【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「半導体アプリケーションチッププロジェクト(情報家電用半導体アプリケーションチップ技術開発)ワイヤレスHDMIモジュール(HDMIスティック)の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
Ahmet Oncu, Minoru Fujishima,Low-Power CMOS Traansceiver Circuits for 60GHz Band Millimeter-wave Impulse Radio,Design Automation Conference,IEEE,2009年 1月19日,ASP-DAC 2009. Asia and South Pacific,pp.99-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記DDC送受信機は、前記制御信号DDCの送受信の前に、シンク機器側でHPDがハイ状態となっているか否かを確認するHPD確認パケットを送信することを特徴とする、請求項10に記載の無線送信機。
前記DDC送受信機は、前記制御信号DDCの送受信がアイドル状態となっているときに、シンク機器側のHPDの状態を監視するためにHPD確認パケットを送信することを特徴とする、請求項10に記載の無線送信機。
さらに、前記デジタル信号HDMI0、HDMI1、及びHDMI2のいずれかから、クロック信号TMDSCLKを再生するクロックデータリカバリー回路を備えることを特徴とする、請求項22に記載の無線受信機。
前記DDC送受信機は、前記制御信号DDCの送受信の前に、シンク機器側でHPDがハイ状態となっているか否かを確認するHPD確認パケットを受信し、HPDの状態を返送するレスポンスパケットを送信することを特徴とする、請求項25に記載の無線受信機。
前記DDC送受信機は、前記制御信号DDCの送受信がアイドル状態となっているときに、シンク機器側のHPDの状態を監視するためにHPD確認パケットを受信し、HPDの状態を返送するレスポンスパケットを送信することを特徴とする、請求項25に記載の無線受信機。
【背景技術】
【0002】
今日市場に導入されている高精細度プラズマテレビや、液晶テレビ、デジタルプロジェクター、DVDプレーヤー、ブルーレイプレーヤーの多くは、高精細度メディアインターフェース(HDMI:High Definition Multimedia Interface)コネクタを備えている。HDMIコネクタを用いると、ソース機器(たとえば、デジタルセットトップボックス、DVDプレーヤー、ブルーレイプレーヤー、HDDプレーヤーなど)は、シンク機器(たとえば、高精細度テレビジョンやディスプレイ装置、デジタルプロジェクターなど)に、デジタルコンテンツを高性能に転送することができる。
【0003】
HDMI規格では、10
-9のビット誤り率(BER:Bit error ratio)で1.5Gbpsのデータ転送速度(ビットレート)を必要とする720pおよび1080iの高精細度テレビジョン(HDTV:High Definition TeleVision)をはじめとする全ての一般的な高精細度フォーマットに対応するための仕様が規定されている。また、HDMI規格では、デジタルコンテンツがソース機器とシンク機器との間を転送される際の安全性を確保するために、高帯域デジタルコンテンツ保護(HDCP:High−bandwidth Digital Content Protection system)に関する仕様も規定されている。このように包括的に設計されたHDMI規格は、業界から幅広い支持を獲得している。HDMIを備えた装置の売上げは、2005年の5000万台から2008年の2億台以上に成長すると見込まれている。
【0004】
図31は、HDMI規格において、ソース機器からシンク機器へ伝送される信号を概説するためのブロック図である。
図32は、HDMIコネクタのピンに割り当てられている信号の種別を示す図である。まず、
図31及び
図32を参照しながら、HDMI規格の概要について説明する。なお、
図31において、デジタル信号TMDSData0+とデジタル信号TMDSData0−はそれぞれ差動信号の正と負を表している。デジタル信号TMDSData1+とデジタル信号TMDSData1−、及びデジタル信号TMDSData2+とデジタル信号TMDS Data2−についても同様である。
【0005】
ソース機器900とシンク機器901とは、HDMIケーブル902によって接続される。ソース機器900で発生したビデオ信号及びオーディオ信号は、HDMI送信機903に入力される。HDMI送信機903は、送信すべき信号をシリアルの3チャンネルのデジタル信号に変換して、HDMIケーブル902の3つのチャネル「TMDSData0」、「TMDSData1」、及び「TMDSData2」に出力する。「TMDSData0」、「TMDSData1」、及び「TMDSData2」のチャネルにおいて、ビットレートは、1チャネル当たり、最大1485Mbps(1080Pで、Color depthが8bitの場合)になる。また、HDMI送信機903は、制御信号Control/Statusに基づいて、適切なクロック信号TMDSCLKを生成して、HDMI
ケーブル902のチャネル「TMDSClock」に出力する。たとえば、TMDSCLKは、TMDSData0〜2のビットレートの十分の一のクロック周波数を有する。HDMI受信機904は、HDMIケーブル902を介して入力されたシリアルの3チャンネルのデジタル信号を、TMDSCLKを用いて、ビデオ信号及びオーディオ信号に再生して、出力する。
【0006】
ソース機器900とシンク機器901とは、DDC(Display Data Channel)と呼ばれる制御信号として、SCL(シリアルクロック)及びSDA(シリアルデータ)を双方向に通信する。制御信号DDCは、ソース機器900とシンク機器901との間の設定情報や状態情報の交換に利用される。制御信号DDCの通信のためには、I2C(Inter−Integrated Circuit)と呼ばれる通信プロトコルが利用される。I2Cのビットレートは、100Kbpsと低速である。
【0007】
ソース機器900とシンク機器901は、「Hot Plug Detect」と「+5V Power」とを組み合わせて使用することによって、HDMIケーブルがソース機器900及びシンク機器901に接続されていることを確認する。シンク機器901は、ソース機器900から出力される+5V電圧を検出し、ケーブルが接続されていることを認識する。+5V電圧は、シンク機器901内で1Kオームの抵抗を介して、「Hot Plug Detect」へ戻される。ソース機器900は、「Hot Plug Detect」の信号が5Vになったことを検出したら、ケーブルが接続されたと認識する。
【0008】
なお、CEC(Consumer Electronics Control)は、ソース機器900とシンク機器901との間の通信に使用されるオプションの制御信号である。
【0009】
このようにして、ソース機器900とシンク機器901とは、HDMIケーブル902を利用して接続されていた。
【0010】
ところで、近年、HDTVの薄型化・軽量化が発展し、壁掛け型のHDTVも市場に流通している。壁掛け型のHDTVの場合、ソース機器とHDTVとの間をHDMIケーブルが壁を伝って配線されていたのでは、外観を損ねるおそれがある。そこで、ソース機器とHDTVとの間を無線で通信することが望まれている。
【0011】
このような状況の中、下記のような特許文献1〜8に記載の発明が提案されている。
【0012】
特許文献1に記載の送信装置(1)は、R,G,B,及びクロック信号をP/S(パラレルシリアル)変換部(10)によって、シリアル信号に変換する。その上で、送信装置(1)は、直並列変換器(11)によって、シリアル信号を交互に分岐して、I信号及びQ信号とする。送信装置(1)は、QPSK変調部(12)によって、I信号をミリ波で変調して同相成分(I1)を得て、Q信号を位相が90度遅れたミリ波で変調して直交成分(Q1)を得る。送信装置(1)は、同相成分(I1)と直交成分(Q1)とを、加算機(12c)で重畳して、アンテナ部(13)から出力する。受信装置(2)は、送信装置(1)から送信されてきた重畳信号(IQ1)を復調する。このように、特許文献1では、複数のデジタル信号をシリアル信号に変換して、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式で変調し、ミリ波を用いて、無線伝送する送信装置及び受信装置が開示されている。
【0013】
特許文献2に記載のマルチメディアソース(12)は、第1リンク(22)を60GHzとし、第2リンクを低レートとしている。マルチメディアソース(12)は、順方向チャネル変調器(36)によって、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)や、QPSK、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、8PSK(8−Phase Shift Keying)等を用いて、デジタルデータをアナログ信号に変調し、順方向チャネルアップコンバーター(38)によって、60GHzのミリ波にアップコンバートして、送信する。
【0014】
特許文献3に記載の無線Txチップ(16)は、送信機プロセッサ(18)によってマルチメディアデータをI及びQの信号に変換し、無線送信機(20)によってQPSK、DQPSK、BPSK、又は8PSK等で変調し、60GHzのミリ波にアップコンバートして、送信する。
【0015】
特許文献4〜8に記載の無線送信機は、デジタルデータをQPSK、DQPSK、BPSK、又は8PSK等で変調し、60GHzのミリ波にアップコンバートして、送信する。
【0016】
また、下記のような非特許文献1〜3に記載の発明が製品化されている。非特許文献1に記載の発明は、実売価格が43,000円程度であり、送信機器の消費電力が10Wであり、受信機器の消費電力が12Wであり、送信機器の外形寸法が約190(W)×70(D)×69(H)(mm)であり、受信機器の外形寸法が約146(W)×46(D)×133(H)(mm)であり、無線技術として、SiBEAM社のWireless−HDを用いている。
【0017】
非特許文献2に記載の発明は、実売価格が$999程度であり、送信機器の消費電力が12.5Wであり、受信機器の消費電力が12.5Wであり、送信機器及び受信機器の外形寸法が6(W)×4(D)×2(H)(inch)であり、無線技術として、おそらく、Tzero Technologies社のZeroWireを利用している。
【0018】
非特許文献3に記載の発明は、実売価格が¥148,000であり、必要な電源が5V/2.6Aであり、送信装置及び受信装置の外形寸法が162.6(W)×164.5(D) ×33.5(H)(mm)であり、無線技術として、AMIMON社のWHDI(Wireless Home Digital Interface)を利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
まず、HDMIケーブルを無線機器で置き換える場合、当該無線機器は、HDMIケーブルの価格と同程度か、それ以下で提供されるのが理想である。なお、HDMIケーブルの価格は、ケーブル長によって異なるが、通常の家庭での用途に限れば高々数メートルの長さがあれば十分であるので、二千円から三千円程度である。
【0022】
さらに、本来まったく電力を消費しないケーブルを無線機器で代用するのであるから、当然無線機器にはソース機器もしくはシンク機器からの給電だけで動作するような低消費電力化が求められる。
【0023】
しかし、非特許文献1〜3に記載の従来のHDMI伝送用無線機器では、価格が数万円から十数万円であり、消費電力が約10ワットである。したがって、価格が数千円程度で、かつ、ソース機器やシンク機器からの給電だけで動作するような低消費電力なHDMI伝送用無線機器は、今のところ市場に見当たらない。
【0024】
非特許文献1に記載の発明は、無線技術として、Wireless−HDを用い、無線帯域として60GHzのミリ波帯を使用している。ミリ波は、非常に直進性が強い性質を持っており、送信機器と受信機器との間に障害物があると、通信が著しく妨害される。Wireless−HDは、これを防ぐためにアレイアンテナを用いたビームフォーミング技術を採用し、通信している機器間に障害物がある場合は、別の通信経路(送信機器から壁、壁の反射から受信機器)を探す機能を実現している。したがって、無線機器の構成が複雑になり、低価格及び低消費電力を実現することができない。
【0025】
非特許文献2及び3に記載の発明は、無線帯域として5GHzを使用している。HDMI用の信号のように、伝送レートが1.5Gbpsに達する信号を5GHz帯で無線伝送するのは非常に困難である。そのため、非特許文献2に記載の発明は、伝送するデータをJPEG2000またはH.264技術を使用して圧縮した上で、伝送している。また、非特許文献3に記載の発明は、AMIMON社独自のコーディング技術と変調技術を使って、40MHzの帯域幅で1.5Gbpsの伝送を実現している。いずれの場合でも、無線機器の構成が複雑になり、低価格及び低消費電力を実現することができない。
【0026】
特許文献1に記載の発明において、送信装置は、パラレルシリアル変換器や直交変調器を必要とし、かつ、QPSK方式によって変調する。直交復調器は、直並列変換器と、位相を変化させた信号をミキシングするためのミキサをと含む。パラレルシリアル変換器を用いる場合、HDMIの1チャネルのデジタル信号がたとえば1.5Gbpsであるので、3チャンネル分のデジタル信号をシリアル信号に変換するためには、送信装置は、4.5Gbpsの高速な信号処理回路を必要とする。さらに、送信装置は、直並列変換器によってシリアル信号をI信号とQ信号とに分けるため、ルック・アップ・テーブルといった回路を必要とする。加えて、QPSK方式によって変調する場合には、送信装置は、I信号及びQ信号の位相を異なるようにして、ミキサによってミキシングしなければならないので、PLL(Phase−locked loop)回路でロックされたローカル信号によって、I信号及びQ信号を生成しなければならない。さらに、QPSK方式を用いる場合、送信無線信号の周波数が所望の周波数からずれていると復調できないので、送信装置は、QPSK方式によって変調された信号を60GHzにアップコンバートする際に、PLL回路によってロックされた搬送波を必要とする。すなわち、送信装置は、少なくとも二つのPLL回路を必要とする。
【0027】
また、QPSK方式によって変調された信号を復調する際、受信装置は、PLL回路でロックされたミリ波帯のローカル信号で送信無線信号をダウンコンバートしてIF(Intermediate Frequency)信号にしなければならない。加えて、受信装置は、IF信号を直交復調器を用いてベースバンド信号に変換する際に、PLL回路でロックされたローカル信号を必要とし、ルック・アップ・テーブルを必要とする。さらに、受信装置は、直交復調器から得られたベースバンド信号をパラレル信号に変換するためにシリアルパラレル変換器を必要とし、高速な信号処理回路を必要とする。
【0028】
したがって、特許文献1に記載の発明では、送信装置と受信装置の両方において、PLL回路がそれぞれ少なくとも二つずつ必要となり、直並列変換のためのルック・アップ・テーブルがそれぞれ少なくとも一つずつ必要となり、パラレルシリアル変換のための高速処理回路がそれぞれ少なくとも一つずつ必要となる。よって、特許文献1に記載の発明では、送信装置及び受信装置を低価格かつ低消費電力を実現することは困難である。ただし、特許文献1に記載の発明は、QPSK方式を用いるため、無線の伝送帯域を狭くすることができ、高品質で信号を伝送することができる。
【0029】
特許文献2〜8に記載の発明においても、各種PSK方式によって変調がなされるので、送信装置と受信装置の両方において、特許文献1と同様、PLL回路がそれぞれ少なくとも二つずつ必要となり、直並列変換のためのルック・アップ・テーブルがそれぞれ少なくとも一つずつ必要となり、パラレルシリアル変換のための高速処理回路がそれぞれ少なくとも一つずつ必要となる。よって、特許文献1に記載の発明では、送信装置及び受信装置を低価格かつ低消費電力を実現することは困難である。ただし、特許文献2〜8に記載の発明は、各種PSK方式を用いるため、無線の伝送帯域を狭くすることができ、高品質で信号を伝送することができる。
【0030】
このように、従来では、低価格かつ低消費電力によって、HDMI信号を通信することはできなかった。
【0031】
なお、上記では、HDMI信号に限って説明したが、HDMI以外に、USB2.0やUSB3.0、DVI、DisplayPort、MHL、HAVi、DiiVAなどの通信方式のように、デジタル信号をある機器から別な機器にデジタルケーブルを介して伝送するシステムにおいて、当該デジタルケーブルを無線化する場合にも、低価格化及び高消費電力化の問題は生じる。
【0032】
高品質なデジタル信号をある機器から別の機器に対して、無線によって伝送するに際しては、品質の劣化が生じないということが前提となる。それゆえ、本発明は、伝送品質を劣化させることなく、デジタル信号をある機器から別の機器に無線によって伝送する無線伝送システム並びにそれに用いられる無線送信機、無線受信機、無線送信方法、無線受信方法、及び無線通信方法を、低価格及び低消費電力で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、第1の電子機器に
一組として使用される複数チャネルのうちの1チャネル以上の第1の伝送路を介して接続される第1の無線機と、第2の電子機器に
複数のチャネルの残りの1チャネル以上の第2の伝送路を介して接続される第2の無線機とを備える無線伝送システムであって、第1の無線機は、第1の伝送路のチャネル毎に設けられており
、ミリ波帯のキャリア信号を出力する1以上のキャリア発振器と、1以上のキャリア発振器毎に設けられており、対応するキャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調するための1以上のOOK変調器と、第1の伝送路のチャネル毎に設けられており、第1の電子機器が出力する1チャネル以上のデジタル信号をOOK変調器に入力する1以上の入力回路と、OOK変調器から出力されるミリ波の信号を無線信号として出力する送信アンテナ部とを含み、1以上のOOK変調器は、入力回路から入力されるデジタル信号に基づいて、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調し、第2の無線機は、送信アンテナ部から出力される無線信号を受信する受信アンテナ部と、第2の伝送路のチャネル毎に設けられており
、ミリ波帯のローカル信号を出力する1以上のローカル発振器と、1以上のローカル発振器毎に設けられており、ローカル発振器が出力するローカル信号によって、無線信号をダウンコンバートする1以上のミキサと、1以上のミキサ毎に設けられており、ミキサによってダウンコンバートされた信号を復調し、デジタル信号を再生する1以上の検波部とを含む。
【0034】
また、本発明は、電子機器に
一組として使用される2チャネル以上の伝送路を介して接続される無線送信機であって、伝送路のチャネル毎に設けられており
、ミリ波帯のキャリア信号を出力する
2以上のキャリア発振器と、
2以上のキャリア発振器毎に設けられており、対応するキャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調するための
2以上のOOK変調器と、伝送路のチャネル毎に設けられており、電子機器が出力する
2チャネル以上のデジタル信号をOOK変調器に入力する
2以上の入力回路とを備え、
2以上のOOK変調器は、入力回路から入力されるデジタル信号に基づいて、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調する。
【0035】
好ましくは、
2以上の入力回路は、デジタル信号の高調波成分を除去するローパスフィルタを含み、
2以上のOOK変調器は、ローパスフィルタによって高調波成分が除去されたデジタル信号に基づいて、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調するとよい。
【0036】
好ましくは、
2以上のキャリア発振器及び
2以上のOOK変調器は、CMOSによって構成されており、
2以上の入力回路は、デジタル信号をCMOSレベルに変換するレベル変換回路を含むとよい。
【0037】
好ましくは、
2以上のキャリア発振器が複数である場合、各キャリア発振器のキャリア周波数の間隔は、デジタル信号のビットレートの2倍の帯域幅以上であるとよい。
【0038】
好ましくは、
2以上のキャリア発振器の発振周波数を、所定のタイミングでのみ調整するための
2以上の周波数調整部をさらに備えるとよい。
【0039】
好ましくは、
2以上の周波数調整部は、PLL回路であるとよい。
【0040】
好ましくは、
2以上の周波数調整部は、キャリア発振器の出力周波数をカウントして、規定の値と比較した結果に基づいて、キャリア発振器へ入力する制御電圧を調整するとよい。
【0041】
好ましくは、伝送路には、HDMI方式に関する信号が伝送しており、キャリア発振器、OOK変調器、及び入力回路は、デジタル信号HDMI0、HDMI1、及びHDMI2に対応して設けられているとよい。
【0042】
好ましくは、さらに、クロック信号HDMICLKに対応して設けられたキャリア発振器、OOK変調器、及び入力回路を備えるとよい。
【0043】
好ましくは、伝送路には、デジタル信号のビットレートよりも低いビットレートで伝送する制御信号DDCが伝送しており、無線送信機は、制御信号DDCをミリ波よりも長い波長の無線信号で送受信するためのDDC送受信機をさらに備えるとよい。
【0044】
好ましくは、DDC送受信機は、制御信号DDCの送受信の前に、シンク機器側でHPDがハイ状態となっているか否かを確認するHPD確認パケットを送信するとよい。
【0045】
好ましくは、DDC送受信機は、制御信号DDCの送受信がアイドル状態となっているときに、シンク機器側のHPDの状態を監視するためにHPD確認パケットを送信するとよい。
【0046】
好ましくは、一組のキャリア発振器、OOK変調器、及び入力回路から構成される送信部との間で送受信周波数を共用するように設けられた受信部と、OOK変調器によって変調された無線信号を送信すると共に、ミリ波の無線信号を受信するアンテナ部とをさらに備え、受信部は、送受信周波数を有するミリ波帯のローカル信号を出力するローカル発振器と、ローカル発振器が出力するローカル信号によって、受信無線信号をダウンコンバートするミキサと、ミキサによってダウンコンバートされた信号を復調して、ベースバンド信号に再生する検波部と含み、無線送信機は、さらに、検波部によって再生されたベースバンド信号を伝送路に伝送すると共に、伝送路から出力されるデジタル信号を入力回路に入力する共用回路をさらに備えるとよい。
【0047】
好ましくは、一組のキャリア発振器、OOK変調器、及び入力回路から構成される送信部が使用する送信周波数とは異なるミリ波の受信周波数を利用する受信部と、受信周波数を有する無線信号を受信する受信アンテナ部とをさらに備え、受信部は、受信周波数を有するミリ波帯のローカル信号を出力するローカル発振器と、ローカル発振器が出力するローカル信号によって、受信無線信号をダウンコンバートするミキサと、ミキサによってダウンコンバートされた信号を復調して、ベースバンド信号に再生する検波部と含み、無線送信機は、検波部によって再生されたベースバンド信号を伝送路に伝送するとよい。
【0048】
また、本発明は、電子機器に
一組として使用される2チャネル以上の伝送路を介して接続される無線受信機であって、伝送路のチャネル毎に設けられており
、ミリ波帯のローカル信号を出力する
2以上のローカル発振器と、
2以上のローカル発振器毎に設けられており、ローカル発振器が出力するローカル信号によって、OOK変調されたミリ波の受信無線信号をダウンコンバートする
2以上のミキサと、
2以上のミキサ毎に設けられており、ミキサによってダウンコンバートされた信号を復調して、ベースバンド信号に再生する
2以上の検波部とを備える。
【0049】
好ましくは、
2以上の検波部は、ミキサから出力される信号の所定帯域を通過させるチャネル選択フィルタと、チャネル選択フィルタを通過した信号を増幅する増幅器と、増幅器によって増幅された信号を包絡線検波又は二乗検波によって復調する検波回路と、検波部によって検波された信号からベースバンド信号を再生するリミッタ回路と、増幅器からリミッタ回路までに発生するオフセットをキャンセルするオフセットキャンセラとを含むとよい。
【0050】
好ましくは、
2以上のローカル発振器、
2以上のミキサ、及び
2以上の検波部は、CMOSによって構成されており、
2以上の検波部は、ベースバンド信号をCMOSレベルから伝送路で使用される電圧レベルに変換するレベル変換回路を含むとよい。
【0051】
好ましくは、
2以上のローカル発振器が複数である場合、各ローカル発振器のローカル周波数は、受信無線信号をIF信号にダウンコンバートすることができる周波数であるとよい。
【0052】
好ましくは、
2以上のローカル発振器の発振周波数を、所定のタイミングでのみ調整するための
2以上の周波数調整部をさらに備えるとよい。
【0053】
好ましくは、
2以上の周波数調整部は、PLL回路であるとよい。
【0054】
好ましくは、
2以上の周波数調整部は、ローカル発振器の出力周波数をカウントして、規定の値と比較した結果に基づいて、ローカル発振器へ入力する制御電圧を調整すると
よい。
【0055】
好ましくは、伝送路には、HDMI方式に関する信号が伝送しており、ローカル発振器、ミキサ、及び検波部は、デジタル信号HDMI0、HDMI1、及びHDMI2に対応して設けられているとよい。
【0056】
好ましくは、さらに、デジタル信号HDMI0、HDMI1、及びHDMI2のいずれかから、クロック信号TMDSCLKを再生するクロックデータリカバリー回路を備えるとよい。
【0057】
好ましくは、クロック信号TMDSCLKに対応する無線信号が送信されてくる場合、さらに、クロック信号
TMDSCLKに対応して設けられたローカル発振器、ミキサ、及び検波部を備えるとよい。
【0058】
好ましくは、伝送路には、デジタル信号のビットレートよりも低いビットレートで伝送する制御信号DDCが伝送しており、無線受信機は、制御信号DDCをミリ波よりも長い波長の無線信号で送受信するためのDDC送受信機をさらに備えるとよい。
【0059】
好ましくは、DDC送受信機は、制御信号DDCの送受信の前に、シンク機器側でHPDがハイ状態となっているか否かを確認するHPD確認パケットを受信し、HPDの状態を返送するレスポンスパケットを送信するとよい。
【0060】
好ましくは、DDC送受信機は、制御信号DDCの送受信がアイドル状態となっているときに、シンク機器側のHPDの状態を監視するためにHPD確認パケットを受信し、HPDの状態を返送するレスポンスパケットを送信するとよい。
【0061】
好ましくは、一組のローカル発振器、ミキサ、及び検波部から構成される受信部との間で送受信周波数を共用するように設けられた送信部と、無線信号を受信すると共に、ミリ波の無線信号を送信するアンテナ部とをさらに備え、送信部は、送受信周波数を有するミリ波帯のキャリア信号を出力するキャリア発振器と、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調するためのOOK変調器と、電子機器が出力するデジタル信号をOOK変調器に入力する入力回路と含み、OOK変調器は、入力回路から入力されるデジタル信号に基づいて、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調し、無線受信機は、さらに、検波部によって再生されたベースバンド信号を伝送路に伝送すると共に、伝送路から出力されるデジタル信号を入力回路に入力する共用回路とを含むとよい。
【0062】
好ましくは、一組のローカル発振器、ミキサ、及び検波部から構成される受信部が使用する受信周波数とは異なるミリ波の送信周波数を利用する送信部と、送信周波数を有する無線信号を送信する送信アンテナ部とをさらに備え、送信部は、送信周波数を有するミリ波帯のキャリア信号を出力するキャリア発振器と、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調するためのOOK変調器と、電子機器が出力するデジタル信号をOOK変調器に入力する入力回路と含み、OOK変調器は、入力回路から入力されるデジタル信号に基づいて、キャリア発振器が出力するキャリア信号をオンオフ変調するとよい。
【0063】
好ましくは、アンテナの向きを変更することができるフレキシブル構造を有するとよい。
【0064】
また、本発明は、電子機器に
一組として使用される2チャネル以上の伝送路を介して接続される無線送信機で用いられる無線送信方法であって、伝送路のチャネル毎に
、ミリ波帯のキャリア信号のキャリア周波数が設定されており、伝送路を介して出力される電子機器からのデジタル信号に基づいて、当該デジタル信号のチャネルに対応するキャリア信号をオンオフ変調することによって、チャネル毎に、ミリ波の無線信号を送信する。
【0065】
また、本発明は、電子機器に
一組として使用される2チャネル以上の伝送路を介して接続される無線受信機で用いられる無線受信方法であって、伝送路のチャネル毎に
、ミリ波帯のローカル信号のローカル周波数が設定されており、OOK変調された受信無線信号を、チャネル毎にダウンコンバートして、ダウンコンバートされた信号を復調して、チャネル毎のベースバンド信号に再生する。
【0066】
また、本発明は、第1の電子機器に
一組として使用される複数チャネルのうちの1チャネル以上の第1の伝送路を介して接続される第1の無線機と、第2の電子機器に
複数チャネルの残りの1チャネル以上の第2の伝送路を介して接続される第2の無線機とを備える無線伝送システムで用いられる無線通信方法であって、第1の伝送路のチャネル毎に
、ミリ波帯のキャリア信号のキャリア周波数が設定されており、第1の伝送路を介して出力される第1の電子機器からのデジタル信号に基づいて、当該デジタル信号のチャネルに対応するキャリア信号をオンオフ変調することによって、各チャネル毎に、ミリ波の無線信号を送信し、第2の伝送路のチャネル毎に
、ミリ波帯のローカル信号のローカル周波数が設定されており、OOK変調された受信無線信号を、チャネル毎にダウンコンバートして、ダウンコンバートされた信号を復調して、チャネル毎のベースバンド信号に再生する。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、伝送路のチャネル毎に設けられたキャリア発振器からのミリ波のキャリア信号が、チャネル毎にオンオフ変調されて、無線送信されることとなる。オンオフ変調された無線信号は、チャネル毎に設けられたローカル発振器からのミリ波のローカル信号でダウンコンバートされて、元のデジタル信号に復調されることとなる。このように、本発明では、オンオフ変調を用いて変調し、オンオフ変調された無線信号の包絡線情報に基づいて、当該無線信号を復調すればよいので、従来のように、送信側においてキャリア周波数を正確に固定しておかなくても、さらに、受信側においてもローカル周波数を正確に固定しておかなくても、高品質な復調が可能となる。このように、オンオフ変調及び包絡線情報に基づく復調には、キャリア周波数及びローカル周波数の正確な固定が必須ではないので、PLL回路が不要となる。また、OOK変調では、パラレルシリアル変換のための高速処理回路や、直並列変換のためのルック・アップ・テーブルが不要となる。よって、無線送信機及び無線受信機は、PLL回路、高速処理回路、及びルック・アップ・テーブルを不要とする。したがって、伝送品質を劣化させることなく、低価格及び低消費電力でデジタル信号をある機器から別の機器に無線によって伝送する無線伝送システム並びにそれに用いられる無線送信機、無線受信機、無線送信方法、無線受信方法、及び無線通信方法を提供することが可能となる。
【0068】
デジタル信号の高調波成分を除去するローパスフィルタを設けて、高調波成分が除去されたデジタル信号を用いて、OOK変調を行えば、ミリ波の変調信号のサイドバンドレベルが抑えられることとなり、ミリ波の隣接チャネルへの妨害信号を抑制することが可能となる。よって、高品質を維持した状態での信号の伝送が可能となる。
【0069】
キャリア発振器及びOOK変調器は、CMOSによって構成することによって、高品質なミリ波通信が可能となる。そのために、レベル変換回路がCMOSレベルへの変換に有効となる。
【0070】
キャリア周波数の間隔をデジタル信号のビットレートの2倍の帯域幅以上とすれば、サイドバンドが隣接チャネルを妨害することを防止でき、高品質な通信が実現される。
【0071】
所定のタイミングでのみキャリア周波数を調整すれば、キャリア周波数が大幅にずれてしまうことを防止することができ、さらに、高品質な通信が可能となる。また、所定のタイミングでのみキャリア周波数を調整する程度であれば、消費電力の増大にはつながらないという効果も得られる。周波数調整部をPLL回路にすれば、周波数調整部の設計が容易となる。また、周波数をカウントして規定値と比較する構成によって周波数調整部を設計すれば、PLL回路が不要となる。よって、低消費電力を実現しながらも、周波数が適切に調整された無線送信機を提供することが可能となる。
【0072】
本発明が適用される例として、HDMI方式が存在する。HDMI方式は、広く普及しており、HDMI方式による伝送を無線化することによって、商品価値は増大することとなる。クロック信号HDMICLKもミリ波で送信すれば、無線受信機において、クロックリカバリー回路が不要となり、無線受信機のコストを下げることが期待できる。
【0073】
制御信号DDCを低レートの無線信号で伝送することによって、DDCの送受信が容易となる。DDCの送受信に際し、HPDの状態を確認することは必須であるが、無線通信の場合、直接、HDMIケーブルが接続されていないので、HPDの状態をソース機器側がどのようにして認識するかが問題となる。本発明のように、HPD確認パケットを送信して、そのレスポンスパケットに基づいて、HPDの状態を確認すれば、無線化されたとしても、DDCの送受信が実現可能となる。また、HPDの状態は、適宜確認しておく必要があるが、DDCの送受信がアイドル状態のときに、HPDの状態をHPD確認パケットによって確認すれば、無線化されたとしても、適宜HPDの状態を確認することが可能となる。このように、DDCの無線化によっても、本発明を用いれば、適切に、DDCの送受信が可能となる。
【0074】
無線送信機は、送受信周波数を共有する受信部を設けることによって、ミリ波の無線信号を利用した半二重による送受信機能を具備することができる。
【0075】
また、無線送信機は、送信周波数とは異なる受信周波数を利用する受信部を設けることによって、ミリ波の無線信号を利用した全二重による送受信機能を具備することができる。
【0076】
無線受信機における検波部は、チャネル選択フィルタ、増幅器、検波回路、リミッタ回路、及びオフセットキャンセラを含むことによって、受信した無線信号を正確に復調することができる。
【0077】
ローカル発振器、ミキサ、及び検波部をCMOSによって構成することによって、高品質なミリ波通信が可能となる。そのために、レベル変換回路がCMOSレベルを第2の電子機器への電圧レベルへ変換することが有効となる。
【0078】
無線信号をIF信号にダウンコンバートすることによって、復調の精度が向上する。
【0079】
所定のタイミングでのみローカル周波数を調整すれば、ローカル周波数が大幅にずれてしまうことを防止することができ、さらに、高品質な通信が可能となる。また、所定のタイミングでのみローカル周波数を調整する程度であれば、消費電力の増大にはつながらないという効果も得られる。
【0080】
周波数調整部をPLL回路にすれば、周波数調整部の設計が容易となる。
【0081】
また、周波数をカウントして規定値と比較する構成によって周波数調整部を設計すれば、PLL回路が不要となる。よって、低消費電力を実現しながらも、周波数が適切に調整された無線送信機を提供することが可能となる。周波数調整部としてPLL回路を用いる場合に必要であったPLL回路内のローパスフィルタが不要となり、回路構成が簡素化されるので、低価格で周波数調整機能を付加することができる。
【0082】
周波数調整部としてPLL回路及び周波数カウンタのいずれを用いる場合も、CMOSによって周波数調整部を構築することができ、無線送信機及び無線受信機のサイズを増大させることなく、周波数調整の機能を追加することができる。
【0083】
本発明が適用される例として、HDMI方式が存在する。HDMI方式は、広く普及しており、HDMI方式による伝送を無線化することによって、商品価値は増大することとなる。クロック信号HDMICLKをクロックリカバリー回路で再生するようにすれば、電波の使用規制などによって4チャネル分のミリ波帯を使用できない場合でも、HDMIの無線伝送システムを構築することが可能となる。
【0084】
また、4チャネル分のミリ波帯を使用できる場合は、送信側から送信されてくる無線のクロック信号HDMICLKを無線受信機で再生すれば、クロックリカバリー回路が不要になるので、無線受信機のコストを下げることができると期待できる。
【0085】
制御信号DDCを低レートの無線信号で伝送することによって、DDCの送受信が容易となる。DDCの送受信に際し、HPDの状態を確認することは必須であるが、無線通信の場合、直接、HDMIケーブルが接続されていないので、HPDの状態をソース機器側がどのようにして認識するかが問題となる。したがって、送信側からHPD確認パケットが送信されてきた場合、無線受信機は、レスポンスパケットにHPDの状態を記述して返信する。これにより、HPD状態の確認ができ、無線化されたとしても、DDCの送受信が実現可能となる。また、HPDの状態は、適宜確認しておく必要があるが、DDCの送受信がアイドル状態のときに、HPD確認パケットが送信されてくるので、無線受信機は、当該HPD確認パケットに応じて、レスポンスパケットを返信すればよく、無線化されたとしても、適宜HPDの状態を確認することが可能となる。このように、DDCの無線化によっても、本発明を用いれば、適切に、DDCの送受信が可能となる。
【0086】
無線受信機は、送受信周波数を共有する送信部を設けることによって、ミリ波の無線信号を利用した半二重による送受信機能を具備することができる。
【0087】
また、無線受信機は、受信周波数とは異なる送信周波数を利用する送信部を設けることによって、ミリ波の無線信号を利用した全二重による送受信機能を具備することができる。
【0088】
アンテナの向きを変更することができるフレキシブル構造を無線送信機及び/又は無線受信機に設けることによって、送受信の感度が高い方向にアンテナの向きを変えることができるので、伝送品質がさらに向上する。
【0089】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1は、本発明の無線伝送システム1の全体構成を示すブロック図である。なお、TMDS0〜2及びTMDSCLKは、差動信号であるとする。また、
図1において、CECが用いられてもよい。
図1において、無線伝送システム1は、ソース機器2と、シンク機器3と、無線HDMI送信機100と、無線HDMI受信機200とを備える。ソース機器2は、HDMIインターフェイス2aを含む。
【0092】
HDMIインターフェイス2aと無線HDMI送信機100とは、HDMI方式によって、有線の伝送路で接続される。たとえば、HDMIインターフェイス2aと無線HDMI送信機100とは、HDMIケーブルによって接続されてもよいし、電子基板上の配線によって接続されてもよい。ただし、HDMIインターフェイス2aと無線HDMI送信機100とが、伝送路としての超近距離無線通信(たとえば、Transfar Jetなど)で接続される場合を妨げるものではない。その他、HDMIインターフェイス2aと無線HDMI送信機100とを接続する伝送路の媒体は、特に限定されない。また、HDMIインターフェイス2aと無線HDMI送信機100とは、無線HDMI送信機100の向きを変えることが可能なように、HDMIケーブル又はフレキシブル基板によって接続されているとよい。
【0093】
シンク機器3は、HDMIインターフェイス3aを含む。HDMIインターフェイス3aと無線HDMI受信機200とは、HDMI方式によって、有線の伝送路で接続される。たとえば、HDMIインターフェイス3aと無線HDMI受信機200とは、HDMIケーブルによって接続されてもよいし、電子基板上の配線によって接続されてもよい。ただし、HDMIインターフェイス3aと無線HDMI受信機200とが、伝送路としての超近距離無線通信(たとえば、Transfar Jetなど)で接続される場合を妨げるものではない。その他、HDMIインターフェイス3aと無線HDMI受信機200とを接続する伝送路の媒体は、特に限定されない。また、HDMIインターフェイス3aと無線HDMI受信機200とは、無線HDMI受信機200の向きを変えることが可能なように、HDMIケーブル又はフレキシブル基板によって接続されているとよい。無線HDMI送信機100は、ミリ波帯の無線信号を送信する。無線HDMI受信機200は、無線HDMI送信機100からの無線信号を受信する。
【0094】
図2は、無線HDMI送信機100の機能的構成を示すブロック図である。
図2において、無線HDMI送信機100は、ミリ波送信機101と、DDC送受信機102とを含む。無線HDMI送信機100には、デジタル信号TMDS0〜TMDS2と、クロック信号TMDSCLKと、制御信号DDCと、+5Vの電源と、HPDの信号とが入力される。第1の実施形態では、後述のように、TMDSCLKは、無線HDMI受信機200で生成されるので、無線HDMI送信機100は、TMDSCLKを使用しない。ただし、後述の第6の実施形態のように、TMDSCLKも、ミリ波で送信されてもよい。
【0095】
ミリ波送信機101は、デジタル信号TMDS0〜TMDS2をそれぞれ用いて、60.75GHz、62.5GHz、及び64.25GHzのミリ波をOOK(On−Off Keying)方式によって変調し、無線信号m−TMDS0〜TMDS2として送信する。DDC送受信機102は、制御信号DDCを、パケット化して、I2C方式によって、たとえば、2.4GHzにアップコンバートして、無線信号m−DDCとして送信する。また、DDC送受信機102は、無線HDMI受信機200から送信されてくる無線信号m−DDCを受信する。
【0096】
図3は、無線HDMI受信機200の機能的構成を示すブロック図である。
図3において、無線HDMI受信機200は、ミリ波受信機201と、DDC送受信機202と、CDR(Clock Data Recovery)回路203とを含む。無線HDMI受信機200は、無線信号m−TMDS0〜TMDS2及び無線信号m−DDCを受信する。ミリ波受信機201は、無線信号m−TMDS0〜TMDS2を包絡線検波(又は二乗検波)によって、復調し、デジタル信号TMDS0〜TMDS2を出力する。CDR回路203は、デジタル信号TMDS0〜TMDS2のいずれかから、データ信号に重畳されているクロック信号を分離するための周知の回路である。
【0097】
CDR回路203のアーキテクチャとして、PLL回路を用いるタイプ、
DLL(Digital Locked Loop)回路を用いるタイプ、及びデジタルオーバーサンプリングを用いるタイプがある。PLLタイプのCDR回路203は、データ信号とクロック信号との間で位相比較可能なフェーズディテクタを搭載しており、周波数ループと位相ループとによって、クロック信号を出力する構成を有している。PLLタイプのCDR回路203を用いると、簡単な構成で低ジッターを実現することができる。
DLLタイプのCDR回路203は、多相クロックとフェーズインタポレータ(フェーズDAC)とを有している。デジタルオーバーサンプリングタイプのCDR回路203は、多種多様である。クロックリカバリーは、低ジッターであるのが好ましいので、ここでは、PLLタイプによるCDR回路203を用いることとするが、特に限定されるものではない。
【0098】
図33は、CDR回路203の機能的構成を示すブロック図である。
図33において、CDR回路203は、分周器(1/M,1/N,1/5)2031,2032,及び2033と、位相周波数比較器(PFD:Phase Frequency Detector)2035と、位相比較器(PD:Phase Detector)2034と、MUX(マルチプレクサ:Multiplexer)2036と、CP(チャージポンプ:Charge Pump)2037と、LPF(ローパスフィルタ:Low Pass Filter)2038と、VCO(電圧制御発振器:Voltage Controlled Oscillator)2039とを含む。
【0099】
図示しない基準発振器から出力される基準クロックRefClkを使って大雑把な周波数調整が行われる。このとき、MUX2036は、PFD2035とCP2037とを接続しており、基本的には、PLLと同様に動作する。すなわち、PFD2035は、RefClkを分周比Mで分周した信号とVCO2039の出力を分周比5Nで分周した信号との位相周波数比較を行う。これにより、VCO2039の出力を分周比5Nで分周した信号の周波数と位相が、RefClkを分周比Mで分周した信号の周波数と位相に一致するように、フィードバック制御することができる。VCO2039の出力を分周器2033で5分周した信号をクロックとするので、RefClkを分周比Mで分周した周波数は、クロック(たとえば、TMDSCLK)をリカバリーしたいデータ(たとえば、TMDS0〜2)のビットレートFの約1/2に設定する必要がある。すなわち、RefClkは、FM/10N(MHz)である。
【0100】
次に、MUX2036を切り換え、PD2034とCP2037とを接続する。
MUX2036は、PFD
2035とCP2037とは遮断する。この段階では、まだクロックをリカバリーしたいデータ信号RxD(たとえば、TMDS0〜TMDS2のいずれか)のビットレートの1/2とVCO2039の出力周波数とは、大体一致しているが、微調整が必要である。そこで、RxDとVCO2039の出力との位相比較を行い、位相の微調整が行われる。これによって、周波数F/10MHzのクロックTxCが分周期2033から出力されRxDからクロックのリカバリーが可能となる。ここでは、HDMICLKを想定しているので、HDMICLKは、データレートの1/10のクロックであるとしたが、システムに応じて、適宜、分周比、VCO2039、及びリファレンス周波数を適宜選択すればよい。このようにして、CDR回路203は、デジタル信号TMDS0、TMDS1、又はTMDS2のいずれかから、クロック信号TMDSCLKを生成して、出力する。DDC送受信機202は、無線HDMI送信機100から送信されてくる無線信号m−DDCを受信する。また、DDC送受信機202は、DDCの信号を、パケット化して、I2C方式によって、たとえば、2.4GHzにアップコンバートして、無線信号m−DDCとして送信する。
【0101】
図4は、ミリ波送信機101の機能的構成を示すブロック図である。
図4において、ミリ波送信機101は、TMDS送信機107a〜107cを含む。TMDS送信機107a〜107cは、それぞれ、CML(Current mode logic)(レベル変換回路)回路103a〜103cと、ローパスフィルタ(LPF:Low−pass filter)104a〜104cと、OOK変調部105a〜105cと、VCO(voltage controlled oscillator)(キャリア発振器)106a〜106cと、ミリ波アンテナANT1〜ANT3とを含む。CML回路103aとローパスフィルタ104aによって、1チャネルのデジタル信号TMDS0をOOK変調器105aに入力するための入力回路130aが構成される。入力回路130b及び103cについても同様である。
【0102】
CML回路103aは、差動のデータ信号TMDS0+/TMDS0−をCMOSレベルの電圧に変換すると共に、シングルエンド信号に変換する。CML回路103a〜103cとして、周知のあらゆるCML回路を用いることができる。
【0103】
ローパスフィルタ104aは、CMOSレベルに変換されたデータ信号TMDS0の高調波成分を除去して、低周波成分のみを通過させる。ローパスフィルタ104aの働きによって、ミリ波の変調信号のサイドバンドレベルを抑えることができ、ミリ波の隣接チャネルへの妨害信号を抑制することが可能となる。これにより、高品質を維持した状態でのHDMI信号の無線送信が可能となる。
【0104】
OOK変調部105aは、たとえば、スイッチによって構成される。OOK変調部105aは、発振器106aからのキャリア信号を、ローパスフィルタ104aからのデジタル信号TMDS0によってオンオフする。これにより、オンオフ変調されたミリ波の無線信号m−TMDS0が、アンテナANT1から送信される。
図4には、理解を容易にするために、デジタル信号TMDS及び無線信号m−TMDS0の波形の概念図を示しておく。
【0105】
VCO106aの発振周波数(キャリア周波数)f1は、たとえば、60.75GHz(第1チャネル)とする。1080p(depthが8bitの場合)では、TMDS0のデータレートは、1.485Gbpsとなるので、第1チャネルの帯域幅は、2.97GHzとなる。よって、第1チャネルの隣接チャネルである第2チャネルは、62.235GHzよりも高い周波数でなければならないので、第2チャネルを62.5GHz(VCO106bの発振周波数f2)とする。さらに、第2チャネルの隣接チャネルである第3チャネルは、63.985GHzよりも高い周波数でなければならないので、第3チャネルを64.25GHz(VCO106cの発振周波数f3)とする。このように、各キャリア周波数は、伝送すべきデジタル信号のビットレートの2倍の帯域幅以上の間隔を有していれば、復調可能となる。なお、クロック信号TMDSCLKも無線送信する場合のキャリア周波数は、第6の実施形態で説明する。
【0106】
VCO106aの発振周波数(キャリア周波数)f1は、たとえば、60.75GHz(第1チャネル)とする。1080i(depthが8bitの場合)では、TMDS0のデータレートは、741.76Mbpsとなるので、第1チャネルの帯域幅は、1.48352GHzとなる。よって、第1チャネルの隣接チャネルである第2チャネルは、62.23352GHzよりも高い周波数でなければならないので、第2チャネルを62.5GHz(VCO106bの発振周波数f2)とする。さらに、第2チャネルの隣接チャネルである第3チャネルは、63.98352GHzよりも高い周波数でなければならないので、第3チャネルを64.25GHz(VCO106cの発振周波数f3)とする。このように、各キャリア周波数は、伝送すべきデジタル信号のビットレートの2倍の帯域幅以上の間隔を有していれば、復調可能となる。なお、クロック信号TMDSCLKも無線送信する場合のキャリア周波数は、第6の実施形態で説明する。
【0107】
TMDS送信機107b及び107cにおける、CML回路103b及び103c、ローパスフィルタ104b及び104cOOK変調部105b及び105c、発振器106b及び106c、並びに、ミリ波アンテナANT2及びANT3は、TMDS送信機107aの動作と同様にして、中心周波数が62.5GHzの無線信号m−TMDS1及び中心周波数が64.25GHzの無線信号m−TMDS2を送信する。
【0108】
図5は、ミリ波受信機201の機能的構成を示すブロック図である。
図5には、理解を容易にするために、デジタル信号TMDS及び無線信号m−TMDS0の波形の概念図を示しておく。
図5において、ミリ波受信機201は、TMDS受信機207a〜207cを含む。TMDS受信機207a〜207cは、それぞれ、ミリ波アンテナANT11〜ANT31と、LNA(低雑音増幅回路:Low Noise Amplifier)202a〜202cと、ミキサ203a〜203cと、VCO(ローカル発振器)204a〜204cと、チャネル選択フィルタ(バンドパスフィルタ)205a〜205cと、VGA(可変利得増幅器:Variable Gain Amplifier)206a〜206cと、検波回路208a〜208cと、リミッタ回路209a〜209cと、オフセットキャンセラ210a〜210cと、CML回路211a〜211cとを含む。
【0109】
LNA202aは、アンテナANT11で受信した無線信号m−TMDS0〜m−TMDS2を低雑音で増幅する。VCO204の発振周波数f1aは、たとえば、52.75GHzとする。ミキサ203aは、VCO204aから発振されるローカル信号を用いて、LNA202aから入力される信号をIF信号にダウンコンバートする。ミキサ203aによってダウンコンバートされたIF信号には、3チャネル分のTMDS信号が含まれていることとなる。したがって、チャネル選択フィルタ205aは、TMDS0に対応する帯域の信号のみを通過する。たとえば、TMDS0のIF信号の中心周波数は8GHzとなり、TMDS1のIF信号の中心周波数は9.75GHzとなるので、チャネル選択フィルタ205aは、7.125GHzから8.875GHzまでの帯域の信号を通過させるとよい。
【0110】
VGA206aは、チャネル選択フィルタ205aからのIF信号の強弱にかかわらず、最適な受信状態を維持するために、利得を調整して、増幅されたIF信号を出力する。VGA206aに供給されるゲイン制御信号は、下記のようにして制御される。
図34は、ゲイン制御信号の制御ブロックを示す図である。
図34に示す制御ブロックは、ミリ波受信機201に設けられている。
図5に示す検波回路208a、208b、又は208cの出力は、LPF2040に入力される。LPF2040の出力は、差動増幅器2041に入力される。差動増幅器2041のもう一つの入力には、基準電圧が入力されている。差動増幅器2041は、LPF2040の出力と基準電圧との差に対応した電圧を出力する。差動増幅器2041から出力される電圧が、VGAの制御電圧、すなわち、ゲイン制御信号となる。すなわち、VGA206a、検波回路208a、LPF2040、基準電圧、及び差動増幅器2041によって、フィードバックループが構成されており、検波回路208aの出力が、基準電圧に対応した一定の振幅になるように制御される。検波回路204b及び204cについても同様である。また、与える基準電圧で受信特性が決まるが、この基準電圧値は、シミュレーションや実験などを通して、最適な値に決定される。
【0111】
検波回路208aは、VGA206aから入力されるIF信号を包絡線検波(又は二乗検波)によって復調する。オフセットキャンセラ210aは、TMDS受信機207a内で発生するDCオフセット(たとえば、VGA206aで発生するDCオフセットなど)を除去する。OOK変調では、振幅の強弱でデータを再生するので、適切にDCオフセットを除去しなければ、データが誤って再生されてしまう場合があるので、オフセットキャンセラ201aを設けるのが好ましい。リミッタ回路209aは、検波回路208aから入力される信号に対して、所定のしきい値を超える場合を1として、超えない場合を0として、ベースバンド信号を出力する。リミッタ回路209aによる出力が再生されたデジタル信号TMDS0となる。CML回路211aは、リミッタ回路209aから入力されるデジタル信号TMDS0をCMOSレベルの電圧から、シンク機器3で利用される信号の電圧に変換して、デジタル信号TMDS0を出力する。チャネル選択フィルタ205a、VGA206a、検波回路208a、リミッタ回路209a、オフセットキャンセラ210a、及びCML回路211aは、ミキサ203aによってダウンコンバートされた信号を復調してベースバンド信号に再生する検波部
230aとして機能する。検波部
230b及び
230cについても同様である。
【0112】
TMDS受信機207bにおいて、VCO204bの発振周波数f2bは、たとえば、54.5GHzであるとしている。これにより、TMDS1に対応するIF信号の中心周波数が8GHzとなる。チャネル選択フィルタ205bは、チャネル選択フィルタ205aと同様に、たとえば、7.125GHzから8.875GHzまでの帯域の信号を通過させるとよい。したがって、チャネル選択フィルタ205bからは、TMDS1に対応するIF信号が出力されることとなる。TMDS受信機207bにおけるチャネル選択フィルタ205b以降の後段回路の動作は、TMDS受信機207aと同様である。検波部
230bは、デジタル信号TMDS1を再生する。
【0113】
TMDS受信機207cにおいて、VCO204cの発振周波数f3cは、たとえば、56.25GHzであるとしている。これにより、TMDS2に対応するIF信号の中心周波数が8GHzとなる。チャネル選択フィルタ205cは、チャネル選択フィルタ205aと同様に、たとえば、7.125GHzから8.875GHzまでの帯域の信号を通過させるとよい。したがって、チャネル選択フィルタ205cからは、TMDS2に対応するIF信号が出力されることとなる。TMDS受信機207cにおけるチャネル選択フィルタ205c以降の後段回路の動作は、TMDS受信機207aと同様である。検波部
230cは、デジタル信号TMDS2を再生する。
【0114】
このようにして、ミリ波受信機201は、デジタル信号TMDS0〜TMDS2を再生する。
【0115】
図6は、DDC送受信機102の機能的構成を示すブロック図である。
図7は、DDC送受信機202の機能的構成を示すブロック図である。
図6において、DDC送受信機102は、レベル変換及び入力保護回路108と、MCU(Micro Control Unit)109と、RF(高周波:Radio Frequency)トランシーバ110と、アンテナ111とを含む。DDC送受信機202は、レベル変換及び入力保護回路212と、MCU(Micro Control Unit)213と、RFトランシーバ214と、アンテナ215とを含む。
図7において、DDCは双方向通信によって送受信されるので、ソース機器側のDDC送受信機102と、シンク機器側のDDC送受信機202とは、基本的なハードウエア構成は同一である。したがって、DDC送受信機102とDDC送受信機202とは、数点のジャンパ端子等の切り替え機構と、ソフトウエアの変更によって、ハードウエア構成を共有化することができる。DDC送受信機102及び202は、DDCをRFパケットに変換するプロトコルコンバータである。DDC送受信機102及び202は、DDCをRFパケットに変換することによって、DDCの通信を無線化する。
【0116】
アンテナ111及び215は、RFトランシーバ110及び214に対応した1チャンネル分の高周波アンテナである。RFトランシーバ110及び214は、高周波無線通信用のトランシーバである。
【0117】
MCU109及び213は、DDCの通信、RFパケットの送受信、及びHPD端子状態の監視・設定を行うためのハードウエアである。ソース機器2側のMCU109は、DDCの開始と、発生したDDCリクエストに応じたRFパケットへのプロトコル変換処理を実行する。シンク機器3側のMCU213は、RFトランシーバ214の受信パケット監視と、パケットに応じたDDCリクエストへのプロトコル変換処理を実行する。
【0118】
レベル変換及び入力保護回路は、DDC及びHPDの電圧レベルをDDC送受信機102及び202とHDMII/Fとの間で変換し、HDMIケーブルの活線挿抜対策用の保護を行う回路である。
【0119】
DDC送受信機102は、DDCの通信処理を、ソース機器2からのリクエスト発行によって開始する。また、DDC送受信機102は、HPDの監視を、DDCの通信処理と並行して実行する。DDC送受信機102は、HPDの監視を、DDCバスのアイドル時に発生する空き時間を利用して実行する。RFパケットの送受信は、ソース機器2をマスタとする自動再送要求プロトコルによって実行される。なお、DDCバスとは、SCL及びSDAが伝送される伝送路のことである。
【0120】
RFトランシーバ110及び214は、たとえば、2.4GHzの無線信号を送受信する。RFトランシーバ110及び214は、変調方式として、FSK(frequency shift keying)を用いるが、特に限定されるものではない。また、DDC送受信機102及び202は、I2C方式を通信プロトコルとして、RFパケットを送受信する。
【0121】
以下、DDC送受信機102及び202の動作について説明する。
図8は、ソース機器2側のDDC送受信機102の動作を示すフローチャートである。まず、MCU109は、無線HDMI送信機100がソース機器2に接続されると初期化動作として、ソース機器2へのHPD信号を“L”に設定し、DDCの通信開始を抑制する(A−1)。レベル変換及び入力保護回路108は、MCU109の出力をレベル変換して、HPDを“L”に設定する。
【0122】
次に、MCU109は、シンク機器3のHPD端子状態を確認するために、HPD確認パケットを生成する(A−2)。RFトランシーバ110は、MCU109が生成したHPD確認パケットをRFパケットとして送信する。次に、MCU109は、DDC送受信機202からのレスポンスを受信するために、RFトランシーバ110を受信モードに設定する(A−3)。
【0123】
次に、MCU109は、DDC送受信機202から送信されてくるべきレスポンスパケットを受信したか否かを判断する(A−4)。MCU109は、規定のタイムアウト期間内にエラーの無いレスポンスパケットを受信できた場合、A−5の動作に進む。一方、MCU109は、規定のタイムアウト期間内にレスポンスパケットを受信できなかった場合又は受信したとしてもエラーであった場合、A−2の動作に戻る。
【0124】
A−5において、MCU109は、パケットに付与しているシーケンス番号(パケット番号)を更新する。これにより、シンク機器3側のDDC送受信機202は、DDC送受信機102から送信されてきたHPD確認パケットが再送要求であるのか、それとも、新規のHPD確認パケットであるのかを判断することができる。次に、MCU109は、レスポンスパケットを解析して、シンク機器2のHPD端子が“H”となっているか否かを確認する(A−6)。HPD端子が“H”となっている場合、MCU109は、A−7の動作に進み、ソース機器2のHPD端子を“H”となるように、レベル変換及び入力保護回路108を制御する。それに応じて、レベル変換及び入力保護回路108は、ソース機器2のHPD端子を“H”とする。これにより、ソース機器2及びシンク機器3のHPD端子の状態が一致する。一方、A−6において、シンク機器2のHPD端子が“H”でない場合、A−1の動作に戻る。A−2〜A−7の動作によって、HPD端子の状態を確認する処理(HPD確認処理)が完了する。
【0125】
A−7の動作の後、ソース機器2は、HPDが“H”状態となったので、DDCバスを用いた通信を開始する。そのため、MCU109は、A−7の後、DDCバスから、何らかのリクエストがあるか否かを判断して、待ち状態となる(A−8)。DDCバスからのリクエストがあると、MCU109は、DDCバスからの通信を検出し、内容を解析後、それに応じたリクエストパケットをRFトランシーバ110に送信させる(A−9)。次に、MCU109は、DDC送受信機202からのレスポンスを受信するために、RFトランシーバ110を受信モードに設定する(A−10)。
【0126】
次に、MCU109は、DDC送受信機202から送信されてくるべきレスポンスパケットを受信したか否かを判断する(A−11)。MCU109は、規定のタイムアウト期間内にエラーの無いレスポンスパケットを受信できた場合、A−12の動作に進む。一方、MCU109は、規定のタイムアウト期間内にレスポンスパケットを受信できなかった場合又は受信したとしてもエラーであった場合、A−9の動作に戻って、リクエストパケットを再送する。
【0127】
A−12において、MCU109は、パケットに付与しているシーケンス番号(パケット番号)を更新する。これにより、シンク機器3側のDDC送受信機202は、DDC送受信機102から送信されてきたリクエストパケットが再送要求であるのか、それとも、新規リクエストパケットであるのかを判断することができる。
【0128】
A−12の動作の後、MCU109は、DDC送受信機202からのレスポンスパケットを解析して、DDCの内容を認識し、DDCの内容に応じたレスポンスをDDCバスに送出する(A−13)。これに応じて、レベル変換及び入力保護回路108は、レベル変換を行って、レスポンスをソース機器2に送る。A−13の動作の後、MCU109は、DDCバスの状態がアイドル状態となるまで、A−8からA−13のDDC通信処理を実行する。MCU109は、DDCバスの状態がアイドル状態となった場合、すなわち、DDC通信が行われていない状態となった場合、A−2からA−6(HPD監視処理)の動作に戻って、HPDの監視を実行する。HPD監視処理において、MCU109は、随時、HPDの状態が“H”レベルであるか否かを監視し、“L”レベルとなった場合、新規HPD確認パケットを送信して、シンク機器3側のHPD端子の状態を再度入手する。
【0129】
図9は、シンク機器3側のDDC送受信機202の動作を示すフローチャートである。まず、MCU213は、無線HDMI受信機200がシンク機器3に接続されると初期化動作として、ソース機器2側のDDC送受信機102からのリクエスト受信のため、RFトランシーバ214を受信モードに設定する(B−1)。次に、MCU213は、DDC送受信機102から送信されてきたパケットを解析し、HPD確認パケットであるか否かを判断する。HDP確認パケットを受信した場合、MCU213は、B−3の動作に進む。一方、HDP確認パケットでない場合、MCU213は、B−6の動作に進む。
【0130】
B−3の動作において、MCU213は、パケット番号を参照して、受信したHPD確認パケットが新規のリクエストであるか否かを判断する。新規のリクエストである場合、MCU213は、シンク機器3のHPD端子の状態を読み出して、HPD端子の状態を記載したレスポンスパケットを、RFレシーバ214に送信させる(B−5)。一方、新規のリクエストでない場合、MCU213は、新規のリクエストのときに送信したレスポンスパケットを再送する(B−5)。B−5の動作の後、MCU213は、B−1の動作に戻る。B−2からB−5の動作によって、HPDの確認処理が行われる。
【0131】
B−6の動作において、MCU213は、受信したパケットがHPD確認パケットでなかった場合、シンク機器3のHPD端子が“H”レベルであるか否かを判断する。“H”レベルでない場合、MCU213は、HPD確認パケット以外のパケット処理を許容しないために、B−1の動作に戻る。一方、“H”レベルである場合、MCU213は、B−7の動作に進む。
【0132】
B−7の動作において、MCU213は、受信パケットを解析して、DDCの内容を解析し、B−8の動作に進む。このとき、MCU213は、受信したデータ列にエラーが確認された場合は、受信パケットを破棄して、B−1の動作に戻る。
【0133】
B−8の動作において、MCU213は、受信パケットのパケット番号を参照して、新規リクエストであるか再送要求であるかを確認する。新規リクエストである場合、MCU213は、B−9の動作に進む。一方、新規リクエストでない場合、MCU213は、前回送信したレスポンスパケットを再送信する(B−10)。
【0134】
B−9の動作において、MCU213は、ソース機器2から要求されているリクエストに対応するコマンドを発行して、レベル変換及び入力保護回路212を介して、シンク機器3に対し、当該コマンドを送信する。当該コマンドの送信に応じて、シンク機器3はレスポンスを返信するので、MCU213は、当該レスポンスを基にして、レスポンスパケットを生成し、RFトランシーバに当該レスポンスパケットを送信させる(B−10)。B−6からB−10の動作によって、DDCの通信処理が行われる。
【0135】
B−10において、MCU213は、DDCバスがアイドル状態になったことを確認したあと、パケット受信待ち状態(B−1)に戻る。DDCバスがアイドル状態の場合で、新規でないHPD確認パケットが送信されてきた場合、MCU213は、B−2,B−3,及びB−5の動作によって、HPDの監視処理に対して応答する。
【0136】
(第1の実施形態の実施例)
上記第1の実施形態に対して、本発明者は、試作機を製造し、符号誤り率(BER:Bit error ratio)及び主要部分の消費電力の確認を行った。
図10は、無線HDMI送信機100の試作機の機能的構成を示すブロック図である。
図10において、無線HDMI送信機100は、FR4(Flame Retardant Type 4)基板に形成されたHDMIコネクタ112、DAC(Digital to Analog Converter)113、コネクタ114、DC+5V電源コネクタ115、
レギュレータ116,117,
及び抵抗器118、並びに、ミリ波送信機101を含む。ミリ波送信機101は、コネクタ114に着脱可能とした。なお、試作機のため、無線HDMI送信機100において、実験の簡便性を考えDC+5Vは、別に供給することとしたが、実際の製品ではHDMIコネクタ112からDC+5Vを供給するとよい。なお、
図11に示す無線HDMI受信機200は、HDMIコネクタ216からDC+5Vが供給されないので、実際の製品でも外部からDC+5Vを供給する。
【0137】
HDMIコネクタ112とソース機器2のHDMIコネクタとを、HDMIケーブルによって接続した。DAC113は、ミリ波送信機101内のVCO106a〜106cに供給するための制御電圧VLO1T〜VLO3Tを生成する。レギュレータ116によって、DC+5Vは、3.3Vに変換される。レギュレータ117によって、DC+5Vは、1.2Vに変換される。3.3Vは、CML回路に供給される電源である。1.2Vは、その他の回路に供給される電源である。抵抗器118は、1.2KΩである。抵抗器118は、ミリ波送信チップ101b(
図13参照)内部のバイアス回路119(
図14参照)と接続され、基準電流1mAを生成するために使用される。なお、
図10では、図示を省略するが、DDC送受信機102も、FR4基板上に形成されている。ミリ波送信機101には、後述のようにサンドイッチ構造によって、ミリ波の4×4パッチアンテナ306,307,及び308が構成されている。4×4パッチアンテナ306,307,及び308は、それぞれ、アンテナANT1,ANT2,及びANT3に相当する。4×4パッチアンテナ306,307,及び308の上には、アルミカバー306aが形成されている。アルミカバー306aは、4×4パッチアンテナ306,307,及び308に対応する箇所にスロット開口(
図10の黒塗り箇所)を形成している。
【0138】
図11は、無線HDMI受信機200の試作機の機能的構成を示すブロック図である。
図11において、無線HDMI受信機200は、FR4(Flame Retardan
t Type 4)基板に形成されたHDMIコネクタ216、DAC217、コネクタ
218、DC+5V電源コネクタ219、
レギュレータ220,221,
及び抵抗器222、並びに、ミリ波受信機201を含む。ミリ波受信機201は、コネクタ218に着脱可能とした。
【0139】
HDMIコネクタ216とシンク機器3のHDMIコネクタとを、HDMIケーブルによって接続した。DAC217は、ミリ波受信機201内のVCO204a〜204cに供給するための制御電圧VLO1R〜VLO3R及びVGA206a〜206cに供給するゲイン制御信号VGA1R〜VGA3Rを生成する。ゲイン制御信号VGA1R〜VGA3Rは、
図34に示したような構造によって制御されている。
レギュレータ220によって、DC+5Vは、3.3Vに変換される。
レギュレータ221によって、DC+5Vは、1.2Vに変換される。3.3Vは、CML回路に供給される電源である。1.2Vは、その他の回路に供給される電源である。抵抗器222は、1.2KΩである。抵抗器222は、ミリ波受信チップ201b(
図13参照)内部のバイアス回路223(
図15参照)と接続され、基準電流1mAを生成するために使用される。なお、
図11では、図示を省略するが、DDC送受信機202も、FR4基板上に形成されている。ミリ波受信機201には、後述のようにサンドイッチ構造によって、ミリ波の4×4パッチアンテナ306,307,及び308が構成されている。4×4パッチアンテナ306,307,及び308は、それぞれ、アンテナANT11,ANT21,及びANT31に相当する。4×4パッチアンテナ306,307,及び308の上には、アルミカバー306aが形成されている。アルミカバー306aは、4×4パッチアンテナ306,307,及び308に対応する箇所にスロット開口(
図11の黒塗り箇所)を形成している。
【0140】
図12は、ミリ波送信機101及びミリ波受信機201の断面図である。ミリ波送信機101及びミリ波受信機201の断面構造は同様であるので、ここでは、
図12を共通に用いて説明する。アルミベース301の上に、アルミスペーサ305aを介して、ポリイミドのフィルム基板302が設けられている。フィルム基板302の上に、Cu配線層303が形成されている。CMOSチップであるミリ波送信チップ101b及びミリ波受信チップ201bは、Cu配線層303に、CMOSチップ上に形成されたバンプ(SnAg:Sn98wt%、Ag2wt%)を使って接続されている。フィルム基板302の端部には、コネクタ114及び218に接続されるコネクタ接続部304が設けられている。Cu配線層303の上に、アルミスペーサ305a,305c,及び305dが設けられている。アルミスペーサ305dの上に、ポリイミドのフィルム基板320が設けられている。フィルム基板320には、4×4パッチアンテナ306〜308(ANT1〜ANT3、ANT11〜ANT31に相当)が形成されている。4×4パッチアンテナ306〜308は、4行4列の平面パッチアンテナであり、円偏波、放射角度±7.5度、利得は約17dBである。4×4パッチアンテナ306〜308の上に、アルミスペーサ305eを介して、アルミカバー306aが形成されている。アルミカバー306aは、4×4パッチアンテナ306〜308に対応する箇所にスロット開口を有する。
【0141】
図13は、フィルム基板302上に形成されたCu配線層303、CMOSチップ101b,201b、及びコネクタ接続部304を示す図である。ミリ波送信機101及びミリ波受信機201の配線構造は同様であるので、ここでは、
図13を共通に用いて説明する。コネクタ接続部304とCMOSチップ101b及び201bとは、電源や制御信号などの配線部分309によって接続されている。CMOSチップ101b及び201bは、TMDS0〜TMDS2のデータ信号を伝送するための配線310,311,及び312に接続されている。CMOSチップ101b及び201bは、バンプによって、配線部分309、並びに、配線310,311及び312に接続されている。配線310,311,及び312は、それぞれ、同じ長さを有する。配線310は、TMDS0用の4×4パッチアンテナ306に接続するためのアンテナ接続部313と接続している。アンテナ接続部313とTMDS0用の4×4パッチアンテナ306とは、アルミスペーサ305b,305c,及び305cに設けられた接続開口部を介して電磁結合によって接続されている。ここでは、4×4パッチアンテナ306の各パッチに、アンテナ接続部313から給電するための配線の記載を省略しているが、周知の手法によって、アンテナ接続部313から4×4パッチアンテナ306の各パッチに給電される。配線311は、TMDS0用の4×4パッチアンテナ307に接続するためのアンテナ接続部314と接続している。アンテナ接続部314とTMDS0用の4×4パッチアンテナ307とは、アルミスペーサ305b,305c,及び305cに設けられた接続開口部を介して電磁結合によって接続されている。ここでは、4×4パッチアンテナ307の各パッチに、アンテナ接続部314から給電するための配線の記載を省略しているが、周知の手法によって、アンテナ接続部314から4×4パッチアンテナ307の各パッチに給電される。配線312は、TMDS0用の4×4パッチアンテナ308に接続するためのアンテナ接続部315と接続している。アンテナ接続部315とTMDS0用の4×4パッチアンテナ308とは、アルミスペーサ305b,305c,及び305cに設けられた接続開口部を介して電磁結合によって接続されている。ここでは、4×4パッチアンテナ308の各パッチに、アンテナ接続部315から給電するための配線の記載を省略しているが、周知の手法によって、アンテナ接続部315から4×4パッチアンテナ308の各パッチに給電される。
【0142】
図14は、試作したミリ波送信チップ(ミリ波送信機)101bの機能的構成を示すブロック図である。
図14において、
図4に示すミリ波送信機101bと同様の構成を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。ミリ波送信チップ101bは、90nmのCMOSプロセスを用いて設計・製造された。ミリ波送信チップ101bのチップサイズは、5mm×2.31mmであった。制御電圧VLO1Tは、VCO106aに入力される。制御電圧VLO2Tは、VCO106bに入力される。制御電圧VLO3Tは、VCO106cに入力される。電源1.2Vは、CML回路103a〜103c以外の各回路に供給される。電源3.3Vは、CML回路103a〜103cに供給される。バイアス回路119は、Band Gap Reference回路とカレントミラー回路から構成されており、基準抵抗である抵抗器118と接続されて、基準電流1mAを生成し、基準電流を各回路へ供給する。
【0143】
DAC113からの制御電圧VLO1T〜VLO3Tは、CH1〜3のキャリア周波数、すなわちVCO106a〜106cの発振周波数がそれぞれ60.75GHz、62.5GHz、64.25GHzになるよう設定されている。
【0144】
デジタル信号TMDS0は、HDMIコネクタ112から供給される信号で、TMDS0+とTMDS0−の差動信号から構成されている。デジタル信号TMDS0は、標準で最大電圧が3.3Vで、最低電圧が2.9Vの信号である。CML回路103aは、デジタル信号TMDS0を、1.2VのCMOSレベルのシングルエンド信号に変換する。
【0145】
ローパスフィルタ104aは、高調波成分が減衰されるように、CML回路103aが出力する信号の波形を整形する。OOK変調部105aは、VCO106aから出力される60.75GHzのキャリア信号で、ローパスフィルタ104aからのベースバンド信号をOOK変調する。OOK変調された信号は、アンテナANT1を介して出力される。アンテナANT1端での出力電力は−1dBmである。TMDS1とTMDS2もTMDS0と同様である。
【0146】
図15は、試作したミリ波受信チップ(ミリ波受信機)201bの機能的構成を示すブロック図である。
図15において、
図5に示すミリ波受信機201bと同様の構成を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。ミリ波受信チップ201bは、90nmのCMOSプロセスを用いて設計・製造された。ミリ波受信チップ201bのチップサイズは、5mm×2.69mmであった。制御電圧VLO1Rは、VCO204aに入力される。制御電圧VLO2Tは、VCO204bに入力される。制御電圧VLO3Tは、VCO204cに入力される。電源1.2Vは、CML回路211a〜211c以外の各回路に供給される。電源3.3Vは、CML回路211a〜211cに供給される。バイアス回路223は、Band Gap Reference回路とカレントミラー回路から構成されており、基準抵抗である抵抗器222と接続されて、基準電流1mAを生成し、基準電流を各回路へ供給する。
【0147】
DAC217からの制御電圧VLO1R〜VLO3Rは、CH1〜3のキャリア周波数、すなわちVCO203a〜203cの発振周波数がそれぞれ52.75GHz、54.5GHz、56.25GHzになるよう設定されている。ゲイン制御信号VGA1R〜VGA3Rは、受信特性が最適になるような値に設定されている。
【0148】
図16は、ミリ波受信チップ201bのCH1のアンテナANT11が受信した信号のスペクトラムを示す。受信信号は、ゲイン20dB及びNF9dBのLNA202aで増幅される。キャリア周波数60.75GHzの受信信号は、ミキサ203aによって、52.75GHzのローカル信号を用いてダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた受信信号は、中心周波数8GHzのIF信号に変換される。
【0149】
図17は、IF信号のスペクトラムを示す。チャネル選択フィルタ205aは、CH1の信号(中心周波数8GHz:
図17上の太線)のみを通過させ、その他の信号は除去する。チャネル選択フィルタ205aのフィルタの特性は、中心周波数が8GHzで、3dB帯域幅が1.8GHzで、中心周波数から2GHz離れた周波数での減衰量は約16dBであるとした。
【0150】
チャネル選択フィルタ205aを通過した信号は、VGA206aで増幅されて、検波回路208aで二乗検波によって復調されるとした。なお、ミキサ203aとVGA206aとの総合利得は、利得制御信号VGA1Rの値が0.35V〜0.9Vの場合、9dB〜36dBであった。リミッタ回路209aは、振幅が最大になるように復調された信号を増幅し、デジタル信号TMDS0を生成し、1.2VのCMOSレベルのベースバンド信号に変換する。CML回路211aは、CMOSレベルのベースバンド信号を2.9Vから3.3Vの差動信号に変換して、TMDS0+とTMDS0−を生成して、FR4基板を介してHDMIコネクタ216へ出力する。TMDS1とTMDS2もTMDS0と同様である。
【0151】
上記試作機を用いて、無線HDMI送信機100と無線HDMI受信機200とを40cm離した状態で750Mbpsの信号で、BER及び主要部分の消費電力を測定した。
無線HDMI送信機100において、
VLO1T=0.61Vで、キャリア周波数を60.74GHzとし、
VLO2T=0.78Vで、キャリア周波数を62.46GHzとし、
VLO3T=0.6Vで、キャリア周波数を64.25GHzとした。
無線HDMI受信機200において、
VLO1R=0.35Vで、ローカル周波数を52.77GHzとし、
VLO2R=1.15Vで、ローカル周波数を54.56GHzとし、
VLO3R=0.3Vで、ローカル周波数を56.25GHzとし、
VGA1R=0.4Vで、ミキサとVGAのゲインを約19dBとし、
VGA2R=0.4Vで、ミキサとVGAのゲインを約19dBとし、
VGA3R=0.4Vで、ミキサとVGAのゲインを約19dBとした。
【0152】
その結果、消費電力は、無線HDMI送信機100において、ミリ波送信機101部分が224mW(内99mWはCML回路105a〜105cの消費電力)となり、DDC送受信機102のRFトランシーバ110部分が35mWとなり、MCU109部分が3.3mWとなった。したがって、無線HDMI送信機100における主要部分の消費電力の合計は、262.3mWとなった。
【0153】
無線HDMI受信機200において、ミリ波受信機201部分が240mWとなり、DDC送受信機202のRFトランシーバ214部分が44mWとなり、MCU部分が3.3mWとなった。したがって、無線HDMI受信機200における主要部分の消費電力の合計は、287.3mWとなった。
【0154】
BERは、TMDS0のCH1が4.4×10
-12となり、TMDS1のCH2が0(エラーフリー:エラーが測定できなかった)となり、TMDS2のCH3が0(エラーフリー:エラーが測定できなかった)となった。
【0155】
このように、本試作機において、高品質を保ちながら、低消費電力が図られることが確認できた。
【0156】
さらに、画像伝送実験を行った。用いた信号は、1080i/60FPSおよび1080p/24FPSである。この場合、各CHのビットレートは、それぞれ741.76Mbpsと741.88Mbpsである。ソース機器2は、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント製のPS3(登録商標)とした。HDMIケーブルを介して、PS3(登録商標)と無線HDMI送信機100と接続した。無線HDMI送信機100と無線HDMI受信機200との間の距離は80cmとした。シンク機器3は、シャープ株式会社製のHDTV(Aquos:登録商標)とした。無線HDMI受信機200とHDTVとをHDMIケーブルで接続した。
【0157】
1080i/60FPSの場合は、PS3(登録商標)の出力ビデオフォーマットを1080iに固定し、Blu−rayソフト“スパイダーマン3”(販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)を再生した。問題なく画像が無線で転送されることを確認できた。
【0158】
1080p/24FPSの場合は、Blu−rayソフト“遠すぎた橋”(販売元:20世紀フォックスを再生し、こちらも問題なく再生できることを確認した。
【0159】
本試作機によって、数100mWで動作する無線HDMI送信機と無線HDMI受信機とを構成できた。数千円で販売できる見通しを得た。
【0160】
このように、第1の実施形態では、伝送路のチャネル毎に設けられたVOC106a〜106cからのミリ波のキャリア信号が、チャネル毎にオンオフ変調されて、無線送信されることとなる。オンオフ変調された無線信号は、チャネル毎に設けられたVCO204a〜204cからのミリ波のローカル信号でダウンコンバートされて、元のデジタル信号HDMI0〜HDMI2に復調されることとなる。このように、第1の実施形態では、オンオフ変調を用いて変調し、オンオフ変調された無線信号の包絡線情報に基づいて、当該無線信号を復調すればよいので、従来のように、送信側においてキャリア周波数を正確に固定しておかなくても、さらに、受信側においてもローカル周波数を正確に固定しておかなくても、高品質な復調が可能となる。このように、オンオフ変調及び包絡線情報に基づく復調には、キャリア周波数及びローカル周波数の正確な固定が必須ではないので、PLL回路が不要となる。また、OOK変調では、パラレルシリアル変換のための高速処理回路や、直並列変換のためのルック・アップ・テーブルが不要となる。よって、無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200は、PLL回路、高速処理回路、及びルック・アップ・テーブルを不要とする。したがって、伝送品質を劣化させることなく、低価格及び低消費電力でデジタル信号をある機器から別の機器に無線によって伝送する無線伝送システム並びにそれに用いられる無線送信機、無線受信機、無線送信方法、無線受信方法、及び無線通信方法を提供することが可能となる。
【0161】
第1の実施形態において、ミリ波送信機101は、デジタル信号HDMI0〜HDMI2の高調波成分を除去するローパスフィルタ104a〜104cを含む。したがって、高調波成分が除去されたデジタル信号を用いて、OOK変調が行われることとなる。そのため、ミリ波の変調信号のサイドバンドレベルが抑えられることとなり、ミリ波の隣接チャネルへの妨害信号を抑制することが可能となる。よって、高品質を維持した状態での信号の伝送が可能となる。
【0162】
TMDS送信機107a〜107cは、CMOSによって構成されているので、高品質なミリ波通信が可能となる。そのために、CMS回路がCMOSレベルへの変換に有効に作用する。
【0163】
第1の実施形態において、キャリア周波数の間隔をデジタル信号のビットレートの2倍の帯域幅以上としているので、サイドバンドが隣接チャネルを妨害することを防止でき、高品質な通信が実現される。
【0164】
制御信号DDCを低レートの無線信号で伝送することによって、DDCの送受信が容易となる。DDCの送受信に際し、HPDの状態を確認することは必須であるが、無線通信の場合、直接、HDMIケーブルが接続されていないので、HPDの状態をソース機器側がどのようにして認識するかが問題となる。第1の実施形態のように、HPD確認パケットを送信して、そのレスポンスパケットに基づいて、HPDの状態を確認すれば、無線化されたとしても、DDCの送受信が実現可能となる。また、HPDの状態は、適宜確認しておく必要があるが、DDCの送受信がアイドル状態のときに、HPDの状態をHPD確認パケットによって確認すれば、無線化されたとしても、適宜HPDの状態を確認することが可能となる。このように、DDCの無線化によっても、本発明を用いれば、適切に、DDCの送受信が可能となる。
【0165】
無線HDMI受信機200における検波部230a〜230cは、チャネル選択フィルタ205a〜205c、可変利得増幅器206a〜206c、検波回路208a〜208c、リミッタ回路209a〜209c、及びオフセットキャンセラ210a〜210cを含むことによって、受信した無線信号を正確に復調することができる。
【0166】
無線HDMI受信機200におけるローカル発振器204a〜204c、ミキサ203a〜203c、及び検波部230a〜230cをCMOSによって構成することによって、高品質なミリ波通信が可能となる。そのために、CML回路211a〜211cがCMOSレベルをシンク機器3への電圧レベルへ変換することが有効となる。
【0167】
無線HDMI受信機200において、ミリ波の無線信号をIF信号にダウンコンバートしているので、復調の精度が向上する。
【0168】
クロック信号HDMICLKをクロックリカバリー回路で再生するようにすれば、電波の使用規制などによって4チャネル分のミリ波帯を使用できない場合でも、HDMIの無線伝送システムを構築することが可能となる。
【0169】
(第2の実施形態)
第2の実施形態において、無線伝送システム1全体の構成は、第1の実施形態と同様であるので、
図1を援用する。また、無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200の概略構成は、第1の実施形態と同様であるので、
図2及び
図3を援用する。第2の実施形態では、ミリ波送信機401の構成が第1の実施形態と異なる。具体的には、第2の実施形態のミリ波送信機401において、TMDS送信機107a〜107cのVCO106a〜106cを所定のタイミングでのみロックするPLL回路を設ける点が、第1の実施形態のミリ波送信機101と異なる。また、第2の実施形態のミリ波受信機501において、TMDS受信機207a〜207cを所定のタイミングでのみロックするPLL回路を設ける点が、第1の実施形態のミリ波受信機201と異なる。
【0170】
図18は、本発明の第2の実施形態におけるミリ波送信機401の機能的構成を示すブロック図である。
図18において、第1の実施形態におけるミリ波送信機101と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を用いて、説明を省略する。ミリ波送信機401では、VCO106a〜106cの発振周波数を固定するためのPLL回路408a〜408cが設けられている。PLL回路408a〜408cは、それぞれ、周波数分周器402と、プリスケーラ回路403と、位相比較器404と、チャージポンプ405と、ローパスフィルタ406と、基準発振器407とを含む。
【0171】
周波数分周器402は、VCO106aの出力を、M分の1の周波数へ分周する。プリスケーラ回路403は、周波数分周器402の出力の周波数をL/N(L<M)倍し、位相比較器404に入力する。プリスケーラ回路403の出力周波数は、VCO106aの周波数をF_VCOとすると、F_VCO*L/M/Nと
なる。位相比較器404のもう一方の入力には、基準発振器407から基準周波数が入力される。位相比較器404は、基準周波数とプリスケーラ回路403の出力のクロック信号との位相比較を行う。位相比較器404の比較結果によって、チャージポンプ405は、出力電圧を上下させる。チャージポンプ405の出力電圧は、ローパスフィルタ406を介して、VCO106aの周波数制御端子に入力される。VCO106aの周波数がロックした状態において、F_REFとF_VCOとの間には、F_REF=F_VCO*L/M/Nの関係が成立する。VCO106b及び106cに接続されているPLL回路408b及び408cについても、同様に機能するが、基準発振器407の基準周波数、並びに、周波数分周器402及びプリスケーラ回路403の分周比が、VCO106b及び106cの発振周波数に応じて適切に選択されている。
【0172】
図19は、本発明の第2の実施形態におけるミリ波受信機501の機能的構成を示すブロック図である。
図19において、第1の実施形態におけるミリ波受信機201と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を用いて、説明を省略する。ミリ波受信機501では、VCO204a〜204cの発振周波数を固定するためのPLL回路508a〜508cが設けられている。PLL回路508a〜508cは、それぞれ、周波数分周器502と、プリスケーラ回路503と、位相比較器504と、チャージポンプ505と、ローパスフィルタ506と、基準発振器507とを含む。VCO204a〜204cに接続されているPLL回路508a〜508cは、PLL回路408a〜408cと同様にして、動作するが、基準発振器507の基準周波数、並びに、周波数分周器502及びプリスケーラ回路503の分周比が、VCO204a〜204cの発振周波数に応じて適切に選択されている。
【0173】
第2の実施形態では、PLL回路408a〜408c及び508a〜508cによって、VCO106a〜106c及び204a〜204cの発振周波数を固定するタイミングに特徴がある。通常、VCOはPLL回路によって常時ロックされているのが好ましいが、第1の実施形態で説明したように、OOK変調を用いた場合、発振周波数が多少ずれたとしても、伝送品質が劣化することはほとんどない。したがって、本発明では、VCOをロックするためのPLL回路は、必須ではない。ただし、所定のタイミングでのみVCOをロックし、そのときに使用した制御電圧をその後もVCOに供給し続ければ、消費電力を抑えつつ、伝送品質の劣化をさらに防止することができる。そこで、第2の実施形態では、所定のタイミングでのみVCOをロックしたあと、ロックを解除し、ロック時に使用した制御電圧を、ミリ波送信機401及びミリ波受信機501の動作中、VCOに供給するようにする。
【0174】
所定のタイミングとして、(1)無線HDMI送信機100がソース機器2に接続された最初のタイミング、(2)無線HDMI受信機200がシンク機器3に接続された最初のタイミング、(3)無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200が製造されたタイミング、(4)予め決められた定期的なタイミングなどがある。
【0175】
無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200にそれぞれ設けられた図示しない制御部は、所定のタイミングを管理しており、所定のタイミングが到来したとすると、PLL回路408及び507がVCO106a〜106c及び204a〜204cをロックするように、PLL回路408a〜409c及び508a〜508cの動作を制御する。ロックされた後、制御電圧が得られれば、各制御部は、制御電圧を図示しないデジタルアナログコンバータに入力して、制御電圧の値をデジタルデータに変換する。変換後のデジタルデータは、無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200にそれぞれ設けられた図示しない記憶部に記憶される。その後、再度所定のタイミングが到来するまで、VCO106a〜106c及び204a〜204cには、デジタルアナログコンバータから、記憶されているデジタルデータに対応する制御電圧が入力される。このように、PLL回路408a〜408c及び508a〜508cは、キャリア発振器としてのVCO106a〜106c及びローカル発振器としてのVCO204a〜204cの発振周波数を、所定のタイミングでのみ調整するための周波数調整部として機能する。
【0176】
このように、第2の実施形態では、所定のタイミングでのみキャリア周波数を調整する。したがって、キャリア周波数が大幅にずれてしまうことを防止することができ、さらに、高品質な通信が可能となる。また、所定のタイミングでのみキャリア周波数を調整する程度であれば、消費電力の増大にはつながらないという効果も得られる。送信側及び受信側において、周波数調整部をPLL回路にすれば、周波数調整部の設計が容易となる。さらに、CMOSによって周波数調整部408a〜40c8を構築することができ、無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200のサイズを増大させることなく、周波数調整の機能を追加することができる。
【0177】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、周波数調整部として、第2の実施形態のPLL回路の代わりに、周波数カウンタを用いることとする。以下、第2の実施形態と異なる点を説明する。
図20は、本発明の第3の実施形態におけるミリ波送信機409の機能的構成を示すブロック図である。
図20において、第1の実施形態におけるミリ波送信機101と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を用いて、説明を省略する。ミリ波送信機409では、VCO106a〜106cの発振周波数を調整するための周波数調整部410a〜410cが設けられている。周波数調整部410a〜410cは、それぞれ、周波数分周器411と、周波数カウンタ412と、レジスタ413及び414と、周波数比較器415と、デジタルアナログコンバータ416とを含む。
【0178】
周波数分周器411は、VCO106aの出力を分周する。周波数カウンタ412は、分周後の周波数を計測し、レジスタ413に書き込む。一方、図示しないROMに記憶されている設定値が、電源投入時に、I2C通信で、レジスタ414に書き込まれている。周波数比較器415は、レジスタ414の設定値と、レジスタ413の計測値とを比較して、比較結果をデジタル信号として、デジタルアナログコンバータ416に入力する。デジタルアナログコンバータ416は、入力されたデジタル信号を電圧に変化させて、当該電圧をVCO106aの制御電圧として、VCO106aに入力する。VCO106b及び106cに接続されている周波数調整部410b及び410cについても、同様に機能するが、周波数分周器411、レジスタ414の設定値が、VCO106b及び106cの発振周波数に応じて適切に選択されている。
【0179】
図21は、本発明の第2の実施形態におけるミリ波受信機509の機能的構成を示すブロック図である。
図21において、第1の実施形態におけるミリ波受信機201と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を用いて、説明を省略する。ミリ波受信機501では、VCO204a〜204cの発振周波数を調整するための周波数調整部510a〜510cが設けられている。周波数調整部510a〜510cは、それぞれ、周波数分周器511と、周波数カウンタ512と、レジスタ513及び514と、周波数比較器515と、デジタルアナログコンバータ516とを含む。VCO204a〜204cに接続されている周波数調整部510a〜510cは、周波数調整部410a〜410cと同様にして、動作するが、周波数分周器511、レジスタ514の設定値が、VCO204a〜204cの発振周波数に応じて適切に選択されている。
【0180】
第3の実施形態では、周波数調整部410a〜410c及び510a〜510cによって、VCO106a〜106c及び204a〜204cの発振周波数を固定するタイミングに特徴がある。通常、VCOはPLL回路によって常時ロックされているのが好ましいが、第1の実施形態で説明したように、OOK変調を用いた場合、発振周波数が多少ずれたとしても、伝送品質が劣化することはほとんどない。したがって、本発明では、VCOをロックするためのPLL回路は、必須ではない。ただし、所定のタイミングでのみVCOの発振周波数を調整し、そのときに使用した制御電圧をその後もVCOに供給し続ければ、消費電力を抑えつつ、伝送品質の劣化をさらに防止することができる。そこで、第3の実施形態では、所定のタイミングでのみVCOの発振周波数を調整したあと、調整を解除し、調整時に使用した制御電圧を、ミリ波送信機409及びミリ波受信機509の動作中、VCOに供給するようにする。
【0181】
所定のタイミングとして、(1)無線HDMI送信機100がソース機器2に接続された最初のタイミング、(2)無線HDMI受信機200がシンク機器3に接続された最初のタイミング、(3)無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200が製造されたタイミング、(4)予め決められた定期的なタイミングなどがある。
【0182】
無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200にそれぞれ設けられた図示しない制御部は、所定のタイミングを管理しており、所定のタイミングが到来したとすると、周波数調整部410a〜410c及び510a〜510cがVCO106a〜106c及び204a〜204cの発振周波数を調整するように、周波数調整部410a〜410c及び510a〜510cの動作を制御する。ロックされた後、制御電圧が得られれば、各制御部は、制御電圧を図示しないデジタルアナログコンバータに入力して、制御電圧の値をデジタルデータに変換する。変換後のデジタルデータは、無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200にそれぞれ設けられた図示しない記憶部に記憶される。その後、再度所定のタイミングが到来するまで、VCO106a〜106c及び204a〜204cには、デジタルアナログコンバータから、記憶されているデジタルデータに対応する制御電圧が入力される。
【0183】
このように、第3の実施形態では、所定のタイミングでのみローカル周波数を調整する。したがって、ローカル周波数が大幅にずれてしまうことを防止することができ、さらに、高品質な通信が可能となる。また、所定のタイミングでのみローカル周波数を調整する程度であれば、消費電力の増大にはつながらないという効果も得られる。また、周波数制御部は、周波数をカウントして規定値と比較する構成であるので、よって、低消費電力を実現しながらも、周波数が適切に調整された無線送信機を提供することが可能となる。さらに、第2の実施形態におけるPLL回路408a〜408c内で必要であったローパスフィルタ406が不要となり、回路構成が簡素化されるので、低価格で周波数調整機能を付加することができる。さらに、CMOSによって周波数調整部410a〜410cを構築することができ、無線HDMI送信機100及び無線HDMI受信機200のサイズを増大させることなく、周波数調整の機能を追加することができる。
【0184】
なお、第3の実施形態において、レジスタ414の代わりに、OTPROM(One Time PROM)を用いれば、チップの出荷検査時に周波数情報の設定値をOTPROMに書き込むことも可能である。このように、OTPROM内に予め設定値を書き込んでおけば、ミリ波送信チップ110bやミリ波受信チップ201bを製品に組み込むユーザは、設定値を設定する必要がなくなる。
【0185】
なお、周波数調整部410a〜410c及び510a〜510cでの消費電力を気にしないのであれば、周波数調整部410a〜410c及び510a〜510cは、常時動作していてもよい。
【0186】
なお、第2及び第3の実施形態において、送信側にのみ周波数調整部を設けてもよいし、逆に、受信側にのみ周波数調整部を設けてもよい。また、送信側で使用する周波数制御部と受信側で使用する周波数制御部との構成は、同一でなくてもよい。
【0187】
(第4の実施形態)
OOK変調及びミリ波を用いた通信は、HDMIのように、一方向の通信以外に、双方向の通信にも利用可能である。たとえば、OOK変調及びミリ波を用いた通信は、USB2.0に利用することが可能である。第4の実施形態では、USB2.0に、OOK変調及びミリ波通信を利用した場合について説明する。
【0188】
図22は、USB2.0で利用されるコネクタのピンアサインを示す図である。USB2.0では、パソコンなどのホスト側と周辺機器などのデバイス側との間は、D+とD−との差動信号ラインを使って、半二重通信による双方向通信が行われている。したがって、送信と受信は、時分割されている。また、データ通信だけでなく、制御信号もパケット化され、差動信号で通信されている。そのため、HDMIの場合に必要であったDDCのための2.4GHzのトランシーバは不要になる。
【0189】
図23は、OOK変調及びミリ波をUSB2.0に利用したときの無線伝送システム700の全体構成を示す図である。無線伝送システム700は、USBホスト701と、無線USB送受信機702と、USBデバイス703と、無線USB送受信機704とを備える。USBホスト701と無線USB送受信機702とは、USBケーブルを介して接続されている。USBデバイス703と無線USB送受信機704とは、USBケーブルを介して接続されている。無線USB送受信機702で使用する電源は、USBケーブルを介して、USBホスト701から供給される。無線USB送受信機704で使用する電源は、別途必要となる。
【0190】
無線USB送受信機(送信部)702は、共用回路705と、ミリ波送信機707と、ミリ波受信機706と、結合器708と、アンテナ709とを含む。無線USB送受信機(受信部)704は、共用回路705と、ミリ波送信機707と、ミリ波受信機706と、結合器708と、アンテナ709とを含む。無線USB送受信機702及び無線USB送受信機704において、同一の参照符号を付した部分は同一の構成を有する。無線USB送受信機(送信部)702と無線USB送受信機(受信部)704とは、送受信周波数を共用する。
【0191】
図24は、共用回路705の回路図である。共用回路705は、USBホスト701(又はUSBデバイス703)から送信された信号をミリ波送信機707へ伝送すると共に、ミリ波受信機706から出力される信号をUSBホスト701(又はUSBデバイス703)へ送信する。
【0192】
図25は、ミリ波送信機707の機能的構成を示すブロック図である。
図25において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。ミリ波送信機707は、D+及びD−の信号をOOK変調によって変調し、ミリ波の無線信号を送信する。
【0193】
図26は、ミリ波受信機706の機能的構成を示すブロック図である。
図26において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。ミリ波受信機706は、受信したミリ波の無線信号を復調し、D+及びD−の信号を再生する。
【0194】
USB2.0は半二重通信であるので、アンテナ709は、ミリ波送信機707及びミリ波受信機706で、結合器708を利用して共用できる。
【0195】
USB2.0のビットレートは480Mbpsであり、480M×2=960MHzの帯域が通信には必要となる。ミリ波帯59GHz〜66GHzの中の任意の周波数帯に、VCO106a及び204aの発振周波数を設定すれば、通信が可能となる。USB送受信機2.0では、半二重通信であるので、VCO106aの発振周波数とVCO204aの発振周波数とが同じであってもよい。
【0196】
このように、第4の実施形態では、送受信周波数を共有するミリ波送信機(送信部)とミリ波受信機(受信部)とを設けることによって、USB2.0のような半二重よるミリ波無線通信が可能となる。
【0197】
第4の実施形態で示したように、キャリア発振器、OOK変調器、入力回路、ローカル発振器、ミキサ、及び検波部は、少なくとも1以上であればよい。
【0198】
なお、第4の実施形態の構成は、半二重による通信方式を有する規格であれば、USB2.0以外の規格にも利用可能である。
【0199】
(第5の実施形態)
OOK変調及びミリ波を用いた通信は、USB2.0に限らず、USB3.0にも利用可能である。USB3.0のピンアサインを以下に示す。
No.1:電源(VBUS)
No.2:USB2.0 差動対(D−)
No.3:USB2.0 差動対(D+)
No.4:USB OTGのID識別線
No.5:GND
No.6:USB3.0 信号送信線(−)
No.7:USB3.0 信号送信線(+)
No.8:GND
No.9:USB3.0 信号受信線(−)
No.10:USB3.0 信号受信線(+)
【0200】
No.1〜No.5は、USB2.0と同じ信号である。No.6〜No.10は、USB3.0で用いられる信号である。No.6及びNo.7は、USB3.0で使用する超高速信号伝送用の差動信号線で、送信専用である。No.9及びNo.10は、USB3.0で使用する超高速信号伝送用の差動信号線で、受信専用である。USB3.0での超高速信号伝送は、送信と受信を別の信号線で行い、かつ同時に送受信することが可能である。すなわち、USB3.0では、全二重通信となる。
【0201】
図27は、OOK変調及びミリ波をUSB3.0に利用したときの無線伝送システム800の全体構成を示す図である。
図27において、第4の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0202】
無線伝送システム800は、USBホスト801と、無線USB送受信機802と、UDBデバイス803と、無線USB送受信機804とを備える。USBホスト801及びUSBデバイス803は、USB3.0をサポートする装置である。USBホスト801と無線USB送受信機802とは、USBケーブルを介して接続されている。USBデバイス803と無線USB送受信機804とは、USBケーブルを介して接続されている。無線USB送受信機802で使用する電源は、USBケーブルを介して、USBホスト701から供給される。無線USB送受信機804で使用する電源は、別途必要となる。
【0203】
無線USB送受信機802は、共用回路705と、ミリ波送信機707と、ミリ波受信機706と、結合器708と、アンテナ709と、ミリ波送信機805aと、ミリ波受信機806aと、アンテナ807aと、アンテナ808aとを含む。
【0204】
無線USB送受信機804は、共用回路705と、ミリ波送信機707と、ミリ波受信機706と、結合器708と、アンテナ709と、ミリ波送信機805bと、ミリ波受信機806bと、アンテナ807bと、アンテナ808bとを含む。無線USB送受信機802及び無線USB送受信機804において、同一の参照符号を付した部分は同一の構成を有する
【0205】
ミリ波送信機805aは、VCOの発振周波数を除いては、ミリ波送信機707と同様の構成を有する。ミリ波受信機806bは、VCOの発振周波数を除いては、ミリ波受信機706と同様の構成を有する。ミリ波送信機805bは、VCOの発振周波数を除いては、ミリ波送信機707と同様の構成を有する。ミリ波受信機806aは、VCOの発振周波数を除いては、ミリ波受信機706と同様の構成を有する。USB3.0において、超高速通信は、全二重通信になるので、アンテナは共用できない。そのため、USB2.0用のアンテナ709に加えて、アンテナ807a、808a、807b、及び808bが必要となる。アンテナ807a及び807bが送信用のアンテナとなる。アンテナ808a及び808bが受信用のアンテナとなる。すなわち、無線伝送システム800では、3チャンネル通信となる。
【0206】
図28は、無線USB送受信機802及び804から送信される無線信号のスペクトラムの一例を示す図である。
図28において、ミリ波送信機707は、中心周波数が62.5GHzの無線信号を送信する。すなわち、ミリ波送信機707で使用するVCO106aの発振周波数は62.5GHzである。また、ミリ波受信機706のVCO204aの発振周波数は、たとえば、54.5GHzである。
【0207】
ミリ波送信機805aは、中心周波数が60.75GHzの無線信号を送信する。すなわち、ミリ波送信機805aで使用するVCO106aの発振周波数は、60.75GHzである。また、ミリ波受信機806bは、中心周波数が60.75GHzの無線信号を受信する。すなわち、ミリ波受信機806bで使用するVCO204aの発振周波数は、たとえば、52.75GHzである。
【0208】
ミリ波送信機805bは、中心周波数が64.25GHzの無線信号を送信する。すなわち、ミリ波送信機805bで使用するVCO106aの発振周波数は、64.25GHzである。また、ミリ波受信機806aは、中心周波数が64.25GHzの無線信号を受信する。すなわち、ミリ波受信機806aで使用するVCO204aの発振周波数は、たとえば、56.25GHzである。
【0209】
USB2.0の通信と、USB3.0で追加された超高速通信は同時には行われないので、
図28に示すように、USB2.0用の無線周波数帯域62.5GHzと超高速通信用の無線周波数帯域60.75GHz及び64.25GHzとは、重なっても混信の原因とはならない。USB3.0の超高速通信は5Gbpsであるが、
図21に示すような周波数帯域を使用する場合、少なくとも、1.5Gbps程度の通信は可能となる。
【0210】
このように、第5の実施形態では、半二重による送受信機能に加え、ミリ波送信機(送信部)805aとミリ波送信機(送信部)805aの送信周波数とは異なる受信周波数を有するミリ波受信機(受信部)806bとを設けることによって、USB3.0の超高速通信のような全二重によるミリ波無線通信が可能となる。
【0211】
なお、第5の実施形態の構成は、全二重による通信方式を有する規格であれば、USB3.0以外の規格にも利用可能である。
【0212】
(第6の実施形態)
図29は、本発明の無線伝送システム810の全体構成を示すブロック図である。
図29において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。無線伝送システム810において、無線HDMI送信機811は、第1の実施形態に係る無線HDMI送信機100に対して、クロック信号TMDSCLKを送信するためのTMDS送信機107dを追加した構成を有する。TMDS送信機107dは、VCOの発振周波数を除いては、TMDS送信機107a〜107cと同様の構成を有する。無線伝送システム810において、無線HDMI受信機812は、第1の実施形態に係る無線HDMI受信機200に対して、クロック信号TMDSCLKを受信するためのTMDS受信機207dを追加し、CDR回路203を除いた構成を有する。TMDS受信機207dは、VCOの発振周波数を除いては、TMDS受信機207a〜207cと同様の構成を有する。
【0213】
第6の実施形態では、ミリ波のチャネル数は、4となる。たとえば、TMDS0用の1CHの中心周波数を58.32GHzとし、TMDS1用の2CHの中心周波数を60.48GHzとし、TMDS2用の3CHの中心周波数を62.64GHzとし、TMDSCLK用の4CHの中心周波数を64.8GHzとするとよい。
【0214】
このように、第6の実施形態では、クロック信号HDMICLKも送信側から無線で送信されるので、受信側でのクロックリカバリー回路が不要となり、無線HDMI受信機200のコストを下げることができる。第6の実施形態は、4チャンネル分のミリ波帯を使用できる場合に有効である。
【0215】
(第7の実施形態)
ミリ波は、指向性が狭いので、無線HDMI送信機及び/又は無線HDMI受信機のアンテナの向きは、柔軟に変更することができるようになっているとよい。したがって、無線HDMI送信機及び/又は無線HDMI受信機において、ミリ波送信機及び/又はミリ波受信機から、アンテナを離すように設けて、当該アンテナの角度が変更可能なように設けてもよい。また、ソース機器及び/又はシンク機器と無線HDMI送信機及び/又は無線HDMI受信機とを接続する配線(たとえば、HDMIコネクタとHDMIケーブル)の角度を変更可能なように設けてもよい。
【0216】
このように、アンテナの向きを変更することができるフレキシブル構造を無線HDMI送信機及び/又は無線HDMI受信機に設けることによって、送受信の感度が高い方向にアンテナの向きを変えることができるので、伝送品質を向上させることが可能となる。
【0217】
(第8の実施形態)
図30は、本発明の第7の実施形態に係る無線伝送システム820の全体構成を示す図である。
図30に示すように、無線伝送システム820は、第1の無線機821と、第2の無線機822とを備える。第1の電子機器22と第1の無線機821とは、1チャネル以上の第1の伝送路23を介して接続されている。第2の電子機器33と第2の無線機822とは、1チャネル以上の第2の伝送路34を介して接続されている。第1の無線機821は、他の実施形態と同様に、OOK変調によってミリ波の無線信号を送信する構成を有するので、詳しい構成は省略する。第2の無線機822は、他の実施形態と同様に、無線信号を受信して、包絡線検波(又は二乗検波)によってデジタル信号を再生する構成を有するので、詳しい構成は省略する。第1の電子機器22からは、HDMI信号に限らず、DVI信号や、DisplayPort、MHL、HAVi、DiiVAに関する信号など、少なくとも1チャネル分のデジタル信号が出力される。第1の無線機821は、他の実施形態と同様にして、第1の電子機器22からのデジタル信号をそれぞれOOK変調によって、ミリ波のキャリア信号を変調して、無線信号として、チャネル毎に送信する。第2の無線機822は、無線信号を受信して、IF信号に変換し、包絡線検波(又は二乗検波)して、第1の電子機器22から出力されたデジタル信号を再生し、第2の電子機器33に送信する。
【0218】
このように、本発明において、無線送信される信号は、特に限定されるものではない。
【0219】
なお、制御信号がある場合は、第1の実施形態と同様、ミリ波以外の帯域を用いて制御信号を送受信してもよいし、空きチャネルがあるのであれば、ミリ波の帯域を利用して制御信号を送受信してもよい。
【0220】
(アンテナの変形)
無線受信機は、受信無線信号をダウンコンバートして、IF信号に変換した後、復調する。したがって、第1の実施形態では、受信アンテナとして、4×4パッチアンテナを3つ用いることとしたが、一つのアンテナ部(たとえば、一つの4×4パッチアンテナ)で受信して、受信した無線信号を分岐してダウンコンバートするローカル周波数を変更することによって、復調するようにしてもよい。また、送信アンテナについても、一つのアンテナで、異なる送信周波数を共有できるのであれば、第1の実施形態のように3つの4×4パッチアンテナを用いなくてもよい。
【0221】
また、送信アンテナとして、4×4パッチアンテナの代わりに、たとえば、2×2パッチアンテナを用いてもよい。また、受信アンテナとして、4×4パッチアンテナ以外のアンテナを用いてもよい。
【0222】
また、アンテナとして、パッチアンテナ以外のアンテナを用いてもよい。
【0223】
すなわち、本発明において、アンテナの個数や構造等は、特に限定されず、ミリ波の送受信に適したアンテナが用いられればよい。
【0224】
(他の実施形態)
本発明の実施形態を提供するに際しては、半導体技術を用いて、各種の形態で提供される。たとえば、本発明の無線送信機及び無線受信機は、半導体チップや、半導体回路を設計する際に用いられるマクロなどの形態で提供されてもよい。また、本発明の実施形態で用いた無線通信方法、無線送信方法、及び無線受信方法も、本発明の範囲に含まれる。
【0225】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。