特許第5665098号(P5665098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧 ▶ 電子磁気工業株式会社の特許一覧

特許5665098焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法、表層深さ測定装置、表層深さ測定方法
<>
  • 特許5665098-焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法、表層深さ測定装置、表層深さ測定方法 図000021
  • 特許5665098-焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法、表層深さ測定装置、表層深さ測定方法 図000022
  • 特許5665098-焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法、表層深さ測定装置、表層深さ測定方法 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665098
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法、表層深さ測定装置、表層深さ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   G01N27/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-187327(P2013-187327)
(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-77782(P2014-77782A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2013年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-206925(P2012-206925)
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年3月10日〜14日(現地時間) 国際光工学会が主催した国際研究集会にて公開された
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】591011775
【氏名又は名称】電子磁気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】笹本 明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岩田 成弘
(72)【発明者】
【氏名】井家 奈津子
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−070102(JP,A)
【文献】 特開2007−108098(JP,A)
【文献】 実開平03−004261(JP,U)
【文献】 特開2004−309355(JP,A)
【文献】 特開2007−064817(JP,A)
【文献】 特開2009−047664(JP,A)
【文献】 特表2008−537781(JP,A)
【文献】 特開昭58−176504(JP,A)
【文献】 特開昭61−270603(JP,A)
【文献】 武尾文雄他,4探針法による高周波焼入れ深さの非破壊評価,非破壊検査,2003年 1月 1日,第52巻第1号,39−44
【文献】 非破壊検査便覧,日刊工業新聞社,1968年12月10日,2版,690−705
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/10、27/14−27/24
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼き入れ処理された鋼材の表面に接して配置される2本の電流探針間に電流を流す電源と、
前記鋼材の表面に接して配置される2本の検出探針の電位差を計測する電位差計測装置と、
前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記鋼材の焼き入れ深さを演算する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記鋼材の焼き入れ層の抵抗率ρ1、前記鋼材の未焼き入れ層の抵抗率ρ2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記鋼材の焼き入れ層の電位分布及び前記鋼材の未焼き入れ層の電位分布を鏡像法で表現して解析し、前記鋼材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX1軸、前記鋼材の表面に直交する方向をX2軸、前記鋼材の表面におけるX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記鋼材の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とし、前記鋼材の焼き入れ層の任意の点の電位をV1、前記鋼材の未焼き入れ層の任意の点の電位をV2とし、次式、
【数1】
のV1(x,D)及びV2(x,D)を焼き入れ深さDで微分することにより得られる次式、
【数2】
の最大値を求めることにより、前記鋼材の焼き入れ深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を演算する手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焼き入れ深さ測定装置において、前記2本の検出探針は、前記2本の電流探針に対して対称配置される、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焼き入れ深さ測定装置において、前記2本の電流探針、前記2本の検出探針を含み、前記2本の検出探針の位置を調整可能な探針可変プローブをさらに備える、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置。
【請求項4】
表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の前記表層の表面に接して配置される2本の電流探針間に電流を流す電流源と、
前記表層の表面に接して配置される2本の検出探針の電位差を計測する電位差計測装置と、
前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記表層の深さを演算する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記被測定材の表層の抵抗率ρ1、前記被測定材の深層の抵抗率ρ2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記被測定材の表層の電位分布及び前記被測定材の深層の電位分布を鏡像法で表現して解析し、前記被測定材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX1軸、前記被測定材の表面に直交する方向をX2軸、前記被測定材の表面におけるX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記被測定材の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とし、前記被測定材の表層の任意の点の電位をV1、前記被測定材の深層の任意の点の電位をV2とし、次式、
【数3】
のV1(x,D)及びV2(x,D)を表層の深さDで微分することにより得られる次式、
【数4】
の最大値を求めることにより、前記表層の深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の前記表層の深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を演算する手段を含む、ことを特徴とする表層深さ測定装置。
【請求項5】
2本の電流探針、2本の検出探針を焼き入れ処理された鋼材の表面に接触させ、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記鋼材の焼き入れ深さを求める焼き入れ深さ測定方法であって、
前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記鋼材の焼き入れ層の抵抗率ρ1、前記鋼材の未焼き入れ層の抵抗率ρ2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記鋼材の焼き入れ層の電位分布及び前記鋼材の未焼き入れ層の電位分布を鏡像法で表現して解析し、前記鋼材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX1軸、前記鋼材の表面に直交する方向をX2軸、前記鋼材の表面におけるX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記鋼材の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とし、前記鋼材の焼き入れ層の任意の点の電位をV1、前記鋼材の未焼き入れ層の任意の点の電位をV2とし、次式、
【数5】
のV1(x,D)及びV2(x,D)を焼き入れ深さDで微分することにより得られる次式、
【数6】
の最大値を求めることにより、前記鋼材の焼き入れ深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を設定する工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法。
【請求項6】
請求項に記載の焼き入れ深さ測定方法において、前記2本の検出探針は、前記2本の電流探針に対して対称配置される、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法。
【請求項7】
2本の電流探針、2本の検出探針を表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の前記表層の表面に接触させ、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記表層の深さを求める表層深さ測定方法であって、
前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記被測定材の表層の抵抗率ρ1、前記被測定材の深層の抵抗率ρ2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記被測定材の表層の電位分布及び前記被測定材の深層の電位分布を鏡像法で表現して解析し、前記被測定材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX1軸、前記被測定材の表面に直交する方向をX2軸、前記被測定材の表面におけるX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記被測定材の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とし、前記被測定材の表層の任意の点の電位をV1、前記被測定材の深層の任意の点の電位をV2とし、次式、
【数7】
のV1(x,D)及びV2(x,D)を表層の深さDで微分することにより得られる次式、
【数8】
の最大値を求めることにより、前記表層の深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の前記表層の深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を設定する工程を含む、ことを特徴とする表層深さ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位差法を用いて鋼材の焼き入れ深さを測定する焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法、電位差法を用いて、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の表層の深さを測定する表層深さ測定装置、表層深さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる電位差法を用いて鋼材の焼き入れ深さを測定する従来技術の一例として、鋼材の表面に接して鋼材に電流を供給する一対の電流探針と、その一対の電流探針に対して対称配置され、その鋼材の表面に接してその鋼材の表面の異なる部位間の電位差を検出する二対の検出探針と、を備える焼き入れ深さ測定装置が公知である。当該従来技術の焼き入れ深さ測定装置は、一対の電流探針に流れる電流、二対の検出探針によりそれぞれ検出される電圧、各探針間の位置関係に基づいて、鋼材の焼き入れ深さを算出するものである(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また電位差法を用いて鋼材の焼き入れ深さを測定する従来技術の他の一例として、鋼材の表面に接して鋼材に電流を供給する一対の電流探針と、その一対の電流探針間に対称配置され、鋼材の表面に接してその鋼材の表面の異なる部位間の電位差を検出する少なくとも三対の検出探針と、を備える焼き入れ深さ測定装置が公知である。当該従来技術の焼き入れ深さ測定装置は、一対の電流探針に流れる電流、少なくとも三対の検出探針により検出されるそれぞれの電位差、各探針の配置、及び鋼材に生ずる電位分布を示す特性式に基づいて、鋼材の焼き入れ深さを算出するものである(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−309355号公報
【特許文献2】特開2007−64817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の焼き入れ深さ測定装置においては、焼き入れ深さが深くなるに従って、特に焼き入れ深さが5mm程度を超えると測定精度が大幅に低下してしまうという課題がある。そして近年、従来の焼き入れ深さ測定装置や測定方法では高精度に測定することが困難な深さの焼き入れ深さまでも高精度に測定したいという要請が高まりつつある。
【0006】
また電位差法を用いて鋼材の焼き入れ深さを測定する上で、検出探針の間隔等、各探針の配置が焼き入れ深さの測定精度に多少なりとも影響を及ぼすことは従来から知られている。しかしながら検出探針の間隔等、各探針の配置をどのように設定するか、それを焼き入れ深さの測定精度の観点で明確な基準や手法等を開示した文献等は、出願人らが知る限りにおいて見当たらない。そのため従来は、例えば検出探針間の電位差が最も高くなるように、シミュレーションや実験等で測定値を予測評価することによって、検出探針の間隔等、各探針の配置を手探りで設定しているのが実情である。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、より深い焼き入れ深さを高精度に測定することができる焼き入れ深さ測定装置、焼き入れ深さ測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
出願人らは、鋭意研究を重ねた結果、検出探針間の電位差が最も高くなるように検出探針の位置を設定する従来の手法は、例えば2〜3mm程度の比較的浅い焼き入れ深さを測定する場合においては測定精度を向上させる上で効果がある反面、例えば5mm程度を超えるような比較的深い焼き入れ深さを測定する場合には、逆に測定精度を低下させてしまう要因となることを突き止めた。そして出願人らは、さらに鋭意研究を重ねた結果、鋼材の焼き入れ深さの変化に対する検出探針間の電位差の変化の割合の大きさ、これが鋼材の焼き入れ深さの測定精度に直接に寄与する因子であるとの知見を得るに至った。このような知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、焼き入れ処理された鋼材の表面に接して配置される2本の電流探針間に電流を流す電源と、前記鋼材の表面に接して配置される2本の検出探針の電位差を計測する電位差計測装置と、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記鋼材の焼き入れ深さを演算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記鋼材の焼き入れ深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を演算する手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
【0010】
鋼材の焼き入れ深さの変化に対する2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、2本の検出探針の位置を設定する。それによってその所望の焼き入れ深さにおける測定感度を最も高くすることができるので、鋼材の焼き入れ深さを高精度に測定することができる。特に従来は測定が困難だった深さの焼き入れ深さをも高精度に測定することが可能になる。
【0011】
これにより本発明の第1の態様によれば、より深い焼き入れ深さを高精度に測定することができるという作用効果が得られる。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記2本の検出探針は、前記2本の電流探針に対して対称配置される、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
【0013】
ここで「2本の電流探針に対して対称配置される」とは、鋼材の表面に対する2本の電流探針の接点を結ぶ直線上において2本の検出探針が鋼材の表面に接し、一方の電流探針の接点と一方の検出探針の接点との間隔と、他方の電流探針の接点と他方の検出探針の接点との間隔とが等しくなるように、2本の検出探針が対称的に配置されることを意味する。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、より深い焼き入れ深さをさらに高精度に測定することができるという作用効果が得られる。
【0015】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記制御装置は、前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記鋼材の焼き入れ層の抵抗率ρ1、前記鋼材の未焼き入れ層の抵抗率ρ2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記鋼材の焼き入れ層の電位分布及び前記鋼材の未焼き入れ層の電位分布を鏡像法で表現して解析する手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
【0016】
鋼材の焼き入れ層の電位分布及び鋼材の未焼き入れ層の電位分布の解析は、三次元空間における解析となることから、一般的な離散化解法では計算に多大な時間を要することとなるとともに、どのようにメッシュを切るかによって正しい解が得られない虞が生ずる。それに対して鏡像法による電位分布の表現は、短時間で計算が可能であるとともに、検出探針の位置の解析関数の和で電位を表現することができるので、離散化解法のような問題は生じない。
【0017】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第3の態様において、前記制御装置は、前記鋼材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX1軸、前記鋼材の表面に直交する方向をX2軸、前記鋼材の表面におけるX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記鋼材の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とし、前記鋼材の焼き入れ層の任意の点の電位をV1、前記鋼材の未焼き入れ層の任意の点の電位をV2とし、次式、
【数1】
【数2】
の最大値を求める手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
本発明の第4の態様によれば、前述した本発明の第3の態様と同様に、鏡像法による電位分布の表現は、短時間で計算が可能であるとともに、検出探針の位置の解析関数の和で電位を表現することができるので、離散化解法のような問題は生じない。
【0018】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記2本の電流探針、前記2本の検出探針を含み、前記2本の検出探針の位置を調整可能な探針可変プローブをさらに備える、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
このような特徴によれば、測定する焼き入れ深さに応じて2本の検出探針の位置を最適な位置に調整して、焼き入れ深さを高精度に測定することができる。
【0019】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の前記表層の表面に接して配置される2本の電流探針間に電流を流す電流源と、前記表層の表面に接して配置される2本の検出探針の電位差を計測する電位差計測装置と、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記表層の深さを演算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記表層の深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の前記表層の深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を演算する手段を含む、ことを特徴とする表層深さ測定装置である。
本発明の第6の態様によれば、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の表層の深さを測定する表層深さ測定装置において、より深い表層深さを高精度に測定することができるという作用効果が得られる。
【0020】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、2本の電流探針、2本の検出探針を焼き入れ処理された鋼材の表面に接触させ、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記鋼材の焼き入れ深さを求める焼き入れ深さ測定方法であって、前記鋼材の焼き入れ深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を設定する工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第7の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0021】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、前述した本発明の第7の態様において、前記2本の検出探針は、前記2本の電流探針に対して対称配置される、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第8の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第2の態様と同様の作用効果が得られる。
【0022】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、前述した本発明の第7の態様又は第8の態様において、前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記鋼材の焼き入れ層の抵抗率ρ1、前記鋼材の未焼き入れ層の抵抗率ρ2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記鋼材の焼き入れ層の電位分布及び前記鋼材の未焼き入れ層の電位分布を鏡像法で表現して解析する工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第9の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第3の態様と同様の作用効果が得られる。
【0023】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、前述した本発明の第9の態様において、前記鋼材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX1軸、前記鋼材の表面に直交する方向をX2軸、前記鋼材の表面におけるX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記鋼材の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とし、前記鋼材の焼き入れ層の任意の点の電位をV1、前記鋼材の未焼き入れ層の任意の点の電位をV2とし、次式、
【数3】
のV1(x,D)及びV2(x,D)を焼き入れ深さDで微分することにより得られる次式、
【数4】
の最大値を求める工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第10の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第4の態様と同様の作用効果が得られる。
【0024】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、2本の電流探針、2本の検出探針を表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の前記表層の表面に接触させ、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記表層の深さを求める表層深さ測定方法であって、前記表層の深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の前記表層の深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を設定する工程を含む、ことを特徴とする表層深さ測定方法である。
【0025】
本発明の第11の態様によれば、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の表層の深さを測定する表層深さ測定方法において、前述した本発明の第6の態様と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る焼き入れ深さ測定装置及び焼き入れ深さ測定方法によれば、より深い焼き入れ深さを高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る焼き入れ深さ測定装置の構成を図示したブロック図。
図2】第1電流探針と第2電流探針の周囲における鋼材表面の等電位線図。
図3】焼き入れ深さに対する第1検出探針と第2検出探針の間の電位差の変化を従来技術と本発明とで対比して実験した結果を図示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0029】
<焼き入れ深さ測定装置の構成>
本発明に係る焼き入れ深さ測定装置の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る焼き入れ深さ測定装置10の構成を図示したブロック図である。
【0030】
焼き入れ深さ測定装置10は、電源11、電位差計測装置12、制御部13、操作部14、表示部15及び探針可変プローブ20を備える。
【0031】
焼き入れ処理された鋼材30において、焼き入れ層32は焼き入れ処理がされた層であり、未焼き入れ層34は焼き入れ処理がされていない層である。焼き入れ境界33は、焼き入れ層32と未焼き入れ層34との境界である。鋼材30の表面31から焼き入れ境界33までの距離が鋼材30の焼き入れ深さDとなる。
【0032】
探針可変プローブ20は、プローブ本体21、第1電流探針22、第2電流探針23、第1検出探針24及び第2検出探針25を含む。
【0033】
第1電流探針22及び第2電流探針23は、プローブ本体21に支持されており、鋼材30の表面31に接して配置される。第1検出探針24及び第2検出探針25は、その位置を調整可能にプローブ本体21に支持されており、鋼材30の表面31に接して配置される。第1検出探針24及び第2検出探針25は、当該実施例のように第1電流探針22と第2電流探針23の内側に配置してもよいし、第1電流探針22と第2電流探針23の外側にそれぞれ配置してもよい。また第1検出探針24及び第2検出探針25は、当該実施例のように、鋼材30の表面31に対する第1電流探針22の接点と第2電流探針23の接点を結ぶ直線上に配置されるのが好ましい。さらに第1検出探針24及び第2検出探針25は、当該実施例のように、第1電流探針22の接点と第1検出探針24の接点との間隔と、第2電流探針23の接点と第2検出探針25の接点との間隔とが等しくなるように配置されるのが好ましい。第1電流探針22、第2電流探針23、第1検出探針24及び第2検出探針25は、いずれも図示していないコイルバネ等の弾性部品により鋼材30の表面31に押圧された状態で、先端が鋼材30の表面31に当接している。
【0034】
電源11は、探針可変プローブ20の第1電流探針22及び第2電流探針23に接続され、第1電流探針22と第2電流探針23との間に電流Iを流す。つまり電源11は、第1電流探針22及び第2電流探針23を通じて鋼材30に電流Iを流す直流電源装置である。
【0035】
電位差計測装置12は、第1検出探針24及び第2検出探針25に接続されており、第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差を計測する。より具体的には電位差計測装置12は、鋼材30の表面31において第1検出探針24が接している点の電位と、鋼材30の表面31において第2検出探針25が接している点の電位との電位差Vdを計測する装置である。
【0036】
「制御装置」としての制御部13は、第1電流探針22及び第2電流探針23を通じて鋼材30に電流Iを流したときに生ずる第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差Vdに基づいて、鋼材30の焼き入れ深さDを演算する。より具体的には、焼き入れ深さDに応じて電位差Vdが変化するので、既知の焼き入れ層32の抵抗率ρ1、未焼き入れ層34の抵抗率ρ2、電流I、さらに第1電流探針22、第2電流探針23、第1検出探針24及び第2検出探針25の位置関係に基づいて、電位差Vdから焼き入れ深さDを演算する。
【0037】
操作部14は、図示していない複数の押しボタンやLED表示灯を含み、焼き入れ深さDの演算に必要なパラメータを制御部13へ入力するために設けられている。焼き入れ深さDの演算に必要なパラメータは、例えば抵抗率ρ1、ρ2、電流I、第1電流探針22、第2電流探針23、第1検出探針24及び第2検出探針25の位置関係等である。表示部15は、例えば液晶ディスプレイ等であり、制御部13による演算処理結果や操作部14で設定したパラメータ等を表示するために設けられている。
【0038】
<鏡像法による最適な検出探針位置の解析>
制御部13は、焼き入れ深さDの変化に対する第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差Vdの変化の割合が所望の焼き入れ深さDにおいて最も大きくなるように、第1検出探針24と第2検出探針25の位置を演算する。より具体的には制御部13は、まず鋼材30の表面31に平行な第1電流探針22、第2電流探針23、第1検出探針24及び第2検出探針25の接点の配置方向をX1軸、鋼材30の表面31に直交する方向をX2軸、鋼材30の表面31に平行な方向でX1軸に直交する方向をX3軸とする三次元空間座標を定義する。そして抵抗率ρ1、ρ2、電流I、第1電流探針22の位置の座標(a,0,0)及び第2電流探針23の位置の座標(b,0,0)に基づいて、焼き入れ層32の電位分布及び未焼き入れ層34の電位分布を鏡像法で表現して解析し、第1検出探針24の最適な位置の座標(x1,0,0)を決定する。
【0039】
演算された第1検出探針24の最適な位置の座標(x1,0,0)は、例えば表示部15に表示される。焼き入れ深さ測定装置10の操作者は、この表示部15に表示された座標値に基づいて、第1検出探針24及び第2検出探針25を最適な位置に配置することができる。以下、より具体的に説明する。
【0040】
1.電位差法による焼き入れ深さ測定の数理モデル
電位差法による焼き入れ深さ測定の数理モデルについて、引き続き図1を参照しつつ図2も参照しながら説明する。
図2は、第1電流探針22と第2電流探針23の周囲における鋼材30の表面31の等電位線図のシミュレーション結果を模式的に図示したものである。
【0041】
ここでは簡単のため鋼材30の表面31を無限に広がる平面と仮定する。また第1電流探針22の座標を(a,0,0)、第2電流探針23の座標を(b,0,0)、鋼材30の内部における任意の位置xの座標を(x1,x2,x3)とする。そして焼き入れ層32における任意の点の電位をV1とし、未焼き入れ層34における任意の点の電位をV2とする。このとき電流I、抵抗率ρ1、ρ2、に対する電位V1、V2、は、下記の式(1)〜(7)で定義される。
【0042】
【数5】
式(1)は、鋼材30の表面31の電位を記述した微分方程式である。式(2)は、焼き入れ層32における任意の点の電位V1を記述した微分方程式である。式(3)は、電位V1が無限遠方で0になることを意味している。式(4)は、焼き入れ境界33の電位を記述した微分方程式である。式(5)は、未焼き入れ層34における任意の点の電位V2を記述した微分方程式である。式(6)は、電位V2が無限遠方で0になることを意味している。式(7)は、式(2)及び式(5)に含まれるΔの内容を記述したものであり、2階の微分作用素(ラプラス作用素)である。
【0043】
2.鏡像法による表現
鏡像法(method of images)とは、導体が存在する系の電場を求める問題を仮想的な電荷による電場を求める問題に置き換えて解を求める方法である。
【0044】
電位V1、V2をx及び焼き入れ深さDの関数として鏡像法により表現すると、下記の式(8)〜(12)のようになる。
【0045】
【数6】
q1、q2は、仮想的な電荷である。またak、bkは、“仮想電荷点の配置”とでも呼べる座標値であり、より具体的には、ak=(a,2kD,0)、bk=(b,2kD,0)となる。
【0046】
式(8)において電位V1(x,D)は、探針の位置の解析関数の和で表現されているので、あとは数式処理によって、焼き入れ深さDというパラメータに対する微分値を求めることができる。それによって短時間で計算が可能になるとともに、前述した離散化解法のような問題は生じない。
【0047】
また式(1)〜(6)に示した微分方程式は、解の一意性があること(解が1つしかないこと)が分かっている。そして電位V1(x,D)及び電位V2(x,D)は、式(1)〜(6)の条件を全て満足するので、式(1)〜(6)の解ということになる。ここでα={a,b}とおくと、鋼材30の表面31の境界条件、鋼材30の焼き入れ境界33の境界条件は、下記の式(13)〜(15)で表すことができる。
【0048】
【数7】
式(13)は、ノイマン境界条件(Neumann B.C.)から導出される鋼材30の表面31(∂Ω01)の境界条件である。式(14)は、ノイマン境界条件から導出される鋼材30の焼き入れ境界33(∂Ω12)の境界条件である。式(15)は、ディリクレ境界条件(Dirichlet B.C.)から導出される鋼材30の焼き入れ境界33(∂Ω12)の境界条件である。そして式(13)〜(15)より、下記の式(16)及び(17)を導出する。
【0049】
【数8】
この式(16)及び(17)により、q1,a,k、q1,b,k、q2,a,k、q2,b,k(k=0,1・・・)を逐次求める。kは、無限に続く仮想電荷を示すインデックスである。
【0050】
3.第1検出探針24及び第2検出探針25の最適位置
焼き入れ深さDの変化に対する第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差Vdの変化の割合が所望の焼き入れ深さDにおいて最も大きくなるときの第1検出探針24の位置の座標(x1,0,0)は、以下の手順で求めることができる。
【0051】
まず電位V1(x,D)及び電位V2(x,D)を焼き入れ深さDについて微分する(式(18))。
【0052】
【数9】
この式(18)は、焼き入れ深さDの変化量に対する電位V1(x,D)及び電位V2(x,D)の変化量を示す式ということになる。したがって式(18)において最大値が得られる点は、焼き入れ深さDの変化に対する第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差Vdの変化の割合が、所望の焼き入れ深さDにおいて最も大きくなるときの第1検出探針24の位置の座標(x1,0,0)ということになる。また第2検出探針25は、前述したように第1検出探針24に対して対称配置されるので、第2検出探針25の位置の座標は、第1検出探針24の位置の座標(x1,0,0)から自ずと定まることになる。
【0053】
式(18)において最大値が得られる点を求めるには、式(8)のΣ内項をD、x1で偏微分すれば良い。より具体的には、dv(x1,d)を下記の式(19)で定義する。
【0054】
【数10】
1はスカラー量であり、dは焼き入れ深さDの変数である。
【0055】
そして所望の焼き入れ深さDを変数dに代入して、F(x1)をdv(x1,D)で定義する。ここで一般的にスカラー変数x1の関数F(x1)の最大値は、例えばグラフを描くことによって求めることもできるが、関数F(x1)がx1の解析的表現で得られているので、下記の式(20)の条件を満たす点を求めれば良い。
【0056】
【数11】
式(20)は、x1の関数F(x1)の極大、極小の必要条件である。
尚、例えばX3方向についても、上記と同様の手順で式(8)のΣ内項をD、x3で偏微分することで極大点を見出すことができる。
【0057】
<確認実験>
出願人らは、本発明の作用効果を確認すべく、前述した焼き入れ深さ測定装置10を用いて実験を行った。具体的には50mm×50mm×50mmの鋼材を4つ用意し、それぞれの焼き入れ深さを2mm、5mm、7mm、10mmとして焼き入れを行って試料を作成し、それぞれの試料について、第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差Vdを測定する実験を行った。第1電流探針22と第2電流探針23の間に流す電流は2A(アンペア)とした。
【0058】
第1電流探針22と第2電流探針23との間隔W1(以下、「電流探針間隔W1」という。)を3mm、第1検出探針24と第2検出探針25との間隔W2(以下、「検出探針間隔W2」という。)を2mmとし、この条件での測定結果を従来の焼き入れ深さ測定方法による測定結果として求めた。また電流探針間隔W1を15mm、焼き入れ深さDを10mmに設定して、前述した手順で最適な第1検出探針24の位置の座標(x1,0,0)を求め、その座標値から検出探針間隔W2を23.2mmに設定し、この条件での測定結果を本発明に係る焼き入れ深さ測定方法による測定結果として求めた。
【0059】
図3は、焼き入れ深さDに対する第1検出探針24と第2検出探針25の間の電位差Vdの変化を従来技術と本発明とで対比して実験した結果を図示したグラフである。図3において二点鎖線で図示したグラフは、従来の焼き入れ深さ測定方法による電位差Vdのグラフであり、実線で図示したグラフは、本発明に係る焼き入れ深さ測定方法による電位差Vdのグラフである。
【0060】
従来の焼き入れ深さ測定方法は、第1検出探針24と第2検出探針25との間の電位差Vd(以下、単に「電位差Vd」という。)が最も高くなるように各検出探針の位置を設定した。そのため電位差Vdは、約60〜90μVの範囲で変化し、全体的に高くなった。そして例えば2〜3mm程度の焼き入れ深さが比較的浅い領域では、焼き入れ深さの変化に対する電位差Vdの変化が比較的大きくなり、比較的高い検出感度が得られた。しかし焼き入れ深さが5mm程度を超えるあたりから、焼き入れ深さの変化に対して電位差Vdがほとんど変化しなくなり、さらに焼き入れ深さが深くなるに従って逆に電位差Vdが低下していってしまったため、焼き入れ深さを正確に測定することが困難になった。
【0061】
それに対して本発明に係る焼き入れ深さ測定方法は、電位差Vdが約25〜35μVの範囲で変化し、全体的に従来の焼き入れ深さ測定方法よりも低くなった。しかし焼き入れ深さの変化に対する電位差Vdの変化は、焼き入れ深さにほぼ比例して上昇するように変化し、しかも焼き入れ深さが5mm程度を超える領域においても高精度な測定が可能なレベルの変化率で変化していた。それによって本発明に係る焼き入れ深さ測定方法は、より深い焼き入れ深さを高精度に測定することが可能であることが確認された。
【0062】
<本発明の作用効果>
以上説明したように、鋼材30の焼き入れ深さDの変化に対する第1検出探針24と第2検出探針25の間の電位差Vdの変化の割合が所望の焼き入れ深さDにおいて最も大きくなるように、第1検出探針24と第2検出探針25の位置を設定する。それによってその所望の焼き入れ深さDにおける測定感度を最も高くすることができるので、鋼材30の焼き入れ深さDを高精度に測定することができる。特に従来は測定が困難だった深さの焼き入れ深さDをも高精度に測定することが可能になる。
【0063】
また本発明に係る焼き入れ深さ測定装置10においては、前述したように、第1検出探針24と第2検出探針25の位置を調整可能な探針可変プローブ20を備えているのが好ましい。これは本発明に必須の構成要素ではないが、それによって測定する焼き入れ深さDに応じて第1検出探針24と第2検出探針25の位置を最適な位置に調整して、焼き入れ深さDを高精度に測定することができる。
【0064】
<他の実施例、変形例>
「焼き入れ処理された鋼材」は、換言すれば「表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材」であり、鋼材の「焼き入れ層」は被測定材の「表層」に相当し、鋼材の「未焼き入れ層」は被測定材の「深層」に相当する。したがって上記説明した焼き入れ深さ測定装置及び焼き入れ深さ測定方法は、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材に対し、同様のパラメータ及び数式により、その表層の深さを測定する表層深さ測定装置及び表層深さ測定方法としてそのまま用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 焼き入れ深さ測定装置
11 電源
12 電位差計測装置
13 制御部
14 操作部
15 表示部
20 探針可変プローブ
21 プローブ本体
22 第1電流探針
23 第2電流探針
24 第1検出探針
25 第2検出探針
30 鋼材
31 鋼材の表面
32 鋼材の焼き入れ層
33 鋼材の焼き入れ境界
34 鋼材の未焼き入れ層
図1
図2
図3