(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666133
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】非接触型処理キット
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20150122BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20150122BHJP
H01L 21/203 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
C23C14/00 B
C23C14/50 F
H01L21/203 S
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2009-543091(P2009-543091)
(86)(22)【出願日】2007年12月13日
(65)【公表番号】特表2010-513722(P2010-513722A)
(43)【公表日】2010年4月30日
(86)【国際出願番号】US2007087466
(87)【国際公開番号】WO2008079722
(87)【国際公開日】20080703
【審査請求日】2010年10月20日
(31)【優先権主張番号】60/870,752
(32)【優先日】2006年12月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン カール
(72)【発明者】
【氏名】バジャジ プニート
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−517809(JP,A)
【文献】
特開平11−229132(JP,A)
【文献】
米国特許第06051122(US,A)
【文献】
特開2006−140473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に円筒形であるシールドを含む処理キットであって、
シールドが、
内縁部へと下に向かってテーパーが付いた上面を有する実質的に平坦な円筒形本体部であって、
上面から下方へ延びる傾斜面と、
内縁部で傾斜面から下方へ延びるリップ部を含む円筒形本体部と、
細長い円筒形内方リング及び細長い円筒形外方リングであって、両者は本体部から下方向に、かつ内縁部から半径方向外側に延び、外方リングは内方リングと実質的に平行な離間関係にある細長い円筒形内方リング及び細長い円筒形外方リングと、
本体部の外壁部から本体部の上面より上方向へと延びる取付部とを含み、取付部は、本体部の外壁部を超えて半径方向外側に向かって延びる取付フランジと、本体部の上面から延びる内壁部と、内壁部から半径方向外側かつ上方向に広がる内方テーパー部とを有する処理キット。
【請求項2】
本体部が、ステンレススチール又はチタンの少なくとも1つから作製される請求項1記載の処理キット。
【請求項3】
本体部が、導電性材料から作製される又は導電性材料でコーティングされる請求項1記載の処理キット。
【請求項4】
本体部の内縁部が傾斜面を断ち切っており、内縁部が本体部の中心線と実質的に平行である請求項1記載の処理キット。
【請求項5】
実質的に円筒形である堆積リングを更に含み、
堆積リングが、
上面と、基板支持台座部の棚部上で支持されるように構成された下面とを有する実質的に平坦な円筒形本体部と、
本体部の外方部に連結された少なくとも1つの下方向に延び、シールドの内方リングと噛み合うように構成されているUチャネルと、
本体部の内方領域の上面から上方向に延び、基板支持面を有する内壁部と、
内壁部から半径方向内側に向かって延びる基板支持棚部とを含む請求項1記載の処理キット。
【請求項6】
実質的に円筒形である堆積リングを含み、
堆積リングが、
上面と、基板支持台座部の棚部上で支持されるように構成された下面とを有する実質的に平坦な円筒形本体部と、
本体部の外方部に連結された少なくとも1つの下方向に延びるUチャネルと、
本体部の内方領域の上面から上方向に延び、基板支持面を有する内壁部とを含む処理キット。
【請求項7】
堆積リングが更に、
内壁部から半径方向内側に向かって延びる棚部と、
棚部の上面に配置され、基板支持面を規定している複数のボタンとを含む請求項6記載の処理キット。
【請求項8】
複数のボタンが更に、
極性アレイに等間隔で配置された3つのボタンを含む請求項7記載の処理キット。
【請求項9】
Uチャネルが上向きである請求項6記載の処理キット。
【請求項10】
Uチャネルが更に、
堆積リングの本体部に連結された第1脚部と、
第1脚部から外方向に離間された第2脚部と、
これらの脚部を接合している底部とを含む請求項6記載の処理キット。
【請求項11】
本体部が、ステンレススチール又はチタンの少なくとも1つから作製される請求項10記載の処理キット。
【請求項12】
堆積リングの本体部が更に、
堆積リングの上面から上方向に延びるトラップ壁部と、
トラップ壁部から内方向下側に向かって延び、堆積リングの上面の内方部の上に張り出しているリップ部とを含む請求項6記載の処理キット。
【請求項13】
トラップ壁部の上面が更に、
頂点で外方傾斜壁部と交わる内方傾斜壁部を含む請求項12記載の処理キット。
【請求項14】
外方リングが、本体部の上面から上方向へ延びる取付部と直線的に揃っている請求項1記載の処理キット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明の実施形態は概して、半導体処理チャンバのための処理キット及び処理キットを有する半導体処理チャンバに関する。より具体的には、本発明は、物理気相蒸着チャンバにおける使用に適したリング及びシールドを含む処理キットに関する。
【0002】
(関連技術の説明)
物理気相蒸着(physical vapor deposition:PVD)又はスパッタは、電子デバイスの製造において最も一般的に用いられる処理の1つである。PVDは真空チャンバ内で行われるプラズマ処理であり、負のバイアスをかけたターゲットを比較的重い原子(例えば、アルゴン(Ar))を有する不活性ガスのプラズマ又はこのような不活性ガスを含むガス混合物に暴露する。不活性ガスのイオンがターゲットに衝突することによりターゲット材料の原子が弾き出される。弾き出された原子は、チャンバ内に配置された基板支持台座部上の基板上に堆積膜として蓄積される。
【0003】
処理キットをチャンバ内に配置して、チャンバ内の所望の領域における、基板に対しての処理領域の規定に役立てることができる。この処理キットは典型的には、カバーリング、堆積リング、接地シールドを含む。プラズマや弾き出された原子をこの処理領域内に限局することは、チャンバ内のその他の構成部品を堆積材料から保護することや、弾き出された原子がより高い割合で基板上に堆積されることからターゲット材料のより効率的な使用を促すことに役立つ。加えて、堆積リングは、基板支持台座部の外周上へのターゲット材料の堆積を防止する。カバーリングは一般に、堆積リング及び接地シールドとの間にラビリンス間隙を形成することで基板下での堆積を防止するのに用いられる。カバーリングは、基板縁部での又は基板下での堆積の制御を補助するために用いることもできる。
【0004】
慣用のリング及びシールドの構造でも手堅い処理ができてはいたが、限界寸法(critical dimension)の縮小に伴って、チャンバ内の汚染源への関心が高まりつつある。基板支持台座部が搬送位置と処理位置との間で上下する際にリングとシールドとが定期的に互いに接触するため、慣用の構造は微粒子による汚染の発生源となる可能性がある。
【0005】
更に、慣用のカバーリング構造は通常、温度制御源(チャンバ壁部又は基板支持台座部等)に連結されていないことから、カバーリングの温度が処理サイクル中に変動する場合がある。カバーリングが加熱されたり冷却されたりすることでカバーリング上に堆積された材料にかかる応力が増大してしまい、応力がかかった材料は剥離し、粒子を発生しやすくなる。従って、本発明の発明者は、チャンバ汚染を最小限に抑えるのに役立つ処理キットを有することが有利であるとの考えに至った。
【0006】
従って、当該分野において、改良された処理キットが求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は概して、物理気相蒸着(PVD)チャンバにおける使用のための処理キット及び噛み合い(インターリーブ)型処理キットを有するPVDチャンバを提供する。一実施形態において、処理キットは、噛み合わされる堆積リングと接地シールドとを含む。この堆積リングは、広い台座部接触面と複数の基板支持ボタンを有するように構成されている。PVDチャンバ内に取り付けると、噛み合わされた堆積リング、接地シールドと基板支持台座部、チャンバ壁部との接触が維持されることから温度制御が極めて良好かつ予測可能となり、その上に堆積される膜による処理中の汚染が実質的に最小限に抑えられ有利である。更に、噛み合わされた堆積リングと接地シールドは、PVDチャンバ内での使用中に接触しないように構成されているため、慣用の構成で見られた潜在的な粒子発生源とならず有利である。
【0008】
一実施形態において、本発明の処理キットは、実質的に平坦な円筒形本体部と、本体部から下方向に延びる少なくとも1つの細長い円筒形リングと、本体部の上面から上方向に延びる取付部とを有する概して円筒形であるシールドを含む。
【0009】
他の実施形態において、処理キットは、概して円筒形である堆積リングを含む。この堆積リングは、実質的に平坦な円筒形本体部と、本体部の外方部に連結された少なくとも1つの下方向に延びるUチャネルと、本体部の内方領域の上面から上方向に延びる内壁部と、内壁部から半径方向内側に向かって延びる基板支持棚部とを含む。
【0010】
更に他の実施形態において、PVDチャンバを提供し、このPVDチャンバは、PVDチャンバの使用中に接触しないように構成された、噛み合わされる接地シールドと堆積リングとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記で簡単に要約した本発明のより具体的な説明を実施形態を参照して行う。実施形態は添付図面に図示されている。しかしながら、添付図面は本発明の典型的な実施形態しか例示しておらず、本発明はその他の同等に効果的な実施形態も含み得ることから、本発明の範囲を制限するもと解釈されないことに留意すべきである。
【
図1】処理キットの一実施形態を有する半導体処理システムの簡略断面図である。
【
図2】
図1の基板支持台座部と界接した処理キットの部分断面図である。
【
図3】基板支持台座部と界接した処理キットの他の実施形態の部分断面図である。
【
図4】基板支持台座部と界接した処理キットの他の実施形態の部分断面図である。
【
図5】基板支持台座部と界接した処理キットの他の実施形態の部分断面図である。
【
図6】基板支持台座部と界接した処理キットの他の実施形態の部分断面図である。
【0012】
円滑な理解のために、可能な限り、図面で共通する同一要素は同一参照番号を用いて表した。一実施形態において開示された要素は、特記することなく他の実施形態において便宜上利用可能である。
【0013】
本発明は概して、物理気相蒸着(PVD)チャンバにおける使用のための処理キットを提供する。この処理キットは微粒子汚染を生じさせる可能性が低いため、チャンバ構成部品の寿命が長くなることに加え、処理均一性と再現性がより良好となり有利である。
【0014】
図1は、処理キット114の一実施形態を有する例示的な半導体処理チャンバ150を示す。処理キット114は、噛み合わされる堆積リング102と接地シールド162とを含む。本発明が有益となるように構成し得る処理チャンバの一例はIMP ベクトラ(IMP VECTRA、商標名)PVD処理チャンバであり、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアル社から入手可能である。その他の製造業者によるものを含む他の処理チャンバを、本発明が有益となるように構成することも考えられる。
【0015】
例示の処理チャンバ150は、排気可能な内部容積160を規定する底部154と、蓋アセンブリ156と、側壁部158とを有するチャンバ本体部152を含む。チャンバ本体部150は典型的には、ステンレススチールの溶接板又はアルミニウム単塊から作製される。側壁部158は一般に、基板104を処理チャンバ150内外に進入及び退出させるための密閉可能なアクセスポート(図示せず)を有している。側壁部158に設けられたポンピングポート122は、内部容積160の排気を行い、その圧力を制御するポンピングシステム120に連結されている。チャンバ150の蓋アセンブリ156は概して、環状シールド162を支持し、シールドは堆積リング102と噛み合うことで内部容積160内で発生したプラズマを基板104上方の領域に閉じ込めている。
【0016】
台座アセンブリ100は、チャンバ150の底部154によって支持されている。台座アセンブリ100は、処理中、基板104と共に堆積リング102を支持している。台座アセンブリ100は、チャンバ150の底部154に昇降機構118によって連結されており、昇降機構は、台座アセンブリ100を(図示の)上方位置と下方位置との間で移動させるように構成されている。上方位置において、堆積リング102はシールド162と離間関係でもって噛み合わされる。下方位置では、堆積リング102がシールド162から離脱するため、基板104をリング102とシールド162との間から側壁部158に設けられたアクセスポートを通してチャンバ150から取り出すことができる。加えて、下方位置では、昇降(リフト)ピン(
図2に図示)が台座アセンブリ100内を移動して基板104を台座アセンブリ100から浮かせるため、処理チャンバ150の外部に設置されたウェハ搬送機構(例えば、単翼ロボット等。図示せず)を用いた基板104の交換が円滑に行われる。典型的には蛇腹部186が台座アセンブリ100とチャンバ底部154との間に配置されており、チャンバ本体部152の内部容積160を台座アセンブリ100の内部とチャンバ外部から隔離している。
【0017】
台座アセンブリ100は、通常、プラットフォームハウジング108に密閉連結された基板支持体140を含む。プラットフォームハウジング108は典型的には、ステンレススチール又はアルミニウム等の金属材料から作製される。冷却板124は通常、プラットフォームハウジング108内に配置され、基板支持体140の熱制御を行う。本発明が有益となるように構成し得る台座アセンブリ100の一例が、ダヴェンポート(Davenport)らに1996年4月16日に発行された米国特許第5507499号に記載されている。
【0018】
基板支持体140は、アルミニウム又はセラミックを含んでいてよい。基板支持体140は静電チャック、セラミック体、ヒータ又はこれらの組み合わせであってよい。一実施形態において、基板支持体140は、導電層112を埋設した誘電体106を含む静電チャックである。誘電体106は典型的には熱伝導率が高い誘電材料から作製され、そのような材料としては熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、アルミナ又は同等の材料が挙げられる。
【0019】
蓋アセンブリ156は通常、蓋部130と、ターゲット132と、スペーサ182とマグネトロン134とを含む。
図1に図示されるように、閉鎖位置にある場合、蓋部130は側壁部158によって支持される。スペーサ182、蓋部130、側壁部158の間には、その間からの真空漏れを防止するためにシール136が配置されている。
【0020】
ターゲット132は蓋部130に連結され、処理チャンバ150の内部容積160に露出している。ターゲット132が、PVD処理中に、基板104上に堆積させる材料を供給する。スペーサ182がターゲット132、蓋部130、チャンバ本体部152の間に配置されており、ターゲット132を蓋部130及びチャンバ本体部152から絶縁している。
【0021】
ターゲット132及び台座アセンブリ100は、電源184によって互いにバイアス印加されている。アルゴン等のガスをガス供給源(図示せず)から内部容積160に供給する。プラズマは、基板104とターゲット132との間でガスから形成される。プラズマ内のイオンはターゲット132に向かって加速して進み、材料をターゲット132から剥がす。剥がれたターゲット材料は基板104上に堆積される。
【0022】
マグネトロン134は、処理チャンバ150の外側で蓋部130に連結されている。マグネトロン134は少なくとも1つの回転磁石アセンブリ138を含み、この回転磁石アセンブリが、PVD処理中、ターゲット132の均一な消費を促す。利用し得るマグネトロンの一例が、オール(Or)らに1999年9月21日に発行された米国特許第5953827号に記載されている。
【0023】
ヒンジアセンブリ110は、蓋アセンブリ156を処理チャンバ150に連結している。モータ駆動のアクチュエータ116をヒンジアセンブリ110及び/又は蓋部130に連結することで、蓋アセンブリ156の開放部位と閉鎖部位との間での動きを円滑にしてもよい。
【0024】
図2は、基板支持台座アセンブリ100と界接した処理キット114の部分断面図である。図示はしていないが、処理キット114のシールド162は、蓋アセンブリ156に対して一定の高さでもってチャンバ本体部152に取り付けられている。上昇つまり処理位置にある堆積リング102が図示されており、ラビリンス間隙250が、堆積リング102と接地シールド162との間に規定され、プラズマ及び堆積種を基板104とターゲット132との間に規定された領域内に閉じ込めている。堆積リング102及び接地シールド162は更に、ターゲット132から弾き出された材料がチャンバのその他の部位上に偶発的に堆積するのを防止するバリアにもなる。このため、堆積リング102及び接地シールド162は、ターゲット132から基板104上に堆積させる材料層への効率的な転化を促す。
【0025】
接地シールド162は、平坦で実質的に円筒形である本体部202を有し、金属等の導電性材料から作製する及び/又は導電性材料をコーティングすることができる。接地シールド162としての使用に適した金属には、ステンレススチール及びチタンその他が含まれる。接地シールド162用の材料は、チャンバ内で行う処理に適合可能なものを選択すべきである。本体部202は、本体部202の中心線と台座アセンブリ100の中心線とが実質的に同心となるようにチャンバ本体部152に取り付けられる。
図2の実施形態に図示の本体部202の中心線200は、実質的に垂直方向を向いている。中心線200の位置は、図面のその他の特徴要素と同様に単なる例示に過ぎず、縮尺通りではない。
【0026】
本体部202は、上面204と、下面206と、外壁部220と内縁部224とを含む。
図2に図示の実施形態において、上面204及び下面206は中心線200に対して実質的に直角である。ただし、本体部202の内縁部224に向かって下方向に傾斜している、上面204の傾斜面226は除く。
【0027】
内方及び外方リング208、210が、下面206から下方向に延びている。リング208、210は概して、(本体部202の全体形状と比較すると)細長い円柱である。
図2に図示の実施形態において、リング208、210は、概して平行である、離間関係に配置されている。また、外方リング210の外径は、外壁部220の外径と同じであってよい。
【0028】
取付部212は、上面204から外壁部220に沿って上方向に延びている。取付部212は、内壁部214と、内方テーパー部216と、外壁部222と取付フランジ218とを含む。内壁部214は上面204から実質的な垂直方向でもって上方向に内方テーパー部216へと延びている。内方テーパー部216は、上方向外側に向かって延び、シールド162とターゲット130との間に空間を形成している(
図1に図示)。外壁部222は通常、本体部202の外壁部220の外径よりも大きい直径を有している。
【0029】
取付フランジ218は、外壁部222から外方向に延び、本体部152及び/又は蓋アセンブリ156と係合することでシールド162を正しい位置に固定する。取付フランジ218は、本体部152及び/又は蓋アセンブリ156との連結を円滑に行うための複数の穴及び/又はスロットを含んでいてよい。シールド162を取り付ける本体部152及び/又は蓋アセンブリ156は熱調節されているため、取付フランジ218の温度制御が伝導により可能になる。
【0030】
接地シールド162の一部にコーティングやテクスチャ加工を施したり、別の形で処理を施してもよい。一実施形態において、接地シールド162の少なくとも一部の表面は粗面化される。粗面化(例えば、テクスチャ加工)は、適した処理の中でもとりわけエッチング、エンボス加工、研磨、ビードブラスト、グリットブラスト、研削又はサンディングによって達成することができる。
図2に図示の実施形態において、接地シールド162の表面は全て、ビードブラスト加工されている。接地シールドのビードブラスト加工された表面は通常、約250マイクロインチ以上のRA表面仕上げとなる。
【0031】
堆積リング102は、平坦で実質的に円筒形である本体部252を有しており、導電性又は非導電性の材料から形成することができる。一実施形態において、堆積リング102は、石英、酸化アルミニウム等のセラミック材料又はその他の適した材料から作製される。
【0032】
本体部252は通常、外方部274と、内方部276と、下面256と上面254とを含む。上面254は、シールド162とリング102とが互いに近接して位置決めされた場合にシールド162のリップ部228を納める凹部258を含む。下面256は、台座アセンブリ100の外周上に形成された棚部240上に載るように構成されている。下面256を平坦にする及び/又は下面256に滑らかな表面仕上げを施して、棚部240との良好な熱接触を促してもよい。下面256と棚部240との接触面積は(慣用の構成より)比較的広く、本体部252のリング断面部が比較的薄いこともあり、リング102と台座アセンブリ100との間の熱伝達が極めて良好となる。このため、リング102の温度は、台座アセンブリ100との熱伝達を通して容易に一定に保たれる。
【0033】
一実施形態において、1つ以上の温度制御素子246を台座アセンブリ100内の棚部240の真下に配置して、基板104の温度制御に利用する台座アセンブリ100の特徴要素とは独立してリング102の温度制御を強化してもよい。温度制御素子246には、熱伝達流体を流すための1本以上の導管、抵抗加熱素子等が含まれる。温度制御素子246の出力は、1つ以上の適切な温度制御源248(電源、熱伝達流体供給源その他等)によって制御される。
【0034】
内壁部260は、内方部276から上方向に基板支持フランジ262へと延びている。内壁部260は、壁部260と、棚部240を台座アセンブリ100の上面244へと連結している段差部242との間に間隙が維持されるような内径を有している。内壁部260は、リング102のフランジ262と、台座アセンブリ100の上面244との間に間隙が維持されるような高さを有している。
【0035】
基板支持フランジ262は、内壁部260の上端部から内方向に延び、台座アセンブリ100の上面244の外縁部を覆っている。一実施形態において、フランジ262は概して、内壁部260に直角であり、下面及び上面256、254に平行である。フランジ262は複数の基板支持ボタン264を含み、ボタンは、基板104をフランジ262の上面の上方に離間して支持している。ボタン264は丸みを帯びた形状、円筒形状、円錐台形状又はその他の適切な形状を有し得る。ボタン264により、基板104とリング102との接触が最小限に抑えられる。ボタン264と基板104との接触が最小限であるため、リング102と基板104との間での熱伝達を最小限に抑えつつ、粒子発生の可能性が低下する。一実施形態においては、3つのボタン264を極性アレイに対称的に配置し、ボタンは約1mmの高さを有する。
【0036】
上向きのUチャネル266は概して、本体部274の外方部274に形成される。Uチャネル266は、底部270によって外方脚部272に連結された内方脚部268を有している。内方脚部268は、本体部252の下面256から下方向に延びており、台座アセンブリ100とリング102との間に間隙が維持されるような内径を有している。
【0037】
脚部268、272は概して、(リング102の本体部252と比較すると)細長い円柱である。
図2に記載の実施形態において、脚部268、272は、概して平行な離間関係でもって配置されており、接地シールド162の内方リング208と噛み合うように構成されている。
【0038】
脚部268、272と内方リング208との間隔が、ラビリンス間隙250の外方領域を規定する。ラビリンス間隙250の内方領域は、シールド162のリップ部228と、堆積リング102の壁部260及び凹部258との間に規定される。リップ部228と堆積リング102との間隔は、台座アセンブリ100に面している側の基板104上への堆積が促進される又は最小限に抑えられるように選択する。
【0039】
ラビリンス間隙250の内方領域への入り口は基板104によって部分的に覆われ、内部容積160におけるスパッタされたターゲット材料の軌道とは反対方向を向いているため、ラビリンス間隙250内での堆積物の蓄積及びブリッジングが慣用の構成よりも起こりにくく、処理キット114の次の洗浄までの耐用期間が長くなる。更に、処理キット114の堆積リング102及び接地シールド162は決して接触しないため、粒子発生の潜在的な原因が排除される。更に、処理キット114の堆積リング102及び接地シールド162は、その支持構造体(例えば、台座アセンブリ100、チャンバ本体部152/蓋アセンブリ156)と良好な熱接触を維持することから、キット114の熱制御性が向上する。熱制御性の向上により、キット114上に堆積される膜にかかる応力の管理が可能になり、慣用の構成よりも粒子の発生が少なくなる。
【0040】
図3は、基板支持台座部100と界接した処理キット300の他の実施形態の断面図である。処理キット300は通常、堆積リング302と接地シールド304とを含み、これらが噛み合ってラビリンス間隙350を形成している。
【0041】
接地シールド304は概して、上記の接地シールドと同様である。
図3に図示の実施形態において、シールド304は、上面308と、下面310と、内縁部312と外壁部314とを有する円筒形本体部306を含む。上面308は、傾斜面316を含む。本体部306の下面310は、内方及び外方リング208、210を含む。一実施形態において、内縁部312は、傾斜面316を実質的に断ち切っている。
【0042】
堆積リング302は概して、上記の堆積リングと同様であり、リング302の上面254上に形成されたトラップ352が追加されている。トラップ352は、リング302のトラップ壁部360と上面254との間に規定されている。
【0043】
トラップ壁部360は、リング302の上面254から上方向にリップ部356へと延びるリング354を含む。リップ部356は、内壁部260と上面254との合流点に向かって内方向下側に延びている。リップ部356の遠位端は概して、リップ部356のリング354に隣接した部位よりも上面254に近いため、トラップ352の上限は、リップ部356の遠位端よりも高い位置にある。この幾何学的構成により堆積材料の捕捉が円滑に行われ、堆積物が蓄積されないことから、リップ部356と基板104との間に規定された間隙のブリッジングが防止される。
【0044】
一実施形態において、リング354の上面は内方傾斜壁部264と外方傾斜壁部262とを含み、これらは頂点366で交わる。内方傾斜壁部264は、頂点366からリップ部356へと下方向に延びている。外方傾斜壁部262は、頂点366から外方トラップ壁部368へと下方向に延びている。堆積リング302の外方傾斜壁部262と、シールド304の内縁部312とが、内部容積160の処理領域からのラビリンス間隙350への入り口を規定している。
【0045】
図3の処理キット300は、トラップ352を介したエッジ堆積制御部と、ラビリンス間隙350を介したプラズマ分離特徴要素とを切り離している。加えて、この実施形態では製造コストを削減できるが、これはシールド304の内径と外径との間の距離が大幅に縮小されるものの、シールドと噛み合う堆積リング302を作製するのに必要な材料はそれほど増大しないからである。
【0046】
図4は、基板支持台座部100と界接した処理キット400の他の実施形態の断面図である。処理キット400は通常、堆積リング402と接地シールド404とを含み、これらが噛み合ってラビリンス間隙450を形成している。
【0047】
接地シールド404は概して、
図1、2と関連した上記の接地シールドと同様である。
図4に図示の実施形態において、シールド404は、上面408と、下面410と、内縁部412と外壁部414とを有する平坦な円筒形本体部406を含む。上面408は傾斜面416を含む。本体部406の下面410は、円筒形リング418を含む。
【0048】
円筒形リング418は下方向外側に向かって延び、堆積リング402と噛み合っている。
図4に図示の実施形態において、リング418のシールド404の中心線に対する方向は約5〜約35度である。
【0049】
堆積リング402は概して、上記の堆積リングと同様であり、傾斜のあるUチャネル420が追加されている。Uチャネル420は、底部426によって外方脚部424に連結された内方脚部422を含む。脚部422、424のリング402の中心線に対する方向は約5〜約35度である。
図4に記載の実施形態において、脚部422、424は、シールド404の円筒形リング418と同じ角度で方向付けされている。
【0050】
外方脚部424の遠位端の内径としては通常、外方脚部424の遠位端がリング418の遠位端に触れずに通り越せるようなものが選択され、これにより台座アセンブリ100を降下させてもシールド404と堆積リング402とが支障をきたすことなく分離し、基板の交換が円滑に行われる。
図4に図示されるような処理位置に台座アセンブリ100を上昇させると、脚部422、424とリング418とがラビリンス間隙450の外方部を規定する。
【0051】
任意で、延長部430(仮想線で表示)を外方脚部424の遠位端に形成してもよい。延長部430によりラビリンス間隙450が長くなり、かつ方向転換部が更に追加される。延長部430は、フランジ432と末端リング434とを含む。フランジ432は、外方脚部424の遠位端から外方向に末端リング434まで延びている。末端リング434は、台座アセンブリ100が図示したような上昇位置にある場合にシールド404の外壁部414を離間関係でもって取り囲むような内径を有している。
【0052】
図4の処理キット400は経済的に製造でき、上述したように慣用の構成より有利である。
【0053】
図5は、基板支持台座部100と界接した処理キット500の他の実施形態の断面図である。処理キット500は通常、堆積リング502と接地シールド504とを含み、これらが噛み合ってラビリンス間隙550を形成している。
【0054】
接地シールド504は概して、
図3、4に関連した上記の接地シールドと同様である。
図5に記載の実施形態において、シールド504は、上面308と、下面310と、内縁部312と外壁部314とを有する円筒形本体部506を含む。上面308は、傾斜面316を含む。本体部306の下面310は、円筒形リング418を含む。円筒形リング418は下方向外側に向かって延び、堆積リング502と噛み合っている。
【0055】
堆積リング502の内方部は概して、
図3に関連した上記の堆積リング302と同様である。リング502は、リング502の上面254上に形成されたトラップ352を含む。トラップ352は、トラップ壁部360と上面254との間に規定される。トラップ壁部360は、リング354と、リップ部356と、頂点366で交わる傾斜壁部262、264とを含む。
【0056】
堆積リング502の外方部は概して、
図4に関連した上記の堆積リング402と同様である。リング502は、傾斜のあるUチャネル420を含む。Uチャネル420は、底部426によって外方脚部424に連結された内方脚部422を含む。脚部422、424は、上述したように、シールド504の円筒形リング418と噛み合うように構成されている。
【0057】
図6は、基板支持台座部100と界接した処理キット600の他の実施形態の断面図である。処理キット600は通常、堆積リング620と接地シールド662とを含み、これらが噛み合ってラビリンス間隙650を形成している。堆積リング620及びシールド622は、上記の堆積リング102及び接地シールド162と実質的に同様であることから、同様の特徴要素には同じ参照番号をふってあり、簡潔にするために詳細な説明は省略している。
【0058】
図6に図示の実施形態において、堆積リング620の内壁部260は、基板支持端部622を有している。基板支持端部622は、内壁部260から半径方向内側に向かって延びてはいない。基板支持端部622は基板載置面となり、基板104を台座アセンブリ100の表面244の上方で支持するように構成され、一実施形態においては、実質的に平坦かつリング620の中心線に対して直角である。一実施形態において、内壁部260の高さは約0.45インチである。内壁部260と堆積リングフランジ262の下面256との交差部に面取りを施して(例えば、角度45度)、台座アセンブリ100との間に追加の空間を設けてもよい。
【0059】
図6に図示の実施形態において、破線624で示したように、堆積リング620のその上面にテクスチャ加工を施すこともできる。テクスチャ加工した表面により、リング620上に堆積される材料の付着性が向上し、堆積した材料の粒子又は薄片がリング620から簡単に脱落して処理中に処理汚染物質となることがない。このような付着堆積材料は、インシチュ及び/又はエクスシチュの洗浄法を利用してリング620から除去することができる。一実施形態において、リングは上記のようにテクスチャ加工される。
【0060】
接地シールド662は、上方外径604に形成された、段差部606を有する取付部212を含む。段差部606が、外径604を、実質的に水平である上面602へとつないでいる。移行アール部608が、接地シールド662の外壁部222を上方外壁部604へとつないでいる。
【0061】
リップ部610は、
図6に図示されるように、上方外壁部604から下方向に移行アール部608を越えて延びている。リップ部610により、処理チャンバと接地シールド662との間の接触面積が小さくなる。
【0062】
破線654で示されるように、接地シールド662の上部内方面にもテクスチャ加工を施してよい。上述したように、接地シールドの表面にテクスチャ加工を施すことにより堆積材料の付着性が向上し、後に処理汚染物質となることがない。
【0063】
接地シールド662のリップ部228は、リップ部228とシールド本体部202の下面206との間の移行部に形成された凹部612も含んでいてよい。凹部612によりシールド662とリング620との間に更に空間ができ、リング620の凹部258内に堆積された大量の材料に対応することができる。
【0064】
上記の処理キットと同様に、
図6の処理キット600は経済的に製造することができ、上述したように、慣用の構成よりも有利である。
【0065】
従って、PVD処理チャンバ用の処理キットについて説明してきたが、この処理キットの接地シールドと堆積リングは稼動時に接触しないことから微粒子の発生の可能性が低く、有利である。更に、このキットのシールドとリングは温度制御された面との接触を維持するため、処理キットの温度を制御して熱サイクリングを軽減し及び/又は排除し、処理キット上に堆積される材料における応力を管理することができる。更に、本発明の処理キットは、コンパクトな構成と慣用の処理キットに存在した第3のリングを排除したことにより、製造コストの点で魅力的である。
【0066】
上記は本発明の好ましい実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明のその他及び更に他の実施形態を創作することができ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲に基づいて定められる。