(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記研磨ヘッドは、前記研磨具を前記基板の周縁部に押圧する押圧パッドをさらに備え、前記押圧パッドは前記第1の突起部および前記第2の突起部の間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
前記研磨ヘッドは、前記研磨具を前記基板の周縁部に押圧する押圧パッドをさらに備え、前記押圧パッドは前記突起部に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
前記研磨ヘッドは、前記突起部を挟むように配置された、前記研磨具の研磨面を支持する2つのガイドローラと、前記2つのガイドローラおよび前記突起部に連結された駆動機構とを備え、
前記駆動機構は、前記2つのガイドローラおよび前記突起部を前記基板の周縁部に向かって一体に移動させることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における歩留まり向上の観点から、基板の周縁部の表面状態の管理が近年注目されている。半導体製造工程では、多くの材料がシリコンウェハ上に成膜され、積層されていくため、製品に使用されない周縁部には不要な膜や表面荒れが形成される。近年では、基板の周縁部のみをアームで保持して基板を搬送する方法が一般的になってきている。このような背景のもとでは、周縁部に残存した不要な膜が種々の工程を経ていく間に剥離してデバイスに付着し、歩留まりを低下させてしまう。そこで、研磨装置を用いて、基板の周縁部を研磨して不要な膜や表面荒れを除去することが従来から行われている。
【0003】
このような研磨装置として、研磨テープを用いて基板の周縁部を研磨する装置が知られている。この種の研磨装置は、研磨テープの研磨面を基板の周縁部に摺接させることで基板の周縁部を研磨する。ここで、本明細書では、基板の周縁部を、基板の最外周に位置するベベル部と、このベベル部の径方向内側に位置するトップエッジ部およびボトムエッジ部とを含む領域として定義する。
【0004】
図1(a)および
図1(b)は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、
図1(a)はいわゆるストレート型の基板の断面図であり、
図1(b)はいわゆるラウンド型の基板の断面図である。
図1(a)の基板Wにおいて、ベベル部は、基板Wの最外周面を構成する上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、及び側部(アペックス)Rからなる部分Bを指し、また
図1(b)の基板Wにおいては、基板Wの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分Bを指す。またトップエッジ部は、ベベル部Bよりも径方向内側に位置する領域であって、かつデバイスが形成される領域Dよりも径方向外側に位置する平坦部E1を指す。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも径方向内側に位置する平坦部E2を指す。これらトップエッジ部E1およびボトムエッジ部E2は、総称してニアエッジ部と呼ばれることもある。
【0005】
従来の研磨装置は、研磨ヘッドにより研磨テープを基板の周縁部に押圧することで該周縁部を研磨する(例えば、特許文献1参照)。研磨ヘッドは、平坦な押圧面を有しており、研磨ヘッドを傾斜させながら、この押圧面で研磨テープを基板の周縁部に対して押圧することにより、該周縁部を研磨する。しかしながら、平坦な押圧面では、トップエッジ部およびボトムエッジ部を正確に研磨することが難しい。例えば、
図1(a)に示す基板において、デバイス形成領域Dとトップエッジ部E1との境界線に沿ってトップエッジ部E1のみを正確に研磨することは困難である。特に、研磨テープが基板の表面に対して鋭角になるように研磨ヘッド傾けると、研磨テープによりデバイスがダメージを受けるおそれがある。
【0006】
特許文献2には、直線状の押圧面を有する研磨装置が開示されている。この研磨装置では、
図2(a)に示すように、直線状の押圧面を有する押圧部材100で研磨テープ101を基板Wのトップエッジ部に押圧しながら該押圧部材100を基板Wの径方向外側に一定の速度で移動させる。このような研磨装置によれば、デバイス形成領域にダメージを与えることなくトップエッジ部を研磨することは可能である。しかしながら、
図2(b)に示すように、直線状に延びる押圧面と基板Wの最外周との距離は一定とはならない。このため、トップエッジ部の内側端部では、他の領域に比べて研磨テープと基板との接触時間が短くなり、その結果、
図2(c)に示すように、トップエッジ部の内側端部が斜めに削られてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、基板のトップエッジ部および/またはボトムエッジ部を正確かつ均一に研磨することができる研磨装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような研磨装置を用いた研磨方法、および研磨装置に使用される研磨具の押圧部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板の周縁部を研磨する研磨装置であって、基板を水平に保持し、該基板を回転させる回転保持機構と、前記基板の周縁部に近接して配置された少なくとも1つの研磨ヘッドとを備え、前記研磨ヘッドは、前記基板の周方向に沿って延びる少なくとも1つの突起部を有し、
前記突起部は、前記基板と実質的に同一の曲率を有する円弧形状を有しており、前記研磨ヘッドは、前記突起部により帯状の研磨具の研磨面を前記基板の周縁部に対して上方または下方から押圧するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾斜させる少なくとも1つのチルト機構をさらに備え、前記少なくとも1つの突起部は、対称的に配置された第1の突起部および第2の突起部であり、前記第1の突起部は、前記研磨ヘッドを上方に傾斜させたときに前記基板の周縁部の上方に位置し、前記第2の突起部は、前記研磨ヘッドを下方に傾斜させたときに前記基板の周縁部の下方に位置することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記第1の突起部は、前記研磨具を前記基板のトップエッジ部に対して押圧し、前記第2の突起部は、前記研磨具を前記基板のボトムエッジ部に対して押圧することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1つの研磨ヘッドは、前記基板の周囲に配置された複数の研磨ヘッドであり、前記少なくとも1つのチルト機構は、前記複数の研磨ヘッドを互いに独立に傾斜させる複数のチルト機構であることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドは、前記研磨具を前記基板の周縁部に押圧する押圧パッドをさらに備え、前記押圧パッドは前記第1の突起部および前記第2の突起部の間に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記押圧パッドの高さは、前記第1の突起部および前記第2の突起部の高さよりも低いことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドは、前記研磨具を前記基板の周縁部に押圧する押圧パッドをさらに備え、前記押圧パッドは前記突起部に隣接して配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記突起部の長さは、前記研磨具の幅よりも長いことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨ヘッドは、前記突起部を挟むように配置された、前記研磨具の研磨面を支持する2つのガイドローラと、前記2つのガイドローラおよび前記突起部に連結された駆動機構とを備え、前記駆動機構は、前記2つのガイドローラおよび前記突起部を前記基板の周縁部に向かって一体に移動させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記帯状の研磨具は、研磨テープまたは研磨布であることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、基板の周縁部を研磨する研磨装置であって、基板を水平に保持し、該基板を回転させる回転保持機構と、前記基板の周縁部に近接して配置された研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾斜させるチルト機構とを備え、前記研磨ヘッドは、前記基板の周方向に沿って延びる
、前記基板と実質的に同一の曲率を有する円弧形状の第1の突起部および第2の突起部と、前記第1の突起部および前記第2の突起部の間に配置された押圧パッドとを有し、前記研磨ヘッドは、前記第1の突起部により帯状の研磨具の研磨面を前記基板の周縁部に対して上方から押圧し、前記第2の突起部により前記研磨具の研磨面を前記基板の周縁部に対して下方から押圧し、前記押圧パッドにより前記研磨具の研磨面を前記基板の周縁部に対して押圧するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、上記研磨装置を用いた研磨方法であって、前記回転保持機構により基板を回転させ、前記第1の突起部により前記研磨具を前記基板の周縁部に対して上方から押圧して前記基板のトップエッジ部を研磨し、前記第2の突起部により前記研磨具を前記基板の周縁部に対して下方から押圧して前記基板のボトムエッジ部を研磨することを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、上記研磨装置を用いた研磨方法であって、前記回転保持機構により基板を回転させ、前記第1の突起部により前記研磨具を前記基板の周縁部に対して上方から押圧して前記基板のトップエッジ部を研磨し、前記第2の突起部により前記研磨具を前記基板の周縁部に対して下方から押圧して前記基板のボトムエッジ部を研磨し、前記押圧パッドにより前記研磨具を前記基板の周縁部に対して押圧して前記基板のベベル部を研磨することを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、上記研磨装置を用いた研磨方法であって、前記回転保持機構により基板を回転させ、第1の研磨ヘッドにより帯状の研磨具を前記基板の周縁部に対して上方から押圧して前記基板のトップエッジ部を研磨し、前記第1の研磨ヘッドにより前記研磨具を前記基板の周縁部に対して下方から押圧して前記基板のボトムエッジ部を研磨し、前記第1の研磨ヘッドによる前記ボトムエッジ部の研磨中に、第2の研磨ヘッドにより帯状の研磨具を前記基板の周縁部に対して上方から押圧して前記トップエッジ部を研磨することを特徴とする。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、上記研磨装置を用いた研磨方法であって、前記回転保持機構により基板を回転させ、第1の研磨ヘッドにより帯状の研磨具を前記基板の周縁部に対して上方から押圧して前記基板のトップエッジ部を研磨し、第2の研磨ヘッドにより帯状の研磨具を前記基板の周縁部に対して下方から押圧して前記基板のボトムエッジ部を研磨することを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の態様は、帯状の研磨具を基板の周縁部に対して押圧する押圧部材であって、前記基板の周方向に沿って延びる少なくとも1つの突起部を有
し、前記突起部は、前記基板と実質的に同一の曲率を有する円弧形状を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、突起部により研磨具(例えば研磨テープ)を基板の周縁部に押圧するので、周縁部以外の領域に研磨具を接触させることなく基板の周縁部を正確に研磨することができる。さらに、突起部が基板の周方向に沿って湾曲しているので、基板と研磨具との接触時間が研磨領域全体に亘って均一となる。したがって、周縁部の内側端部を含む研磨領域全体を均一に研磨することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図3は本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す平面図であり、
図4は
図3に示す研磨装置の縦断面図である。
図3および
図4に示すように、この研磨装置は、その中央部に、研磨対象物である基板Wを水平に保持し、回転させる回転保持機構(基板保持部)3を備えている。
図3においては、回転保持機構3が基板Wを保持している状態を示している。回転保持機構3は、基板Wの裏面を真空吸着により保持する皿状の保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結された中空シャフト5と、この中空シャフト5を回転させるモータM1とを備えている。基板Wは、搬送機構のハンド(図示せず)により、基板Wの中心が中空シャフト5の軸心と一致するように保持ステージ4の上に載置される。
【0023】
中空シャフト5は、ボールスプライン軸受(直動軸受)6によって上下動自在に支持されている。保持ステージ4の上面には溝4aが形成されており、この溝4aは、中空シャフト5を通って延びる連通路7に連通している。連通路7は中空シャフト5の下端に取り付けられたロータリジョイント8を介して真空ライン9に接続されている。連通路7は、処理後の基板Wを保持ステージ4から離脱させるための窒素ガス供給ライン10にも接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、基板Wを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0024】
中空シャフト5は、この中空シャフト5に連結されたプーリーp1と、モータM1の回転軸に取り付けられたプーリーp2と、これらプーリーp1,p2に掛けられたベルトb1を介してモータM1によって回転される。モータM1の回転軸は中空シャフト5と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ4の上面に保持された基板Wは、モータM1によって回転される。
【0025】
ボールスプライン軸受6は、中空シャフト5がその長手方向へ自由に移動することを許容する軸受である。ボールスプライン軸受6は円筒状のケーシング12に固定されている。したがって、本実施形態においては、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下に直線動作ができるように構成されており、中空シャフト5とケーシング12は一体に回転する。中空シャフト5は、エアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、エアシリンダ15によって中空シャフト5および保持ステージ4が上昇および下降できるようになっている。
【0026】
ケーシング12と、その外側に同心上に配置された円筒状のケーシング14との間にはラジアル軸受18が介装されており、ケーシング12は軸受18によって回転自在に支持されている。このような構成により、回転保持機構3は、基板Wをその中心軸Crまわりに回転させ、かつ基板Wを中心軸Crに沿って上昇下降させることができる。
【0027】
図3に示すように、回転保持機構3に保持された基板Wの周囲には4つの研磨ヘッド組立体(研磨部)1A,1B,1C,1Dが配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの径方向外側には研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dがそれぞれ設けられている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dと研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dとは隔壁20によって隔離されている。隔壁20の内部空間は研磨室21を構成し、4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよび保持ステージ4は研磨室21内に配置されている。一方、研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dは隔壁20の外側(すなわち、研磨室21の外)に配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dは互いに同一の構成を有し、研磨テープ供給機構2A,2B,2C,2Dも互いに同一の構成を有している。以下、研磨ヘッド組立体1Aおよび研磨テープ供給機構2Aについて説明する。
【0028】
研磨テープ供給機構2Aは、研磨テープ23を研磨ヘッド組立体1Aに供給する供給リール24と、基板Wの研磨に使用された研磨テープ23を回収する回収リール25とを備えている。供給リール24は回収リール25の上方に配置されている。供給リール24および回収リール25にはカップリング27を介してモータM2がそれぞれ連結されている(
図3には供給リール24に連結されるカップリング27とモータM2のみを示す)。それぞれのモータM2は、所定の回転方向に一定のトルクをかけ、研磨テープ23に所定のテンションをかけることができるようになっている。
【0029】
研磨テープ23は長尺の帯状の研磨具であり、その片面が研磨面を構成している。研磨テープ23は、PETシートなどからなる基材テープと、基材テープの上に形成されている研磨層とを有している。研磨層は、基材テープの一方の表面を被覆するバインダ(例えば樹脂)と、バインダに保持された砥粒とから構成されており、研磨層の表面が研磨面を構成している。研磨具として、研磨テープに代えて、帯状の研磨布を用いてもよい。
【0030】
研磨テープ23は供給リール24に巻かれた状態で研磨テープ供給機構2Aにセットされる。研磨テープ23の側面は巻き崩れが生じないようにリール板で支持されている。研磨テープ23の一端は回収リール25に取り付けられ、研磨ヘッド組立体1Aに供給された研磨テープ23を回収リール25が巻き取ることで研磨テープ23を回収するようになっている。研磨ヘッド組立体1Aは研磨テープ供給機構2Aから供給された研磨テープ23を基板Wの周縁部に当接させるための研磨ヘッド30を備えている。研磨テープ23は、研磨テープ23の研磨面が基板Wを向くように研磨ヘッド30に供給される。
【0031】
研磨テープ供給機構2Aは複数のガイドローラ31,32,33,34を有しており、研磨ヘッド組立体1Aに供給され、研磨ヘッド組立体1Aから回収される研磨テープ23がこれらのガイドローラ31,32,33,34によってガイドされる。研磨テープ23は、隔壁20に設けられた開口部20aを通して供給リール24から研磨ヘッド30へ供給され、使用された研磨テープ23は開口部20aを通って回収リール25に回収される。
【0032】
図4に示すように、基板Wの上方には上側供給ノズル36が配置され、回転保持機構3に保持された基板Wの上面中心に向けて研磨液を供給する。また、基板Wの裏面と回転保持機構3の保持ステージ4との境界部(保持ステージ4の外周部)に向けて研磨液を供給する下側供給ノズル37を備えている。研磨液には通常純水が使用されるが、研磨テープ23の砥粒としてシリカを使用する場合などはアンモニアを用いることもできる。さらに、研磨装置は、研磨処理後に研磨ヘッド30を洗浄する洗浄ノズル38を備えており、研磨処理後に基板Wが回転保持機構3により上昇した後、研磨ヘッド30に向けて洗浄水を噴射し、研磨処理後の研磨ヘッド30を洗浄できるようになっている。
【0033】
中空シャフト5がケーシング12に対して昇降した時にボールスプライン軸受6やラジアル軸受18などの機構を研磨室21から隔離するために、
図4に示すように、中空シャフト5とケーシング12の上端とは上下に伸縮可能なベローズ19で接続されている。
図4は中空シャフト5が下降している状態を示し、保持ステージ4が研磨位置にあることを示している。研磨処理後には、エアシリンダ15により基板Wを保持ステージ4および中空シャフト5とともに搬送位置まで上昇させ、この搬送位置で基板Wを保持ステージ4から離脱させる。
【0034】
隔壁20は、基板Wを研磨室21に搬入および搬出するための搬送口20bを備えている。搬送口20bは、水平に延びる切り欠きとして形成されている。したがって、搬送機構に把持された基板Wは、水平な状態を保ちながら、搬送口20bを通って研磨室21内を横切ることが可能となっている。隔壁20の上面には開口20cおよびルーバー40が設けられ、下面には排気口(図示せず)が設けられている。研磨処理時は、搬送口20bは図示しないシャッターで閉じられるようになっている。したがって、排気口から図示しないファン機構により排気をすることで研磨室21の内部には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。この状態において研磨処理がされるので、研磨液が上方へ飛散することが防止され、研磨室21の上部空間を清浄に保ちながら研磨処理をすることができる。
【0035】
図3に示すように、研磨ヘッド30はアーム60の一端に固定され、アーム60は、基板Wの接線方向に平行な回転軸Ctまわりに回転自在に構成されている。アーム60の他端はプーリーp3,p4およびベルトb2を介してモータM4に連結されている。モータM4が時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転することで、アーム60が軸Ctまわりに所定の角度だけ回転する。本実施形態では、モータM4、アーム60、プーリーp3,p4、およびベルトb2によって、基板Wの表面に対して研磨ヘッド30を傾斜させるチルト機構が構成されている。
【0036】
チルト機構は、移動台61に搭載されている。移動台61は、ガイド62およびレール63を介してベースプレート65に移動自在に連結されている。レール63は、回転保持機構3に保持された基板Wの半径方向に沿って直線的に延びており、移動台61は基板Wの半径方向に沿って直線的に移動可能になっている。移動台61にはベースプレート65を貫通する連結板66が取り付けられ、連結板66にはリニアアクチュエータ67がジョイント68を介して連結されている。リニアアクチュエータ67はベースプレート65に直接または間接的に固定されている。
【0037】
リニアアクチュエータ67としては、エアシリンダや位置決め用モータとボールネジとの組み合わせなどを採用することができる。このリニアアクチュエータ67、レール63、ガイド62によって、研磨ヘッド30を基板Wの半径方向に直線的に移動させる移動機構が構成されている。すなわち、移動機構はレール63に沿って研磨ヘッド30を基板Wへ近接および離間させるように動作する。一方、研磨テープ供給機構2Aはベースプレート65に固定されている。
【0038】
図5は研磨ヘッド30の拡大図である。
図5に示すように、研磨ヘッド30は、研磨テープ23の研磨面を基板Wに対して所定の力で押圧する押圧機構41を備えている。また、研磨ヘッド30は、研磨テープ23を供給リール24から回収リール25へ送るテープ送り機構42を備えている。研磨ヘッド30は複数のガイドローラ43,44,45,46,47,48,49を有しており、これらのガイドローラは基板Wの接線方向と直交する方向に研磨テープ23が進行するように研磨テープ23をガイドする。
【0039】
研磨ヘッド30に設けられたテープ送り機構42は、テープ送りローラ42aと、テープ把持ローラ42bと、テープ送りローラ42aを回転させるモータM3とを備えている。モータM3は研磨ヘッド30の側面に設けられ、モータM3の回転軸にテープ送りローラ42aが取り付けられている。テープ把持ローラ42bはテープ送りローラ42aに隣接して配置されている。テープ把持ローラ42bは、
図5の矢印NFで示す方向(テープ送りローラ42aに向かう方向)に力を発生するように図示しない機構で支持されており、テープ送りローラ42aを押圧するように構成されている。
【0040】
モータM3が
図5に示す矢印方向に回転すると、テープ送りローラ42aが回転して研磨テープ23を供給リール24から研磨ヘッド30を経由して回収リール25へ送ることができる。テープ把持ローラ42bはそれ自身の軸まわりに回転することができるように構成され、研磨テープ23が送られるに従って回転する。
【0041】
押圧機構41は、研磨テープ23の裏面側に配置された押圧部材50と、この押圧部材50を基板Wの周縁部に向かって移動させるエアシリンダ(駆動機構)52とを備えている。エアシリンダ52はいわゆる片ロッドシリンダである。エアシリンダ52へ供給する空気圧を制御することによって、研磨テープ23を基板Wに対して押圧する力が調整される。基板Wの周囲に配置された4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dのチルト機構、押圧機構41、テープ送り機構42、および各研磨ヘッド組立体を移動させる移動機構は、それぞれ独立に動作が可能なように構成されている。
【0042】
図6乃至
図11は、
図5に示す押圧部材の6面図である。
図6乃至
図11に示すように、押圧部材50は、その前面に形成された2つの突起部51a,51bを有している。これらの突起部51a,51bは、レールのような形状を有しており、並列に配置されている。突起部51a,51bは、基板Wの周方向に沿って湾曲している。より具体的には、突起部51a,51bは、基板Wの曲率と実質的に同じ曲率を有する円弧形状を有している。2つの突起部51a,51bは、回転軸Ctに関して対称に配置されており、
図6に示すように、押圧部材50の正面から見たときに突起部51a,51bは回転軸Ctに向かって内側に湾曲している。研磨ヘッド30は、突起部51a,51bの先端間の中心線(すなわち回転軸Ct)が基板Wの厚さ方向における中心と一致するように設置される。突起部51a,51bは、研磨ヘッド30の前面に配置されたガイドローラ46,47よりも基板Wに近接して配置されており、研磨テープ23は突起部51a,51bによって裏面から支持されている。突起部51a,51bは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの樹脂から形成されている。
【0043】
図12は
図6のA−A線断面図であり、
図13は
図12に示す突起部の拡大図である。突起部51a,51bは、研磨テープ23を基板Wに対して押圧する押圧面をそれぞれ有しており、各押圧面は丸みを持った断面を有している。突起部51aの押圧面全体は、突起部51aと突起部51bとの間を延びる研磨テープ23に対してやや傾斜している。同様に、突起部51bの押圧面全体も、突起部51aと突起部51bとの間を延びる研磨テープ23に対してやや傾斜している。
図13では、研磨テープ23に対する押圧面の角度はαで示されている。
【0044】
図14は、チルト機構によって上方に傾けられた研磨ヘッドを示す図であり、
図15は、チルト機構によって下方に傾けられた研磨ヘッドを示す図である。
図14および
図15に示すように、上側の突起部(第1の突起部)51aは、研磨ヘッド30を上方に傾けたときに基板Wの周縁部の上方に位置し、トップエッジ部に対向する。下側の突起部(第2の突起部)51bは、研磨ヘッド30を下方に傾けたときに基板Wの周縁部の下方に位置し、ボトムエッジ部に対向する。トップエッジ部を研磨するときは、研磨ヘッド30を上方に傾けた状態で突起部51aにより研磨テープ23を基板Wの周縁部(すなわち、トップエッジ部)に対して上から押圧し、一方、ボトムエッジ部を研磨するときは、研磨ヘッド30を下方に傾けた状態で突起部51bにより研磨テープ23を基板Wの周縁部(すなわち、ボトムエッジ部)に対して下から押圧する。これら突起部51a,51bの押圧力は、エアシリンダ52により調整することができる。
【0045】
トップエッジ部およびボトムエッジ部を研磨しているときの研磨ヘッド30の傾斜角度は、各突起部の押圧面全体が基板Wの表面(上面または下面)と平行になる角度である。このような角度で研磨ヘッド30を傾斜させると、各突起部の押圧面は
図13に示すように傾斜しているので、突起部51aと突起部51bとの間を延びる研磨テープ23は、基板Wの表面から離間する。したがって、研磨テープ23は実質的に基板Wに対して線接触する。なお、本実施形態では、
図13に示す押圧面の角度αは5度である。
【0046】
図16(a)は、上側の突起部によって研磨テープを基板のトップエッジ部に当接させている様子を示す平面図であり、
図16(b)は、研磨された基板の周縁部を模式的に示す断面図である。トップエッジ部を研磨するときは、突起部51aの押圧面が基板Wの上面(トップエッジ部)と平行になるまで研磨ヘッド30を上方に傾斜させ、この状態で上側の突起部51aにより研磨テープ23をトップエッジ部に対して押圧する。研磨ヘッド30は、研磨テープ23を基板Wに押圧しながら、リニアアクチュエータ67などから構成される上述の移動機構によって基板Wの径方向外側に一定の速度で移動する。
【0047】
突起部51aが研磨テープ23をトップエッジ部に対して押圧しているとき、
図16(a)に示すように、研磨幅(すなわち突起部51aと基板Wの最外周との距離)は、突起部51aの全長に亘って一定である。これは、上から見たときに突起部51aが基板Wの周縁部に沿って湾曲しているからである。このような突起部51aを用いることにより、デバイス形成領域(
図1(a)および
図1(b)の符号D参照)にダメージを与えることなく、トップエッジ部のみを正確に研磨することができる。
【0048】
基板Wは研磨テープ23との摺接により研磨されるので、研磨テープ23によって除去される膜の量は、研磨テープ23に接触している累積時間によって決定される。本実施形態に係る研磨装置によれば、突起部51aが基板Wの周縁部に沿って湾曲しているので、研磨テープ23が基板Wに接触している時間がトップエッジ部全体に亘って均一となる。したがって、
図16(b)に示すように、トップエッジ部全体を均一に研磨することができる。さらに、湾曲した突起部51aを採用したことにより、研磨テープ23と基板Wとの接触長さが長くなり、研磨レートが増加する。
【0049】
上側の突起部51aと下側の突起部51bは、回転軸Ctに関して対称に配置されているので、
図15に示すように下側の突起部51bがボトムエッジ部に対向するまで研磨ヘッド30を下方に傾けたときは、突起部51bは基板Wのボトムエッジ部に沿って延びる。したがって、トップエッジ部と同様に、突起部51bによってボトムエッジ部を正確かつ均一に研磨することができる。
【0050】
図16(a)に示すように、突起部51a,51bの長さは研磨テープ23の幅よりも長いことが好ましい。具体的には、突起部51a,51bの長さは、研磨テープ23の幅よりも2mm程度長いことが好ましい。この場合、突起部51a,51bが研磨テープ23の両側部からそれぞれ1mm程度はみ出るように突起部51a,51bが設けられる。
図2(b)に示すように、押圧部材100の押圧面の長さが研磨テープ101の幅よりも短いと、研磨テープ101に張力を与えたときに、研磨テープ101の両側部がばたついてしまい、基板Wを傷付けることがある。本実施形態によれば、研磨テープ23の幅よりも長い突起部51a,51bを用いることにより、研磨テープ23がその全幅に亘って突起部51a,51bにより支持され、研磨テープ23を安定して送ることができる。
【0051】
トップエッジ部の研磨は次のようにして行なわれる。まず、回転保持機構3により基板Wをその軸心周りに回転させる。次いで、上側供給ノズル36および下側供給ノズル37から研磨液(例えば、純水)を基板Wに供給し、
図14に示すように、突起部51aがトップエッジ部に対向するまでチルト機構により研磨ヘッド30を上方に傾斜させる。テープ送り機構42により研磨テープ23をその長手方向に送りながら、上側の突起部51aにより研磨テープ23を基板Wのトップエッジ部に対して上方から押圧する。この状態で、リニアアクチュエータ67により研磨ヘッド30を基板Wの径方向外側に一定の速度で移動させ、これによりトップエッジ部を研磨する。
【0052】
ボトムエッジ部の研磨も、トップエッジ部の研磨と同様にして行なわれる。具体的には、回転保持機構3により基板Wをその軸心周りに回転させ、次いで、上側供給ノズル36および下側供給ノズル37から研磨液(例えば、純水)を基板Wに供給する。
図15に示すように、突起部51bがボトムエッジ部に対向するまでチルト機構により研磨ヘッド30を下方に傾斜させる。テープ送り機構42により研磨テープ23をその長手方向に送りながら、下側の突起部51bにより研磨テープ23を基板Wのボトムエッジ部に対して下方から押圧する。この状態で、研磨ヘッド30を基板Wの径方向外側に一定の速度で移動させ、これによりボトムエッジ部を研磨する。
【0053】
研磨テープ23は、突起部51a,51bに支持されているので、研磨テープ23と押圧部材50との間には空間が形成される。この空間は基板Wに供給された研磨液を通過させる孔として機能する。すなわち、トップエッジ部およびボトムエッジ部の研磨時には、上述したように、回転する基板Wに研磨液が供給される。基板W上の研磨液は、遠心力により基板Wから振り落とされ、そのほとんどは押圧部材50に衝突することなく、研磨テープ23と押圧部材50との間の空間を通り抜ける。このように、基板Wから飛び散った研磨液は押圧部材50にほとんど衝突しないので、研磨液が基板Wに跳ね返ることがない。したがって、研磨液に含まれる研磨屑などのパーティクルによる基板Wの汚染を防止することができる。
【0054】
図17は、研磨ヘッドの他の構成例を示す図である。なお、特に説明しない研磨ヘッドの構成および動作は
図5および
図6に示す構成と同様である。
図17に示すように、2つの突起部51a,51bを挟むように、2つのガイドローラ58a,58bが配置されている。より具体的には、上側の突起部51aとガイドローラ46との間にガイドローラ58aが配置され、下側の突起部51bとガイドローラ47との間にガイドローラ58bが配置されている。ガイドローラ58a,58bは押圧部材50に支持されており、ガイドローラ58a,58bと突起部51a,51bはエアシリンダ52によって基板Wの周縁部に近接および離間する方向に一体に移動するようになっている。
【0055】
研磨テープ23の進行方向は、ガイドローラ46、ガイドローラ58a、突起部51a,51b、ガイドローラ58b、およびガイドローラ47によってこの順に案内される。研磨ヘッド30の前面に配置されるガイドローラ46,47は研磨テープ23の裏面を支持しており、エアシリンダ52に連結されているガイドローラ58a,58bは、研磨テープ23の研磨面を支持している。ガイドローラ58a,58bが基板Wに接触しないように、ガイドローラ58a,58bは突起部51a,51bよりも基板Wから離れた位置に配置される。ガイドローラ46と突起部51aとの間、およびガイドローラ47と突起部51bとの間では、研磨テープ23は基板Wから離れる方向にガイドローラ58a,58bによって案内される。このようなガイドローラ58a,58bの配置により、突起部51a,51bの両側(上流側および下流側)に位置する研磨テープ23の部分が基板Wから離間する。したがって、研磨テープ23が周縁部以外の領域に接触することが確実に防止される。
【0056】
さらに、
図17に示す研磨ヘッド30は、ガイドローラ58a,58bがエアシリンダ52に連結されているので、研磨テープ23の張力を増加しても、基板Wへの押圧力が減少しないという利点を有している。
図2(a)に示す従来の研磨装置では、研磨テープ101の張力を高めると、基板Wから離れる方向の力が押圧部材100に作用する。その結果、基板に対する押圧力が減少し、研磨レートが低下してしまう。一方、
図17に示す研磨ヘッド30では、研磨テープ23の研磨面を支持するガイドローラ58a,58bがエアシリンダ52に連結されているので、研磨テープ23の張力を増加したときに押圧部材50には基板Wに向かう力が作用する。したがって、研磨テープ23の張力を増加しても基板Wへの押圧力は減少しない。結果として、研磨ヘッド30は、高い研磨レートで基板Wの周縁部を研磨することができる。
【0057】
図3に示すように、本実施形態に係る研磨装置は、複数の研磨ヘッド組立体および研磨テープ供給機構を備えているので、複数の研磨ヘッド30で基板Wの周縁部を同時に研磨することができる。例えば、研磨レートの向上のために、同種の研磨テープを用いて、トップエッジ部のみ、またはボトムエッジ部のみを複数の研磨ヘッド30で研磨することができる。あるいは、研磨ヘッド組立体1Aでトップエッジ部を研磨しつつ、研磨ヘッド組立体1Bでボトムエッジ部を同時に研磨することも可能である。
【0058】
トップエッジ部とボトムエッジ部を複数の研磨ヘッド30により連続的に研磨することも可能である。例えば、研磨ヘッド組立体1Aにより研磨テープを基板Wのトップエッジ部に押圧して該トップエッジ部を研磨し、次いで、研磨ヘッド組立体1Aにより研磨テープを基板Wのボトムエッジ部に押圧して該ボトムエッジ部を研磨し、研磨ヘッド組立体1Aによるボトムエッジ部の研磨中に、研磨ヘッド組立体1Bにより研磨テープをトップエッジ部に押圧して該トップエッジ部を研磨する。この場合、研磨ヘッド組立体1Aと研磨ヘッド組立体1Bとで異なる種類の研磨テープを使用することもできる。例えば、研磨ヘッド組立体1Aでは粗研磨用の研磨テープを使用し、研磨ヘッド組立体1Bでは仕上げ研磨用の研磨テープを用いてもよい。本実施形態に係る研磨装置によれば、各研磨ヘッド30が2つの突起部51a,51bを有しているので、基板の周縁部の研磨工程の自由度が高まり、所望の研磨レシピで基板の周縁部を研磨することができる。
【0059】
なお、
図3に示す研磨装置は、4台の研磨ヘッド組立体および4台の研磨テープ供給機構を備えているが、本発明はこの例に限定されず、2台、3台、または5台以上の研磨ヘッド組立体および研磨テープ供給機構を備えてもよい。さらに、
図18に示すように、1台の研磨ヘッド組立体1および1台の研磨テープ供給機構2を備えてもよい。
【0060】
上述した研磨装置では、2つの突起部が設けられているが、1つの突起部のみを設けてもよい。
図19は、基板のトップエッジ部に対向して配置された1つの突起部を有する研磨ヘッドを示す側面図であり、
図20乃至
図25は、
図19に示す押圧部材の6面図である。
図26は、
図20のB−B線断面図である。
図27は、基板のボトムエッジ部に対向して配置された1つの突起部を有する研磨ヘッドを示す側面図である。これらの例においても、突起部51a,51bは周縁部に沿って(すなわち、トップエッジ部およびボトムエッジ部に沿って)湾曲している。なお、
図27に示す押圧部材の6面図は、
図20乃至
図25に示す図面と実質的に同一であるので省略する。
【0061】
図19に示す突起部51aは、基板Wの周縁部の上方に配置されており、トップエッジ部に沿って湾曲している。したがって、この突起部51aは、トップエッジ部の研磨にのみ使用され、ボトムエッジ部の研磨には使用されない。一方、
図27に示す突起部51bは、基板Wの周縁部の下方に配置されており、ボトムエッジ部に沿って湾曲している。したがって、この突起部51bは、ボトムエッジ部の研磨にのみ使用され、トップエッジ部の研磨には使用されない。これらの例では、上述のチルト機構を省略してもよい。この場合、
図2に示す研磨ヘッド組立体1A〜1Dは、トップエッジ部の研磨用の研磨ヘッド組立体と、ボトムエッジ部の研磨用の研磨ヘッド組立体とを含むことが好ましい。さらに、これらの例では、突起部51a,51bの押圧面の傾斜角度α(
図13参照)を0としてもよい。すなわち、研磨ヘッド30を基板Wの表面に対して垂直に配置し、かつ突起部51a,51bの押圧面を基板Wの表面と平行に配置してもよい。
【0062】
図19および
図27に示すように、研磨テープ23は、突起部51aまたは突起部51bに支持されているので、研磨テープ23と押圧部材50との間には空間が形成されている。したがって、これらの例においても、回転する基板Wから振り落とされた研磨液のほとんどは、押圧部材50に衝突することなく、研磨テープ23と押圧部材50との間の空間を通り抜ける。特に、
図19および
図27に示す例では、トップエッジ部およびボトムエッジ部の研磨時には、基板Wの径方向外側には突起部(51bまたは51a)が存在しないので、基板Wから飛び散った研磨液は押圧部材50に衝突することがない。したがって、研磨液に含まれる研磨屑などのパーティクルによる基板Wの汚染を防止することができる。
【0063】
図28乃至
図33は、押圧部材50のさらに他の例を示す6面図である。
図34は、
図28のC−C線断面図である。
図28乃至
図34に示す押圧部材50は、2つの突起部51a,51bの間に配置された押圧パッド(ベベルパッド)70をさらに有している点で、
図6乃至
図13に示す押圧部材50と相違する。特に説明しない押圧部材50の構成は、
図6乃至
図13に示す押圧部材50と同一であるので、その重複する説明を省略する。
【0064】
押圧パッド70は、押圧部材50の中央に位置しており、研磨ヘッド30の姿勢が水平のときに、押圧パッド70が回転保持機構3上の基板のベベル部(
図1(a)および
図1(b)参照)に対向するように配置されている。押圧パッド70は、シリコーンゴムなどの弾力性を有する独立発泡材から構成されている。研磨ヘッド30を水平に維持した状態で押圧部材50がエアシリンダ52によって基板に向かって移動されると、押圧パッド70は、研磨テープをその裏側から基板のベベル部に対して押圧する。研磨テープの裏面との摩擦を少なくするために、表面にテフロン加工されたシートを押圧パッド70の前面(押圧面)に貼り付けてもよい。押圧パッド70は、ボルトなどにより着脱可能となっている。
【0065】
図35は、押圧パッド70および突起部51a,51bの拡大図である。
図35に示すように、押圧パッド70の高さは、突起部51a,51bの高さよりもやや低くなっている。これは、突起部51aまたは突起部51bで基板を研磨しているときに、押圧パッド70が研磨テープを基板に対して押圧しないようにするためである。突起部51a,51bと押圧パッド70との間の高さの差Hは、0mmよりも大きく、かつ1mm以下であることが好ましい。
【0066】
図36乃至
図38は、
図28に示す押圧部材50を備えた研磨ヘッド30を用いた研磨方法の一例を示す図である。まず、
図36に示すように、研磨ヘッド30を上方に傾けて、突起部51aにより研磨テープ23を基板Wのトップエッジ部に押圧し、トップエッジ部を研磨する。次に、
図37に示すように、研磨ヘッド30を下方に傾けて、突起部51bにより研磨テープ23を基板Wのボトムエッジ部に押圧し、ボトムエッジ部を研磨する。そして、
図38に示すように、研磨ヘッド30を水平にし(基板Wの表面に対する傾斜角度を0とし)、押圧パッド70により研磨テープ23を基板Wのベベル部に押圧し、ベベル部を研磨する。
【0067】
さらに、
図39および
図40に示すように、研磨ヘッド30を所定の角度に傾斜させた状態で、押圧パッド70により研磨テープ23を基板Wのベベル部に対して斜めに押圧し、ベベル部を研磨してもよい。このように、研磨ヘッド30を傾斜させることで、
図1(a)に示す上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、及び側部(アペックス)Rを含むベベル部全体を研磨することができる。さらに、
図41に示すように、押圧パッド70により研磨テープ23を基板Wのベベル部に対して押圧しながら、研磨ヘッド30の傾斜角度をチルト機構により連続的に変化させてもよい。
【0068】
このように、突起部51a,51bおよび押圧パッド70を有する押圧部材50を用いることにより、研磨テープ23は基板Wの周縁部の全体を研磨することができる。トップエッジ部、ベベル部、ボトムエッジ部を研磨する順序は、基板の種類およびターゲット形状などにより決定することができる。研磨順序の例としては、次の通りである。
・トップエッジ部→ボトムエッジ部→ベベル部
・ボトムエッジ部→トップエッジ部→ベベル部
・トップエッジ部→ベベル部→ボトムエッジ部
・ボトムエッジ部→ベベル部→トップエッジ部
・ベベル部→トップエッジ部→ボトムエッジ部
・ベベル部→ボトムエッジ部→トップエッジ部
【0069】
上述した例以外にも、トップエッジ部のみ、ベベル部のみ、ボトムエッジ部のみを研磨することも可能である。さらに、トップエッジ部またはボトムエッジ部と、ベベル部とを任意の順序で研磨することも可能である。このように、突起部51a,51bおよび押圧パッド70を有する押圧部材50を使用することにより、トップエッジ部およびボトムエッジ部のみならず、ベベル部も研磨することができる。
【0070】
図28に示す例では、押圧パッド70は2つの突起部51a,51bの間に配置されているが、
図19乃至
図27に示す押圧部材50に押圧パッド70を適用してもよい。
図42は、基板のトップエッジ部を押圧するための突起部51aに隣接して配置された押圧パッド70を有する押圧部材50の正面図であり、
図43は
図42に示す押圧部材50の平面図である。
図44は、基板のボトムエッジ部を押圧するための突起部51bに隣接して配置された押圧パッド70を有する押圧部材50の正面図であり、
図45は
図44に示す押圧部材50の平面図である。
図42乃至
図45に示すように、押圧パッド70を突起部51aまたは突起部51bに隣接して配置してもよい。この場合の押圧パッド70の位置および形状は、
図28乃至
図33に示す押圧パッド70の位置および形状と同一である。
【0071】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。