特許第5665860号(P5665860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665860
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】多層構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20150115BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20150115BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20150115BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20150115BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20150115BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   B32B27/28 102
   B32B27/18 DZAB
   C08L23/00
   C08L23/26
   B29B17/04
   B29B17/00
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-512892(P2012-512892)
(86)(22)【出願日】2011年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2011060297
(87)【国際公開番号】WO2011136287
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-104029(P2010-104029)
(32)【優先日】2010年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180600
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 武之
(72)【発明者】
【氏名】羽田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
【審査官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−168854(JP,A)
【文献】 特開2009−056708(JP,A)
【文献】 特開2007−314788(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/041440(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/028998(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02113378(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物(A)の層を有する多層構造体(B)を粉砕してからふるい分けして回収物(C)を得る工程、及び回収物(C)とポリオレフィン(D)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る工程を含む多層構造体の製造方法であって;
樹脂組成物(A)が、ポリオレフィン(G)、エチレン含有量が20〜65モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)、エチレン含有量が68〜98モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(I)、及び帯電防止剤(J)を含有し、
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(I)の質量比(H/I)が、0.1〜10であり、かつ
回収物(C)が、多層構造体(B)を粉砕してから、ふるい分けして0.1mm以下の粒径の粒子と15mm以上の粒径の粒子とを除去して得たものであることを特徴とする多層構造体の製造方法。
【請求項2】
回収物(C)とポリオレフィン(D)とエチレン含有量が68〜98モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(K)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る請求項1記載の多層構造体の製造方法。
【請求項3】
回収物(C)の見かけ密度が0.55〜0.8g/mlである請求項1又は2記載の多層構造体の製造方法。
【請求項4】
回収物(C)中の帯電防止剤(J)の含有量が、回収物(C)全体に対して50〜15000ppmである請求項1〜のいずれか記載の多層構造体の製造方法。
【請求項5】
回収物(C)の帯電電位が0kVである請求項1〜のいずれか記載の多層構造体の製造方法。
【請求項6】
樹脂組成物(A)中の、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)の分散粒子径が1.8μm以下である請求項1〜のいずれか記載の多層構造体の製造方法。
【請求項7】
樹脂組成物(A)中の、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)の含有量が、1〜10質量%である請求項1〜のいずれか記載の多層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含有する樹脂組成物層を有する多層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる層と、バリア性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略称することがある)からなる層とを含む多層構造体は、そのバリア性を活かして各種用途、特に食品包装容器や燃料容器などに広く用いられている。このような多層構造体はフィルム、シート、カップ、トレイ、ボトルなどの各種成形品として用いられる。このとき、上記各種成形品を得る際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形してポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の少なくとも1層として再使用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン層とEVOH層を含む多層構造体の回収物を再使用する際には、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、劣化物が押出機内に付着したりして、長期間の連続溶融成形を行うことが困難であった。さらに、このような劣化物が成形品中にしばしば混入するため、得られる成形品においてフィッシュアイが発生したり、相分離異物(目ヤニ)が発生したりするという問題があった。また、多層構造体を連続的に製造する場合に、曇りムラ(部分的な透明性の低下)が生じたり悪化したりして、供給安定性やロングラン性が悪化するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方策として、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂層とEVOH層を含む積層体の回収物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を配合した樹脂組成物からなる層を有する多層構造体が記載されている。この多層構造体は、目ヤニや変色が抑制されていて、外観に優れているとされている。しかしながら、多層構造体を連続的に製造する場合に、曇りムラが生じたり悪化したりすることがあり、供給安定性やロングラン性に欠けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−97010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ポリオレフィン及びEVOHを含有する樹脂組成物層を有する多層構造体の回収物を使用して、曇りムラの発生及び悪化が抑制された多層構造体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、樹脂組成物(A)の層を有する多層構造体(B)を粉砕してからふるい分けして回収物(C)を得る工程、及び回収物(C)とポリオレフィン(D)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る工程を含む多層構造体の製造方法であって;
樹脂組成物(A)が、ポリオレフィン(G)、エチレン含有量が20〜65モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)、エチレン含有量が68〜98モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(I)、及び帯電防止剤(J)を含有し、
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(I)の質量比(H/I)が、0.1〜10であり、かつ
回収物(C)が、多層構造体(B)を粉砕してから、ふるい分けして0.1mm以下の粒径の粒子と15mm以上の粒径の粒子とを除去して得たものであることを特徴とする多層構造体の製造方法を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、回収物(C)とポリオレフィン(D)とエチレン含有量が68〜98モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(K)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得ることが好適である。回収物(C)の見かけ密度が0.55〜0.8g/mlであることも好適である。回収物(C)中の帯電防止剤(J)の含有量が、回収物(C)全体に対して50〜15000ppmであることも好適である。回収物(C)の帯電電位が0kVであることも好適である。
【0009】
また、樹脂組成物(A)中の、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)の分散粒子径が1.8μm以下であることも好適である。樹脂組成物(A)中の、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)の含有量が、1〜10質量%であることも好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリオレフィン及びEVOHを含有する樹脂組成物層を有する多層構造体の回収物を使用して、曇りムラの発生及び悪化が抑制された多層構造体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、樹脂組成物(A)の層を有する多層構造体(B)を粉砕してからふるい分けして回収物(C)を得る工程、及び回収物(C)とポリオレフィン(D)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る工程を含む多層構造体の製造方法である。
【0012】
ここで用いられる樹脂組成物(A)は、ポリオレフィン(G)、エチレン含有量が20〜65モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(H)(以下、EVOH(H)と略称することがある)、エチレン含有量が68〜98モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(I)(以下、S−EVOH(I)と略称することがある)、及び帯電防止剤(J)を含有する。
【0013】
樹脂組成物(A)に含まれるポリオレフィン(G)は、ポリエチレン(低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度など);エチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類またはアクリル酸エステルを共重合したエチレン系共重合体;ポリプロピレン;プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合したプロピレン系共重合体;ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、上述のポリオレフィンに無水マレイン酸を作用させた変性ポリオレフィン;アイオノマー樹脂などを含んでいる。中でも、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリオレフィン(G)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
樹脂組成物(A)に含まれるEVOH(H)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位をけん化して得られたものである。エチレン含有量が少なく、かつ酢酸ビニル単位のけん化度が高いEVOHは、ポリオレフィンとの相容性が不良となりやすい。一方、EVOHのエチレン含有量が多すぎる場合には、ガスバリア性が低下する。また、酢酸ビニル単位のけん化度が低いEVOHは、EVOH自体の熱安定性が不良となりやすい。このような観点から、EVOH(H)のエチレン含有量は20〜65モル%である。エチレン含有量は25モル%以上であることが好ましい。また、エチレン含有量は55モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。一方、EVOH(H)の酢酸ビニル単位のけん化度は96%以上であり、98%以上であることが好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。特に、エチレン含有量が20〜65モル%であり、かつけん化度が99%以上のEVOHは、ポリオレフィンと積層して用いることにより、バリア性に優れる容器類が得られるので、本発明において好適に用いられる。
【0015】
EVOH(H)は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、他の重合性単量体が共重合されていてもよい。このような重合性単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;アルキルビニルエーテル;N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミドまたはその4級化物、N−ビニルイミダゾールまたはその4級化物、N−ビニルピロリドン、N,N−ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
【0016】
また、EVOH(H)のメルトインデックス(MI;190℃、2160g荷重下で測定)は好適には0.1g/10分以上、より好適には0.5g/10分以上である。また、EVOH(H)のメルトインデックスは好適には100g/10分以下、より好適には50g/10分以下、最適には30g/10分以下である。このとき、EVOH(E)の分散性の観点から、EVOH(H)のMIをMI(EVOH)、ポリオレフィンのMI(190℃、2160g荷重下で測定)をMI(PO)としたときの比[MI(EVOH)/MI(PO)]は0.1〜100であることが好ましく、0.3〜50であることがより好ましい。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、メルトフローレート(MFR)の対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
【0017】
樹脂組成物(A)に含まれるS−EVOH(I)は、エチレン含有量68〜98モル%、酢酸ビニル単位のけん化度20%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物であり、エチレン含有量が高く、ポリオレフィン(G)及びEVOH(H)の相容性を顕著に改善する効果がある。S−EVOH(I)のエチレン含有量は、70モル%以上であることが好ましい。一方、S−EVOH(I)のエチレン含有量は、96モル%以下であることが好ましく、94モル%以下であることがより好ましい。また、酢酸ビニル単位のけん化度は30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。けん化度の上限には特に限定はなく、99モル%以上であってもよく、実質的にほぼ100%のけん化度のものも使用できる。エチレン含有量が68モル%未満である場合、98モル%を超える場合、または酢酸ビニル単位のけん化度が20%未満の場合には、ポリオレフィン(G)及びEVOH(H)の相容性を改善する効果が不十分である。
【0018】
S−EVOH(I)のエチレン含有量は、EVOH(H)のエチレン含有量より高い。ポリオレフィン(G)及びEVOH(H)の相容性改善の観点から、S−EVOH(I)のエチレン含有量とEVOH(H)のエチレン含有量との差は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
【0019】
S−EVOH(I)のMI(190℃、2160g荷重下で測定)は0.1g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1g/10分以上であることがさらに好ましい。一方、S−EVOH(I)のMIは、100g/10分以下であることが好ましく、50g/10分以下であることがより好ましく、30g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、S−EVOH(I)は不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されていてもよく、かかる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸;前記した酸のメチルまたはエチルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0020】
樹脂組成物(A)に含まれる帯電防止剤(J)としては、樹脂組成物(A)に配合可能なものとして公知の化合物を使用できる。例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1級、第2級、第3級アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体があげられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0021】
樹脂組成物(A)に含まれる成分として、上記のポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)に加えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(L)(以下、EVAc(L)と略称することがある)を配合することが好ましい。EVAc(L)を配合することによって、EVOH(H)の分散性を高め、粉砕時に粉砕粒径の均一な粉砕物を得ることができ、得られる多層構造体の曇りムラの発生及び悪化を抑制することができる。EVAc(L)としては、エチレンと酢酸ビニルを公知の方法にて重合したランダム共重合体のほか、さらに他のモノマーを共重合した三元共重合体や、グラフト化などにより変性した変性EVAcであってもよい。EVAc(L)の酢酸ビニル単位はけん化されておらず、その含有量は、2〜40モル%であることが好ましく、5〜25モル%であることがより好ましい。酢酸ビニル単位の含有量が2モル%未満、あるいは40モル%を超えると、EVOH(H)の分散性の改善に十分な効果が得られないことがある。また、EVAc(L)のメルトインデックス(MI;190℃、2160g荷重下で測定)は0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.5〜30g/10分であることがより好ましく、1〜20g/10分であることがさらに好ましい。
【0022】
また、樹脂組成物(A)に含まれる成分として、上記のポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)に加えて、脂肪酸金属塩(M)を配合することも好ましい。脂肪酸金属塩(M)を配合することによって、回収物を再使用して得られた成形品のフィッシュアイの発生を抑制しやすくなる。脂肪酸金属塩(M)としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの炭素数10〜26の高級脂肪族の金属塩、特に周期律表第1族、第2族または第3族の金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。また、上記した脂肪酸の亜鉛塩、鉛塩を用いることもできる。これらの中で、カルシウム塩、マグネシウム塩などの周期律表第2族の金属塩は、少量の添加で上記効果を奏するので好ましい。
【0023】
さらに、樹脂組成物(A)に含まれる成分として、上記のポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)に加えて、ハイドロタルサイト(N)を配合することも好ましい。ハイドロタルサイト(N)を配合することによって、回収物を再使用して得られた成形品のフィッシュアイの発生を抑制しやすくなる。ハイドロタルサイト(N)としては、
Al(OH)2x+3y−2z(b)・aH
(mはMg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pb、Snの1つ以上を表わし、bはCOまたはHPOを表わし、x、y、zは正数であり、aは0または正数であり、2x+3y−2z>0である)
で示される複塩であるハイドロタルサイト(N)を好適なものとして挙げることができる。
【0024】
上記ハイドロタルサイト中、mとしてはMg、CaまたはZnが好ましく、これらの2つ以上の組み合わせがより好ましい。これらハイドロタルサイトの中でも特に好適なものとしては次のようなものが例示できる。
MgAl(OH)16CO・4H
MgAl(OH)20CO・5H
MgAl(OH)14CO・4H
Mg10Al(OH)22(CO・4H
MgAl(OH)16HPO・4H
CaAl(OH)16CO・4H
ZnAl(OH)16CO・4H
MgZnAl(OH)12CO・2.7H
MgZnAl(OH)20CO・1.6H
MgZn1.7Al3.3(OH)20(CO1.65・4.5H
【0025】
また、樹脂組成物(A)に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、又は他の高分子化合物を挙げることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
【0026】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)など。
【0027】
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなど。
【0028】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステルなど。
【0029】
滑剤:エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸など。
【0030】
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウムなど。
【0031】
また、他の多くの高分子化合物も、本発明の作用効果が阻害されない程度に樹脂組成物(A)に配合することもできる。
【0032】
樹脂組成物(A)が、ポリオレフィン(G)を80〜99質量%含有することが好適である。ポリオレフィン(G)の含有量が99質量%よりも大きい場合、回収による廃棄物削減効果が得られず、経済性の点で好ましくない。ポリオレフィン(G)の含有量が98質量%以下であることがより好適である。一方、ポリオレフィン(G)の含有量が80質量%未満の場合、得られる多層構造体の透明性が悪化する傾向がある。ポリオレフィン(G)の含有量が83質量%以上であることがより好適である。
【0033】
樹脂組成物(A)が、EVOH(H)を1〜10質量%含有することが好適である。EVOH(H)の含有量が10質量%よりも大きい場合、EVOH(H)の分散が不十分となり、粉砕時に粉砕粒径のばらつきが生じやすくなる。さらに、得られる多層構造体の曇りムラが生じやすくなる。EVOH(H)の含有量が9質量%以下であることがより好適である。一方、EVOH(H)の含有量が1質量%未満の場合、回収による廃棄物削減効果が得られず、経済性の点で好ましくない。EVOH(H)の含有量が1.5質量%以上であることがより好適である。
【0034】
樹脂組成物(A)が、S−EVOH(I)を0.1〜20質量%含有することが好適である。S−EVOH(I)の含有量が20質量%よりも大きい場合、透明性が悪化する傾向がある。S−EVOH(I)の含有量が10質量%以下であることがより好適である。一方、S−EVOH(I)の含有量が0.1質量%未満の場合、EVOH(H)の分散が不十分となり、粉砕時に粉砕粒径のばらつきが生じやすくなる。さらに、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化したりしやすくなる。S−EVOH(I)の含有量が0.5質量%以上であることがより好適である。
【0035】
樹脂組成物(A)が、帯電防止剤(J)を50〜20000ppm含有することが好適である。帯電防止剤(J)の含有量が20000ppmよりも大きい場合、得られる多層構造体の表面平滑性が悪化し、透明性が低下する場合がある。帯電防止剤(J)の含有量が15000ppm以下であることがより好適である。一方、帯電防止剤(J)の含有量が50ppm未満の場合、回収物を再使用する際の組成変化率が問題となる場合がある。帯電防止剤(J)の含有量が200ppm以上であることがより好適である。
【0036】
樹脂組成物(A)が、EVAc(L)を0〜20質量%含有することが好適である。EVAc(L)の含有量が20質量%よりも大きい場合、透明性が悪化する場合がある。EVAc(L)の含有量が18質量%以下であることがより好適である。一方、樹脂組成物(A)がEVAc(L)を含有していなくてもよいが、EVOH(H)の分散性向上の観点から、EVAc(L)の含有量が0.1質量%以上であることがより好適であり、0.5質量%以上であることがさらに好適である。
【0037】
樹脂組成物(A)が、脂肪酸金属塩(M)を0.05〜2質量%含有することが好適である。脂肪酸金属塩(M)の含有量が2質量%よりも大きい場合、未溶融の脂肪酸金属塩(M)に由来するフィッシュアイが発生する場合がある。脂肪酸金属塩(M)の含有量が1質量%以下であることがより好適である。一方、脂肪酸金属塩(M)の含有量が0.05質量%未満の場合、回収物を再使用して得られた成形品のフィッシュアイの発生が抑制しにくくなる。脂肪酸金属塩(M)の含有量が0.075質量%以上であることがより好適である。
【0038】
樹脂組成物(A)が、ハイドロタルサイト(N)を0.05〜2質量%含有することが好適である。ハイドロタルサイト(N)の含有量が2質量%よりも大きい場合、未溶融のハイドロタルサイト(N)に由来するフィッシュアイが発生する場合がある。ハイドロタルサイト(N)の含有量が1質量%以下であることがより好適である。一方、ハイドロタルサイト(N)の含有量が0.05質量%未満の場合、回収物を再使用して得られた成形品のフィッシュアイの発生が抑制しにくくなる。ハイドロタルサイト(N)の含有量が0.075質量%以上であることがより好適である。
【0039】
樹脂組成物(A)中の、EVOH(H)とS−EVOH(I)の質量比(H/I)は0.1〜10であることが必要である。質量比(H/I)が10よりも大きい場合、EVOH(H)の分散が不十分となり、粉砕時に粉砕粒径のばらつきが生じる。さらに、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化する。質量比(H/I)は9以下であることが好適である。一方、質量比(H/I)が0.1未満の場合、S−EVOH(I)を添加してもEVOH(H)の分散性を向上させる更なる効果は得られない。質量比(H/I)は0.5以上であることが好適である。
【0040】
樹脂組成物(A)中の、EVAc(L)とS−EVOH(I)の質量比(L/I)が15以下であることが好適である。質量比(L/I)が15よりも大きい場合、EVAc(L)を添加してもEVOH(H)の分散性を向上させるさらなる効果は得られにくい。質量比(L/I)は13以下であることがより好適である。一方、樹脂組成物(A)がEVAc(L)を含有していなくてもよいが、EVOH(H)の分散性向上の観点から、質量比(L/I)は0.1以上であることが好適である。質量比(L/I)は1以上であることがより好適である。
【0041】
樹脂組成物(A)を得るための混合方法について特に制限はなく、ポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)、及び帯電防止剤(J)を一度にドライブレンドして溶融混練する方法;ポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)の一部を予め溶融混練してから、他の成分を配合して溶融混練する方法;ポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)、及び帯電防止剤(J)の一部を含有する多層構造体と、他の成分を配合して溶融混練する方法が挙げられる。
【0042】
中でも、ポリオレフィン(G)の層及びEVOH(H)の層を含有する多層構造体からなる成形物を得る際に発生する端部や不良品を回収したスクラップと、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)を溶融混練する方法が好適である。このように、回収されたスクラップを溶融混練する際に配合される添加剤を回収助剤といい、ここでは、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)が回収助剤として用いられる。このとき、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)に他の成分を追加する場合は、それらを予め溶融混練して、それら全てを含有する樹脂組成物としてからスクラップに添加することが好ましい。このような回収助剤は、好適にはペレット形状でスクラップに配合される。スクラップは、適当な寸法に粉砕しておくことが好ましく、粉砕されたスクラップに対してペレット形状の回収助剤をドライブレンドしてから溶融混練するのが、樹脂組成物(A)の好適な製造方法である。なお、スクラップとしては、一つの成形物から得られるスクラップを用いてもよいし、二つ以上の成形物から得られる関連するスクラップを混合して使用してもよい。なお、ポリオレフィン(G)の層及びEVOH(H)の層を含有する多層構造体は、通常、さらに接着性樹脂の層を有するため、得られるスクラップ及びそれを用いて得られた樹脂組成物は接着性樹脂を含有することとなる。ここで接着性樹脂としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。
【0043】
さらに、樹脂組成物(A)の原料とされるスクラップが、回収物層を含有する多層構造体から得られるものであってもよい。すなわち、回収物から得られた樹脂組成物からなる回収物層を有する多層構造体からなる成形品を製造し、その成形品のスクラップ回収物を、再び同様の多層構造体における回収物層の原料として用いてもよい。
【0044】
多層構造体の組成と、それを粉砕したスクラップの組成とは、通常大きな変化を生じないので、当該スクラップを溶融混練してなる樹脂組成物(A)の組成は多層構造体の組成から概ね算出可能である。
【0045】
樹脂組成物(A)が、ポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)以外の成分を含む場合、それらの成分を配合する方法は特に限定されず、上述の(G)〜(J)の各成分と同様の操作で配合することができる。中でも、樹脂組成物(A)がEVAc(L)、脂肪酸金属塩(M)又はハイドロタルサイト(N)を含有する場合、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)にこれらの成分を加えて回収助剤として用いることが好適である。このような回収助剤の製造方法としては、前述と同様の方法が採用される。
【0046】
このようにして得られた樹脂組成物(A)において、ポリオレフィン(G)のマトリックス中にEVOH(H)の粒子が分散していることが好ましく、樹脂組成物(A)中のEVOH(H)の分散粒子径が1.8μm以下であることが好適である。EVOH(H)の分散粒子径が1.8μmよりも大きい場合、EVOH(H)の分散が不十分となり、粉砕時に粉砕粒径のばらつきが生じやすくなる。さらに、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化したりしやすくなる。EVOH(H)の分散粒子径は1.5μm以下であることがより好適である。一方、EVOH(H)の平均粒子径の下限には特に制限はないが、EVOH(H)の平均粒子径を0.1μm未満とすることは、必要とされる膨大な労力に見合うだけのガスバリア性の改善効果が望めないため、現実的ではない。
【0047】
本発明における多層構造体(B)の製造方法としては、樹脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、それぞれの押出機内で溶融した樹脂の層を重ね合わせて同時押出成形する、いわゆる共押出成形が好適である。別の方法として、押出コーティング、ドライラミネーションなどの成形方法も採用され得る。また、本発明における多層構造体に対して、一軸延伸、二軸延伸、ブロー延伸などの延伸操作を施すことにより、力学的物性、ガスバリア性などが改良された成形物を得ることもできる。
【0048】
本発明における多層構造体(B)は樹脂組成物(A)の層を有する。多層構造体(B)の好適な実施態様は、樹脂組成物(A)からなる層と、エチレン含有量が20〜65モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が96%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)からなる層の少なくとも2層を含む多層構造体である。ポリオレフィンを(PO)、接着性樹脂を(AD)と表すと、例えば次のような層構成とすることができる。ここで接着性樹脂としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂を好適に用いることができる。
3層 A/AD/EVOH
4層 PO/A/AD/EVOH
5層 A/AD/EVOH/AD/A、PO/AD/EVOH/AD/A
6層 PO/A/AD/EVOH/AD/PO、A/PO/AD/EVOH/AD/PO、A/PO/AD/EVOH/AD/A、PO/A/AD/EVOH/AD/A
7層 PO/A/AD/EVOH/AD/A/PO
【0049】
多層構造体(B)におけるEVOHとしては、EVOH(H)について上述したものと同じものを用いることができる。また、ポリオレフィン(PO)としては、ポリオレフィン(G)について上述したものと同じものを用いることができる。多層構造体(B)にAD層が存在する場合には、本発明の回収物(C)に接着性樹脂(AD)が構成成分として含まれることになる。
【0050】
本発明の多層構造体の製造方法は、樹脂組成物(A)の層を有する多層構造体(B)を粉砕してからふるい分けして回収物(C)を得る工程、及び回収物(C)とポリオレフィン(D)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る工程を含む多層構造体の製造方法を含むものである。このとき、回収物(C)とポリオレフィン(D)とエチレン含有量が68〜98モル%で酢酸ビニル単位のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(K)(以下、S−EVOH(K)と略称することがある)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得ることが好適である。
【0051】
まず、樹脂組成物(A)の層を有する多層構造体(B)を粉砕してからふるい分けして回収物(C)を得る工程について説明する。
【0052】
多層構造体(B)を粉砕する方法としては特に限定されず、ジョークラシャ−、ハンマークラシャ−、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いる方法を例示できる。得られた粉砕物のふるい分けを行い、回収物(C)を得ることができる。このとき、0.1mm以下の粒径の粒子を除去することが好適である。0.1mmを超える目開きのふるいを用い、微粉を除去することによって、0.1mm以下の粒径の粒子を除去することができる。ここでふるいの目開きは、JIS−Z8801に規定されているものである。微粉が回収物(C)に混入すると、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化したりしやすくなる。0.5mm以下の粒径の粒子を除去することがより好適であり、1mm以下の粒径の粒子を除去することがさらに好適である。また、微粉を除去する前又は後に、15mm以上の粒径の粒子を除去することも好適である。15mmより細かい目開きのふるいを用い、大きな破片を除去することによって、15mm以上の粒径の粒子を除去することができる。大きな破片は回収物(C)に混入すると、溶融されずにダイスから押出されることがあり、その未溶融部分はフィッシュアイになりやすくなる。10mm以上の粒径の粒子を除去することがより好適である。
【0053】
本発明における回収物(C)の見かけ密度は0.55〜0.8g/mlであることが好適である。回収物(C)が微粉を含むと見かけ密度は大きくなる。この見かけ密度は粉砕粒径のばらつきの指標となる。0.55g/ml未満の場合、粉砕粒径のばらつきに起因する分級が発生し、回収物(C)を再使用する際の組成変化率が問題となる場合がある。回収物(C)の見かけ密度は0.6g/ml以上であることがより好適である。0.8g/mlより大きい場合、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化したりしやすくなる。回収物(C)のみかけ密度は0.78g/ml以下であることがより好適である。
【0054】
回収物(C)中の帯電防止剤(J)の含有量は、回収物(C)全体に対して、50〜15000ppmであることが好適である。50ppm未満の場合、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化したりしやすくなる。帯電防止剤(J)の含有量は200ppm以上であることがより好適である。15000ppmより大きい場合、得られる多層構造体の表面平滑性が悪化しやすい。帯電防止剤(J)の含有量は10000ppm以下であることがより好適である。
【0055】
回収物(C)の帯電電位は0kVであることが好適である。回収物(C)の帯電電位が0kVより大きい場合、回収物(C)を再使用する際の組成変化が生じやすくなり、得られる多層構造体の曇りムラが生じたり悪化したりしやすくなる。
【0056】
次に、回収物(C)とポリオレフィン(D)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る工程について説明する。
【0057】
回収物(C)とポリオレフィン(D)を溶融混練して樹脂組成物(E)を得る方法は、樹脂組成物(A)を製造する方法と同様の方法を採用することができる。このとき、ポリオレフィン(D)としては、ポリオレフィン(G)について上述したものと同じものを用いることができる。また、S−EVOH(K)としては、S−EVOH(I)について上述したものと同じものを用いることができる。
【0058】
多層構造体(F)の製造方法としては、多層構造体(B)を製造する方法と同様の方法を採用することができる。
【0059】
本発明における多層構造体(F)は、樹脂組成物(E)の層を有する。多層構造体(F)の実施態様は、前述した多層構造体(B)の実施態様において樹脂組成物(A)を樹脂組成物(E)に置き換えたものが例示される。
【0060】
このような方法によって得られた多層構造体(F)は、曇りムラの発生及び悪化が抑制されており、外観が優れているので、フィルム、シート、カップ、トレイ、ボトルなどの各種成形品に好適に用いられる。
【実施例】
【0061】
本実施例では以下の原料を使用した。なお、以下の製造例、実施例及び比較例において、(部)は特に断わりのない限り質量基準で表したものである。
【0062】
[ポリオレフィン(D)及びポリオレフィン(G)]
PP−1:ポリプロピレン[密度0.90g/cm、メルトインデックス1.4g/10分(ASTM−D1238、230℃、2160g荷重)]、日本ポリプロ株式会社製、「ノバテックPP EA7A」
【0063】
[EVOH(H)]
H−1:エチレン含有量32モル%、けん化度99.7モル%、含水フェノール中30℃における極限粘度1.1dL/g、密度1.15g/cm、メルトインデックス1.6g/10分(ASTM−D1238、230℃、2160g荷重)
【0064】
[S−EVOH(I)]
F−1:エチレン含有量89モル%、けん化度97モル%、メルトインデックス5.1g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)
【0065】
[帯電防止剤(J)]
J−1:脂肪酸エステル系非イオン界面活性剤、三洋化成工業株式会社製、「ケミスタット1100」
【0066】
[EVAc(L)]
L−1:酢酸ビニル含有量19質量%、メルトインデックス2.5g/10分(ASTM−D1238、190℃、2160g荷重)、三井デュポンポリケミカル株式会社製、「エバフレックスEV460」
【0067】
[脂肪酸金属塩(M)]
M−1:ステアリン酸カルシウム
【0068】
[ハイドロタルサイト(N)]
N−1:協和化学工業株式会社製、「ZHT−4A」
【0069】
[その他]
接着性樹脂:密度0.90g/cm3、メルトインデックス3.2g/10分(ASTM−D1238、230℃、2160g荷重)、三菱化学株式会社製、「モディックAP P604V」
【0070】
実施例で得られた多層構造体(B)の樹脂組成物(A)の層に含まれるEVOH(H)の分散粒子径、回収物(C)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率、並びに多層構造体(F)の曇りムラはそれぞれ以下の方法で測定を行った。
【0071】
[樹脂組成物(A)の層に含まれるEVOH(H)の分散粒子径]
多層構造体(B)を該シート面と直角の方向にミクロトームで丁寧に切断し、さらにメスを用いて樹脂組成物(A)層を取り出した。露出した断面に減圧雰囲気下で白金を蒸着した。白金が蒸着された断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10000倍に写真撮影し、この写真中のEVOH(H)の粒子20個程度を含む領域を選択し、該領域中に存在する各々の粒子像の粒径を測定し、その平均値を算出して、これを分散粒子径とした。なお、各々の粒子の粒径については、写真中に観察される粒子の長径(最も長い部分)を測定し、これを粒径とした。多層構造体(B)の切断は押出方向に垂直に行い、切断面に対して、垂直方向からの写真撮影を行った。
【0072】
[回収物(C)の見かけ密度]
JIS−K6891に準拠して測定した。
【0073】
[回収物(C)の帯電電位]
20℃、65%RHの室内で、100gの回収物(C)を1Lのポリエチレン製袋に詰め、1分間撹拌した後、回収物(C)を直径10cm、厚さ2cmのガラス製シャーレに敷き詰め、シャーレの上部から静電気測定器(シムコジャパン株式会社製、FMX−003)にて5回測定を行い、その平均値を算出した。
【0074】
[回収物(C)の1時間運転後の組成変化率]
回収物(C)を0.6kgと、PP−1を2.4kgとをドライブレンドした混合物(運転開始時の回収物(C)の割合=20質量%)を、入口直径20cm、出口直径4cm、高さ22cmのホッパーに投入し、吐出3kg/hで運転した。運転開始から59〜60分の間にホッパーシリンダーの出口から吐出された混合物を回収し、PP−1を取り除いた残りの重量を測定することにより回収物の割合(質量比)を求めた。以下の式により求められる混合物の組成変化率を分級の指標とした。
組成変化率(%)=(1時間運転後の回収物の割合−運転開始時の回収物の割合)/運転開始時の回収物の割合×100
【0075】
[多層構造体(F)の曇りムラ]
成形開始直後と1時間後の多層構造体(F)をそれぞれ観察し、以下の様に目視で評価した。
A:曇りムラの発生なし。
B:曇りムラが若干発生。
C:曇りムラが顕著に発生。
【0076】
[粉砕物(O)の製造]
以下の方法にしたがって、粉砕物(O−1)〜粉砕物(O−3)を得た。
【0077】
粉砕物(O−1)
ポリオレフィン(G)としてPP−1、最内層にEVOH(H)としてH−1、接着性樹脂層として「モディックAP P604V」を用い、フィードブロックダイにてポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/20μm/20μm/200μmの3種5層共押出を行い、多層構造体を作成した。それぞれの層厚みを表1に示す。フィードブロックへのそれぞれの樹脂の供給は、ポリオレフィン層は32mmφ押出機、接着性樹脂層は25mmφ押出機、EVOH層は20mmφ押出機をそれぞれ使用した。また、押出の温度は各樹脂とも220℃とし、ダイス部及びフィードブロック部の温度も220℃とした。
【0078】
続いて、得られた多層構造体を径8mmの目開きのふるいを装着した粉砕機(三興機工株式会社製、SG2324S)で粉砕し径8mm以上の破片を除去した後、径3mmの目開きのふるいを装着した振動式ふるい機(いすず化工機株式会社製、IS−1、吐出10kg/h)で径3mm以下の微粉を除去して粉砕物(O−1)を得た。
【0079】
粉砕物(O−2)
粉砕物(O−1)の製造に用いる多層構造体の層厚みを、ポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/40μm/20μm/200μmとしたこと以外は、粉砕物(O−1)と同様に多層構造体を作成したのち粉砕し、粉砕物(O−2)を得た。各成分の層厚みは表1にまとめて示す。
【0080】
粉砕物(O−3)
粉砕物(O−1)の製造に用いる多層構造体の層厚みを、ポリオレフィン層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=200μm/20μm/200μm/20μm/200μmとしたこと以外は、粉砕物(O−1)と同様に多層構造体を作成したのち粉砕し、粉砕物(O−3)を得た。各成分の層厚みは表1にまとめて示す。
【0081】
[マスターバッチの製造]
以下の方法にしたがって、マスターバッチ(MB1〜MB5)を得た。
【0082】
MB1
S−EVOH(I)としてI−1、EVAc(L)としてL−1、脂肪酸金属塩(M)としてM−1、ハイドロタルサイト(N)としてN−1、及び帯電防止剤(J)としてJ−1を用い、I−1/L−1/M−1/N−1/J−1=25/66.5/5/2.5/1の質量比になるようにドライブレンドで配合した。得られた混合物を30mmφの同方向二軸押出機(日本製鋼所製、TEX−30N)を用いて200℃の押出温度で溶融混練した後ペレット化し、マスターバッチ(MB1)を得た。マスターバッチの組成を表1に示す。
【0083】
MB2
S−EVOH(I)としてI−1、EVAc(L)としてL−1、脂肪酸金属塩(M)としてM−1、ハイドロタルサイト(N)としてN−1、及び帯電防止剤(J)としてJ−1を用い、I−1/L−1/M−1/N−1/J−1=25/5/5/2.5/62.5の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に溶融混練し、マスターバッチ(MB2)を得た。マスターバッチの組成を表1に示す。
【0084】
MB3
S−EVOH(I)としてI−1、EVAc(L)としてL−1、脂肪酸金属塩(M)としてM−1、ハイドロタルサイト(N)としてN−1、及び帯電防止剤(J)としてJ−1を用い、I−1/L−1/M−1/N−1/J−1=25/67.4/5/2.5/0.1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に溶融混練し、マスターバッチ(MB3)を得た。マスターバッチの組成を表1に示す。
【0085】
MB4
S−EVOH(I)としてI−1、EVAc(L)としてL−1、脂肪酸金属塩(M)としてM−1、ハイドロタルサイト(N)としてN−1、及び帯電防止剤(J)としてJ−1を用い、I−1/L−1/M−1/N−1/J−1=5/84/5/5/1の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に溶融混練し、マスターバッチ(MB4)を得た。マスターバッチの組成を表1に示す。
【0086】
MB5
S−EVOH(I)としてI−1、EVAc(L)としてL−1、脂肪酸金属塩(M)としてM−1、及びハイドロタルサイト(N)としてN−1を用い、I−1/L−1/M−1/N−1=25/67.5/5/2.5の質量比になるようにドライブレンドで配合した以外はMB1と同様に溶融混練し、マスターバッチ(MB5)を得た。マスターバッチの組成を表1に示す。
【0087】
実施例1
[多層構造体(B)の製造]
ポリオレフィン(G)としてPP−1、粉砕物(O−1)、マスターバッチ(MB1)をPP−1/粉砕物(O−1)/マスターバッチ(MB1)=70/30/3の質量比でブレンドした樹脂組成物(A)、最内層にEVOHとしてH−1、接着性樹脂層として「モディックAP P604V」を用い、フィードブロックダイにて樹脂組成物(A)層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/樹脂組成物(A)層=200μm/20μm/20μm/20μm/200μmの3種5層共押出を行い、多層構造体(B)を作成した。それぞれの層厚みを表1に示す。フィードブロックへのそれぞれの樹脂の供給は、樹脂組成物(A)層は32mmφ押出機、接着性樹脂層は25mmφ押出機、EVOH層は20mmφ押出機をそれぞれ使用した。また、押出の温度は各樹脂とも220℃とし、ダイス部及びフィードブロック部の温度も220℃とした。
【0088】
得られた多層構造体(B)における、樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
[回収物(C)の製造]
上記の方法で得られた多層構造体(B)を径8mmの目開きのふるいを装着した粉砕機(三興機工株式会社製、SG2324S)で粉砕し径8mm以上の破片を除去した後、径3mmの目開きのふるいを装着した振動式ふるい機(いすず化工機株式会社製、IS−1、吐出10kg/h)で径3mm以下の微粉を除去して回収物(C−1)を得た。得られた回収物(C−1)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−1)全体に対して250ppmであった。
【0090】
上記で得られた回収物(C−1)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
[多層構造体(F)の製造]
ポリオレフィン(D)としてPP−1と、回収物(C)として回収物(C−1)と、マスターバッチ(MB1)とをPP−1/回収物(C−1)/マスターバッチ(MB1)=70/30/3の質量比でブレンドした樹脂組成物(E)、最内層にEVOHとしてH−1、接着性樹脂層として「モディックAP P604V」を用い、フィードブロックダイにて樹脂組成物(E)層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/樹脂組成物(E)層=200μm/20μm/20μm/20μm/200μmの3種5層共押出を行い、多層構造体(F)を作成した。フィードブロックへのそれぞれの樹脂の供給は、樹脂組成物(D)層は32mmφ押出機、接着性樹脂層は25mmφ押出機、EVOH層は20mmφ押出機をそれぞれ使用した。また、押出の温度は各樹脂とも220℃とし、ダイス部及びフィードブロック部の温度も220℃とした。
【0092】
多層構造体(F)の製造時において、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0093】
実施例2
[多層構造体(B)の製造]
実施例1において粉砕物(O−1)の替わりに粉砕物(O−2)を用い、多層構造体(B)の層厚みを、樹脂組成物(A)層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/樹脂組成物(A)層=200μm/20μm/40μm/20μm/200μmとしたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(B)を作成した。それぞれの層厚みを表1に示す。得られた多層構造体(B)における樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
[回収物(C)の製造]
上記の方法で得られた多層構造体(B)を実施例1と同様に粉砕してからふるい分けを行い、回収物(C−2)を得た。得られた回収物(C−2)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−2)全体に対して237ppmであった。また、回収物(C−2)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0096】
実施例3
[多層構造体(B)の製造]
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB2)を用いたこと以外は実施例1と同様に多層構造体(B)を作成した。得られた多層構造体(B)における樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
[回収物(C)の製造]
上記の方法で得られた多層構造体(B)を実施例1と同様に粉砕してからふるい分けを行い、回収物(C−3)を得た。得られた回収物(C−3)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−3)全体に対して15641ppmであった。また、回収物(C−3)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−3)を用い、マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB2)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0099】
実施例4
[多層構造体(B)の製造]
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB3)を用いたこと以外は実施例1と同様に多層構造体(B)を作成した。得られた多層構造体(B)における樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
[回収物(C)の製造]
上記の方法で得られた多層構造体(B)を実施例1と同様に粉砕してからふるい分けを行い、回収物(C−4)を得た。得られた回収物(C−4)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−3)全体に対して25ppmであった。また、回収物(C−4)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−4)を用い、マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0102】
比較例1
[多層構造体(B)の製造]
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB4)を用いたこと以外は実施例1と同様に多層構造体(B)を作成した。得られた多層構造体(B)における樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
[回収物(C)の製造]
上記の方法で得られた多層構造体(B)を実施例1と同様に粉砕してからふるい分けを行い、回収物(C−5)を得た。得られた回収物(C−5)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−5)全体に対して250ppmであった。また、回収物(C−5)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−5)を用い、マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB4)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0105】
比較例2
[回収物(C)の製造]
実施例1で得られた多層構造体(B)を用いて、実施例1と同様に粉砕した。その後、ふるい分けを行わず、回収物(C−6)を得た。得られた回収物(C−6)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−6)全体に対して250ppmであった。また、回収物(C−6)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0106】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−6)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0107】
比較例3
[多層構造体(B)の製造]
マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB5)を用いたこと以外は実施例1と同様に多層構造体(B)を作成した。得られた多層構造体(B)における樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
[回収物(C)の製造]
上記で得られた多層構造体(B)を実施例1と同様に粉砕してからふるい分けを行い、
回収物(C−7)を得た。得られた回収物(C−7)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−7)全体に対して0ppmであった。また、回収物(C−7)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−7)を用い、マスターバッチ(MB1)の替わりにマスターバッチ(MB5)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0110】
比較例4
[多層構造体(B)の製造]
実施例1において粉砕物(O−1)の替わりに粉砕物(O−3)を用い、多層構造体(B)の層厚みを、樹脂組成物(A)層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層/樹脂組成物(A)層=200μm/20μm/200μm/20μm/200μmとしたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(B)を作成した。それぞれの層厚みを表1に示す。得られた多層構造体(B)における樹脂組成物(A)層中のEVOH(H)の粒径を測定した。結果を表1に示す。
【0111】
[回収物(C)の製造]
上記で得られた多層構造体(B)を実施例1と同様に粉砕してからふるい分けを行い、
回収物(C−8)を得た。得られた回収物(C−8)の帯電防止剤の含有量は、回収物(C−2)全体に対して167ppmであった。また、回収物(C−8)の見かけ密度、帯電電位及び1時間運転後の組成変化率を測定した。結果を表1に示す。
【0112】
[多層構造体(F)の製造]
実施例1において、回収物(C−1)の替わりに回収物(C−8)を用いたこと以外は、実施例1と同様に多層構造体(F)を作成し、曇りムラを評価した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1の結果から、ポリオレフィン(G)、EVOH(H)、S−EVOH(I)及び帯電防止剤(J)を含有し、EVOH(H)とS−EVOH(I)との質量比(H/I)が0.1〜10である樹脂組成物(A)の層を有する多層構造体(B)を粉砕してからふるい分けして回収物(C)を得る工程;及び回収物(C)とポリオレフィン(D)とを溶融混練してなる樹脂組成物(E)の層を有する多層構造体(F)を得る工程;を含む実施例1〜4の製造方法で得られた多層構造体(F)はいずれも曇りムラの発生及び悪化が抑制されることが分かる。実施例3では表面平滑性が悪化したことにより多層構造体(F)に若干の曇りムラが発生した。また、実施例4では回収物を再使用する際の組成変化により多層構造体(F)の曇りムラが若干悪化した。
【0115】
EVOH(H)とS−EVOH(I)の質量比(H/I)が大きい比較例1及び4、ふるい分けの工程を行っていない比較例2、並びに樹脂組成物(A)が帯電防止剤(J)を含有していない比較例3はいずれも曇りムラが多数発生または顕著に悪化した。比較例1及び4ではEVOH(H)の分散性が不十分であるのに加えて回収物を再利用する際の組成変化が起こることにより、多層構造体(F)の曇りムラが発生及び悪化した。また、比較例2及び3では、回収物を再利用する際の顕著な組成変化により、多層構造体(F)の曇りムラが著しく悪化した。