特許第5660019号(P5660019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660019
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】単結晶引上げ装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20150108BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C30B29/06 502C
   C30B15/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-272199(P2011-272199)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-124192(P2013-124192A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2013年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】竹安 志信
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 淳
【審査官】 伊藤 光貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−212691(JP,A)
【文献】 特開2002−326888(JP,A)
【文献】 特開2011−140421(JP,A)
【文献】 特開2001−302387(JP,A)
【文献】 特開平02−293390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料融液を収容するルツボと前記原料融液を加熱するヒーターとを格納するメインチャンバーを具備し、該メインチャンバーの底部に前記ルツボから漏れてきた融液を収容する湯漏れ受皿と、前記ヒーターに電力を供給する電極と、前記ルツボをルツボ受皿を介して支持するルツボ軸と、前記メインチャンバーからガスを排出する排ガス管とを有するチョクラルスキー法による単結晶引上げ装置であって、
前記ルツボと前記湯漏れ受皿との間に上下に昇降可能な断熱板を有し、
前記湯漏れ受皿内に、前記電極の周囲への前記融液の接触・流入を防止する電極スリーブ、前記ルツボ軸の周囲への前記融液の接触・流入を防止するルツボ軸スリーブ、及び前記排ガス管への前記融液の流入を防止するガス管スリーブを有し、
前記湯漏れ受皿は、前記ルツボ内に収容される前記原料融液の最大容量以上の容積を有し、かつ
前記断熱板上に前記ルツボの下部を囲繞できるサブ断熱板を有し、該サブ断熱板は前記ルツボ受皿の外径より大きい内径を有するものであり、
前記断熱板は、前記ヒーターと一緒に上下に昇降できるように前記ヒーターのクランプ上に絶縁物を介して載せられたものであり、
前記断熱板は、前記ルツボ軸スリーブが貫通することができる中央の開口部、前記電極スリーブが貫通することができる2か所以上の開口部、及び前記排ガス管スリーブが貫通することができる1か所以上の開口部を有するものであることを特徴とする単結晶引上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法による単結晶引上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように従来のCZ法による単結晶の引上げ装置101では、育成中の単結晶落下等のトラブルにより、シリコン融液を収容するルツボ102が破損し、高温の融液が漏れ出た場合に備え、メインチャンバー103の底部に漏れ出た融液を収容する黒鉛製の湯漏れ受皿104が設置されている。そして、電極105の周囲、ルツボ軸106の周囲、排ガス管107の上部には、湯漏れ受皿104に収容された融液が流れ込まないように黒鉛製のスリーブ105a,106a,107aが設けられ、これらスリーブの高さh’は湯漏れ受皿内に操業時の石英ルツボ内の最大融液量が収容できる高さとなっている。もし、これらのスリーブを越えて、融液が電極またはルツボ軸等に達すると、これら水冷されている電極等を溶損し、融液が通水に接すれば、水蒸気爆発等の可能性が考えられる。
【0003】
近年、大径結晶を製造し、ルツボ102に収容する原料融液量が増大すると、これらのスリーブ高さh’も高くなってきた。また、消費電力の削減(省エネ)を図るため、特許文献1のようにルツボ102の底部近傍に肉厚の断熱板108を設けるようになると、この断熱板108とルツボ102の下部との間隔も狭くなり、ルツボ102を下方に移動できるストローク量が小さくなり、ルツボ102内の融液深さの増大に伴うストローク量の増加が確保できなくなり、ルツボ102に充填できるシリコン原料も制限されていた(図8、9)。ここで断熱板をルツボ底に近い位置ではなく、特許文献2のようにメインチャンバーの底部に断熱材を敷き詰める形で設置するという方法もあるが、ルツボ底部から離れてしまい省エネの効果が半減してしまうので、省エネのためには断熱板をルツボ底部に近接させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−326888号公報
【特許文献2】特開平9−235181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、ルツボ102に収容する融液量を増加させることで、大径単結晶を効率良く、生産性を向上させて製造できるが、湯漏れ時の安全性を確保しようとすると、湯漏れ受皿104内のスリーブ高さh’が高くなり、ルツボ102を下方に移動できるストローク量(昇降可能量)が小さくなる(図10)。また、省エネを向上するためにルツボ102下部近傍に肉厚の断熱板108を設けると、その分、断熱板108とルツボ102との間隔、断熱板108とスリーブ105a,106a,107aとの間隔が狭くなり、ルツボ102を下方に移動できるストローク量が小さくなる(図9)。さらに、肉厚の断熱板108を設けた状態で、ストローク量を確保するためにスリーブ高さh’を低くすると、湯漏れ時の安全性が確保できない(図8)。
【0006】
生産性を向上するために、単結晶の製造前に石英ルツボ内への原料チャージ量を増加したり、または単結晶を製造後に原料を追加チャージし、複数の単結晶を製造するマルチプーリングを行う場合、石英ルツボ内の原料充填率を増やしたり、または追加チャージ(リチャージ)したりする際に、単結晶の成長中よりもルツボ102のストローク量が必要となる。そのため、ストローク量が少ないとルツボ102に収容できる最大融液量(原料チャージ量)が制限され、チャージ量を増やすことができない。具体的には、図8〜10に示す通り、原料融液上に整流筒109と熱遮蔽体が存在するため、ルツボ102が下方に降下できないと、石英ルツボ内に投入できる原料の量が制限され、チャージ量を増加することができない。
【0007】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたもので、ルツボストロークを十分に確保して生産性を向上でき、その上、湯漏れ時の安全性の確保と省エネを達成できる単結晶引上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、原料融液を収容するルツボと前記原料融液を加熱するヒーターとを格納するメインチャンバーを具備し、該メインチャンバーの底部に前記ルツボから漏れてきた融液を収容する湯漏れ受皿と、前記ヒーターに電力を供給する電極と、前記ルツボをルツボ受皿を介して支持するルツボ軸と、前記メインチャンバーからガスを排出する排ガス管とを有するチョクラルスキー法による単結晶引上げ装置であって、
前記ルツボと前記湯漏れ受皿との間に上下に昇降可能な断熱板を有し、
前記湯漏れ受皿内に、前記電極の周囲への前記融液の接触・流入を防止する電極スリーブ、前記ルツボ軸の周囲への前記融液の接触・流入を防止するルツボ軸スリーブ、及び前記排ガス管への前記融液の流入を防止するガス管スリーブを有し、
前記湯漏れ受皿は、前記ルツボ内に収容される前記原料融液の最大容量以上の容積を有し、かつ
前記断熱板上に前記ルツボの下部を囲繞できるサブ断熱板を有し、該サブ断熱板は前記ルツボ受皿の外径より大きい内径を有するものであることを特徴とする単結晶引上げ装置を提供する。
【0009】
このような単結晶引上げ装置であれば、サブ断熱板の中央内にルツボ底部分が収納できる構造を有するためルツボを下方に移動するストローク量を必要十分に確保でき、これにより、ルツボに充填するシリコン原料を増やすことができる。その上、本発明の単結晶引上げ装置は湯漏れ受皿内に収容できる融液量を増加するためにスリーブ高さを高くすることができるので湯漏れ時の安全を確保することができ、かつ、ルツボ底近傍にサブ断熱板と断熱板を設置することができるので高い省エネ効果を有するものとなる。その上、メインチャンバー内径のサイズアップという単結晶引上げ装置自体の大型化をすることなく、従来の引上げ装置において、ルツボの原料充填量と共に湯漏れ受皿の融液収容量を増加して、かつ、断熱板厚みを増加しても、十分なルツボストロークを確保することが低コストでできる単結晶引上げ装置となる。
【0010】
また、前記断熱板は、ヒーターと一緒に上下に昇降できるようにヒーターのクランプ上に絶縁物を介して載せられたものであり、
前記断熱板は、ルツボ軸スリーブが貫通することができる中央の開口部、電極スリーブが貫通することができる2か所以上の開口部、及び排ガス管スリーブが貫通することができる1か所以上の開口部を有するものであることが好ましい。
【0011】
これにより、省エネ効果を高めるためにルツボ底近傍に肉厚の断熱板を設置した場合でも、断熱板にスリーブが貫通できるためルツボを下方に移動するストローク量をより十分に確保することができる。その上、メインチャンバー内径のサイズアップという単結晶引上げ装置自体の大型化をすることなく、従来の引上げ装置において、ルツボの原料充填量と共に湯漏れ受皿の融液収容量を単に増加して、かつ、断熱板厚みを増加しても、十分なルツボストロークを確保することができる単結晶引上げ装置となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の単結晶引上げ装置であれば、ルツボを下方に移動するストローク量を十分に確保できるのでチャージ量を増加して生産性を向上することができ、湯漏れ受皿内のスリーブ高さが高くできるため湯漏れ時の安全を確保することができ、かつ、肉厚の断熱板をルツボ下部に設置できるので省エネを向上することができるものとなる。
【0013】
これにより単結晶引上げ装置のサイズ自体を大きくすることなく、従来の引上げ装置において従来よりもチャージ量を増加し、湯漏れ時の安全を確保しながら、省エネでき、生産性向上と電力コストの削減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の単結晶引上げ装置のチャンバー底部を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る断熱板を示す概略上面図である。
図3】本発明に係るサブ断熱板を示す概略上面図である。
図4】本発明の単結晶引上げ装置のチャンバー底部を示す他の概略断面図である。
図5】本発明の単結晶引上げ装置におけるクランプ部を示す図である。
図6】単結晶引上げ中の本発明の単結晶引上げ装置を示す概略断面図である。
図7】多結晶原料を充填中の本発明の単結晶引上げ装置を示す概略断面図である。
図8】従来の単結晶引上げ装置の第1態様を示す概略断面図である。
図9】従来の単結晶引上げ装置の第2態様を示す概略断面図である。
図10】従来の単結晶引上げ装置の第3態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。上述のように、ルツボストロークを十分に確保して生産性を向上でき、その上、湯漏れ時の安全性の確保と省エネを達成できる単結晶引上げ装置が望まれていた。
【0016】
本発明者らは、上記問題点について鋭意検討を重ねた結果、断熱板の中央内にルツボ底部分が収納できる構造を有する単結晶引上げ装置であれば、ルツボストロークを十分に確保して生産性を向上でき、その上、湯漏れ時の安全性の確保と省エネを達成できることを見出して、本発明を完成させた。以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0017】
図1及び図4に本発明の単結晶引上げ装置のチャンバー底部を示す。ここで、図1は断熱板を示す図2のA’’OA’矢視図であり、図4図2のAOA’’矢視図である。また、図6に単結晶引上げ中の単結晶引上げ装置を示し、図7に多結晶原料が充填された単結晶引上げ装置を示す。図1、4、6、7に示すように、本発明は原料融液12を収容するルツボ2と前記原料融液12を加熱するヒーター11とを格納するメインチャンバー3を具備し、該メインチャンバー3の底部に前記ルツボ2から漏れてきた融液を収容する湯漏れ受皿4と、前記ヒーター11に電力を供給する電極5と、前記ルツボ2をルツボ受皿6cを介して支持するルツボ軸6と、前記メインチャンバー3からガスを排出する排ガス管7とを有するチョクラルスキー法による単結晶引上げ装置1である。さらに、ルツボ2上に整流筒9と熱遮蔽体を設置できる。
【0018】
また、本発明の単結晶引上げ装置1は、メインチャンバー3の底部に湯漏れ受皿4が配置され、湯漏れ受皿4内で黒鉛製の電極アダプターとペディスタル6bが昇降する。電極アダプターは銅電極5に接続され、ペディスタル6bはルツボ軸6に接続されている。電極5及びルツボ軸6は水冷されたものであることが好ましい。電極5と電極アダプターの周囲には電極5の周囲への融液の接触・流入を防止するために電極スリーブ5aが取付けられ、ルツボ軸6とペディスタル6bの周囲にはルツボ軸6の周囲への融液の接触・流入を防止するためにルツボ軸スリーブ6aが取付けられている。また、排ガス管7上には排ガス管7への融液の流入を防止するために排ガス管スリーブ7aが取付けられている。なお、これらスリーブは黒鉛製であることが好ましい。また、特に制限されないが、排ガス管スリーブ7aは上端近くに横穴が設けられ、上端は漏れ出た融液が排ガス管7内に落ちないように閉じられているものとすることもできる。
【0019】
図7に示すように、ペディスタル6bの上に黒鉛ルツボ2aが配置され、その中に石英ルツボ2bがセットされ、石英ルツボ2b中にシリコン多結晶が原料として充填され、周囲の黒鉛製のヒーター11で加熱され、シリコン原料融液12となる(図6)。図5図4の単結晶引上げ装置のB矢視図である。図4及び図5に示すように、ヒーター11は、クランプ5cを介して電極アダプターに接続され、クランプ5cとヒーター11はクランプボルト5dで固定されている。なお、クランプ5c、クランプボルト5dは黒鉛製であることが好ましい。また、クランプ5cは絶縁物支持部5eを有し、その上に円板状の絶縁物5fを有することにより絶縁物5f上に断熱板8を載せることができるものとすることができる。さらに、図5に示すように絶縁物支持部5eは電極スリーブ5aの上端位置より低い位置とすることが好ましく、これにより更にルツボストロークを確保することができる。
【0020】
また、本発明の単結晶引上げ装置1の湯漏れ受皿4は、ルツボ2内に収容される原料融液の最大容量以上の容積を有するので、湯漏れ時の安全性が確保される。融液の流入を防止するにはスリーブが一定高さh以上であることが必要となるが、これはルツボ2内に収容される原料融液の最大容量に応じて適宜高くすることができる。
【0021】
単結晶引上げ装置1は、ルツボ2と湯漏れ受皿4との間に上下に昇降可能な断熱板8を有する。図2に示すように、断熱板8には電極スリーブ5aの貫通できる開口部8b(切り欠き部)が2か所以上あり、また、排ガス管スリーブ7aの貫通できる開口部8c(切り欠き部)が1か所以上あることが好ましい。尚、メインチャンバー内の構造によっては、これらの開口部8b,8cを設けなくてもルツボストロークが確保できる場合もある。また、断熱板8中央にはルツボ軸スリーブ6aの貫通できる開口部8d(穴)が開いていることが好ましい。このような開口部8b,8c,8dを有することでスリーブの高さが高くともルツボストロークを確保することができる。
【0022】
さらに、単結晶引上げ装置1は、断熱板8上にルツボ2の下部を囲繞できるサブ断熱板8aを有し、このサブ断熱板8aはルツボ受皿6cの外径より大きい内径を有する。これによりサブ断熱板8aの内側に黒鉛ルツボ2a下部のルツボ受皿6cが降下できる構造となっている。そのため、ルツボ2下部に肉厚のサブ断熱板8aを設けてもルツボストロークを十分に確保することができる。なお、ルツボ受皿6cは黒鉛製であることが好ましい。これにより、下部の断熱効果が大幅に向上する。
【0023】
また、サブ断熱板8aの形状は特に制限されないが、例えば、図3(a),(b)に示すように2分割されたリング形状とすることができる。また、図3(b)に示すように、サブ断熱板8aの断熱板8の開口部8b,8c,8dに対応する部分に開口部を設けることもできる。これにより一層ルツボのストロークを長くすることが可能となる。
【0024】
さらに、断熱板8は、ヒーター11と一緒に上下に昇降できるようにヒーター11のクランプ5c上に絶縁物5fを介して載せられたものであることが好ましい。特に制限されないが、例えば、図2の断熱板8裏側の開口部8b横の2か所ずつの破線円で示した箇所で、絶縁物5fを介してクランプ5c上に載せられることができ、その断面図は図2の断熱板8の断面AOA’’矢視図である図4のようになる。ここで示されるように、絶縁物支持部5eに円板状の絶縁物5fを載せ、その上に断熱板8を載せたものとすることができる。このような構造により、断熱板8は、ヒーター11の昇降に合わせ、同期して一緒に昇降することが可能となる。
【0025】
以上の構造により、ヒーター11と一緒に上下に昇降可能な肉厚の断熱板8をルツボの下部近傍に位置させ、ルツボ底部の断熱性を高め、電力ロスを減少させ、省電力化を高めることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
〔実施例〕
図7に示すような、直径20インチ(50.8cm)のルツボを装備した単結晶引上げ装置において、最大初期チャージ量を従来の70kgより100kgにアップした。これに伴い100kgの融液量を湯漏れ受皿内に収容できるようにするため、スリーブ高さを50mmアップした。図7に示すようにルツボ下部の断熱板は従来と構造を変え、上下2段重ねの断熱板の内、下段の断熱板は従来の厚みを30mmとし、上段のサブ断熱板は形状を図3のようにし、2分割されたリング形状で厚みを40mmとした。上下の断熱板を合わせた厚みが70mmとなったが、上段のサブ断熱板の内側にルツボ下部が収容できる構造であり、また、湯漏れ受皿内のスリーブが断熱板を貫通できる構造であったため、図7のようにルツボ内にシリコン原料100kgを一度に仕込んだ状態でも、ルツボ内の原料と整流筒との間隔を十分に確保でき、追加チャージすることなく、100kgの原料を一括で溶融することができた。また、ルツボが下方に降下できるストロークが十分にあるため、リチャージ量を75kgまで増加することができ、100kgチャージで75kgのシリコン単結晶をマルチプーリングで3本製造できた。なお、断熱板はヒーターのクランプ上に絶縁物を介して載せられているものとした。
【0028】
〔比較例1〕
図8に示すような、直径20インチ(50.8cm)ルツボを装備した従来の単結晶引上げ装置において、最大初期チャージ量を70kgとし、最大リチャージ量を50kgとし、50kgのシリコン単結晶をマルチプーリングで3本製造した。ここで70kgのシリコン原料を仕込んだ状態を図8に示すが、ルツボ内の原料と整流筒との間隔が50mm以上確保され、リチャージが支障なく、実施できていた。しかしながら、その分スリーブの高さが短くなり、原料融液の最大容量以上の容積を有することができず、湯漏れ時の安全性が確保されていなかった。なお、ルツボ下部の断熱板は従来と同構造のまま、厚み60mmでヒーターのクランプ上に絶縁物を介して載せられている。
【0029】
〔比較例2〕
図9に示すような、直径20インチ(50.8cm)ルツボを装備した従来の単結晶引上げ装置において、最大初期チャージ量を従来の70kgより100kgにアップした。100kgの融液量を湯漏れ受皿内に収容できるようにするため、スリーブ高さを50mmアップした。ここで70kgのシリコン原料を仕込んだ状態を図9に示す。ルツボ下部の断熱板は従来と同構造のまま、厚み60mmでヒーターのクランプ上に絶縁物を介して載せられている。ルツボの最下端位置において、ルツボ内の原料と整流筒との間隔が50mm狭くなり、リチャージ時にルツボを十分に下降できなくなり、マルチプーリングができなくなってしまった。このため、100kgチャージから95kgのシリコン単結晶を1本引きで引き上げて、単結晶の製造を終了した。
【0030】
〔比較例3〕
図10に示すような、直径20インチ(50.8cm)のルツボを装備した従来の単結晶引上げ装置において、最大初期チャージ量を70kgより100kgにアップし、断熱板厚みを半分の30mmとして、ルツボをさらに30mm下降できるようにした。しかしながら、最大リチャージ量が従来50kgから65kgまでが限界となった。このため、1本目に75kgのシリコン単結晶を製造した後、2本目以降は90kgチャージとし、チャージ量を減らしてマルチプーリングを行った。その結果、断熱板の厚みを半分としたため実施例1、比較例1、2と比べて電力消費が増大した。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0032】
1…単結晶引上げ装置、 2…ルツボ、 2a…黒鉛ルツボ、 2b…石英ルツボ、 3…メインチャンバー、 4…湯漏れ受皿、 5…電極、 5a…電極スリーブ、 5c…クランプ、 5d…クランプボルト、 5e…絶縁物支持部、 5f…絶縁物、 6…ルツボ軸、 6a…ルツボ軸スリーブ、 6b…ペディスタル、 6c…ルツボ受皿、 7…排ガス管、 7a…排ガス管スリーブ、8…断熱板、 8a…サブ断熱板、 8b,8c,8d…開口部、 9…整流筒、 11…ヒーター、 12…原料融液、 h…スリーブの高さ
101…単結晶引上げ装置、 102…ルツボ、 103…メインチャンバー、 104…湯漏れ受皿、 105…電極、 105a…電極スリーブ、 106…ルツボ軸、 106a…ルツボ軸スリーブ、 107…排ガス管、 107a…排ガス管スリーブ、 108…断熱板、 109…整流筒、 h’…スリーブの高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10