よれば、シリコン基板のエッチングが開始されるときに、該エッチングの施される領域が、希ガスによってスパッタされる。これにより、シリコン絶縁層とシリコン基板との間に他の層が介在する場合であっても、シリコン基板の開始時までに生じる残渣の全てが、希ガスのスパッタによる除去の対象になる。それゆえに、シリコン基板のエッチングを阻害する残渣が、シリコン絶縁層のエッチング後であって、シリコン基板のエッチング前に生じる場合であっても、シリコン基板のエッチングが開始される前には、こうした残渣を少なくすることが可能である。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記孔を形成する際に、前記シリコン基板のエッチングの開始時には、希ガスによるスパッタ速度を該開始時以降より大きくすることを要旨とする。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、シリコン基板のエッチングの開始時には、希ガスによるスパッタ速度が、該開始時以降より大きくなる。これにより、シリコン基板のエッチングが開始されるときには、該エッチングを阻害する残渣の除去が、最も効果的に進められることになる。
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記シリコン基板上には、複数の前記シリコン絶縁層が積層され、前記シリコン絶縁層のそれぞれが有する前記バリアメタル層をエッチングする毎に、該シリコン絶縁層の表面を希ガスでスパッタすることを要旨とする。
【0021】
シリコン基板上に2以上のシリコン絶縁層が積層されている場合には、シリコン絶縁層の層数が多くなる程、バリアメタル層や配線の数が多くなることから、これらのエッチングにより生じる残渣も自ずと多くなる。この点、請求項に記載の発明によれば、シリコン絶縁層のそれぞれが有するバリアメタル層がエッチングされる毎に、該シリコン絶縁層の表面が希ガスでスパッタされる。そのため、シリコン絶縁層の積層数が多くなることで、上記残渣の発生頻度が高くなったとしても、より確実に残渣を除去することができる。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記シリコン基板上には、複数の前記シリコン絶縁層が積層され、前記シリコン絶縁層の全てのエッチングの終了時に、該エッチングの施された領域を希ガスでスパッタすることを要旨とする。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、複数のシリコン絶縁層の全てがエッチングされたときに、該エッチングの施された領域が希ガスでスパッタされる。それゆえに、希ガスによるスパッタの回数が増えることを抑えつつ、シリコン絶縁層を複数有するようなシリコン基板においてもエッチングによる加工の精度を高めることができる。
【0024】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記希ガスがアルゴンガスであって、前記シリコン基板の表面を前記アルゴンガスによってスパッタするときには、前記アルゴンガスに六フッ化硫黄ガス、臭化水素ガス、及び塩化水素ガスから選択される少なくとも一つのガスを混合することを要旨とする。
【0025】
請求項に記載の発明では、シリコン絶縁層又はシリコン基板をスパッタするガスに、希ガスであるアルゴンガスに加えて、六フッ化硫黄ガス、臭化水素ガス、及び塩化水素ガスが含まれている。これら六フッ化硫黄ガス、臭化水素ガス、及び塩化水素ガスは各種金属のエッチングが可能なガスであることから、残渣をスパッタするガスにこれらのガスが含まれていることで、バリアメタル層や配線の構成元素を含む残渣が除去されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るシリコン基板のエッチング方法における一実施形態を用いたエッチングの処理対象とされる多層配線基板の断面構造を示す断面図。
図2】(a)(b)(c)(d)同実施形態のエッチング方法によるエッチング工程を順に示す工程図。
図3】(a)(b)(c)(d)同実施形態のエッチング方法によるエッチング工程を順に示す工程図。
図4リコン基板のエッチング装置における一実施形態であるドライエッチング装置の概略構成を示す構成図。
図5】(a)(b)(c)従来のシリコン基板のエッチング方法によるエッチング工程の一部を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のシリコン基板のエッチング方法における一実施形態について図1図4を参照して説明する。まず、本発明のシリコン基板のエッチング方法における一実施形態について図1図3を参照して説明する。始めに、本実施形態のシリコン基板のエッチング方法を用いたエッチング処理の対象である多層配線基板について図1を参照して説明する。
【0028】
[多層配線基板]
図1に示されるように、多層配線基板10の有するシリコン基板11の基板表面には、例えばリンを含有する酸化シリコン(PSG)からなりシリコン絶縁層を構成する絶縁層12が形成されている。この絶縁層12上には、多層配線基板10における電気的な接続に寄与する配線を有した第一配線層13が積層されている。
【0029】
第一配線層13を構成する第一シリコン絶縁層13aは、例えば低誘電率材料からなるシリコン酸化物層であって、該第一シリコン絶縁層13aの上面には、該上面に開口を有した凹部としての複数の配線溝が凹設されている。各配線溝の内面は、バリアメタル層13bによって覆われており、該バリアメタル層13bで覆われた配線溝の内部には、接続配線13cやダミー配線13dが埋め込まれている。
【0030】
バリアメタル層13bは、例えばタンタル(Ta)からなる層であって、接続配線13c及びダミー配線13dにおける上面以外の面を覆うことによって、これら配線13c,13dの形成元素の拡散を抑制する。接続配線13cは、例えば銅からなる配線であって、多層配線基板10内に形成された能動素子や受動素子等の各種素子に結線されている。また、ダミー配線13dは、接続配線13cと同じく、銅からなる配線である一方、第一配線層13上に積層される各層や上記接続配線13cに対する加工の精度を高める目的のために形成されている。そのため、ダミー配線13dは、上記接続配線13cとは異なり、完成した多層配線基板10においては、該多層配線基板10における電気的な接続に寄与する等の特別な機能を有していない。
【0031】
第一配線層13上には、該第一配線層13の上面に形成された接続配線13c及びダミー配線13dを覆うように、これらの形成材料が拡散することを抑制する第一拡散防止層14が形成されている。第一拡散防止層14は、例えば炭化シリコン(SiC)で形成され、該第一拡散防止層14には、第二配線層15が積層されている。
【0032】
第二配線層15を構成する第二シリコン絶縁層15aは、上記第一配線層13と同様に、例えば低誘電率材料からなるシリコン酸化物層であって、該第二シリコン絶縁層15aの上面には、該上面に開口を有した凹部としての複数の配線溝が凹設されている。各配線溝の内面は、これもまた第一配線層13と同様に、タンタルからなるバリアメタル層15bによって覆われており、該バリアメタル層15bで覆われた配線溝の内部には、銅からなる接続配線15cやダミー配線15dが埋め込まれている。
【0033】
接続配線15cは、上記第一配線層13の有する接続配線13cの直上に形成されているとともに、上記第一拡散防止層14の貫通孔に埋め込まれたバリアメタル層15bを介して、接続配線13cと接続されている。ダミー配線15dは、第一配線層13においてダミー配線13dの形成された領域の直上に形成されている。ダミー配線15dは、ダミー配線13dと同じく、上記接続配線13c,15cとは異なり、多層配線基板10にて電気的な接続に寄与する等の特別な機能を有していない。
【0034】
第二配線層15上には、該第二配線層15の上面に形成された接続配線15c及びダミー配線15dに対して、これらを形成する銅が拡散することを抑制する第二拡散防止層16が形成されている。第二拡散防止層16は、上記第一拡散防止層14と同様に、炭化シリコンで形成されている。
【0035】
第二拡散防止層16上には、例えば酸化シリコン(SiO)からなる絶縁層17が形成されている。また、絶縁層17上には、第一封止層18a、第二封止層18b、及び第三封止層18cからなる封止層18が形成されている。これら封止層18a,18b,18cの各々は、例えば窒化シリコン(SiN)からなる層である。
【0036】
上記第二拡散防止層16、絶縁層17、及び第一封止層18aには、各層16,17,18aを貫通する貫通孔が、上記接続配線13c,15cの直上に形成されている。また、この貫通孔の内部には、バリアメタル層BAとパッドPとが埋め込まれている。バリアメタル層BAは、上記バリアメタル層13b,15bと同様に、例えばタンタルからなる層であって、パッドPの形成材料の拡散を抑制する。パッドPは、例えばアルミニウム−
銅合金(AlCu)からなるものであって、バリアメタル層BAを介して上記接続配線15cに接続されている。なお、パッドP及びバリアメタル層BAは、第一封止層18aの表面の一部にも形成されている。こうしたパッドPの上面のうち、他の多層配線基板10と接続されない部位は、上記第二封止層18b及び第三封止層18cによって覆われることで、外部環境から保護されている。
【0037】
上述の多層配線基板10は、該多層配線基板10の封止層18上に他の多層配線基板10の封止層18が積層されるように、あるいは、該多層配線基板10の封止層18上に他の多層配線基板10のシリコン基板11が積層されるように三次元的に実装されることで半導体デバイスを形成する。このとき、多層配線基板10のパッドP同士は、上記各層の積層方向にシリコン基板11を貫通するシリコン貫通電極(TSV)によって電気的に接続される。そして、多層配線基板10にシリコン貫通電極が埋め込まれるときには、該シリコン貫通電極の形成に先立ち、シリコン基板11の上面に積層された上記各層、つまり絶縁層12,17、配線層13,15、拡散防止層14,16、及び封止層18にも貫通孔が形成される。
【0038】
[シリコン基板のエッチング方法]
次に、本発明のシリコン基板のエッチング方法を具現化した一実施形態として、上記シリコン基板11上の各層と該シリコン基板11とに貫通孔を形成する方法について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2及び図3には、先の図1に示した多層配線基板10のうち、シリコン貫通電極(TSV)の形成される領域周辺のみを示している。なお、図示の便宜上、上記第一封止層18a、第二封止層18b、及び第三封止層18cを一つの封止層18として示すとともに、上記各層の厚さについても一部変更して示している。
【0039】
図2(a)に示されるように、多層配線基板10の封止層18上には、ダミー配線13d,15dの直上に開口を有したレジストパターンRPが形成される。レジストパターンRPの形成された多層配線基板10には、例えばドライエッチング装置によって、図2(b)に示されるように、封止層18、絶縁層17、及び第二拡散防止層16のエッチングが行われる。次いで、上記封止層18、絶縁層17、及び第二拡散防止層16のエッチングにより第二配線層15の表面が露出すると、多層配線基板10上に形成されたレジストパターンRPが除去される。そして、レジストパターンRPが除去されると、図2(c)に示されるように、ダミー配線15dのウェットエッチングが開始される。なお、上記レジストパターンRPが除去されて以降のエッチング処理では、上記封止層18がハードマスクとして機能する。
【0040】
ダミー配線15dのウェットエッチングが終了すると、バリアメタル層15bの露出した多層配線基板10が、例えばドライエッチング装置に搬入されて、バリアメタル層15bのドライエッチングが開始される。この際、バリアメタル層15bのドライエッチングが行われると、図2(d)に示されるように、ダミー配線15dとバリアメタル層15bとが除去されることで露出した配線溝の底面、特に該底面の周縁に残渣19が堆積する。残渣19には、ダミー配線15dに対するウェットエッチングによって変質したバリアメタル層15bの一部、こうした変質により肥大化したバリアメタル層15bの一部等が含まれる。
【0041】
バリアメタル層15bのドライエッチングが終了すると、図3(a)に示されるように、第二シリコン絶縁層15aに対するドライエッチングが開始される。この際、側壁保護用の成膜種を生成するべく酸素ガスやCF系のガスが用いられる低誘電率材料用のエッチング条件によっては、上記残渣19の全てを除去できないことから、該残渣19の下方では、第二シリコン絶縁層15aのエッチング速度が、他の部位よりも小さくなる。そして、バリアメタル層15bのエッチングや第二シリコン絶縁層15aのエッチングにより生
じた残渣19が、第二シリコン絶縁層15aの除去によって露出した第一拡散防止層14の上面に堆積することになる。なお、バリアメタル層15bのドライエッチングと、第二シリコン絶縁層15aのドライエッチングとを各別に行うようにしているが、これらを同時にドライエッチングするようにしてもよい。
【0042】
このようにして第二配線層15のエッチングが終了すると、図3(b)に示されるように、第一拡散防止層14及び第一配線層13のドライエッチングが行われる。なお、第一拡散防止層14は、上記第二拡散防止層16と同様の方法で除去されるとともに、第一配線層13は、上記第二配線層15と同様の方法で除去される。この第一配線層13の除去時にも、ダミー配線13d及びバリアメタル層13bのエッチングに起因する残渣19が堆積し続ける。そのため、第一配線層13のエッチングの終了時には、第二配線層15のエッチングの終了時に認められた残渣19よりも多くの残渣19が絶縁層12の表面に堆積することになる。
【0043】
そして、第一配線層13のエッチングが終了すると、図3(c)に示されるように、絶縁層12のドライエッチングが行われる。この際、側壁保護用の成膜種を生成するべく酸素ガスやCF系のガスが用いられるリンを含む酸化シリコン用のエッチング条件では、上記残渣19の全てを除去できないことから、該残渣19は、これもまた残渣19の下方におけるエッチング速度を他の部位よりも小さくする。そして、第一配線層13のエッチングや絶縁層12のエッチングにより生じた残渣19が、絶縁層12の除去によって露出したシリコン基板11の表面に堆積することになる。このように残渣19が堆積する状態からシリコン基板11のドライエッチングが行われると、該残渣19の形成された領域が、他の領域よりもエッチングされにくいために、TSVの形成領域には、上述したエッチング残りが形成されてしまう。
【0044】
そこで、本実施形態では、絶縁層12のエッチングが終了するときに、希ガスであるアルゴンと、添加ガスとしての六フッ化硫黄(SF)ガスとの混合ガスのプラズマが、シリコン基板11の上面に供給され、これによって、成膜種が含まれない雰囲気で、該シリコン基板11の上面がスパッタされる。しかも、上述した各層のエッチングと比較して、希ガスによるスパッタ速度が大きくなるように、シリコン基板11の上面がスパッタされる。その結果、図3(d)に示されるように、シリコン基板11の上面に堆積していた残渣19が、シリコン基板11の上面から除去されることになる。なお、この際、シリコン基板11の上面には、アルゴンガスのプラズマに加えて、金属をエッチングする六フッ化硫黄ガスのプラズマも供給される。それゆえに、アルゴンイオンによる物理的なスパッタ反応に加えて、スパッタされた残渣19の粒子を揮発性の生成物とする化学的なエッチング反応も同時に進行する。そのため、シリコン基板11の基板表面では、残渣19の除去が、より確実なものとなる。
【0045】
そして、上述のようにして残渣19が除去されると、シリコン基板11に対するドライエッチングが行われる。なお、上記ダミー配線13d,15dを除去するためのウェットエッチング以外の処理は、複数のドライエッチング装置に跨って行うようにしてもよいし、単一のドライエッチング装置にて行うようにしてもよい。
【0046】
このように、上述したシリコン基板のエッチング方法によれば、シリコン基板11のエッチングを終了する前に、シリコン基板11の基板表面に堆積した残渣19を除去するようにしている。そのため、シリコン基板11におけるエッチング領域では、残渣19によるエッチングのばらつきが抑制されることから、多層配線基板10に対するエッチングによる加工の精度を高めることができる。
【0047】
なお、上記封止層18、絶縁層17、拡散防止層14,16、ダミー配線13d,15
d、バリアメタル層13b,15b、シリコン絶縁層13a,15a、絶縁層12、シリコン基板11のエッチングには、例えば下記のエッチングガスやエッチング液が用いられる。
・封止層18:Ar/C/CHF/Oガス
・絶縁層17:Ar/C/CHF/Oガス
・拡散防止層14,16:Ar/C/CHF/Oガス
・ダミー配線13d,15d(銅配線):硫酸/過酸化水素溶液
・バリアメタル層13b,15b:Ar/C/CHF/Oガス
・シリコン絶縁層13a,15a:Ar/C/CHF/Oガス
・絶縁層12:Ar/C/CHF/Oガス
・シリコン基板11:SF/O/HBrガス
[シリコン基板のエッチング装置]
次に、シリコン基板のエッチング装置を具現化した一実施形態としてのドライエッチング装置について図4を参照して説明する。なお、このドライエッチング装置は、シリコン基板11のエッチング処理と、該シリコン基板11の基板表面に堆積した残渣19に対するスパッタ処理とを行う装置として具現化されたものである。しかしながら、上記各層のエッチングに用いられるガスを供給するガス供給部を上記ドライエッチング装置に接続することによって、多層配線基板10の有する各層のドライエッチングをも行う装置として具現化してもよい。
【0048】
ドライエッチング装置20の備える円筒状の真空槽21には、該真空槽21の開口を封止する石英窓22が固着されている。真空槽21と石英窓22とによって形成される空間内には、処理対象である基板Sを保持する基板ステージ23が配設されている。なお、基板Sとは、先の図3(c)に示されるように、シリコン基板11を露出する開口の形成された多層配線基板10であって、シリコン基板11の基板表面に、第一配線層13及び第二配線層15のエッチングに起因する残渣19が堆積されているものである。
【0049】
基板ステージ23に内設された図示しないステージ電極には、バイアス用整合器24を介して、例えば13.56MHzの高周波電力を出力するプラズマ生成部を構成するバイアス用高周波電源25が接続されている。バイアス用整合器24は、ブロッキングコンデンサを有してステージ電極に負のバイアス電圧を印加するとともに、バイアス用高周波電源25の出力インピーダンスとその負荷の入力インピーダンスとを整合させる。
【0050】
石英窓22の外表面には、真空槽21内にプラズマを生成するプラズマ生成部を構成する高周波アンテナ31が設置されている。高周波アンテナ31は、同一の渦巻き形状をなす上段アンテナ31aと下段アンテナ31bとを有している。上段アンテナ31aと下段アンテナ31bとは、高周波電力の入力される電力入力部31cと、該高周波電力を出力する電力出力部31dとにおいて接続されている。
【0051】
高周波アンテナ31の電力入力部31cには、入力側可変コンデンサ32とアンテナ用整合器33とを介して、例えば13.56MHzの高周波電力を出力するアンテナ用高周波電源34が接続されている。他方、高周波アンテナ31の電力出力部31dには、出力側可変コンデンサ35が接続されている。アンテナ用整合器33は、アンテナ用高周波電源34の出力インピーダンスとその負荷の入力インピーダンスとを整合させる。入力側可変コンデンサ32及び出力側可変コンデンサ35は、各々の容量の変更によって上記石英窓22におけるプラズマの密度を均一化する。
【0052】
上記石英窓22の外周には、上段コイル36a、中段コイル36b、及び下段コイル36cからなる磁場コイル36が配設されている。磁場コイル36には、該磁場コイル36によって磁場を形成するための電力を供給する電流供給部37が接続されている。より正
確には、上段コイル36aには上段電流供給部37aが接続され、また、中段コイル36bには中段電流供給部37bが接続され、そして、下段コイル36cには下段電流供給部37cが接続されている。上段コイル36aと下段コイル36cとに同じ向きの電流が供給されるとともに、中段コイル36bにこれら上段コイル36aと下段コイル36cとは逆向きの電流が供給されることによって、磁場が「0」となる領域である磁場中性線が真空槽21内に形成される。
【0053】
真空槽21に貫通形成された排気口21aには、真空槽21内の流体を排気することで、該真空槽21内を減圧する排気部41が接続されている。排気部41は、真空槽21内の圧力を調節する圧力調節バルブや、真空槽21内の流体を排気する真空ポンプ等からなる。
【0054】
真空槽21に貫通形成されたガス供給口21bには、基板Sをスパッタするスパッタガスを真空槽21内に供給するスパッタガス供給部42が接続されている。スパッタガス供給部42は、スパッタガスであるアルゴン等の希ガスを貯蔵するガスボンベと接続されるマスフローコントローラであって、単位時間あたりに所定流量のスパッタガスを真空槽21内に供給する。また、上記ガス供給口21bには、上記シリコン基板11のエッチングに用いられる例えば六フッ化硫黄(SF)ガスや酸素ガス等のエッチングガスを真空槽21内に供給するエッチングガス供給部43が接続されている。エッチングガス供給部43は、上記スパッタガス供給部42と同様のマスフローコントローラである。そして、ドライエッチング装置20にて残渣19のスパッタが行われるときには、スパッタガス供給部42からアルゴンガスが供給されるとともに、エッチングガス供給部43から六フッ化硫黄ガスが供給される。また、ドライエッチング装置20にてシリコン基板11のエッチングが行われるときには、エッチングガス供給部43から六フッ化硫黄ガス及び成膜種を生成する酸素ガスが供給される。
【0055】
ドライエッチング装置20において処理が行われるときには、上記排気部41が単位時間あたりに排気する流量と、上記スパッタガス供給部42から単位時間あたりに供給されるスパッタガスの流量と、上記エッチングガス供給部43から単位時間あたりに供給されるガスの流量とにより、真空槽21内が所定の圧力とされる。
【0056】
ドライエッチング装置20には、バイアス用高周波電源25、アンテナ用高周波電源34、電流供給部37、排気部41、スパッタガス供給部42、及びエッチングガス供給部43に接続されるとともに、これらの動作を制御する制御部51が搭載されている。
【0057】
制御部51は、上記ステージ電極に供給すべき電力量をプロセス条件の一つとして記憶しているとともに、該電力量に応じた駆動信号をバイアス用高周波電源25に出力する。また、制御部51は、上記高周波アンテナ31に供給すべき電力量をプロセス条件の一つとして記憶しているとともに、該電力量に応じた駆動信号をアンテナ用高周波電源34に出力する。また、制御部51は、上記磁場コイル36に供給すべき電流値をプロセス条件の一つとして記憶しているとともに、該電流値に応じた駆動信号を電流供給部37に出力する。また、制御部51は、排気部41の排気流量をプロセス条件の一つとして記憶するとともに、該流量にて真空槽21内の流体を排気するための駆動信号を排気部41に出力する。また、制御部51は、スパッタガスの供給流量をプロセス条件の一つとして記憶するとともに、該流量にてスパッタガスを供給するための駆動信号をスパッタガス供給部42に出力する。また、制御部51は、エッチングガスの供給流量をプロセス条件の一つとして記憶するとともに、該流量にてエッチングガスを供給するための駆動信号をエッチングガス供給部43に出力する。
【0058】
こうしたドライエッチング装置20にて、上記残渣19のスパッタ処理が行われるとき
には、排気部41の排気流量と、上記スパッタガス供給部42から供給されるガスの流量と、エッチングガス供給部43から供給されるガスの流量とにより、基板Sの搬入された真空槽21内が所定のプロセス圧力とされる。次いで、アンテナ用高周波電源34が高周波アンテナ31に高周波電力を出力するとともに、電流供給部37が磁場コイル36に電流を出力することにより、真空槽21内に上記アルゴンガスと六フッ化硫黄ガスとの混合ガスのプラズマが生成される。そして、バイアス用高周波電源25が上記ステージ電極に高周波電力を出力することによって、ステージ電極に負のバイアス電圧が印加される。そして、混合ガスのプラズマに含まれる正イオンが、バイアス電圧によって基板Sの表面に引き込まれることにより、上記シリコン基板11の表面に堆積した残渣19が除去される。また、これに続いて、シリコン基板11のエッチング処理が行われるときには、排気部41の排気流量と、エッチングガス供給部43から供給されるガスの流量とにより、真空槽21内が所定のプロセス圧力とされる。そして、成膜種が含まれない雰囲気で、真空槽21内に六フッ化硫黄ガスと酸素ガスの混合ガスのプラズマが生成されて、該混合ガスのプラズマに含まれる正イオンが、バイアス電圧によって基板Sの表面に引き込まれることにより、上記シリコン基板11のエッチングが開始される。
【0059】
[実施例]
直径が200〜300mmであり、厚さが10〜100μmのシリコン基板上に、厚さが1000nmの2層以上の低誘電率材料層、厚さが1000nm以上の酸化シリコン層、及び厚さが2000nm以上の窒化シリコン層を順に積層して多層配線基板を形成した。なお、低誘電率材料層のそれぞれには、幅が100nm以上、厚さが100nm以上の銅配線が複数層含まれるようにした。また、銅配線のそれぞれは、厚さが50nmのタンタル乃至はチタンからなるバリアメタル層によって、表面以外の面が覆われているようにすることで、一般的なBEOL(Back End of the Line )構造を想定した多層配線基板
を準備した。
そして、多層配線基板上にフォトレジスト層を積層した後、直径が10μmの開口を形成してレジストパターンを作成した。次いで、以下の条件にて、各層のエッチングを行った。
(窒化シリコン層)
・Ar/C/CHF/Oガス 170/20/10/10sccm
・アンテナ用高周波電源 1200W
・バイアス用高周波電源 600W
・エッチング時間 4分
(酸化シリコン層)
・Ar/C/CHF/Oガス 170/20/10/10sccm
・アンテナ用高周波電源 1200W
・バイアス用高周波電源 600W
・エッチング時間 2分
(銅配線)
・過酸化水素 1×10mol・m−3
・硫酸 0.72×10mol・m−3
・温度 50℃
・エッチング時間 1分
(バリアメタル層と低誘電率材料層)
・Ar/C/CHF/Oガス 170/20/10/10sccm
・アンテナ用高周波電源 1200W
・バイアス用高周波電源 600W
・エッチング時間 1分
そして、シリコン基板の表面を以下の条件にてスパッタした。
(スパッタ条件)
・Ar/SFガス 95sccm/5sccm
・アンテナ用高周波電源 1000W
・バイアス用高周波電源 200W
・スパッタ時間 1分
その後、以下の条件にてシリコン基板をエッチングすることにより、多層配線基板の積層方向に延びる貫通孔をシリコン基板に形成した。
・SF/Oガス 150/50sccm
・アンテナ用高周波電源 1200W
・バイアス用高周波電源 100W
・エッチング時間 2分
このエッチングによって形成された貫通孔の内側面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、該貫通孔の内側面は、均一にエッチングされた平滑面であった。
[比較例]
上記実施例と同様の多層配線基板に対して、上記条件のエッチングにより各層の除去を行った後、シリコン基板の表面をスパッタすることなく、多層配線基板の積層方向に延びる凹部をシリコン基板に形成した。なお、シリコン基板のエッチング条件も、上記実施形態と同一とした。こうしたエッチングによって形成された貫通孔の内側面をSEMにて観察したところ、該貫通孔の内側面には、積層方向に延びる凸形状のエッチング残りが認められた。
【0060】
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られるようになる。
(1)シリコン基板11のエッチングが終了する前に、シリコン基板11のエッチングを阻害する残渣19が、成膜種の含まれない雰囲気で希ガスのスパッタによって物理的に除去される。そのため、該残渣19の構成材料が、ダミー配線13dの形成材料、バリアメタル層13bの形成材料、及びこれらのエッチングにより生じた生成物等のいずれをどのような割合で含んでいたとしても、こうした残渣19をTSVの形成領域から除去することが可能になる。したがって、このようなスパッタが行われない場合と比較して、シリコン基板11のエッチングを阻害する残渣19が少なくなる。その結果、シリコン基板11に対するエッチングの加工精度を高めることが可能となる。
【0061】
(2)絶縁層12のエッチングが終了するときに、該エッチングの施された領域が、希ガスによってスパッタされる。これにより、絶縁層12のエッチングの終了までに生じる残渣19の全てが、希ガスのスパッタによる除去の対象になる。それゆえに、シリコン基板11のエッチングを阻害する残渣19が、絶縁層12のエッチング中に生じる場合であっても、シリコン基板11のエッチングが開始される前には、こうした残渣19を少なくすることが可能である。
【0062】
(3)シリコン基板11のエッチングが開始されるときに、該エッチングの施される領域が、希ガスによってスパッタされる。これにより、シリコン基板11の開始時までに生じる残渣19の全てが、希ガスのスパッタによる除去の対象になる。それゆえに、シリコン基板11のエッチングを阻害する残渣19が、シリコン基板11のエッチング前に生じる場合であっても、シリコン基板11のエッチングが開始される前には、こうした残渣19を少なくすることが可能である。
【0063】
(4)シリコン基板11のエッチングの開始時には、希ガスによるスパッタ速度が、該開始時以降より大きくなる。これにより、シリコン基板11のエッチングが開始されるときには、該エッチングを阻害する残渣19の除去が、最も効果的に進めされることになる。なお、希ガスによるスパッタ速度は、真空槽内に希ガスのみが供給されて、真空槽内の圧力がプロセス圧力に調整され、且つバイアス電力がプロセス電力に調整された状態での
スパッタ速度として得ることが可能である。
【0064】
(5)シリコン絶縁層13a,15a、及び絶縁層12の全てがエッチングされたときに、該エッチングの施された領域が希ガスでスパッタされる。それゆえに、希ガスによるスパッタの回数が増えることを抑えつつ、複数の絶縁層が積層されたシリコン基板11においてもエッチングによる加工の精度を高めることができる。
【0065】
(6)シリコン基板11をスパッタするガスに、希ガスであるアルゴンガスに加えて、六フッ化硫黄ガスが含まれている。六フッ化硫黄ガスは各種金属のエッチングが可能なガスであることから、残渣19をスパッタするガスにこの六フッ化硫黄ガスが含まれていることで、バリアメタル層13bやダミー配線13dの構成元素を含む残渣19が除去されやすくなる。
【0066】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・シリコン基板11上の絶縁層12,17は、上述した絶縁材料とは異なる他の絶縁材料によって形成されてもよい。また、絶縁層12及び絶縁層17の少なくとも一つが割愛された構成であってもよい。
【0067】
・配線層13,15を構成するシリコン絶縁層13a,15aは、低誘電率材料にて形成するようにしたが、低誘電率材料でない絶縁材料によって形成するようにしてもよい。
・上記バリアメタル層13b,15b,BAはタンタルで形成するようにしたが、例えばチタン、窒化チタン、窒化タンタル等、バリア性を有する公知の材料によって形成するようにしてもよい。
【0068】
・上記接続配線13c,15c及びダミー配線13d,15dは銅で形成するとともに、パッドPはアルミニウム−銅合金で形成するようにした。これに限らず、接続配線13c,15c及びダミー配線13d,15dをアルミニウム−銅合金や、アルミニウム等の公知の配線材料によって形成するようにしてもよい。また、パッドPについても、銅やアルミニウム等、公知の配線材料によって形成するようにしてもよい。
【0069】
・封止層18は窒化シリコンによって形成するようにしたが、上記レジストパターンRPを除去して以降のドライエッチングにおいてマスクとして機能する絶縁材料であれば、他の材料によって形成するようにしてもよい。
【0070】
・多層配線基板10の有する上記各層をドライエッチングするときの条件は、各層をドライエッチングすることのできる範囲で任意に変更可能である。
・上記スパッタガスは、アルゴンガスに限らず、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスであればよい。
【0071】
・上記添加ガスは、六フッ化硫黄ガスに限らず、例えば臭化水素(HBr)ガス、及び塩化水素(HCl)ガス等のハロゲン元素を含有するガスであればよい。要は、エッチング対象との反応により、あるいはエッチング反応により生成された生成物との反応により成膜種を形成しないガスであって、金属元素との反応により揮発性の反応生成物を生成するガスであればよい。
【0072】
・シリコン基板11のスパッタは、アルゴンガスのみで行うようにしてもよい。
・多層配線基板10は、第一配線層13と第二配線層15との二つの配線層を有するようにしたが、配線層は、単層であってもよいし、三層以上であってもよい。
【0073】
・シリコン基板11のエッチングの開始時に、該エッチングの対象となる領域をスパッ
タするようにした。これに限らず、多層配線基板10に対するスパッタ処理は、各配線層13,15の有するバリアメタル層13b,15bを除去する毎に、該配線層を構成するシリコン絶縁層の表面に対して行うことも可能である。これにより、以下の効果が得られるようになる。
【0074】
(7)シリコン基板上に2以上のシリコン絶縁層が積層されている場合には、シリコン絶縁層の層数が多くなる程、バリアメタル層や配線の数が多くなることから、これらのエッチングにより生じる残渣も自ずと多くなる。この点、シリコン絶縁層のそれぞれが有するバリアメタル層がエッチングされる毎に、該シリコン絶縁層の表面が希ガスでスパッタされる方法であれば、シリコン絶縁層の積層数が多くなることで、上記残渣の発生頻度が高くなったとしても、より確実に残渣を除去することができる。
【0075】
・多層配線基板10に対するスパッタ処理は、各配線層13,15の有するシリコン絶縁層13a,15aを除去する毎に、該シリコン絶縁層の下層表面に対して行うことも可能である。このような方法であっても、上記(7)に準じた効果を得ることが可能である。
【0076】
・シリコン基板11のエッチングの開始時におけるスパッタ速度は、上述した貫通孔を形成する過程において、該開始時以降より小さくてもよい。このような方法であっても、上記(1)〜(3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0077】
・多層配線基板10は、シリコン基板11の基板表面と絶縁層12との間に、ゲート絶縁膜に用いられる絶縁膜やゲート配線に用いられる導電膜など、シリコン絶縁層とは異なる他の層が介在する構成であってよい。要は、エッチング処理の対象物は、配線の埋め込まれた凹部を有して該凹部の内面にはバリアメタル層が形成されたシリコン絶縁層を基板表面に有するシリコン基板からなる構成であればよい。そして、このような他の層が介在することによって、シリコン絶縁層のエッチングの終了時と、シリコン基板のエッチングの開始時とが、互いに異なる構成であってもよい。また、シリコン基板をエッチングする直前に該シリコン基板を洗浄する工程が入ることによって、終了時と開始時とが互いに異なる構成であってもよい。
【0078】
このような構成からなる多層配線基板であっても、シリコン基板のエッチングが開始されるときに、該エッチングの施される領域が、希ガスによってスパッタされる方法であれば、上記(3)に準じた効果を得ることが可能である。
【0079】
・多層配線基板10に対するスパッタ処理は、シリコン基板11のエッチングの開始前に行われてもよい。例えば、多層配線基板10に対するスパッタ処理は、第一シリコン絶縁層13a、第二シリコン絶縁層15a、絶縁層12のいずれか一つに対して行われてもよい。
【0080】
・多層配線基板10に対するスパッタ処理は、シリコン基板11のエッチングの途中に行われてもよい。要は、シリコン基板のエッチングを終了する前に、シリコン絶縁層及びシリコン基板の少なくとも1つを希ガスでスパッタする構成であればよい。
【0081】
・配線層13,15それぞれの有するダミー配線13d,15d及びバリアメタル層13b,15bを除去した後に、該配線層13,15の有するシリコン絶縁層13a,15aを除去することで、各配線層13,15の有するシリコン絶縁層13a,15aを一度のエッチングで除去するようにした。これに限らず、配線層13,15の有するシリコン絶縁層13a,15aは、以下のようにエッチングを行うことにより、二度のエッチングにより除去するようにしてもよい。すなわち、ダミー配線13d,15dの全体を露出す
るようにシリコン絶縁層13a,15aを除去してから、ダミー配線13d,15dとバリアメタル層13b,15bとを除去した後に、残りのシリコン絶縁層13a,15aを除去するようにしてもよい。
【0082】
・シリコン基板11のエッチングを阻害する残渣19を成膜種の含まれない雰囲気で希ガスのスパッタによって物理的に除去するようにしたが、希ガスによるスパッタで残渣19を除去することが可能であれば、成膜種の含まれる雰囲気にて残渣19の除去を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…多層配線基板、11,61…シリコン基板、12,17…絶縁層、13…第一配線層、13a,15a,62,63…シリコン絶縁層、13b,15b,62b,63b,BA…バリアメタル層、13c,15c…接続配線、13d,15d,62c,63c…ダミー配線、14…第一拡散防止層、15…第二配線層、16…第二拡散防止層、18…封止層、18a…第一封止層、18b…第二封止層、18c…第三封止層、19,64…残渣、20…ドライエッチング装置、21…真空槽、21a…排気口、21b…ガス供給口、22…石英窓、23…基板ステージ、24…バイアス用整合器、25…バイアス用高周波電源、31…高周波アンテナ、31a…上段アンテナ、31b…下段アンテナ、31c…電力入力部、31d…電力出力部、32…入力側可変コンデンサ、33…アンテナ用整合器、34…アンテナ用高周波電源、35…出力側可変コンデンサ、36…磁場コイル、36a…上段コイル、36b…中段コイル、36c…下段コイル、37…電流供給部、37a…上段供給部、37b…中段供給部、37c…下段供給部、41…排気部、42…スパッタガス供給部、43…エッチングガス供給部、51…制御部、P…パッド、RP…レジストパターン、S…基板。
図1
図2
図3
図4
図5