(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
減圧可能な処理容器内に第1の電極を設け、前記処理容器内に高周波電界を形成するとともに処理ガスを流し込んで前記処理ガスのプラズマを生成し、前記プラズマの下で被処理基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記第1の電極の内部の主面側に空洞を有し、前記空洞の中に流動性の誘電性物質を出し入れ可能とし、
前記第1の電極の中心部側における前記空洞の厚さをエッジ部側における前記空洞の厚さより大きくし、
前記空洞の中に収容する前記流動性の誘電性物質の種類または量を変えることにより、前記第1の電極の主面において前記空洞全体の誘電率ないし誘電性インピーダンスが可変に制御される、
プラズマ処理装置。
前記第1の箇所は前記空洞の中心部およびエッジ部の一方に設定され、前記第2の箇所は前記空洞の中心部およびエッジ部の他方に設定される、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
前記誘電体の厚さは、前記第1の電極の中心部を含む第1の直径の内側では一定であり、前記第1の直径の外側では前記第1の電極のエッジ部に向かってテーパ状に減少する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
前記処理容器内に前記第1の電極と平行に向かい合う第2の電極を設け、前記第2の電極の前記主面と反対側の裏面から前記プラズマを生成するための高周波電力を供給する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態によるプラズマ処理装置の構成を示す。このプラズマ処理装置は、RIE型のプラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0018】
チャンバ10内には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状の下部電極またはサセプタ12が設けられている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介してチャンバ10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。筒状保持部14の上面には、サセプタ12の上面を環状に囲むたとえば石英からなるフォーカスリング18が配置されている。
【0019】
チャンバ10の側壁と筒状支持部16との間には排気路20が形成され、この排気路20の入口または途中に環状のバッフル板22が取り付けられるとともに底部に排気口24が設けられている。この排気口24に排気管26を介して排気装置28が接続されている。排気装置28は、真空ポンプを有しており、チャンバ10内の処理空間を所定の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0020】
サセプタ12には、プラズマ生成用の高周波電源32が整合器34および給電棒36を介して電気的に接続されている。この高周波電源32は、所定の高周波数たとえば60MHzの高周波電力を下部電極つまりサセプタ12に印加する。なお、チャンバ10の天井部には、後述するシャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。したがって、高周波電源32からの高周波電圧はサセプタ12とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
【0021】
サセプタ12の上面には半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。この静電チャック40は導電膜からなる電極40aを一対の絶縁膜40b,40cの間に挟み込んだものであり、電極40aには直流電源42がスイッチ43を介して電気的に接続されている。直流電源42からの直流電圧により、クーロン力で半導体ウエハWをチャック上に吸着保持することができる。
【0022】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延在する冷媒室44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット46より配管48,50を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック40上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給部52からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン54を介して静電チャック40の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0023】
天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する下面の電極板56と、この電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。電極支持体58の内部にバッファ室60が設けられ、このバッファ室60のガス導入口60aには処理ガス供給部62からのガス供給配管64が接続されている。
【0024】
チャンバ10の周囲には、環状または同心状に延在する磁石66が配置されている。チャンバ10内において、シャワーヘッド38とサセプタ12との間の空間には、高周波電源32により鉛直方向のRF電界が形成される。高周波の放電により、サセプタ12の表面近傍に高密度のプラズマを生成することができる。
【0025】
制御部68は、このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置28、高周波電源32、静電チャック用のスイッチ43、チラーユニット46、伝熱ガス供給部52および処理ガス供給部62等の動作を制御するもので、ホストコンピュータ(図示せず)等とも接続されている。
【0026】
このプラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ30を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック40の上に載置する。そして、処理ガス供給部62よりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置28によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波電源32より所定のパワーで高周波電力をサセプタ12に供給する。また、直流電源42より直流電圧を静電チャック40の電極40aに印加して、半導体ウエハWを静電チャック40上に固定する。シャワーヘッド38より吐出されたエッチングガスは両電極12,38間で高周波の放電によってプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの主面がエッチングされる。
【0027】
このプラズマエッチング装置では、サセプタ(下部電極)12に対して従来(一般に27MHz以下)よりも格段に高い周波数領域(50MHz以上)の高周波を印加することにより、プラズマを好ましい解離状態で高密度化し、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
【0028】
次に、このプラズマエッチング装置における本発明の特徴を詳細に説明する。
【0029】
図2および
図3に、第1の構成例による電極構造の一例としてサセプタ12の要部の構成を示す。
図2は平面図、
図3は部分拡大縦断面図である。図示のように、サセプタ12の主面(この構成例ではサセプタ12の上面、つまりプラズマ生成空間側の面)には、導電体または半導体からなる一定サイズの円柱形凸部70が離散的に多数設けられている。これらの凸部70は、各々がプラズマに高周波電力または高周波電界を与えるための小電極を構成するものであり、好ましくは
図4に示すように電極中心部から電極エッジ部に向って次第に大きくなるような個数密度分布または面積密度分布でサセプタ12の主面上に配置される。
【0030】
図5〜
図9につき、この実施例によるサセプタ12の作用を説明する。
図5に示すように、高周波電源32からの高周波電力がサセプタ12に供給されると、サセプタ(下部電極)12と上部電極38との間の高周波放電によってエッチングガスのプラズマPZが半導体ウエハW付近で生成し、生成したプラズマPZは四方に、特に上方および半径方向外側に拡散し、プラズマPZ中の電子電流ないしイオン電流は上部電極38やチャンバ側壁等を通ってグランドへ流れる。ここで、サセプタ12においては、高周波電源32から給電棒36を介してサセプタ裏面または背面に印加された高周波電力が表皮効果によって電極表面層を伝播し、
図6に示すように、サセプタ12の主面上ではエッジ部から中心部に向って逆放射状に高周波電流iが流れる。
【0031】
図7に示すように、この実施例では、高周波電流iがサセプタ12の主面上で凸部70の表面層を流れる。凸部70は、上部電極38側つまりプラズマPZ側に向って突出しているので、主面の底面部12aよりも低いインピーダンスでプラズマPZと電気的に結合する。このため、サセプタ12の主面の表面層を流れる高周波電流iによって運ばれる高周波電力は主として凸部70の頂面からプラズマPZに向けて放出される。なお、サセプタ12の主面上で凸部70と底面部12aとのインピーダンス比Z
12a/Z
70を大きくするために、つまり凸部70を通してプラズマPZに与える高周波波電力の比率または電力供給率を高めるために、
図3に示すように、凸部70の周り(底面部12aの上)に誘電体72を設ける構成が好ましい。
【0032】
このように、この構成例では、サセプタ12の主面上で離散的に設けられた多数の凸部70がそれぞれプラズマPZに高周波電力を供給するための小電極として機能する。かかる凸部70の属性(形状、サイズ、間隔、密度等)を選択することで、小電極の集合体であるサセプタ12の高周波電力供給特性を所望の特性に設定することができる。
【0033】
たとえば、上記(
図4)のように凸部70の個数密度を電極中心部から電極エッジ部に向って次第に大きくなるような分布特性とすることで、
図9に示すように、サセプタ12よりプラズマPZに与えられる高周波電力または高周波電界の均一性(特に電極半径方向の均一性)を改善することができる。
図9の例では、サセプタ12の半径を150mmとし、電極中心部における凸部70の個数密度Ncと電極エッジ部における凸部70の個数密度Neとの比率Ne/Ncを1(倍)、2(倍)、4(倍)、6(倍)、8(倍)に選んだときのサセプタ12上の半径方向の電界強度分布を示している。比率Ne/Ncを大きくするほど、電界強度の均一性が改善され、ひいてはプラズマ密度の均一性が改善されることがわかる。
【0034】
凸部70の他の属性の中で特に重要なのはサイズである。凸部70の高さが小さすぎると、より正確にはスキンデップス(skin depth)δよりも小さいと、サセプタ12の主面上で高周波電流iの一部または大部分が凸部70の下を素通りすることになり、そのぶん凸部70からプラズマPZへ供給される高周波電界が弱まる。ここで、スキンデップスδは、導体の表面層を流れる高周波電流の振幅が深さδで1/eに減衰するというファクタであり、下記の式(1)で与えられる。
δ=(2/ωσμ)
1/2 ‥‥‥‥(1)
ただし、ω=2πf(f:周波数)、σ:導電率、μ:透磁率
【0035】
図8に示すように、表皮効果によって導体の表面層を流れる電磁波(高周波電流)の振幅は導体の深さ方向で減衰し、スキンデップスδの3倍の深さでは約5%までに減衰する。したがって、凸部70の高さをスキンデップスδの3倍以上の高さに設定することで、高周波電流iの大部分(約95%以上)を凸部70に流し込んで、凸部70からプラズマPZへ高周波電力を効率よく放出させることができる。たとえば、サセプタ12および凸部70の材質をアルミニウムとし、高周波電源32の周波数を100MHzとした場合、スキンデップスδは8μmである。したがって、凸部70の高さを24μm以上に設定すればよい。
【0036】
また、凸部70の幅サイズ、特に電極半径方向の幅サイズも重要であり、凸部70の頂面まで高周波電流iを十分に流し込むには電極半径方向の幅サイズが大きいほどよく、スキンデップスδの3倍以上、好ましくは周波数100MHzで30μm〜500μmの範囲内に設定されてよい。
【0037】
また、凸部70間の距離間隔も、凸部70と底面部12aとのインピーダンス比Z
12a/Z
70を最適化するような値に選ばれてよく、たとえば100MHzでは100μm〜1mmの範囲内に設定されるのが好ましい。
【0038】
図10に、このプラズマエッチング装置においてサセプタ12の上に静電チャック40を一体に設ける構成例を示す。図示のように、サセプタ12の主面上に、より正確には凸部70および誘電体72の上に静電チャック40の下部絶縁膜40bが形成され、下部絶縁膜40bの上に電極膜40aが形成され、電極膜40aの上に上部絶縁膜40cが形成される。
【0039】
この積層構造では、静電チャック40の下部絶縁膜40bの膜厚D1が重要であり、他の条件が許す限りでこの膜厚D1を相対的に小さくするのが好ましい。すなわち、凸部70の頂面から電極膜40aまでの距離(D1)とサセプタ底面部12aから電極膜40aまでの距離(D2)との比率D2/D1(
図11の縦軸のパラメータ)を大きくするほど、
図11に示すように、サセプタ12の主面上における凸部70のインピーダンスZ
70と底面部12aのインピーダンスZ
12aとの比率Z
12a/Z
70(
図11の関数値)を大きくすることができる。
図11から、この比率D2/D1は2(倍)以上の値に選ばれるのが好ましい。
【0040】
図11において、横軸のパラメータS
12a/S
70はサセプタ12の主面上における凸部70(正確には凸部頂面)の総面積S
70と底面部12aの総面積S
12aとの比率である。この比率S
12a/S
70を小さくする手法によっても、つまり凸部70の占有面積率を高めることによっても、インピーダンス比Z
12a/Z
70(
図11の関数値)を大きくすることができる。上記のように、インピーダンス比Z
12a/Z
70を大きくするほど、プラズマPZに対する凸部70からの高周波電力供給率を高めることができる。
図11から、比率S
12a/S
70は4(倍)以下に選ばれるのが好ましい。
【0041】
図12に、この静電チャック付きサセプタ構造(
図10)の製造方法を工程順に示す。
【0042】
先ず、
図12(a)に示すように、たとえばアルミニウムからなるサセプタ本体(電極基板)12の主面上に、凸部70に対応する開口部74aを有するたとえば樹脂製のマスク74を被せる。このマスク74において、開口部74aの平面形状および平面サイズは凸部70の平面形状および平面サイズを規定し、開口部74aの深さは凸部70の高さサイズ(D2−D1:たとえば150μm)を規定する。
【0043】
次に、
図12(b)に示すように、マスク74の上からサセプタ本体12の主面全体に凸部70の材料たとえばアルミニウム(Al)を溶射し、マスク74の開口部74a内にアルミニウムをマスク上面の高さまで充填する。
【0044】
次に、サセプタ本体12の主面上からマスク74をたとえば薬液で溶かして除去すると、
図12(c)に示すようにサセプタ本体12の主面上に所定サイズの多数の凸部70が所定の分布パターンで離散的に残る。
【0045】
次に、
図12(d)に示すように、サセプタ本体12の主面全体に誘電体材料たとえばアルミナ(Al
2O
3)を溶射して、凸部70の頂面よりも所定の高さ(D1:たとえば50μm)に達する膜厚に誘電体膜(72,40b)を形成する。
【0046】
次いで、
図12(e)に示すように、サセプタ本体12の主面全体にわたって誘電体膜40bの上に静電チャック40の電極膜40aの材料たとえばタングステン(W)を溶射して、所定膜厚(D3:たとえば50μm)の電極膜40aを形成する。
【0047】
次いで、
図12(f)に示すように、サセプタ本体12の主面全体にわたって電極膜40aの上に誘電体材料たとえばアルミナを溶射して、静電チャック40の上部絶縁膜40cを所定の膜厚(D4:たとえば200μm)に形成する。
【0048】
この構成例では、サセプタ本体12の主面上で凸部70の周りを埋める(底面部12aを覆う)ための誘電体72と静電チャック40の一部を構成する下部絶縁膜40bとを1回の溶射工程で同時に一体形成することができる。
【0049】
上記構成例のサセプタ12は主面上に円柱形の凸部70を設けるものであったが、任意の形状を凸部70に与えることが可能であり、たとえば
図13に示すように多数の環状凸部70を同心円状に設ける構成も可能である。すなわち、
図13のサセプタ構造でも、高周波電流が電極エッジ部から中心部に向って流れる際に、底面部12aよりもインピーダンスの低い凸部70から高周波電力が効率よくプラズマPZ側に放出される。したがって、凸部70の面積密度が電極中心部から電極エッジ部に向って次第に大きくなるような分布特性とすることで、電極半径方向における電界強度の均一性を改善し、ひいてはプラズマ密度の均一化を達成することができる。
【0050】
上記のように電極の主面に小電極として機能する多数の凸部70を離散的に設ける構成は、
図14に示すように、対向電極つまり上部電極38に適用することも可能である。
図14の構成例では、シャワーヘッド38の電極板56の主面(下面、つまりプラズマ生成空間側の面)に凸部70を設け、凸部70の周り(底面部56bの上)に誘電体72を設けている。ガス通気孔56aは、凸部70を垂直方向に貫通して設けられてよい。かかる構成によれば、上部電極38はプラズマPZからの高周波電流を主として凸部70を通じて受け取る。したがって、上部電極38においても凸部70の属性を適宜選択することで、たとえば凸部70の面積密度を電極中心部から電極エッジ部に向って次第に大きくなるような分布特性とすることで、プラズマ密度の均一性を一層向上させることができる。
【0051】
図15および
図16に、第2の構成例による電極構造の一例としてサセプタ12の要部の構成を示す。
図15は平面図、
図16は部分拡大縦断面図である。図示のように、この構成例では、サセプタ12の主面に一定サイズの円柱形凹部80が離散的に多数設けられる。これらの凹部80は、対向電極側つまりプラズマPZ側と向い合って凹んでいるので、主面の頂面部12aよりも高いインピーダンスでプラズマPZと電気的に結合する。このため、サセプタ12の主面の表面層を流れる高周波電流iによって運ばれる高周波電力は主として頂面部12aからプラズマPZに向けて放出される。サセプタ12の主面上で凹部80と頂面部12aとのインピーダンス比Z
80/Z
12aを大きくするために、つまり頂面部12aよりプラズマPZに与える高周波波電力の比率を高めるために、
図16に示すように、好ましくは凹部80の中に誘電体82を設けてよい。
【0052】
このように、この第2の構成例では、サセプタ12の主面上で離散的に設けられた多数の凹部80がそれぞれプラズマPZに対する高周波電力の供給を抑制する電極マスク部として機能する。かかる凹部80の属性(形状、サイズ、間隔、密度等)を適宜選択することで、サセプタ12における高周波電力供給特性を所望の特性に制御することができる。たとえば、
図17に示すように凹部80の個数密度を電極中心部から電極エッジ部に向って次第に小さくなるような分布特性とすることで、サセプタ12よりプラズマPZに与えられる高周波電力または高周波電界の均一性(特に半径方向の均一性)を改善し、ひいてはプラズマ密度の均一性を改善することができる。凹部80の他の属性も基本的には上記実施例における凸部70と同様に扱ってよく、たとえば凹部80の深さサイズおよび幅サイズをスキンデップスδの3倍以上の値に設定してよい。
【0053】
図18に、この構成例のサセプタ12に静電チャックを一体に設ける構造の製造方法を工程順に示す。
【0054】
先ず、
図18(a)に示すように、たとえばアルミニウムからなるサセプタ本体(電極基板)12の主面上に、凹部80に対応する開口部84aを有するたとえば樹脂製のマスク84を被せる。このマスク84において、開口部84aの平面形状および平面サイズは凹部80の平面形状および平面サイズを規定する。
【0055】
次に、
図18(b)に示すように、マスク84の上からサセプタ本体12の主面全体にブラスト法により固体粒子(たとえばドライアイスペレット)または流体(高圧ジェット水)を吹きつけて、マスク84の開口部84a内の部材(アルミニウム)を物理的に除去し、そこに所望の深さの凹部80を形成する。
【0056】
次に、サセプタ本体12の主面上からマスク84を除去すると、
図18(c)に示すように、サセプタ本体12の主面上に所定サイズの多数の凹部80が所定の分布パターンで離散的に残る。
【0057】
次に、
図18(d)に示すように、サセプタ本体12の主面全体に誘電体材料たとえばアルミナ(Al
2O
3)を溶射して、サセプタ頂面部12aより所定の高さに達する膜厚に誘電体膜(82,40b)を形成する。
【0058】
次いで、
図18(e)に示すように、サセプタ本体12の主面全体にわたって誘電体膜40bの上に静電チャック用の電極材料たとえばタングステン(W)を溶射して、所定膜厚の電極膜40aを形成する。
【0059】
次いで、
図18(f)に示すように、サセプタ本体12の主面全体にわたって電極膜40aの上に誘電体材料たとえばアルミナを溶射して、上部絶縁膜40cを所定の膜厚に形成する。
【0060】
この第2の構成例でも、サセプタ本体12の主面上で凹部80を埋めるための誘電体82と静電チャック40の一部を構成する下部絶縁膜40bとを1回の溶射工程で同時に一体形成することができる。
【0061】
また、この第2の構成例でも、電極の主面上で電極マスク部として機能する多数の凹部80を離散的に設ける構成を、図示省略するが、対向電極つまり上部電極38に適用することも可能である。したがって、サセプタ12側に凸部70を設け、上部電極38側に凹部80を設ける構成や、サセプタ12側に凹部80を設け、上部電極38側に凸部70を設ける構成等も可能である。
【0062】
図19および
図20に、本発明の一実施形態における電極の一構成例を示す。
図19はサセプタ12に適用した構成例を示し、
図20は上部電極38(正確には電極板56)に適用した構成例を示す。この実施形態では、電極の主面つまりプラズマ生成空間側の面(上部電極38の場合は下面、サセプタ12の場合は上面)に誘電体膜または誘電体層90を設け、電極中心部における誘電体膜90の膜厚を電極エッジ部における誘電体膜90の膜厚よりも大きくなるように構成する。誘電体膜90のおもて面(プラズマ生成空間側の面)は略面一になっている。この誘電体膜または誘電体層90は、たとえばアルミナ(Al
2O
3)からなるセラミックをたとえばアルミニウムからなる電極基板に溶射することによって形成されてよい。
【0063】
かかる電極構造によれば、プラズマPZ側に対して相対的に電極中心部側のインピーダンスが大きく電極エッジ部側のインピーダンスが低いため、電極エッジ部側における高周波電界が強められる一方で電極中心部側の高周波電界が弱められ、電界強度ないしプラズマ密度の均一性が改善される。特に、
図19の構成例においては、電極12の裏面側から表皮効果で主面側へ回った電流は誘電体膜90に流れ込むと膜厚の小さい部分(誘電体層の薄い部分)からプラズマ側へ抜けやすいため、電極エッジ部側における高周波電力の放出とプラズマ密度を強めることができる。
【0064】
誘電体膜90の膜厚分布特性の中で重要なパラメータの1つは電極中心部の膜厚である。
図21に示すように上部電極38に円盤状の誘電体膜90を設ける平行平板電極構造において、上部電極中心部の膜厚D
cをパラメータにして電極間の径方向の電界強度分布をシミュレーションで求めたところ、
図22に示すような電界強度分布特性が得られた。このシミュレーションは、被処理基板として300mm口径の半導体ウエハを想定しており、上部電極38にはアルミニウム、誘電体膜90にはアルミナ(Al
2O
3)、下部電極12にはアルミニウムをそれぞれ用いている。
図22から、0.5mm〜10mmの範囲内では、電極中心部の膜厚が大きいほど電界強度の面内均一性が向上し、8mm〜10mmの膜厚が特に好ましいことがわかる。なお、
図22の横軸上で「0」の位置は電極中心点の位置を表す。
【0065】
また、誘電体膜90の膜厚が電極中心部から電極エッジ部にかけて減少変化するプロファイルも重要である。
図23および
図24に、上部電極38の誘電体膜90に関する膜厚プロファイルの実施例を示す。
【0066】
図23(A)に示す実施例[1]は、誘電体膜90の膜厚Dにつき、φ(直径)0〜30mmでD=9mm(フラットつまり一定)、φ30〜160mmでD=8mm(フラット)、φ160〜254mmでD=8〜3mm(テーパ)に設定する。
【0067】
図23(B)に示す実施例[2]は、φ0〜30mmでD=9mm(フラット)、φ30〜80mmでD=8mm(フラット)、φ80〜160mmでD=8〜3mm(テーパ)に設定する。
【0068】
図23(C)に示す実施例[3]は、φ0〜30mmでD=9mm(フラット)、φ30〜160mmでD=8mm(フラット)、φ160〜330mmでD=8〜3mm(テーパ)に設定する。
【0069】
図23(D)に、上記実施例[1],[2],[3]のプロファイルを曲線で簡明に示す。併せて、断面形状を図示省略するが、φ0〜150mmでD=0.5mm(フラット)に設定する実施例[4]のプロファイルも示し、さらには理想的なプロファイルも示す。ここで、理想的なプロファイルは、φ0〜300mmでD=9〜0mm(アーチ型)に設定するものである。
【0070】
図24に、実施例[1],[2],[3],[4]および理想プロファイルによってそれぞれ得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を示す。
図24から、理想プロファイルによる電界強度分布特性が面内均一性に最も優れており、実施例[1],[2],[3],[4]の中では理想プロファイルに近い実施例[1]および[3]の面内均一性が優れていることがわかる。
【0071】
なお、
図23の(A),(B),(C)に示すように、上部電極38(電極板56)においては、拡散したプラズマPZからの高周波電流を受けるため、被処理基板の口径よりも直径を大きくしてエッジ部を半径方向外側に延長してよい。ここで、上部電極38の主面において誘電体膜90の周囲または径方向外側の部分にたとえば20μmの膜厚の溶射被膜92を形成してもよい。図示省略するが、チャンバ10の内壁面にも同様の溶射被膜92を形成することができる。溶射被膜92としては、たとえばAl
2O
3、Y
2O
3などを用いることができる。また、誘電体膜90および溶射被膜92のそれぞれのおもて面つまりプラズマに曝される面は略面一になっている。
【0072】
図25および
図26に、誘電体膜90に関する膜厚プロファイルの別の実施例を示す。
図25(A)に示す実施例[5]は、誘電体膜90の膜厚Dにつき、φ0〜250mmでD=5mm(フラット)に設定する。
図25(B)の実施例[6]は、φ0〜30mmでD=9mm(フラット)、φ30〜250mmでD=8〜3mm(テーパ)に設定する。
図25(C)の実施例[7]は、φ0〜30mmでD=9mm(フラット)、φ30〜250mmでD=5〜3mm(テーパ)に設定する。
図23(D)に実施例[5],[6],[7]のプロファイルを曲線で簡明に示す。
【0073】
図26に、実施例[5],[6],[7]によってそれぞれ得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を示す。
図26から、これらの実施例[5],[6],[7]の中では理想プロファイルに最も近い実施例[6]が面内均一性において最も優れていることと、実施例[5]も十分実用性があることがわかる。つまり、実施例[6]のように電極中心部から電極エッジ部にかけて誘電体膜90の膜厚Dがほぼ直線的またはテーパ状に減少するようなプロファイルでも、アーチ型の理想的プロファイルに近い面内均一性が得られる。また、実施例[5]のように電極中心部から電極エッジ部にかけて誘電体膜90の膜厚Dがほぼ一定(フラット)なプロファイルでも、実用性のある面内均一性が得られる。
【0074】
図27および
図28に、誘電体膜90に関する膜厚および膜質プロファイルの別の実施例を示す。
図27(A)に示す実施例[8]は、誘電体膜90の膜厚Dにつき、φ0〜30mmでD=9mm(フラット)、φ30〜250mmでD=8〜3mm(テーパ)に設定する。
図27(B)の実施例[9]は、φ0〜30mmでD=5mm(フラット)、φ30〜250mmでD=5〜3mm(テーパ)に設定する。
図27(C)に実施例[8],[9]のプロファイルを曲線で簡明に示す。
【0075】
ここで、誘電率εをパラメータとして、実施例[8]は、誘電体膜90の材質が誘電率ε=8.5のアルミナ(Al
2O
3)である実施例[8]−Aと、ε=3.5の酸化シリコン(SiO
2)である実施例[8]−Bとに分けられる。また、実施例[9]も、ε=8.5のアルミナ(Al
2O
3)である実施例[9]−Aと、ε=3.5の酸化シリコン(SiO
2)である実施例[9]−Bとに分けられる。
【0076】
図28に、実施例[8]−A,[8]−B,[9]−A,[9]−Bによってそれぞれ得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を示す。
図28から、ε=8.5の実施例[8]−A,[9]−Aの間では電極中心部の膜厚D
cの大きい[8]−Aの方が[9]−Aよりも電界強度Eの面内均一性に優れており、ε=3.5の実施例[8]−B,[9]−Bの間では電極中心部の膜厚D
cの小さい[9]−Bの方が[8]−Bよりも電界強度Eの面内均一性に優れていることがわかる。
【0077】
図29のグラフは、
図28のデータに基づいて、実用上十分な面内均一性を与える誘電体膜90の誘電率εと中心部の膜厚D
cとの相関関係を示す。このグラフから、誘電体膜90の誘電率εに対応させて中心部の膜厚D
cを設定すればよいことがわかる。
【0078】
図30に、実施形態のプラズマエッチング装置(
図1)を用いる有機膜エッチングのエッチング速度分布特性(X方向,Y方向)について、上部電極38に本発明による誘電体膜90を設ける実施例(A)と、上部電極38に本発明による誘電体膜90を設けない比較例(B)とを対比して示す。なお、実施例(A)は上記実施例[1]に相当するものである。主なエッチング条件は、下記のとおりである。
ウエハ口径:300mm
エッチングガス:NH
3
ガス流量:245sccm
ガス圧力:30mTorr
RF電力:下部=2.4kW
ウエハ裏面圧力(センター部/エッジ部):20/30Torr(Heガス)
温度(チャンバ側壁/上部電極/下部電極)=60/60/20゜C
【0079】
図30から明らかなように、電界強度分布特性と呼応するようにエッチング速度の面内均一性においても実施例(A)の方が比較例(B)よりも格段に優れている。
【0080】
図31に、本発明による誘電体膜90をサセプタ(下部電極)12に設ける実施例(A)を比較例(B)と対比して示す。たとえば口径300mmの半導体ウエハWに対応させる場合、実施例(A)ではサセプタ12における誘電体膜90の膜厚Dを電極中心部で4mm、電極エッジ部で200μmとしており、比較例(B)ではサセプタ12の上面に一様な膜厚0.5mmの誘電体膜94を設けている。誘電体膜90,94の材質はいずれもアルミナ(Al
2O
3)でよい。
【0081】
図32に、実施形態のプラズマエッチング装置(
図1)を用いる有機膜エッチングのエッチング速度分布特性(X方向,Y方向)について、
図31(A)の実施例(A)と
図31(B)の比較例(B)とを対比して示す。エッチング条件は
図30のものと同じである。サセプタ(下部電極)12の場合も、実施例(A)の方が比較例(B)よりも格段にエッチング速度の面内均一性が優れていることがわかる。また、エッチング速度自体においても、実施例(A)の方が比較例(B)よりも約10%大きいことがわかる。なお、実施例(A)では電極中心部における誘電体膜90の膜厚Dを4mmに設定したが、9mm程度まで大きくしても同様の効果が得られる。
【0082】
図33および
図34につき、本発明の更なる実施例を説明する。この実施例は、特に誘電体膜90を上部電極38に設ける構成に適用して好適である。
図33(A)、(B)に示すように、この実施例では、上部電極38の主面上に誘電体膜90の一部(通常はエッジ部周辺)を覆う導電性のシールド板100を設ける。このシールド板100は、たとえば表面をアルマイト処理(92)されたアルミニウム板からなり、ネジ102で上部電極38に着脱可能つまり交換可能に取り付けられるのが好ましい。シールド板100の中心部には、誘電体膜90と同軸で誘電体膜90の少なくとも中心部を露出させる所望の口径θの開口部100aが形成されている。シールド板100の板厚は、たとえば5mm程度に選定されてよい。
【0083】
具体例として、
図33(A)に示す実施例(A)ではθ=200mm、
図33(B)に示す実施例(B)ではθ=150mmに設定する。両実施例(A),(B)のいずれも、誘電体膜90を直径250mmの円盤型に形成し、その膜厚プロファイルを、φ0〜160mmでD=8mm(フラット)、φ160〜250mmでD=8〜3mm(テーパ)に設定している。
【0084】
図34に
図33の実施例(A),(B)によってそれぞれ得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を示す。
図34から、誘電体膜90の一部を導電性のシールド板100で覆うことにより、その覆った領域における誘電体膜90の作用つまり電界強度低減効果を著しく低減またはキャンセルできることがわかる。したがって、シールド板100の開口部100aの口径θを変えることによって(シールド板100の部品交換により)、両電極12,38間の電界強度分布特性を調整することができる。
【0085】
図35〜
図38に、本発明の更なる実施例を示す。この実施例も、特に誘電体膜90を上部電極38に設ける構成に適用して好適である。
図35(A)に示すように、この実施例では、上部電極38の主面上で、誘電体膜90よりも大きな径方向位置(口径ωの位置)から外側の電極部分38fを、誘電体膜90における電極間ギャップG
0よりも電極部分38fにおける電極間ギャップG
fが小さくなるように、サセプタ12側あるいはプラズマ生成空間側に向かって所望の突出量(張出量)hだけ張り出させる。
【0086】
具体例として、
図35(A)に示す実施例(A)では、誘電体膜90の直径が80mm、膜厚プロファイルがφ0〜60mmでD=3mm(フラット)、φ60〜80mmでD=3〜1mm(テーパ)である構成において、ω=260mmに設定し、誘電体膜90における電極間ギャップG
oがG
o=40mmに対して、h=10mmに設定し、外側電極張出部38fにおける電極間ギャップG
fをG
f=30mmにしている。なお、外側電極張出部38fの張出段部を約60゜に傾斜させている。この傾斜角は任意の大きさに選べる。
【0087】
図35(B)には、比較例として、上部電極38に張出部38fを設けずに実施例(A)と同じ径サイズおよび同じ膜厚プロファイルの誘電体膜90を設ける構成を示す。また、
図35(C)には、参考例として、上部電極38に張出部38fおよび誘電体膜90のいずれも設けない構成を示す。
図35(B),(C)のいずれも電極間ギャップは径方向で一定であり、G
o=40mmである。
【0088】
図36に、
図35の実施例(A)で得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を上記比較例(B)および参考例(C)と対比して示す。
図36から、実施例(A)のように、誘電体膜90の径方向外側に張出部38fを設けることにより、半導体ウエハWのエッジ部付近の領域(図示の例では、中心から半径約90mm〜150mmの領域)で電界強度Eを高める方向に電界強度分布特性を制御または調整することができる。この張出部38fによる電界強度分布制御の加減量は、張出量hで調整可能であり、好ましくはh=10mm以上としてよい。
【0089】
また、
図37に示すように、外側電極張出部38fの張出段部の位置(口径ωの値)を任意に選定することができる。具体的には、
図37(A)の実施例ではω=350mmに設定し、
図37(B)の実施例ではω=400mmに設定している。また、両実施例(A)、(B)のいずれも、誘電体膜90の膜厚プロファイルがφ0〜80mmでD=8mm(フラット)、φ80〜160mmでD=8〜3mm(テーパ)であり、誘電体膜90における電極間ギャップG
oがG
o=30mmに対して張出量h=10mmに設定し、外側電極張出部38fにおける電極間ギャップG
fをG
f=20mmにしている。また、外側電極張出部38fの張出段部を約60゜に傾斜させている。
【0090】
図37(C)には、参考例として、上部電極38に張出部38fを設けずに実施例(A),(B)と同じ径サイズおよび同じ膜厚プロファイルの誘電体膜90を設ける構成を示す。電極間ギャップは径方向で一定であり、G
o=30mmである。
【0091】
図38に、
図37の実施例(A),(B)でそれぞれ得られる酸化膜エッチングのエッチング速度(規格化値)分布特性を上記参考例(C)と対比して示す。主なエッチング条件として、ウエハ口径は300mmで、圧力は15mTorr、処理ガスにC
4F
6/Ar/O
2/COを使用した。
図38から、上部電極38の主面上で外側電極張出部38fの張出段部を半導体ウエハWのエッジよりも径方向外側に設ける構成では、張出段部位置をウエハエッジに近づけるほど(ωを小さくするほど)ウエハエッジ付近の領域(図示の例では中心から半径約70mm〜150mmの領域)でエッチング速度(つまり電界強度またはプラズマ電子密度)を増大させる効果が大になることがわかる。
【0092】
図35〜
図38の実施例では、上記のように、上部電極38の主面上で誘電体膜90より径方向外側の電極部分をプラズマ生成空間に向かって張り出させる構成とした。反対に、
図39(A)に示すように、上部電極38の主面上で誘電体膜90をプラズマ生成空間に向かって所望の突出量(張出量)kだけ張り出させる構成も可能である。具体例として、
図39(A)の実施例では、誘電体膜90の直径が250mmでその膜厚プロファイルがφ0〜160mmでD=8mm(フラット)、φ160〜250mmでD=8〜3mm(テーパ)である構成において、テーパ面90aをサセプタ12側に向けてk=5mmに設定し、誘電体膜90における電極間ギャップG
mをG
m=35mmとしている。誘電体膜90よりも径方向外側の電極部分はフラット面で、電極間ギャップG
oはG
o=40mmである。
【0093】
図39(B)には、比較例として、上部電極38に実施例(A)と同じ膜厚プロファイルの誘電体膜90を張り出させずに逆さの向きで(テーパ90aを裏側に向けて)設けた構成を示す。また、
図39(C)には、参考例として、上部電極38に誘電体膜90を設けない構成を示す。
図39(B),(C)のいずれも電極間ギャップは径方向で一定であり、G
o=40mmである。
【0094】
図40に、
図39の実施例(A)で得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を上記参考例(B)および比較例(C)と対比して示す。
図40から、実施例(A)のように、誘電体膜90を張り出させることにより、そうしない場合(B)に比べて径方向の各位置で電界強度Eを強める方向に電界強度分布特性を制御または調整することができる。この張出部38による電界強度分布制御の加減量は、張出量kで調整可能であり、好ましくはk=5mm以上としてよい。
【0095】
図41に、上部電極38の主面上で誘電体膜90の径方向外側に張出部38fを設ける構成の一変形例を示す。図示のように、誘電体膜90のエッジ部を外側電極張出部38fに連続させたり、誘電体膜90のエッジ部も外側電極張出部38fと一緒に張り出させたりする構成も可能である。
【0096】
図42〜
図45に、本発明の更に別の実施例を示す。この実施例では、
図42に示すように、上部電極38の主面に設ける誘電体膜90を内部に空洞104を有する中空の誘電体たとえば中空セラミックスで構成する。この実施例でも、中空誘電体90において径方向中心部側の厚さをエッジ部側の厚さよりも大きくするプロファイルが好ましい。
【0097】
この中空誘電体90の空洞104の中には、流動性の誘電性物質NZが所望の量だけ入れられる。空洞104内の誘電性流動体NZは、その占有体積に応じて誘電体90の一部を形成する。このような誘電性流動体NZとしては、紛体等も可能であるが、特に有機溶剤(たとえばガルデン)が好ましい。空洞104に誘電性流動体NZを出し入れするためのポートとして、たとえば複数本のパイプ106,108を電極38の裏面側から空洞104の異なる箇所(たとえば中心部とエッジ部)に接続してよい。中空誘電体90の空洞104に誘電性流動体NZを入れるときは、
図42(B)に示すように、一方のパイプ106から誘電性流動体NZを導入しながら、他方のパイプ106から空洞104内のエアーを抜く。空洞104内の誘電性流動体NZの量を減らすときは、
図42(C)に示すように、一方のパイプ106からエアーを送り込みながら、他方のパイプ106から空洞104内の誘電性流動体NZを抜けばよい。
【0098】
図43に、この実施例における一具体例を示す。中空誘電体90全体は直径210mmの円盤に形成され、厚みはφ0〜60mmでD=6mm(フラット)、φ60〜210mmでD=6〜3mm(テーパ)である。中空誘電体90の空洞104は、厚みαが2mmで、直径βが180mmである。
【0099】
図44に、
図43の具体例で得られる電極間の径方向の電界強度分布特性を示す。図中、ε=1の分布特性Aは、
図42(A)の状態つまり中空誘電体90の空洞104を完全に空にして空気で満たした状態で得られるものである。また、ε=2.5の分布特性Bは、
図42(C)の状態つまり中空誘電体90の空洞104にガルデンを満杯に充填した状態で得られるものである。空洞104に入れるガルデンの量を調整することで、両特性A,B間の任意の特性が得られる。
【0100】
このように、この実施例では、中空誘電体90の空洞104に入れる流動性の誘電性物質NZの種類および量を変えることで、誘電体90全体の誘電率ないし誘電性インピーダンスを可変制御することができる。
【0101】
図45に、この実施例における種々の変形例を示す。
図45(A)の変形例は、誘電体90のおもて面をセラミックス板91で形成し、内側の空洞104においてセラミックス板91と対向する壁面を上部電極38の母材(アルミニウム)で形成する。つまり、上部電極38の主面に誘電体90の形状に応じた凹部38cを形成し、この凹部38cをセラミックス板91で蓋をする構成である。セラミックス板91の外周を封止するために、たとえばOリング等のシール部材110を設けるのが好ましい。この場合には、凹部38cまたは空洞104の形状が重要であり、やはり中心部側の厚みをエッジ部側の厚みよりも大きくする形状が好ましい。
【0102】
図45(B),(C)の構成例は、中空誘電体90内で誘電性流動体NZに割り当てるスペースまたは空洞104を特定の領域に限定または局所化するものである。たとえば、
図45(B)に示すように誘電体90の中心部領域に空洞104のスペースを局在化する構成や、
図45(C)に示すようにセラミックス板91の厚みを径方向で変化させて(中心部からエッジ部に向かって次第に小さくして)空洞104のスペースを相対的に誘電体90の周辺部領域に局在化する構成等が可能である。このように、中空誘電体90において空洞104のスペースを所望の領域ないし形状に規定することで、誘電性流動体NZによる誘電率調整機能に種々のバリエーションをもたせることができる。
【0103】
図45(D)の構成例は、中空誘電体90内の空洞104を複数の室に分割して各室毎に誘電性流動体NZの出し入れや充填量を独立に制御するようにしたものである。たとえば、図示のように、セラミックス板91に一体に形成した環状の隔壁板91aによって空洞104を中心部側の室104Aと周辺部側の室104Bとに2分割することができる。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態および上記構成例におけるそれぞれの電極構造を組み合わせることも可能である。たとえば、上記実施形態による誘電体90を有する電極構造と上記第1の構成例による凸部70を有する電極構造または第2の構成例による凹部80を有する電極構造とを組み合わせることも可能である。つまり、上記実施形態による電極構造をたとえば
図19のようにサセプタ12に適用して上部電極38には上記第1の構成例による電極構造(
図2、
図3)または上記第2の構成例による電極構造(
図15、
図16)を適用するアプリケーションや、上記実施形態による電極構造を
図20のように上部電極38に適用してサセプタ12には上記第1の構成例による電極構造(
図2,
図3)または上記第2の構成例による電極構造(
図15、
図16)を適用するアプリケーション等も可能である。もちろん、上記実施形態または上記第1または第2の構成例による電極構造を上部電極および下部電極の双方に適用するアプリケーションや、上記実施形態または上記第1または第2の構成例による電極構造を上部電極もしくは下部電極だけに適用し、他方の電極に従来一般の電極を用いるアプリケーション等も可能である。
【0105】
また、上記実施形態におけるプラズマエッチング装置(
図1)は、プラズマ生成用の1つの高周波電力をサセプタ12に印加する方式であった。しかし、図示省略するが、本発明は上部電極38側にプラズマ生成用の高周波電力を印加する方式や、上部電極38とサセプタ12とに周波数の異なる第1および第2の高周波電力をそれぞれ印加する方式(上下高周波印加タイプ)や、サセプタ12に周波数の異なる第1および第2の高周波電力を重畳して印加する方式(下部2周波重畳印加タイプ)などにも適用可能であり、広義には減圧可能な処理容器内に少なくとも1つの電極を有するプラズマ処理装置に適用可能である。さらに、本発明は、プラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマ処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。