【課題を解決するための手段】
【0008】
出願人らは、鋭意研究を重ねた結果、検出探針間の電位差が最も高くなるように検出探針の位置を設定する従来の手法は、例えば2〜3mm程度の比較的浅い焼き入れ深さを測定する場合においては測定精度を向上させる上で効果がある反面、例えば5mm程度を超えるような比較的深い焼き入れ深さを測定する場合には、逆に測定精度を低下させてしまう要因となることを突き止めた。そして出願人らは、さらに鋭意研究を重ねた結果、鋼材の焼き入れ深さの変化に対する検出探針間の電位差の変化の割合の大きさ、これが鋼材の焼き入れ深さの測定精度に直接に寄与する因子であるとの知見を得るに至った。このような知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、焼き入れ処理された鋼材の表面に接して配置される2本の電流探針間に電流を流す電源と、前記鋼材の表面に接して配置される2本の検出探針の電位差を計測する電位差計測装置と、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記鋼材の焼き入れ深さを演算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記鋼材の焼き入れ深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を演算する手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
【0010】
鋼材の焼き入れ深さの変化に対する2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、2本の検出探針の位置を設定する。それによってその所望の焼き入れ深さにおける測定感度を最も高くすることができるので、鋼材の焼き入れ深さを高精度に測定することができる。特に従来は測定が困難だった深さの焼き入れ深さをも高精度に測定することが可能になる。
【0011】
これにより本発明の第1の態様によれば、より深い焼き入れ深さを高精度に測定することができるという作用効果が得られる。
【0012】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記2本の検出探針は、前記2本の電流探針に対して対称配置される、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
【0013】
ここで「2本の電流探針に対して対称配置される」とは、鋼材の表面に対する2本の電流探針の接点を結ぶ直線上において2本の検出探針が鋼材の表面に接し、一方の電流探針の接点と一方の検出探針の接点との間隔と、他方の電流探針の接点と他方の検出探針の接点との間隔とが等しくなるように、2本の検出探針が対称的に配置されることを意味する。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、より深い焼き入れ深さをさらに高精度に測定することができるという作用効果が得られる。
【0015】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記制御装置は、前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記鋼材の焼き入れ層の抵抗率ρ
1、前記鋼材の未焼き入れ層の抵抗率ρ
2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記鋼材の焼き入れ層の電位分布及び前記鋼材の未焼き入れ層の電位分布を鏡像法で表現して解析する手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
【0016】
鋼材の焼き入れ層の電位分布及び鋼材の未焼き入れ層の電位分布の解析は、三次元空間における解析となることから、一般的な離散化解法では計算に多大な時間を要することとなるとともに、どのようにメッシュを切るかによって正しい解が得られない虞が生ずる。それに対して鏡像法による電位分布の表現は、短時間で計算が可能であるとともに、検出探針の位置の解析関数の和で電位を表現することができるので、離散化解法のような問題は生じない。
【0017】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第3の態様において、前記制御装置は、前記鋼材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX
1軸、前記鋼材の表面に直交する方向をX
2軸、前記鋼材の表面におけるX
1軸に直交する方向をX
3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記鋼材の内部における任意の位置xの座標を(x
1,x
2,x
3)とし、前記鋼材の焼き入れ層の任意の点の電位をV
1、前記鋼材の未焼き入れ層の任意の点の電位をV
2とし、次式、
【数1】
【数2】
の最大値を求める手段を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
本発明の第4の態様によれば、前述した本発明の第3の態様と同様に、鏡像法による電位分布の表現は、短時間で計算が可能であるとともに、検出探針の位置の解析関数の和で電位を表現することができるので、離散化解法のような問題は生じない。
【0018】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記2本の電流探針、前記2本の検出探針を含み、前記2本の検出探針の位置を調整可能な探針可変プローブをさらに備える、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定装置である。
このような特徴によれば、測定する焼き入れ深さに応じて2本の検出探針の位置を最適な位置に調整して、焼き入れ深さを高精度に測定することができる。
【0019】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の前記表層の表面に接して配置される2本の電流探針間に電流を流す電流源と、前記表層の表面に接して配置される2本の検出探針の電位差を計測する電位差計測装置と、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記表層の深さを演算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記表層の深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の前記表層の深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を演算する手段を含む、ことを特徴とする表層深さ測定装置である。
本発明の第6の態様によれば、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の表層の深さを測定する表層深さ測定装置において、より深い表層深さを高精度に測定することができるという作用効果が得られる。
【0020】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、2本の電流探針、2本の検出探針を焼き入れ処理された鋼材の表面に接触させ、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記鋼材の焼き入れ深さを求める焼き入れ深さ測定方法であって、前記鋼材の焼き入れ深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の焼き入れ深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を設定する工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第7の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0021】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、前述した本発明の第7の態様において、前記2本の検出探針は、前記2本の電流探針に対して対称配置される、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第8の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第2の態様と同様の作用効果が得られる。
【0022】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、前述した本発明の第7の態様又は第8の態様において、前記2本の電流探針間に流れる電流I、前記鋼材の焼き入れ層の抵抗率ρ
1、前記鋼材の未焼き入れ層の抵抗率ρ
2、及び前記2本の電流探針の配置に基づいて、前記鋼材の焼き入れ層の電位分布及び前記鋼材の未焼き入れ層の電位分布を鏡像法で表現して解析する工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第9の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第3の態様と同様の作用効果が得られる。
【0023】
<本発明の第10の態様>
本発明の第10の態様は、前述した本発明の第9の態様において、前記鋼材の表面における前記2本の電流探針及び前記2本の検出探針の配置方向をX
1軸、前記鋼材の表面に直交する方向をX
2軸、前記鋼材の表面におけるX
1軸に直交する方向をX
3軸とする三次元空間座標を定義し、前記2本の電流探針の座標を(a,0,0)、(b,0,0)、前記鋼材の内部における任意の位置xの座標を(x
1,x
2,x
3)とし、前記鋼材の焼き入れ層の任意の点の電位をV
1、前記鋼材の未焼き入れ層の任意の点の電位をV
2とし、次式、
【数3】
のV
1(x,D)及びV
2(x,D)を焼き入れ深さDで微分することにより得られる次式、
【数4】
の最大値を求める工程を含む、ことを特徴とする焼き入れ深さ測定方法である。
本発明の第10の態様によれば、鋼材の焼き入れ深さ測定方法において、前述した本発明の第4の態様と同様の作用効果が得られる。
【0024】
<本発明の第11の態様>
本発明の第11の態様は、2本の電流探針、2本の検出探針を表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の前記表層の表面に接触させ、前記2本の電流探針間に電流を流したときに生ずる前記2本の検出探針間の電位差に基づいて、前記表層の深さを求める表層深さ測定方法であって、前記表層の深さの変化に対する前記2本の検出探針間の電位差の変化の割合が所望の前記表層の深さにおいて最も大きくなるように、前記2本の検出探針の位置を設定する工程を含む、ことを特徴とする表層深さ測定方法である。
【0025】
本発明の第11の態様によれば、表層と深層とで抵抗率が異なる被測定材の表層の深さを測定する表層深さ測定方法において、前述した本発明の第6の態様と同様の作用効果が得られる。