【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
本実施例に用いた略号を以下に示す。
m-TB:2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
DAPE:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
【0044】
また、実施例において評価した各特性については、下記評価方法に従った。
[厚さ方向熱伝導率(λz)]
測定対象のフィルム(絶縁フィルム、以下同じ)を20mm×20mmのサイズに切り出し、レーザーフラッシュ法による厚さ方向の熱拡散率(ブルカー・エイエックスエス製LFA 447 Nanoflash装置)、DSC(示差走査熱量測定)による比熱、気体置換法による密度をそれぞれ測定し、これらの結果をもとに熱伝導率を算出した。
【0045】
[熱膨張係数(CTE)]
3mm×15mmのサイズの絶縁フィルムを、熱機械分析(TMA)装置にて5gの荷重を加えながら一定の昇温速度(20℃/min)で30℃から260℃の温度範囲で引張り試験を行い、温度に対する絶縁フィルムの伸び量から熱膨張係数(ppm/K)を測定した。
【0046】
[ガラス転移温度(Tg)]
絶縁フィルム(10mm×22.6mm)を動的熱機械分析装置にて20℃から500℃まで5℃/分で昇温させたときの動的粘弾性を測定し、ガラス転移温度(tanδ極大値:℃)を求めた。
【0047】
[接着強度]
耐電圧を測定するためのサンプル加工(回路加工)に耐えられる程度に銅箔と樹脂層が密着しているサンプルは○(良好)とし、加工中もしくは評価中に樹脂層が銅箔から剥離するサンプルは×(不良)とした。また、実施例4〜6の接着力は、テンションテスターを用い、幅1mmの銅張品の樹脂側を両面テープによりアルミ板に固定し、銅を180°方向に50mm/minの速度で剥離してピール強度を求めた。
【0048】
[耐電圧]
熱伝導性積層体を5cm×5cmのサイズでカットし、片側の銅箔を直径2cm円状に加工し、不要部分は銅箔エッチング液で除去した。JIS C2110に基づき、KIKUSUI製TOS 5101装置にて、段階昇圧法により絶縁油中にて耐電圧を測定した。0.2kV刻みで電圧をステップ上昇させ、各電圧において20秒保持し、漏れ電流8.5mAとし、破壊した電圧の一つ前の値を初期耐電圧とした。電極のサイズは2cmφである。サンプルを120℃/95RH%湿度の環境に24時間保持後、測定した耐電圧を湿熱後耐電圧とした。
【0049】
合成例1
窒素気流下で、m−TB(12.4591g、0.0587mol)及びDAPE(9.6152g、0.0480mol)を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc255g中に溶解させた。次いで、そこにPMDA(22.9258g、0.1051mol)を加えた。その後、溶液を室温で3時間攪拌を続けて重合反応を行い、茶褐色の粘稠なポリアミド酸溶液(P1)を得た。
【0050】
合成例2
窒素気流下で、BAPP(23.2045g、0.0565mol)を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc264g中に溶解させた。次いで、PMDA(11.9473g、0.0548mol)、BPDA(0.8482g、0.0029mol)を加えた。その後、溶液を室温で3時間攪拌を続けて重合反応を行い、茶褐色の粘稠なポリアミド酸溶液(P2)を得た。
【0051】
合成例3
窒素気流下で、m−TB(19.1004g、0.08997mol)及びTPE−R(2.9224g、0.0100mol)を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc255g中に溶解させた。次いで、PMDA(17.1827g、0.07878mol)を加えて、10分攪拌後、追加してBPDA(5.7944g、0.0197mol)を添加した。その後、溶液を室温で4時間攪拌を続けて重合反応を行い、茶褐色の粘稠なポリアミド酸溶液(P3)を得た。
【0052】
実施例1
ポリアミド酸溶液(P1)65.242gと、板状フィラーとして市販の窒化ホウ素(鱗片形状、平均長径2.2μm、最大粒径11μm)18.16gと、球状フィラーとして市販のアルミナ(球状、平均粒子径3μm、最大粒径10μm)3.55gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合した。その後粘度調整のためDMAc13.048gを添加し、再度均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸溶液(P4)を得た。
厚さ35μmの電解銅箔上に、フィラーを配合していないポリアミド酸溶液(P2)を硬化後の厚みが2.0μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、板状フィラーと球状フィラーを混合した熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸(P4)の溶液を硬化後の厚みが22μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。さらに、その上にフィラーを配合していないポリアミド酸溶液(P2)を硬化後の厚みが2.0μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。その後、130〜300℃の温度範囲で、段階的に20分かけて昇温加熱して、銅箔上に3層のポリイミド層からなる絶縁層を有する熱伝導性積層体M1(P2/P4/P2)を作製した。
得られた熱伝導性積層体M1における絶縁層の特性を評価するために銅箔をエッチング除去して絶縁フィルムを作製し、熱伝導率、CTE、Tgをそれぞれ評価した。結果を表2に示す。更に、熱伝導性積層体における金属−絶縁樹脂層の接着強度、初期及び湿熱後の耐電圧を測定した。結果を表3に示す。
【0053】
なお、特に断らない限り、以下に示す実施例及び比較例で得られた絶縁フィルム及び熱伝導性積層体についても、実施例1と同様の項目の評価を行なった。
【0054】
実施例2
ポリアミド酸溶液(P1)54.092gと、板状フィラーとして実施例1と同じ窒化ホウ素12.71gと、球状フィラーとして実施例1と同じアルミナ22.38gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合した。その後粘度調整のためDMAc10.818gを添加し、再度均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸溶液(P5)を得た。
厚さ500μmの銅箔を用いて、実施例1と同様にして硬化後の厚み構成が2.0μm/24μm/2.0μmである熱伝導性積層体M2(P2/P5/P2)を作製した。
得られた熱伝導性積層体M2を用い、実施例1と同様の方法で絶縁フィルムを作製し、絶縁フィルムの特性を評価するとともに、熱伝導性積層体についても評価した。それぞれの評価結果を表2及び表3に示す。
【0055】
実施例3
ポリアミド酸溶液(P2)78.98gと、板状フィラーとして実施例1と同じ窒化ホウ素17.58gと、球状フィラーとして実施例1と同じアルミナ3.44gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸溶液(P6)を得た。
厚さ35μmの銅箔を用いて、実施例1と同様にして硬化後の厚み構成が2.0μm/21μm/2.0μmである熱伝導性積層体M3(P2/P6/P2)を作製した。
【0056】
比較例1
ポリアミド酸溶液(P3)86.96gと、板状フィラーとして窒化ホウ素(市販品:鱗片形状、平均長径4.5μm、最大粒径20μm)6.52gと、球状フィラーとして実施例1と同じアルミナ6.52gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸溶液(P7)を得た。
厚さ12μmの銅箔を用いて、実施例1と同様に硬化後の厚み構成が2.0μm/21μm/2.0μmである熱伝導性積層体M4(P2/P7/P2)を作製した。
【0057】
比較例2
ポリアミド酸溶液(P3)86.96gと、板状フィラーとして窒化ホウ素(市販品:鱗片形状、平均長径2.5μm、最大粒径11μm、)6.52gと、球状フィラーとして実施例1と同じアルミナ6.52gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸溶液(P8)を得た。
厚さ12μmの銅箔を用いて、実施例1と同様に硬化後の厚み構成が2.0μm/21μm/2.0μmである熱伝導性積層体M5(P2/P8/P2)を作製した。
【0058】
比較例3
ポリアミド酸溶液(P3)61.467gと、板状フィラーとして比較例1と同じ窒化ホウ素9.50gと、球状フィラーとして実施例1と同じアルミナ16.74gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、その後粘度調整のためDMAc12.293gを添加し、再度均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸溶液(P9)を得た。
厚さ12μmの銅箔を用いて、実施例1と同様に硬化後の厚み構成が2.0μm/20μm/2.0μmである熱伝導性積層体M6(P2/P9/P2)を作製した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
合成例4
窒素気流下で、m−TB(10.38g、0.049mol)及びDAPE(8.01g、0.040mol)を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc262.50g中に溶解させた。次いで、PMDA(19.10g、0.088mol)を加えた。その後、溶液を室温で3時間攪拌を続けて重合反応を行い、茶褐色の粘稠なポリアミド酸樹脂溶液(P10)を得た。
【0063】
合成例5
窒素気流下で、BAPP(23.20g、0.057mol)を500mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc264g中に溶解させた。次いで、PMDA(11.9473g、0.0548mol)、BPDA(0.8482g、0.0029mol)を加えた。その後、溶液を室温で3時間攪拌を続けて重合反応を行い、茶褐色の粘稠なポリアミド酸溶液(P11)を得た。
【0064】
実施例4
固形分濃度12.5wt%のポリアミド酸溶液(P10)72.71gと、板状フィラーとして窒化ホウ素(電気化学工業(株)社製、商品名:SP−3’、鱗片形状、平均長径2.2μm)を分級機により11μmを超える粒子を取除いたもの7.49gと、球状フィラーとしてアルミナ(住友化学(株)社製、商品名:AA−3、球状、平均粒子径3μm、最大粒子径11μm)19.80gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P10’)を得た。
【0065】
防錆処理を施した厚さ35μmの電解銅箔上に、フィラーを配合していないポリアミド酸樹脂溶液(P11)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、その上に、上記の熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P10’)を硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。さらに、その上にフィラーを配合していないポリアミド酸樹脂溶液(P11)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去し、その後、130〜300℃の温度範囲で、段階的に20分かけて昇温加熱して、銅箔上に3層のポリイミド層からなる絶縁層を有する熱伝導性積層体M7(P11/P10’/P11)を作製した。この熱伝導性積層体M7における絶縁層の構成を表4に示す。
【0066】
得られた熱伝導性積層体M7における絶縁層(フィルム)の特性を評価するために銅箔をエッチング除去して絶縁フィルム(F3)を作製し、CTE、引き裂き伝播抵抗、ガラス転移温度、熱伝導率をそれぞれ評価した。結果を表5に示す。更に、熱伝導性積層体M7における絶縁層と銅箔との接着強度を表6に示す。
【0067】
また、得られた熱伝導性積層体M7の耐熱樹脂層の上に防錆処理を施した厚さ12μmの電解銅箔を最高380℃の温度でプレスを行い、両面金属の熱伝導性積層体M7’を得た。これを耐電圧測定に使用した。結果を表6に示す。
【0068】
実施例5
固形分濃度12.0wt%のポリアミド酸溶液(P11)74.54gと、板状フィラーとして窒化ホウ素(電気化学工業(株)社製、商品名:SP−3’、鱗片形状、平均長径2.2μm)を分級機により11μmを超える粒子を取除いたもの9.22gと、球状フィラーとしてアルミナ(住友化学(株)社製、商品名:AA−3、球状、平均粒子径3μm、最大粒子径11μm)16.24gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P11’)を得た。
【0069】
防錆処理を施した厚さ35μmの電解銅箔上に、フィラーを配合していないポリアミド酸樹脂溶液(P11)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、その上に、上記の熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P11’)を硬化後の厚みが21μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。さらに、その上にフィラーを配合していないポリアミド酸樹脂溶液(P11)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去し、その後、130〜300℃の温度範囲で、段階的に20分かけて昇温加熱して、銅箔上に3層のポリイミド層からなる絶縁層を有する熱伝導性積層体M8を作製した。この熱伝導性積層体M8における絶縁層の構成を表4に示す。
【0070】
得られた熱伝導性積層体M8における絶縁層(フィルム)の特性を評価するために銅箔をエッチング除去して絶縁フィルム(F4)を作製し、CTE、引き裂き伝播抵抗、ガラス転移温度、熱伝導率をそれぞれ評価した。結果を表5に示す。更に、熱伝導性積層体M8における絶縁層と銅箔との接着強度を表6に示す。
【0071】
また、得られた熱伝導性積層体M8の耐熱樹脂層の上に、防錆処理を施した厚さ12μmの電解銅箔を最高380℃の温度でプレスを行い、両面金属の熱伝導性積層体M8’を得た。これを耐電圧測定に使用した。結果を表6に示す。
【0072】
実施例6
固形分濃度12.5wt%のポリアミド酸溶液(P10)57.60gと、板状フィラーとして窒化ホウ素(電気化学工業(株)社製、商品名:SP−3’、鱗片形状、平均長径2.2μm)を分級機により11μmを超える粒子を取除いたもの15.7gと、球状フィラーとしてアルミナ(住友化学(株)社製、商品名:AA−3、球状、平均粒子径3μm、最大粒子径11μm)3.1gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P10'')を得た。
【0073】
防錆処理を施した厚さ35μmの電解銅箔上に、フィラーを配合していないポリアミド酸樹脂溶液(P11)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、その上に、上記の熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P10'')を硬化後の厚みが23μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。さらに、その上にフィラーを配合していないポリアミド酸樹脂溶液(P11)を硬化後の厚みが1.5μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去し、その後、130〜300℃の温度範囲で、段階的に20分かけて昇温加熱して、銅箔上に3層のポリイミド層からなる絶縁層を有する熱伝導性積層体M9を作製した。この熱伝導性積層体M9における絶縁層の構成を表4に示す。
【0074】
得られた熱伝導性積層体M9における絶縁層(フィルム)の特性を評価するために銅箔をエッチング除去して絶縁フィルム(F5)を作製し、CTE、引き裂き伝播抵抗、ガラス転移温度、熱伝導率をそれぞれ評価した。結果を表5に示す。更に、熱伝導性積層体M9における絶縁層と銅箔との接着強度を表6に示す。
【0075】
また、得られた熱伝導性積層体M9の耐熱樹脂層の上に、防錆処理を施した厚さ12μmの電解銅箔を最高380℃の温度でプレスを行い、両面金属の熱伝導性積層体M9’を得た。これを耐電圧測定に使用した。結果を表6に示す。
【0076】
実施例7
固形分濃度12.5wt%のポリアミド酸溶液(P10)79.5gと、板状フィラーとして窒化ホウ素(電気化学工業(株)社製、商品名:SP−3’、鱗片形状、平均長径2.2μm)を分級機により11μmを超える粒子を取除いたもの8.4gと、球状フィラーとして窒化アルミニウム(トクヤマ(株)社製、商品名:AlN−H、球状、平均粒子径1.1μm)12.09gとを均一になるまで遠心攪拌機で混合し、熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P10''')を得た。
【0077】
防錆処理を施した厚さ35μmの電解銅箔上に、上記の熱伝導性フィラーを含有するポリアミド酸樹脂溶液(P10''')を硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。その後、130〜300℃の温度範囲で、段階的に20分かけて昇温加熱して、銅箔上に1層のポリイミド層からなる絶縁層を有する熱伝導性積層体M10を作製した。この熱伝導性積層体M10における絶縁層の構成を表4に示す。
【0078】
得られた熱伝導性積層体M10における絶縁層(フィルム)の特性を評価するために銅箔をエッチング除去して絶縁フィルム(F6)を作製し、CTE、引き裂き伝播抵抗、ガラス転移温度、熱伝導率をそれぞれ評価した。結果を表5に示す。更に、熱伝導性積層体M10における絶縁層と銅箔との接着強度を表6に示す。
【0079】
また、得られた熱伝導性積層体M10の耐熱樹脂層の上に防錆処理を施した厚さ12μmの電解銅箔を最高380℃の温度でプレスを行い、両面金属の熱伝導性積層体M10’を得た。これを耐電圧測定に使用した。結果を表6に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
以上の結果から、少なくとも、
a)フィラー含有ポリイミド樹脂層における熱伝導性フィラーの含有割合が35〜80vol%の範囲内であり、
b)熱伝導性フィラーの最大粒子径が15μm未満であり、
c)熱伝導性フィラーが板状フィラーと球状フィラーとを含有し、板状フィラーの平均長径D
Lが0.1〜2.4μmの範囲内である、
との要件を満たした実施例1〜7の熱伝導性積層体及び熱伝導性ポリイミドフィルムは、絶縁層のマトリックスとなるポリイミド樹脂の有する耐熱性、寸法安定性に加え、熱伝導特性にも優れていた。また、絶縁層中の空隙の発生が抑制又は低減されることで耐電圧性にも優れていた。さらに、実施例1〜7の熱伝導性ポリイミドフィルム及び熱伝導性積層体は、絶縁層の圧縮などの特別な工程を必要とせずに、通常行われる、塗布や、熱処理などの工程によって作製できた。そのため、配線基板等の絶縁層として求められる諸特性が損なわれておらず、各種電子機器への適用が可能である。
【0084】
一方、上記a)〜c)の要件を満たしていない比較例1、及び、上記a)の要件を満たしていない比較例2では、絶縁層の厚み方向での熱伝導率λzが0.8W/mK未満であり、熱伝導性が低い結果となった。また、上記b)、c)の要件を満たしていない比較例3では、耐電圧性が低い結果となった。これは、比較例3において、熱伝導性フィラーの粒子径制御を行わずに配合割合を多くしたため、絶縁層中に空隙が発生し、耐電圧性が低下したものと推測された。
【0085】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。本国際出願は、2010年3月10日に出願された日本国特許出願2010−53873号及び2010年3月29日に出願された日本国特許出願2010−75684号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容をここに援用する。