特許第5659225号(P5659225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5659225プラズマ堆積ソースおよび薄膜を堆積させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5659225
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】プラズマ堆積ソースおよび薄膜を堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/505 20060101AFI20150108BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20150108BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C23C16/505
   H01L21/205
   H01L21/31 C
   H05H1/46 M
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-511305(P2012-511305)
(86)(22)【出願日】2010年5月25日
(65)【公表番号】特表2012-528242(P2012-528242A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2010057181
(87)【国際公開番号】WO2010136464
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】09161034.5
(32)【優先日】2009年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】モリソン, ニール
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク, アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ハイン, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】スクーク, ペーター
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−067986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積ガスをプラズマ相に転換し、真空チャンバ内で基板搬送方向に動いている基板上に薄膜を前記プラズマ相から堆積させるプラズマ堆積ソースであって、
前記真空チャンバ内に配置されるように適合され、前記基板搬送方向に平行な電極幅と直交する電極長さとを有する少なくとも1つのRF電極を備え、且つ前記動いている基板に対向して配置される多領域電極デバイスであって、
規格化されたプラズマ体積が、電極表面と、これに対向する基板位置との間に画定されるプラズマ体積を前記電極長さで除算することによって与えられて、前記堆積ガスの欠乏長さに合わせて調節される多領域電極デバイスと、
前記RF電極にRF電力を供給するRF電力発生器とを備え、
前記RF電極は、前記RF電極の一方の端部に配置された少なくとも1つのガス注入部および前記RF電極の反対側の端部に配置された少なくとも1つのガス排出部を有し、
前記基板搬送方向に平行な前記RF電極の前記電極幅が、前記堆積ガスの欠乏プロファイルの臨界欠乏長さよりも小さく、前記臨界欠乏長さが前記堆積ガスの最大モル分率の約10%に定義され、
前記規格化されたプラズマ体積が、5cmと50cmとの間の範囲内である、プラズマ堆積ソース。
【請求項2】
前記RF電極が、前記真空チャンバ内部の、電極表面と、これに対向する基板位置との間に、1200cmから7200cmまでの範囲内のプラズマ体積を画定している、請求項1に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項3】
前記少なくとも1つのガス注入部が、前記基板搬送方向に関して、前記RF電極の最先端部のところに配置され、前記少なくとも1つのガス排出部が、前記RF電極の最後端部のところに配置される、請求項1または2に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項4】
少なくとも2つのRF電極を互いに電気的に接続する少なくとも1つのコネクタをさらに備えた、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項5】
少なくとも2つのRF電極を互いに接続する少なくとも2つのコネクタをさらに備え、前記少なくとも2つのコネクタが、前記基板搬送方向に直交する前記電極長さに沿って配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項6】
少なくとも2つのRF電極が共通発生器極に接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項7】
前記RF電極の前記電極幅が、粒子滞在時間が0.01sから1sまでの範囲内であるように設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項8】
前記基板搬送方向に平行な前記電極幅が、10cmから18cmまでの範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載のプラズマ堆積ソース。
【請求項9】
基板上に薄膜を堆積させるための方法であって、
少なくとも1つのRF電極を備えた多領域電極デバイスを設けることと、
基板搬送方向に前記RF電極を通過させて基板を案内することと、
ガス注入部からガス排出部へ堆積ガスを流すことと、
前記RF電極にRF電力を供給することと、
前記案内された基板上に前記薄膜を堆積させることであって、その場合に前記基板搬送方向に平行な前記RF電極の幅が前記堆積ガスの欠乏プロファイルに合わせて調節されることと
を含み、
前記基板搬送方向に平行な前記RF電極の前記幅が、前記堆積ガスの臨界欠乏長さよりも小さく、前記臨界欠乏長さが、堆積ガスモル分率が元の値の約10%の値に低下する点のところに定義される、方法。
【請求項10】
少なくとも2つのRF電極を同相で駆動する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
電場均一性を、前記基板搬送方向に直交する電極長さに沿って少なくとも2つのRF電極を互いに接続するために設けられた少なくとも2つのコネクタによって調節する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
電極−基板ギャップ距離を、前記堆積ガスの前記欠乏長さが前記基板搬送方向に平行な前記RF電極の電極幅以上になるように調節する、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板上に薄膜を堆積させるためのプラズマエンハンス型化学気相堆積システムに関する。特に、実施形態は、RF(高周波)電極によって堆積ガスをプラズマ相へと転換させるためのプラズマ堆積ソースに関する。その上、本発明は、動いている基板上に薄膜を堆積させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PECVD(プラズマエンハンス型化学気相堆積)は、様々な基板上に薄膜を堆積させるための有力な手段を提供する。このタイプの薄膜堆積は、例えば、マイクロエレクトロニック業界において、柔軟な基板上に光起電力層を堆積させるため、一般に基板表面を修正するため、等の、多くの用途を有する。シリコン系の堆積ガスが、例えば、光起電力セルを製造するために基板上に薄いシリコン膜を作製するために使用される。基板上にシリコン系の材料を堆積させるために使用する堆積ガスは、典型的にはシランまたはシラン系の前駆物質ガスを含む。
【0003】
ガス相からプラズマ相へと転換したときに、これらのガスの挙動が、堆積速度、薄膜の均一性(厚さ、組成)、ならびに望ましくない反応生成物および粉塵の形成に対しての問題点である。光起電力セルの生成のためにシランを使用するケースでは、シラン粉塵の形成は、堆積される薄膜にとって有害である。基板上への薄膜のより効率的な堆積は、堆積速度の増加および粉塵(シラン粉塵、等)の形成の低減に基づく。
【0004】
リニアPECVDソースを、光起電力堆積用途のためのシリコン系の材料のダイナミックな堆積のために使用することができる。それに加えて、プラズマ堆積システムが、望ましくない粉塵形成に起因して動作可能時間の減少を示す場合には、薄膜の堆積に基づく光起電力構成素子またはマイクロエレクトロニック構成素子を製造するためのコストが増加する。粉塵の形成が多いほど、全体のPECVDシステムにとって保守作業間の時間間隔が短くなる。
【発明の概要】
【0005】
上記を考慮して、独立請求項1にしたがった、堆積ガスをプラズマ相に転換し、真空チャンバ内で基板搬送方向に動いている基板上に薄膜をプラズマ相から堆積させるためのプラズマ堆積ソースを提供する。その上に、独立請求項16にしたがった、基板上に薄膜を堆積させるための方法を提供する。
【0006】
一実施形態によれば、堆積ガスをプラズマ相に転換し、真空チャンバ内で基板搬送方向に動いている基板上に薄膜をプラズマ相から堆積させるためのプラズマ堆積ソースを提供する。本プラズマ堆積ソースは、真空チャンバ内に配置されるように適合されており、少なくとも1つのRF電極を備え、RF電極が、基板搬送方向に平行な電極幅および直交する電極長さを有し、動いている基板の反対側に配置される多領域電極デバイスであって、規格化されたプラズマ体積が、電極表面と反対側の基板位置との間に画定されるプラズマ体積を、電極長さで除算することによって与えられ、規格化されたプラズマ体積が、堆積ガスの欠乏長さに合わせて調節される、多領域電極デバイスと、少なくとも1つのRF電極にRF電力を供給するRF電力発生器とを含み、RF電極が、RF電極の一方の端部に配置された少なくとも1つのガス注入部およびRF電極の反対側の端部に配置された少なくとも1つのガス排出部を有する。
【0007】
別の実施形態によれば、基板上に薄膜を堆積させるための方法を提供する。本方法は、少なくとも1つのRF電極を含む多領域電極デバイスを設けることと、基板搬送方向にRF電極を通過させて基板を案内することと、ガス注入部からガス排出部へ堆積ガスを流すことと、RF電極にRF電力を供給することと、案内された基板上に薄膜を堆積させることであって、その場合に基板搬送方向に平行なRF電極の幅を堆積ガスの欠乏プロファイルに合わせて調節することとを含む。
【0008】
したがって、本発明の上に記述した特徴を詳細に理解することが可能な方式で、上に簡潔に要約されている本発明のより詳しい説明を、実施形態を参照することによって知ることができる。添付した図面は、本発明の実施形態に関係し、下記に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書において説明する実施形態によるプラズマ堆積ソースの概略図である。
図2】コーティング対象である動いている基板の上方に配置された、図1に示したプラズマ堆積ソースの側面図である。
図3】シラン系の堆積プロセスを実行したときに形成されるシラン欠乏プロファイルの図である。
図4】本明細書において説明する実施形態によるプラズマ堆積ソースのRF電極の幅寸法に関するプラズマ体積内で生じるシラン欠乏プロファイルおよびSiH濃度プロファイルを示すグラフである。
図5】本明細書において説明するさらに別の実施形態によるRF電極を駆動するためにRF発生器に接続されたプラズマ堆積ソースの断面図である。
図6】本明細書において説明する実施形態にしたがい、3つのRF電極およびそれぞれガス供給デバイスを有するプラズマ堆積ソースの詳細な断面図である。
図7】本明細書において説明する実施形態による、基板側から見たプラズマ堆積ソースの斜視図である。
図8】本明細書において説明する実施形態によって基板上に薄膜を堆積させるための方法を図示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の様々な実施形態を詳細に参照し、その1つまたは複数の例を図に図示する。図面の下記の説明中では、同じ参照番号は、同じ構成要素を参照する。一般的に、個々の実施形態に関して相違点だけを説明する。各例は、本発明の説明のために提供され、本発明を限定するようには意味しない。例えば、一実施形態の一部として図示される特徴または説明される特徴を、さらに別の実施形態をもたらすように他の実施形態に使用するまたは他の実施形態とともに使用することができる。本発明が、かかる変更形態および変形形態を含むことを、意図している。
【0011】
本明細書において説明する実施形態は、とりわけ、動いている基板上に薄膜を、プラズマ相から堆積させるためのプラズマ堆積システムに言及する。堆積ガスをプラズマ相に転換し、動いている基板上に薄膜をプラズマ相から堆積させるためのプラズマ堆積ソースが置かれている真空チャンバ内の基板搬送方向に、基板は動くことができる。
【0012】
図1に示したように、本明細書において説明する実施形態によれば、プラズマ堆積ソース100を、動いている基板500の反対側に配置した3つのRF電極301を含む多領域電極デバイス300を有するリニアPECVD(プラズマエンハンス型化学気相堆積)ソースとして設ける。図1では、多領域電極デバイス300を、基板搬送方向501に動いている基板500の上方に設置するように示している。
【0013】
一般的に、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる異なる実施形態によれば、プラズマ堆積ソースを、柔らかい基板、例えば、織布もしくは箔、ガラス基板、またはシリコン基板上に薄膜を堆積させるように適合させることができる。典型的には、例えば、柔軟なPVモジュールを形成するために、柔軟な基板上に薄膜を堆積させるように、プラズマ堆積ソースを適合させることができ、使用することができる。PVモジュールに関して、効率的な堆積が、著しく異なる膜厚を持つ異なる層を堆積させるための機会を提供することができる。
【0014】
個々のRF電極301は、各々電極幅304および電極長さ305を有し、ここでは、電極幅を基板搬送方向501に平行な方向に測定し、電極長さ305を動いている基板500の基板搬送方向501に直交する方向に測定する。図1に示した典型的な実施形態では、すべての電極の電極面積が同じになるように、3つのRF電極301は、同じ電極幅304および電極長さ305を有することができる。
【0015】
電極面積は、プラズマ領域に対応し、その結果、少なくとも2つの電極301のプラズマ領域が1つの真空チャンバ内に位置する統合されたプラズマ領域を形成する。それによって、1つの真空チャンバ内に置かれた多領域電極デバイス300を形成する。典型的な実施形態によれば、真空システムの区域内に異なる圧力または異なる雰囲気を与えるための圧力アパーチャ、弁、または他の要素によって分離されない領域として、1つの真空チャンバを理解すべきである。本明細書において説明する典型的な実施形態によれば、圧力を、0.01mbarから4.0mbarまでの範囲内とすることができる。
【0016】
堆積ガス流、プラズマ圧力、それぞれのRF電極のところに供給されるRF電力およびRF周波数、ならびに堆積ガス欠乏プロファイルなどのプラズマパラメータに基づいて、電極幅304を決定することができる。個々のRF電極の電極幅304の決定を、図3および図4に関して本明細書で以降に説明する。
【0017】
電極長さ305が、基板搬送方向501に直交し、動いている基板500の横方向の寸法を超えるように、個々のRF電極301の電極長さ305を調節することができる。典型的には、電極長さ305を、電極幅304よりも大きくすることができる。その上、電極幅304が、特定のプラズマ堆積プロセス用に使用するRF周波数に依存することがある。
【0018】
主にプラズマ堆積プロセスを本開示において説明しているが、本明細書において説明する実施形態によるプラズマ堆積ソースを、やはり、プラズマエンハンス型エッチングプロセス、プラズマエンハンス型表面改質プロセス、プラズマエンハンス型表面活性化または不活性化プロセス、および当業者には知られている他のプラズマエンハンス型プロセス用に使用することができることが、理解されるはずである。
【0019】
図1に示したように、基板搬送方向501は、ガス流れ方向203に平行である。各RF電極301の2つの端部のところに、それぞれガス注入部およびガス排出部を配置する。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる異なる実施形態によれば、ガス注入部またはガス排出部を、ガスランス、ガスチャネル、ガスダクト、ガス流路、ガス管、導管、等として設けることができる。その上、ガス排出部を、プラズマ体積からガスを引き抜くポンプの一部として構成することができる。少なくとも1つのガス注入部201を、電極最先端部302のところに配置し、少なくとも1つのガス排出部202を、多領域電極デバイス300の個々のRF電極301の電極最後端部303のところに配置する。電極最先端部302および電極最後端部303を、基板搬送方向501に関して規定する。
【0020】
しかしながら、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、ガス注入部201を最後端部のところに配置してよいはずであり、ガス排出部202を最先端部のところに配置してよいはずである。したがって、図1に示した実施形態が基板搬送方向501に平行なガス流れ方向203を明示してはいるが、本明細書において説明する実施形態と組み合わせることができる別の一実施形態によれば、それぞれのRF電極301のガス注入部201およびガス排出部202のそれぞれの位置を交換することによって、ガス流れ方向203を基板搬送方向に対して反平行にすることが、可能である。その上、個々のRF電極301について異なるガス流れ方向203を与えることが、可能である。図1には示していないが、1つのRF電極301から隣接するRF電極301への交互に代わるガス流れ方向203を与えることができる。
【0021】
用語「ガス注入部」が堆積領域(プラズマ体積101)中へのガス供給部を意味する一方で、用語「ガス排出部」が堆積領域の外への堆積ガスのガス放出部または排気部を意味することに、留意する。典型的な実施形態によるガス注入部201およびガス排出部202を、基板搬送方向501に対して基本的に直交して配置する。
【0022】
図2は、図1に示したプラズマ堆積ソース100の概略的な横断面図である。動作では、すなわち、RF電力を個々のRF電極のところに印加し、ガス流をガス注入部201とガス排出部202との間に供給する場合には、個々のRF電極301の下側表面と、プラズマ発生用の対向電極406(図6参照)に隣接するコーティングしようとする基板表面502との間に位置するプラズマ体積101内に、プラズマを形成する。コーティングしようとする基板500を、基板搬送方向501に左から右へ搬送する。個々のガス注入部201および個々のガス排出部202を、それぞれ各RF電極301に対して最先端部302(図2の左端)および最後端部303(図2の右端)に設ける。したがって、ガス流れ方向203(図1参照)が基板搬送方向501に対して基本的に平行になるように、RF電極の下側のガスの流れを、ガス注入部201からガス排出部202へ与える。その上、図2には示していないが、ガス流れ方向が、基板搬送方向501に対して反平行であることが可能である。個々のRF電極301のところでかかる種類の反平行なガスの流れを与えるために、別の典型的な実施形態によれば、それぞれのRF電極301のところでのガス注入部201およびガス排出部202を、相互に交換する。
【0023】
したがって、本明細書において説明する実施形態は、多電極デバイスに適合されて多電極デバイスを可能にし、そこでは、基板の搬送方向に関してガス流れ方向が、同じ方向または反対方向である、すなわち、ガス流れ方向および搬送方向が、基本的に平行であるまたは基本的に反平行である。これによって、全体の、組み合わせたプラズマ領域においてプラズマプロセスパラメータを著しく変えないで、多領域電極デバイスを、4電極、5電極、6電極、またはより多くの電極にさえ容易に拡大することができる。
【0024】
ガス注入部チャネルおよびガス排出部チャネルなどの、個々のRF電極301に対して別々のガス注入部201およびガス排出部202を設けることのもう1つの利点は、異なるRF電極301によって与えられる異なるプラズマ体積101に対して、異なる堆積ガスを供給することができるという選択肢である。したがって、少なくとも1つのRF電極301を有するプラズマ堆積ソース100を使用することによって、多種多様な薄膜堆積プロセスを実行することができる。プラズマ堆積プロセス(例えば、PECVD、プラズマエンハンス型化学気相堆積)中に、基板500が基板搬送方向501に動きながら、基板表面502に薄膜を設けることができる。堆積ソース100によってプラズマ相へと転換することができる任意の材料によって、薄膜を設けることができる。したがって、薄膜および薄く硬い膜を、基板表面502に堆積させることができる。
【0025】
図2の断面図が、コーティングしようとする基板表面502の反対側の平面電極表面を示しているが、電極断面形状は、平面形状に限定されない。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、湾曲断面形状などの他の形状を与えることができるが、これに限定されない。有利には、少なくとも1つのRF電極301の断面形状を、コーティングしようとする基板表面502の表面形状に適合させることができる。個々のRF電極301と基板500との間に設けられるプラズマ体積101を制御することができるように、個々のRF電極301の下側表面は、コーティングしようとする基板表面502に面する。
【0026】
RF電極301の下側表面とコーティングしようとする基板表面502との間の距離を、図2の電極−基板ギャップ距離308と呼ぶ。プラズマ体積101は、電極長さ305、電極幅304(図1参照)および電極−基板ギャップ距離308の(幾何学的)積によって基本的に定義される。
【0027】
個々のRF電極301は、動いている基板の少なくとも基板の幅である基板搬送方向501に直交する向きの電極長さ305を有する。下側電極表面と反対側の基板表面502との間に設けられるプラズマ体積101を、電極長さ305で除算することによって、規格化されたプラズマ体積を定義することができる。規格化されたプラズマ体積は、次に、堆積ガス流、プラズマ圧力、個々のRF電極301のところに印加されるRF電力、およびRF電極301のところに供給されるRF周波数に基づいて与えられる。かかるタイプの規格化されたプラズマ体積を使用すると、規格化されたプラズマ体積を図2に示した電極−基板ギャップ距離308で除算することによって、基板搬送方向501に平行な電極幅304が与えられるように、個々のRF電極301の電極幅304を調節することができる。典型的な実施形態によれば、規格化されたプラズマ体積を、5cmから50cmまでの範囲内とすることができ、シリコン系のPECVDプロセスに対するプラズマ密度を10cmから1011cmまでの範囲内とすることができ、電子温度を、それぞれ1eVから3eVまでの範囲とすることができる。シリコン系のPECVDプロセス用のシラン(SiH)の流量は、100sccmから2200sccmまでの範囲内である。
【0028】
それぞれのガス注入部201を介してプラズマ体積101中に導入され、個々のRF電極301のそれぞれのガス排出部202によってプラズマ体積101から送り出される堆積ガスは、ガス注入部201からそれぞれのガス排出部202までのプラズマ体積101を通る過程でプラズマ体積101中に導入された堆積ガスを分解しおよび/または変化させることができるプラズマプロセスを受ける。シリコン系の堆積プロセスのケースでは、シランをプラズマ体積101中に導入することができる。プラズマ体積101を通ってシラン堆積ガスを搬送するときに、シラン(SiH)の欠乏が問題である。堆積ガスの欠乏は、堆積速度、薄膜組成、薄膜の品質、等に影響することがある。
【0029】
図3は、(任意単位(a.u.)での)距離601の関数としてのシラン欠乏プロファイル600を図示するグラフである。図3に示した距離601は、それぞれのガス注入部201と、コーティングしようとする基板表面502上の堆積場所との間の基板搬送方向501の隔りであり、任意単位(a.u.)で与えられる。図3に示したように、堆積ガスの欠乏についての尺度を、シラン前駆物質ガス(堆積ガス)のSiHのモル分率によって与えることができる。
【0030】
シラン堆積ガスのモル分率が、0a.u.の距離のところで約1.0の値(ガス注入部201を使用して、プラズマ体積101中への入り口位置のところの元々の値)を有し、その後、0.4a.u.まで一定のレベルのままであると、仮定する。その後、シラン欠乏プロファイル600はより低い値へ減少し、ガス注入部201から5a.u.離れた距離のとことでほぼゼロである。シリコン系の堆積プロセスに関して、SiHのモル分率は、図4に関して下記に本明細書において説明するように臨界モル分率より低くならない場合がある。個々のRF電極301によって画定されるプラズマ体積101内の堆積ガスの低過ぎるSiHのモル分率602を回避するために、基板搬送方向501に平行なそれぞれの電極幅304を、SiHのモル分率602が臨界モル分率より高い値に制限することができる。シランモル分率は、ガス注入部からの距離とともに減少し、ここでは、この減少は、プラズマ密度、滞在時間、電極のところに印加される電力、プラズマ圧力、注入シラン濃度、全流量、および規格化したソース体積からなる群のうちの少なくとも1つに基づく。図3に示した欠乏長さがプラズマ体積101内部のプラズマパラメータにやはり依存するので、堆積ガスの典型的な欠乏長さが基板搬送方向501に平行な電極幅304以上になるように、図2に示した電極−基板ギャップ距離308を調節することができる。
【0031】
これによって、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、電極幅と電極−基板ギャップとの比率を、5から18までの範囲内にすることができ、典型的には約10になる。
【0032】
基板500上に堆積させるシリコン系の材料に関して、前駆物質堆積ガスは、シラン(SiH)である。シラン前駆物質ガスを堆積ガスとして使用し、堆積ガスがプラズマ体積101に一旦達すると、堆積ガスは分解される。このタイプの分解が、前駆物質ガスの欠乏に導き、その結果、図3に示したような欠乏プロファイル600が得られる。図3に示したように、前駆物質ガスシランの欠乏の量は、ガス注入部201までの距離に依存する。したがって、前駆物質ガスの欠乏が指定したプラズマ体積101内の所定の限界を超えないように、個々のRF電極301の電極幅304を適合させることができる。欠乏プロファイルが、堆積ガス流、プラズマ圧力、それぞれのRF電極のところに供給されるRF電力およびRF周波数などの、しかしこれらには限定されない、1つまたは複数のプラズマパラメータに依存することがある。したがって、下側電極表面と反対側の基板表面502との間に設けられるプラズマ体積101を、電極長さ305で除算することによって定義することができる規格化されたプラズマ体積を、欠乏プロファイルに合わせて調節することができる。かかる種類の「最良の状態に調節すること」を、電極幅と電極−基板ギャップとの上に述べた比率を変えることによって実現することができる。例えば、固定のRF電極面積に対して、すなわち、固定の電極幅および固定の電極長さに対して、所望の規格化されたプラズマ体積が得られるように、電極−基板ギャップを調節することができる。
【0033】
図4は、プラズマ体積101内部で起こっているプロセスのより詳細な図である。図4は、それ自体の左端にガス注入部201および右端にガス排出部202を有する1つのRF電極301を図示する。RF電極301の断面図の下方のグラフは、ガス注入部201からの距離601の関数としてのモル分率SiH602を図示する。参照番号600は、RF電極301の電極幅304に沿ったシラン欠乏プロファイルを示す。シラン欠乏を、RF電極301の電極表面の下のプラズマ体積101中に位置するプラズマの所定のプラズマパラメータに対して示す。
【0034】
その上、SiH濃度プロファイル604を図4に示す。SiH濃度プロファイル604は、モル分率SiH602の減少がモル分率SiH605の増加をもたらすという点で、シラン欠乏プロファイル600に関係する。図4に関して、モル分率SiH602が曲線600に対応し、モル分率SiH605が曲線604に対応することに、ここでは留意する。図4は、RF電極301の幾何学的寸法に対する、すなわち、RF電極の電極幅304に対するシラン欠乏プロファイル600およびSiH濃度プロファイル604に関係する。シラン欠乏が、図4中に水平の線(破線)によって示される臨界モル分率603を超えないことがあることを、ここでは仮定する。図4に示された欠乏よりも少ない欠乏が、許容されることがあり、すなわち、臨界モル分率値603より高いSiHのモル分率が、プラズマ体積101内に位置するプラズマにとって受容可能であり、その結果、膜組成、品質、等に関して所望の薄膜を得ることができる。もう1つの問題点は、シラン欠乏の増加とともに増加するシリコン粉塵などの反応生成物の形成である。
【0035】
典型的なプラズマ条件に関して、10cmから18cmまでの範囲内である電極幅304を、本明細書において説明するある実施形態に対して使用することができることが、見出されてきている。電極幅304についてのより典型的な範囲を、12cmから17cmまでとすることができ、例えば、15cmの電極幅304を設けることができる。10cmから18cmまでの範囲内の電極幅304を有する電極についての典型的なプラズマパラメータは、70sccmから最大2200sccmまでの、例えば、100sccmの堆積ガス流(シランガス流)を含み、その結果、0.01sから1sまでの範囲内の粒子滞在時間を実現する。別の1つの典型的な実施形態によれば、約0.4sの粒子滞在時間(すなわち、プラズマ粒子(例えば、原子、分子、イオン)がプラズマ中に留まる時間)を実現するように、RF電極301の電極幅304を調節する。典型的な実施形態によれば、シリコン系のPECVDプロセス用のプラズマ密度を、10cmから1011cmまでの範囲内にすることができ、電子温度を、それぞれ1eVから3eVまでの範囲とすることができる。欠乏プロファイルおよび欠乏長さは、それぞれ、上に述べたプラズマパラメータを介して粒子の滞在時間に関係することに、ここでは留意する。
【0036】
その上、図面には明示的に示していないが、プラズマ体積101内部でプラズマ相へと転換することができる堆積ガスとして、シランおよび水素の混合物(SiH/H混合物)を供給することが、可能である。欠乏長さ変動(図3参照)を実現することができるように、シラン−水素比を最良の状態に調節することができる。個々のRF電極301の電極幅304を、したがって、所望の欠乏長さのために最良の状態に調節することができる。これによって、さらに別の実施形態によれば、シリコン層を、SiH/H混合物に応じて非晶質またはマイクロ−結晶質/ナノ−結晶質になるように堆積させることができる。典型的には、SiH/H混合物が、結晶質シリコンの堆積用には極めて多くのHを含む。
【0037】
図4に示した、臨界モル分率を、シラン欠乏プロファイル600の典型的な値に基づいて決定することができ、例えば、臨界モル分率を、最大モル分率の1/10になるように決定することができる。したがって、シランの最大モル分率が、例えば、相対単位(図3参照)で1である場合には、電極長さ(a.u.での距離)がほぼ3a.u.になるように、臨界モル分率603が、ほぼ0.1になるようにすることができる。
【0038】
前駆物質欠乏長さを広げるために、個々のRF電極301の電極幅304を、最良の状態に調節することができる。基板搬送方向501に一列に配置した少なくとも2つの電極301を設けることによって、全体の電極面積を調節することができる。前駆物質ガスの欠乏長さに関係する電極幅304を最良の状態に調節することは、いくつかの利点を有する。第1に、実効的な堆積速度を増加させることができ、第2に、シラン粉塵形成のレベルを減少させることができる。シラン粉塵形成のレベルの減少は、結果としてソース使用可能時間の増加をもたらすことができる。欠乏長さに関係して電極幅304を最良の状態に調節することは、電極幅304が、堆積ガスの欠乏プロファイルの臨界欠乏長さよりも小さくなるように、基板搬送方向501に平行なRF電極301の電極幅304を設計することを含み、上に示したように、堆積ガスモル分率が最大モル分率の約10%まで低下する点のところで、臨界欠乏長さを定義する。
【0039】
その上、規格化されたプラズマ体積を規定することによって、個々のRF電極301の電極幅304を与えることができる。規格化されたプラズマ体積は、電極表面と反対側の基板位置との間に画定されるプラズマ体積によって与えられる。プラズマ体積101を基板搬送方向501に直交する電極長さ305で除算することによって、規格化されたプラズマ体積を、次に求める。所望のプラズマパラメータに依存して、電極−基板ギャップ距離308(図2)は、堆積ガス流、プラズマ圧力、RF電極301のところに供給されるRF電力、およびRF電極301のところに供給されるRF周波数からの、規格化されたプラズマ体積の依存性から結果としてもたらされる特定の値を有する。規格化されたプラズマ体積を、次に、電極−基板ギャップ距離308および電極幅304の(幾何学的な)積によって定義する。電極−基板ギャップ距離308が、プラズマパラメータおよび欠乏プロファイルに応じて特定の値を有するので、電極−基板ギャップ距離308で除算した規格化されたプラズマ体積に基づいて、電極幅304を決定することができる。
【0040】
上に説明したように、欠乏プロファイルそれ自体がプラズマパラメータに依存するので、個々のRF電極301の電極幅304を、シラン欠乏プロファイル600に基づいて決定することができる。プラズマ体積を、電極表面と反対側の基板表面との間の体積101であると定義することができる。電極長さ305が基板搬送方向501に直交する基板幅によって与えられるので、規格化されたプラズマ体積を、規定することができ、これは今度は、電極−基板ギャップ距離308および電極幅304に依存する。特定のプラズマパラメータに関して、およびしたがって特定の欠乏長さに関して、所定の電極−基板ギャップ距離308で除算した規格化されたプラズマ体積が電極幅304の大きさを与えるように、所定の電極−基板ギャップ距離308を設けることができる。少なくとも1つのRF電極301に対してこの電極幅304を使用して、堆積速度を増加させることができ、そこではシラン粉塵形成を減少させることができる。
【0041】
図5は、別の実施形態による、3つのRF電極301を有するプラズマ堆積ソース100の断面側面図である。2つの隣接するRF電極301は、互いにコネクタ401、例えば、電力ブラケットによって接続され、その結果、RF発生器400に接続される場合には、隣接するRF電極301を同相で駆動することができる。RF発生器400は、第1の発生器極403と第2の発生器極404との間にRF電力出力を供給する。典型的には、第2の発生器極404を、接地にまたは接地電極に接続する。
【0042】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる図5に示した実施形態では、接地電極または対向電極は、基板500に対応する。したがって、基板500を、例えば、電気的に導電性のローラ(図5には図示さず)によって、第2の発生器極404に電気的に接続する。さらに別の一実施形態によれば、接地電極または対向電極を、図5では基板500の下方に設けるはずであり、すなわち、その結果、基板受け域が、電極301と接地電極または対向電極との間になる。整合ネットワーク402を、コネクタ401とRF発生器400との間に設けることができる。整合ネットワーク402を、RF電極301および基板500のRF配列のインピーダンスとRF発生器400のインピーダンスとの間のインピーダンス整合のために設ける。
【0043】
RF発生器400は、固定の周波数を供給することができる、または、プラズマ体積101内でプラズマを励起するための周波数スペクトルを供給することができる。RF電極のところまたは個々のRF電極301のところに印加されるRF周波数を、10MHzから100MHzまでの範囲内にすることができ、典型的には約40.68MHzになる。他の典型的な駆動周波数は、13.56MHzおよび94.92MHzである。プラズマ密度、プラズマ圧力、プラズマ組成、前駆物質ガスの分解、等などのプラズマ体積101内に与えられるプラズマパラメータは、RF周波数、電極幅304、および電極−基板ギャップ距離308に依存することがある。RF発生器400を、一定のRF電力密度で動作させることができる、またはRF電力密度を、堆積プラズマに対する要求およびそのパラメータに基づいて変えることができる。
【0044】
コネクタ401を、RF発生器400から整合ネットワーク402を介してコネクタ401へRF電力密度を伝達するための電力ブラケットとして設けることができる。その上、RF発生器400は、電極寸法に応じた周波数を供給することができる。
【0045】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、プラズマ堆積ソース100を対称的に、すなわち、1つのRF発生器400からコネクタ(電力ブラケット)401によって並列に接続されたRF電極301を用いて、動作させることができる。その上、プラズマ堆積ソース100をプッシュ−プル方式で交互に動作させることができ、その結果、典型的には180度の位相差を隣接するRF電極301間に与えるように、隣接するRF電極301を駆動する。
【0046】
RF電極301を、コネクタ401によって互いに接続することができ、別の接続デバイスによってRF発生器400へ直接接続することができる。その上、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、RF発生器400へ個別に各RF電極301を接続するために、コネクタ401を使用することができる。したがって、少なくとも1つのコネクタ401を、RF電極301を電気的に接続するために設ける。その上、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、少なくとも2つのコネクタ401を、RF電極301を互いに接続するために設けることができ、そこでは、少なくとも2つのコネクタ401を、基板搬送方向501に直交するように電極長さ305に沿って配置する。RF電極301の長さ305に沿って少なくとも2つのコネクタ401を設けることは、基板搬送方向501に直交するRF電極301の長さ305に沿ったプラズマ体積101内により均一なプラズマ分布をもたらすことができる。
【0047】
図5に示したように、シランなどの堆積ガスをガス注入部201へ供給するために、ガス供給デバイス200を設ける。その上、ガス排出部202を介して排出されたガスを受け取る真空ポンプ606を設ける。1つのRF電極301のガス注入部および排出ランス201、202だけを、ガス供給デバイス200および真空ポンプ606に接続するように示しているが、すべてのガス注入部201を、同じまたは異なるガス供給デバイス200に接続することができる。それに加えて、すべてのガス排出部202を、同じまたは異なる真空ポンプ606に接続することができる。その上、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるさらに別の一実施形態によれば、ガス注入部201からガス排出部202へのRF電極301を横切る堆積ガス流を、各RF電極301に対して別々に制御することができる。
【0048】
真空ポンプ606との組合せでガス供給デバイス200の動作は、0.01mbarから10mbarまでの範囲内であり、典型的には、0.01mbarから4.0mbarまでの範囲内であり、より典型的には、約0.05mbarになる真空チャンバ内部の典型的な圧力をもたらすことができる。真空チャンバ内部の圧力は、他のプラズマパラメータに影響することがあり、その結果、所望のプラズマ堆積動作を維持するために、電極−基板ギャップ距離308(図2参照)を変更することができることに、ここでは留意する。電極−基板ギャップ距離308の変更は、今度は、例えば、プラズマ体積101および規格化されたプラズマ体積に影響することがある。
【0049】
その上、様々な堆積ガスを、RF電極301の下の各プラズマ体積101に対して供給することができる。したがって、異なる堆積ガスを、異なるRF電極301に対して供給することができ、その結果、複雑な堆積層構造を、基板表面502のところに設けることができる。
【0050】
図6は、3つの場所的に分離されたRF電極301を含むプラズマ堆積ソース100の詳細な断面側面図である。各RF電極301は、RF発生器400(図5参照)からRF電力を入力するためのRF入力部405を有する。その上、各RF電極301は、周囲に対してRF電極301を分離するための電極分離部306を含む。例えば、周囲に対してRF電極を分離することに加えて、電極301のうちの2つ以上を、例えばコネクタ、例えば、電力ブラケットを用いて互いに接続することができる。このことに加えて、電極表面コーティング307が、プラズマ曝露から各RF電極301を保護する。
【0051】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、電極の表面コーティングを、例えば、ガラスまたは石英から作られたカバーとして設けることができる。典型的には、例えば、電極上にカバーをクランプすることによって、カバーを取り外し可能とすることができる。これが、薄膜堆積システムの保守中に、カバーの容易で早い交換を可能にする。典型的には、カバーは、電極に取り外し可能に固定され、低コスト設計のカバーの交換を可能にする。その上、RF電極の保護に加えて、電極カバーの高い二次電子放出係数が、高い圧力におけるプラズマ安定化を提供することができる。
【0052】
図6は、各電極に対して別々に、ガス注入部201を通る堆積ガスの注入およびガス排出部202を通る堆積ガスの排出を、より詳細に示す。ガス注入部201が、プラズマ体積101中に直接に堆積ガスを向けるのに対して、ガス排出部202は、プラズマ体積101の上部縁のところに設けられる。前に述べたように、プラズマ体積は、電極の幾何学的寸法によって、および電極−基板ギャップ距離308によって画定される、すなわち、プラズマ体積101は、電極−基板ギャップ距離308、電極幅304、および電極長さ305(図1参照)の積によって規定される。
【0053】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、コーティングしようとする基板500を、それぞれのRF電極301と対向電極406との間に置く。対向電極406を接地することができ、ここでは、個々のRF電極301のRF入力部405を、RF発生器400(図5参照)の他の極に接続する。図6に示した電極配置は、基板搬送方向501に動くコーティングしようとする基板500が、プラズマ発生目的のためにガルバニ的に接続されないという利点を有する。特に、動いている基板500のケースでは、図6に示した配置を、堆積プロセスのために使用することができる。
【0054】
図面には示していないが、低い雰囲気圧力でプラズマ堆積プロセスを実現するために、プラズマ堆積ソース100を真空チャンバ内部に据え付けることができることに、ここでは留意する。
【0055】
堆積プロセスを本開示に関して説明しているが、本明細書において説明した実施形態のうちの少なくとも1つによるプラズマ堆積ソース100を、プラズマエッチングプロセス、表面改質プロセス、プラズマエンハンス型表面活性化、プラズマエンハンス型表面不活性化、等の他のプラズマプロセスに対して使用することができるが、これらに限定されないことに、ここでは留意する。
【0056】
図面には示されていないさらに別の一実施形態によれば、電極は、湾曲した断面形状を有することができ、または電極がプラズマ堆積プロセス中に回転するように配置されることがある。RF電極301を、同相で駆動することができ、または位相をずらして駆動することができる。多領域電極デバイス300内部のそれぞれのガス注入部およびガス排出部201、202を具備する各RF電極301を、別々に動作させることができる。したがって、RF電極301によって画定される個々の領域のところに、異なるガス、異なるRF電力、異なるRF周波数を供給することが可能である。したがって、少なくとも1つの異なる堆積ガスを、残りのRF電極301に対して少なくとも1つのRF電極301によって与えられるプラズマ体積101中に送り込むことができる。
【0057】
図7は、基板(図示せず)がRF電極301を通過させて基板搬送方向501に搬送される底部側からの観察角度で見た、プラズマ堆積ソース100の斜視図である。RF電極301は、プラズマ曝露からそれぞれのRF電極301を保護するための電極表面コーティング307を各々有する。RF電極301は、基板搬送方向501に直交する端部のところにガスランス、すなわち、それぞれのガス注入部201およびそれぞれのガス排出部202を各々有する。ガス注入部201は、ガス注入部201の長さに沿って設けられたガス注入開口部204を有することができる。多領域電極デバイス300の各RF電極301に、RF入力部405を介して別々にRF電力を供給することができる。
【0058】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、ガス排出部202および特にガス注入部201を、設定変更可能にまたは交換可能にすることができる。これによって、例えば、プラズマ領域内のガス分布を制御できるように、開口部204を具備するガス散布バーを設けることができる。典型的な実施形態によれば、ガス散布バーは、基板搬送方向501に平行な堆積ソースの中心線に関して対称的な設計を有することができる。例えば、電極の端部のところでの前駆物質ガスの損失を補償することができるように、電極の長さ方向についてのガス散布バーの端部領域に、追加の開口部またはより大きな開口部204を設けることができるであろう。その上、さらに別の典型的な一実施形態によれば、堆積前駆物質の蓄積を減少させるためにおよび/または堆積プロファイルをさらに平滑にするために、電極の長さ方向についてのガス散布バーの端部領域に、より少ない開口部またはより小さな開口部204を設けることができるであろう。そのことに加えて、ガス注入開口部204および/またはガス排出開口部205を、スロットの形で設けることができる。それぞれのスロットは、スロットの長さに沿って変化するスロット幅、例えば、ガス散布バーの端部領域のところでより大きなスロット幅またはより小さなスロット幅を示すことができる。
【0059】
同様に、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるある実施形態によれば、プラズマ領域からの真空排気を均一なプラズマ挙動、すなわち、基板の動く方向に対して直交する基板方向に沿った基板の全体にわたる均一な堆積のために制御するまたは適合させることができるように、開口部204またはスリットを具備するガスポンピングチャネルを設けることができる。これによって、典型的な実施形態によれば、ガスポンピングバーまたはガスポンピングチャネルは、基板の動く方向に平行な堆積ソースの中心線に関して対称的な設計を有することができる。一般的に、ポンピングチャネルの長さの既に存在する違いを補償し、ガス排出部の長さに沿って均一な流れ抵抗が実現されるように、ガスポンピングチャネルを、設定変更可能にまたは交換可能にすることができる。
【0060】
多領域電極デバイス300を、10MHzから100MHzの範囲内の駆動RF周波数で動作させることができ、ここでは、典型的な周波数は、約13.56MHzから94.92MHzである。選択した駆動RF周波数は、とりわけ、電極寸法に依存する。より大きな基板500上への薄膜のプラズマエンハンス型堆積を実現するために、多領域電極デバイス300の寸法を、スケールアップすることができる。アップスケールするケースでは、コーティング均一性に本質的に影響を及ぼす定在波効果を回避するために、駆動RF周波数を変えることができる。図5に示してきており、上に本明細書において説明したコネクタ401(電力ブラケット)を、プラズマ体積内でプラズマの均一な励起をもたらすように、電極長さ305に沿って設けることができる。少なくとも2つのコネクタ401を、基板搬送方向501に直交する電極長さ305に沿って配置することができる。
【0061】
基板搬送方向501に直交する電極長さ305を、80cmから200cmまでの範囲内、典型的には、120cmから180cmまでの範囲内にすることができる。別の典型的な一実施形態によれば、電極長さ305は、約150cmになる。
【0062】
個々のRF電極301の電極長さ305に沿って設けられ、RF電極301を互いに接続するために使用することができる少なくとも2つのコネクタ401を、電場均一性、したがってプラズマ体積(図7には図示せず)内のプラズマ均一性を調節するために使用することができる。その上、少なくとも1つのRF発生器400へ別々に個々のRF電極301を接続することによって、2つの隣接するRF電極間にプッシュ−プルモードを提供することができる。
【0063】
図7に示したように、ガス流れ方向、すなわち、RF電極301を横切るガス注入部201からガス排出部202へのガス流は、基板搬送方向501に平行である。その上、ガス流れ方向が互いに反対になるように、2つの隣接するRF電極を横切るガス流れ方向を合わせることが、可能である。その上、本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができるさらに別の一実施形態によれば、すべてのRF電極301を横切るガス流れ方向が基板搬送方向501に対して反平行になるように、堆積ガスのガス流を調節することができる。
【0064】
上に説明した実施形態のうちのあるものによれば、RF電極301の電極幅304を、シラン粉塵形成が減少するように、前駆物質ガスの欠乏プロファイルに関連して調節することができる。その上、プラズマ体積101内へ供給されるプラズマのプラズマパラメータおよび前駆物質ガスの欠乏プロファイルに関して、電極幅304を最良の状態に調節する場合には、堆積速度を増加させることができる。さらなる利点は、堆積ガスのより効率的な利用である。
【0065】
したがって、有利には、動いている基板500の基板表面502上に堆積した薄膜の品質を、改善する。本明細書において上に説明したように、多領域電極デバイス300を含むプラズマ堆積ソース100を、堆積プロセスのために使用することができる。その上、さらに別の実施形態によれば、多領域電極デバイス300を、エッチングおよび、下記に限定しないが、表面活性化、表面不動態化、等、などの他の表面改質プロセスでの使用のために設計することができる。
【0066】
堆積速度を、動いている基板500の基板表面502の直ぐ近くのガス相前駆物質の活性化の程度により増加させることができる。これらのガス相前駆物質を、RF電力密度、電極−表面ギャップ距離308、プロセスガス流203、およびプロセスガス組成によって制御する。シラン粉塵の形成を、前駆物質ガスシランの欠乏長さに関する電極幅304の調節に基づいて減少させることができる。したがって、所望の前駆物質欠乏長さプロファイルと一致させるように、電極幅304を最良の状態に調節することを、効率的に行うことができる。
【0067】
図8は、基板上に薄膜を堆積させるための方法を図示する流れ図である。この方法は、ステップS1からステップS7を含む。手順は、ステップS1において開始し、少なくとも2つの場所的に分離されたRF電極を含む多領域電極デバイスを設けるステップS2へ進む。ステップS3においては、基板を、基板搬送方向にRF電極を通過させて案内する。少なくとも2つの場所的に分離されたRF電極の各々は、基板搬送方向に直交するRF電極の端部に配置された別々のガス注入部および別々のガス排出部を有する。ステップS4では、堆積ガスを、個々のRF電極のそれぞれのガス注入部からそれぞれのガス排出部へ案内する。ステップS5においては、RF電力を、少なくとも2つのRF電極に供給する。これによって、ステップS6では、薄膜を、基板搬送方向に動く案内された基板上に堆積させる。手順は、ステップS7において終了する。
【0068】
上記を踏まえて、複数の実施形態を説明してきた。例えば、一実施形態によれば、堆積ガスをプラズマ相に転換し、真空チャンバ内で基板搬送方向に動いている基板上に薄膜をプラズマ相から堆積させるプラズマ堆積ソースを提供する。プラズマ堆積ソースは、真空チャンバ内に設置されて、動いている基板の反対側に配置された少なくとも1つのRF電極を含む多領域電極デバイスと、RF電極にRF電力を供給するRF電力発生器とを含む。RF電極は、電極の一方の端部に配置された少なくとも1つのガス注入部およびRF電極の反対側の端部に配置された少なくとも1つのガス排出部を有する。これの任意選択の変更形態によれば、基板搬送方向に平行なRF電極の電極幅が、堆積ガスの臨界欠乏長さよりも小さく、臨界欠乏長さは、堆積ガスモル分率が元の値の約10%の値に低下する点のところで定義される。さらに別の追加の変更形態または代替変更形態によれば、RF電極は、真空チャンバの内部の電極表面と反対側の基板位置との間にプラズマ体積を画定する。上記の他の実施形態および変更形態のうちのいずれかと組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、規格化されたプラズマ体積が、電極表面と反対側の基板位置との間に画定されるプラズマ体積を、電極長さで除算することによって与えられ、規格化されたプラズマ体積は、堆積ガス流、プラズマ圧力、RF電極のところに供給されるRF電力およびRF周波数に基づいて規定される。さらに別の追加の変更形態または代替変更形態によれば、プラズマ体積へ堆積ガスを供給するガス供給デバイスが、設けられる。上記の他の実施形態および変更形態のうちのいずれかと組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのガス注入部が、基板搬送方向に関して、RF電極の最先端部のところに配置され、少なくとも1つのガス排出部が、RF電極の最後端部のところに配置される。さらに別の一変更形態によれば、ガス注入部およびガス排出部が、基板搬送方向に基本的に直交して配置される。上記の他の実施形態および変更形態のうちのいずれかと組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、プラズマ堆積ソースは、RF電極を互いに電気的に接続する少なくとも1つのコネクタを含む。さらに別の一変形形態によれば、プラズマ堆積ソースは、RF電極を互いに接続する少なくとも2つのコネクタを含み、少なくとも2つのコネクタが、基板搬送方向に直交する電極長さに沿って配置される。少なくとも2つの電極が、共通発生器極に接続され得る。任意選択の変更形態によれば、整合ネットワークが、RF電力発生器を多領域電極デバイスに接続するために設けられる。その上、対向電極を、少なくともRF電極の反対側の、動いている基板の側方のところに配置することができる。別の変形形態によれば、RF電極のところに印加されるRF周波数は、10MHzから100MHzまでの範囲内であり、典型的には、約40.68MHzになる。さらに別の変形形態によれば、電極幅は、10cmから18cmまでの範囲内、典型的には12cmから17cmまでの範囲内であり、より典型的には、約15cmになる。上記の他の実施形態および変更形態のうちのいずれかと組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、基板搬送方向に直交する電極長さは、80cmから200cmまでの範囲内、典型的には、120cmから180cmの範囲内であり、より典型的には、約150cmになる。
【0069】
別の一実施形態によれば、基板上に薄膜を堆積させるための方法を提供する。本方法は、少なくとも1つのRF電極を含む多領域電極デバイスを設けることと、基板搬送方向にRF電極を通過させて基板を案内することと、RF電極のガス注入部からガス排出部へ堆積ガスを流すことと、RF電極にRF電力を供給することと、案内された基板上に薄膜を堆積させることとを含む。これの任意選択の変更形態によれば、本方法は、各RF電極に対して別々に、ガス注入部からガス排出部へとRF電極を横切る堆積ガス流を制御することをさらに含むことができる。上記の変更形態または上記の実施形態と組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、少なくとも2つのRF電極が、同相で駆動される。さらに別の一変形形態によれば、2つの隣接する電極が、相互間の所定の位相差によって駆動される。さらに別の一変形形態によれば、電場均一性が、基板搬送方向に直交する電極長さに沿って、互いにRF電極を接続するために設けられた少なくとも2つのコネクタによって調節される。上に説明した他の変更形態と組み合わせることができるさらに別の一変更形態によれば、電極−基板ギャップ距離は、堆積ガスの欠乏長さが基板搬送方向に平行な電極幅以上になるように調節される。さらに別の変形形態によれば、少なくとも1つの異なる堆積ガスが、残りのRF電極に対して少なくとも1つのRF電極によって設けられるプラズマ体積中に送り込まれる。その上、さらに別の一実施形態によれば、少なくとも2つのRF電極が、プッシュ−プルモードで駆動される。RF電極の電極幅は、さらに別の一実施形態によれば、粒子滞在時間が0.01sから1sまでの範囲内である、典型的には約0.4sになるように調節される。上に本明細書において説明した実施形態および変更形態と組み合わせることができるさらに別の実施形態によれば、堆積ガスのガス流は、2つの隣接するRF電極を横切るガス流れ方向が互いに反対になるように調節される。その上、堆積ガスのガス流を、すべてのRF電極を横切るガス流れ方向が基板搬送方向に対して平行であるまたは反平行になるように、調節することができる。
【0070】
上記は本発明の実施形態に向けられているが、本発明の他の実施形態およびさらなる実施形態を、本発明の基本的な範囲から乖離せずに考案することができ、本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8