(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.熱伝導性感圧接着剤組成物(E)
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)は、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S)と、膨張化黒鉛粉(B)及び所定の条件を満たした縮合リン酸エステル(C)とを所定量の含有している。また、所定量のリン酸塩(D)を含有していることが好ましい。以下にこれらの各物質について詳細に説明する。
【0017】
<縮合リン酸エステル(C)>
本発明に用いることができる縮合リン酸エステル(C)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上のものである。縮合リン酸エステル(C)の粘度が低すぎる場合は、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)にする際の成形性が悪くなる。なお、本発明において縮合リン酸エステル(C)及び後述する非縮合リン酸エステルの「粘度」とは、以下に説明する方法によって測定した粘度を意味する。
【0018】
(縮合リン酸エステル(C)及び非縮合リン酸エステルの粘度測定方法)
縮合リン酸エステル(C)及び非縮合リン酸エステルの粘度測定には、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて、以下に示す手順で行った。
(1)常温の環境で縮合リン酸エステル(C)又は非縮合リン酸エステルを300ml計量し、500mlの容器に入れる。
(2)攪拌用ロータNo.1、2、3、4、5、6、7から、いずれかを選択し、粘度計に取り付ける。
(3)縮合リン酸エステル(C)又は非縮合リン酸エステルが入った容器を粘度計の上に置き、ロータを該容器内の縮合リン酸エステル(C)又は非縮合リン酸エステルに沈める。このとき、ロータの目印となる凹みが丁度、縮合リン酸エステル(C)又は非縮合リン酸エステルの液状界面にくるように沈める。
(4)回転数を20、10、4、2の中から選択する。
(5)攪拌スイッチを入れ、1分後の数値を読み取る。
(6)読み取った数値に、係数Aを掛け算した値が粘度[mPa・s]となる。
なお、係数Aは、下記表1に示すように、選択したロータNoと回転数とから決まる。
【0020】
また、本発明に用いる縮合リン酸エステル(C)は、大気圧下において、15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体である。縮合リン酸エステル(C)は、混合する際に液体でなければ、作業性が悪く、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)をシート化することが困難になる。縮合リン酸エステル(C)を含んだ熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を得る際、通常は15℃以上100℃以下の環境で、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を構成する各物質を混合する。混合時の温度が低すぎれば、後に詳述する重合体(S)のガラス転移温度を下回ることになり、高すぎれば単量体等の揮発あるいは重合反応が始まってしまうため、環境性及び作業性が悪くなる。
【0021】
これまでに説明した条件を満たす縮合リン酸エステル(C)の具体例としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル;ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートなどの含ハロゲン系縮合リン酸エステル;非芳香族非ハロゲン系縮合リン酸エステル;などが挙げられる。これら一種を単独用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、比重が比較的小さく、有害物質(ハロゲンなど)の放出の危険がなく、入手も容易であることなどから、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)がより好ましい。
【0022】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)に含有される縮合リン酸エステル(C)の量は、重合体(S)を100質量部として、75質量部以上850質量部以下である。上限は500質量部であることが好ましく、300質量部であることがより好ましい。下限は150質量部であることが好ましく、250質量部であることがより好ましい。縮合リン酸エステル(C)の含有量が多すぎれば熱伝導性感圧接着剤組成物(E)をシート化することが困難になり、少なすぎれば熱伝導性感圧接着剤組成物(E)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(F)の難燃性が十分でなくなる。
【0023】
<膨張化黒鉛粉(B)>
本発明に用いることができる膨張化黒鉛粉(B)の例としては、酸処理した黒鉛を500℃〜1200℃にて熱処理して100ml/g〜300ml/gに膨張させ、次いで、粉砕することを含む工程を経て得られたものを挙げることができる。より好ましくは、黒鉛を強酸で処理した後アルカリ中で焼結し、その後再度強酸で処理したものを500℃〜1200℃にて熱処理して、酸を除去すると共に100ml/g〜300ml/gに膨張させ、次いで、粉砕することを含む工程を経て得られたものを挙げることができる。上記熱処理の温度は、特に好ましくは800℃〜1000℃である。
【0024】
本発明に用いる膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径は30μm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは50μm〜400μmであり、さらに好ましくは80μm〜300μmである。膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径が上記範囲の下限未満では、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)とした際に、該熱伝導性感圧接着性シート(F)の熱伝導率を向上させる効果が低くなる傾向にある。一方、膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径が上記範囲の上限を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)とした際に、該熱伝導性感圧接着性シート(F)の表面に膨張化黒鉛粉(B)が大きなドメインで存在することにより、被接着体との界面において空隙ができやすくなり、該熱伝導性感圧接着性シート(F)の熱伝導性及び粘着性が低下する虞や、成形性が悪くなる虞がある。
【0025】
膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径は、レーザー式粒度測定機(株式会社セイシン企業製)を用い、マイクロソーティング制御方式(測定領域内にのみ測定対象粒子を通過させ、測定の信頼性を向上させる方式)により測定する。この測定方法は、セル中に測定対象の膨張化黒鉛粉(B)0.01g〜0.02gが流されることで、測定領域内に流れてくる膨張化黒鉛粉(B)に波長670nmの半導体レーザー光が照射され、その際のレーザー光の散乱と回折が測定機にて測定されることにより、フランホーファの回折原理から、平均粒径及び粒径分布が計算され、その結果が表示される。
【0026】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)に含有される膨張化黒鉛粉(B)の量は、重合体(S)を100質量部として、150質量部以上2000質量部以下である。下限は200質量部であることが好ましく、250質量部であることがより好ましい。上限は500質量部であることが好ましく、300質量部であることがより好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(E)に含有される膨張化黒鉛粉(B)が少なすぎれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)とした際に、該熱伝導性感圧接着性シート(F)の熱伝導率を向上させる効果が低くなる傾向にある。一方、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)に含有される膨張化黒鉛粉(B)が多すぎれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)の粘度が上昇し、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)から熱伝導性感圧接着性シート(F)を得る際の生産性が低下する他、粘着性、柔軟性が低下する虞がある。
【0027】
<重合体(S)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)には、重合体(S)が含有されている。重合体(S)を構成するものとしては、ゴム、エラストマー及び樹脂の中から任意に選んだ少なくとも一種を挙げることができる。そして、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)をシート状に成形して熱伝導性感圧接着性シート(F)として用いるためには、重合体(S)に接着性又は粘着性を備えさせることが好ましい。重合体(S)に、接着性又は粘着性を備えさせるためには、ゴム、エラストマー及び樹脂は、接着性又は粘着性を有するものの中から選ぶことが好ましい。しかしながら、接着性又は粘着性を有しないゴム、エラストマー及び樹脂に、粘接着性付与剤を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
本発明に用いることができるゴム、エラストマー及び樹脂の具体例を以下に列記する。
【0029】
天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムなどの、共役ジエン重合体;ブチルゴム;スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合ゴムなどの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体とポリ(ハロゲン化ビニル)との混合物;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリアクリル酸ステアリル、ポリメタクリル酸ステアリルなどの、(メタ)アクリル重合体;ポリエピクロロヒドリンゴム、ポリエピブロモヒドリンゴムなどの、ポリエピハロヒドリンゴム;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどの、ポリアルキレンオキシド;エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM);シリコーンゴム;シリコーン樹脂;フッ素ゴム;フッ素樹脂;ポリエチレン;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体などの、エチレン−α−オレフィン共重合体;ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−オクテンなどの、α−オレフィン重合体;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ臭化ビニル樹脂などの、ポリハロゲン化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ臭化ビニリデン樹脂などの、ポリハロゲン化ビニリデン樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12などの、ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステル;ポリ酢酸ビニル;ポリ(エチレン−ビニルアルコール);などを挙げることができる。
【0030】
上記したゴム、エラストマー及び樹脂の具体例の中でも、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリアクリル酸エチル、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕が、接着性、粘着性に優れるため好ましい。
【0031】
より好ましくは、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕が挙げられる。
【0032】
さらに好ましくは、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕が挙げられる。
【0033】
ゴム、エラストマー、及び、樹脂の具体例として挙げた上記物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。重合体(S)を構成するものとしては、後に詳細に説明するように、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合することにより得られるものが特に好ましい。
【0034】
重合体(S)に所望により配合される粘接着性付与剤としては、各種公知のものを使用できる。例えば石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂及びロジン樹脂が挙げられるが、これらのなかでも石油樹脂が好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
石油樹脂の具体例としては、ペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどから得られるC5石油樹脂;インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどから得られるC9石油樹脂;上記各種モノマーから得られるC5−C9共重合石油樹脂;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンから得られる石油樹脂;それらの石油樹脂の水素化物;それらの石油樹脂を無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性石油樹脂;などを挙げることができる。
【0036】
テルペン系樹脂としてはα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂や、α−ピネン、β−ピネンなどのテルペン類とスチレンなどの芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂などを例示できる。
【0037】
フェノール樹脂としては、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物を使用できる。該フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられ、これらフェノール類とホルムアルデヒドをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが例示できる。また、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども例示できる。
【0038】
ロジン樹脂としてはガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンや、前記ロジンを用いて不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジンや、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性ロジンや、それらのエステル化物などが挙げられる。
【0039】
上記エステル化物を得るためのエステル化に用いられるアルコールとしては多価アルコールが好ましく、その例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコールや、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0040】
これら粘接着性付与剤の軟化点は特に限定されないが、200℃以下の高軟化点のものから室温にて液状のものを適宜選択して使用できる。
【0041】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A))
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)として用いる際に、該熱伝導性感圧接着性シート(F)に接着性・柔軟性を付与させやすいという観点からは、重合体(S)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)であることが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)としては、主成分(本発明においては、「50質量%以上含有している成分」を意味する。)として(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位を有してなる重合体であれば、特に限定されない。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する単量体としては、後述する、単量体(a1m)、単量体(a2m)、単量体(a3m)、単量体(a4m)及び多官能性単量体の中から、任意に1種又は2種以上を選ぶことができる。但し、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分として用いる。
【0044】
好ましい(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)としては、単量体(a1m)、単量体(a2m)、及び多官能性単量体から、それぞれ、少なくとも1種、すなわち、単量体(a1m)から少なくとも1種、単量体(a2m)から少なくとも1種、及び多官能性単量体から少なくとも1種を選んで共重合させてなるもの、が挙げられる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する単量体単位の量比としては、後述する単量体単位(a1)、単量体単位(a2)、及び多官能性単量体の単位、の3成分の量比として、(単量体単位(a1))/(単量体単位(a2))/(多官能性単量体の単位)の表記で、(80〜94.5)/(5〜15)/(0.5〜5)が好ましく、(85〜93)/(6〜10)/(1〜5)がより好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を得るための重合方法は、特に限定されないが、溶液重合法や塊状重合法が好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する単量体(混合物)を2つ以上のグループに分けて、一方のグループの単量体(混合物)を溶液重合法や塊状重合法で重合して重合体を得た後、場合によってはそれを単離した後、他方のグループの単量体(混合物)、本発明に用いる各種配合剤(膨張化黒鉛粉(B)や縮合リン酸エステル(C)を含む)などを適宜混合し、塊状重合法や溶液重合法によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を得ても良い。
【0047】
重合開始剤の種類や量、重合温度、重合時間、重合時の圧力などの条件は、特に限定されないが、後述するような条件で重合を行って(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を得ることが好ましい。
【0048】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A1))
以下、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)について詳細に説明する。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)、及び、有機酸基を有する単量体単位(a2)を含有することが好ましい。
【0050】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を与える(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)には、特に限定はないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸プロピル(同−37℃)、アクリル酸ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸2−エトキシメチル(同−50℃)、メタクリル酸オクチル(同−25℃)、メタクリル酸デシル(同−49℃)などを挙げることができる。
【0051】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0052】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、それから導かれる単量体単位(a1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは85質量%以上99.5質量%以下となるような量で重合に使用される。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)の使用量が、上記範囲内であると、これから得られる熱伝導性感圧接着性シート(F)の室温付近での感圧接着性に優れる。
【0053】
有機酸基を有する単量体単位(a2)を与える単量体(a2m)は、特に限定されず、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができるが、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
【0054】
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノプロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
【0055】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
【0056】
これらの有機酸基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体がより好ましく、中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。これらは、工業的に安価で容易に入手することができ、他の単量体成分との共重合性も良く、生産性の点でも好ましい。これらの有機酸基を有する単量体(a2m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0057】
これらの有機酸基を有する単量体(a2m)は、それから導かれる単量体単位(a2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に使用されるのが望ましい。上記範囲内での使用においては、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことができる。
【0058】
なお、有機酸基を有する単量体単位(a2)は、前述のように、有機酸基を有する単量体(a2m)の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル重合体生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)から誘導される重合体単位(a3)を含有していてもよい。
【0060】
有機酸基以外の官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
【0061】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0062】
アミノ基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
【0063】
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
【0064】
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0065】
有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0066】
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、それから導かれる単量体単位(a3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、10質量%以下となるような量で重合に使用されるのが好ましい。10質量%以下の単量体(a3m)を使用することにより、重合時の粘度を適正に保つことができる。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述したガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)、有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、有機酸基以外の官能基を含有する単量体単位(a3)以外に、これらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)から誘導される単量体単位(a4)を含有していてもよい。単量体(a4m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0068】
単量体(a4m)から導かれる単量体単位(a4)の量は、アクリル酸エステル重合体(A1)の10質量%以下が好ましく、より好ましくは、5質量%以下である。
【0069】
単量体(a4m)は、特に限定されないが、その具体例として、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン系単量体、非共役ジエン系単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0070】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸プロピル(同25℃)、メタクリル酸ブチル(同20℃)などを挙げることができる。
【0071】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0072】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエン、及び、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0073】
共役ジエン系単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレンと同義)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
【0074】
非共役ジエン系単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0075】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0076】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0077】
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなど
を挙げることができる。
【0078】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、10万から40万の範囲にあることが好ましく、15万から30万の範囲にあることが、より好ましい。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)、有機酸基を有する単量体(a2m)、必要に応じて使用する、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)、及び、必要に応じて使用するこれらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)を共重合することによって特に好適に得ることができる。
【0080】
重合の方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これ以外の方法でもよい。好ましくは、溶液重合であり、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチルなどのカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒を用いた溶液重合がより好ましい。
【0081】
重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。
【0082】
重合開始の方法は、特に限定されないが、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるのが好ましい。熱重合開始剤は、特に限定されず、過酸化物及びアゾ化合物のいずれでもよい。
【0083】
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシドの他、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などを挙げることができる。これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
【0084】
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを挙げることができる。
【0085】
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単量体100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の範囲であるのが好ましい。
【0086】
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、圧力、撹拌条件など々)は、特に制限がない。
【0087】
重合反応終了後、必要により、得られた重合体を重合媒体から分離する。分離の方法は、特に限定されないが、溶液重合の場合、重合溶液を減圧下に置き、重合溶媒を留去することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得ることができる。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量は、重合の際に使用する重合開始剤の量や、連鎖移動剤の量を適宜調整することによって制御することができる。
【0089】
((メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m))
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)とする際に、該熱伝導性感圧接着性シート(F)の成形性を向上させるという観点からは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合することにより得られるものであることが特に好ましい。本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を成形して、熱伝導性感圧接着性シート(F)とする際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)は、重合して(メタ)アクリル酸エステル重合体に変換する。
【0090】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するものであれば、特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)を含有するものであることが好ましい。
【0091】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)と同様の(メタ)アクリル酸エステル単量体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0092】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及びそれと共重合可能な単量体との混合物として用いてもよい。
【0093】
特に好ましい(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)、及び、有機酸基を有する単量体(a6m)からなるものである。
【0094】
有機酸基を有する単量体(a6m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる単量体(a2m)として例示したものと同様の有機酸基を有する単量体を挙げることができる。有機酸基を有する単量体(a6m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0095】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)における、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率は、好ましくは70質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは75質量%以上99質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率が、上記範囲にあるときは、熱伝導性感圧接着性シート(F)の感圧接着性や柔軟性に優れる。
【0096】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)における、有機酸基を有する単量体(a6m)の比率は、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上25質量%以下である。有機酸基を有する単量体(a6m)の比率が上記範囲にあるときは、熱伝導性感圧接着性シートの硬度が適正となり、高温(100℃)での感圧接着性が良好なものとなる。
【0097】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及び有機酸基を有する単量体(a6m)の他に、これらと共重合可能な単量体(a7m)を20質量%以下の範囲で含有することができる。
【0098】
上記単量体(a7m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる単量体(a3m)、単量体(a4m)、又は下記に示す多官能性単量体として例示するものと同様の単量体を挙げることができる。
【0099】
共重合可能な単量体(a7m)としては、前述したように、二以上の重合性不飽和結合を有する、多官能性単量体を用いることもできる。多官能性単量体を共重合させることにより、共重合体に分子内及び/又は分子間架橋を導入して、感圧接着剤としての凝集力を高めることができる。
【0100】
多官能性単量体としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジンの他、4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどを用いることができる。中でも、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0101】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)は、上記の多官能性単量体を含有していることが好ましい。多官能性単量体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)100質量%中に、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上8質量%以下含有しているのが望ましい。
【0102】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)に含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)の量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)100質量部に対して、下限が20質量部であることが好ましく、40質量部であることがより好ましく、60質量部であることがさらに好ましい。また、上限は170質量部であることが好ましく、150質量部であることがより好ましく、130質量部であることがさらに好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(E)に含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)の量が多すぎても少なすぎても、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱伝導性感圧接着性シート(F)とした際に、該熱伝導性感圧接着性シート(F)の感圧接着保持性が劣ることがある。
【0103】
熱伝導性感圧接着性シート(F)を成形する際には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合させることが好ましい。熱伝導性感圧接着性シート(F)が、上記膨張化黒鉛粉(B)と縮合リン酸エステル(C)とを所定量含有した熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を、シート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の存在下に該熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合することによって得られる該熱伝導性感圧接着剤組成物(E)の固化物(E’)のシート状の形態物であることによって、該熱伝導性感圧接着性シート(F)はその表面状態が良くなる。
【0104】
上記重合を促進するため、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)に加えて、さらに、重合開始剤を含有することが好ましい。
【0105】
重合開始剤としては、光重合開始剤、アゾ系熱重合開始剤、有機過酸化物熱重合開始剤などが挙げられるが、得られる熱伝導性感圧接着性シート(F)の接着力等の観点から、有機過酸化物熱重合開始剤が好ましく用いられる。
【0106】
光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。その中でも、ホスフォンオキサイド系化合物が好ましい。好ましい光重合開始剤であるホスフォンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンジル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0107】
アゾ系熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などが挙げられる。
【0108】
有機過酸化物熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンのようなペルオキシドなどを挙げることができるが、熱分解時に臭気の原因となる揮発性物質を放出しないことが好ましい。有機過酸化物熱重合開始剤の中でも、1分間半減期温度が100℃以上かつ170℃以下のものが好ましい。
【0109】
有機過酸化物熱重合開始剤などの重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)100質量部に対し、下限が、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.3質量部、さらに好ましくは0.5質量部であり、上限が、好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは3質量部である。
【0110】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)の重合転化率は、95質量%以上であることが好ましい。重合転化率が低すぎると、得られる熱伝導性感圧接着性シート(F)に単量体臭が残るので好ましくない。
【0111】
<リン酸塩(D)>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)にリン酸塩(D)を所定量含有させれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)から得られる熱伝導性感圧接着性シート(F)の難燃性をさらに向上させることができる。熱伝導性感圧接着剤組成物(E)にリン酸塩(D)を含有させる場合、含有量は重合体(S)を100質量部として、250質量部以下であることが好ましい。リン酸塩(D)の含有量が多すぎれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)をシート化することが困難になる。
【0112】
本発明に用いることができるリン酸塩(D)の具体例としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸バリウム、ポリリン酸亜鉛などの、ポリリン酸塩;(オルト)リン酸アンモニウム、(オルト)リン酸メラミン、(オルト)リン酸ナトリウム、(オルト)リン酸カリウム、(オルト)リン酸マグネシウム、(オルト)リン酸カルシウム、(オルト)リン酸バリウム、(オルト)リン酸亜鉛などの、(オルト)リン酸塩;などが挙げられる。その中でも、ポリリン酸塩が好ましく、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンがより好ましい。これらは、一種を単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
また、リン酸塩(D)は、窒素含有化合物、硫酸マンガンや酢酸マンガンなどの有機酸マンガン塩、硫酸亜鉛や酢酸亜鉛などの有機酸亜鉛塩、酸化亜鉛、などと併用することが好ましい。
リン酸塩(D)の形態としては、特に限定されないが、粉末状や微粒子状のものが、分散性が高いため好ましい。
【0113】
<その他の成分>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)には、さらに、必要により、非縮合リン酸エステル(縮合されていないリン酸エステル)、発泡剤、外部架橋剤、顔料、その他の充填材、老化防止剤、増粘剤、などの公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0114】
(非縮合リン酸エステル)
本発明の効果を損なわない範囲において、非縮合リン酸エステルを併用しても良い。ここでいう「非縮合リン酸エステル」とは、縮合されていないリン酸エステルのことを意味する。具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの芳香族非縮合リン酸エステル;トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系非縮合リン酸エステル;などが挙げられる。この中でも、有害物質(ハロゲンなど)が発生しないことなどから、芳香族非縮合リン酸エステルが好ましい。
非縮合リン酸エステルを使用する際の使用量は、使用する縮合リン酸エステルの量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0115】
(発泡剤)
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)には、それから得られる熱伝導性感圧接着性シート(F)を発泡させるために、発泡剤を添加することもできる。発泡剤としては、熱分解性有機発泡剤が好ましい。さらに、熱分解性有機発泡剤としては、80℃以上かつ200℃以下の分解開始温度を有するものが好ましい。
【0116】
そのような熱分解性有機発泡剤の具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。アゾジカルボアミドなどの、熱分解開始温度が200℃より高い有機発泡剤に後述する発泡助剤を一定量混合して熱分解開始温度を100℃以上かつ200℃以下とした発泡システムも同様に熱分解性有機発泡剤とすることができる。
【0117】
上記発泡助剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸と亜鉛華(酸化亜鉛のこと)の混合物、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸と亜鉛華の混合物、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸と亜鉛華の混合物、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、などが挙げられる。
【0118】
(外部架橋剤)
また、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(E)には、感圧接着剤としての凝集力を高め、耐熱性などを向上させるために、外部架橋剤を添加して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合してなる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に架橋構造を導入することができる。
【0119】
外部架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能性イソシアネート系架橋剤;ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのエポキシ架橋剤;メラミン樹脂架橋剤;アミノ樹脂架橋剤;金属塩架橋剤;金属キレート架橋剤;過酸化物架橋剤;などが挙げられる。
【0120】
外部架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を得た後、これに添加して、加熱処理や放射線照射処理を行うことにより、共重合体の分子内及び/又は分子間に架橋を形成させるものである。
【0121】
外部架橋剤の使用量としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下が望ましい。
【0122】
(その他)
顔料としては、カーボンブラックや、二酸化チタンなど、有機系、無機系を問わず使用できる。その他の充填材としては、クレーなどの無機化合物などが挙げられる。フラーレンやカーボンナノチューブなどのナノ粒子を添加してもよい。老化防止剤としては、ラジカル重合を阻害する可能性が高いため通常は使用しないが、必要に応じてポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤を使用することができる。増粘剤としては、アクリル系ポリマー粒子、微粒シリカなどの無機化合物微粒子、酸化マグネシウムなどのような反応性無機化合物を使用することできる。
【0123】
2.熱伝導性感圧接着剤シート(F)
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)のシート状の形態物である。熱伝導性感圧接着剤組成物(E)をシート状に成形して、熱伝導性感圧接着性シート(F)とすることができる。熱伝導性感接着剤組成物(E)をシート状に成形する際には、加熱することが好ましい。
【0124】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)は、好ましくは、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を含有し、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の存在下に該(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)を重合することにより得られる、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E)の固化物(E’)のシート状の形態物である。
【0125】
ただし、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の、単量体などに代表される液体成分の含有量が5質量%以下である場合には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)はその固化物(E’)と略等価とみなすことができる。実際、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)などの液体成分を実質的に含んでいない熱伝導性感圧接着剤組成物(E)は、その固化物(E’)と等価であると考えることができる。
【0126】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)において、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の、単量体などに代表される液体成分の含有量が5質量%以下である場合には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を、該液体成分を固化(例えば、前記単量体を重合)することなしに、そのまま成形して本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)とすることができる。
【0127】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)又はその固化物(E’)のみからなるものであってもよく、基材とその片面又は両面に形成された熱伝導性感圧接着剤組成物(E)又はその固化物(E’)の層とからなる複合体であってもよい。
【0128】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)における熱伝導性感圧接着剤組成物(E)又はその固化物(E’)の層の厚さは特に限定されないが、通常、50μm〜3mmである。50μmより薄いと、発熱体と放熱体に貼付する際に空気を巻き込み易く、結果として充分な熱伝導性を得られない虞がある。一方、3mmより厚いと、熱伝導性感圧接着性シート(F)の厚み方向の熱抵抗が大きくなり、放熱性が損なわれる虞がある。
【0129】
基材の片面又は両面に熱伝導性感圧接着剤組成物(E)又はその固化物(E’)の層を形成する場合、基材は、特に限定されない。
【0130】
基材の具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ベリリウム銅などの熱伝導性に優れる金属、及び、合金の箔状物や、熱伝導性シリコーンなどのそれ自体熱伝導性に優れるポリマーからなるシート状物や、熱伝導性フィラーを含有させた熱伝導性プラスチックフィルムや、各種不織布や、ガラスクロスや、ハニカム構造体などを用いることができる。
【0131】
プラスチックフィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーからなるフィルムを使用することができる。
【0132】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E)又はその固化物(E’)をシート状に成形する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、例えば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を、剥離処理したポリエステルフィルムなどの工程紙の上に塗布するキャスト法、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)又はその固化物(E’)を、必要ならば二枚の剥離処理した工程紙間に挟んで、ロールの間を通す方法、及び、押出機を用い、押出す際に、ダイスを通して厚さを制御する方法、などが挙げられる。
【0133】
シート化しながら、あるいはシート化後に、例えば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を熱風、電気ヒーター、赤外線などにより加熱することによって、熱伝導性感圧接着性シート(F)を好適に得ることができる。このときの加熱温度は、有機過酸化物熱重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)の重合が進行する条件が好ましい。温度範囲は、用いる有機過酸化物熱重合開始剤の種類により異なるが、100℃〜200℃が好ましく、130℃〜180℃がより好ましい。
【0134】
熱伝導性感圧接着性シート(F)は、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)を、シート状に成形し、及び100℃以上かつ200℃以下の温度に加熱することにより、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)のシート化及び熱伝導性感圧接着剤組成物(E)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(A2m)の重合を行うことによりなるシート状成形体であることが好ましい。
【0135】
3.電子部品
上記した本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)は、電子部品の一部として用いることができる。その際、放熱体のような基材上に直接的に形成して、電子部品の一部として提供することもできる。当該電子部品の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)、発行ダイオード(LED)光源を有する機器における発熱部周囲の部品、自動車等のパワーデバイス周囲の部品、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)などの発熱部を有する機器や部品を挙げることができる。
【0136】
なお、本発明の熱伝導性シート(F)の電子機器への使用方法の一例として、LED光源を具体例に下記に記述するような方法で使用することを挙げることができる。すなわちLED光源に直接貼り付ける;LED光源と放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシートなど)との間に挟みこむ;LED光源に接続された放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシートなど)に貼り付ける;LED光源を取り囲む筐体として使用する;LED光源を取り囲む筐体に貼り付ける;LED光源と筐体との隙間を埋める;などの方法である。なお、LED光源の用途例としては、透過型の液晶パネルを有する表示装置のバックライト装置(テレビ、携帯、PC、ノートPC、PDAなど);車両用灯具;工業用照明;商業用照明;一般住宅用照明;などが挙げられる。
【0137】
また、LED光源以外の具体例としては、以下が挙げられる。すなわち、PDPパネル;IC発熱部;冷陰極管(CCFL);有機EL光源;無機EL光源;高輝度発光LED光源;高輝度発光有機EL光源;高輝度発光無機EL光源;CPU;MPU;半導体素子;などである。
【0138】
更に本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)の使用方法としては、装置の筐体に貼り付けることなどを挙げることができる。例えば、自動車などに使用される装置では、自動車に備えられる筐体の内部に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の外側に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)と筐体とを接続する;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)に接続した放熱板に貼り付ける;ことなどが挙げられる。
【0139】
また、自動車以外にも、同様の方法で本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)を使用することができる。例えばパソコン;住宅;テレビ;携帯電話機;自動販売機;冷蔵庫;太陽電池;表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED);有機ELディスプレイ;無機ELディスプレイ;有機EL照明;無機EL照明;ノートパソコン;PDA;燃料電池;半導体装置;炊飯器;洗濯機;洗濯乾燥機;光半導体素子と蛍光体を組み合わせた光半導体装置;各種パワーデバイス;ゲーム機;キャパシタ;などが挙げられる。
【0140】
更に、本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)は上記の使用方法に留まらず、用途に応じて使用する事が可能である。例えば、カーペットや温暖マットなどの熱の均一化のために使用する;LED光源/熱源の封止剤として使用する;太陽電池セルの封止剤として使用する;太陽電池のバックシ−トとして使用する;太陽電池のバックシ−トと屋根との間に使用する;自動販売機内部の断熱層の内側に使用する;有機EL照明の筐体内部に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、エポキシ系の放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;人や動物を冷やすための装置、衣類、タオル、シートなどの冷却部材に対し、身体と反対の面に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置の加圧部材に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置の加圧部材そのものとして使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部として使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部に使用する;放射性物質格納容器の外層と内装の間に使用する;太陽光線を吸収するソーラパネルを設置したボックス体の中に使用する;CCFLバックライトの反射シートとアルミシャーシの間に使用する;ことなどを挙げることができる。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0142】
<難燃性の評価>
熱伝導性感圧接着性シート(F)を幅10mm×長さ150mmの大きさに裁断した試験片を5本用意した。ブンゼンバーナーの空気およびガスの流量を調整して高さ20mm程度の青色炎をつくり、垂直に支持した試験片の下端にバーナーの炎をあてて(炎と約10mm交わるように)10秒間保った後、試験片とバーナー炎を離した。その後、試験片の炎が消えれば直ちにバーナー炎を試験片にあて、更に10秒間保持した後、試験片とバーナー炎を離した。この試験によって、UL−94(難燃性規格)の判定を行った。すなわち、1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間及び無炎燃焼持続時間の合計、5本の試験片の有炎及び無炎燃焼時間の合計、並びに燃焼滴下物(ドリップ)の有無で、V−0に該当するかどうかを判定した。1回目、2回目ともに10秒以内に有炎燃焼を終え、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内であって、更に5本の試験片の有炎及び無炎燃焼時間の合計が50秒以内であり、燃焼落下物がないものをV−0とした。すべて燃えたものは、規格外とした。その結果を表2に示す。また、1回目と2回目の接炎終了後の有炎及び無炎燃焼持続時間の合計時間もあわせて示す。
【0143】
<熱特性の評価>
幅25mm×長さ120mm×厚み0.5mmの大きさに裁断した試験片の上に、接触面積が25mm×25mmとなる平板状のセラミックヒータを載せた。このとき、試験片の短辺側の一端とセラミックヒータの一端面とを揃えるようにして載せた。その後、23℃雰囲気下で、セラミックヒータに20Vの電圧を付加し、60分後にセラミックヒータと試験片とを上面側からサーモビジョンで撮影した。セラミックヒータの最も温度が高い部分を確認し、その温度から、セラミックヒータに試験片を接触させてない場合のセラミックヒータの温度を引いた値を熱特性の評価結果とした。熱特性の値が小さいほど、放熱性能が高い。その結果を表2に示す。
【0144】
<シート化>
後述するように熱伝導性感圧接着性シート(F)を作製して、熱伝導性感圧接着性シート(F)から離型PETを剥がした後、シート状を維持できた場合を「○」、シートが脆く、離型PETを剥離した後シートの形状を維持することができなかった場合を「×」として評価した。その結果を表2に示す。
【0145】
(実施例1)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は270,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は3.1であった。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
【0146】
次に、電子天秤を用いて、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートを60:35:5の割合で混合した多官能性単量体3.1部、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」と略記する。)39.3部、メタクリル酸(以下、「MAA」と略記する。)5.2部、有機過酸化物熱重合開始剤である1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(以下、「tBCH」と略記する。)〔1分間半減期温度は150℃である。〕4.0部の順で計量して混合し、液体原料を得た。
【0147】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)52.4部と、膨張化黒鉛粉(B)(商品名「EC−50」、伊藤黒鉛工業株式会社製、平均粒径:250μm)270.3部と、縮合リン酸エステル(C)(商品名「CR−741」、大八化学工業株式会社製、粘度:32000mPa・s(25℃)、大気圧下での15〜100℃の温度領域において常に液体、化合物名「ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)」)270.3部と、カーボンブラック(商品名「EC」、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製、数密度:100〜145kg/m
2)5.4部と、上記液体原料と、を列記した順でホバート容器に投入して減圧下において攪拌混合しながら脱泡し、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を得た。なお、混合は、株式会社小平製作所製のホバートミキサー(商品名「ACM−5LVT型、容量:5L」)を用いて、下記条件に従って行った。
混合条件:
恒温槽(商品名「ビスコメイト 150III」、東機産業株式会社製)を用いて、ホバート容器の温調を40℃に設定。
1.回転数メモリ3×10分で混合
2.回転数メモリ5×20分で混合
3.回転数メモリ3×10分、−0.1MPaで真空脱泡しながら混合
【0148】
その後、上記の熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで挟み込み、離型PETフィルムの上からロールでシート状に成形し、150℃の熱風炉で20分間、重合を行わせ、両面を離型PETで覆われた、厚み0.5mmの熱伝導性感圧接着性シート(F1)を得た。熱伝導性感圧接着性シート(F1)中の残存単量体量から(メタ)アクリル酸エステル単量体混合物(A2m)の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
この熱伝導性感圧接着性シート(F1)について各特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0149】
(実施例2〜7、比較例1〜5)
表2に示すように、各配合物種及びその量を変更した以外は実施例1と同様にして、熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)〜(E7)及び(EC1)〜(EC5)、並びに、熱伝導性感圧接着性シート(F2)〜(F7)、及び(FC3)を得た。なお、比較例1〜2及び比較例4〜5の熱伝導性感圧接着剤組成物(EC1)〜(EC2)、(EC4)〜(EC5)については、熱重合後、シートの形状を維持することができなかった。上記熱伝導性感圧接着性シート(F2)〜(F7)、及び(FC3)について、それぞれ、各特性を評価した。その結果を表2に示す。
但し、実施例1で使用していないものについては、下記に示すものを用いた。
実施例6で用いた縮合リン酸エステル(C):商品名「CR−733s」、大八化学工業株式会社製、粘度:7800mPa・s(25℃)、大気圧下での15℃〜100℃の温度領域において常に液体、化合物名「1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)」。
比較例5で用いた縮合リン酸エステル:商品名「PX−200」、大八化学工業株式会社製、常温(25℃)で固体。
比較例1で用いたリン酸エステル:商品名「レオフォス65」、味の素ファインテック株式会社製、粘度:5800mPa・s(25℃)、大気圧下での15℃〜100℃の温度領域において常に液体。
実施例2〜7及び比較例3〜5で用いたリン酸塩(D):商品名「FP−2200」、株式会社ADEKA製。
比較例2で用いたリンペン状黒鉛:伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「W−5」、平均粒径:5μm。
【0150】
【表2】
【0151】
実施例1〜7の熱伝導性感圧接着性シート(F1)〜(F7)は、高い熱伝導性を備えるとともに、燃焼性が優れていた。一方、縮合リン酸エステル(C)の含有量が少なかった比較例3の熱伝導性感圧接着性シート(FC3)は難燃性が悪かった。なお、縮合リン酸エステル(C)にかえてリン酸エステルを含有した比較例1の熱伝導性感圧接着性シート(FC1)、膨張化黒鉛粉(B)にかえてリンペン状黒鉛を含有した比較例2の熱伝導性感圧接着性シート(FC2)、縮合リン酸エステル(C)の含有量が多すぎた比較例4の熱伝導性感圧接着性シート(FC4)、及び、縮合リン酸エステル(C)にかえて固体の縮合リン酸エステルを含有した比較例5の熱伝導性感圧接着性シート(FC5)はシート化することができなかった。
【0152】
<発光ダイオード(LED)光源を有する機器に用いた際の表面温度低減効果>
(実施例A)
市販のLED照明(日立ライティング株式会社製、LES7L/K6N−A)を分解し、LEDチップを搭載した基板の裏側に、実施例1の熱伝導性感圧接着性シート(F1)を60cm×60cmの大きさに切って貼り付け、再度組み立てた後、点灯させた。LED照明を60分間点灯したときのLEDチップ上の拡散板の表面温度をサーモビジョンで測定した。結果を表3に示す。
【0153】
(実施例B)
実施例1の熱伝導性感圧接着性シート(F1)にかえて実施例7の熱伝導性感圧接着性シート(F7)を使用した以外は、実施例Aと同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0154】
(比較例A)
市販のLED照明(日立ライティング株式会社製/LES7L/K6N−A)を60分間点灯したときのLEDチップ上の拡散板の表面温度をサーモビジョンで測定した。結果を表3に示す。
【0155】
(比較例B)
実施例1の熱伝導性感圧接着性シート(F1)にかえて市販の0.5W/m・Kの熱伝導性感圧接着性シートを使用した以外は、実施例Aと同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0156】
(比較例C)
実施例1の熱伝導性感圧接着性シート(F1)にかえて比較例1で作製したシート状粉体(比較例1の熱伝導性感圧接着剤組成物(EC1)は、重合後にシート形状を維持できなかったため、「シート状粉体」と呼ぶ。)を使用した以外は、実施例Aと同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
表3に示したように、本発明の熱伝導性感圧接着性シートを使用した実施例A、Bでは、LED表面温度の低減が達成された。一方、熱伝導性感圧接着性シートを用いなかった比較例A、本発明の熱伝導性感圧接着性シートではない熱伝導性感圧接着性シートを使用した比較例B、Cでは、本発明の熱伝導性感圧接着性シートを使用した場合に比べてLED表面温度を低減させることができなかった。
【0159】
以上、現時点において実践的で好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート、及び電子部品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。