(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5660095
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20150108BHJP
G02F 1/03 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
G02F1/035
G02F1/03 505
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-192204(P2012-192204)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-48516(P2014-48516A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2013年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝利
【審査官】
林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−301612(JP,A)
【文献】
特開2011−075906(JP,A)
【文献】
特開平10−293223(JP,A)
【文献】
特開2001−281507(JP,A)
【文献】
特開2007−094336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02F 1/29−1/39
G02B 6/12−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ20μm以下の基板に光導波路が形成され、該光導波路はマッハツェンダー型導波路と該マッハツェンダー型導波路の合波部から信号光を導波し該基板の外に出力するための出力導波路と、該出力導波路からの出射する信号光を導波するために、該基板の端面に対向して配置された光ファイバと、該合波部から放射される放射光をモニタするモニタ手段とを有する光変調器において、
該モニタ手段は、該合波部から分岐する放射光用導波路を有し、
該出力導波路と該放射光用導波路との間に配置され、該出力導波路を伝搬する放射光の一部を、該出力導波路から除去し、該基板の外に放出するための漏洩光除去手段を備え、
該漏洩光除去手段は、該出力導波路の近傍に配置され、かつ、該基板の端部近傍まで形成されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該放射光は、該信号光がオフ状態の時に該合波部から出力される放射光であることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、該漏洩光除去手段は、該基板の端部近傍まで連続して形成されたスラブ導波路であることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光変調器において、該漏洩光除去手段は、該出力導波路の近傍に配置された光吸収材であることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光変調器において、該漏洩光除去手段の該出力導波路に沿った長さは1mm以下であることを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、マッハツェンダー型導波路の合波部から放出される放射光をモニタするモニタ手段を有する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信等の技術分野において、マッハツェンダー型導波路を有する光変調器が用いられている。近年では、光変調器の変調特性を改善するため、基板の厚みが20μm以下となる薄板型の光変調器が実用化されている。
【0003】
光導波路のクラッド層にあたる基板の厚みが20μm以下の薄板型の光変調器では、光導波路近傍に高次モードが不要光として伝搬する。このため、マッハツェンダー(MZ)型導波路の合波部で放射される逆相干渉光(放射光)は、基板の厚みが厚い構造のときと異なり、主出力導波路から容易に分離せず、光導波路の高次モードのような振る舞いで伝搬する。
【0004】
そこで特許文献1のように、合波部の構造を出力側に逆相干渉光導波のための導波路をもった3分岐構造を用いる方法や、特許文献2のように分岐導波路の周辺に逆相干渉光のためのガイドを用いた方法などにより、逆相干渉光(放射光)を出力導波路から分離することが行われている。そして、当該逆相干渉光を検知し、光変調器のDCバイアスモニタとして使用している。
【0005】
DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式などの多値変調フォーマット用の光変調器では、より精密なバイアス制御が要求されるため、光変調器出力とモニタ出力の電圧−出力特性がバイアス電圧に対して、シフトしないことが求められる。そこで、特許文献3ではMZ型導波路の合波部から放射される2つの放射光を合成することで、モニタ出力の品質を補償する構造が示されている。
【0006】
仮に、特許文献1等のように、合波部に3分岐構造等を用いた場合であっても、出力導波路の近傍には微小な逆相干渉光が高次モードとして残留している。この光が光ファイバ出力に結合することにより、ファイバからの主出力が同相干渉の出力光と逆相干渉光を合成したものとなる。
【0007】
特に、同相干渉光と逆相干渉光が混入する場合には,バイアス位相の異なる光が混入することとなり、混入がない場合と比較してバイアス点がシフトすることとなる。しかも、このシフト量は、混入光の混合比率や光位相が関係する。このため、主出力特性とモニタ特性の間に波長依存性や、また環境温度の変化等のファイバ位置ずれ等による温度依存性が発生し易くなる。そして、モニタ出力を元に制御設定したバイアス点が主出力に対して適切でなくなり、変調信号の品質が劣化するという問題を生じる。この現象は出力光に対して発生するため、従来技術の構造では解決することができない。
【0008】
一方、特許文献4には、マッハツェンダー型導波路の合波部で発生する放射光を除去するため、合波部に放射光用導波路を設けると共に、出力用導波路の近傍に高次モード光吸収領域を形成することが開示されている。しかしながら、特許文献4では、逆相干渉光(放射光)を用いたモニタ特性と主出力特性とを適正な関係に維持するための構成については、何ら開示されていない。つまり、放射光が主出力光に混入すると、on/off特性だけでなく、位相差特性にも影響を与える。特に、位相差特性は、主出力光に僅かな放射光が混入しても大きく変動する。このため、ファイバ位置ずれ等による主出力光への微小な放射光の混入も無視することができない。例えば、混入するパワー比が40dBであっても位相差は約0.6%変動する。一方、光変調器に求められる位相差量は、高品質なモニタが必要な場合は位相差1%以下とする必要があり、主出力光への放射光の混入を非常に小さくすることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−301612号公報
【特許文献2】国際公開WO2006−090863号
【特許文献3】特願2011−037718号(出願日:平成23年2月23日)
【特許文献4】特開2011−75906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、主出力特性とモニタ特性とを適切な関係に維持し、モニタ出力で判定したバイアス点と、主出力の最適バイアス点を一致させ、精度の高いバイアス制御が可能な光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は以下の技術的特徴を有している。
(1) 厚さ20μm以下の基板に光導波路が形成され、該光導波路はマッハツェンダー型導波路と該マッハツェンダー型導波路の合波部から信号光を導波し該基板の外に出力するための出力導波路と、該出力導波路からの出射する信号光を導波するために、該基板の端面に対向して配置された光ファイバと
、該合波部から放射される放射光をモニタするモニタ手段とを有する光変調器において、該モニタ手段は、該合波部から分岐する放射光用導波路を有し、
該出力導波路と該放射光用導波路との間に配置され、該出力導波路を伝搬する放射光の一部を、該出力導波路から除去し、該基板の外に放出するための漏洩光除去手段を備え、該漏洩光除去手段は、該出力導波路の近傍に配置され、かつ、該基板の端部近傍まで形成されていることを特徴とする。
【0012】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該放射光は、該信号光がオフ状態の時に該合波部から出力される放射光であることを特徴とする。
【0013】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該漏洩光除去手段は、該基板の端部近傍まで連続して形成されたスラブ導波路であることを特徴とする。
【0014】
(4) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該漏洩光除去手段は、該出力導波路の近傍に配置された光吸収材であることを特徴とする。
【0015】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光変調器において、該漏洩光除去手段の該出力導波路に沿った長さは1mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光変調器は、厚さ20μm以下の基板に光導波路が形成され、該光導波路はマッハツェンダー型導波路と該マッハツェンダー型導波路の合波部から信号光を導波し該基板の外に出力するための出力導波路と、
該出力導波路からの出射する信号光を導波するために、該基板の端面に対向して配置された光ファイバと、該合波部から
放射される放射光をモニタするモニタ手段とを有する光変調器において、
該モニタ手段は、該合波部から分岐する放射光用導波路を有し、該出力導波路と該放射光用導波路との間に配置され、該出力導波路を伝搬する放射光の一部を、該出力導波路から除去し、該基板の外に放出するための漏洩光除去手段を備え
、該漏洩光除去手段は、該出力導波路の近傍に配置され、かつ、該基板の端部近傍まで形成されているため、モニタ出力で判定したバイアス点と、主出力の最適バイアス点が一致させることが可能となり、精度の高いバイアス制御が可能な光変調器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の光変調器の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1の光変調器におけるマッハツェンダー型導波路の合波部から漏洩光除去手段にかけて、伝搬する光波の状態を説明する図である。
【
図3】本発明の光変調器の一例であり、モニタ手段を含む概略図である。
【
図4】本発明の光変調器に使用される漏洩光除去手段を示す平面図である。
【
図5】温度変化に対するバイアス点シフトの様子を示すグラフである。
【
図6】漏洩光除去手段の他の形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の光変調器について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光変調器は、
図1に示すように、厚さ20μm以下の基板に光導波路が形成され、該光導波路はマッハツェンダー(MZ)型導波路と該マッハツェンダー型導波路の合波部から信号光を導波し該基板の外に出力するための出力導波路と、該信号光又は放射光をモニタするモニタ手段とを有する光変調器において、該出力導波路を伝搬する放射光の一部を、該出力導波路から除去し、該基板の外に放出するための漏洩光除去手段を備えることを特徴とする。
【0019】
基板には、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの電気光学効果を有する基板を利用することが可能である。光導波路の形成方法としては、例えば、ニオブ酸リチウム基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、リッジ型導波路のように、基板に凹凸を形成して形成することも可能である。リッジ型導波路の場合には、ポリマーで基板及び光導波路を形成することも可能である。例えば、コア部に凸部を有する高屈折率ポリマーを配置し、それを挟むように上下に低屈折率ポリマーをクラッドとして配置することで、光導波路を備えた平板状の基板が作成される。
【0020】
本発明の光変調器は、基板の厚さが20μm以下のニオブ酸リチウム等の基板を用いる。例えば、Ti拡散導波路を形成したLNウェハを20μm以下まで研磨を行い、接着剤を介して保持基板に固定して使用する。なお、基板の薄板化は、電極形成後でも可能である。
【0021】
変調用電極や位相シフト用電極などの電極形成は、シード層を蒸着・スパッタ・CVD等で約100nmの厚さに形成し、さらに電解メッキにてセミアディティブ法で形成することが可能である。
【0022】
本発明の光変調器では、薄板基板に少なくとも一つのマッハツェンダー(MZ)型導波路が形成されており、該MZ型導波路に沿って、不図示の変調用電極が配置されている。MZ型導波路の合波部での同相干渉光は、主出力光となり、逆相干渉光(放射光)はモニタ出力光となる。
【0023】
本発明の特徴は、
図2に示すように、合波部から延びる主出力導波路の近傍に、漏洩光除去手段として、導波構造で構成した高次モード除去構造を設けて、主出力導波路の近傍に導波路の高次モードとして残留した逆相干渉光を除去する。除去光が主出力に再結合しファイバに入力されるのを防ぐため、除去構造は基板端近くまで配置する。
【0024】
図1〜3では、合波部に3分岐構造を用いている。マッハツェンダー型導波路の各作用部(分岐導波路)で変調を受けた光は合波部で干渉し、同相で干渉した場合は、出力の3分岐構造の中心の幅の大きい主出力導波路に出力される。一方逆相で干渉した場合には、
図2に示すように、光パワーのほとんどは3分岐外側の幅の狭い導波路(放射光用導波路)に出力されるが、薄板構造の場合にはパワーの一部が中心の導波路(主出力導波路)の高次モードとして伝搬してしまう。この高次モードを除去するために漏洩光除去手段が形成されている。
【0025】
漏洩光除去手段は、出力導波路の近傍に配置され、かつ、基板の端部近傍まで連続して形成されたスラブ導波路や、出力導波路の近傍に配置された光吸収材で構成することが可能である。スラブ導波路である場合には、他の光導波路を形成するプロセスに合わせて同時に形成することが可能であり、また、光吸収材を電極と同じ材料で構成する場合には、電極形成プロセスの少なくとも一部で、当該光吸収材を形成することが可能である。
【0026】
図3に示すように、主出力導波路から出射する信号光(出力光)は、LN基板の端面に対向して配置された光ファイバにより外部に導波される。漏洩光除去手段は、この光ファイバに主出力光以外の漏洩光(高次モード光や放射光など)が混入しないように機能している。
【0027】
図4は、スラブ導波路で漏洩光除去手段を構成した様子を示している。主出力導波路近傍に存在する高次モードを除去導波路(スラブ導波路)に結合させるために、主導波路に近接させてスラブ導波路を配置する。しかし除去導波路(スラブ導波路)は、高次モードと同時に信号光である基本モード光の一部も結合してしまうため、その分は出力の損失となってしまう。このため、主出力導波路と除去導波路の間隔W1は基本モード光のモードフィールド径の1倍〜2倍程度、LN基板にTi拡散で形成した光導波路を用いる場合では、10〜20μmに設定する。また、除去導波路(スラブ導波路)が主出力導波路に近接する長さLを1mm以下とすることにより、基本モード光のスラブ導波路への結合だけでなく、スラブ導波路が結合した高次モードが、主出力導波路へ再結合する不具合を防止することが可能となる。これらにより、過剰損を0.5dB以下に抑えつつ、バイアス点のシフトを抑えることができる。
【0028】
また除去導波路(スラブ導波路)の入力側は、除去導波路の配置によって発生する構造不連続によるモード変換を抑制できる構造とすることが望ましく、
図4では入力側の幅W2を狭くする構造としている。理想的には幅0が望ましいが、その場合にはフォトリソグラフィー工程でのパターン形成が難しくなる。そこで、W2を1〜2μm程度とすることで製造再現性を良くすることができる。
【0029】
さらに、除去光(高次モード)が再度、主出力導波路近傍に分布するのを防止するため、除去導波路は基板端面或いは端面に近接する領域まで配置する。また端面での除去導波路の外側境界線と主導波路間の幅W3は50μm以下とすることで、3分岐導波路を伝搬するモニタ光と除去光を大きく分離でき、除去光がモニタ光に混入することを抑制することができる。
【0030】
図4では基板端は導波路に対して垂直としてあるが、導波光の反射リターンの防止のため、導波路に対して端面が傾斜していてもよい。モニタ方法についても、ファイバ保持部材であるキャピラリを用いる方法を
図3で図示したが、モニタ光用導波路(放射光用導波路)にファイバを接続したり、基板端や導波路上に受光素子(PD)を配置してモニタ光用導波路から直接信号をとりだす方法を用いても良い。
【0031】
図3及び
図4の構造の光変調器を用いて、ファイバ出力光とモニタ出力間のバイアス点のシフトの波長依存性・温度依存性を測定した例が
図5である。
図5の横軸は波長、縦軸は出力−モニタ間のバイアス点シフトを変調器のVπで規格化した量で示している。図中の実線は漏洩光除去手段がある場合、破線がない場合を示す。
図5が示すように、本発明の構造を用いることで、温度や波長に対して安定したバイアス点シフト特性を得ることができる。このように、本発明の構造を用いることにより、安定した変調器バイアス制御が可能となり、波長や環境温度が変わった場合であっても良好な変調器信号出力を得ることができる。
【0032】
図6は、漏洩光除去手段に用いられるスラブ導波路の他の形状を説明する図である。
図6(a)のように、入力側の不連続を減少させるために、除去部が徐々に導波路に近接する構造を採用することが可能である。また、
図6(b)のように、出力側についてもファイバへの結合を抑制するために、主出力導波路とスラブ導波路との間隔を徐々に離す構造を採用することも可能である。
【0033】
漏洩光除去手段に、光吸収材を用いた場合には、吸収層にはAuやAlなどの光損失を与える材料を用いても良いし、半導体材料等でクラッドである基板よりも高い屈折率をもつ材料により導波路基板から取り出すよう構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、主出力特性とモニタ特性とを適切な関係に維持し、モニタ出力で判定したバイアス点と、主出力の最適バイアス点を一致させ、精度の高いバイアス制御が可能な光変調器を提供することが可能となる。