特許第5662340号(P5662340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662340複合型ウエハ領域圧力制御およびプラズマ閉じ込めアセンブリ、プラズマ処理システムとその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662340
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】複合型ウエハ領域圧力制御およびプラズマ閉じ込めアセンブリ、プラズマ処理システムとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20150108BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   H05H1/46 M
   H01L21/302 101B
   H01L21/302 101G
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-542365(P2011-542365)
(86)(22)【出願日】2009年12月16日
(65)【公表番号】特表2012-513094(P2012-513094A)
(43)【公表日】2012年6月7日
(86)【国際出願番号】US2009068189
(87)【国際公開番号】WO2010080423
(87)【国際公開日】20100715
【審査請求日】2012年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/139,496
(32)【優先日】2008年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/361,490
(32)【優先日】2009年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】輿石 公
【審査官】 林 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−511096(JP,A)
【文献】 特開平07−074155(JP,A)
【文献】 特表2004−515910(JP,A)
【文献】 特開2006−104575(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/083227(WO,A1)
【文献】 特開2000−030896(JP,A)
【文献】 特開2000−058298(JP,A)
【文献】 実開昭59−129872(JP,U)
【文献】 特開昭60−115231(JP,A)
【文献】 特表2010−515232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
H01L 21/302
H01L 21/304
H01L 21/461
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のプラズマ処理中にプラズマ処理チャンバ内でプラズマを閉じ込めつつ圧力を少なくとも部分的に調整するよう構成された複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、
複数の孔を有し、配備された時に前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造であって、前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ対向構造と、前記可動プラズマ対向構造の外側に配置され、前記プラズマ処理中に高周波(RF)接地される可動導電構造とを備える可動プラズマ閉じ込め構造と、
前記可動プラズマ閉じ込め構造の外側に配置された可動圧力制御構造と、
を備え、
前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動圧力制御構造との間に配置され、前記可動圧力制御構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために、前記可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避可能であり、前記可動圧力制御構造は、前記複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって前記圧力を調整するために、前記可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立して移動可能である、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、全体的に円筒形の構造であり、前記複数の孔は、前記円筒形の構造の軸に沿って配置された複数のスロットである、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造は、1組の共通プランジャを共有する、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項4】
請求項1に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、
前記可動導電構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために前記可動プラズマ対向構造と共に単一のユニットとして配置および待避されるよう構成され
前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマからのRF電流が前記プラズマ処理中に前記可動プラズマ対向構造を通して前記可動導電構造に流れるように、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動導電構造との間に配置される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造は、円筒形の構造であり、前記プラズマによるエッチングに耐性を持つ材料で形成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項6】
請求項4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造は石英で形成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項7】
請求項4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造はドープSiCで形成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項8】
請求項4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマに対する暴露から前記可動導電構造を保護するよう構成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項9】
請求項4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、さらに、遮断可能なRF接点を備え、前記遮断可能なRF接点は、前記可動導電構造が配備された時に、接地への経路が前記遮断可能なRF接点を通して形成されるように配置される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
【請求項10】
プラズマ処理チャンバを備えたプラズマ処理システムであって、
複数の孔を有し、配置された時に、前記プラズマ処理チャンバ内で基板のプラズマ処理中に生成されたプラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造であって、前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ対向構造と、前記可動プラズマ対向構造の外側に配置され、前記プラズマ処理中に高周波(RF)接地される可動導電構造とを備える可動プラズマ閉じ込め構造と、
前記可動プラズマ閉じ込め構造の外側に配置された可動圧力制御構造であって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動圧力制御構造との間に配置され、前記可動圧力制御構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために、前記可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避可能であり、前記可動圧力制御構造は、前記複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって前記プラズマ処理中に前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を少なくとも部分的に調整するために、前記可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立して移動可能であり、
前記可動導電構造に接続され、前記可動導電構造が配置および待避される時に前記可動導電構造の動きに対応しつつ、接地への経路を前記RF電流に提供する1組の導電ストラップと、
を備える、プラズマ処理システム。
【請求項11】
請求項10に記載のプラズマ処理システムであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、全体的に円筒形の構造であり、前記複数の孔は、前記円筒形の構造の軸に沿って配置された複数のスロットである、プラズマ処理システム。
【請求項12】
請求項10に記載のプラズマ処理システムであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造は、1組の共通プランジャを共有する、プラズマ処理システム。
【請求項13】
請求項10に記載のプラズマ処理システムであって、
前記可動導電構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために前記可動プラズマ対向構造と共に単一のユニットとして配置および待避されるよう構成され
前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマからのRF電流が前記プラズマ処理中に前記可動プラズマ対向構造を通して前記可動導電構造に流れるように、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動導電構造との間に配置される、プラズマ処理システム。
【請求項14】
請求項13に記載のプラズマ処理システムであって、さらに、切断可能なRF接点を備え、前記切断可能なRF接点は、前記可動導電構造が配備された時に、前記接地への経路が前記切断可能なRF接点を通して形成されるように配置される、プラズマ処理システム。
【請求項15】
請求項10に記載のプラズマ処理システムであって、前記プラズマ処理チャンバは、拡大されたプラズマ周辺領域を備え、前記拡大されたプラズマ周辺領域は、前記可動プラズマ閉じ込め構造の内側に形成され、上側電極と下側電極との間のギャップ寸法よりも大きい垂直寸法を有し、前記拡大されたプラズマ周辺領域は、前記可動圧力制御構造が、前記プラズマ処理チャンバからの前記圧力の解放を、より大きい範囲で調整することを可能にする、プラズマ処理システム。
【請求項16】
プラズマ処理チャンバを備えたプラズマ処理システムを製造するための方法であって、
複数の孔を有し、配備された時に、前記プラズマ処理チャンバ内で基板のプラズマ処理中に生成されたプラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造であって、前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ対向構造と、前記可動プラズマ対向構造の外側に配置され、前記プラズマ処理中に高周波(RF)接地される可動導電構造とを備える可動プラズマ閉じ込め構造を準備し、
前記可動プラズマ閉じ込め構造の外側に可動圧力制御構造を配置し、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動圧力制御構造との間に配置され、前記可動圧力制御構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために、前記可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避可能であり、前記可動圧力制御構造は、前記複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって前記プラズマ処理中に前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を少なくとも部分的に調整するために、前記可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立的に移動可能であり、
前記可動導電構造に1組の導電ストラップを接続し、前記1組の導電ストラップは、前記可動導電構造が配置および待避される時に前記可動導電構造の動きに対応しつつ、接地への経路を前記RF電流に提供する、
ことを備える、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、さらに、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造によって共有される1組の共通プランジャを準備することを備え、前記1組の共通プランジャは、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造の移動を容易にするよう構成される、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記可動導電構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために前記可動プラズマ対向構造と共に単一のユニットとして配置および待避されるよう構成され
前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマからのRF電流が前記プラズマ処理中に前記可動プラズマ対向構造を通して前記可動導電構造に流れるように、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動導電構造との間に配置される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、さらに、前記可動導電構造と前記接地との間に切断可能なRF接点を配置することにより、前記可動導電構造が配置された時に、前記切断可能なRF接点を通して前記接地への経路を形成することを備える、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、全体的に円筒形の構造であり、前記複数の孔は、前記円筒形の構造の軸に沿って配置された複数のスロットである、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラズマ処理システム内で基板(例えば、ウエハ)を処理するために、プラズマ処理システムが長い間利用されてきた。典型的なプラズマ処理システムでは、プラズマは点火され、プラズマ閉じ込め領域内に閉じ込められる。プラズマ閉じ込め領域は、一般的に、チャンバの上側および下側構造と、プラズマ閉じ込め領域を環状に囲む構造とによって規定される。
【0002】
基板の挿入および取り出しを容易にするため、並びに、プラズマ処理チャンバからの排出ガスの排気を容易にするために、多くのチャンバは、1組の移動可能な閉じ込めリングを用いて、プラズマを環状に閉じ込める。移動可能な閉じ込めリングは、例えば、基板の挿入および取り出しを容易にするために、持ち上げられ得る。一般的に、移動可能な閉じ込めリングにおける隣接するリング間の間隔は、間隔を通じた排気ガスの排気を可能にしつつ、プラズマ膨張に対するバリアを提供する(例えば、プラズマシースよりも小さい間隔にすることにより)寸法に規定される。このように、プラズマを物理的に拘束しつつ、1組の移動可能な閉じ込めリングを通して排出ガスの除去を行うことを可能にすることができる。
【0003】
議論を容易にするために、図1は、従来の容量結合プラズマ処理チャンバ100の一部を示す概略図である。処理中に基板(図示せず)を支持するための下側電極102が図示されている。下側電極102は、通常、プラズマ104を生成および維持するためにRF電源(図示せず)によって電力供給される。プロセス制御のために、下側電極102および上側電極106(接地されてもよいし、もしくは、同じまたは別のRF電源によって電力供給されてもよい)によって全体的に規定され、1組の閉じ込めリング110(リング110a〜dを含む)によって環状に規定されたプラズマ閉じ込め領域内にプラズマ104を閉じ込めることが好ましい。上述のように、閉じ込めリング110間のギャップは、排出ガスがチャンバからポンプ送出されることを可能にしつつ、上述のプラズマ閉じ込め領域内にプラズマを閉じ込めた状態に維持する。閉じ込めリング110は、石英などの適切な材料から形成されてよい。
【0004】
図1の例では、下側電極102を囲む環状接地電極112も図示されている。環状接地電極112は、スロットを有しなくてもよいし、図1の例に示すように排出ガスをチャンバから排気するためのさらなる流路を提供するためにスロットを有していてもよい。一般に、環状接地電極112は、アルミニウムなどの導電材料から形成され、絶縁体(図示せず)によって下側電極102から電気的に絶縁される。接地電極112の接地は、接地電極112をRF接地に接続すること、通常は、下側電極112の下方に配置された導電性の下側接地延長部に1または複数のストラップを介して接地電極112を固くボルト締結または接続することによって実現される。
【0005】
環状接地電極112の金属材料が、腐食性プラズマに曝されてプラズマ処理を汚染することを防止するために、環状接地電極112の表面は、石英などの適切な材料で被覆されてよい。1組の閉じ込めリング110と同様に、環状接地電極112(および石英の上層)のスロットは、排出ガスの排気を可能にしつつ、プラズマ閉じ込め領域を超えるプラズマの膨張を防止するような寸法を有する。プラズマ処理チャンバ内で閉じ込めリング110および環状接地電極112の両方を用いることは周知であるため、本明細書ではこれ以上詳しく説明しない。
【0006】
一般に、閉じ込めリング110は、電気的に浮遊している。すなわち、閉じ込めリング110はDC接地またはRF接地に対する直接的な結合を持たない。従来技術では、閉じ込めリング110はRF接地から或る程度離れている傾向があるため、1組の閉じ込めリングには、実質的な量のRF電流は流れない。
【0007】
閉じ込めリング110は電気的に浮遊したままであり、閉じ込めリング110には実質的な量のRF電流が流れないため、プラズマ処理中に閉じ込めリング110の表面で、低電圧の「浮遊」シースが発達する。プラズマから加速されたイオンのエネルギはシース電位の影響を受けるため、低いシース電位の結果として、閉じ込めリングの表面に対するイオン衝撃のエネルギレベルが低くなる。したがって、スパッタリングおよびイオン促進エッチングなどの薄膜除去処理(その場プラズマ洗浄処理中に行われるものなど)が、閉じ込めリングの表面では比較的非効率になる。さらに、イオン衝撃エネルギが低いことから、処理後の閉じ込めリングの表面上には、より多くの量の蒸着物が残される。比較すると、より高いイオン衝撃エネルギを受けたチャンバの他の領域は、薄膜除去処理の際にはより高い薄膜除去率を示し、基板処理の際にはより低いレベルの薄膜蒸着を示す。
【0008】
最終的な結果として、閉じ込めリングは、基板処理中に(より高いイオン衝撃エネルギを受けるチャンバ領域に比べて)高い率で残留物を蓄積する傾向を有し、これらの残留物は、プラズマによるその場チャンバ洗浄処理の際に(より高いイオン衝撃エネルギを受けるチャンバ領域に比べて)ゆっくりと除去される傾向を有する。これらの要因により、閉じ込めリングを十分な状態に維持するために、より頻繁および/またはより長いその場チャンバ洗浄サイクル(ウエハレス自動洗浄、すなわちWACサイクル)が必要になり、さらには、一部の場合、閉じ込めリングを取り外して洗浄および/または交換するために、処理を完全に停止する必要が生じうる。この結果、基板のスループット率は、著しく低下し、生産性が低くなると共にプラズマ処理ツールの所有コストが高くなる。
【0009】
特定のチャンバでは、排出ガスのコンダクタンス率(すなわち、排出ガスがチャンバから排気される速度)の制御が、ウエハ領域圧力(WAP)、すなわち処理中の基板上方の圧力を制御するための重要な制御ノブになる。排出ガスのコンダクタンス率が高いと、ウエハ領域圧力が低くなる傾向があり、その逆も成り立つ。ウエハ領域圧力が多くの処理用途において制御すべき重要なプロセスパラメータであるとすると、ウエハ領域圧力を制御するための改良方法および装置が、プロセスエンジニアによって常に求められている。
【0010】
本発明の実施形態は、従来のプラズマ閉じ込め機構に関連する未解決の課題、プラズマ非閉じ込めの問題、および、排出ガスのコンダクタンス率の制御を通じてウエハ領域圧力をより効率的に制御するニーズに対処しようとするものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、一実施形態において、基板のプラズマ処理中にプラズマ処理チャンバ内でプラズマを閉じ込めつつ圧力を少なくとも部分的に調整するよう構成された複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリに関する。アセンブリは、複数の孔を有し、配置された時にプラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造を備える。アセンブリは、さらに、可動プラズマ閉じ込め構造の外側に配置された可動圧力制御構造を備えており、可動プラズマ閉じ込め構造は、プラズマ処理中にプラズマと可動圧力制御構造との間に配置され、可動圧力制御構造は、基板の取り扱いを容易にするために、可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避(格納)後退可能であり、可動圧力制御構造は、複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって圧力を調整するために、可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立して移動可能である。
【0012】
上述の発明の概要は、本明細書に開示された本発明の多くの実施形態の内の1つのみに関するものであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定する意図はない。添付の図面を参照しつつ行う本発明の詳細な説明において、本発明の上述の特徴およびその他の特徴を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面では、限定ではなく例示を目的として本発明を図示する。なお、これらの添付図面においては、同様の構成要素には同様の符号が付されている。
【0014】
図1】従来の容量結合プラズマ処理チャンバの一部を示す概略図。
【0015】
図2】本発明の一実施形態に従って、複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリを備えるプラズマ処理チャンバを示す部分概略図。
【0016】
図3】接地へのRF電流路を短縮するための底部RF接点を備える代替的または追加的な実施形態を示す図。
【0017】
図4】拡大されたチャンバ周辺部を備える代替的または追加的な実施形態を示す図。
【0018】
図5】本発明の一実施形態に従って、WAP制御構造と、可動プラズマ閉じ込め構造と、複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリを上昇/下降させるために用いられるプランジャと、を備える複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリの詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、添付図面に例示されたいくつかの実施形態を参照しつつ、本発明の詳細な説明を行う。以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が示されている。しかしながら、当業者にとって明らかなように、本発明は、これらの具体的な詳細事項の一部または全てがなくとも実施することが可能である。また、本発明が不必要に不明瞭となるのを避けるため、周知の処理工程および/または構造については、詳細な説明を省略した。
【0020】
一般に、本発明の1または複数の実施形態は、プラズマ処理チャンバ内で基板を処理しつつ、閉じ込めリングおよび/またはプラズマに対向する構造上への残留物の蓄積を低減するための改良方法および構成に関する。1または複数の実施形態において、その改良は、さらに、プラズマをプラズマ閉じ込め領域内に閉じ込めた状態に維持する、すなわち、上述のプラズマ閉じ込め領域の外側に位置する環状の外側領域でプラズマ非閉じ込め事象が起きる可能性を低減する助けとなる。本発明の1または複数の実施形態では、その改良は、さらに、ウエハ領域圧力の制御に影響を与えるために、排出ガスのコンダクタンス率を効率的、簡単かつロバストな方法で制御するための機構を含む。
【0021】
本発明の1または複数の実施形態では、複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリが提供される。複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリは、処理適合性であると共にRF接地に対して良好に接続された少なくとも1つの可動プラズマ閉じ込め構造を備えている。一実施形態では、可動プラズマ閉じ込め構造は、可動プラズマ対向構造(石英、ドープSiC、または、別の同様に適切な材料で形成されてよい)と、接地までのRF電流路を提供するために可動プラズマ対向構造の背面に結合された可動導電構造と、を備える。すなわち、可動プラズマ対向構造の片側はプラズマに対向し、他方の側は可動導電構造に結合されており、可動導電構造は、可動プラズマ対向構造によってプラズマから保護される。
【0022】
実際には、熱膨張に対応するために、可動プラズマ対面構造と可動導電構造との間に、小さいギャップが設けられてよい(例えば、約0.01インチ)。可動プラズマ対向構造と可動導電構造との結合を実現しつつ、上述の熱膨張ギャップを間に残すために、溝、ショルダ、ファスナ、スペーサ、および、その他の周知の機械的結合技術(これらの詳細については、本発明と密接な関係はない)が用いられてよい。
【0023】
可動プラズマ対向構造と取り付け済みの導電構造とを備える可動プラズマ閉じ込め構造は、基板の挿入および取り出しの際に1つのユニットとして上下動する。1または複数の実施形態で後述するように、可動プラズマ閉じ込め構造は、孔またはスロットを開けられており、下方(配置)位置では、ハードストップ上に存在してそれに対してRF接触をなす。一実施形態では、プラズマ対向構造は、円筒形の石英内側スリーブであり、導電構造は、円筒形の石英内側スリーブの外側に配置され、円筒形の石英内側スリーブに結合された円筒形の陽極酸化アルミニウム外側スリーブである。一実施形態において、プラズマ対向構造は、ドープSiCシリンダであり、導電構造は、ドープSiCシリンダの上方に配置されてそれに結合されているリング形の陽極酸化アルミニウムマウントである。
【0024】
当業者であれば容易に理解できるように、可動プラズマ対向構造の機能は、主に、エッチング耐性またはプラズマ処理適合性の構造を提供することであり、可動導電構造の機能は、主に、RF接地への低インピーダンス経路を提供することである。1または複数の実施形態では、これらの機能は両方とも、可動導電支持構造上に配置または蒸着されたエッチング耐性および/または処理適合性の層または被覆を有する導電構造によって実現される。
【0025】
プラズマ処理中、可動プラズマ閉じ込め構造は、プラズマからRF接地までの低インピーダンス経路を提供する。複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリは、さらに、上側電極または上側アセンブリからRF接地までの低インピーダンス経路をRF電流に提供するために可動導電構造に接続された1または複数の柔軟な導電ストラップを備えており、RF接地は、通常、RF接地に接続されたチャンバ壁または他の導電構造である。
【0026】
一実施形態では、可動プラズマ閉じ込め構造が基板処理中に配置位置にある時に、接地までのRF電流路を短縮するために、1または複数のさらなる底部RF接点が設けられてもよい。後述するように、プラズマが存在する時にRF電流路を短縮することは、プラズマ閉じ込め領域の外側にある環状外側領域における容量結合および誘導結合を低減する助けとなり、それにより、この環状外側領域において非閉じ込めプラズマを意図せずに点火および/または維持する可能性が低減される。
【0027】
1または複数の実施形態において、可動プラズマ閉じ込め構造は穿孔されており、それらの孔を通して排出ガスを排気することが可能であり、それらの孔は、プラズマ閉じ込め領域を越えてプラズマが広がることを物理的に防止するような寸法を有する。可動プラズマ閉じ込め構造は、配備位置ではハードストップの上部に載るように構成される。一実施形態では、ハードストップは、環状接地電極または接地延長部である。1または複数の実施形態では、可動プラズマ閉じ込め構造は、さらに、配置位置に置いて、環状接地電極または接地延長部とRF接触する。
【0028】
複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリは、さらに、可動プラズマ閉じ込め構造の外側に(すなわち、基板の中心から遠い距離に)配置された可動WAP制御構造を備える。可動WAP制御構造(非導電性でエッチング耐性の材料から形成されてよく、穿孔されていない)は、可動プラズマ閉じ込め構造の孔を通じたチャンバからの排出ガスの排気速度を制御することによってウエハ領域圧力を制御するために、配置された可動プラズマ閉じ込め構造とは独立して相対的に上下動されうる。
【0029】
本発明の実施形態の特長および利点は、図面と以下の説明を参照すれば、よりよく理解できる。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態に従って、複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ200を備えるプラズマ処理チャンバを示す部分概略図である。説明のために、本発明に対する関連性の高い特徴を強調するために、ここに示す図面は正確な縮尺ではなく、一部の詳細部分が簡略化されていることに注意されたい。
【0031】
複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ200は、可動プラズマ対向構造204と可動導電構造206とを備えた可動プラズマ閉じ込め構造202を備える。一部の例では、可動プラズマ対向構造204および可動導電構造206の両方が、エッチング耐性を有しプラズマ処理に適合するプラズマ対向コーティングで被覆された導電性構成要素によって実現される。図2の例では、可動プラズマ対向構造204は、円筒形の石英スリーブ204aおよび水平の石英リング204bによって実現されているが、プラズマ処理に適合した任意の他の適切な材料を用いてもよい。円筒形の石英スリーブ204aは、処理中にプラズマに対向し、水平の石英リング204bはプラズマ処理および/または排出ガスの排気期間における可動導電構造206のプラズマに対する暴露から保護する。
【0032】
可動導電構造206は、図2の例では、円筒形の石英リング204aの背後に位置する円筒形の陽極酸化アルミニウムスリーブとして実現されている。陽極酸化アルミニウムが用いられているが、任意の適切な導電材料が用いられてよい。可動導電構造206は、円筒形の石英リング204aの薄い材料を流れるRF電流のための低インピーダンスの経路を提供する。1または複数の柔軟な導電ストラップ212が、接地されたチャンバ要素(図2の例に示すようにチャンバ上部プレート、または、その他の接地されたチャンバ要素)に可動導電構造206を結合する。一実施形態では、接地への複数の経路と円筒対称性とを、戻りRF電流に提供するために、複数の導電ストラップが円筒形の陽極酸化アルミニウムスリーブの円周上に配置されてよい。上述のように、一部の例では、可動プラズマ対向構造204と可動導電構造206との間に熱膨張ギャップを設けることが望ましい。
【0033】
チャンバに対する基板の挿入および取り出しを容易にするために、可動プラズマ閉じ込め構造202(可動プラズマ対向構造204および可動導電構造206の両方を含む)は、必要に応じて上下動されてよい。上下方向への直線移動を実現するために用いられる具体的な機構は、従来技術に記載されている任意の種類の変換器および/またはギア装置(電気機械的、空気作動装置など)であってよい。柔軟な導電ストラップ212は、柔軟に曲がることで、可動プラズマ閉じ込め構造202の移動に対応すると共に、接地への所望の低インピーダンス経路を維持する。柔軟な導電ストラップ212は、プラズマ閉じ込め領域の外側の環状外側領域220内に進出しうる残留イオンまたはラジカル種によって引き起こされる摩耗からの保護として、エッチング耐性のコーティングまたはスリーブで両側を被覆される。
【0034】
プラズマ処理中に、可動プラズマ閉じ込め構造202は、図2に示すように配置位置に下げられる。配備位置では、可動プラズマ閉じ込め構造は、ハードストップ(環状接地電極232など)の上部に載っている。排出ガスは、可動プラズマ閉じ込め構造202に形成された孔(例えば、孔230)を通して排気されてよい。これらの孔は、任意の形状を取ってよく、排出ガスの排気を可能にしつつ、プラズマ閉じ込め領域222の外側の環状外側領域220におけるプラズマ非閉じ込め事象の発生を防止するためにプラズマ膨張に対するバリアを提供する寸法を有する。孔は、一実施形態ではスロットであってよく、垂直方向、水平方向、または、両方の方向に向けられてよい。図2の例では、スロットは水平であるが、可動プラズマ閉じ込め構造202を通して接地に至る短い直接的なRF電流路を提供するために、垂直なスロットであってもよい。さらに、必ずしも必要でないが、従来技術に記載されているように、さらなる排出ガスコンダクタンスを提供しつつ、プラズマ閉じ込めを維持するために、環状接地電極232にスロットが配置されてもよい。
【0035】
接地への低インピーダンスRF電流路が存在するため、プラズマ対向構造204の表面で生じるプラズマシース電圧は、閉じ込めリングが電気的に浮遊している図1の場合よりも高くなる。プラズマシース電圧が高いとイオン衝撃エネルギが高くなり、処理中のプラズマ対向構造204への残留物の蓄積が低減され、プラズマ洗浄処理の際の残留物の除去率が増大する。さらに、より高いイオンエネルギ衝撃は、可動プラズマ閉じ込め構造202のプラズマ対向面を加熱することによっても、処理中の残留物蓄積の低減と、プラズマ洗浄処理中の残留物除去率の増大に寄与する。
【0036】
導電構造206の存在は、環状外側領域220での望ましくない非閉じ込めプラズマ事象の発生を低減する助けにもなる。再び図1を参照すると、石英閉じ込めリング110が電気的に浮遊しているため、プラズマから始まり閉じ込めリング110の外側の接地チャンバ面138に終わる力線を持つ容量場が生じる。これらの力線は、例えば、力線140a〜dとして図示されている。プラズマ閉じ込め領域144の外側の環状外側領域142に容量場が存在すると、この環状外側領域142内でプラズマが意図せずに点火および/または維持される可能性、すなわち、非閉じ込めプラズマ事象が起きる可能性が増大する。
【0037】
しかしながら、図2の実施形態では、プラズマから始まる容量場の力線のほとんどは、可動導電構造206を終端とする(力線214a〜cとして図示)。一部の力線が、可動プラズマ対向構造204、および、可動プラズマ閉じ込め構造202の下のギャップ214を横断して、別の接地要素に至る場合があるが、力線214a〜cが環状外側領域220をもはや横断しないという事実により、環状外側領域220における容量場の存在は、実質的に低減および/または防止される。環状外側領域220における容量場の存在を実質的に低減および/または防止することにより、非閉じ込めプラズマが環状外側領域220で形成および/または維持される可能性が低くなる。
【0038】
また、図2には、可動プラズマ閉じ込め構造202が上述のハードストップに対して配置された時に、可動プラズマ閉じ込め構造202に対して独立して上昇および/または下降されうる穿孔されていない構造である可動WAP制御構造260が示されている。WAP制御構造260が下降されると、可動プラズマ閉じ込め構造202のより多くの孔(および/または、より大きい断面積の穿孔開口部)が遮へい、または、少なくとも部分的に遮へいされる。排出ガスの排気に利用可能な孔を少なくすることで、WAP圧力が上げられる。逆に、WAP制御構造260が上昇されると、可動プラズマ閉じ込め構造202のより少ない孔(および/または、より小さい断面積の穿孔開口部)が遮へい、または、少なくとも部分的に遮へいされる。排出ガスの排気に利用可能な孔を多くすることによって、WAP圧力が下げられる。1または複数の実施形態では、WAP制御構造260の位置は、ウエハ領域で検出または導出(適切なセンサによって検出/導出)された圧力を圧力設定値と比較する圧力フィードバック機構に応答してWAP制御構造260を移動させるアクチュエータによって制御されてもよい。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に従って、接地へのRF電流路を短縮するための任意の底部RF接点を備えることにより、環状外側領域220における接地電流誘導場を低減して、非閉じ込めプラズマ形成の可能性をさらに低減する代替的または追加的な実施形態を示す。図1を再び参照すると、プラズマからのRF電流は、矢印150で示すように低インピーダンス経路をたどる。このRF電流は、環状外側領域142に隣接するチャンバ壁に沿って流れ、環状外側領域142における非閉じ込めプラズマの形成を促す誘導場を引き起こす。
【0040】
図3では、可動導電構造206の底部に、遮断可能なRF接点302aが設けられている。RF接地には、別の対応する遮断可能なRF接点302bが結合されている。良好なRF接点を確保するために、可動プラズマ閉じ込め構造が配置されてRF接続が望まれる時に、バネまたはその他の弾性機構を用いて、2つのRF接点302aおよび302bが互いに対して付勢されてもよい。一実施形態では、RF接点302aおよび302bの一方または各々は、少なくとも部分的に穴または凹部内に取り付けられてよく、かかる凹部または穴の底部でRF接点の下側にバネなどの弾性機構を配置して、RF接点を対応するRF接点に向かって付勢し、可動導電構造206を含む可動プラズマ閉じ込め構造が配置位置にある時に良好な接続を保証する。図を明確に示すために、可動プラズマ閉じ込め構造は、図3では、部分的に配置された位置にのみ示されており、RF接点は、まだ互いに物理的に接触していない。
【0041】
図3の例では、対応する遮断可能なRF接点302bは、環状接地電極304の導電材料に結合されている。一実施形態では、遮断可能なRF接点にSiCを用いているが、プラズマ処理に適合すると共に、接点の開閉の繰り返しに対して十分な耐久性を有する任意の他の導電材料が利用されてもよい。耐久性をさらに改善するために、RF接点302は、物理的に保護されることで、接点が閉じた時に302aおよび302b上の接点領域にイオンまたはラジカルが向かうことができないように、周りの電極内に埋め込まれるよう設計されてもよい。
【0042】
プラズマ処理中、可動プラズマ閉じ込め構造は、下側位置すなわち配置位置に配置され、遮断可能なRF接点302aおよび302bが、互いに対して付勢されることで、プラズマ領域222に対向する表面においてRF電流が矢印320の方向に流れることを可能にする。図3のRF電流は、可動導電構造206およびRF接点302a/302bを流れてRF接地に至る。RF電流のほとんどは、図3において、薄いプラズマ適合性のコーティイング/構造204を通してプラズマから可動導電構造206に直接結合するが、プラズマからのRF電流の一部は、上側電極/上側アセンブリに結合する場合があり、その後、ストラップ212、可動導電構造206、および、RF接点302a/302bを介して接地に戻る。いずれにしても、これは、RF電流が、外側環状領域142に隣接するチャンバ表面に沿って流れる図1の状況(図1の矢印150参照)と好対照である。図3のRF電流は、外側環状領域220に隣接するチャンバ表面に沿って流れず、内部にある導電構造206のプラズマ対向面を流れるため、望ましくない非閉じ込めプラズマの形成または維持を促す誘導場は、この外側環状領域220では発生しない。
【0043】
図3の例では、WAP制御機構は、図2を参照して説明したのと実質的に同様に機能する。
【0044】
1または複数の実施形態において、排出ガスコンダクタンスの改善、および/または、排出ガスコンダクタンスの制御範囲の拡大を可能にするために、プラズマの周辺部(可動プラズマ閉じ込め構造の内側で、基板のすぐ上の領域の外側に位置する環状の領域として規定される)が拡大されてもよい。図4を参照すると、チャンバ周辺部402は、上側電極と下側電極との間のギャップ寸法406よりも大きい垂直寸法404を有するよう拡大されてよい。この拡大に伴って、複合型WAP制御/プラズマ閉じ込めアセンブリは、より大きい範囲および精度でWAP制御を実行することを可能にするために、より大きいY寸法を有し、および/または、より多くの孔および/またはより長いスロットを有するように構成されてよい。拡大されたチャンバ周辺部は、上側および下側電極の間に小さいギャップを有するプラズマチャンバのWAP制御を改善するのに特に有用である。
【0045】
一実施形態において、WAP制御構造は、可動プラズマ閉じ込め構造を上昇/下降させるために用いるのと同じプランジャに結合される。図5の実施形態は好ましい実施形態であるが、排出ガスの排気速度(および、ウエハ領域圧力すなわちWAP)を制御するために、可動プラズマ閉じ込め構造と独立して可動WAP制御構造を下降/上昇させる他の方法を利用してもよい。
【0046】
図5を参照すると、可動プラズマ閉じ込め構造502は、完全に配置された位置にあり、下端504が接地ハードストップ506上に載っている。拡大されたプラズマ周辺部510を介したプラズマ閉じ込め領域508内からの排出ガスの排気を容易にするために、スロット(任意の形状を有し、垂直を含め、任意の方向に配置されてよい)が、円筒形の可動プラズマ閉じ込め構造502に配置される。
【0047】
可動プラズマ閉じ込め構造502の上端522には、貫通孔524が設けられており、可動プラズマ閉じ込め構造502を配置または待避(格納)させるためにプランジャ軸526が上下動する際に、プランジャ軸526が貫通孔524を通して自由に摺動または移動することを可能にしている。プランジャ軸526は、図に示すように、ストップ530に結合されている。ストップ530の直径は、貫通孔524よりも大きい必要があることに注意されたい。ただし、摺動を可能にするために、プランジャ軸526の直径は、貫通孔524よりも小さい必要がある。
【0048】
可動WAP制御構造540は、ストップ530に結合されるか、または、ストップ530からつり下がっている。プランジャ軸526およびストップ530が、現在の完全に配置された完全閉塞状態から上方に移動すると、可動WAP制御構造540は、ストップ530の肩部542が可動プラズマ閉じ込め構造502の上端522の下面に接触するまで、プランジャ軸526/ストップ530によって可動プラズマ閉じ込め構造502とは独立的に上方に移動される。この時、(貫通孔524に比べて)ストップ530の直径が大きいことから、プランジャ軸526およびストップ530が上方に移動し続けると、肩部542は、可動プラズマ閉じ込め構造502の上端522の下面を上向きに付勢する。その時点から、可動WAP制御構造540および可動プラズマ閉じ込め構造502の両方が待避し、基板の挿入および取り出しを可能にする。
【0049】
可動プラズマ閉じ込め構造を配備するため、および、可動WAP制御構造の位置を制御するために、プランジャ軸526およびストップ530は、完全待避位置(上側位置)から下方に移動する。プランジャ軸526およびストップ530が下方に移動すると、ストップ530に載った可動プラズマ閉じ込め構造502も、下端504がハードストップ506に接触するまで下方に移動する。この時点で、可動プラズマ閉じ込め構造502は、下方への移動を停止する。プランジャ軸526およびストップ530がさらに下方に移動すると、WAP制御構造540は、可動プラズマ閉じ込め構造502の位置とは独立して下降され、上述のように排出ガスの排気速度を制御する。
【0050】
上述からわかるように、本発明の実施形態は、処理中のプラズマ閉じ込め構造表面への残留物形成の低減に寄与し、さらに、その場プラズマ洗浄処理中の残留物除去の向上に寄与する。また、プラズマから始まる容量場の力線の終端となる可動導電構造の存在により、望ましくない非閉じ込めプラズマが外側環状領域で容量場によって点火および/または維持される可能性が低くなる。また、切断可能なRF接点を用いることで、チャンバの外側環状領域に隣接するチャンバ壁表面を迂回することによって接地までのRF電流路が短縮され、望ましくない非閉じ込めプラズマがチャンバの外側環状領域で誘導場によって点火および/または維持される可能性が実質的に低減および/または排除される。WAP制御は、可動プラズマ閉じ込め構造の位置に対するWAP制御機構の位置に応じて、プラズマ閉じ込め構造において遮へいする孔の数を変化させるWAP制御機構を用いて効率的に実現される。上側および下側電極の間に小さいギャップを有するチャンバについては、拡大されたプラズマ周辺部が、WAP制御の精度を向上させる助けとなり、ガスコンダクタンスを増大させる。これらの改善は、ウエハスループットおよびプロセス制御を向上させ、所有コストの削減と歩留まりの改善につながる。
【0051】
以上、いくつかの実施形態を参照しつつ本発明について説明したが、本発明の範囲内で、代替物、置換物、および、等価物が存在する。また、本発明の方法および装置を実施する他の態様が数多く存在することにも注意されたい。例えば、環状接地電極は、例において、排出ガスの排気を改善するためのスロットまたはチャネルを有すると説明されているが、排出口もスロットも持たない接地電極(排出ガスコンダクタンスのためのスロットも孔も持たない単純な下側接地延長部など)を用いて、本発明を実施することも可能である。本明細書では様々な例を提供したが、これらの例は、例示を目的としたものであり、本発明を限定するものではない。
【0052】
さらに、本発明の実施形態は、別の用途で利用されてもよい。また、発明の名称および発明の概要は、便宜上、本明細書で提供されているものであり、特許請求の範囲を解釈するために用いられるべきものではない。さらに、要約書は、非常に簡潔に書かれており、便宜上提供されているものであるため、特許請求の範囲に記載された発明全体を解釈または限定するために用いられるべきではない。また、本発明の方法および装置を実施する他の態様が数多く存在することにも注意されたい。「セット(組)」という用語が用いられている場合には、かかる用語は、一般的に理解される数学的な意味を持ち、0、1、または、2以上の要素を網羅するよう意図されている。したがって、以下に示す特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内に含まれる代替物、置換物、および、等価物の全てを網羅するものとして解釈される。
適用例1:基板のプラズマ処理中にプラズマ処理チャンバ内でプラズマを閉じ込めつつ圧力を少なくとも部分的に調整するよう構成された複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、複数の孔を有し、配備された時に前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造と、前記可動プラズマ閉じ込め構造の外側に配置された可動圧力制御構造と、を備え、
前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動圧力制御構造との間に配置され、前記可動圧力制御構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために、前記可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避可能であり、前記可動圧力制御構造は、前記複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって前記圧力を調整するために、前記可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立して移動可能である、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例2:適用例1に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、全体的に円筒形の構造であり、前記複数の孔は、前記円筒形の構造の軸に沿って配置された複数のスロットである、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例3:適用例1に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造は、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造の移動を容易にするために、1組の共通プランジャを共有する、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例4:適用例1に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ対向構造と、前記可動プラズマ対向構造の外側に配置され、前記基板の取り扱いを容易にするために前記可動プラズマ対向構造と共に単一のユニットとして配置および待避されるよう構成され、前記プラズマ処理中に高周波(RF)接地される可動導電構造と、を備え、
前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマからのRF電流が前記プラズマ処理中に前記可動プラズマ対向構造を通して前記可動導電構造に流れるように、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動導電構造との間に配置される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例5:適用例4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造は、円筒形の構造であり、前記プラズマによるエッチングに耐性を持つ材料で形成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例6:適用例4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造は石英で形成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例7:適用例4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造はドープSiCで形成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例8:適用例4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマに対する暴露から前記可動導電構造を保護するよう構成される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例9:適用例4に記載の複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリであって、さらに、遮断可能なRF接点を備え、前記遮断可能なRF接点は、前記可動導電構造が配備された時に、接地への経路が前記遮断可能なRF接点を通して形成されるように配置される、複合型圧力制御/プラズマ閉じ込めアセンブリ。
適用例10:プラズマ処理チャンバを備えたプラズマ処理システムであって、複数の孔を有し、配置された時に、前記プラズマ処理チャンバ内で基板のプラズマ処理中に生成されたプラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造と、前記可動プラズマ閉じ込め構造の外側に配置された可動圧力制御構造であって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動圧力制御構造との間に配置され、前記可動圧力制御構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために、前記可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避可能であり、前記可動圧力制御構造は、前記複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって前記プラズマ処理中に前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を少なくとも部分的に調整するために、前記可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立して移動可能であり、前記可動導電構造に接続され、前記可動導電構造が配置および待避される時に前記可動導電構造の動きに対応しつつ、接地への低インピーダンス経路を前記RF電流に提供する1組の導電ストラップと、を備える、プラズマ処理システム。
適用例11:適用例10に記載のプラズマ処理システムであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、全体的に円筒形の構造であり、前記複数の孔は、前記円筒形の構造の軸に沿って配置された複数のスロットである、プラズマ処理システム。
適用例12:適用例10に記載のプラズマ処理システムであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造は、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造の移動を容易にするために、1組の共通プランジャを共有する、プラズマ処理システム。
適用例13:適用例10に記載のプラズマ処理システムであって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ対向構造と、前記可動プラズマ対向構造の外側に配置され、前記基板の取り扱いを容易にするために前記可動プラズマ対向構造と共に単一のユニットとして配置および待避されるよう構成され、前記プラズマ処理中に高周波(RF)接地される可動導電構造と、を備え、
前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマからのRF電流が前記プラズマ処理中に前記可動プラズマ対向構造を通して前記可動導電構造に流れるように、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動導電構造との間に配置される、プラズマ処理システム。
適用例14:適用例13に記載のプラズマ処理システムであって、さらに、切断可能なRF接点を備え、前記切断可能なRF接点は、前記可動導電構造が配備された時に、前記接地への前記低インピーダンス経路が前記切断可能なRF接点を通して形成されるように配置される、プラズマ処理システム。
適用例15:適用例10に記載のプラズマ処理システムであって、前記プラズマ処理チャンバは、拡大されたプラズマ周辺領域を備え、前記拡大されたプラズマ周辺領域は、前記可動プラズマ閉じ込め構造の内側に形成され、上側電極と下側電極との間のギャップ寸法よりも大きい垂直寸法を有し、前記拡大されたプラズマ周辺領域は、前記可動圧力制御構造が、前記プラズマ処理チャンバからの前記圧力の解放を、より大きい範囲で調整することを可能にする、プラズマ処理システム。
適用例16: プラズマ処理チャンバを備えたプラズマ処理システムを製造するための方法であって、複数の孔を有し、配備された時に、前記プラズマ処理チャンバ内で基板のプラズマ処理中に生成されたプラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ閉じ込め構造を準備しと、前記可動プラズマ閉じ込め構造の外側に可動圧力制御構造を配置し、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動圧力制御構造との間に配置され、前記可動圧力制御構造は、前記基板の取り扱いを容易にするために、前記可動プラズマ閉じ込め構造と共に配置および待避可能であり、前記可動圧力制御構造は、前記複数の孔の少なくとも一部を遮ることによって前記プラズマ処理中に前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を少なくとも部分的に調整するために、前記可動プラズマ閉じ込め構造に対して独立的に移動可能であり、前記可動導電構造に1組の導電ストラップを接続し、前記1組の導電ストラップは、前記可動導電構造が配置および待避される時に前記可動導電構造の動きに対応しつつ、接地への低インピーダンス経路を前記RF電流に提供する、ことを備える、方法。
適用例17:適用例16に記載の方法であって、さらに、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造によって共有される1組の共通プランジャを準備することを備え、前記1組の共通プランジャは、前記可動プラズマ閉じ込め構造および前記可動圧力制御構造の移動を容易にするよう構成される、方法。
適用例18:適用例16に記載の方法であって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、前記プラズマを取り囲むよう構成された可動プラズマ対向構造と、前記可動プラズマ対向構造の外側に配置され、前記基板の取り扱いを容易にするために前記可動プラズマ対向構造と共に単一のユニットとして配置および待避されるよう構成され、前記プラズマ処理中に高周波(RF)接地される可動導電構造と、を備え、
前記可動プラズマ対向構造は、前記プラズマからのRF電流が前記プラズマ処理中に前記可動プラズマ対向構造を通して前記可動導電構造に流れるように、前記プラズマ処理中に前記プラズマと前記可動導電構造との間に配置される、方法。
適用例19:適用例18に記載の方法であって、さらに、前記可動導電構造と前記接地との間に切断可能なRF接点を配置することにより、前記可動導電構造が配置された時に、前記切断可能なRF接点を通して前記接地への前記低インピーダンス経路を形成することを備える、方法。
適用例20:適用例16に記載の方法であって、前記可動プラズマ閉じ込め構造は、全体的に円筒形の構造であり、前記複数の孔は、前記円筒形の構造の軸に沿って配置された複数のスロットである、方法。
図1
図2
図3
図4
図5