(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであっ
て、本発明の発光装置を以下に限定するものではない。
【0013】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するもの
では決してない。実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的
配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨では
なく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明
を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符
号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに
、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素
を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現するこ
ともできる。
【0014】
以下に、本発明の発光装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態の発光装置は、発光素子11と、発光素子11が電気的
および機械的に固定されてなる金属反射部材12と、を有し、これらはSi−N結合を必
須とするガラス膜15および透光性樹脂16により順次覆われている。
【0015】
(発光素子11)
発光素子11は、表面に複数の電極(図示せず)が形成されており、各電極が一対の金
属反射部材14と導電性ワイヤ14にて電気的に接続されている。本実施の形態で用いら
れている発光素子11は、同一面側に正および負の電極が形成されているが、対応する面
に正および負の電極がそれぞれ形成されているものであってもよい。また、正および負の
電極は、必ずしも1つずつ形成されていなくてもよく、それぞれ2つ以上形成されていて
もよい。また、蛍光物質を備えた発光装置とする場合、その蛍光物質を励起する光を発光
可能な半導体発光素子が好ましい。このような半導体発光素子として、ZnSeやGaN
など種々の半導体を挙げることができるが、蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光
可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が
好適にあげられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することが
できる。本実施の形態の発光素子11は、金属反射部材12の表面に接合部材(図示して
いない)を用いて固定されているが、これに限定されるものではなく、後述する支持体1
3の表面に直接固定されていてもよいし、これらの固定場所との間にヒートシンクを介し
て固定してもよい。
【0016】
本実施の形態のように、Si−N結合を必須とするガラス膜が、発光素子11との界面
にまで形成されている場合、発光素子の水分および腐食性ガスによる劣化を防止すること
ができる。より具体的には、発光素子の劣化には2種類ある。まずひとつは、水分により
発光素子の構成元素が溶出し、出力が低下する場合がある。もうひとつは、高湿条件や窒
素酸化物、硫黄酸化物等の腐食性ガスによって発光素子の電極部に腐食が発生し、Vfが
悪化する問題がある。これらの問題は素子表面に上記ガラス膜が形成される事で回避する
ことができる。これにより本実施の形態の発光装置は、発光素子11として、外部からの
水分により劣化しやすいGaAs系、GaP系の発光素子を用いた場合においても、透光
性樹脂の材料や使用環境にかかわらず、光取り出し効率の高い発光装置を実現することが
できる。
【0017】
(金属反射部材12)
本発明に用いられる金属反射部材12とは、搭載する発光素子12からの光を70%以
上反射することが可能な材料にて構成されたものを言う。また、本実施の形態の金属反射
部材12は、電気極性を有しているが、これに限定されるものではなく、電気極性を有さ
ず導電性部材から独立したものでもよい。また、金属反射部材12は、別の部材の最表面
にメッキなどで形成されたものでもよい。導電性部材の基体に金属反射膜12が形成され
ている場合、発光素子との電気的に接続に用いる部材との接着性及び電気伝導性が良いこ
とが求められる。具体的な電気抵抗としては、300μΩ−cm以下が好ましく、より好
ましくは3μΩ−cm以下である。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステ
ン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等があげられる。
【0018】
本発明の金属反射部材12は、発光素子11の近傍に存在する。このため、金属反射部
材の劣化は、発光装置の光出力、色に大きく影響を与える。このため、本実施の形態では
、金属反射部材12と後述する樹脂16との界面にSi−N結合を必須とするガラス膜を
設け、これにより金属反射部材の変色に起因する発光装置の出力低下を防止し、光反射率
の波長依存性を保持するとともに、発光色の変化を防止している。特に、少なくとも最表
面が銀または銀を必須とする合金により構成されてなる金属反射部材12は、ガスによる
劣化が著しいことから、従来高温高湿下で使用される発光装置には不向きであったが、本
発明に適用することにより、後述する樹脂の材料や使用環境にかかわらず、光取り出し効
率の高い発光装置を実現することができる。
【0019】
また、金属反射部材12の最表面は、搭載される発光素子からの光を効率よく外部へ取
り出すために、凹凸を有していることが好ましい。また、金属反射部材12の最表面に凹
凸を有している場合、後述するガラス膜との密着性が向上されるとともにガラス膜15の
形成時の収縮応力を緩和することができる。これにより、金属反射部材12の表面にクラ
ックがほとんど無い防食性に優れたガラス膜15を形成することができる。さらに、金属
反射部材12の表面は、後述する絶縁性の支持体13の表面より突出していることが好ま
しい。これにより、ガラス膜15を金属反射部材12の表面に形成する際、過剰なガラス
膜形成材料を後述する絶縁性の支持体13の表面に流入し、導電性部材12の表面には適
切な膜厚のガラス膜を形成することができる。これにより、金属反射部材12の表面にク
ラックがほとんど無いガラス膜15を容易に形成できる。本実施の形態では、発光素子を
単独で導電性部材に固定した発光装置について説明するが、発光素子を単独で配置させる
形態に限定されることなく、受光素子、静電保護素子(ツェナーダイオード、コンデンサ
等)、あるいはそれらを少なくとも二種以上組み合わせたものを搭載した半導体装置とす
ることができる。なお、静電保護素子は、発光素子との極性を考慮して、発光素子と同一
の導電性部材あるいは異なる導電性部材のいずれに配置してもよい。
【0020】
(支持体13)
支持体13は、表面に金属反射部材12を保持することが可能であれば、どのような材
料によって形成されていてもよい。なかでも、セラミック、乳白色の樹脂等、絶縁性およ
び遮光性を有する材料であることが好ましい。また、発光素子11、12等から生じた熱
によりガラス膜15が膨張したときでも密着性を維持できるように、ガラス膜15との熱
膨張係数の差が小さい材料から形成されることが好ましい。
【0021】
(接合部材)
ここで、発光素子11を金属反射部材12に固定するための接合部材は、金属材料を用
いることが好ましい。これにより、発光素子からの光照射や発熱による接合部剤の劣化変
色および劣化変色に伴う光吸収を防止することができる。具体的には、Au−Sn合金、
SnAgCu合金、SnPb合金、InSn合金、Ag、SnAgを用いることができる
。
図1に示すように、同一面側に正および負の電極を有する発光素子を用い、電極が形成
されていない側の面を導電性部材と固定する場合、発光素子の電極が形成されていない面
に予め金属膜をスパッタ、蒸着、メッキ等により成膜したものを用いて導電性部材と固定
することが好ましい。これにより、放熱性に優れた発光装置とすることができる。具体的
には、金属材料とフラックスが混合されたペーストを導電性部材上にディスペンス、ピン
転写、印刷等により塗布する。そのペースト上に予め金属膜が形成された発光素子を設置
し、リフローにて金属材料を加熱溶融することで接合することができる。発光素子として
、対向する面にそれぞれ正および負の電極を有する発光素子を用いる場合は、電極の表面
にNi、Ti、Au、Pt、Pd、W等の金属又は合金の単層膜又は積層膜を施し、前記
と同様の方法にて金属材料にて金属反射部材と金属接合することが好ましい。
【0022】
(導電性ワイヤ14)
発光素子11、12の電極面と導電性部材とを対向させずに電気的に接続する場合、導
電性ワイヤ14を用いる。導電性ワイヤ14は、発光素子の電極とのオーミック性、機械
的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。このような導電性ワイヤと
して具体的には、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性
ワイヤがあげられる。
【0023】
(ガラス膜15)
本発明の金属反射部材12は、ガスバリア性が高いSi−N結合を必須とするガラス膜
15にて覆われている。本実施の形態のガラス膜15は、金属反射部材12と透光性樹脂
16の双方に接するように配置されているが、これに限定されるものではなく、少なくと
も金属反射部材12と透光性樹脂16との間に存在していれば本発明の効果を発揮するこ
とができる。ここで、本明細書においてSi−N結合を必須とするガラス材料とは、具体
的にはパーヒドロポリシラザンの転化状態を不完全な状態とし、未反応基のSi−N結合
を存在させたものである。
【0024】
このようなガラス膜15は、以下の工程により得ることができる。まず、パーヒドロポ
リシラザンをキシレン等の水分を含まない溶剤に濃度0.1〜10%程度で希釈した材料
を、スプレーにより金属反射部材12および発光素子11の表面に塗布する。塗布厚はパ
ーヒドロポリシラザンの濃度および膜形成面の構造により硬化処理後に膜厚が0.05μ
m以上5μm以下となるよう適宜選択する必要がある。塗布後に常温にて5時間程度静置
した溶剤を揮発させた後、200℃の大気オーブンにて5時間加熱し、ガラス化反応を進
行させる。ここで、本発明のガラス膜を得るための製造方法は、ガラス主材料を無水溶剤
に希釈する第一の工程と、第一の工程で得られた溶液を塗布し25℃以上90℃以下の温
度にて前記溶剤成分を揮発させる第二の工程と、100℃以上300℃以下の温度にて硬
化させる第三の工程と、を有していることを特徴とする。これにより、ガラス膜は完全な
無機膜とはならず、Si−N結合を必須とする収縮応力の増大に対して柔軟性を備えた保
護膜となる。
具体的には、前記第一の工程を有することにより、溶剤の分膜厚を減らすことができ、前
記第二の工程を有することにより、膜厚が均一な膜を形成できる。これら第一の工程およ
び第二の工程の後に第三の工程を施すことにより、Si−N結合を必須とするガラス膜を
得ることができる。
【0025】
本発明のガラス膜15は、さらにSi−H結合を有していることが好ましく、これによ
り、さらに信頼性の高い発光装置を得ることができる。また、本発明のガラス膜15の厚
みは、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、これにより高いガスバリア性
を有する共に発光素子からの光を外部へ効率よく取り出すことが可能なガラス膜とするこ
とができる。0.05μmより薄い場合、発光素子や導電性部材の保護効果が不十分とな
り好ましくない。また5μmより厚い場合、製造時や点灯時においてクラックが発生し、
ガスバリア性を失ってしまう。ハイパワー系の発光装置を形成する場合、発光素子からの
発熱量を考慮し、ガラス膜の厚みは0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。こ
こで、本明細書において、膜の厚みとは、平面方向における膜厚の平均値示す。
【0026】
(透光性樹脂16)
本発明の透光性樹脂16は、ガラス膜15を覆うように形成されている。透光性樹脂1
6は、搭載する発光素子の光に対して透光性であればどのような樹脂材料によって形成さ
れていてもよい。たとえば、シリコーン樹脂、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボ
ネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS
樹脂、エポキシ樹脂、フノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂等があげられる
。これらの材料には、着色剤として、種々の染料または顔料等を混合して用いてもよい。
たとえば、Cr
2O
3、MnO
2、Fe
2O
3、カーボンブラック等があげられる。更に
また、封止樹脂の光出射面側は、所望の形状にすることによってレンズ効果を持たせるこ
とができる。具体的には、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕
円形状やそれらを複数組み合わせた形状にすることができる。なお、本明細書において透
光性とは、発光素子から出射された光を70%程度以上透過させる性質を意味する。
【0027】
透光性樹脂16には、光拡散材や波長変換部材を含有させてもよい。光拡散材は、光を
拡散させるものであり、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることがで
きる。波長変換部材は、発光素子からの光を変換させるものであり、発光素子から封止部
材の外部へ出射される光の波長を変換することができる。波長変換部材としては、例えば
、蛍光物質があげられる。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、
有機蛍光物質であるペリレン系誘導体、ZnCdS:Cu、YAG:Ce、Euおよび/
またはCrで賦活された窒素含有CaO−Al
2O
3−SiO
2等の無機蛍光物質等、種
々好適に用いられる。本発明において、白色光を得る場合、特にYAG:Ce蛍光物質を
利用すると、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色と
なる黄色系が発光可能となり白色系が比較的簡単に信頼性良く形成できる。同様に、Eu
および/またはCrで賦活された窒素含有CaO−Al
2O
3−SiO
2蛍光物質を利用
した場合は、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色と
なる赤色系が発光可能であり白色系が比較的簡単に信頼性よく形成できる。これらの蛍光
物質の他に、たとえば、特開2005−19646号公報、特開2005−8844号公
報等に記載の公知の蛍光物質のいずれをも用いることができる。また、本発明では金属反
射部材12がガラス膜によって強固に保護されている為、安価な硫化物蛍光体を使用する
事もできる。硫化物蛍光体としてはアルカリ土類系、チオガレート系、チオシリケート系
、硫化亜鉛系、酸硫化物系があり、アルカリ土類系蛍光体としてはMS:Rn(Mは、M
g、Ca、Sr、Baから選ばれる1種以上であり、ReはEu、Ceから選ばれる1種
以上)等があり、チオガレート系蛍光体としてはMN2S4:Rn(MはMg、Ca、S
r、Baから選ばれる1種以上、Nは、Al、Ga、In、Yから選ばれる1種以上、R
eはEu、Ceから選ばれる1種以上)等があり、チオシリケート系蛍光体としてはM
2
LS
4(Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、Baから選ばれる1種以上、LはSi、Ge、
Snから選ばれる1種以上、ReはEu、Ceから選ばれる1種以上)等があり、硫化亜
鉛系蛍光体としてはZnS:K(KはAg、Cu、Alから選ばれる1種以上)等があり
、酸硫化物系蛍光体としてはLn
2O
2S:Re(LnはY、La、Gdから選ばれる1
種以上)等がある。