(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661622
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】プラズマ処理チャンバで用いるための真空ギャップを備えたプラズマ対向プローブ装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20150108BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20150108BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H01L21/302 103
H05H1/46 A
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-517512(P2011-517512)
(86)(22)【出願日】2009年7月7日
(65)【公表番号】特表2011-527507(P2011-527507A)
(43)【公表日】2011年10月27日
(86)【国際出願番号】US2009049760
(87)【国際公開番号】WO2010005932
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年6月29日
(31)【優先権主張番号】61/078,745
(32)【優先日】2008年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブース・ジャン−ポール
(72)【発明者】
【氏名】キール・ダグラス・エル.
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/145801(WO,A1)
【文献】
特開2007−294419(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/005210(WO,A1)
【文献】
特開2002−118098(JP,A)
【文献】
特開2002−241939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理システムの処理チャンバ内のプロセスパラメータを測定するための装置であって、
上側電極の開口部内に配置され、プローブヘッドを備えたプローブ構造であって、前記プローブヘッドは、
プラズマ対向面を備えた円筒形のプラグであり、前記上側電極の前記開口部内に配置されたヘッド部と、
前記ヘッド部よりも大きい直径を有する中空の円筒形構造であり、前記上側電極の上面の上方に配置されたフランジ部とを備え、
前記上側電極の前記上面と、前記プローブヘッドの前記フランジ部の下側対向面との間に配置されたO−リングと、
前記プローブ構造が前記上側電極の前記開口部内に挿入された時に前記上側電極と接触しないように、前記プローブヘッドの前記ヘッド部の前記上側電極表面に対して垂直な垂直側壁と前記上側電極の前記開口部の前記上側電極表面に対して垂直な垂直側壁との間に配置される電気絶縁材料から形成されたスペーサであって、
前記プローブヘッドの前記フランジ部の下側を支持するように少なくとも構成されたディスク部と、
前記プローブヘッドの前記ヘッド部を囲むよう構成され、前記ディスク部よりも小さい直径を有する中空円筒部とを備えるスペーサと
を備え、
前記スペーサは、前記O−リングと前記処理チャンバへの開口部との間に直角経路を形成することによって、前記O−リングと前記処理チャンバへの前記開口部との間の直接的な見通しを防止する、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記プローブ構造はイオン束プローブである装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記プローブヘッドはシリコンから形成される装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記プローブヘッドの前記プラズマ対向面は、前記上側電極のプラズマ対向面と同一平面上にある装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、前記スペーサは窒化シリコン(SiN)から形成される装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、前記スペーサは、前記ヘッド部の前記垂直側壁と前記上側電極の前記開口部の前記垂直側壁との間に高アスペクト比のギャップを形成し、前記高アスペクト比のギャップは、上側電極表面と平行な方向である水平方向の幅よりも大きい垂直方向の長さを有する装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、前記プローブヘッドは、導電材料から形成されたソケットと電気的に接触する装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記プローブヘッドは、導電性のはんだによって前記ソケットに結合される装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、接点ロッドが前記ソケット内に挿入されており、前記接点ロッドは、前記プローブヘッドから得られた測定データを少なくとも受信して中継するよう構成されている装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、接点ロッドが前記プローブヘッドに結合されており、前記接点ロッドは、前記プローブヘッドから得られた測定データを少なくとも受信して中継するよう構成されている装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、前記上側電極は、
シリコンから形成されたプラズマ対向層と、
前記プラズマ対向層に結合され、熱・電気伝導性材料から形成された1組の上層と
を備えるよう構成される装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、前記1組の上層はアルミニウムから形成される装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置であって、前記1組の上層はグラファイトから形成される装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置であって、前記上側電極はスリーブを備え、前記スリーブは、雌ねじ切り部を備え、
前記雌ねじ切り部は、ねじ切り保持リングに係合されることにより、前記O−リングを圧縮して、前記プローブヘッドの前記フランジ部を前記上側電極の前記上面に向かって下方に押しつける装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記スリーブはアルミニウムから形成される装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置であって、前記ねじ切り保持リングは、ソケットの直径よりも大きい直径を有する内部貫通孔を備え、前記ソケットは、前記プローブヘッドと電気的に接触する装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記フランジ部の上側対向面と前記ねじ切り保持リングの下面との間に、熱接触リングが配置されており、前記熱接触リングは、前記プローブヘッドを前記ねじ切り保持リングから電気的に絶縁する装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置であって、前記熱接触リングはシリコンポリマから形成される装置。
【請求項19】
請求項11に記載の装置であって、前記上側電極の前記1組の上層は、雌ねじ切り部を備え、前記雌ねじ切り部は、ねじ切り保持リングに係合されることにより、前記O−リングを圧縮して、前記プローブヘッドの前記フランジ部を前記上側電極の前記上面に向かって下方に押しつける装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラズマ処理システムは、集積回路(IC)を作るための電子製品に基板を処理するために長い間利用されている。プラズマは、例えば、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、マイクロ波、電子サイクロトン共鳴(ECR)など、様々なプラズマ生成技術を用いて生成されてよい。
【0002】
基板の処理中には、プラズマ処理チャンバ内部の様々なプロセスパラメータを正確かつ適時に監視することが、非常に望ましい。プラズマ対向プローブまたはセンサ技術は、導電材料で形成されたプローブまたはセンサの表面をプラズマに露出させることを含む技術であり、かかる監視作業に長い間利用されてきた。プロセスパラメータの測定に用いられてきたプラズマ対向監視プローブの1つのタイプは、米国特許第7,319,316号「Apparatus For Measuring A Set Of Electrical Characteristics In A Plasma」に記載されたようなイオン束プローブである。上述の米国特許第7,319,316号では、実質的にコプレーナなプローブが、プラズマ処理チャンバ内でイオン束を測定するために用いられる。測定されたイオン束は、その後、例えば、チャンバコンディショニング処理の終点を確かめる、プラズマ特性(例えば、イオン飽和電流、電子温度、浮遊電位など)を測定する、チャンバを整合させる(例えば、公称では同一であるはずのチャンバ間の差異を見つける)、チャンバ内での欠陥および問題を検出するなどの目的に利用されてよい。
【0003】
イオン束プローブのいくつかの生産モデルがこの分野で用いられており、改良の余地があることがわかった。説明を容易にするために、
図1に典型的なイオン束プローブ装置を示した。
図1において、イオン束プローブ102は、プラズマ処理チャンバの上側電極の開口部104内に配置されている。上側電極は、通例、アルミニウムまたはグラファイトで形成されており、シリコンなどの適切な材料で形成されたプラズマ対向面106を備える。
【0004】
イオン束プローブ102は、支持構造(その一部112が図示されている)と結合するためのステム110を備える。ステム110は、通例、アルミニウムなどの熱・電気伝導性の材料から形成される。絶縁リング114が、図に示すようにステム110を囲んでおり、開口部104内でステム110を中央に支持すると共に、上側電極の残り部分からステム110を電気的に絶縁するように設計されている。
【0005】
イオン束プローブ102は、さらに、プラズマ対向プローブヘッド120を備えており、プラズマ対向プローブヘッド120は、(
図1の例において上側電極の下方に配置される)プラズマからのパラメータの正確な測定を容易にするために、化学的および電気的に上側電極のプラズマ対向面106と実質的に同様になるよう設計された材料から形成される。
図1の例では、プローブヘッド120も、シリコンから形成される。イオン束プローブ102および開口部104の間のギャップ136を通してチャンバ内に汚染物質が落下することを防止するために、O−リング130が設けられる。ギャップ136は、機械公差のため、また、処理サイクル中の熱膨張に対応するために存在する。O−リング130は、通例、弾性エラストマで形成されており、チャンバ内部のプロセスガスが上述のギャップを通して上方に抜けることを防ぐように密閉する機能も有する。
【0006】
図に示すように、プローブヘッド120の周囲には、リング132が配置されている。リング132は、(
図1の例の場合のように)石英、または、別の適切な誘電材料から形成されてよい。石英リング132は、プローブヘッド120を上側電極の残り部分から電気的に絶縁するよう設計される。石英リング132の第2の機能は、チャンバ内で生成されたプラズマの高エネルギイオンおよびラジカルによる過度の攻撃からO−リング130を保護することである。
【0007】
しかし、イオン束プローブの設計において、および、チャンバへのイオン束プローブの取り付けにおいて、改良の余地があることがわかっている。例えば、石英リング132は、プローブヘッド120のシリコン材料とも、上側電極のプラズマ対向面106のシリコン材料とも異なる材料であるため、石英リング132の存在は、プラズマ処理中にチャンバ内で化学的負荷条件を作り出すことがわかっている。誘電体エッチング中など、特定のエッチング処理中に、石英リング132がエッチングされることで、チャンバ内部の化学組成またはプラズマ組成が変化し、基板上で望ましくないエッチング結果が生じうる。さらに、石英リング132が消費されると、上側電極の下面と、プローブヘッド120のプラズマ対向面との間に凹みが形成されて、「ポリマトラップ」を形成しうるため、その後の処理サイクルで基板上に粒子状汚染物質が付着する可能性が潜在的に高くなる。さらに、石英リング132が腐食すると、プラズマに対して提示されるプローブヘッドの形状が変化するため、イオン束プローブによる測定値に歪みを生じうる。
【0008】
図1に見られるように、(
図1の上側電極の下方に形成される)プラズマとO−リング130との間に、直接的な見通し線(direct line−of−sight)が存在する。この直接的な見通し線は、高エネルギイオンおよびラジカルなどのプラズマ構成成分が、O−リングに到達することを許容し、それによって、O−リングの劣化を加速させる。O−リング130の劣化が加速すると、O−リング130を交換するためのメンテナンスを行う頻度が高くなるため、システムの休止時間が長くなり、プラズマシステムのスループットが低下し、プラズマ処理ツールの所有コストが高くなる。
【0009】
図1の構成に関する別の問題は、イオン束プローブ102と、上側電極の残り部分との間に機械的な基準がないことに関する。イオン束プローブ102は、上側電極と機械的に独立した支持構造112に結合されるため、プローブヘッド120の下面が上側電極の下面06と同一平面上にあることを保証するように、設置の際にイオン束プローブ102を正確に位置決めすることは困難であったことがわかっている。
【0010】
改善可能である
図1のイオン束プローブ構成の別の態様は、熱平衡に関する。正確な測定のためには、イオン束プローブ、特にイオンプローブヘッド120が、可能な限り迅速に上側電極の残り部分と熱平衡に達することが望ましい。しかし、
図1のイオン束プローブ102は、支持構造112と機械的に結合されており、絶縁リング114および石英リング132(両方とも比較的低い熱伝導体である)を通して付随的に上側電極の残り部分と接しているだけなので、プローブヘッド120および上側電極の間で速やかに局所的な熱平衡を実現するという目標は、必ずしも満足に達成されていない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、一実施形態では、プラズマ処理システムの処理チャンバ内のプロセスパラメータを測定するための装置に関する。装置は、上側電極の開口部内に配置されたプローブ構造を備えており、プローブ構造は、プローブヘッドを備える。プローブヘッドは、ヘッド部を備えており、ヘッド部は、プラズマ対向面を備えた円筒形のプラグであり、上側電極の開口部内に配置される。プローブヘッドは、フランジ部を備えており、フランジ部は、ヘッド部よりも大きい直径を有する中空の円筒形構造であり、上側電極の上面の上方に配置される。装置は、さらに、上側電極の上面と、プローブヘッドのフランジ部の下側対向面との間に配置されたO−リングを備える。装置は、さらに、プローブ構造が上側電極の開口部内に挿入された時に上側電極と接触しないように、プローブヘッドのヘッド部の垂直側壁と上側電極の開口部の垂直側壁との間に配置される電気絶縁材料から形成されたスペーサを備える。スペーサは、プローブヘッドのフランジ部の下側を支持するように少なくとも構成されたディスク部を備える。スペーサは、プローブヘッドのヘッド部を囲むよう構成された中空円筒部を備えており、中空円筒部は、ディスク部よりも小さい直径を有する。スペーサは、O−リングと処理チャンバの開口部との間に直角経路を形成することにより、O−リングと処理チャンバへの開口部との間の直接的な見通し経路(direct line-of-sight path)を防止する。
【0012】
上述の発明の概要は、本明細書に開示された本発明の多くの実施形態の内の1つのみに関するものであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定する意図はない。添付の図面を参照しつつ行う本発明の詳細な説明において、本発明の上述の特徴およびその他の特徴を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面では、限定ではなく例示を目的として本発明を図示する。なお、これらの添付図面においては、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0014】
【0015】
【
図2】本発明の一実施形態に従って、改良イオン束プローブ構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付図面に例示されたいくつかの実施形態を参照しつつ、本発明の詳細な説明を行う。以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が示されている。しかしながら、当業者にとって明らかなように、本発明は、これらの具体的な詳細事項の一部または全てがなくとも実施することが可能である。また、本発明が不必要に不明瞭となるのを避けるため、周知の処理工程および/または構造については、詳細な説明を省略した。
【0017】
本発明の実施形態は、絶縁/スペーサリングの誘電材料(
図1の石英リング132の石英材料など)の直接的なプラズマ暴露を排除した改良イオン束設計に関する。さらに、高アスペクト比の真空ギャップと、プラズマからO−リングへの鋭角の経路を用いるなど、革新的な設計変更が、O−リングの寿命を延ばすために組み込まれている。さらに、1または複数の実施形態において、改良設計は、上側電極をイオン束の機械的な基準とすることにより、プラズマ対向プローブヘッド面が、上側電極のプラズマ対向面と同一平面上に存在しうるように、イオン束プローブを正確に位置決めすることを可能にする。革新的な設計変更は、さらに、イオン束プローブと、周囲の上側電極材料との間の熱伝導率を改善し、イオン束プローブと上側電極との間の局所的な熱平衡をより速やかに実現することを可能にする。
【0018】
本発明の実施形態の特長および利点は、以下の図面と説明を参照すれば、よりよく理解できる。
図2は、本発明の1または複数の実施形態に従って、上側電極204内に配置された改良イオン束プローブ202を示す。イオン束プローブ202は、ソケット208と電気的に接触するプローブヘッド206を備える。プローブヘッド206は、一実施形態ではシリコンで形成された上側電極204のプラズマ対向面と同じ材料から形成される。
【0019】
あるいは、プローブヘッド206は、プラズマ処理への悪影響を最小限に抑えつつ、正確なイオン束測定を可能にする別の材料から形成されてもよい。ソケット208は、導電材料から形成されており、例えば、ソケット208がアルミニウムで形成され、プローブヘッド206がシリコンで形成されている場合に、スズ/銀を含むはんだなどの導電性のはんだまたは結合剤を介してプローブヘッド206と電気的に結合される。プローブヘッド206によって得られた測定値を受信して中継するために、ソケット208内に接点ロッド(図示せず)が挿入されてよい。
【0020】
プローブヘッド206は、ヘッド部206aおよびフランジ部206bを有する。ヘッド部206aは、上側電極204のプラズマ対向面210と同一平面上にあるプラズマ対向面206cを有するよう構成された円筒形のプラグである。フランジ部206bは、一実施形態において、ヘッド部206aよりも大きい直径を有する中空の円筒形構造である。スペーサ212が提供されており、一実施形態では、ディスク部212bと一体化された中空円筒部212aから形成される。SiN材料は誘電体エッチングに適合性を有するため、スペーサ212は、一実施形態において、誘電体エッチング用途のためにSiNから形成される。ただし、電気的な絶縁性を有し、想定されるプラズマ処理に適合する任意の剛体材料が、スペーサ212に用いられてよい。
【0021】
中空円筒部212aは、プローブヘッド206のヘッド部206aを囲むよう構成され、ディスク部212bは、プローブヘッド206のフランジ部206bの下側を支持するよう構成される。2つの肩部216aおよび216bが、上側電極204に組み込まれており、中空円筒部212aおよびディスク部212bを受けるようになっている。スペーサ212が開口部220内に配置され、さらに、プローブヘッド206が開口部220内に配置されると、中空円筒部212aは、図に示すように、ヘッド部206aの垂直側壁と開口部220の側壁との間に挟まれる。さらに、ディスク部212bは、フランジ部206bの下側と、上側電極204で形成された上面226との間に挟まれる。以上のようにスペーサ212を挟むことにより、スペーサ212は、プローブヘッド206の垂直側壁と、周囲を上側電極204の材料に囲まれた開口部220の垂直側壁との間に、小さいギャップ222が形成されるように、開口部220内でプローブヘッド206を正確に位置決めするよう機能する。開口部220内でのプローブヘッド206の正確な位置は、プローブヘッド206と上側電極204の周囲材料との間の不用意な電気的短絡を防ぐために重要である。
【0022】
図2に示すように、O−リング228が、上面226とフランジ部206bの下面との間に挟まれている。さらに、O−リング228は、フランジ部206bの外側に配置される。O−リング228は、(
図2の例では上側電極204の下方の)チャンバ内部に汚染物質が到達することを防止すると共に、制御されていないチャンバガスの出入りの防止にも役立ち、それにより、処理の安定性を改善する。
【0023】
ギャップ222は、ギャップ内でプラズマを維持することができないよう設計された高アスペクト比(すなわち、幅よりも長さがはるかに大きい)ギャップである。また、高アスペクト比ギャップは、ギャップ222を通る任意のラジカルが、O−リング228に到達する前にギャップ壁に沿って、再結合および/または中性化されうるように、ギャップ内に広い表面積を有する。スペーサ212によって形成されるプラズマからO−リングへの経路における直角ターンも、O−リング228に到達する高エネルギイオンの数を減少させるのに役立つ。これらの高エネルギイオンは、直角ターンの角に衝突して、O−リング228に到達する前に中性化されうるからである。
【0024】
このように、改良された設計は、プラズマとO−リングとの間の直接的な見通し経路を回避することにより、O−リングの長寿命化に貢献する。さらに、プラズマに対して石英リングを設ける必要がないため、従来技術の構成に関連する欠点(プラズマ環境に望ましくない石英材料の存在、石英材料の意図しないエッチングによって生じる化学的負荷、および、プローブヘッドと周囲のプラズマ対向上側電極材料とのエッチングとは異なる速度で生じうる石英材料自体のエッチングなど)を排除する。その代わり、ギャップ222は、開口部220の周囲の上側電極材料からプローブヘッド206のヘッド部206aを電気的に絶縁する絶縁ギャップ「リング」として機能する。
【0025】
図2の例において、上側電極204は、プラズマ対向層に結合された1または複数の上層から形成される。プラズマ対向層230は、上述のように、
図2の例ではシリコンであり、誘電体エッチングなどのエッチング処理に適合する材料である。上層は、アルミニウムまたはグラファイトなど、熱・電気伝導材料から形成されてよい。
図2の例において、上層232はグラファイトである。プローブ202に構造的支持を提供するために、スリーブ240が上側電極204に形成される。
図2の例では、スリーブ240は、アルミニウムから形成されるが、ステンレス鋼など、その他の構造的に適切な材料が用いられてもよい。スリーブ240は、一実施形態において、上側電極のグラファイト材料に結合されてよい。
【0026】
アルミニウムスリーブ240は、雌ねじ切り部240aおよび耳部240bを備える。雌ねじ切り部240aは、アルミニウムまたはステンレス鋼などの材料から形成されてよいねじ切り保持リング250を収容するために雌ねじを有する。プローブヘッド206のフランジ部206bの上面と、ねじ切り保持リング250の下面との間に、熱接触リング252が配置される。熱接触リング252は、プローブヘッド206とねじ切り保持リング250との間の熱伝導を高めつつ、プローブヘッド206とねじ切り保持リング250との間の電気的絶縁機能を提供するために、例えば、シリコンポリマまたはアルミナなどの適切な材料から形成されてよい。
【0027】
ねじ切り保持リング250は、アルミニウムスリーブ240のねじ切り部240aの雌ねじに係合されて、(位置決め孔254を用いて)ねじ込まれると、スラストリングとして機能し、フランジ部206bを上面226に向かって下方に押しつけることにより、フランジ部206bをしっかりと捉え、開口部220内にプローブヘッド206を固定する。このように、上側電極204に対するプローブヘッド206の垂直方向の基準を確実に設けることにより、プローブヘッド206のプラズマ対向面と上側電極204のプラズマ対向面210との間で所望の同一平面を実現するように、上側電極204に対してプローブヘッド206のより正確な位置決めを行うことを可能にする。ねじ切り保持リング250によって提供される圧縮力は、さらに、O−リング228を圧縮することにより、密閉性を改善する。ねじ切り保持リング250は、ソケット208の直径よりも大きい直径を持つ内部貫通孔を有することが好ましい。このように、ソケット208とねじ切り保持リング250との間には導電路が存在しない。
【0028】
耳部240bは、ねじ切り保持リング250がねじ込まれる時に、スリーブ240に掛かりうる回転トルクに構造的に抵抗する。また、耳部240b(1または複数が設けられてよい)は、スリーブ240と上側電極の残りのグラファイト材料との間に、大きい熱接触領域を提供する。熱的には、プローブヘッド206から、熱接触リング252、ねじ切り保持リング250、および、アルミニウムスリーブ240を介して、アルミニウムスリーブ240を囲む上側電極材料に至る効果的な熱伝導路が存在する。このように、
図1の従来技術の構成と異なり、プローブヘッド206は、上側電極204の残り部分と、より速やかに熱平衡に到達しうるため、それにより、非常に長い熱安定化期間を待つ必要なしに、より正確および/またはより適時に測定を行うことを可能にする。
【0029】
上側電極204の上層232が、ねじ切り保持リング250のねじ山に対応するねじ穴を構造的に形成できる材料(アルミニウムまたはステンレス鋼など)から形成される場合、スリーブ240を取り除いてもよいことに注意されたい。この場合、ねじ山は、上側電極204の材料に直接形成されてよい。また、ソケット208は、利便性のために設けられているため、一実施形態では取り除かれてもよい。ソケット208が取り除かれる場合、接点ロッドは、必要に応じて、プローブヘッド206に直接結合されてよい。
【0030】
以上、いくつかの好ましい実施形態を参照しつつ本発明を説明したが、本発明の範囲内で、種々の代替物、置換物、および、等価物が可能である。例えば、イオン束プローブを用いて、プローブの位置決めおよび設置のための革新的な構造を説明したが、本願の革新的な機械構造および構成は、プラズマ処理中の1または複数のパラメータの測定を容易にするために、任意のプラズマ対向センサを任意のチャンバ面(上側電極を含むがそれに限定されない)上に正確に位置決めして取り付けるのに用いられてもよい。かかるセンサの例は、自励電子共振分光法(SEERS)、ラングミュアプローブ、または、それらの変形を含むがこれらに限定されない。また、本発明の方法および装置を実施する他の態様が数多く存在することにも注意されたい。本明細書では様々な例を提供したが、これらの例は、例示を目的としたものであり、本発明を限定するものではない。
例えば、本発明は、以下の適用例としても実施可能である。
[適用例1]プラズマ処理システムの処理チャンバ内のプロセスパラメータを測定するための装置であって、
上側電極の開口部内に配置され、プローブヘッドを備えたプローブ構造であって、前記プローブヘッドは、
プラズマ対向面を備えた円筒形のプラグであり、前記上側電極の前記開口部内に配置されたヘッド部と、
前記ヘッド部よりも大きい直径を有する中空の円筒形構造であり、前記上側電極の上面の上方に配置されたフランジ部とを備えるプローブ構造と、
前記上側電極の前記上面と、前記プローブヘッドの前記フランジ部の下側対向面との間に配置されたO−リングと、
前記プローブ構造が前記上側電極の前記開口部内に挿入された時に前記上側電極と接触しないように、前記プローブヘッドの前記ヘッド部の垂直側壁と前記上側電極の前記開口部の垂直側壁との間に配置される電気絶縁材料から形成されたスペーサであって、
前記プローブヘッドの前記フランジ部の下側を支持するように少なくとも構成されたディスク部と、
前記プローブヘッドの前記ヘッド部を囲むよう構成され、前記ディスク部よりも小さい直径を有する中空円筒部とを備えるスペーサと
を備え、
前記スペーサは、前記O−リングと前記処理チャンバへの開口部との間に直角経路を形成することによって、前記O−リングと前記処理チャンバへの前記開口部との間の直接的な見通し経路を防止する、装置。
[適用例2]適用例1に記載の装置であって、前記プローブ構造はイオン束プローブである装置。
[適用例3]適用例1に記載の装置であって、前記プローブヘッドはシリコンから形成される装置。
[適用例4]適用例1に記載の装置であって、前記プローブヘッドの前記プラズマ対向面は、前記上側電極のプラズマ対向面と同一平面上にある装置。
[適用例5]適用例1に記載の装置であって、前記スペーサは窒化シリコン(SiN)から形成される装置。
[適用例6]適用例1に記載の装置であって、前記スペーサは、前記ヘッド部の前記垂直側壁と前記上側電極の前記開口部の前記垂直側壁との間に高アスペクト比のギャップを形成し、前記高アスペクト比のギャップは、水平方向の幅よりも大きい垂直方向の長さを有する装置。
[適用例7]適用例1に記載の装置であって、前記プローブヘッドは、導電材料から形成されたソケットと電気的に接触する装置。
[適用例8]適用例7に記載の装置であって、前記プローブヘッドは、導電性のはんだによって前記ソケットに結合される装置。
[適用例9]適用例8に記載の装置であって、接点ロッドが前記ソケット内に挿入されており、前記接点ロッドは、前記プローブヘッドから得られた測定データを少なくとも受信して中継するよう構成されている装置。
[適用例10]適用例1に記載の装置であって、接点ロッドが前記プローブヘッドに結合されており、前記接点ロッドは、前記プローブヘッドから得られた測定データを少なくとも受信して中継するよう構成されている装置。
[適用例11]適用例1に記載の装置であって、前記上側電極は、
シリコンから形成されたプラズマ対向層と、
前記プラズマ対向層に結合され、熱・電気伝導性材料から形成された1組の上層と
を備えるよう構成される装置。
[適用例12]適用例11に記載の装置であって、前記1組の上層はアルミニウムから形成される装置。
[適用例13]適用例11に記載の装置であって、前記1組の上層はグラファイトから形成される装置。
[適用例14]適用例11に記載の装置であって、前記上側電極はスリーブを備え、前記スリーブは、雌ねじ切り部および耳部を備える装置。
[適用例15]適用例14に記載の装置であって、前記スリーブはアルミニウムから形成される装置。
[適用例16]適用例14に記載の装置であって、前記雌ねじ切り部は、ねじ切り保持リングに係合されることにより、前記O−リングを圧縮して、前記プローブヘッドの前記フランジ部を前記上側電極の前記上面に向かって下方に押しつける装置。
[適用例17]適用例16に記載の装置であって、前記ねじ切り保持リングは、ソケットの直径よりも大きい直径を有する内部貫通孔を備え、前記ソケットは、前記プローブヘッドと電気的に接触する装置。
[適用例18]適用例17に記載の装置であって、前記フランジ部の上側対向面と前記ねじ切り保持リングの下面との間に、熱接触リングが配置されており、前記熱接触リングは、前記プローブヘッドを前記ねじ切り保持リングから電気的に絶縁する装置。
[適用例19]適用例17に記載の装置であって、前記熱接触リングはシリコンポリマから形成される装置。
[適用例20]適用例11に記載の装置であって、前記上側電極の前記1組の上層は、雌ねじ切り部を備え、前記雌ねじ切り部は、ねじ切り保持リングに係合されることにより、前記O−リングを圧縮して、前記プローブヘッドの前記フランジ部を前記上側電極の前記上面に向かって下方に押しつける装置。
【0031】
また、発明の名称および発明の概要は、便宜上、本明細書で提供されているものであり、特許請求の範囲を解釈するために用いられるべきものではない。さらに、要約書は、非常に簡潔に書かれており、便宜上提供されているものであるため、特許請求の範囲に記載された発明全体を解釈または限定するために用いられるべきではない。「セット」という用語が用いられている場合には、かかる用語は、一般的に理解される数学的な意味を持ち、0、1、または、2以上の要素を網羅するよう意図されている。また、以下に示す特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内に含まれる代替物、置換物、および、等価物の全てを網羅するものとして解釈される。
【符号の説明】
【0032】
102…イオン束プローブ
104…開口部
106…プラズマ対向面
110…ステム
112…支持構造
114…絶縁リング
120…プラズマ対向プローブヘッド
130…O−リング
132…リング
136…ギャップ
202…イオン束プローブ
204…上側電極
206…プローブヘッド
206a…ヘッド部
206b…フランジ部
206c…プラズマ対向面
208…ソケット
210…プラズマ対向面
212…スペーサ
212a…中空円筒部
212b…ディスク部
216a…肩部
216b…肩部
220…開口部
222…ギャップ
226…上面
228…O−リング
230…プラズマ対向層
232…上層
240…スリーブ
240a…雌ねじ切り部
240b…耳部
250…保持リング
252…熱接触リング
254…位置決め孔