(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または請求項2に記載のシリコン融液面の高さ位置の算出方法を用いてシリコン融液面の高さ位置を算出し、該算出結果に基づき、シリコン融液面の高さ位置を制御しつつシリコン単結晶を引上げることを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。
【背景技術】
【0002】
従来、CZ法によりシリコン単結晶を育成するにあたっては、
図9のようなシリコン単結晶引上げ装置が用いられてきた。
図9に示すように、この引き上げ装置101は、チャンバー102、ルツボ103、ルツボ103を回転・昇降させるためのルツボ調整手段105、ヒーター106を有している。また、ルツボ103内には、ヒーター106により溶融したシリコン融液108が収容されており、チャンバー102の上方から吊されたワイヤー111の下端に保持された種結晶112をシリコン融液108に浸漬して引上げることにより、シリコン単結晶113が育成される。引上げ中、チャンバー102内には不活性ガスが流されており、そのための整流筒110も設けられている。
【0003】
上記のように、チャンバー内に不活性ガスの整流筒を具備したシリコン単結晶の製造においては、例えば整流筒の先端からシリコン融液面までの距離等を正確に設定することが必要である。無欠陥結晶等の製造方法では欠陥を精度良く制御する為に結晶成長時の固液界面近傍の温度勾配(G)をコントロールする必要があり、そのコントロールにあたってはシリコン融液面の位置を正確に測定することが必須である。
【0004】
従来では単結晶製造用の角柱種の先端をレーザーセンサーにて検出し所定の位置で停止させ、その点から下降させ、シリコン融液面に接触するまでの距離を測定することにより正確なシリコン融液面の位置を算出していた(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の方法ではシリコン融液面の高さ位置を計測するのは結晶を製造する前の段階のみであり、結晶製造中は測定したシリコン融液面の高さ位置を基準として、計算上シリコン融液面が一定となるように制御していたため、石英ルツボの変形や成長単結晶の直径などの誤差により、実際にはシリコン融液面が一定とならず、結晶の品質のばらつきの一要因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、シリコン単結晶を引上げているときのシリコン融液面の高さ位置をより正確に算出することができる方法を提供することを目的とする。また、シリコン融液面の高さ位置をより正確に制御しつつシリコン単結晶を引上げることができる方法およびシリコン単結晶引上げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、チョクラルスキー法により、ルツボ内に収容したシリコン融液からシリコン単結晶を引上げる際に、シリコン融液面の高さ位置を算出する方法であって、前記シリコン単結晶に対して任意の角度に設置したCCDカメラを用い、前記シリコン融液とシリコン単結晶との境界のフュージョンリングから計測した第一の結晶直径と、前記シリコン単結晶の結晶直径の両端に向かって各々平行に設置した2台のCCDカメラを用いて計測した第二の結晶直径を求め、該第一の結晶直径と第二の結晶直径の差から、シリコン単結晶引上げ中におけるルツボ内のシリコン融液面の高さ位置を算出することを特徴とするシリコン融液面の高さ位置の算出方法を提供する。
【0009】
このような本発明のシリコン融液面の高さ位置の算出方法であれば、実際にシリコン融液面の高さ位置に関して計測するのがシリコン単結晶の引上げ前である従来法とは異なり、引上げ中のシリコン単結晶に関するデータ(第一の直径および第二の直径)からシリコン融液面の高さ位置を算出しているので、より正確に、シリコン単結晶引上げ中のシリコン融液面の高さ位置を把握することが可能である。
CCDカメラを用いた直径の計測自体は簡便である上に、そのCCDカメラによる異なる計測方法の組み合わせを利用することでシリコン融液面の高さ位置も求めることが可能になった。
【0010】
さらには、シリコン単結晶引上げ中のシリコン融液面の高さ位置を正確に把握できることで、シリコン融液面をより正確に所望の高さ位置に制御でき、それによって固液界面近傍の温度勾配の制御、さらにはシリコン単結晶中の欠陥領域の制御等もより高精度で行うことができる。
【0011】
このとき、前記シリコン融液面の高さ位置を算出するとき、所定の高さ位置からの移動量ΔHを、
ΔH=ΔD/(2tanθ) (前記第一の結晶直径を計測するためのCCDカメラのシリコン単結晶に対する設置角度をθ、前記第一の結晶直径と第二の結晶直径の差をΔDとする)
により求めることで算出することができる。
【0012】
このようにすれば、より簡便にシリコン融液面の高さ位置を算出することができる。
【0013】
また、本発明は、上記シリコン融液面の高さ位置の算出方法を用いてシリコン融液面の高さ位置を算出し、該算出結果に基づき、シリコン融液面の高さ位置を制御しつつシリコン単結晶を引上げることを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法を提供する。
【0014】
このような本発明のシリコン単結晶の引上げ方法であれば、シリコン単結晶引上げ中のシリコン融液面の高さ位置をより正確に把握することができ、該正確なデータに基づいてシリコン融液面の高さ位置を所望の高さ位置に制御することができるので、シリコン単結晶中の欠陥領域の制御等をより高精度で行うことが可能である。したがって所望の品質のシリコン単結晶を安定して生産することができる。
【0015】
また、本発明は、チョクラルスキー法により、ルツボ内に収容したシリコン融液からシリコン単結晶を引上げるためのシリコン単結晶引上げ装置であって、
前記シリコン単結晶に対して任意の角度に設置され、前記シリコン融液とシリコン単結晶との境界のフュージョンリングから結晶直径を計測するためのCCDカメラを有する第一の結晶直径計測手段と、前記シリコン単結晶の結晶直径の両端に向かって各々平行に設置した2台のCCDカメラを有する第二の結晶直径計測手段と、前記ルツボの高さ位置を制御するルツボ調整手段とを備えており、前記第一の結晶直径計測手段により計測された第一の結晶直径と、前記第二の結晶直径計測手段により計測された第二の結晶直径との差から、前記シリコン単結晶引上げ中におけるルツボ内のシリコン融液面の高さ位置を算出し、該算出された高さ位置に基づき、前記ルツボ調整手段によりルツボの高さ位置を制御しつつシリコン単結晶を引上げるものであることを特徴とするシリコン単結晶引上げ装置を提供する。
【0016】
このような本発明のシリコン単結晶引上げ装置であれば、シリコン単結晶引上げ中のシリコン融液面の高さ位置をより正確に簡便に算出することができ、しかも、該算出されたシリコン融液面の高さ位置に基づいてルツボの高さ位置を制御しつつシリコン単結晶を引上げるので、シリコン融液面を所望の高さ位置に制御することができ、より高精度で固液界面近傍の温度勾配の制御、さらにはシリコン単結晶中の欠陥領域の制御等が可能になる。これにより、所望の品質のシリコン単結晶を安定して生産することができる。
【0017】
このとき、前記シリコン融液面の高さ位置は、所定の高さ位置からの移動量ΔHが、
ΔH=ΔD/(2tanθ) (前記第一の結晶直径計測手段のCCDカメラのシリコン単結晶に対する設置角度をθ、前記第一の結晶直径と第二の結晶直径の差をΔDとする)
により求められることで算出されるものとすることができる。
【0018】
このようなものであれば、より簡便にシリコン融液面の高さ位置を正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明のシリコン融液面の高さ位置の算出方法や、それを用いたシリコン単結晶の引上げ方法、また、シリコン単結晶引上げ装置であれば、シリコン単結晶引上げ中のシリコン融液面の高さ位置をより正確に得ることができ、そのため所望の高さ位置により高精度で制御することができる。これにより所望の品質を有するシリコン単結晶の安定生産が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のシリコン単結晶引上げ装置について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明のCZ法によるシリコン単結晶引上げ装置の一例を示す。
このシリコン単結晶引上げ装置(以下、単に引上げ装置ともいう)1は、中空円筒状のチャンバー2を具備し、その中心部にルツボ3が配設されている。このルツボは二重構造であり、有底円筒状をなす石英製のルツボ3aと、その石英ルツボ3aの外側を保持すべく適合された同じく有底円筒状の黒鉛製のルツボ3bとから構成されている。
【0022】
また、このルツボ3は、回転および昇降が可能になるように支持軸4の上端部に固定されていて、ルツボ調整手段5により、モーター等を用いてルツボ3の回転速度や高さ位置が調整可能である。
【0023】
ルツボの外側には抵抗加熱式のヒーター6が概ね同心円状に配設されている。さらに、ヒーター6の外側周辺には断熱材7が同心円状に配設されている。そして、ヒーター6により加熱され、シリコン原料を溶融したシリコン融液8がルツボ3内に収容されている。
【0024】
シリコン融液の表面(シリコン融液面9)上には、引上げ中にチャンバー2内に流す不活性ガスのための整流筒10が配設されている。なお、この他、冷却ガスを吹き付けたり、輻射熱を遮ってシリコン単結晶を冷却する筒状の冷却装置等も設けることも可能である。
【0025】
シリコン融液8を充填したルツボ3の中心軸には、支持軸4と同一軸上で逆方向または同方向に所定の速度で回転するワイヤー11が配設され、ワイヤー11の下端には種結晶12が保持されている。そして、種結晶12の下端面にはシリコン単結晶13が形成される。
【0026】
さらに、引上げ装置1は、シリコン単結晶13の直径を計測する手段を備えている。第一の結晶直径計測手段14と、第二の結晶直径計測手段15である。第一の結晶直径計測手段14はチャンバー2に設けられた窓からシリコン単結晶13を観測可能なCCDカメラ14aを備えている。また、第二の結晶直径計測手段15は2台のCCDカメラ15a、15bを備えている。また、これらの計測手段14、15はコンピュータ等からなる制御部16と接続されており、CCDカメラ14a、15a、15bからのデータが送信され、データ処理して第一の結晶直径、第二の結晶直径や、それらの差、また、シリコン融液面9の高さ位置等を算出することができるようになっている。
【0027】
また、制御部16はルツボ調整手段5やワイヤー11の巻き取りを制御する機構に接続されており、得られたシリコン融液面9の高さ位置に基づいてルツボ3の高さ位置やワイヤー11によるシリコン単結晶13の引上げ速度等にフィードバックして自動的に制御することができる。シリコン融液面9を所定の高さ位置に自動制御したり、引上げ速度を所定の値に自動制御できるように、予め適切なプログラムを組んでおくことができる。
【0028】
以下では、第一の結晶直径計測手段14、第二の結晶直径計測手段15について詳述する。
まず、第一の結晶直径計測手段14について説明する。
図2にCCDカメラ14aとシリコン単結晶13の直径との関係を示す。
シリコン単結晶13に対して任意の角度θで1台のCCDカメラ14aは設置されている。CCDカメラ14aはシリコン融液8とシリコン単結晶13との境界に存在するフュージョンリング17(高輝度帯)を検出しており、第一の結晶直径計測手段14によって第一の結晶直径を求めることができる。
図2の場合、結晶直径Da(結晶半径Ra×2)を計測している。
【0029】
なお、この第一の結晶直径計測手段14での計測はシリコン融液面9の高さ位置の影響を受け誤差を生じる。
図3に、シリコン融液面9の高さ位置が変化したときのCCDカメラ14aとシリコン単結晶13の直径との関係を示す。
例えば、シリコン融液面9が、予め設定した所定の高さ位置Haから上昇して高さ位置Hbになった場合、実際の結晶直径がDa(すなわちRa×2)であっても、Db(すなわちRb×2)と短く計測されてしまう。シリコン融液面
9が所定の高さ位置Haから下降して高さ位置Hcになった場合、Dc(すなわちRc×2)と長く計測されてしまう。
【0030】
一方、第二の結晶直径計測手段15では、2台のCCDカメラ15a、15bが設置されている。
図4にCCDカメラ15a、15bとシリコン単結晶13の直径との関係を示す。これらのCCDカメラ15a、15bを用いて第二の結晶直径が計測される(
図4の場合、Da’)。
CCDカメラ15a、15bは、各々、シリコン単結晶13の直径の両端に対して平行に設置されている。例えば、これらのCCDカメラ15a、15b同士の設置距離を目標とする結晶直径の長さにすることができるが、当然、これに限定されるものではない。必要に応じて平行移動等が可能な機構等を設けることができる。
【0031】
この第二の結晶直径計測手段15での計測はシリコン融液面9の高さ位置の影響を受けない。
図5に、シリコン融液面9の高さ位置が変化したときのCCDカメラ15a、15bとシリコン単結晶13の直径との関係を示す。
例えば、シリコン融液面9が、予め設定した所定の高さ位置Ha’から上昇して高さ位置Hb’になった場合、あるいは下降して高さ位置Hc’になった場合、いずれにおいても計測される結晶直径はDa’である。視野が上下するだけで計測される結晶直径は変化しない。
【0032】
そして、制御部16では、これらの第一の結晶直径計測手段14のCCDカメラ14aを用いて計測された第一の結晶直径と、第二の結晶直径計測手段15のCCDカメラ15a、15bを用いて計測された第二の結晶直径との差が算出され、さらにシリコン融液面の高さ位置が算出される。
制御部16での算出プログラムは特には限定されないが、例えば以下のようなものとすることができる。
図6に、第一の結晶直径と第二の結晶直径との差と、シリコン融液面の高さ位置(あるいは所定の高さ位置からの移動量)との関係を示す。
ここでは、シリコン単結晶13を引上げ中に、所定の高さ位置HaからHcへとシリコン融液面9が下降した場合、すなわち第一の結晶直径がDa(すなわちRa×2)からDc(すなわちRc×2)へ変化し、第二の結晶直径はDaのままの場合を例に挙げて説明する。
【0033】
ここで、ΔHを所定の高さ位置HaからHcへのシリコン融液面の移動量とする。
また、ΔDを第一の結晶直径と第二の結晶直径の差(Dc−Da)とする。
また、θをCCDカメラ14aのシリコン単結晶13に対する設置角度とする。すなわち、シリコン融液面の高さ位置がHaのときのフュージョンリングからCCDカメラ14aへの方向とシリコン単結晶13の側面とがなす角度である。
また、θ’はシリコン融液面の高さ位置がHcのときのフュージョンリングからCCDカメラ14aへの方向とシリコン単結晶13の側面とがなす角度である。
【0034】
例えばθ’をθに近似して、
図6に示す関係から
ΔH=ΔD/(2tanθ) ……(式1)
として求めることができる。そして所定の高さ位置Haと移動量ΔHから、実際の高さ位置Hcを算出することができる。このように、θとθ’を近似した式を用いることで、より簡単にシリコン融液面9の移動量を求め、その高さ位置を得ることが可能である。もちろん、近似せずにθ’を求めて高さ位置Hcを算出しても良い。
【0035】
次に、本発明のシリコン融液面の高さ位置の算出方法およびシリコン単結晶の引上げ方法について説明する。
図1に示すような引上げ装置1を用いてシリコン単結晶13を引上げる。
まず、ルツボ3内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上にヒータ6により加熱して融解する。次に、ワイヤー11を巻き出すことにより、シリコン融液8の表面略中心部に種結晶12の先端を接触または浸漬させる。その後、支持軸4を適宜の方向に回転させるとともに、ワイヤー11を回転させながら巻き取り、種結晶12を引き上げることにより、シリコン単結晶13の育成を開始する。
【0036】
以後、引き上げ速度等を適切に調整することにより、例えば無欠陥領域等、所望の品質を有するシリコン単結晶13を引上げるのだが、ここで、上述したように、例えばシリコン単結晶13における欠陥領域を制御するにあたっては、引上げ速度のみならず、固液界面近傍の温度勾配G(シリコン単結晶の結晶中心部ではGc、結晶周辺部ではGe)を最適に制御する必要がある。
そして、この固液界面近傍の温度勾配を制御するには、シリコン融液面9から整流筒10の先端への距離等を正確に制御する必要があり、それにはシリコン単結晶13を引上げ中のシリコン融液面9の高さ位置を正確に把握することが重要である。
【0037】
そこで、本発明の算出方法では、第一の結晶直径計測手段14および第二の結晶直径計測手段15を用いてシリコン融液面9の高さ位置を算出する。
なお、例えば、引上げ前に予め測定しておいたシリコン融液面9の高さ位置を基準とすることができる。当然、これに限定されず、整流筒10等から所定の距離だけ離れた位置を基準とすることもでき、その都度基準を決定することが可能である。
【0038】
シリコン融液面9の高さ位置の算出にあたっては、まず、引上げ中のシリコン単結晶13に関して、第一の結晶直径計測手段14のCCDカメラ14aを用いて第一の結晶直径を計測するとともに、第二の結晶直径計測手段15のCCDカメラ15a、15bを用いて第二の結晶直径を計測する。制御部16によりそれらの差を算出し、上記(式1)によりシリコン融液面9の移動量を適宜求めて、その時々のシリコン融液面9の高さ位置を算出する。
【0039】
そして、本発明の引上げ方法では、このようにして算出したシリコン融液面9の高さ位置に基づき、制御部16で予め設定しておいたプログラムにより、例えばルツボ調整手段5によってルツボ3の高さ位置を適切に制御する。上述の基準の高さ位置にシリコン融液面9の高さ位置を保つなどして固液界面近傍の温度勾配Gを制御しつつ、また、同時に制御部16によりシリコン単結晶13を所定の引上げ速度Vに制御して引上げる。
【0040】
これにより、所望の欠陥領域をつくるために必要なV/G(引上げ速度と温度勾配の比)を高精度に制御することが可能になる。そして、直径が一定に保たれた、無欠陥領域を含む高品質なシリコン単結晶などを、安定して収率よく得ることが可能になる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
CZ法により、
図1に示す本発明のシリコン単結晶引上げ装置1を用い、本発明のシリコン融液面の高さ位置の算出方法およびシリコン単結晶の引上げ方法を実施してシリコン単結晶を引上げた。
シリコン単結晶引上げ装置1のチャンバー2内に設置された、直径が812
mmの石英ルツボ3に多結晶シリコン360kgを充填し、黒鉛ヒーター6に通電して多結晶シリコンを溶融した。
その後、種結晶12を融液面に接触させ、ルツボ3の回転方向とは逆に8rpmで回転させつつ、ワイヤー11の巻き上げ機構で上昇することでシリコン単結晶13を育成した。
【0042】
このとき、結晶軸方向に所望の欠陥領域の分布となるように、所定の固液界面近傍の温度勾配Gが得られるように、整流筒10の先端から所定距離の位置を基準とし、該基準となる高さ位置にシリコン融液面9が維持されるようにルツボ3の高さ位置を制御した。具体的には、第一の結晶直径計測手段14および第二の結晶直径計測手段15を用い、第一の結晶直径および第二の結晶直径を計測し、上記(式1)からシリコン融液面9の高さ位置を算出しつつ、制御部16を介してルツボ調整手段5によりルツボ3の高さ位置をフィードバック制御しながらシリコン単結晶を引上げた。
なお、CCDカメラ14aはシリコン単結晶に対して45度の角度で設置して計測を行った。
【0043】
図7に第一の結晶直径と第二の結晶直径との差から推定されたシリコン融液面の移動量と引上げた結晶長さとの関係を示す。
結晶軸方向の長さ全般にわたってシリコン融液面の高さ位置の移動量が0mm付近であり、引上げ中に基準の高さ位置から大きく離れることもなく維持できたことが分かる。
また、引上げたシリコン単結晶について調査したところ、結晶軸方向の長さの全体にわたって所望の欠陥領域が得られていた。
【0044】
(比較例)
CZ法により実施例と同様の結晶品質を目標としてシリコン単結晶を引上げた。
この際、結晶軸方向に所望の欠陥領域の分布となるように、所定の固液界面近傍の温度勾配Gが得られるように、整流筒の先端から所定距離の位置を基準とし、該基準となる高さ位置にシリコン融液面が維持されるようにルツボの高さ位置を制御した。なお、引上げ中のシリコン単結晶の直径等のデータは利用せず、単に、引上げ前のシリコン融液面の高さ位置のデータ等から、計算によってのみ、シリコン融液面の高さ位置の変化等を予測し、ルツボの高さ位置の制御を行った。それ以外は実施例と同様の条件とした。
【0045】
図8に第一の結晶直径と第二の結晶直径との差から推定されたシリコン融液面の移動量と引上げた結晶長さとの関係を示す。
結晶が成長するにしたがってシリコン融液面の移動量は徐々に増加していき、最終的には基準から1mmずれてしまった。
このため、引上げたシリコン単結晶について調査したところ、引上げ後半部において、所望の欠陥領域が得られていない部分が広い範囲で存在した。シリコン単結晶の引上げ中に石英ルツボの変形等が生じ、それによってシリコン融液面の高さ位置についての当初の計算による予想からズレが生じたものと考えられる。
【0046】
このように、比較例では種々の要因により、シリコン単結晶の引上げ中のシリコン融液面の高さ位置の変化に対応できておらず、その結果、シリコン融液面の高さ位置の制御、ひいてはV/G等の制御を適切に行うことができず、目標とする品質のシリコン単結晶を得ることができなかった。
一方、本発明を実施した実施例では、実際に引上げ中のシリコン単結晶の直径に関するデータを利用して簡便にルツボの高さ位置等のフィードバック制御をすることができた。これにより、より高精度で、シリコン融液面の高さ位置の算出・制御を行い、その目標とする品質のシリコン単結晶を得ることができた。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。