特許第5665963号(P5665963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665963
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】超電導ケーブル冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/16 20060101AFI20150115BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20150115BHJP
   H02G 15/34 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H01B12/16ZAA
   F25B9/00 Z
   H02G15/34
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-500796(P2013-500796)
(86)(22)【出願日】2011年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2011054312
(87)【国際公開番号】WO2012114507
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 惠一
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/062127(WO,A1)
【文献】 特開平06−042830(JP,A)
【文献】 特開平11−325630(JP,A)
【文献】 特開2004−316971(JP,A)
【文献】 特開2005−003314(JP,A)
【文献】 特開2006−052921(JP,A)
【文献】 特公昭44−029708(JP,B1)
【文献】 特開2007−023966(JP,A)
【文献】 特開2004−233010(JP,A)
【文献】 特開2006−012654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/16
F25B 9/00
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の冷媒を循環ポンプで超電導ケーブルに供給して第1の循環経路を形成することにより、前記超電導ケーブルを冷却する超電導ケーブル冷却システムにおいて、
前記第1の循環経路上に形成された第1の熱交換部と、
前記第1の循環経路と独立して形成された第2の冷媒が流れる第2の循環経路上に第2の熱交換部を有する冷凍機と、
第3の冷媒が充填された冷却空間内に前記第1の熱交換部と前記第2の熱交換部を収納する熱交換ユニットと、
記熱交換ユニットに充填された第3の冷媒の温度が所定値になるように前記冷凍機を制御する制御部と
を備え
前記制御部は、前記超電導ケーブルにおける発熱をP、前記超伝導ケーブルの発熱の発生期間をt、前記循環ポンプにおける発熱をP、前記循環ポンプの運転時間をtとしたときに、次式
Q=(P×t+P×t
=Q/t
によって算出される冷凍能力Pを発揮するように、前記冷凍機を制御することを特徴とする超電導ケーブル冷却システム。
【請求項2】
第1の冷媒を循環ポンプで超電導ケーブルに供給して第1の循環経路を形成することにより、前記超電導ケーブルを冷却する超電導ケーブル冷却システムにおいて、
前記第1の循環経路上に形成された第1の熱交換部と、
前記第1の循環経路と独立して形成された第2の冷媒が流れる第2の循環経路上に第2の熱交換部を有する冷凍機と、
第3の冷媒が充填された冷却空間内に前記第1の熱交換部と前記第2の熱交換部を収納する熱交換ユニットと、
前記熱交換ユニットに充填された液化ガスの温度が所定値になるように前記冷凍機を制御する制御部と
を備え、
前記超伝導ケーブルの発熱PC1が期間t継続した後、発熱PC2が期間t継続するサイクルを繰り返す場合、前記制御部は、前記冷凍機の冷却能力Pbが次式
×(t+t)=(P+PC1)×t+(P+PC2)×t
を満たすように制御することを特徴とする超伝導ケーブル冷却システム。
【請求項3】
前記冷凍機はブレイトンサイクル冷凍機であり、前記第2の熱交換部はブレイトンサイクル熱交換部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブル冷却システム。
【請求項4】
前記第1の循環経路には、該第1の循環経路を流れる前記第1の冷媒を所定圧力に加圧して貯留し、該第1の循環経路における前記第1の冷媒の堆積変動を吸収可能なリザーバータンクが接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の超電導ケーブル冷却システム。
【請求項5】
前記第1の冷媒は液体窒素であり、
前記第2の冷媒は前記第1の冷媒より液化温度の低い気体であり、
前記第3の冷媒はスラッシュ窒素であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の超伝導ケーブル冷却システム。
【請求項6】
前記超電導ケーブルを複数備える場合、前記第1の循環経路は前記超電導ケーブルの各々に対応してそれぞれ独立に形成されており、
前記第1の循環経路の各々における前記第1の熱交換部は、単一の前記冷却空間内に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の超電導ケーブル冷却システム。
【請求項7】
前記複数の超電導ケーブルが互いに直列に接続されている場合に、前記複数の超電導ケーブルのうち隣り合う超電導ケーブルに対応して形成された前記第1の循環経路に含まれる前記第1の熱交換部の各々が、前記冷却空間内に配置されていることを特徴とする請求項に記載の超電導ケーブル冷却システム。
【請求項8】
前記熱交換ユニットの冷却空間内に充填された第3の冷媒を減圧するための減圧手段を更に備えたことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の超電導ケーブル冷却システム。
【請求項9】
前記第1の熱交換部は前記第1の循環経路に複数に分割されて設けられており、前記循環ポンプは前記第1の循環経路上において該分割された前記第1の熱交換部の間に設けられており、前記分割された第1の熱交換部の各々は前記冷却空間内に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の超電導ケーブル冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の送配電に使用される超電導ケーブルを極低温に冷却するための超電導ケーブル冷却システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温下で電気抵抗値が略ゼロである超電導体を材料とする、電力送配電用の超電導ケーブルがある。超電導ケーブルの送電効率を良好に確保するためには、超電導ケーブルを安定的に極低温状態に維持する必要があり、このような冷却能力を有する冷却システムの研究開発が進められている。尚、一般的に超電導ケーブルの材料としては高温超電導体が用いられており、冷却用の冷媒としては液体窒素が使用されている。
【0003】
ここで、図10を参照して、従来の超電導ケーブル冷却システム100(以下、適宜「冷却システム100」と称する)の構成について簡略的に説明する。図10は、従来の超電導ケーブル冷却システム100の全体構成を概略的に示す構成図である。
冷却システム100は、冷却対象として高温超電導体からなる超電導ケーブル1を有しており、該超電導ケーブル1の冷却用冷媒として液体窒素を用いている。超電導ケーブル1を冷却した冷媒は、一旦リザーバータンク2に貯留される。リザーバータンク2では、冷媒が加圧装置3によって所定圧力値に加圧されて貯留されている。この所定圧力値は、リザーバータンク2に設けられた圧力センサ4によって検出した圧力値を、図不示の加圧装置3のコントローラが取得し、該取得した圧力値が所定値になるように加圧装置3をフィードバック制御することによって維持されている。
【0004】
リザーバータンク2の下流側には循環ポンプ5が設けられており、当該循環ポンプ5の駆動によってリザーバータンク2に貯留された冷媒は冷凍機6に圧送され、冷却される。冷凍機6はGM冷凍機やスターリング冷凍機である。そして冷凍機6によって冷却された冷媒は、再び超電導ケーブル1に供給され、超電導状態の冷却に使用される。ここで、冷凍機6より下流側には冷媒の温度及び流量を検出するための温度センサ7及び流量センサ8が設けられており、各検出値に基づいて冷媒の温度が所定値に冷却されるように、冷凍機6がフィードバック制御される。
【0005】
以上説明したように、図10に示す例では、超電導ケーブル1を冷却することによって温度の上昇した冷媒をリザーバータンク2、循環ポンプ5、及び冷凍機6が設けられた循環経路9を介して冷却した後に、再度超電導ケーブル1に供給するという、循環サイクルを繰り返すものである。特許文献1は、このような循環サイクルにて冷媒を冷却して超電導ケーブル1に供給する方式の冷却システムの一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−12654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような循環サイクルにて冷媒を冷却して超電導ケーブル1に供給する冷却システムでは、超電導ケーブル1の冷却温度を一定に維持するために、超電導ケーブル1への冷媒供給入口(図10において、流量センサ8の下流側)における冷媒の温度を一定に制御することが要求される。超電導ケーブル1を冷却する際に発生する熱損失としては、大きく次の3つがある。(i)超電導ケーブル1の外部から侵入する熱量による損失、(ii)超電導ケーブル1に交流電流(又は電圧)を通電した際に発生するACロスによる損失、及び(iii)冷媒を循環させる循環ポンプ5で発生する損失である。特に、(ii)による熱損失は、電力送電時の超電導ケーブル1の負荷変動に伴い変化する傾向がある。
【0008】
上記例では、冷媒温度を温度センサ7や流量センサ8における検出値に基づいたフィードバック制御によって制御している。このような制御は、熱損失が時間的に一定である静的な系では有用ではある。しかしながら、超電導ケーブル1で発生する熱損失は上述したように時間的に変動する場合があり、このような場合に冷媒の温度制御が困難になってしまうという問題点が有る。
【0009】
また上記例では、冷凍機6としてGM冷凍機やスターリング冷凍機が使用されている。そのため、GM冷凍機では断続運転、スターリング冷凍機では運転サイクルの制御によって、冷媒の温度制御が行われることとなる。この種の冷凍機6を使用する場合、その制御には、循環経路9のうち所定の測定ポイントで温度や流量などの制御パラメータを測定し、冷凍機6をフィードバック制御する必要がある。しかしながら、超電導ケーブルは実用面を考慮すると長さが数kmに及ぶ大規模なものとなるため、当該測定ポイントの最適位置の選出は容易ではない。特に、超電導ケーブル1の長さが数kmのオーダーであるのに対して、実際に想定される冷媒の流速は数十cm/s程度であると想定される。そのため、冷媒が循環経路9を一巡するために要する時間は数時間程度に達し、冷媒が循環する時定数が非常に大きくなる。一方で、冷媒の温度制御を行う冷凍機6の動作に関する時定数(例えば、制御コントローラのクロック周波数など)は非常に短く、冷媒が循環する時定数との間には大きな差がある。従って、上記例では、超電導ケーブル1における熱損失が時間的に変動する場合など、動的な系においては、冷媒の入口温度を一定に制御することは容易ではないという問題点がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、超電導ケーブルに温度の安定した冷媒を供給可能な超電導ケーブル冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超電導ケーブル冷却システムの一実施形態は上記課題を解決するために、第1の冷媒を循環ポンプで超電導ケーブルに供給して第1の循環経路を形成することにより、前記超電導ケーブルを冷却する超電導ケーブル冷却システムにおいて、前記第1の循環経路上に形成された第1の熱交換部と、前記第1の循環経路と独立して形成された第2の冷媒が流れる第2の循環経路上に第2の熱交換部を有する冷凍機と、第3の冷媒が充填された冷却空間内に前記第1の熱交換部と前記第2の熱交換部を収納する熱交換ユニットと、記熱交換ユニットに充填された第3の冷媒の温度が所定値になるように前記冷凍機を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記超電導ケーブルにおける発熱をP、前記超伝導ケーブルの発熱の発生期間をt、前記循環ポンプにおける発熱をP、前記循環ポンプの運転時間をtとしたときに、次式
Q=(P×t+P×t
=Q/t
によって算出される冷凍能力Pを発揮するように、前記冷凍機を制御することを特徴とする。
また他の実施形態では、第1の冷媒を循環ポンプで超電導ケーブルに供給して第1の循環経路を形成することにより、前記超電導ケーブルを冷却する超電導ケーブル冷却システムにおいて、前記第1の循環経路上に形成された第1の熱交換部と、前記第1の循環経路と独立して形成された第2の冷媒が流れる第2の循環経路上に第2の熱交換部を有する冷凍機と、第3の冷媒が充填された冷却空間内に前記第1の熱交換部と前記第2の熱交換部を収納する熱交換ユニットと、前記熱交換ユニットに充填された液化ガスの温度が所定値になるように前記冷凍機を制御する制御部とを備え、前記超伝導ケーブルの発熱PC1期間t継続した後、発熱PC2が期間t継続するサイクルを繰り返す場合、前記制御部は、前記冷凍機の冷却能力Pbが次式
×(t+t)=(P+PC1)×t+(P+PC2)×t
を満たすように制御することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、超電導ケーブルの冷却に使用されて温度が上昇した冷媒は、循環ポンプによって循環経路上に設けられた熱交換部に圧送され、熱交換ユニットにて冷却空間に充填された液化ガスと熱交換することにより冷却される。このとき液化ガスには、循環経路を流れる冷媒が超電導ケーブルから受けた熱量が蓄熱され、当該液化ガスに蓄積された熱負荷は、冷凍機によって取り除かれる。即ち、本発明では、超電導ケーブルからの熱負荷を一旦液化ガスに蓄熱することによって液化ガスを熱的なバッファとして機能させることができる。これにより、冷凍機は当該液化ガスの温度を所定値になるように制御することで、超電導ケーブルにおいて発生する熱量が時間的に変動する場合であっても、冷媒の温度を安定的に維持できるよう制御できる。
【0013】
好ましくは、前記冷凍機はブレイトンサイクル冷凍機であり、前記第2の熱交換部はブレイトンサイクル熱交換部である。ブレイトンサイクル冷凍機は圧縮機と膨張機により冷却を行う冷凍機であり、熱交換部としてブレイトンサイクル熱交換部を有している。本態様では、ブレイトンサイクル熱交換部を液化ガスが充填された冷却空間内に循環経路上に設けられた熱交換部と共に配置することによって、当該冷却空間に充填された液化ガスを媒体として熱交換を行い、超電導ケーブルの冷却を行うことができる。
【0014】
また、前記第1の循環経路には、該第1の循環経路を流れる前記第1の冷媒を所定圧力に加圧して貯留し、該第1の循環経路における前記第1の冷媒の堆積変動を吸収可能なリザーバータンクが接続されていてもよい。これにより、循環経路を流れる冷媒の温度が変動することに伴い、冷媒の体積又は圧力が変化した場合であっても、リザーバータンクによって当該体積及び圧力の変化を吸収することができる。
また前記第1の冷媒は液体窒素であり、前記第2の冷媒は前記第1の冷媒より液化温度の低い気体であり、前記第3の冷媒はスラッシュ窒素であってもよい。
【0015】
本発明の一態様では、前記超電導ケーブルを複数備える場合、前記第1の循環経路は前記超電導ケーブルの各々に対応してそれぞれ独立に形成されており、前記第1の循環経路の各々における前記第1の熱交換部は、単一の前記冷却空間内に配置されている。この態様によれば、それぞれの循環経路に設けられた熱交換部を、液化ガスが充填された冷却空間を有する単一の熱交換ユニット内に配置されている。そのため、制御部は単一の熱交換ユニットの冷却空間に充填された液化ガスの温度制御をするだけで、複数の循環経路を流れる冷媒の温度を安定的に制御することができる。
【0016】
特に、前記複数の超電導ケーブルが互いに直列に接続されている場合に、前記複数の超電導ケーブルのうち隣り合う超電導ケーブルに対応して形成された前記第1の循環経路に含まれる前記第1の熱交換部の各々が、前記冷却空間内に配置されているとよい。超電導ケーブルを長距離送電用に使用する場合、複数の超電導ケーブルを直列に接続して長距離化を図ることがある。この場合、このように直列に接続された複数の超電導ケーブル毎に循環経路を形成しておき、そのうち隣り合う超電導ケーブルに対応する循環経路に設けられた熱交換部を単一の冷却空間内に配置することにより、複数の超電導ケーブルに対して温度の安定した冷媒を供給することができる。
【0017】
本発明の他の態様としては、前記熱交換ユニットの冷却空間内に充填された第3の冷媒を減圧するための減圧手段を更に備えていてもよい。この態様によれば、冷凍機が点検や故障などの何らかの事情によって停止した場合であっても、減圧手段によって液化ガスを減圧して液化ガスを冷却することができる。即ち、減圧手段を、冷凍機が停止した場合のバックアップ手段として機能させることができるので、より信頼線の高い冷却システムを構築することができる。
【0018】
また本発明の他の態様としては、前記第1の熱交換部は前記第1の循環経路に複数に分割されて設けられており、前記循環ポンプは前記第1の循環経路上において該分割された前記第1の熱交換部の間に設けられており、前記分割された第1の熱交換部の各々は前記冷却空間内に配置されていてもよい。この態様によれば、循環ポンプを複数の熱交換部のいずれかの間に設置することで、超電導ケーブルでの冷媒の出入口での温度差を大きくとることができ、冷媒流量を少なくすることで、循環ポンプや冷凍機を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、超電導ケーブルの冷却に使用されて温度が上昇した冷媒は、循環ポンプによって循環経路上に設けられた熱交換部に圧送され、熱交換ユニットにて冷却空間に充填された液化ガスと熱交換することにより冷却される。このとき液化ガスには、循環経路を流れる冷媒が超電導ケーブルから受けた熱量が蓄熱され、当該液化ガスに蓄積された熱負荷は、冷凍機によって取り除かれる。即ち、本発明では、超電導ケーブルからの熱負荷を一旦液化ガスに蓄熱することによって液化ガスを熱的なバッファとして機能させることができる。これにより、冷凍機は当該液化ガスの温度を所定値になるように制御することで、超電導ケーブルにおいて発生する熱量が時間的に変動する場合であっても、冷媒の温度を安定的に維持できるよう制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
図2】第1実施例に係る超電導ケーブル冷却システムにおいて、超電導ケーブルで発生する熱量の時間的推移の一例を示すグラフ図である。
図3】第1実施例に係る超電導ケーブル冷却システムにおいて、式(5)に従って冷凍機の冷却能力を制御した場合における超電導ケーブルの温度変化を示すグラフ図である。
図4】第1実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの循環経路の各部で冷媒が受け取る発熱、及び冷媒の温度分布を示すグラフ図である。
図5】第2実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
図6】第3実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
図7】第4実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
図8】第5実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
図9】第5実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの循環経路の各部で冷媒が受け取る発熱、及び冷媒の温度分布を示すグラフ図である。
図10】従来の超電導ケーブル冷却システムの全体構成を概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
(実施例1)
図1は第1実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100の全体構成を概略的に示す構成図である。尚、図10を参照して説明した背景技術と共通する箇所については、共通の符号を付すこととし、細部については適宜説明を省略することとする。
【0023】
冷却システム100は、超電導ケーブル1の冷却用に使用された冷媒を、循環ポンプ5で熱交換部17に圧送して冷却した後、超電導ケーブル1に再度供給することにより循環経路9を形成して超電導ケーブル1を冷却する。超電導ケーブル1は高温超電導体から形成されており、循環経路9を流れる冷媒(液体窒素)によって冷却されている。尚、循環経路9を流れる冷媒は、図1では図示を省略しているが、熱交換部17近傍を除いて基本的にその流路周囲が減圧されることによって、外部からの熱侵入を防止可能なように構成されている。
【0024】
循環経路9のうち循環ポンプ5の上流側には、循環経路9を流れる冷媒を所定値に加圧して貯留するためのリザーバータンク2が接続されている。リザーバータンク2は、循環経路9を流れる冷媒の体積が温度変化により変動するため、この体積変動を吸収し、冷媒が温度上昇によって気化しにくくするために、加圧装置3によって冷媒を所定の値に加圧して貯留する。これにより、循環経路9を流れる冷媒は気化しにくくなり、超電導ケーブル1で発生する熱量が時間的に変動した場合への対応性能を向上させることができる。
【0025】
循環経路9を流れる冷媒は、循環ポンプ5によって熱交換部17に圧送される。熱交換部17は高い熱伝導率を有する素材を使用したり熱伝達率が高くなるような構造となるように形成されており、その内部を流れる冷媒から受け取った熱量を外部と熱交換可能に構成されている。例えば循環経路9は金属などの熱伝導率を有する素材でできたパイプ状の流路を形成しており、内部を冷媒が流れるように形成されている。この場合、必要に応じてラジエータのように広い表面積を有することにより、適宜形状を工夫してもよい。尚、後に詳しく説明するが、熱交換部17の外部は低温の液化ガスで充填されており、熱交換部17の内部を流れる冷媒は、外部に充填された液化ガスとの間で熱交換することにより冷却される。
【0026】
熱交換部17にて冷却された冷媒は、下流側に設けられた流量センサ8を通過した後、再び超電導ケーブル1に供給される。これにより、超電導ケーブル1には温度の低い冷媒が供給され、継続的に極低温状態が維持される。流量センサ8は循環経路9を流れる冷媒の流量を検出するための流量検出手段であり、検出した流量値を制御部50に送信する。
【0027】
熱交換部17は、液化ガスが充填(封入)された冷却空間15を有する熱交換ユニット14内に配置されている。本実施例では特に、冷却空間15に充填された液化ガスは、循環経路9を流れる冷媒と同様に、液体窒素である。尚、液化ガスとしては、液体窒素と固体窒素が混合されたスラッシュ窒素などを使用すると、更に好ましい。
【0028】
冷凍機6はブレイトンサイクル冷凍機であり、圧縮機10、熱交換器11、膨張機12、及びブレイトンサイクル熱交換部13を備えてなる。ブレイトンサイクル熱交換部13は、前述の熱交換部17と共に、液化ガスが充填された熱交換ユニット14の冷却空間15内に配置されている。ブレイトンサイクル冷凍機である冷凍機6内は、冷却空間15内に充填された液化ガスより液化温度の低い気体が循環されている。本実施例では冷却空間15内に充填された液化ガスとして液体窒素を使用しているので、冷凍機6内に循環される気体の例としては、ヘリウムガスやネオンガスが好ましい。このように、これらの気体が冷凍機6内を循環することでブレイトンサイクル熱交換部13は、冷却空間15内に充填された液化ガスより十分に低い温度となる。そのため、冷凍機6の動作状態を制御することにより、冷却空間15内に充填された液化ガスの冷却温度を制御することができる。
【0029】
熱交換部17を流れる冷媒は、超電導ケーブル1を通過する際に超電導ケーブル1で発生した熱量を受け取り、更に循環ポンプ5で圧送される際にも熱量を受け取ることによって、温度が上昇している。熱交換部17では、このように冷媒に蓄積された熱量を冷却空間15に充填された液化ガスと間で熱交換することによって冷却される。液化ガスの温度は前述したように冷凍機6の動作状態を制御することによって制御することが可能である。尚、熱交換部17を流れる冷媒は、理想的には熱交換ユニット14内の液化ガスと同じ温度まで冷却可能だが、実際には熱交換部17の熱交換面積が有限なため、冷媒の温度は熱交換ユニット14内の温度よりはわずかだが高めになる。
【0030】
冷却空間15に充填された液化ガスの温度は、熱交換ユニット14に設けられた温度検出手段たる温度センサ7によって検出される。温度センサ7によって検出された液化ガスの温度は、電気信号として制御部50に送信する。
【0031】
制御部50は、流量センサ8及び温度センサ7から取得した情報に基づいて冷凍機6に制御信号を送信することによって、冷凍機6の動作状態を制御するためのコントロールユニットである。ここで、制御部50が冷却空間15に充填された液化ガスの冷却を行うにあたって、冷凍機6の冷却能力をどのように制御したらよいかを、理論的に説明する。
【0032】
まず、超電導ケーブル1における発熱をP[W]、当該発熱の発生期間をt[秒]、循環ポンプ5における発熱をP[W]、循環ポンプ5の運転時間をt[秒]、冷却空間15に充填された液化ガスの質量をM[kg]、比熱をC[J/(K・kg)]、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力をP[W]とする。また、超電導ケーブル1を冷却する冷媒の流量(即ち、流量センサ8により検出される流量)をm[kg/秒]とする。この場合、超電導ケーブル1と循環ポンプ5を通過した冷媒の温度上昇ΔT[K]は次式
ΔT=(P×t+P×t)/(m×C×t) (1)
で求められる。ここで冷却システム100全体における発熱量Q[J]は
Q=(P×t+P×t) (2)
である。この発熱量Qは冷却空間15に充填された液化ガスに蓄熱され、仮に液化ガスが冷凍機6によって冷却されないと仮定した場合、液化ガスの温度は次式により算出される温度ΔTだけ上昇することとなる。
ΔT=Q/(M×C) (3)
従って、液化ガスの温度上昇をΔT=0[K]にするためには、発熱量Qに相当する熱量を冷却空間15に充填された液化ガスから取り去ればよいので、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力Pbを次式
=Q/t (4)
になるように制御するとよい。制御部50は、このように(4)式により求められる冷却能力Pbを発揮するように冷凍機6を制御することにより、液化ガスの温度上昇をΔT=0[K]にし、超電導ケーブル1の冷却を安定的に行うことが可能となる。
【0033】
次に、図2を参照して、超電導ケーブル1で発生する熱量が時間的に変動する場合について考察する。図2は超電導ケーブル1で発生する熱量の時間的推移の一例を示すグラフ図である。この例では、超電導ケーブル1の発熱は、期間tではPC1、期間tではPC2であり、これらの状態が交互に続く場合を想定して説明する。
【0034】
このような場合、制御部50は冷凍機6を、超電導ケーブル1で発生する熱量の平均値を冷却するように制御するとよい。具体的には、循環ポンプ5は時間的に連続で運転されるので、
=t+t
であるため、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力Pbが次式
×(t+t)=(P+PC1)×t+(P+PC2)×t (5)
になるように制御するとよい。
【0035】
図3は式(5)に従って冷凍機6の冷却能力Pbを制御した場合における冷却空間15に充填された液化ガスの温度の時間的推移を示すグラフ図である。上述したように冷凍機6の冷却能力Pbは超電導ケーブル1で発生する熱量の平均値を冷却するように一定に制御されるため、期間tでは期間tに比べて発熱量が少ないため(図2を参照)、液化ガスの温度は次第に減少する。一方、期間tでは期間tに比べて発熱量が多いため、液化ガスの温度は次第に上昇し、初期温度T0に戻る。
【0036】
理論的に説明すると、期間tの発熱量Q[J]は、次式
=(PC1+P)×t (6)
により求められる。この発熱量Qは冷却空間15に充填された液化ガスに蓄熱されて冷媒温度を上昇させるが、冷凍機6によって液化ガスが冷却される。そのため、期間tにおける温度変化ΔTは、
ΔT=(PC1+P−P)×t/(M×C) (7)
と算出される。そして期間tでは、冷凍機6の冷却能力Pbが(5)式により制御されているので、ΔT上昇して初期温度T0に戻る。尚、このΔTは、tを用いて次式のように算出することもできる。
ΔT=(PC2+P−P)×t/(M×C) (8)
【0037】
このように制御部50によって温度が制御された液化ガスは、熱交換部4との間で熱交換することにより、熱交換部4を流れる冷媒を冷却する。液化ガスの温度をTsとすると、超電導ケーブル1の入口での冷媒温度Tは次式
=Ts+ΔT (9)
となる。ここで、ΔTは熱交換ユニット14内の熱交換部4の熱交換効率で決まる温度差であり、所定値となるように熱交換ユニット14や熱交換部4の構成や材料等を選択するとよい。
【0038】
続いて、図4は第1実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの循環経路9の各部で冷媒が受け取る発熱、及び冷媒の温度分布を示すグラフ図である。尚、図4では、横軸は基準位置(超電導ケーブル1の冷媒出口)からの距離を示しており、図4(a)の縦軸は各地点における発熱、図4(b)の縦軸は各地点における温度を示している。
【0039】
循環経路9を流れる冷媒は、超電導ケーブル1内で熱量Pcを受け取ることにより温度がΔTc上昇する。そして、循環ポンプ5では更に熱量Ppを受け取り、温度がΔTp上昇する。そして、循環ポンプ5によって熱交換部17に圧送された冷媒は、熱交換ユニット14において冷却空間15に封入された液化ガスとの熱交換により、冷却され、初期の入口温度に戻る。
【0040】
尚、冷却システム100では、循環経路9を流れる冷媒が気化すると絶縁耐力が下がるため、当該冷媒の温度の上限値が、冷媒が気化しない温度の範囲となるように制御する必要がある。例えば液体窒素が気化する温度は圧力が大気圧で77[K]である。そのため、超電導ケーブル1内での温度上昇は循環ポンプ5の発熱による温度上昇を加味した分、低めに設定されることが好ましい。
【0041】
以上説明したように、第1実施例では、超電導ケーブル1の冷却に使用されて温度が上昇した冷媒は、循環ポンプ5によって循環経路9上に設けられた熱交換部4に圧送され、熱交換ユニット14にて冷却空間15に充填された液化ガスと熱交換することにより冷却される。このとき液化ガスには、循環経路9を流れる冷媒が超電導ケーブル1から受けた熱量が蓄熱され、当該液化ガスに蓄積された熱負荷は、冷凍機6によって取り除かれる。即ち、本実施例では、超電導ケーブル1からの熱負荷を一旦液化ガスに蓄熱することによって液化ガスを熱的なバッファとして機能させることができる。これにより、冷凍機6は当該液化ガスの温度を所定値になるように制御することで、超電導ケーブル1において発生する熱量が時間的に変動する場合であっても、冷媒の温度を安定的に維持できるよう制御できる。
【0042】
(第2実施例)
図5は第2実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100の全体構成を概略的に示す構成図である。尚、実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略することとする。
【0043】
第2実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100では、1台のブレイトンサイクル冷凍機6で超電導ケーブル1aと超電導ケーブル1bという複数の超電導ケーブルを冷却できる点に特徴がある。超電導ケーブル1aと1bの各々には、それぞれ循環ポンプ5aと5b、熱交換部17aと17b、流量センサ8aと8b、リザーバータンク2a、2bが具備され、独立した循環経路9aと9bが形成されている。循環経路9a及び9bはそれぞれ独立しているので、圧力や流量などは個別に設定し独立した状態で制御可能に構成されている。
【0044】
熱交換部17a及び17bは共に、熱交換ユニット14に設けられた共通の冷却空間15内に設置されている。この冷却空間15内には、上述したようにブレイトンサイクル熱交換部13も設置されており、液化ガスが充填されている。冷却空間15に充填された液化ガスは、制御部50によってブレイトンサイクル冷凍機6が制御されることにより、所定の温度に冷却されている。
【0045】
循環経路9a及び9bを流れる冷媒は、それぞれ熱交換部17a及び17bで冷却空間15に充填された液化ガスに蓄熱する形で冷却され、熱交換部17a及び17bの出口温度は、冷却空間15に充填された液化ガスの温度によって決定される。従って、液化ガスの温度は、温度センサ7によって検出された温度に基づいてブレイトンサイクル冷凍機6が制御されて所定温度に制御されることで、超電導ケーブル1aと超電導ケーブル1bの入口での冷媒温度は同一のものとなり、且つ、所定温度となる。
【0046】
ここで、超電導ケーブル1aで発生する熱量をPca[W]、超電導ケーブル1bで発生する熱量をPcb[W]、循環ポンプ5aで発生する熱量をPpa「W」、循環ポンプ5bで発生する熱量をPpb「W」、超電導ケーブル1aの発熱時間をt1a[秒]、超電導ケーブ1bの発熱時間をt1b[秒]、循環ポンプ5a及び5bの運転時間をt[秒]とすると、超電導ケーブル1a及び1b、循環ポンプ5a及び5bにおける合計熱量Q[J]は次式
Q=Pca×t1a+Pcb×t1b+Ppa×t+Ppb×t (10)
により算出される。この合計熱量を冷却空間15に充填された液化ガスに蓄熱し、ブレイトンサイクル冷凍機6で取り去ればよい。そのため、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力P[W]は
=Q/t (11)
となるように制御されればよい。このように、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力Pは超電導ケーブル1a及び1b、循環ポンプ5a及び5bにおける合計熱量で算出されるので、超電導ケーブル1a及び1bにおける発熱の時間的な変動の影響を受けることはない。
【0047】
このように第2実施例に係る冷却システム100では、超電導ケーブル1aと超電導ケーブル1bの長さや、発生する熱量は異なっていても影響はなく、それぞれの入口温度は冷却空間15に充填された液化ガスの温度で決定される。従って、制御部50は、温度センサ7によって検出した温度に基づいてブレイトンサイクル冷凍機6を動作させることにより、超電導ケーブル1a及び1bにおける冷却温度を容易、且つ、安定的に制御することができる。
【0048】
尚、本願明細書では、超電導ケーブル1の数を2本とした場合について説明したが、超電導ケーブル1の数を3本或いは4本以上に増設した場合についても、同様の構成とすることで1台のブレイトンサイクルで冷却を行うことができる。
【0049】
(第3実施例)
続いて図6を参照して、第3実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100について説明する。図6は第3実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100の全体構成を概略的に示す構成図である。尚、上記第1実施例と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略することとする。
【0050】
超電導ケーブルを長距離送電用に使用する場合、図6に示すように、超電導ケーブル1a及び1bを互いに直列に接続して長距離化を図ることがある。このような場合、循環ポンプ5の加圧能力には限界があるため、各超電導ケーブルに対応するように独立した循環経路9a及び9bが設けられる。
【0051】
図6に示す例では、1台のブレイトンサイクル冷凍機6で隣接した超電導ケーブル1a及び1bを冷却可能に構成している。超電導ケーブル1a及び1bには独立して循環経路9a及び9bが形成されており、それぞれ循環ポンプ5aと5b、熱交換部17aと17b、流量センサ8aと8b、リザーバータンク2a、2bを具備している。ここで各循環経路9a及び9bは独立しているので、圧力や流量などは個別に設定し独立した状態での運転を行うことができる。
【0052】
熱交換部17aと17bは共に、同一の熱交換ユニット14の冷却空間15内に設置される。この熱交換ユニット14の冷却空間15内には、上述したようにブレイトンサイクル熱交換部13も設置されており、液化ガスが充填されている。この液化ガスは、制御部50によってブレイトンサイクル冷凍機6が制御されることにより、所定の温度に冷却されている。
【0053】
循環経路9a及び9bを流れる冷媒は、それぞれ冷媒熱交換4a及び4bで冷却空間15に充填された液化ガスに蓄熱する形で冷却され、熱交換部17a及び17bの出口温度は、熱交換ユニット14の冷却空間15内の液化ガスの温度によって決定される。従って、熱交換ユニット14の冷却空間15内の液化ガスの温度を、温度センサ7によって検出された温度に基づいてブレイトンサイクル冷凍機6を制御して所定温度に制御することで、超電導ケーブル1aと超電導ケーブル1bの入口での冷媒温度は同一のものとなり、且つ、所定温度となる。
【0054】
ここで、超電導ケーブル1aで発生した熱量をPca[W]、超電導ケーブル1bで発生した熱量をPcb[W]、循環ポンプ5aで発生した熱量をPpa「W」、循環ポンプ5bで発生した熱量をPpb「W」、超電導ケーブル1aの発熱時間をt1a[秒]、超電導ケーブル1bの発熱時間をt1b[秒]、循環ポンプ5a及び5bの運転時間をt[秒]とする。すると、超電導ケーブル1a及び1bと循環ポンプ5a及び5bにおける合計熱量Q[J]は次式
Q=Pca×t1a+Pcb×t1b+Ppa×t+Ppb×t (12)
により算出される。この合計熱量を冷却空間15に充填された液化ガスに蓄熱し、ブレイトンサイクル冷凍機6で取り去ればよい。そのため、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力P[W]は
=Q/t (13)
となるように制御されればよい。このように、ブレイトンサイクル冷凍機6の冷却能力Pは超電導ケーブル1a及び1b、循環ポンプ5a及び5bにおける合計熱量で算出されるので、超電導ケーブル1a及び1bにおける発熱の時間的な変動の影響を受けることはない。
【0055】
以上説明したように第3実施例によれば、このように直列に接続され、隣り合うように配置された超電導ケーブル1a及び1bに独立した循環経路9a及び9bを形成しておき、各循環経路9a及び9bに設けられた熱交換部17a及び17bを単一の冷却空間15内に配置することにより、各超電導ケーブル1a及び1bに対して温度の安定した冷媒を供給することができる。
【0056】
(実施例4)
次に図7を参照して、第4実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100について説明する。図7は第4実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100の全体構成を概略的に示す構成図である。尚、上記第1実施例と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略することとする。
【0057】
第4実施例では、熱交換ユニット14に排気装置16を取り付けることにより、冷却空間15内に充填された液化ガスを減圧して冷却できるように構成されている。ここで、冷却空間15内に充填された液化ガスの体積をV[m3]、圧力をp[Pa]、温度をT[K]、液化ガスの気体定数をRとすると、
p×V=R×T (14)
の関係が成立する。ここで、体積Vを一定としつつ圧力pを下げることで、温度Tを下げることができる。
【0058】
即ち、本実施例では、冷凍機6の定期点検や故障などの何らかの事情により冷凍機6が停止した場合であっても、排気装置16によって冷却空間15を減圧することによって、該冷却空間15に充填された液化ガスを冷却することができる。従って、より高い信頼性を有する超電導ケーブル冷却システム100を実現することができる。
【0059】
尚、排気装置16は上記各種実施例における熱交換ユニット14にも取り付け可能であり、同様の効果を得られることはいうまでも無い。
【0060】
(実施例5)
次に図8及び図9を参照して、第5実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100について説明する。図8は第5実施例に係る超電導ケーブル冷却システム100の全体構成を概略的に示す構成図である。また図9は第5実施例に係る超電導ケーブル冷却システムの循環経路9の各部で冷媒が受け取る発熱、及び冷媒の温度分布を示すグラフ図である。尚、図9では、横軸は基準位置(超電導ケーブル1の冷媒出口)からの距離を示しており、図9(a)の縦軸は各地点における発熱、図9(b)の縦軸は各地点における温度を示している。尚、上記第1実施例と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略することとする。
【0061】
図8に示すように、第5実施例では、循環経路9上に複数の熱交換部17a及び17bが設けられている。特に、熱交換部17a及び17bは、循環経路9上において循環ポンプ5が間に配置されるように設けられている。これにより、超電導ケーブル1を冷却した冷媒は熱交換部17aで一度冷却された後、循環ポンプ5によって加熱された後、再び熱交換部17bにて冷却される。
【0062】
また図9に示すように、循環経路9を流れる冷媒は、超電導ケーブル1内で熱量Pcを受け取ることにより温度がΔTc上昇する。そして冷媒は熱交換部17aにて冷却された後、循環ポンプ5で熱量Ppを受け取ることによって温度がΔTp上昇する。そして、循環ポンプ5によって熱交換部17bに圧送され再度冷却されて初期の入口温度に戻る。このように本実施例では、第1実施例(図4を参照)とは異なり、循環ポンプ5の前後に設けられた熱交換部17a及び17bにおいて二段階に渡って冷却される。そのため、循環ポンプ5に熱交換部17aにて予め冷却された冷媒を供給できるため、循環ポンプ5での発熱に対するマージンを大きく確保することができる。
【0063】
ここで、循環経路9における冷媒の流量をm[kg/秒]、循環ポンプ5で加圧される圧力をp[Pa]とすると循環ポンプ5で発生する熱量P[W]は
=k×m×p (15)
と求められる。ここで、kは比例乗数である。そのため、流量が減少すると圧力損失も減少し、循環ポンプ5の加圧量も減少する。従って、循環ポンプ5の発熱Pは大幅に減少し、ブレイトンサイクル冷凍機6の能力を低減することができる。
【0064】
このように第5実施例によれば、ブレイトンサイクル熱交換部13と冷媒冷却のための熱交換部17a及び17bを熱交換ユニット14の冷却空間15内に設置し、循環ポンプ5を熱交換部17aと17bとの間に設置することで、超電導ケーブル1での冷媒の出入口での温度差を大きくとることができる。これにより、循環経路9における冷媒の流量を少なくすることができ、循環ポンプ5やブレイトンサイクル冷凍機6を小型化することができる。尚、本実施例は実施例2および実施例3に適用しても、同様の効果を得られることはいうまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、電力の送配電に使用される超電導ケーブルを極低温に冷却するための超電導ケーブル冷却システムに利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10