特許第5662994号(P5662994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5662994-有機電界発光素子 図000031
  • 特許5662994-有機電界発光素子 図000032
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662994
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20150115BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20150115BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20150115BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20150115BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20150115BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20150115BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   C07D209/86
   C07D401/14
   C07D409/14
   C07D405/14
   C07D403/14
   C09K11/06 690
【請求項の数】3
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2012-501715(P2012-501715)
(86)(22)【出願日】2011年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2011051640
(87)【国際公開番号】WO2011105161
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2013年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-42295(P2010-42295)
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】多田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳也
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】堤 安久
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−263579(JP,A)
【文献】 特開2009−170817(JP,A)
【文献】 特開2009−114370(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104488(WO,A1)
【文献】 特開2004−342391(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極、有機層及び陰極が積層されてなる有機電界発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、及び正孔阻止層からなる群れから選ばれる少なくとも一つの層に一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含有させたことを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】
一般式(1)中、Xはそれぞれ独立してC−Y又は窒素を表し、Yはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜11のシクロアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の芳香族複素環基を表す。nは2〜4の整数を表し、Aはn価の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜50の芳香族複素環基を表し、Lは直接結合を表し、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜11のシクロアルキル基を表す。但し、Aは縮環構造を含まない(置換基を除く)
【請求項2】
前記一般式(1)において、nが2又は3であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を含有させた層が、燐光発光ドーパントを含有する発光層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子用の有機電界発光素子用材料及びこれを用いた有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは、有機化合物からなる発光層に電界をかけて光を放出する薄膜型デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)は、その最も簡単な構造としては発光層及び該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。すなわち、有機EL素子では、両電極間に電界が印加されると、陰極から電子が注入され、陽極から正孔が注入され、これらが発光層において再結合し、光を放出する現象を利用する。
【0003】
近年、有機薄膜を用いた有機EL素子の開発が行われるようになった。特に、発光効率を高めるため、電極からキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンからなる正孔輸送層と8-ヒドロキシキノリンアルミニウム錯体(以下、Alq3という)からなる発光層とを電極間に薄膜として設けた素子の開発により、従来のアントラセン等の単結晶を用いた素子と比較して大幅な発光効率の改善がなされたことから、自発光・高速応答性といった特徴を持つ高性能フラットパネルへの実用化を目指して進められてきた。
【0004】
また、素子の発光効率を上げる試みとして、蛍光ではなく燐光を用いることも検討されている。上記の芳香族ジアミンからなる正孔輸送層とAlq3からなる発光層とを設けた素子をはじめとした多くの素子が蛍光発光を利用したものであったが、燐光発光を用いる、すなわち、三重項励起状態からの発光を利用することにより、従来の蛍光(一重項)を用いた素子と比べて、3〜4倍程度の効率向上が期待される。この目的のためにクマリン誘導体やベンゾフェノン誘導体を発光層とすることが検討されてきたが、極めて低い輝度しか得られなかった。また、三重項状態を利用する試みとして、ユーロピウム錯体を用いることが検討されてきたが、これも高効率の発光には至らなかった。近年では、特許文献1に挙げられるように発光の高効率化や長寿命化を目的にイリジウム錯体等の有機金属錯体を中心に燐光発光ドーパント材料の研究が多数行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-093159号公報
【特許文献2】WO2005-057987号公報
【特許文献3】特開2005-132820号公報
【特許文献4】特開2004-071500号公報
【0006】
高い発光効率を得るには、前記ドーパント材料と同時に、使用するホスト材料が重要になる。ホスト材料として提案されている代表的なものとして、特許文献2で紹介されているカルバゾール化合物の4,4'-ビス(9-カルバゾリル)ビフェニル(以下、CBPという)が挙げられる。CBPはトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(以下、Ir(ppy)3という)に代表される緑色燐光発光材料のホスト材料として使用した場合、CBPは正孔を流し易く電子を流しにくい特性上、電荷注入バランスが崩れ、過剰の正孔は電子輸送層側に流出し、結果としてIr(ppy)3からの発光効率が低下する。
【0007】
前述のように、有機EL素子で高い発光効率を得るには、高い三重項励起エネルギーを有し、かつ両電荷(正孔・電子)注入輸送特性においてバランスがとれたホスト材料が必要である。更に、電気化学的に安定であり、高い耐熱性と共に優れたアモルファス安定性を備える化合物が望まれており、更なる改良が求められている。
【0008】
特許文献1においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。
【0009】
【0010】
しかしながら、このカルバゾール化合物はカルバゾールの3,6位にフェニル基を有するため、十分な発光効率が得られないことが推定される。
【0011】
特許文献2においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。

【0012】
特許文献3においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。
【0013】
しかしながら、上記化合物はカルバゾールが9位で連結した化合物を開示するのみであり、1位で連結した化合物を用いた有機EL素子の有用性を開示するものではない。
【0014】
特許文献4においては、有機EL素子のホスト材料として以下に示すようなカルバゾール化合物が開示されている。
【0015】
しかしながら、上記化合物はカルバゾールが3位で連結した化合物を開示するのみであり、1位で連結した化合物を用いた有機EL素子の有用性を開示するものではない。
【発明の開示】
【0016】
有機EL素子をフラットパネルディスプレイ等の表示素子に応用するためには、素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、上記現状に鑑み、高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子及びそれに適する化合物を提供することを目的とする。
【0017】
本発明者らは、鋭意検討した結果、2つ以上のカルバゾール環を1位で連結基を介して連結させた9位に特定の置換基を有するカルバゾール化合物を有機EL素子として用いることで優れた特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明は、基板上に、陽極、有機層及び陰極が積層されてなる有機電界発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、及び正孔阻止層からなる群れから選ばれる少なくとも一つの層に一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いた有機電界発光素子に関する。
【0019】
【0020】
一般式(1)中、Xはそれぞれ独立してC-Y又は窒素を表し、Yはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜11のシクロアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の芳香族複素環基を表す。nは2〜4の整数を表し、Aはn価の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜50の芳香族複素環基を表し、Lはそれぞれ独立して直接結合、縮環構造でない2価の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜10の芳香族複素環基を表し、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜11のシクロアルキル基を表す。但し、Lが直接結合の場合、Aは縮環構造ではない。
【0021】
一般式(1)において、Lが直接結合、5員環又は6員環で構成される2価の芳香族炭化水素基、5員環又は6員環で構成される2価の芳香族複素環基の何れかであることが好ましく、直接結合、フェニレン基、6員環で構成される2価の芳香族複素環基の何れかであることがより好ましい。また、一般式(1)において、nは2〜4であるが、2又は3であることが好ましい。
【0022】
また、上記有機電界発光素子は一般式(1)で表されるカルバゾール化合物と燐光発光ドーパントを含有する発光層を有することが好ましい。
【0023】
一般式(1)で表されるカルバゾール化合物は、1,9位に単環の芳香族基を置換し、1位上の芳香族基で連結したカルバゾール骨格を2つ以上有することにより、正孔、電子移動速度の微調整、並びにイオン化ポテンシャル(IP)、電子親和力(EA)、三重項励起エネルギー(T1)の各種エネルギー値の制御が可能となると考えられる。また、該カルバゾール化合物は酸化、還元、励起の各活性状態で安定性を向上させることが可能であると考えられ、同時に良好なアモルファス特性を有する。以上のことから駆動寿命が長く、耐久性の高い有機EL素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】有機EL素子の一構造例を示す断面図である。
図2】化合物A-1の1H−NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の有機電界発光素子は、前記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を特定の層に含有する。一般式(1)において、nは2〜4の整数であり、Aはn価の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜50の芳香族複素環基である。すなわち、一般式(1)で表されるカルバゾール化合物は、n個のカルバゾール含有基が、n価の基Aに結合した構造を有する。
【0026】
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立してC-Y又は窒素を表し、Yは水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜11のシクロアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜17の芳香族複素環基を表す。Yが複数存在する場合は、同一であっても、異なってもよい。
【0027】
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立してC-Y又は窒素を表すが、Xが窒素である場合、その数は1〜3個が好ましく、より好ましくは1〜2個である。
【0028】
一般式(1)において、XがC-Yである場合、Yはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜11のシクロアルキル基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜17の芳香族複素環基を表す。好ましくは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜13の芳香族複素環基である。芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基である場合、縮環構造でないことが好ましい。
【0029】
アルキル基又はシクロアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられ、直鎖であっても、分岐していても構わない。好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基又はシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基である。
【0030】
芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、クリセン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ナフチリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、キサンテン、オキサントレン、フェノキサジン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノチアジン又はこれらの芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる1価の基等が挙げられる。上記芳香環が複数連結された芳香族化合物の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ビストリアジルベンゼン、ビナフタレン、フェニルピリジン、ジフェニルピリジン、ジフェニルピリミジン、ジフェニルトリアジン、フェニルカルバゾール、ピリジルカルバゾール等から水素を除いて生じる1価の基等が挙げられ、結合位置は限定されず、末端の環であっても中央部の環であっても構わない。
【0031】
好ましい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の具体例としては、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、ジベンゾフラン、オキサントレン、フェノキサジン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノチアジン又はこれらの芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる1価の基であり、より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン又はこれらの芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる1価の基である。
【0032】
一般式(1)において、複数のRはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜11のシクロアルキル基を表す。好ましくは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基である。アルキル基又はシクロアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。好ましいRは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基であり、より好ましくは水素である。
【0033】
一般式(1)において、nは2〜4の整数を表す。好ましくは、nは2又は3、より好ましくは2である。
【0034】
一般式(1)において、Aはn価の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜50の芳香族複素環基を表す。好ましくは、n価の炭素数6〜36の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜36の芳香族複素環基である。
【0035】
Aが芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基である場合、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の具体例としてはベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、クリセン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ナフチリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、キサンテン、オキサントレン、フェノキサジン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノチアジン又はこれらの芳香環が複数連結された芳香族化合物からn個の水素を除いて生じるn価の基等が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、クリセン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ナフチリジン、カルバゾール、アクリジン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、フェノキサジン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン又はこれらの芳香環が複数連結された芳香族化合物からn個の水素を除いて生じるn価の基であり、より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン又はこれらの芳香環が複数連結された芳香族化合物からn個の水素を除いて生じるn価の基である。上記芳香環が複数連結される場合、それらは同一でも異なっていてもよい。上記芳香環が複数連結された芳香族化合物からn個の水素を除いて生じるn価の基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ビストリアジルベンゼン、ビナフタレン、フェニルピリジン、ジフェニルピリジン、ジフェニルピリミジン、ジフェニルトリアジン、フェニルカルバゾール、ピリジルカルバゾール等から水素を除いて生じる基が挙げられ、結合するL又はカルバゾールの1位との連結位置は限定されず、末端の環であっても中央部の環であっても構わない。上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、置換基を有してもよく、置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又は炭素数6〜24のジアリールアミノ基である。置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10である。好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。また、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が2つ以上の置換基を有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の炭素数の計算において、置換基を有する場合、その置換基の炭素数を含む。
【0036】
ここで、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基は、2価の基の場合、例えば、下記式で表わされる。

(Ar1〜Ar6は芳香環を表す。)
【0037】
一般式(1)において、Lが直接結合の場合、Aは縮環構造ではないn価の芳香族炭化水素基又はn価の芳香族複素環基である。ここで縮環構造ではないとは、複数の芳香環が連結する場合は、一般式(1)中のn個のカルバゾール環の1位と最初に連結する芳香環が縮環構造ではないことを意味し、カルバゾール環と連結しない芳香環が縮環であっても構わないが、Aは単環又は単環が複数連結したn価の基であることが好ましい。
【0038】
一般式(1)において、Lは、直接結合、縮環構造でない2価の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜10の芳香族複素環基を表し、直接結合、5員環又は6員環で構成される2価の芳香族炭化水素基、5員環又は6員環で構成される2価の芳香族複素環基の何れかであることが好ましく、直接結合、フェニレン基、6員環で構成される2価の芳香族複素環基の何れかであることがより好ましい。芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の具体例としては、ピロール、イミダゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジンから2個の水素を除いて生じる2価の基等が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、トリアジンから2個の水素を除いて生じる基であり、より好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジンから2個の水素を除いて生じる2価の基である。上記2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、置換基を有してもよく、置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基又はアセチル基である。
【0039】
一般式(1)において、好ましいAとしては、以下に示す芳香族化合物からn個の水素を除いて形成される。なお、縮環と単環が連結した構造を有する芳香族化合物の場合は、単環からn個の水素を除いて形成される基であることが好ましい。上記芳香族化合物は、置換基を有してもよく、置換基を有する場合、好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基又はアセチル基である。
【0040】

【0041】
一般式(1)で表されるカルバゾール化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】

【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
上記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物は、基板上に、陽極、複数の有機層及び陰極が積層されてなる有機EL素子の少なくとも1つの有機層に含有させることにより、優れた有機電界発光素子を与える。含有させる有機層としては、発光層、正孔輸送層、電子輸送層または正孔阻止層が適する。より好ましくは、燐光発光ドーパントを含有する発光層のホスト材料として含有させることが良い。
【0058】
次に、本発明の有機EL素子について説明する。
【0059】
本発明の有機EL素子は、基板上に積層された陽極と陰極の間に、少なくとも一つの発光層を有する有機層を有し、且つ少なくとも一つの有機層は、上記カルバゾール化合物を含む。有利には、燐光発光ドーパントと共に一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を発光層中に含む。
【0060】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0061】
図1は一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を各々表わす。本発明の有機EL素子では発光層と隣接して励起子阻止層を有してもよく、また、発光層と正孔注入層との間に電子阻止層を有しても良い。励起子阻止層は発光層の陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。本発明の有機EL素子では、基板、陽極、発光層及び陰極を必須の層として有するが、必須の層以外の層に、正孔注入輸送層、電子注入輸送層を有することがよく、更に発光層と電子注入輸送層の間に正孔阻止層を有することがよい。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか又は両者を意味し、電子注入輸送層は、電子注入層と電子輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0062】
なお、図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0063】
−基板−
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機EL素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英などからなるものを用いることができる。
【0064】
−陽極−
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0065】
−陰極−
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0066】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0067】
−発光層−
発光層は燐光発光層であり、燐光発光ドーパントとホスト材料を含む。燐光発光ドーパント材料としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。かかる有機金属錯体は、前記先行技術文献等で公知であり、これらが選択されて使用可能である。
【0068】
好ましい燐光発光ドーパントとしては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、(Bt)2Iracac等の錯体類、(Btp)Ptacac等の錯体類が挙げられる。これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0069】
【0070】
【0071】
前記燐光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲にあることがよい。
【0072】
発光層におけるホスト材料としては、前記一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましい。しかし、該カルバゾール化合物を発光層以外の他の何れかの有機層に使用する場合は、発光層に使用する材料はカルバゾール化合物以外の他のホスト材料であってもよい。また、カルバゾール化合物と他のホスト材料を併用してもよい。更に、公知のホスト材料を複数種類併用して用いてもよい。
【0073】
使用できる公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する化合物であることが好ましい。
【0074】
このような他のホスト材料は、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができる。ホスト材料の具体例としては、特に限定されるものではないが、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8―キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
【0075】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0076】
−正孔阻止層−
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0077】
正孔阻止層には一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、カルバゾール化合物を他の何れかの有機層に使用する場合は、公知の正孔阻止層材料を用いてもよい。また、正孔阻止層材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0078】
−電子阻止層−
電子阻止層とは、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料から成り、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔が再結合する確立を向上させることができる。
【0079】
電子阻止層の材料としては、後述する正孔輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0080】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。
【0081】
励起子阻止層の材料としては、例えば、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)や、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0082】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0083】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。正孔輸送層には一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0084】
−電子輸送層−
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0085】
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。電子輸送層には本発明に係る一般式(1)で表されるカルバゾール化合物を用いることが好ましいが、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0086】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明は勿論、これらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0087】
以下に示すルートにより燐光発光素子用材料となるカルバゾール化合物を合成した。尚、化合物番号は、上記化学式に付した番号に対応する。
【0088】
合成例1
化合物A−1の合成
【0089】
【0090】
窒素雰囲気下、2−ブロモフェニルヒドラジン塩酸塩150.0 g(0.671 mol)、無水フタル酸190.0 g(1.3 mol)、トルエンを4500 ml加え、120 ℃で加熱しながら一晩撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、析出した淡黄色固体をろ取した。得られた淡黄色固体を加熱リスラリーで精製を行い、淡黄色粉末の中間体(1)を181.0 g(0.57 mol、収率71%)を得た。
【0091】
窒素雰囲気下、中間体(1)126.0 g(0.40 mol)、トリフェニルビスムチン350.0 g (0.80 mol)、酢酸銅108.0 g (0.60 mol)、脱水塩化メチレン3000 mlを加え、氷浴中で撹拌した。内温が5℃以上にならないようにトリエチルアミン41.3 ml (0.30 mol)をゆっくり加え、50℃で加熱しながら一晩撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、析出した淡黄色固体をろ取し、得られた淡黄色固体を再結晶で精製を行い、淡黄色粉末の中間体(2)を72.0 g(0.18 mol、収率45%)を得た。
【0092】
窒素雰囲気下、中間体(2)を30.0 g(0.076 mol)、脱水ベンゼンを1500 ml加え、室温で撹拌しながら塩化アルミニウム50.8 g(0.38 mol)を加えた後、室温で3時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液900 mlを撹拌しながら加えた。反応溶液を室温まで冷却した後、蒸留水(1000 ml)とトルエン(1000 ml)を撹拌しながら加えた。有機層を蒸留水(3 × 1000 ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として中間体(3)を8.0 g (0.033 mol、収率43%)を得た。
【0093】
窒素雰囲気下、中間体(3)を21.0 g(0.085 mol)、ヨードベンゼン87.0 g(0.43 mol)、よう化銅(I)65.0 g(0.34 mol)、三リン酸カリウム72.4 g(0.34 mol)。脱水1,4-ジオキサン250 mlを加え、室温で撹拌しながらtarns-1,2-シクロヘキサンジアミン38.9 g(0.34 mol)を加えた後、90 ℃で2 時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、セライトを用いてろ過した後、溶媒を減圧除去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、無色液体として中間体(4)を17.7 g (0.055 mol、収率65%)を得た。
【0094】
窒素雰囲気下、中間体(4)を17.0g(0.053 mol)、脱水テトラヒドロフラン300 mlを加え、-60 ℃で撹拌しながらn-ブチルリチウム41.6 ml(0.069 mol)を加え、-60 ℃で1時間撹拌した。その後、-60 ℃でトリメトキシボラン9.4 ml(0.085 mol)を加え、室温で1時間撹拌した。さらに2 M塩酸50 mlを加え、1時間撹拌した後、蒸留水(200 ml)とトルエン(200 ml)を撹拌しながら加えた。有機層を蒸留水(100 ml×3)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、白色固体として中間体(5)を9.1 g (0.032 mol、収率60%)を得た。
【0095】
窒素雰囲気下、1,3-ジヨードベンゼン4.3 g(0.013 mol)、中間体(5)を9.0 g(0.031 mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.81 g(0.00052 mol)、トルエン30 ml、エタノール6 mlを加え、室温で撹拌しながら、2 M水酸化ナトリウム水溶液20 mlを加えた。90℃で15時間撹拌した後、室温まで冷却し、有機層を蒸留水(100 ml×3)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に、硫酸マグネシウムをろ別し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、晶析、再結晶で精製することで、白色固体として化合物A-1を2.2 g(0.0039 mol、収率30%)を得た。
APCI-TOFMS, m/z 561 [M+H]+1H-NMR測定結果(測定溶媒:THF-d8)を図2に示す。
【0096】
実施例1
膜厚110nmのITO基板からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層させた。まず、ITO上に銅フタロシアニン(CuPc)を20 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層として4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を20 nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、ホスト材料としての化合物A-1とドーパントとしてのトリス(2‐フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)とを異なる蒸着源から、共蒸着し、30 nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)3の濃度は10 wt%であった。次に、正孔阻止層としてBAlqを10 nmの厚さに形成した。次に電子輸送層としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)を40 nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0097】
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、表1に示すような発光特性を有することが確認された。
【0098】
実施例2
発光層のホスト材料として、化合物A-8を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0099】
実施例3
発光層のホスト材料として、化合物A-19を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0100】
実施例4
発光層のホスト材料として、化合物B-31を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0101】
実施例5
発光層のホスト材料として、化合物C-4を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0102】
実施例6
発光層のホスト材料として、化合物D-1を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0103】
実施例7
発光層のホスト材料として、化合物E-3を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0104】
比較例1
実施例2における発光層のホスト材料としてmCPを用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0105】
比較例2
発光層のホスト材料として、化合物H-1を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0106】
【0107】
実施例2〜7及び比較例1〜2で得られた有機EL素子について、実施例1と同様にして評価したところ、表1のような発光特性を有することが確認された。なお、実施例2〜7及び比較例1〜2で得られた有機EL素子の発光スペクトルの極大波長はいずれも540 nmであり、Ir(ppy)3からの発光が得られていると同定された。
表1において、輝度、電圧及び発光効率は、20 mA/cm2での駆動時の値を示す。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例1は比較例1及び比較例2に対して初期特性が向上している。これより、2つ以上のカルバゾール環を1位で連結基を介して連結させた9位に特定の置換基を有するカルバゾール化合物を有する材料を有機EL素子に使用することで、有機EL素子特性が改善することが判る。同様に、実施例2〜7のEL素子特性は良好であり、ここでも一般式(1)で表されるカルバゾール化合物の優位性が示される。
【産業上の利用の可能性】
【0110】
本発明の有機EL素子は、発光特性、駆動寿命ならびに耐久性において、実用上満足できるレベルにあり、フラットパネルディスプレイ(携帯電話表示素子、車載表示素子、OAコンピュータ表示素子やテレビ等)、面発光体としての特徴を生かした光源(照明、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板や標識灯等への応用において、その技術的価値は大きいものである。
図1
図2