(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4端子型センサに流れる電流の方向が90度ずつ切り替わるように前記4端子型センサの4つの端子の接続先を切り替え、第1から第4までの4つの状態に順次切り替えるスイッチ群を有し、前記4つの端子のうちの、前記4つの状態においてそれぞれ出力端子として動作する2つの端子から第1の出力電圧および第2の出力電圧を取り出すチョッパ回路と、
前記第1および第2の出力電圧が入力され、これら第1および第2の出力電圧の差を増幅してなる第3の出力電圧および第4の出力電圧を出力するゲインアンプと、
前記第3の出力電圧が一端に供給される第1のキャパシタと、
前記第4の出力電圧が一端に供給される第2のキャパシタと、
前記第1および第2のキャパシタの他端に接続されるアンプと、
前記第1のキャパシタおよび前記アンプ間に一端が接続され、前記ゲインアンプおよび前記第2のキャパシタ間に他端が接続される第1のスイッチと、
前記アンプの出力端と前記第2のキャパシタの他端との間に介挿される第2のスイッチと、
を備え、
前記第1のスイッチは、第1および第3の状態でオン、第2および第4の状態でオフとなり、前記第2のスイッチは、第2の状態でオン、第1、第3および第4の状態でオフとなることを特徴とするオフセットキャンセル回路。
前記チョッパ回路から出力される前記第1および第2の出力電圧の少なくとも一方の信号ラインに、前記アンプの閾値調整用のオフセット電流を供給する閾値調整回路を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオフセットキャンセル回路。
前記ゲインアンプから出力される前記第3および第4の出力電圧の少なくとも一方の信号ラインに、前記アンプの閾値調整用のオフセット電流を、抵抗を介して供給する閾値調整回路を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のオフセットキャンセル回路。
【背景技術】
【0002】
ホール素子などの4端子型センサが有するオフセット電圧を除去する回路として、対向する2つの端子に流れる電流の向きを切り替えることでオフセットキャンセルを行うようにした、チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路が知られている。
図11は、従来のチョッパ方式によるオフセットキャンセル回路200の一例である。
このオフセットキャンセル回路200は、例えばホール素子からなる4端子型センサの出力に基づき、4端子型センサが受ける磁場の極性に応じてHIGHレベルおよびLOWレベルの2値を出力する回路において、4端子型センサのオフセット電圧を除去する回路である。
【0003】
図11に示すオフセットキャンセル回路200は、2方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路であって、ホール素子などからなる4端子型センサ5を含むチョッパ回路100と、このチョッパ回路100の出力信号HoutP、HoutNを増幅するゲインアンプ11と、このゲインアンプ11の負側の出力信号GoutNが一端に供給されるキャパシタ10と、ゲインアンプ11の正側の出力信号GoutPが非反転入力端子に入力され、キャパシタ10の他端が反転入力端子に接続されるアンプ12と、アンプ12の出力端と反転入力端子との間に接続されるスイッチ7とを備える。
【0004】
チョッパ回路100は、4端子型センサ5と、この4端子型センサ5の各端子の接続先を切り替えるスイッチ群6aと、を備える。また、オフセットキャンセル回路200は、チョッパ回路100のスイッチ群6aの各スイッチ、またスイッチ7をON/OFF制御する、図示しない制御部を備える。
図11に示すオフセットキャンセル回路200は、スイッチ群6aにおけるスイッチの切り替えによって、2つの状態PH1およびPH2を実現する。
【0005】
図12に、オフセットキャンセル回路200が状態PH1にあるときの状態を示し、
図13に、状態PH2にあるときの状態を示す。
図12に示す状態PH1にあるときには、4端子型センサ5は、磁束密度に応じて出力信号「−Vh」を出力する。ここで、磁束密度が「0」の時は理想的には4端子型センサ5の出力は「0」となるはずであるが、4端子型センサ5のセンサ出力にはオフセットが存在する。そのため、磁束密度が「0」のときのオフセットを「Voff1」とすると、4端子型センサ5のセンサ出力は「−Vh+Voff1」と表すことができる。
【0006】
この4端子型センサ5のセンサ出力は、ゲインアンプ11の入力信号となり、ゲインアンプ11の利得をA倍としたとき、ゲインアンプ11の出力「Vh1−Vh2」は、Vh1−Vh2=A×(−Vh+Voff1)となる。
なお、「Vh1」は、ゲインアンプ11の正側出力信号、「Vh2」は、ゲインアンプ11の負側出力信号である。
【0007】
状態PH1では、スイッチ7はONに制御され、アンプ12はボルテージホロアとして動作する。このため、
図12に示す、アンプ12の出力端とキャパシタ10との間の、アンプ12の反転入力端子との接続点であるノードN11の電位「Vh3」は、Vh3=Vo=Vh1となる。なお「Vo」はアンプ12の出力電圧である。
また、キャパシタ10の容量値を「C」とした場合、キャパシタ10にチャージされる電荷「Q1」は、上記関係式から、Q1=C×(Vh3−Vh2)=C×(Vh1−Vh2)=C×A×(−Vh+Voff1)となる。
【0008】
次に、
図13に示す状態PH2にあるときには、チョッパ方式で4端子型センサ5の接続先を切り替えるため、状態PH1における接続状態から接続先が切り替わる。そのため、4端子型センサ5のセンサ出力は「Vh」となる。この場合も、磁束密度が「0」の時には、理想的には4端子型センサ5の出力は「0」となるはずであるが、4端子型センサ5のセンサ出力にはオフセットが存在する。そのため、この時のオフセットを「Voff2」とすると、状態PH1と同様にゲインアンプ11の利得をA倍とした場合、
図13に示す、状態PH2におけるゲインアンプ11の出力「Vh1′、Vh2′」は、Vh1′−Vh2′=A×(Vh+Voff2)と表される。
【0009】
状態PH2では、スイッチ7はOFFに制御され、アンプ12はコンパレータとして動作する。このため、アンプ12の出力電圧Voは、ノードN11の電位Vh3′とゲインアンプ11の正側出力信号Vh1′との大小関係に応じてHIGHレベルまたはLOWレベルとなる。
ここで、状態PH1から状態PH2に遷移するため、状態PH2では、キャパシタ10に、状態PH1の段階で電荷Q1がチャージされている。
【0010】
そのため、ノードN11の電位Vh3′は、状態PH1でキャパシタ10にチャージされた電荷Q1(=C×A×(−Vh+Voff1))と、状態PH2でゲインアンプ11から出力される負側出力信号Vh2′とから、Vh3′=Vh2′+Q1/C=Vh2′+A×(−Vh+Voff1)となる。そのため、アンプ12の出力電圧Voは、ゲインアンプ11の正側出力信号「Vh1′」とノードN11の電位「Vh3′」との差「Vh1′−Vh3′」が正値であれば、Vo=HIGHレベル、負値であればVo=LOWレベルとなる。
【0011】
アンプ12の出力電圧VoがHIGHレベルまたはLOWレベルに切り替わる閾値電圧は「Vh1′−Vh3′=0」となる電圧である。
そして、上記各関係式から、「Vh1′−Vh3′」は、Vh1′−Vh3′=Vh1′−(Vh2′+Q1/C)=Vh1′−Vh2′−(Vh1−Vh2)=A×(Vh+Voff2)−A×(−Vh+Voff1)=2×A×Vh+A×(Voff2−Voff1)となる。この時「Voff2−Voff1」は理想的には「0」となりオフセットが消える。これが、4端子型センサ5を2方向チョッパ方式(以後、2方向チョッパ駆動ともいう。)により駆動することによる効果である。つまり、2方向チョッパ駆動することにより、4端子型センサ5のオフセットを除去することができるのである。
【0012】
このように、4端子型センサ5を2方向チョッパ駆動することにより、理想的には、4端子型センサ5のオフセットを除去することができる。
しかしながら、実際には、オフセット「Voff2」と「Voff1」とはゲインアンプ11の入力端に接続される4端子型センサ5の端子がそれぞれ異なるため、同等の値を取らず、4端子型センサ5のオフセットは、現実的には、完全には「0」にならない。
【0013】
この問題を解決するためには、
図11に示すオフセットキャンセル回路200において、例えば、4端子型センサ5を2方向の切り替えでチョッパ駆動しオフセットキャンセルを行っていたのに対し、全方向切り替えでチョッパ駆動することによって、オフセットをさらに小さくすることができる。
図14は、全方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路の一例を示したものである(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
つまり、4端子型センサを全方向のチョッパ駆動する場合、4端子型センサの各端子の接続を切り替え4端子型センサ5の対向する端子間に流れる電流の向きを90度ずつ切り替えるため、オフセットキャンセル回路は、4端子型センサに流れる電流の向きに応じて、第1から第4の状態まで4つの状態ができる。この4つの状態それぞれで出力される4端子型センサの出力信号を、それぞれ異なるキャパシタに保持し、各キャパシタの充電電圧を加算することにより、オフセットをキャンセルすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、全方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路は4状態それぞれで4端子型センサの出力信号を保持するためのキャパシタを必要とし、それらキャパシタに接続するためのスイッチが必要となる。スイッチの切り替えによってキャパシタに電荷を保持する際、スイッチングによるチャージインジェクションの影響を考慮すると、電荷を保持するためのキャパシタは容量値が大きいものが好ましい。
【0017】
またキャパシタに保持された電荷を加算するため、4つのキャパシタのミスマッチが大きい場合には加算される電荷量に誤差が生まれる。さらに各スイッチングのタイミングはノーオーバーラップクロック信号を用いて、各スイッチが同時にONすることが無いようなタイミングで各スイッチを駆動することが必要となる。各スイッチが同時にONしてしまうと、キャパシタに保持された電荷の再分配が起こり所望の電荷を保持できなくなるからである。
【0018】
以上のことからキャパシタは容量値が大きく、ミスマッチが小さくなるようなものを選択する必要性があり、配置面積が大きくなる。また、スイッチングのタイミングを考えると回路が複雑化するという問題がある。
そこで、本発明では配置面積を大きく増やすことなく、シンプルな回路設計でオフセットキャンセルを行うことのできる、オフセットキャンセル回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、4端子型センサ(例えば
図1に示す4端子型センサ5)に流れる電流の方向が90度ずつ切り替わるように前記4端子型センサの4つの端子の接続先を切り替え、第1から第4までの4つの状態に順次切り替えるスイッチ群(例えば
図1に示すスイッチ群6)を有し、前記4つの端子のうちの、前記4つの状態においてそれぞれ出力端子として動作する2つの端子から第1の出力電圧および第2の出力電圧を取り出すチョッパ回路(例えば
図1に示すチョッパ回路100)と、前記第1および第2の出力電圧が入力され、これら第1および第2の出力電圧の差を増幅してなる第3の出力電圧および第4の出力電圧を出力するゲインアンプ(例えば
図1に示すゲインアンプ11)と、前記第3の出力電圧が一端に供給される第1のキャパシタ(例えば
図1に示すキャパシタ9)と、前記第4の出力電圧が一端に供給される第2のキャパシタ(例えば
図1に示すキャパシタ10)と、前記第1および第2のキャパシタの他端に接続されるアンプ(例えば
図1に示すアンプ12)と、前記第1のキャパシタおよび前記アンプ間に一端が接続され、前記ゲインアンプおよび前記第2のキャパシタ間に他端が接続される第1のスイッチ(例えば
図1に示すスイッチ8)と、前記アンプの出力端と前記第2のキャパシタとの間に介挿される第2のスイッチ(例えば
図1に示すスイッチ7)と、を備え、前記第1のスイッチは、第1および第3の状態でオン、第2および第4の状態でオフとなり、前記第2のスイッチは、第2の状態でオン、第1、第3および第4の状態でオフとなることを特徴とするオフセットキャンセル回路、である。
【0020】
前記第1のキャパシタと前記アンプとの間に介挿される第3のスイッチ(例えば
図8に示すスイッチ13)を備え、当該第3のスイッチは、第2および第4の状態でオン、第1および第3の状態でオフとなるようになっていてよい。
前記第2のキャパシタと前記アンプとの間に接続される第4のスイッチ(例えば
図8に示すスイッチ14)を備え、当該第4のスイッチは、第2および第4の状態でオン、第1および第3の状態でオフとなるようになっていてよい。
【0021】
前記チョッパ回路から出力される前記第1および第2の出力電圧の少なくとも一方の信号ラインに、前記アンプの閾値調整用のオフセット電流を供給する閾値調整回路を備えていてよい。
前記ゲインアンプから出力される前記第3および第4の出力電圧の少なくとも一方の信号ラインに、前記アンプの閾値調整用のオフセット電流を、抵抗を介して供給する閾値調整回路を備えていてよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、素子や配置面積の大幅な増加を伴うことなく、シンプルな回路設計で全方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路を実現することができ、4端子型センサのオフセット電圧をより小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。
図1は本発明におけるオフセットキャンセル回路101の実施形態の構成を示す回路図の一例である。
【0025】
図1に示すオフセットキャンセル回路101は、例えばホール素子などの4端子型センサ5による検出信号のオフセットを除去し、検出信号を2値化して出力する回路である。オフセットキャンセル回路101は、4端子型センサ5を含んでなるチョッパ回路100と、チョッパ回路100の出力信号HoutPおよびHoutNを増幅するためのゲインアンプ11と、非反転入力端子にゲインアンプ11の正側出力端が接続され、反転入力端子にゲインアンプ11の負側出力端が接続されるアンプ12と、ゲインアンプ11の正側出力端とアンプ12の非反転入力端子との間に接続されゲインアンプ11の正側出力信号GoutPを基準とする電荷を保持するキャパシタ9と、ゲインアンプ11の負側出力端とアンプ12の反転入力端子との間に接続されゲインアンプ11の負側出力信号GoutNを基準とする電荷を保持するキャパシタ10と、を備える。さらに、アンプ12の出力端と反転入力端子との間に介挿されたスイッチ7を備えるとともに、キャパシタ9とアンプ12の非反転入力端子との間のノードN1と、ゲインアンプ11の負側出力端とキャパシタ10との間のノードN2との間に介挿されたスイッチ8を備え、これらスイッチ7および8は、チョッパ回路100における後述のチョッパ方向に応じて電荷の保持および加算を切り替える。そして、これらスイッチ7および8、また、チョッパ回路100に含まれる後述のスイッチ群6は、制御部20により制御されるようになっている。
【0026】
アンプ12は、スイッチ7を切り替えることによって、スイッチ7がONのときにはボルテージホロアとして動作し、スイッチ7がOFFのときにはコンパレータとして動作して、2値化信号を出力する。以上の構成を有する結果、オフセットキャンセル回路101は、4端子型センサ5で検出される磁場入力信号の大きさに応じて2値化信号を出力するようになっている。
図2は、チョッパ回路100の一例を示す構成図である。
チョッパ回路100は、4端子型センサ5とスイッチ群6とを備える。
【0027】
図2に示すように、4端子型センサ5は、センサ入力端子となる2つの端子と、センサ出力端子となる2つの端子と、を有する4端子型のセンサ、又はこの4端子型のセンサと等価な回路構成のセンサであって、ホール素子、磁気抵抗素子、歪みセンサ、圧力センサ、温度センサ、又は加速度センサ等である。4端子型センサ5は、例えば
図3に示すようにセンサ抵抗Rh1〜Rh4を有し、抵抗Rh1、Rh2を流れる電流i1と、センサ抵抗Rh3、Rh4を流れる電流i2との2つの出力の変位に基づいて、例えば永久磁石やコイル等から発生する磁束密度の絶対値を検出したり、磁気抵抗や歪み等を検出したりする。
【0028】
図2に示すように、4端子型センサ5の4つの端子のうち、一の端子を端子T1とし、この端子T1と対向する位置にある端子をT3、端子T1を上、端子T3を下としたとき端子T1およびT3の右側に位置する端子をT2、端子T1およびT3の左側に位置する端子、すなわち端子T2と対向する位置にある端子をT4とする。
スイッチ群6は、
図2に示すように、4端子型センサ5の各端子それぞれに対応して設けられた、スイッチ1A〜1Dと、スイッチ2A〜2Dと、スイッチ3A〜3Dと、4A〜4Dと、を備える。
【0029】
スイッチ1Aは、一端が端子T1に接続され、他端は電源Vccに接続される。スイッチ1Bは、一端が端子T1に接続され、他端はチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。スイッチ1Cは、一端が端子T1に接続され、他端はチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続される。スイッチ1Dは、一端が端子T1に接続され、他端は接地GNDされる。
【0030】
同様に、スイッチ2Aは、一端が端子T2に接続され、他端は電源Vccに接続される。スイッチ2Bは、一端が端子T2に接続され、他端はチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。スイッチ2Cは、一端が端子T2に接続され、他端はチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続される。スイッチ2Dは、一端が端子T2に接続され、他端は接地GNDされる。
【0031】
同様に、スイッチ3Aは、一端が端子T3に接続され、他端は電源Vccに接続される。スイッチ3Bは、一端が端子T3に接続され、他端はチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。スイッチ3Cは、一端が端子T3に接続され、他端はチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続される。スイッチ3Dは、一端が端子T3に接続され、他端は接地GNDされる。
【0032】
同様に、スイッチ4Aは、一端が端子T4に接続され、他端は電源Vccに接続される。スイッチ4Bは、一端が端子T4に接続され、他端はチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。スイッチ4Cは、一端が端子T4に接続され、他端はチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続される。スイッチ4Dは、一端が端子T4に接続され、他端は接地GNDされる。
【0033】
4端子型センサ5は、スイッチ群6により、全方向チョッパ方式で駆動される(以後、全方向チョッパ駆動ともいう。)。すなわち、4端子型センサ5の、対向する2つの端子間に流れる電流の方向を90度ずつ切り替え、電流の方向を90度ずつ回転させて流し、4つの端子のうちの残りの対向する2つの端子を、チョッパ回路100の正側出力端100Pおよび負側出力端100Nに接続する。そのため、オフセットキャンセル回路101は、全方向チョッパ駆動時には、4つの状態をとる。4つの状態を状態PH1、PH2、PH3、PH4とすると、これらは状態PH1からPH2、PH3、PH4の順に遷移する。
【0034】
以下、図を用いて説明する。
図4は、状態PH1時のオフセットキャンセル回路101の状態を示す。
状態PH1では、スイッチ7はOFF、スイッチ8はONに制御される。また、スイッチ群6の各スイッチが制御されることにより、4端子型センサ5の端子T1が電源Vccに接続されるとともに、端子T3が接地GNDされ、端子T2がチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続され、端子T4がチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。
【0035】
つまり、4端子型センサ5の端子T2およびT4の出力電圧が4端子型センサ5の出力信号HoutP、HoutNとなり、これがゲインアンプ11に入力され、ゲインアンプ11から、Vh1(ph1)、Vh2(ph1)として出力される。
状態PH1では、4端子型センサ5から出力される電圧は、ホール効果により入力磁場に応じた信号「−Vh」となる。4端子型センサ5にはオフセットがあるため、このオフセットをVoff(ph1)とする。ゲインアンプ11の利得を「A倍」とすると、Vh1(ph1)−Vh2(ph1)=A×(−Vh+Voff(ph1))となる。
ここで、スイッチ8はONに制御されているため、キャパシタ9の容量値をC1とすると、キャパシタ9に保持される電荷Q1は次式(1)で表される。
【0036】
Q1=C1×(Vh2(ph1)−Vh1(ph1))
=C1×A×(Vh−Voff(ph1)) ……(1)
【0037】
図5は、状態PH2時のオフセットキャンセル回路101の状態を示す。
状態PH2では、スイッチ7はON、スイッチ8はOFFに制御され、さらにスイッチ群6の各スイッチが制御されることにより、4端子型センサ5の端子T2が電源Vccに接続されるとともに、端子T4が接地GNDされ、端子T1がチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続され、端子T3がチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。
【0038】
つまり、4端子型センサ5の端子T1およびT3の出力電圧が4端子型センサ5の出力信号HoutP、HoutNとなり、これがゲインアンプ11に入力され、ゲインアンプ11から、Vh1(ph2)、Vh2(ph2)として出力される。
状態PH2は、4端子型センサ5への電源の接続方向が状態PH1から90度回転した状態である。状態PH1と同じ入力磁場である時、4端子型センサ5から出力される電圧は、ホール効果によって入力磁場に応じた信号「Vh」となる。このときの4端子型センサ5のオフセット電圧をVoff(ph2)とする。ゲインアンプ11の利得は「A倍」であるためVh1(ph2)−Vh2(ph2)=A×(Vh+Voff(ph2))となる。
【0039】
ここで、スイッチ8はOFF、スイッチ7はONであるため、Vh3(ph2)の電圧は状態PH1においてキャパシタ9に保持された電荷Q1とVh1(ph2)の電圧とから、次式(2)で表される。
【0040】
Vh3(ph2)=Vh1(ph2)+Q1/C1 ……(2)
図5に示すように、アンプ12がボルテージホロアになっているため、Vh4(ph2)はVh4(ph2)=Vh3(ph2)となる。キャパシタ10の容量値をC2とすると、キャパシタ10に保持される電荷 Q2は、次式(3)で表される。
【0041】
Q2=C2×(Vh4(ph2)−Vh2(ph2))
=C2×(Vh3(ph2)−Vh2(ph2)) ……(3)
(3)式は前記(2)式より、次式(4)と表される。
Q2=C2×(Vh1(ph2)+Q1/C1−Vh2(ph2))
……(4)
(4)式は前記(1)式より、次式(5)と表される。
【0042】
Q2
=C2×(Vh1(ph2)+A×(Vh−Voff1(ph1))
−Vh2(ph2))
=C2×(A×(Vh−Voff1(ph1))
+A×(Vh+Voff(ph2)))
=C2×A×(2×Vh−Voff(ph1)+Voff(ph2))
……(5)
図6は、状態PH3時のオフセットキャンセル回路101の状態を示す。
【0043】
状態PH3では、スイッチ7はOFF、スイッチ8はONに制御され、さらにスイッチ群6の各スイッチが制御されることにより、4端子型センサ5の端子T3が電源Vccに接続されるとともに、端子T1が接地GNDされ、端子T2がチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続され、端子T4がチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。
【0044】
つまり、4端子型センサ5の端子T2およびT4の出力電圧が4端子型センサ5の出力信号HoutP、HoutNとなり、これがゲインアンプ11に入力され、ゲインアンプ11から、Vh1(ph3)、Vh2(ph3)として出力される。
状態PH3は、4端子型センサ5への電源の接続方向が状態PH1から180度回転した状態である。状態PH1と同じ入力磁場である時、ホール効果によって入力磁場に応じた信号は「Vh」となる。4端子型センサ5のオフセット電圧をVoff(ph3)とする。ゲインアンプ11の利得は「A倍」であるためVh1(ph3)−Vh2(ph3)=A×(Vh+Voff(ph3))となる。このときスイッチ8はON、スイッチ7はOFFに制御されるため、キャパシタ9に保持される電荷Q3は、次式(6)で表される。
【0045】
Q3=C1×(Vh2(ph3)−Vh1(ph3))
=C1×A×(−Vh−Voff(ph3)) ……(6)
このとき、キャパシタ10に保持される電荷は、状態PH2からの電荷の移動が無いためQ2のままである。
図7は、状態PH4時のオフセットキャンセル回路101の状態を示す。
【0046】
状態PH4では、スイッチ7はOFF、スイッチ8はOFFに制御され、さらにスイッチ群6の各スイッチが制御されることにより、4端子型センサ5の端子T4が電源Vccに接続されるとともに、端子T2が接地GNDされ、端子T1がチョッパ回路100の正側出力端100Pに接続され、端子T3がチョッパ回路100の負側出力端100Nに接続される。
【0047】
状態PH4は、4端子型センサ5への電源の接続方向が状態PH1から270度回転した状態である。状態PH1と同じ入力磁場である時、ホール効果によって入力磁場に応じた信号は「−Vh」となる。4端子型センサ5のオフセット電圧をVoff(ph4)とする。ゲインアンプ11の利得は「A倍」であるためVh1(ph4)−Vh2(ph4)=A×(−Vh+Voff(ph4))となる。このときスイッチ8はOFF、スイッチ7もOFFであるため、Vh3(ph4)の電圧は状態PH3のキャパシタ9に保持された電荷Q3とVh1(ph4)の電圧とから、次式(7)で表される。
【0048】
Vh3(ph4)=Vh1(ph4)+Q3/C1 ……(7)
また、Vh4(ph4)の電圧は状態PH2においてキャパシタ10に保持された電荷Q2とVh2(ph4)の電圧とから次式(8)で表される。
【0049】
Vh4(ph4)=Vh2(ph4)+Q2/C1 ……(8)
このとき、アンプ12は、コンパレータとして動作するため、Vh3(ph4)とVh4(ph4)の電位差Vh3(ph4)−Vh4(ph4)によって、アンプ12の出力電圧VoがHIGHレベルまたはLOWレベルとなる。
つまり、状態PH1からPH4に遷移させることによって、4端子型センサ5への入力磁場に応じた、2値化出力が得られることになる。
【0050】
このとき、アンプ12の出力が切り替わる閾値はVh3(ph4)=Vh4(ph4)のときである。この閾値を計算すると、Vh3(ph4)−Vh4(ph4)=0となる。
そして、前記(7)式および(8)式からVh1(ph4)+Q3/C1−(Vh2(ph4)+Q2/C1)=0と表すことができる。
さらに、前記(5)式および(6)式から、次式(9)と表すことができる。
【0051】
Vh1(ph4)−Vh2(ph4)+A×(−Vh−Voff(ph3))
−A×(2×Vh−Voff(ph1)+Voff(ph2))=0
A×(−Vh+Voff(ph4))+A×(−Vh−Voff(ph3))
−A×(2×Vh−Voff(ph1)+Voff(ph2))=0
A×(−4×Vh+Voff(ph1)−Voff(ph2)
−Voff(ph3)+Voff(ph4))=0 ……(9)
【0052】
(9)式において、Voff(ph1)とVoff(ph3)、Voff(ph2)とVoff(ph4)はゲインアンプ11の入力に接続される4端子型センサ5の端子がそれぞれ同じであるため、より同等の値を取る。故に2方向チョッパ駆動よりも全方向チョッパ駆動の方が、4端子型センサ5のオフセットがキャンセルされることになる。4端子型センサ5のオフセットがキャンセルされることで(9)式は、次式(10)と表すことができ、4端子型センサ5のオフセット電圧によらないことがわかる。
【0053】
−4×Vh×A=0 ……(10)
したがって、オフセットキャンセル回路101を
図1に示す構成とすることによって、4端子型センサ5のオフセット電圧の影響をより抑制した、2値化出力を得ることができる。
【0054】
ここで、
図1に示す本願発明におけるオフセットキャンセル回路101と、
図11に示す従来のオフセットキャンセル回路200とを比較すると、本願発明におけるオフセットキャンセル回路101は、オフセットキャンセル回路200において、キャパシタ9とスイッチ8とがさらに追加された構成である。したがって、オフセットキャンセル回路101は、全方向チョッパ駆動を行ってはいるが、従来のオフセットキャンセル回路200に比較して、オフセットキャンセル回路101を構成する素子の大幅な増加、あるいは、これに伴う素子の配置面積の大幅な増加を伴うことなく、シンプルな回路設計で全方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路101を実現することができる。
【0055】
そして、上述のように、オフセットキャンセル回路101は、従来のオフセットキャンセル回路200に比較して、4端子型センサ5のオフセット電圧の影響を、より抑制することができる。したがって、回路の大幅な増大を伴うことなく、4端子型センサ5のオフセット電圧の影響をより抑制したオフセットキャンセル回路101を実現することができる。
【0056】
(変形例1)
図8に示すオフセットキャンセル回路102は、
図1に示す、オフセットキャンセル回路101において、さらに、スイッチ13および14を追加したものである。
スイッチ13は、ノードN1とアンプ12の非反転入力端子との間に介挿され、スイッチ14は、キャパシタ10とアンプ12の反転入力端子との間に介挿される。
【0057】
これらスイッチ13および14は、アンプ12の入力側に寄生する容量が大きい場合には、キャパシタ9および10との電荷再配分が起こり、所望の電荷をキャパシタ9および10に保持することができない場合や、セトリング時間の短縮を図る場合に、有効なスイッチである。すなわち、オフセットキャンセル回路102を4つの状態PH1〜PH4に切り替える際に、電荷再配分が生じないように、状態PH1およびPH3の状態で、スイッチ13および14をOFFとすることにより、アンプ12の入力側に寄生する容量を見えないようにすることができる。
なお、スイッチ13およびスイッチ14は必ずしも両方備えている必要はなく、いずれか一方のみ設けることも可能である。
【0058】
(変形例2)
図9に示すオフセットキャンセル回路103は、オフセットキャンセル回路103の出力電圧Voの、HIGHレベルおよびLOWレベルの切り替わりの閾値を調整可能に構成したものである。
すなわち、
図8に示すオフセットキャンセル回路102において、チョッパ回路100の出力に、オフセット電流を重畳させ、オフセット電圧を生成することで閾値を調整している。このような閾値を調整可能なオフセットキャンセル回路103に対しても、全方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路を実現することができる。
【0059】
オフセットキャンセル回路103は、
図8に示すオフセットキャンセル回路102において、さらに、チョッパ回路100の正側出力端100Pとゲインアンプ11との間のノードN3と、定電流源21とがスイッチ15を介して接続され、チョッパ回路100の負側出力端100Nとゲインアンプ11との間のノードN4と、定電流源21とがスイッチ16を介して接続されている。
【0060】
図9において、チョッパ回路100の出力に重畳されるオフセット電流をI1とする。また、4端子型センサ5は、
図3に示すように、抵抗Rh1〜Rh4からなるブリッジモデルで表されるものとする。
抵抗Rh1〜Rh4の抵抗値をRhとすると、オフセット電流I1によって生成されるオフセット電圧Vhは、I1×Rhとなる。状態PH1およびPH4のときにスイッチ15をON、スイッチ16をOFFとし、状態PH2およびPH3のときにスイッチ15をOFF、スイッチ16をONとして、チョッパ回路100の出力信号にオフセット電圧Vhを加算することにより、閾値を調整することができる。
図9の回路を用いた場合、前記(10)式は、オフセット電圧Vhが加算され、次式(11)で表される。
【0061】
−4×(Vh−I1×Rh)×A=0
Vh=I1×Rh ……(11)
(11)式から、オフセット電流I1を調整することで自由に閾値を調整できることがわかる。
なお、オフセット電圧は、チョッパ回路100の出力信号HoutPおよびHoutNの双方に加算する場合に限るものではなく、いずれか一方ののみ、加算するようにしてもよい。
【0062】
(変形例3)
図10に示すオフセットキャンセル回路104は、オフセットキャンセル回路104の出力電圧Voの、HIGHレベルおよびLOWレベルの切り替わりの閾値を調整可能に構成したものであるが、
図8に示すオフセットキャンセル回路102において、ゲインアンプ11の出力に、オフセット電流を重畳させ、オフセット電圧を生成することで閾値を調整するようにしたものである。この場合も、全方向チョッパ方式によるオフセットキャンセル回路を実現することができる。
【0063】
オフセットキャンセル回路104は、
図10に示すように、
図8に示すオフセットキャンセル回路102において、さらに、ゲインアンプ11の正側出力端とキャパシタ9との間のノードN5と定電流源22とがスイッチ16を介して接続され、ゲインアンプ11の負側出力端とキャパシタ10との間のノードN6と定電流源22とがスイッチ15を介して接続されている。さらに、ゲインアンプ11の正側出力端とノードN5との間に抵抗17が介挿され、ゲインアンプ11の負側出力端とノードN6との間に抵抗R18が介挿されている。
【0064】
図10において、ゲインアンプ11の出力に重畳されるオフセット電流をI2とする。また、4端子型センサ5は、
図3に示すように、抵抗Rh1〜Rh4からなるブリッジモデルで表されるものとする。
図10において、ゲインアンプ11の出力につながる抵抗17および18の抵抗値をそれぞれRsとすると、オフセット電流I2によって生成されるオフセット電圧はI2×Rsとなる。状態PH1およびPH4の時にスイッチ15をON、スイッチ16をOFFとし、状態PH2およびPH3のときにスイッチ15をOFF、スイッチ16をONとすることで、ゲインアンプ11の出力信号に、オフセット電圧(Vh×A)を加算し、閾値を調整することができる。前記(10)式はオフセット電圧を加算され、次式(12)で表すことができる。
【0065】
−4×Vh×A−4×I2×Rs=0
Vh×A=I2×Rs ……(12)
(12)式から、抵抗17および18の抵抗値Rsおよび電流I2を調整することで自由に閾値を調整できることがわかる。
なお、オフセット電圧は、ゲインアンプ11の出力信号GoutPおよびGoutNの双方に加算する場合に限るものではなく、いずれか一方のみ加算するようにしてもよい。
【0066】
また、変形例2と変形例3とを組み合わせ、変形例2において、さらにゲインアンプ11の出力信号に、オフセット電流を供給する構成とすることも可能である。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。