(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子線式試料表面検査装置を用いて試料表面を検査する方法であって、前記試料表面検査装置の電子銃から発生した電子ビームを前記試料表面に照射し、前記試料表面から発生した二次電子を検出器の電子検出面に向けて二次光学系により結像させ前記試料表面を検査する方法において、前記試料表面の電位が前記試料表面に照射された電子ビームの量に応じて変化するときに、前記試料表面に前記電子ビームが照射されないようにするブランキングを考慮して当該変化を算出し、前記検出器の検出面における前記二次電子の結像条件を試料電圧と前記二次光学系にある電極の電圧との組み合わせによって制御し、前記結像条件は、前記電子ビームを前記試料表面に複数回照射した後に満たされる条件であることを特徴とする試料表面検査方法。
前記試料表面は、少なくとも2種類の異なる材質からなるパターン若しくは少なくとも2種類の断面構造からなるパターンを有し、前記試料表面の電位が前記試料表面に照射された電子ビームの量に応じて変化するときに、どちらか一方の前記材質若しくは前記断面構造のチャージアップの量にあわせて当該変化を算出し、前記複数回の照射においては、電子ビームを間隔を置いて照射して、照射の合間に放電をさせて、前記試料表面の電位を制御することを特徴とする請求項1に記載の試料表面検査方法。
電子線式試料表面検査装置を用いて試料表面を検査する方法であって、前記試料表面検査装置の電子銃から発生した電子ビームを前記試料表面に照射し、前記試料表面から発生した二次電子を検出器の電子検出面に向けて二次光学系により結像させ前記試料表面を検査する方法において、前記試料表面は、少なくとも2種類の異なる材質からなるパターン若しくは少なくとも2種類の断面構造からなるパターンを有し、前記試料表面の電位が前記試料表面に照射された電子ビームの量に応じて変化するときに、どちらか一方の前記材質若しくは前記断面構造のチャージアップの量にあわせて当該変化を算出し、前記検出器の検出面における前記二次電子の結像条件を試料電圧と前記二次光学系にある電極の電圧との組み合わせによって制御し、前記結像条件は、前記電子ビームを前記試料表面に複数回照射した後に満たされる条件であることを特徴とする試料表面検査方法。
前記二次電子の結像条件を制御する方法が、試料表面に照射された電子ビームの量に応じて、試料電圧又はリターディング電圧を変化させることであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の試料表面検査方法。
電子線式試料表面検査装置であって、試料表面に照射する電子ビームを発生させる電子銃と、前記電子ビームを前記試料表面に導くための一次光学系と、前記試料表面から発生する二次電子を検出する検出器と、前記二次電子を前記検出器に導く二次光学系とを備える電子線式試料表面検査装置において、前記試料表面に前記電子ビームが照射されないようにするブランキングを考慮して前記試料表面の電位を前記電子ビームの量に応じて変化させる電圧調整機構を有し、前記検出器の検出面における前記二次電子の結像条件を試料電圧と前記二次光学系にある電極の電圧との組み合わせによって制御し、前記結像条件は、前記電子ビームを前記試料表面に複数回照射した後に満たされる条件であることを特徴とする電子線式試料表面検査装置。
前記試料表面は、少なくとも2種類の異なる材質からなるパターン若しくは少なくとも2種類の断面構造からなるパターンを有し、前記電圧調整機構は、どちらか一方の前記材質若しくは前記断面構造のチャージアップの量にあわせて当該変化を算出し、前記複数回の照射においては、電子ビームを間隔を置いて照射して、照射の合間に放電をさせて、前記試料表面の電位を制御することを特徴とする請求項6に記載の電子線式試料表面検査装置。
電子線式試料表面検査装置であって、試料表面に照射する電子ビームを発生させる電子銃と、前記電子ビームを前記試料表面に導くための一次光学系と、前記試料表面から発生する二次電子を検出する検出器と、前記二次電子を前記検出器に導く二次光学系とを備える電子線式試料表面検査装置において、前記試料表面は、少なくとも2種類の異なる材質からなるパターン若しくは少なくとも2種類の断面構造からなるパターンを有し、前記試料表面の電位を前記電子ビームの量に応じて変化させる電圧調整機構を前記装置は有し、前記電圧調整機構は、どちらか一方の前記材質若しくは前記断面構造のチャージアップの量にあわせて当該変化を算出し、前記検出器の検出面における前記二次電子の結像条件を試料電圧と前記二次光学系にある電極の電圧との組み合わせによって制御し、前記結像条件は、前記電子ビームを前記試料表面に複数回照射した後に満たされる条件であることを特徴とする電子線式試料表面検査装置。
前記電圧調整機構が、試料表面に照射された電子ビームの量に応じて、試料電圧又はリターディング電圧を変化させる手段を有することを特徴とする請求項6から8までのいずれかに記載の電子線式試料表面検査装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明に係る欠陥等の試料表面検査方法の実施形態について説明する。
【0034】
図1において、本実施形態の試料表面の欠陥等の表面検査方法を行う装置全体を1で示している。同図において、2は一次電気光学系(以下単に一次光学系)、3は二次電気光学系(以下単に二次光学系)、4は検出系、5は公知の構造の防振台の上に設けられたステージ装置であり、これらはチャンバ12を画定するハウジング11内に収納されている。チャンバ12は図示しない装置により所望の雰囲気、例えば真空雰囲気に制御されるようになっている。
【0035】
例えばウエハ、基板のような試料(以下この実施形態の説明では試料としてウエハを使用した例について説明する)Wは公知の構造、機能を有するステージ装置5のウエハ保持台51の上に、例えば静電チャック等の公知の手段により取り外し可能に固定されるようになっている。このウエハ保持台51は直交2軸方向すなわちX−Y方向の少なくとも一方向に連続的又はステップアンドリピート式に動くことができるように構成されている。防振台の防振構造は非接触型軸受けから構成されても良い。
【0036】
図2に詳細に示されるように、一次電子ビームを照射する一次光学系の電子銃21としては、熱電子放出型若しくはショットキー型の電子銃が使用され得る。電子銃21から放出された一次電子ビームB1は、一次光学系の四重極子レンズ22等を介してその形状が整えられ、ウエハ保持台51上に載置されている試料すなわちウエハWの表面に照射される。このとき、一次電子ビームは電界と磁界からなるE×Bフィルタ又はウィーンフィルタ23を通ってウエハ表面に導かれる。一次光学系2の電子銃21から放出された一次電子ビームの形状は、検出系4の検出器41を構成するTDI−CCD若しくはCCDの画素に相当する領域より広い範囲に均一な分布をもって照射されるよう形成される。
【0037】
一次電子ビームの照射によりウエハWの表面からは一次電子ビームのエネルギーに応じて二次電子B2が発生する。この二次電子は、ウエハの近傍に配置されている電極によって検出器側に所定の運動エネルギーを有するまで加速される。加速された二次電子B2は先の電界と磁界からなるE×Bフィルタ又はウィーンフィルタ23を直進し、二次電気光学系(以下単に二次光学系)3に導かれる。この時ウエハ表面は一次電子ビームの照射により帯電し二次電子が設計された所定の運動エネルギーまで加速されない場合がある。この場合二次電子は検出器41の検出面上で結像することが出来ず、像が得られないか、像がぼけてしまう。そこで、予め電子ビームの照射によるウエハ表面の帯電量を計算し、試料電圧又はリターディング電圧を計算された帯電量にあわせて変化させておく。これにより、電子ビームの照射による帯電量も含めて所定の運動エネルギーまで二次電子を加速することができる。
【0038】
二次電子は二次光学系3によって写像映像として検出器41上に結像される。二次電気光学系3を構成する電気的レンズ又は静電レンズ31は、複数枚の同軸上に配置された開口部を持つ電極、若しくは同軸状に配置された複数の電極群から構成され、これらのレンズが更に複数段に配置される。電気的レンズは、二次電子の持つ画像情報を拡大し、かつ、ウエハW上の位置及び表面情報を失わないように、写像情報として、検出器に導く。
【0039】
検出器41はMCP(マルチチャンネルプレート)と蛍光版及びTDI−CCD又はEB-CCD若しくはEB−TDIから構成されている。MCPで増倍された電子は、蛍光板にて光に変換され、この光信号がTDI−CCDに取り込まれ画像信号として出力され
る。 また、二次電子は直接EB−CCDに導入され画像信号に変換されてもよい。
【0040】
なお、一次及び二次光学系、並びに検出系の各構成要素は公知の構造、機能を有するものであるから詳細な説明は省略する。
【0041】
ウエハWを保持するステージ装置5には、検出器がTDI−CCD若しくはEB−TDIの場合に、連続的に動くことが可能な構造になっている。また、TDI−CCD若しくはEB−TDIの場合には、ステージは連続的な動きだけではなく、移動停止を繰り返すことも可能に構成されている。
【0042】
検出器がCCD若しくはEB−CCDの場合はステージは移動停止を繰り返すことも可能である。
【0043】
ステージの位置は、図示しないが、常にレーザー干渉計によって公知の方法で測定されており、予め指定された目標値とレーザー干渉計にて測定された現在値との比較を行い、その残差に応じて残差を補正する信号を二次光学系3の静電レンズ制御ユニット(図示せず)に送る。ステージの移動、停止又はその間の速度斑、微少振動を、上記静電レンズにて二次電子の軌道を修正することによって補正し、検出器の検出面では常に安定した結像状態になるように補正する補正機構を有している。ステージ装置にはブレーキ(図示せず)が設けられていて、停止時にブレーキを用い停止し、停止中の微振動を抑制し若しくはなくすことも可能である。
【0044】
検出器がTDI若しくはEB−TDIの場合、ステージの移動距離をレーザー干渉計により測定し、決められた距離を移動する毎にTDI若しくはEB−TDIの画像データを転送させる機能を有している。
【0045】
検出器41によって得られた電気的画像情報は、記憶装置42に記憶される。この記憶装置42は、TDI−CCDを制御するための制御部に含まれており、TDI−CCDの制御タイミングと記憶タイミングとの同期がとられる。画像信号は図示しない画像処理装置に公知の方法で入力され、そこで信号処理即ち画像解析が公知の方法でおこなわれ、欠陥個所の特定と、欠陥の種類を判別し、観測者に知らせると同時に記憶媒体に記憶させるようになっている。
【0046】
オーバーレイ検査の場合、前に形成された下層パターンとその上に形成された上層パターンの直交2軸方向すなわちX方向とY方向のそれぞれのズレ量と回転角(θ)のズレ量とを画像解析から算出し、オーバーレイの可否を決定する。
【0047】
欠陥検査の場合、繰り返しパターンのパターン同士の比較を行うセルツウセル検査や、ダイ毎にパターンマッチングによる画像比較を行うダイツウダイ検査を行う。また、他の多くのダイとの比較を行うダイツウエニーダイ検査や、予め設計で決められたパターンと比較するダイツウキャドデータ検査であってもよい。欠陥の有無は比較画像に差分から差分の大きいところを欠陥とする。
【0048】
また、欠陥検査の場合、酸化膜転写パターンや、配線等の物理欠陥や電気的ショート欠陥や電気的オープン欠陥である電位コントラスト又はボルテージコントラストの検出も可能である。検査対象は製品ウエハであったり、TEG(テスト・エレメント・グループ)であったり、レチクルやマスクであってもよい。
【0049】
検査はオフライン検査とオンライン検査の両方が選択可能で、オンライン検査の場合検査結果を半導体製造ラインに直接電気信号等を信号線を通じてフィードバックすることも
可能である。またオフライン検査の場合でも、検査結果を本検査装置の端末から直接入力して半導体製造ラインに電気信号等信号線を通じてフィードバックすることが可能である。半導体製造ラインのホストコンピューターと通信して、検査結果を製造工程の品質管理に用いてもよい。
【0050】
次に、検査前のウエハWをチャンバ12内のステージ装置5に載せ、また検査後のウエハWをステージ装置から取り出す動作について
図1を参照して説明する。
【0051】
試料表面検査装置1のチャンバ12に隣接して配置された予備環境室62は、半導体製造プロセスにおいて、ウエハが外部から搬入される時の環境からウエハ保持台51を有するステージ装置5が配置されたチャンバ12内の環境へと変化され、予備環境室62内及びチャンバ12内の環境が一致したとき、予備環境室62からウエハ保持台に検査前のウエハを搬入することが出来るようになっている。
【0052】
具体的には、公知の防振構造を備えた防振台及びその上に配置されかつウエハ保持台51を有するステージ装置5が配置されたチャンバ12を画定するハウジング11と予備環境室62を画定するハウジング61との間にはゲート弁63が設けられ、チャンバ12と予備環境室62とはゲート弁53を介して選択的に連通或いは遮断可能になっている。更に、予備環境室62とチャンバ内のウエハを予備環境室へ導入するための別のゲート弁若しくはフランジを有していても良い。ここで、ウエハが予備環境室62とチャンバ12との間でゲート弁63と通して搬送されるとき、両者の環境はほぼ同一の環境(例えば、真空度10
-5[Pa]〜10
-6[Pa]程度の真空状態)に保たれている。
【0053】
半導体製造プロセスにおいて、次工程に搬送される前に検査を受けるウエハは次工程に搬送するための環境で保持されているので、先ず予備環境室はこの次工程に搬送するための環境になるように、いずれも公知の構造のガス供給装置(図示せず)及び、真空排気装置によって公知の方法で制御される。次工程に搬送するための環境と予簿環境室の環境(真空状態)が同じになったら、ウエハを予備環境室へ導入するための別のゲート弁若しくはフランジを開放し若しくは開けて、ウエハを予備環境室62内に導入し、先の真空排気系及びガス供給装置を制御し、ウエハ保持台51のある環境すなわちチャンバ12内の環境と同じ環境(真空状態)にする。
【0054】
その後、チャンバ12と予備環境室62とを仕切っているゲート弁63を開け検査前のウエハWをウエハ保持台51へと搬入する(これをロードと呼ぶ)。検査前のウエハの前記搬入が終了すると、ゲート弁62を閉め、ウエハ保持台のある環境を検査に適した環境にし、検査を開始する。
【0055】
検査が終了したウエハをウエハ保持台51から搬出し(これをアンロードと呼ぶ)、ウエハを次工程に搬送する場合には、搬入時と逆の動作をさせればよい。ここで、真空排気装置は、
図1に示されるように、ターボ分子ポンプ56とドライルーツポンプ57との組み合わせが好ましいが、ドライルーツポンプの替わりにオイルミストトラップ若しくはモレキュラーシーブ付きのロータリーポンプであっても良い。
【0056】
図3に予備環境室62を複数(ここでは2個)備えた場合の実施形態を示す。検査対象のウエハのロードとアンロードを同時に平行して行ってもよい。更に予備環境室に同時に複数のウエハをストックする機能を有してもよい。この場合ゲート弁操作を少なくすることができ、効率的な検査とロード及びアンロードが可能である。
【0057】
図4において、ウエハ電圧(基板電圧、試料電圧或いはリターディング電圧とも言うが、ここでは統一してウエハ電圧と呼ぶ)の制御フローが示されている。
図4に示されるフ
ローは、CCD若しくはEB−CCD又はTDI−CCDのStillモードによる1ショット撮像におけるフローを示す。ここで、ウエハ電圧(基板電圧、試料電圧或いはリターディング電圧)とはウエハ、基板等の試料に予め加えられている電圧を言う。
【0058】
これは、電流密度の信号とブランキング信号からDose量(電子線の投与量で、ウエハ、基板等の試料上の単位面積当たりに照射される荷電量のことであり、以下Dose量と呼ぶ)を計算し、ブランキング信号によってEB-CCDの制御を行っている実施例である。
【0059】
電子銃の電子電流値から電流密度J
eが算出される。この電流密度J
eとブランキング信号のブランキング解除時間τ
sからウエハ表面のDose量が計算される。
【0060】
ここでDose量=J
e・τ
s
試料表面すなわちウエハ表面の情報例えば、レジスト厚みd、比誘電率ε
rから単位面積あたりのウエハ表面の静電容量Cが求まる。
【0061】
ここでC=ε
r・ε
0/d (単位面積はcm
2で計算、ε
0は真空中の誘電率)
また、CV=Qより
ウエハ表面電圧の変化量ΔV=Q/C
ここでウエハ表面電圧とは、基板表面電圧或いは試料表面電圧とも呼ばれ、予め加えられたウエハ電圧と、ウエハに電子ビームが照射されたことにより加えられる電圧とを加え合わせた(重畳した)電圧を言う。
【0062】
一方Qはウエハ表面に照射された総電子量なので、ランディングエネルギLE(keV)の時の二次電子放出率をγとすると
Q=Dose量・(1−γ)=J
e・τ
s・(1−γ)となる。
【0063】
よってウエハ表面電圧の変化量はΔV=J
e・τ
s・(1−γ)・d/ε
r・ε
0で表わされる。
【0064】
したがって、ウエハ電圧(又はリターディング電圧)RTDは
RTD+ΔV=設計値(二次電子引き出し電圧)
を満たすように調整すればよい。
【0065】
図5はウエハ電圧の別の制御フローを示す。
【0066】
これは、EB−CCDの信号を基にブランキング信号を決め、そのブランキング信号と電流密度信号からDose量を決める場合の実施例である。
【0067】
図6は、CCD若しくはEB−CCD又はTDI−CCDのStillモードによる1ショット撮像を連続して複数回行う場合のウエハ電圧とEB−CCDとブランキング信号との関係を示す。撮像毎にDose量が変わるので、その都度ウエハ電圧(リターディング電圧)を調整しなくてはならない。つまりウエハ電圧をその都度調整することで、常に同じ画像が得られることとなり、それらの画像を積算することで、よりS/N比の高い画像を取得することができ、画像解析の精度を向上させることが可能である。
【0068】
なお、積算回数は任意の回数とすることができる。即ち、ウエハの条件等に応じた最適な積算回数を予め設定することができる。これによりウエハに応じた最適な検査条件で検査を実施することができる。
【0069】
図7はブランキング信号の別の実施例を示す。この場合EB−CCDの露光時間中に複
数回のブランキング解除が行われることになるので、ウエハ表面電圧の変化量ΔVは、
ΔV=J
e・Σ(τ
n)・(1−γ)・d/ε
r・ε
0で表わされる。
【0070】
この様に、ウエハ電圧とウエハ表面電圧の変化分の和が二次光学系の結像条件を満たすようにDose量を調整することで、画像を取得することができる。露光時間とブランキング解除時間は相対的に任意に決めることが可能である。即ちブランキング解除時間が露光時間より長くてもよい。この場合Dose量の計算はτ
sの変わりに露光時間を代入する。
【0071】
図8で具体的な二次光学系の結像条件について説明する。電子銃から発生した一次電子ビームは一次光学系(
図8において示さず)を介して、試料としてのウエハ(又は基板)の表面に照射される。このウエハ表面からは電子ビームの照射によって二次電子が発生する。この二次電子をウエハ電圧(若しくはリターディング電圧)と二次光学系にある電極の電圧との組み合わせによって二次光学系に導く。この時、二次電子は予め設計で決められた結像条件を満たすように導かれ、EB-CCDで代表される検出器の検出面上で結像する。
【0072】
電子ビームの照射によりウエハの表面の電位が変化してしまう場合、ウエハ電圧と二次光学系にある電極の電圧との組み合わせが予め設計で決められた結像条件を満たせなくなり、結果として検出器の検出面上で結像できなくなる。
【0073】
そこで、ウエハ電圧と二次光学系にある電極の電圧との組み合わせに、予め電子ビームの照射によって変化するウエハ表面の電位の分を重畳する。
【0074】
電子銃から発生した一次電子ビームは一次光学系(
図8において示さず)を介して、試料としてのウエハ(又は基板)の表面に照射される。この時、電子ビームは基板上に形成された、少なくとも2種類の異なる材質からなるパターン若しくは少なくとも2種類の断面構造からなるパターンに同時に照射される。また、写像光学系における視野よりも広い領域に電子ビームを照射する。このウエハ表面からは電子ビームの照射によって二次電子が発生する。この二次電子をウエハ電圧(若しくはリターディング電圧)と二次光学系にある電極の電圧との組み合わせによって二次光学系に導く。この時、二次電子は予め設計で決められた結像条件を満たすように導かれ、EB-CCDで代表される検出器の検出面上で結像する。この様に、基板上に形成された、少なくとも2種類の異なる材質からなるパターン若しくは少なくとも2種類の断面構造からなるパターンに同時に照射することによって、基板上の異なる種類の材質若しくは断面構造のそれぞれのチャージアップの量が異なり、どちらか一方の材質若しくは断面構造のチャージアップの量にあわせた基板電圧若しくはリターディング電圧の設定を行うことで、基板上の異なる種類の材質若しくは断面構造によるコントラストを強調し結像することも可能である。
【0075】
また、写像光学系における視野よりも広い領域に電子ビームを照射することによって、画像のX方向及びY方向の対象性を確保することができ、実画像(実際のパターン)に忠実な拡大画像を得ることが出来る。
【0076】
電子ビームの照射前では、二次光学系のウエハ電圧(若しくはリターディング電圧)と二次光学系にある電極の電圧との組み合わせは、予め設計で決められた結像条件になっていないが、電子ビームの照射によるウエハ表面の電位に変化が生じたとき、二次電子は二次光学系の予め設計で決められた結像条件を満たし、検出器の検出面上で結像する。
【0077】
ウエハ電圧と二次光学系にある電極の電圧の組み合わせは、基板、ウエハ等の試料の種類又は表面の材料と電子ビームの電流値若しくは電流密度又はエネルギーによって自由に設定することが出来る。
【0078】
ウエハ電圧と二次光学系にある電極の電圧の組み合わせは電子ビームを複数回照射した後に二次電子が二次光学系の予め設計で決められた結像条件を満たすように設定してもよい。
【0079】
ウエハ電圧と二次光学系にある電極の電圧の組み合わせは、電子ビームの照射毎に二次電子が二次光学系の予め設計で決められた結像条件を満たすように設定し、電子ビームを複数回照射したとき、照射毎にウエハ電圧と二次光学系にある電極の電圧の組み合わせを二次電子が二次光学系の予め設計で決められた結像条件を満たすようにしてもよい。この場合、照射毎に得られた画像を積算することも可能である。
【0080】
ステージや電子ビームをスキャンしてスキャン像を得る場合、電子ビームの電流密度若しくは電流値とステージ若しくは電子ビームのスキャン速度にあわせて、基板電圧若しくはリターディング電圧と二次光学系にある電極の電圧の組み合わせを、二次電子が二次光学系の予め設計で決められた結像条件を満たすようにしてもよい。
【0081】
次に、オーバーレイ検査方法の実施形態について説明する。
【0082】
まず、オーバーレイ検査についての概念図を
図9に示す。
図9において、100はシリコン基板、101は酸化膜層、102は下層パターン、103は形成膜層、104は露光現像後のレジスト層を示す。半導体製造工程には多数のエッチング工程がある。エッチング工程はエッチングしたい形成膜例えば酸化膜103の上にレジストを塗布し、そのレジストを光若しくは電子ビームによって露光、現像してレジスト層104に所望のパターン105を形成し、エッチングによりレジスト層のない部分の形成膜例えば酸化膜を除去することにより所望のパターンにするものである。
【0083】
第一のエッチング工程で作られたパターン(以下ここではオーバーレイマークのパターンを言う)102の上に埋め込み、新たなる膜の形成工程があり、そこで形成された膜のエッチングが必要となる。このとき、前工程で作られたパターン(下層パターン)102とこれからエッチングするパターン(上層パターン)105が設計にしたがって一致していなくてはならない。そこで位置合わせ用のマークを用いて、下層パターン102と上層パターン105との一致性を検査する。
【0084】
上層パターンのエッチングのため、下層パターンの上には既にレジストが塗布されており、下層パターンはこのレジストを通して観察若しくは観測しなくてはならない。また、オーバーレイの検査では上層パターンと下層パターンは同時に観察若しくは観測できなくてはならない。
【0085】
オーバーレイ検査では下層パターンは主にレジストや酸化膜の下に存在する場合が多い。場合によっては導電性を持った層の下にある場合もある。上層パターンはレジストの露光によって形成される場合が主であり、露光のみの場合とポストベークされた場合、現像までされた場合とがある。
【0086】
図10に検査エリアの概念図を示す。オーバーレイ検査は全てのダイについて行うわけではなく、例えば、
図2においてD1ないしD8のように、ある限られたダイについて行う。よって、被検査ダイ間の移動に要する時間を短縮するために、被検査ダイ間の移動はステージの最大速度まで加速する。
【0087】
図11にオーバーレイマーク配置の概念図を示す。オーバーレイマークは各ダイの中に
図11に示すように配置される場合がある。検査は全てのオーバーレイマークについて行う
わけではなく、ある限られたマークについて行う場合もある。よって、マーク間の移動に要する時間を短縮するために、マーク間の移動ではステージを最大速度まで加速する。
【0088】
図12において、本実施形態の試料表面の欠陥等の表面検査方法を行う装置が全体を1で示されている。この実施例の装置は、コンピュータ(computer)がステージ制御ユニットと記憶装置41とに接続されている以外は
図1の実施例と同じであるから、共通する部分の構造及び動作の説明は省略する。
【0089】
例えばウエハ、基板のような試料(以下この実施形態の説明では試料としてウエハを使用した例について説明する)Wは公知の構造、機能を有するステージ装置5のウエハ保持台51の上に、例えば真空チャック等の公知の手段により取り外し可能に固定されるようになっている。このウエハ保持台51は直交2軸方向すなわちX−Y方向の少なくとも一方向に連続的又はステップアンドリピート式に動くことができるように構成されている。防振台の防振構造は非接触型軸受けから構成されても良い。
【0090】
図2に詳細に示されるように、一次電子ビームを照射する一次光学系の電子銃21としては、熱電子放出型若しくはショットキー型の電子銃が使用され得る。なお、電子銃は一次光学系の構成要素と別にしてもよい。電子銃21から放出された一次電子ビームB1は、一次光学系の四重極子レンズ22等を介してその形状が整えられ、ウエハ保持台51上に載置されている試料すなわちウエハWの表面に照射される。このとき、一次電子ビームは電界と磁界からなるE×Bフィルタ又はウィーンフィルタ28を通ってウエハ表面に導かれる。
【0091】
電子ビームは、試料の照射領域のサイズが試料表面のパターン、特にオーバーレイパターンのパターンサイズより大きくなるように、一次光学系のレンズによって形成する。また電子ビームは、その形状が概ね円形若しくは楕円形になるように、またビーム強度分布が概ね均一になるように形成される。電子ビームはオーバーレイマークのほぼ中心に照射する。電子ビームの試料表面への照射は、一次光学系2の途中にあるブランキング用の電極(図示せず)によって行われる。試料表面に電子ビームを照射する場合は電極の電圧を0V(ゼロボルト)若しくは軌道調整に必要な電圧にし、電子ビームを一次光学系の概ね中心を通す。電子ビームを試料表面に照射しない場合には、電子ビームが完全に一次光学系から外れるに十分な電圧をブランキング用の電極に印加し、電子ビームを一次光学系を構成する外壁若しくは専用の電極等(図示せず)に導き、試料表面には電子ビームが照射されないようにブランキングする。
【0092】
図13にオーバーレイマーク又はオーバーレイパターンを示す。オーバーレイマークはbar in barタイプやbar in boxタイプのパターンを用いてもよい。外側のbarはレジスト下層パターンであり、内側のbar又はboxはレジストパターンであり、露光のみ、露光及びPEB(予備加熱)まで、若しくは現像までした場合のものとある。下層パターンはSTI構造であったり、メタル配線、溝構造であってもよい。
【0093】
一次電子ビームの照射によりウエハWの表面からは一次電子ビームのエネルギーに応じて二次電子B2が発生する。この二次電子は、ウエハの近傍に配置されている電極によって検出器側に所定の運動エネルギーを有するまで加速される。加速された二次電子B2は先の電界と磁界からなるE×Bフィルタ又はウィーンフィルタ28を直進し、二次電気光学系(以下単に二次光学系)3に導かれる。この時ウエハ表面は一次電子ビームの照射により帯電し二次電子が設計された所定の運動エネルギーまで加速されない場合がある。この場合二次電子は検出器41の検出面上で結像することが出来ず、像が得られないか、像がぼけてしまう。そこで、予め電子ビームの照射によるウエハ表面の帯電量を計算し、試料電圧又はリターディング電圧を計算された帯電量にあわせて変化させておく。これによ
り、電子ビームの照射による帯電量も含めて所定の運動エネルギーまで二次電子を加速することができる。
【0094】
二次電子は二次光学系3によって写像映像として検出器41上に結像される。二次電気光学系3を構成する電気的レンズ又は静電レンズ31は、複数枚の同軸上に配置された開口部を持つ電極、若しくは同軸状に配置された複数の電極群から構成され、これらのレンズが更に複数段に配置される。電気的レンズは、二次電子の持つ画像情報を拡大し、かつ、ウエハW上の位置及び表面情報を失わないように、写像情報として、検出器に導く。
【0095】
検出器41はMCP(マルチチャンネルプレート)と蛍光版及びTDI−CCD又はEB-CCD若しくはEB−TDIから構成されている。MCPで増倍された電子は、蛍光板にて光に変換され、この光信号がTDI−CCDに取り込まれ画像信号として出力される。 また、二次電子は直接EB−CCDに導入され画像信号に変換されてもよい。
【0096】
なお、一次及び二次光学系、並びに検出系の各構成要素は公知の構造、機能を有するものであるから詳細な説明は省略する。
【0097】
ウエハWを保持するステージ装置5には、検出器がTDI−CCD若しくはEB−TDIの場合に、連続的に動くことが可能な構造になっている。また、TDI−CCD若しくはEB−TDIの場合には、ステージは連続的な動きだけではなく、移動停止を繰り返すことも可能に構成されている。
【0098】
検出器がCCD若しくはEB−CCDの場合はステージは移動停止を繰り返すことも可能である。
ステージの位置は、図示しないが、常にレーザー干渉計によって公知の方法で測定されており、予め指定された目標値とレーザー干渉計にて測定された現在値との比較を行い、その残差に応じて残差を補正する信号を二次光学系3の静電レンズ制御ユニット(図示せず)に送る。ステージの移動、停止又はその間の速度斑、微少振動を、上記静電レンズにて二次電子の軌道を修正することによって補正し、検出器の検出面では常に安定した結像状態になるように補正する補正機構を有している。ステージ装置にはブレーキ(図示せず)が設けられていて、停止時にブレーキを用い停止し、停止中の微振動を抑制し若しくはなくすことも可能である。
【0099】
検出系4によって得られた電気的画像情報は、図示しない画像処理装置に入力され、そこで信号処理即ち画像解析がおこなわれ欠陥個所の特定と、欠陥の種類を判別し、観測者に知らせると同時に記憶媒体に記憶させる。オーバーレイ検査の場合、下層パターンと上層パターンのX方向とY方向のそれぞれのズレ量と回転角(θ)のズレ量とを画像解析から算出し、オーバーレイの可否を決定する。
【0100】
検査はオフライン検査とオンライン検査の両方が選択可能で、オンライン検査の場合検査結果を半導体製造ラインに直接電気信号等信号線を通じてフィードバックすることも可能である。またオフライン検査の場合でも、検査結果を本検査装置の端末から直接入力して半導体製造ラインに電気信号等信号線を通じてフィードバックすることが可能である。半導体製造ラインのホストコンピューターと通信して、検査結果を製造工程の品質管理に用いてもよい。
【0101】
次に、検査前のウエハWをチャンバ12内のステージ装置5に載せ、また検査後のウエハWをステージ装置から取り出す動作は、前記
図1を参照して行った前記説明と同じであるから、詳細な省略する。この実施形態に対しても
図3に示される予備環境室62を複数(ここでは2個)備えた構成を適用できることはもちろんである。
【0102】
電流密度の信号とブランキング信号からDose量(電子線の投与量でウエハ、基板等の試料上の単位面積当たりに照射される荷電量のことであり、以下Dose量として示す)を計算し、ブランキング信号によってEB-CCDの制御を行っているものである。
【0103】
RTD電圧若しくは基板電圧の制御原理は前記実施例と同様に次のようになる。電子銃の電子電流値から電流密度J
eが算出される。この電流密度J
eとブランキング信号のブランキング解除時間τ
sからウエハ表面のDose量が計算される。
【0104】
ここでDose量=J
e・τ
s
試料表面すなわちウエハ表面の情報例えば、レジスト厚みd、比誘電率ε
rから単位面積あたりのウエハ表面の静電容量Cが求まる。
【0105】
ここでC=ε
r・ε
0/d (単位面積はcm
2で計算、ε
0は真空中の誘電率)
また、CV=Qより
ウエハ表面電圧の変化量ΔV=Q/C
ここでウエハ表面電圧とは、基板表面電圧或いは試料表面電圧とも呼ばれ、予め加えられたウエハ電圧と、ウエハに電子ビームが照射されたことにより加えられる電圧とを加え合わせた(重畳した)電圧を言う。
【0106】
一方Qはウエハ表面に照射された総電子量なので、ランディングエネルギLE(keV)の時の二次電子放出率をγとすると
Q=Dose量・(1−γ)=J
e・τ
s・(1−γ)となる。
【0107】
よってウエハ表面電圧の変化量はΔV=J
e・τ
s・(1−γ)・d/ε
r・ε
0で表わされる。
【0108】
したがって、ウエハ電圧(又はリターディング電圧)RTDは
RTD+ΔV=設計値(二次電子引き出し電圧)
を満たすように調整すればよい。
【0109】
図14にステージ動作の基本概念図をしめす。検出器としてEB−TDI若しくはTDIで撮像する場合についてステージ動作について説明する。ステージは予め決められたオーバーレイマークの位置まで、最大速度まで加速し、オーバーレイマーク部では、EB−TDI若しくはTDIの動作周波数に同期した速度で移動しオーバーレイマークの撮像を行う。また、別のオーバーレイマークに移動する場合、ステージは加速しながら移動する。
【0110】
EB−CCDやCCDで撮像する場合はステップアンドリピート動作を行う。但し、オーバーレイマークの撮像では同じマークを数回繰り返して撮像してもよい。
【0111】
オーバーレイ検査の場合、下層パターンを見るためのΔVを決める条件と、上層パターンを見るためのΔVを決める条件が異なる場合がある。この場合上層パターンと下層パターンの像が同時に取得できないので、複数回撮像を行うことによって、下層パターンと上層パターンをそれぞれ別に取得しその合成画像から、下層パターンと上層パターンの位置ずれを検出若しくは計算しても良い。このとき、同じパターンを繰り返し撮像しても良い。また、繰り返し撮像をダイ毎に繰り返してもよく、さらに、ウエハ毎に繰り返してもよい。この時は画像取得条件特にRTDやDose量は下層パターンにあった条件にして撮像することが好ましい。
【0112】
特にプロセスによっては基板表面の断面構造若しくは材料が異なり、帯電する時間と表面の電荷が逃げる時間(放電時間)とがそれぞれ違う場合がある。その場合は一つのパターンを撮像する場合であっても、連続して繰り返すのではなく、時間差をつけた撮像を行うことも可能である。
【0113】
ここで、
図15(A)及び(B)を参照してオーバーレイ撮像の原理を説明する。
図15の(A)及び(B)それぞれにおいて、縦軸は試料すなわちウエハの表面の電位を示し、横軸は電子ビーム照射開始からの経過時間を示す。
【0114】
今、
図15(A)に示されるように、一回の照射による撮像を考える。一回の照射で撮像するため電子の照射量を多くすると、ウエハ表面の電位はウエハ表面の特性よって決まる帯電時間で、V6まで上昇してしまう。表面電位とRTDの調整によって、ウエハ表面から出た二次電子が検出器上で結像する条件が、V3とすると、
図15(A)に示されるような一回の撮像では、撮像する前に、ウエハの表面電位が結像条件を越えてしまい、ボケた像しか得られないか、或いは、像そのものを得ることが出来ないことになる。
【0115】
また、帯電によって最終的なウエハ表面(v6)をV3にするよう、電子の照射量(dose)を少なくすると、二次電子の量が減少し、画像が暗くなってしまう若しくは画像を得られなくなってしまう。
【0116】
これに対し、
図15(B)に示されるように、電子ビームの照射を少量ずつ有る間隔を置いて照射すると、ウエハ表面電位は、照射の間隔の合間に放電をし、この照射による帯電とこの放電を利用して、ウエハ表面の電位を制御し、結像条件であるV3になったタイミングでの撮像が可能になる。
【0117】
図16にその概念図を示す。放電時間が長く、表面電位が減衰しにくい基板の場合、連続して繰り返し撮像を行うと、直ぐに表面電位が大きく変化し、RTDの調整では二次EO(electro−optic)系、すなわち二次電子が検出器表面で結像条件を持つ二次光学系の結像条件を満たせなくなってしまうような基板についての動作例を示す。
【0118】
ダイ1のパターン(ダイに形成されたオーバーレイマークのパターンで以下同じ)1を一回撮像した後ダイ2のパターン2に移動し、パターン2を1回撮像する、さらにダイ3のパターン3に移動し、パターン3を一回撮像した後、ダイ4、ダイ5、ダイnと、複数のn個のダイを一回撮像した後、ダイ1のパターン1に戻り、パターン1の2回目の撮像を行う。
【0119】
更に、ダイ2、ダイ3へダイnと2回目の撮像を行い、これを必要回数m回繰り返す。
【0120】
ここで、1回目の撮像で得た画像と、2回目の撮像で得た画像との合成から上層パターンと下層パターンの位置ズレを計算してもかまわないし、合成に用いる画像がそれぞれ任意の回数の撮像で得た画像であってもかまわない。
【0121】
また、
図16はダイ毎の移動による例を示したが、一つのダイの中で複数のパターンを撮像する場合はダイの中でパターンを移動しながら、複数回の撮像を行ってもよい。この場合も1回目の撮像で得た画像と、2回目の撮像で得た画像との合成から上層パターンと下層パターンの位置ズレを計算してもかまわないし、合成に用いる画像がそれぞれ任意の回数の撮像で得た画像であってもかまわない。
【0122】
図16に示されるように、パターンを移動しながら一つのパターンの撮像を複数回繰り返す場合、ステージの移動は最短の距離になるようにかつ移動に要する時間が全て同じ時
間になるように(各パターンの撮像間隔が一定になるように)、ステージの速度の制御を行うための機能を有していることが望ましい。
【0123】
被検査パターンが多い場合は全個数を一度に撮像するのではなく、所望の個数毎のグループに分けて撮像してもよい。この時グループに含まれるパターンの個数nは基板の帯電時間と放電時間の特性から計算された、撮像に必要な時間差(インターバル時間)とステージの移動速度から決めることが望ましい。
【0124】
基板の帯電時間と放電時間の特性を予めステージの移動を制御する制御装置に入力し、検査するパターンの位置情報とをあわせて、パターン間に移動距離若しくは移動時間が最短でかつパターン間の移動時間が全て等しくなるように計算する。
【0125】
また、基板の帯電時間と放電時間の特性を予めステージの移動を制御する制御装置に入力し、検査するパターンの位置情報とをあわせて、検査に必要なパターンの数を計算し、検査時間が最短でかつ各パターン間の移動時間が全て等しくなるように計算してもよい。
【0126】
具体的には次のような手順で行う。
【0127】
まず、電子ビームをウエハに照射した時点からウエハ表面の帯電量が0になる、あるいは所定の閾値になるまでの放電時間を測定する。次に、撮像の対象となるオーバーレイマークの点数や位置、すなわち撮像対象のオーバーレイマークのグループを前述の放電時間を基に定める。すなわち、前述したように、本実施例においては1箇所のオーバーレイマークに電子ビームの照射を行い、ウエハ表面の帯電量が0又は所定の閾値になる前に再びそのオーバーレイマークに電子ビームを照射する操作を複数回繰り返すことにより撮像に適したコントラストを得ることができるので、所定のオーバーレイマークに電子ビームを照射した後に再び照射するまでの時間間隔が放電時間を越えないように調整する必要がある。
【0128】
次に、オーバーレイ間の移動時間をすべて等しく調整する。これにより、各オーバーレイに対して電子ビームが照射される時間間隔が等しくなり、各オーバーレイの帯電量が等しくなるから、各オーバーレイの像を均質に得ることができる。移動時間の調整にあたっては、ステージの最速の移動速度を基準に取る。本実施例では予め測定するオーバーレイを定めておき、このうちもっとも長い移動距離を最速でステージを移動させた時の移動時間を基準に取っている(この移動時間を基準移動時間という)。その後、各オーバーレイの移動時間が基準移動時間に等しくなるように各オーバーレイ間のステージ移動速度を設定する。以上から得られた移動時間の総和が放電時間を越えているようであれば再度オーバーレイの選択を行う。
【0129】
また、別の実施例として、予めオーバーレイマーク間の移動距離のすべての組み合わせ及びステージの最高移動速度を装置内の記憶媒体に記録しておき、放電時間を装置内の入力部から入力し、ウエハ表面の放電時間、又は放電時間から所望の時間を引いた時間を越えない範囲で最も多くのオーバーレイが撮像できる経路を装置内の演算部により演算させることもできる。
【0130】
また、ステージの構成によっては、X軸、Y軸など軸ごとや軸の位置ごとに移動速度や加速度が異なる場合があり、その場合はそれらを加味して移動時間を算出、演算することもできる。
【0131】
これら、上層パターンと下層パターンをそれぞれ別に撮像する場合、RTDをDose量に合わせて制御する。
【0132】
ΔVを制御する方法として、レーザー光線の照射を行ってもよい。レーザー光線を照射することで、表面電位の上昇分を更に詳細に制御することが出来る。レーザー光線を予め照射しておいてから電子ビームを照射する。レーザー光線の照射による量子効果で表面電位上昇分が変化しDose量の制御だけでは、微調整できなかった、試料表面の表面電位上昇分を調整し、より鮮明な画像を得ることが出来る。
【0133】
レーザー光線の照射とRTDの調整とDose量による表面電位の調整はそれらを総合的に同時に制御することも可能である。
【0134】
複数回撮像する場合、全ての画像を積算することも可能であるが、それぞれの撮像で上層パターンと下層パターンを別個に撮像することも可能であり、下層パターンの撮像時のみレーザー光線の照射に量、試料表面の電位上昇分をより細かく調整することが可能である。上層パターンの撮像時にレーザー光線の照射による試料表面の電位上昇分をより細かく調整してもよいし、常にレーザー光線を照射しても良い。また、撮像していない期間にレーザー光線を照射して、撮像時にはレーザー光線を止める若しくは遮蔽してもよい。
【0135】
図17において、本発明の別の実施例による試料検査装置が全体を1aで示されている。検査装置1aでは、ウエハに電子ビームを照射する熱電子放出型若しくはショットキー型の電子銃21aがステージ装置5aの真上に配置されている。電子銃からでた一次電子ビームB1は四重極子レンズ等静電レンズ22aからなる一次光学系2aを介してビームの形状を整えられながら、ウエハ表面に照射される。一次電子ビームはX方向とY方向にスキャンされながらオーバーレイマークに照射される。
【0136】
前の実施例と同様に、ウエハは公知の構造、機能を有するステージ装置5のウエハ保持台51の上に、例えば真空チャック等の公知の手段により取り外し可能に固定されるようになっている。このウエハ保持台51は直交2軸方向すなわちX−Y方向の少なくとも一方向に連続的又はステップアンドリピート式に動くことができるように構成されている。防振台の防振構造は非接触型軸受けから構成されても良い。
【0137】
電子ビームが照射されたウエハ表面からは照射された電子ビームのエネルギーに応じて二次電子B2が発生する。この二次電子は近傍の電極によって所定の運動エネルギーまで加速され、図示しない二次光学系を介して検出器41aに導かれる。この時ウエハ表面は電子ビームの照射により帯電し二次電子B2が設計された所定の運動エネルギーまで加速されない場合がある。この場合像が得られないか、像がぼけてしまう。そこで、前記実施例と同様に、予め電子ビームの照射によるウエハ表面の帯電量を計算し、基板電圧又はリターディング電圧を計算された帯電量にあわせて変化させておく。これにより、電子ビームの照射による帯電量も含めて所定の運動エネルギーまで二次電子を加速することができる。検出器により検出された画像の処理は前記実施形態の場合と同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0138】
検査前のウエハWをチャンバ12内のステージ装置5aに載せ、また検査後のウエハWをステージ装置から取り出す動作は、前記の実施例の動作と同じであるから説明は省略する。
【0139】
図18に本発明の更に別の実施例を示す。
図18は荷電粒子線を用いた加工装置であり、
図16に示したステージの動きは、帯電による加工精度が問題になるような絶縁物等帯電し易い材料の加工する場合にも利用できる。被加工物が帯電し易く、一度に高エネルギー密度で加工できない場合は、微弱なエネルギー密度で加工する。被加工物が多数ある場合には、第1の加工物の帯電が無くなるまでの間に第2の加工物に移動し加工することが
可能である。
【0140】
図18は荷電粒子線の例を示すが、荷電粒子線の代わりにエネルギー粒子線例えば高速原子線や、エネルギービーム例えばレーザーやメーザー、X線であっても良い。
【0141】
なお、上記本発明のパターン検査装置及び検査方法以外の加工装置自体の構成及びその動作は従来のものと同じでよいので、それらに就いての詳細な説明は省略する。
【0142】
次に本発明に係る試料表面検査方法の更に別の実施形態について説明する。オーバーレイ検査についての概念図は前記
図9の説明と同じであるから省略する。
【0143】
また、この実施形態に使用する装置は
図1に示されるものと同じであるから再び
図1を参照して説明する。
【0144】
図1において、本実施形態の試料表面の欠陥等の表面検査方法を行う装置が全体を1で示されている。同図において、2は一次電子光学系(以下単に一次光学系)、3は二次電子光学系(以下単に二次光学系)、4は検出系、5は公知の構造の防振台の上に設けられたステージ装置であり、これらはチャンバ12を画定するハウジング11内に収納されている。チャンバ12は図示しない装置により所望の雰囲気、例えば真空雰囲気に制御されるようになっている。
【0145】
例えばウエハ、基板のような試料(以下この実施形態の説明では試料としてウエハを使用した例について説明する)Wは公知の構造、機能を有するステージ装置5のウエハ保持台51の上に、例えば真空チャック等の公知の手段により取り外し可能に固定されるようになっている。このウエハ保持台51は直交2軸方向すなわちX−Y方向の少なくとも一方向に連続的又はステップアンドリピート式に動くことができるように構成されている。防振台の防振構造は非接触型軸受けから構成されても良い。
【0146】
一次電子ビームを照射する一次光学系の電子銃21としては、熱電子放出型若しくはショットキー型の電子銃が使用され得る。なお、電子銃は一次光学系の構成要素と別にしてもよい。電子銃21から放出された一次電子ビームB1は、四重極子レンズ22等の静電レンズからなる一次光学系2を介してビーム形状が整えられながら、ウエハ保持台51上に載置されている試料すなわちウエハWの表面に照射される。
【0147】
電子ビームの形成は四重極子レンズ等静電レンズ以外に電磁レンズを併用することもある。
図19にアパーチャー部材26等所望の形状の開口部すなわちアパーチャーを有する遮蔽物を併用することによって、ビームの形状を整形する概念図を示す。四重極子レンズには予め決められた所望のビームサイズ、形状にビームを形成するように電圧が印加される。アパーチャーも予め決められた所望のビームサイズ、形状にビームを形成するための形状が選択されている。アパーチャーの形状が異なる複数のアパーチャー部材を設けておき、ウエハや検査パターンに応じて変更することが可能である。四重極子レンズに印加された電圧もウエハや検査パターンに応じて変更することが可能である。これらは、ビーム形状を制御する制御装置によって制御され、自動で条件を計算し、四重極子レンズの印加電圧と、アパーチャーの形状の組み合わせを決めることができる。
【0148】
矩形アパーチャーのみでビーム形状を形成することも可能である。この場合は、ウエハや検査パターンに応じてビーム形状を制御する制御装置によって制御され、自動で条件を計算し、最適アパーチャーが選択される。また、アパーチャーの形状は矩形の他に、楕円であってもよい。
【0149】
このとき、一次電子ビームは電界と磁界からなるE×Bフィルタ又はウィーンフィルタ28を通ってウエハ表面に導かれる。電子ビームは試料表面のパターン特にオーバーレイパターンのパターンサイズより大きめのビームサイズに形成する。
【0150】
ビーム強度分布が概ね均一になるように電子ビームを形成する。電子ビームはオーバーレイマークのほぼ中心に照射する。電子ビームの試料表面への照射は、
図20に示されるように、一次光学系2の途中にあるブランキング用の電極23によって行われる。試料表面に電子ビームを照射する場合は電極の電圧を0V(ゼロボルト)若しくは軌道調整に必要な電圧にし、電子ビームを一次光学系の概ね中心を通す。電子ビームを試料表面に照射しない場合には、電子ビームが完全に一次光学系から外れるに十分な電圧をブランキング用の電極23に印加し、電子ビームを一次光学系を構成する外壁若しくは専用の電極24等に導き、試料表面には電子ビームが照射されないようにブランキングする。ブランキング用の電極は四重極子電極で構成される。電子ビームの偏向方向は、互いに直交するX方向又はY方向でも、或いは斜め方向(X方向の成分とY方向の成分を含む方向)でもかまわない。ブランキング用の電極23は四重極子電極で構成される。
図21に電子ビーム偏向方向の概念図を示す。同図において、IPは、
図9の下層パターン102及び上層パターンを含む被検査パターンを示し、BAは一次電子ビームの照射範囲を示す。電子ビームの偏向方向は、ステージの進行方向または、進行方向の逆方向何れでかが望ましい。
【0151】
また、電子ビームの偏向方向はステージ進行方向に対し任意の方向であってもかまわない。
【0152】
この実施態様で使用されるオーバーレイマーク又はオーバーレイパターンは
図13で示されるものと同じであるので、それに付いての説明は省略する。
【0153】
一次電子ビームの照射によりウエハWの表面からは一次電子ビームのエネルギーに応じて二次電子B2が発生する。この二次電子は、ウエハの近傍に配置されている電極によって検出器側に所定の運動エネルギーを有するまで加速される。加速された二次電子B2は先の電界と磁界からなるE×Bフィルタ又はウィーンフィルタ28を直進し、二次電子光学系(以下単に二次光学系)3に導かれる。この時ウエハ表面は一次電子ビームの照射により帯電し二次電子が設計された所定の運動エネルギーまで加速されない場合がある。この場合二次電子は検出器41の検出面上で結像することができず、像が得られないか、像がぼけてしまう。そこで、予め電子ビームの照射によるウエハ表面の帯電量を計算し、ビームサイズ、形状を決めておく。これにより、電子ビームの照射による帯電量も含めて所定の運動エネルギーまで二次電子を加速することができる。
【0154】
二次電子は二次光学系3によって写像映像として検出器41上に結像される。二次光学系3を構成する電気的レンズ又は静電レンズ31は、複数枚の同軸上に配置された開口部を持つ電極、若しくは同軸状に配置された複数の電極群から構成され、これらのレンズが更に複数段に配置される。電気的レンズは、二次電子の持つ画像情報を拡大し、かつ、ウエハW上の位置及び表面情報を失わないように、写像情報として、検出器に導く。
【0155】
検出器41はMCP(マルチチャンネルプレート)と蛍光版及びTDI−CCD又はEB-CCD若しくはEB−TDIから構成されている。MCPで増倍された電子は、蛍光板にて光に変換され、この光信号がTDI−CCDに取り込まれ画像信号として出力される。また、二次電子は直接EB−CCDに導入され画像信号に変換されてもよい。
【0156】
なお、一次及び二次光学系、並びに検出系の各構成要素は公知の構造、機能を有するものであるから詳細な説明は省略する。
【0157】
更に、MCPで二次電子を増倍した後に増倍された電子を直接EB−TDIに導入してもよい。また、蛍光板とTDIで検出器を構成してもよい。
【0158】
ウエハWを保持するステージ装置5には、検出器がTDI−CCD若しくはEB−TDIの場合に、連続的に動くことが可能な構造になっている。また、TDI−CCD若しくはEB−TDIの場合には、ステージは連続的な動きだけではなく、移動停止を繰り返すことも可能に構成されている。
【0159】
検出器がCCD若しくはEB−CCDの場合はステージは移動停止を繰り返すことも可能である。
ステージの位置は、図示しないが、常にレーザー干渉計によって公知の方法で測定されており、予め指定された目標値とレーザー干渉計にて測定された現在値との比較を行い、その残差に応じて残差を補正する信号を二次光学系3の静電レンズ制御ユニット(図示せず)に送る。ステージの移動、停止又はその間の速度斑、微少振動を、上記静電レンズにて二次電子の軌道を修正することによって補正し、検出器の検出面では常に安定した結像状態になるように補正する補正機構を有している。ステージ装置にはブレーキ(図示せず)が設けられていて、停止時にブレーキを用い停止し、停止中の微振動を抑制し若しくはなくすことも可能である。
【0160】
検出系4によって得られた電気的画像情報は、図示しない画像処理装置に入力され、そこで信号処理即ち画像解析がおこなわれ欠陥個所の特定と、欠陥の種類を判別し、観測者に知らせると同時に記憶媒体に記憶させる。オーバーレイ検査の場合、下層パターンと上層パターンのX方向とY方向のそれぞれのズレ量と回転角(θ)のズレ量とを画像解析から算出し、オーバーレイの可否を決定する。
【0161】
検査はオフライン検査とオンライン検査の両方が選択可能で、オンライン検査の場合検査結果を半導体製造ラインに直接電気信号等信号線を通じてフィードバックすることも可能である。またオフライン検査の場合でも、検査結果を本検査装置の端末から直接入力して半導体製造ラインに電気信号等信号線を通じてフィードバックすることが可能である。半導体製造ラインのホストコンピューターと通信して、検査結果を製造工程の品質管理に用いてもよい。
【0162】
次に、検査前のウエハWをチャンバ12内のステージ装置5に載せ、また検査後のウエハWをステージ装置から取り出す動作について
図1を参照して説明する。
【0163】
試料表面検査装置1のチャンバ12に隣接して配置された予備環境室62は、半導体製造プロセスにおいて、ウエハが外部から搬入される時の環境からウエハ保持台51を有するステージ装置5が配置されたチャンバ12内の環境へと変化され、予備環境室62内及びチャンバ12内の環境が一致したとき、予備環境室62からウエハ保持台に検査前のウエハを搬入することができるようになっている。
【0164】
具体的には、公知の防振構造を備えた防振台及びその上に配置されかつウエハ保持台51を有するステージ装置5が配置されたチャンバ12を画定するハウジング11と予備環境室62を画定するハウジング61との間にはゲート弁63が設けられ、チャンバ12と予備環境室62とはゲート弁53を介して選択的に連通或いは遮断可能になっている。更に、予備環境室62とチャンバ内のウエハを予備環境室へ導入するための別のゲート弁若しくはフランジを有していても良い。ここで、ウエハが予備環境室62とチャンバ12との間でゲート弁63と通して搬送されるとき、両者の環境はほぼ同一の環境(例えば、真空度10
-4Pa〜10
-6Pa程度の真空状態)に保たれている。
【0165】
半導体製造プロセスにおいて、次工程に搬送される前に検査を受けるウエハは次工程に搬送するための環境で保持されているので、先ず予備環境室はこの次工程に搬送するための環境になるように、いずれも公知の構造のガス供給装置(図示せず)及び、真空排気装置によって公知の方法で制御される。次工程に搬送するための環境と予備環境室の環境(真空状態)が同じになったら、ウエハを予備環境室へ導入するための別のゲート弁若しくはフランジを開放し若しくは開けて、ウエハを予備環境室62内に導入し、先の真空排気系及びガス供給装置を制御し、ウエハ保持台51のある環境すなわちチャンバ12内の環境と同じ環境(真空状態)にする。
【0166】
その後、チャンバ12と予備環境室62とを仕切っているゲート弁63を開け検査前のウエハWをウエハ保持台51へと搬入する(これをロードと呼ぶ)。検査前のウエハの前記搬入が終了すると、ゲート弁62を閉め、ウエハ保持台のある環境を検査に適した環境にし、検査を開始する。
【0167】
検査が終了したウエハをウエハ保持台51から搬出し(これをアンロードと呼ぶ)、ウエハを次工程に搬送する場合には、搬入時と逆の動作をさせればよい。ここで、真空排気装置は、
図2に示されるように、ターボ分子ポンプ66とドライルーツポンプ67との組み合わせが好ましいが、ドライルーツポンプの替わりにオイルミストトラップ若しくはモレキュラーシーブ付きのロータリーポンプであっても良い。
【0168】
図3に示された予備環境室62を複数(ここでは2個)備えた構成もこの実施形態に適用可能である。
【0169】
表面の静電容量コントラストを得るためには、有る程度の表面への電子の照射が必要である。この必要な電子ビームの照射量(以下、必要Dose量)を得るために、本発明においては、被検査パターンに対しステージのスキャン方向に対して長いビーム長を持つ電子ビームの照射形状をもつことを特徴とする。
【0170】
このビームの長さは必要Dose量によって規定される。
【0171】
必要Dose量は外パターンと内パターンとが最良のコントラストとなるように制御され、ステージ速度と電流密度によって決められる。
【0172】
ウエハ毎の表面の形状、材料、断面構造等を入力し、計算によって求めたビーム長を用いてもよい。この場合、
ビーム長X
0=Hz・C
wf・ΔV/J
e
ここで
Hz:TDIの動作周波数(ステージ速度)
C
wf:ウエハの断面構図や表面材料等によって決まるウエハ表面の静電容量
例えば、レジストが塗布されたウエハでレジストの厚さがdの場合、レジストの比誘電率ε
r、真空中の誘電率をε
0とし、
C
wf=d/(ε
r・ε
0)
ΔV=V
EO−V
RTD
V
EO:二次電子の引き出し電圧
V
RTD:基板電圧若しくはリターディング電圧
J
e:基板への照射電流密度
によって求められる。
【0173】
電子ビームの偏向(ブランキング)により、試料表面はその電子ビームの偏向方向に若干多く電子ビームが照射されてしまう。このことは、試料表面の帯電状態に若干の偏りを
発生させる原因となる。そこで、ブランキングによるDose量の修正を行ってもよい。この場合ブランキング方向はスキャン方向と一致させ、その量を計算しX
0による必要Dose量が決められる。ブランキング方向はステージスキャン方向であってもよく、ステージスキャン方向逆方向であってもよい。
【0174】
ブランキングによるX
0の補正項をX
B、ブランキング時間をτ
B、ブランキングによって基板表面でビームが移動する距離をLとすると、
X
B=Hz・L・τ
Bとなり、
ブランキングによる補正後のビーム長X
0は、
X
0=Hz・C
wf・ΔV/J
e±X
Bとなる。
(但し、±の符号はブランキング方向による、+はブランキング方向がステージ進行方向と逆向きの場合。−はブランキング方向がステージ進行方向と同じ向きの場合)
【0175】
また、ブランキングによる必要Dose量の修正は、基板表面電位の上昇分をコントロールする基板電圧若しくはリターディング電圧のコントロールであってもよい。
【0176】
この場合の電圧調整分ΔV
Bは
ΔV
B=J
e・τ
B/C
wfとなる。
【0177】
ブランキングによる必要Dose量の修正量を少なくするためには、ブランキング方向をステージ進行方向に対して垂直方向であってもよい。
【0178】
また、ブランキングによる必要Dose量の修正を考慮しなくて良い場合には、ブランキング方向は任意の方向であってもよい。
【0179】
ビームの長さはウエハ毎または、被検査パターンの断面構造若しくは表面の材質によって変えることが可能である。例えば、レシピの中にビーム長の情報を予め盛り込んでおき、ウエハをロードしたときに、ビーム長はそのウエハ又は被検査パターンにあったものに決められる。
【0180】
図22に照射電子ビームと被検査パターンとの位置関係を示す。同図において、クロスハッチングで示された部分が電子ビームの照射領域及びそのサイズを表す。この例では照射領域は上、下両縁が円弧状にかつ左、右両縁が直線になった形状をしているが、ステージの移動方向に長い長方形でも長円形でもよい。撮像の対象となる被検査パターンにビームが当り始め、被検査パターンがX
0移動したときに、被検査パターンがTDIセンサーの下を通過する。このタイミングでTDIセンサーは画像取り込みを開始する。この様にTDIセンサーの位置よりX
0離れた位置からビーム照射を開始し、X
0ステージが移動する間に撮像に必要なDose量が被検査パターンに与えられる。
【0181】
図23に別の照射例を示す。被査パターンの配列によっては、X
0を必要Dose量から計算される1/2にして、ステージを折り返し移動させてもかまわない。この図において、クロスハッチングで示された部分が電子ビームの照射領域及びそのサイズを表す。
【0182】
TDIセンサーの位置から(1/2)・X
0離れた位置からビーム照射を開始し(1/2)・X
0移動した段階でステージを折り返し 再び(1/2)・X
0 移動したところでTDIセンサーによる撮像を行う。これによって、X
0移動するのと同様のDOSE量を被検査パターンに与えられる。
【0183】
この場合、先に検査する被検査パターンの次の被検査パターンが先に検査する被検査パターンの後方つまり、先に検査するのに必要なステージ移動方向と逆の方向に位置する場
合は、ステージ移動距離が半分となり、時間の節約ができる。
【0184】
撮像する視野は例えばTDIのピクセル数 X方向(この場合はステージのスキャン方向と一致)512pixとY方向2048pixから構成され、ステージがX方向にスキャンしながら、512pix分の情報を積分しながら構成される。
【0185】
ビームは視野のX方向上流側に長くなるように形成されており、TDIが画像を取り込む部分では既に、この長い電子ビームによって、必要Dose量が与えられており、被検査パターンの画像を得ることができる。
【0186】
このとき、照射ビームのY方向の大きさ(ビームの幅)は被検査パターンの大きさによって所望の大きさ(幅)することが可能である。大きいパターンを低倍率で検査する場合はTDIのY方向のピクセルサイズ(例えば2048pix)より大きくてもよく、小さいパターンを高倍率で検査する場合はTDIのY方向のピクセルサイズ(例えば2048pix)より小さくてもよい。
【0187】
上記のようにビーム径を定めることにより、とくに、オーバーレイマークやパターンが一定方向に並べられて配列されている場合により効果的なオーバーレイマークやパターンの撮像が可能となる。すなわち、被撮像パターンを撮像タイミングの前から1次電子を照射させることにより(この走査をプリドーズ(Pre-Does)という)、撮像タイミングにおいて被撮像パターンは十分な帯電がなされる。被撮像パターンが一定方向に連続的に配置されている場合、本発明のようにステージの移動に伴ってビーム径を定めれば、各被撮像パターンには等価に帯電がされた状態で撮像が可能である。すなわち、ステージ移動を一定速度に保ち、被撮像パターン間の距離とステージ速度を勘案して撮像を行うだけで最適な帯電状態の被撮像パターンを撮像でき、ステップ・アンド・リピートのように毎回ステージを被撮像パターンにて止めて一定の帯電量に被撮像パターンを帯電させるまで停止する必要がなくなる。
【0188】
次に、
図24を参照して電子ビームを利用した検査装置を用いた露光装置のレンズ収差の分布を測定する場合の実施例を示す。
【0189】
図24はレンズ収差調査のためのパターン分布の一例を示す。パターンは孤立パターンを用い、レンズの収差調査に必要な分、必要な間隔でパターンが並べられている。このパターンを露光装置によって基板上に転写し、そのパターンのズレ量を検査する事でレンズの収差の分布を調査する。
【0190】
この場合は、電子ビームを広い面積でパターンに照射し、ステージ若しくはビームをスキャンしながらTDIやEB−TDIを用いて連続的に撮像する。
【0191】
製品レイヤーでのオーバーレイマークは全てのチップについて行うのではないので、広い面積の電子ビームをパターンに照射し、CCDやEB−CCDで静止画像として必要なパターン部に移動しながらステップアンドリピートを繰り返しながら撮像する。この場合はTDIやEB−TDIのstillモードで撮像してもよい。また、パターン部のみをスキャンして撮像してもよい。