(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、前記スペーサー部分を過ヨウ素酸および/または過ヨウ素酸塩にて酸化してホルミル基に変換するホルミル基含有多孔質担体の製造方法において、スペーサー導入後の多孔質粒子のホルミル基含量が多孔質粒子1mLあたり3μmol以下であることを特徴とする、ホルミル基含有多孔質担体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、前記スペーサー部分を過ヨウ素酸および/または過ヨウ素酸塩にて酸化してホルミル基に変換するホルミル基含有多孔質担体の製造方法において、スペーサー導入後の多孔質粒子のホルミル基含量が多孔質粒子1mLあたり3μmol以下であることを特徴とする。これにより、アフィニティーリガンド導入後の吸着体において、リガンドの溶出量が少なく、且つロット間のばらつきを抑制することができ、また目的物の吸着量が大きな吸着体を得ることが出来る。
【0030】
リガンドのリークを抑制するために、リガンド固定化後の還元反応の検討が一般に考えがちであるが、その検討だけでなく、本発明者らは、リガンドを導入するためのホルミル基含有多孔質担体の前駆体の段階、すなわちホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基の処理に着眼点をおいた。すなわち、処理できずに残った多孔孔質粒子のホルミル基が溶出の原因となっているのではないかと考えた。
【0031】
ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、スペーサー導入反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基を処理する方法を検討した結果、スペーサー導入後の担体において、ホルミル基が存在しない又はホルミル基含量が担体1mLあたり3μmol以下の含有量である多孔質担体が得られた。このようなスペーサー導入後の多孔質担体を用いてホルミル基含有多孔質担体を製造した結果、驚くべきことに、アフィニティーリガンド導入後の吸着体において、リガンドの溶出量が少なく、且つロット間のばらつきを抑制することができた。これにより、精製の後工程の煩雑さが軽減され、また抗体医薬精製に用いた場合においては、抗体医薬品の安全性を高めることができる。
【0032】
スペーサー導入後の担体における、好ましいホルミル基含有量は、担体1mLあたり0μmol以上3μmol以下、より好ましくは0μmol以上2μmol以下、さらに好ましくは0μmol以上1μmol以下、特に好ましくは0μmol以上0.5μmol以下、最も好ましくは0μmol以上0.3μmol以下である。
【0033】
本発明の多孔質担体、及び吸着体にスペーサーとして導入される化合物は、特に限定なく用いることができるが、リガンドの溶出量がより少なくなることから、環構造を有していることが好ましい。環構造を有する化合物としては特に限定は無いが、例えば、シクロペンタンやシクロヘキサン等に代表される炭素のみで構成される5員環乃至6員環や、フラノースあるいはピラノース等に代表される、糖または糖類似物が挙げられる。なかでも、入手が容易である等の理由から、糖または糖類似物であることが好ましい。また、多孔質担体とアフィニティーリガンドの結合がより強固になる、および/またはアフィニティーリガンドが解離し難くなるという観点から、糖が還元糖であることがより好ましい。
【0034】
本発明の多孔質担体において、スペーサーとして導入される化合物は、特に限定なく用いることができるが、ホルミル基の導入方法として過ヨウ素酸酸化法等を用いる場合において、エカトリアル位に水酸基を有する炭素原子が連続して存在している部分を有し、エカトリアル位に水酸基を有する炭素原子の連続している数が2または3であることが好ましい。
【0035】
本発明の多孔質担体において、スペーサーを導入する方法として、ホルミル基含有多孔質粒子と、スペーサーとして導入される化合物が有している官能基間の反応を利用することが好ましい。ホルミル基含有多孔質粒子の官能基、スペーサーとして導入される化合物の官能基については、それぞれ特に限定は無く、互いに反応しあう組み合わせを用いることが好ましく、間に他の化合物を介していることも好ましい。ホルミル基含有多孔質粒子のホルミル基を利用する場合は、スペーサーとして導入される化合物はホルミル基と反応しうる官能基を有していることが好ましい。ホルミル基と反応する官能基としては、ホルミル基と反応するものであれば特に限定は無いが、一般的にはアミノ基が挙げられ、好適である。すなわち、本発明の多孔質担体にスペーサーとして導入される化合物は、アミノ基を含有することが、より好ましく、スペーサーとして導入される化合物が糖である場合は、アミノ糖であることが好ましい。
【0036】
また、ホルミル基を含有する多孔質粒子に、1,2−グリコール構造を有する1級、あるいは2級アミンを、pH7〜11の範囲で縮合させ、及び/又は、形成した結合を還元反応によって安定化すると、驚くべき事に、1,2−グリコール構造を、効率良く担体に導入できることを本発明者らは見出した。前記pHの範囲は8〜10であることがより好ましく、pHが8.5〜9.5であることが特に好ましい。
【0037】
本発明の多孔質粒子にスペーサーとして導入できるアミノ基含有糖(アミノ糖)としては、特に限定は無いが、グルコサミン、ガラクトサミン、アンノサミン、ラクトサミン、フコサミン、マンノサミン、メグルミン、アロサミン、アルトロサミン、リボサミン、アラビノサミン、グロサミン、イドサミン、タロサミン、キシロサミン、リキソサミン、ソルボサミン、タガトサミン、サイコサミン、フルクトサミン、イミノシクリトール、ムコ多糖類、糖タンパク類、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン、コンドロイチン4−硫酸、デルマタン硫酸、およびこれらのD体、L体、ラセミ体、これらを構成成分として含む多糖,ポリマー、糖脂質等のから選択される一種以上のもの、あるいはこれらの塩酸塩等の塩、等を挙げることができる。なかでも、本発明の多孔質担体にスペーサーとして導入される糖が、グルコサミン及びその誘導体であることが、より好ましい。
【0038】
本発明の多孔質担体にスペーサーとして導入できるグルコサミンとしては、特に限定は無いが、D体であることがより好ましい。また本発明に使用できるグルコサミンの製造方法は、特に限定は無いが、グルコース等を化学修飾することにより得られるもの、甲殻類等の甲羅、キチン、キトサン等の由来物も使用できるが、抗体医薬品精製用として用いる場合は、植物性化合物等から得られうるグルコサミン、例えば、協和発酵社製のいわゆる発酵グルコサミンとして知られているもの等であることが好ましい。また本発明に使用できるグルコサミンは塩酸塩等の塩であることも、溶解性の観点から好ましい。
【0039】
また、本発明の多孔質担体にスペーサーとして導入される糖または糖類似物の導入量は、多孔質担体1mLあたり、1μmol以上500μmol以下であることが好ましい。糖または糖類似物の導入量が多孔質担体1mLあたり、1μmol以上であれば、吸着体として使用した場合に、目的物の吸着量が大きくなるため好ましく、500μmol以下であれば、本発明の多孔質担体の製造コストを抑制できるため好ましい。糖または糖類似物のより好ましい導入量は多孔質担体1mLあたり、2μmol以上250μmol以下、さらに好ましくは4μmol以上125μmol以下、特に好ましくは6μmol以上50μmol以下、最も好ましくは8μmol以上25μmol以下である。糖または糖類似物の導入量は、導入反応終了後の反応溶液中の糖または糖類似物の減少量を測定する方法、反応後の多孔質担体への滴定法(非水滴定等)や、元素分析法等によって、求めることができる。
【0040】
また、ホルミル基含有多孔質粒子に、スペーサーとして導入される化合物を導入する際、スペーサーとして導入される化合物の使用量に特に限定は無いが、より適切な導入量を得るため、多孔質担体の当該官能基含量の0.01倍モル以上であることが好ましく、および/または廃液処理や効率の観点から、100倍モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.1倍モル以上50倍モル以下、さらに好ましくは0.5倍モル以上20倍モル以下、特に好ましくは1倍モル以上10倍モル以下である。
【0041】
スペーサーとして導入される化合物を多孔質粒子に導入する際の溶媒については特に限定は無いが、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン等の汎用有機溶媒や、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコールや、これらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0042】
また、反応液のpHについては特に限定は無いが、反応効率の観点から、pH3以上で反応させることが好ましく、官能基の失活や多孔質担体へのダメージが少ないという理由からpH13以下であることが好ましく、より好ましくはpH4以上12以下、特に好ましくはpH6以上11以下、最も好ましくはpH7以上11以下である。
【0043】
また、スペーサーとして導入される化合物を導入する際の温度については特に限定は無いが、反応速度的に有利であるという理由から0℃以上であることが好ましく、安全性や担体へのダメージの観点から100℃以下であることが好ましく、官能基が失活し難いという理由から70℃以下であることがより好ましく、より好ましくは4℃以上50℃以下、さらに好ましくは4℃以上30℃以下、特に好ましくは10℃以上25℃以下、最も好ましくは12℃以上18℃以下である。
【0044】
また導入反応は攪拌または振とうしながら行うことが好ましく、その1分間当りの回転数または回数は、特に限定は無いが、均一攪拌が可能で、且つ担体に物理的なダメージが加わらないという理由から、1回以上1000回以下であることが好ましく、より好ましくは10回以上500回以下、さらに好ましくは30回以上300回以下、特に好ましくは50回以上200回以下、最も好ましくは75回以上150回以下であるが、各原料の比重の差や担体の強度に合わせて調整することが特に好ましい。
【0045】
スペーサーとして導入される化合物を多孔質担体に導入する反応時間については、特に限定は無いが、反応性や担体へのダメージが少ないという理由から、0.2時間以上100時間以下、より好ましくは0.5時間以上50時間以下、さらに好ましくは1時間以上24時間以下、特に好ましくは2時間以上15時間以下、最も好ましくは3時間以上10時間以下であるが、反応性や、pHや、反応温度に合わせて調整することが好ましい。
【0046】
また、本発明の多孔質担体は、ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基を処理することによって得られる。
【0047】
ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基を処理する方法としては、特に限定は無いが、還元剤で処理する方法、熱処理する方法、アルカリで処理する方法、ブロッキング剤で処理する方法などが挙げられる。
【0048】
還元剤で処理する方法としては、特に限定は無いが、テトラヒドロホウ酸ナトリウム等のテトラヒドロホウ酸塩を作用させて処理する方法が好ましい。還元処理する際の溶媒としては、特に限定はないが、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン等の汎用有機溶媒や、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコールや、これらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0049】
還元処理する際のpHについては特に限定は無いが、安全性の問題から、pH7以上であることが好ましい。また、担体およびスペーサーへのダメージを軽減できるため、pH12以下が好ましく、より好ましくは、pH9以上12以下、さらに好ましくは、pH11以上12以下である。
【0050】
また、還元処理温度については、特に限定がないが、反応速度的に有利であるという点から0℃以上が好ましく、安全性や担体およびスペーサーへのダメージの観点から100℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、4℃以上70℃以下、特に好ましくは10℃以上50℃以下、最も好ましくは10℃以上40℃以下である。
【0051】
還元処理する時間については、特に限定は無いが、官能基の失活や担体へのダメージが少ないという理由から、0.01時間以上50時間以下、より好ましくは0.1時間以上25時間以下、さらに好ましくは0.25時間以上10時間以下、特に好ましくは0.25時間以上5時間以下、最も好ましくは0.5時間以上2時間以下であるが、反応性や、pHや、反応温度に合わせて調整することが好ましい。
【0052】
還元回数は、特に限定はないが、ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基を完全に処理するという観点から、1回以上が好ましい。また、20回以下であれば担体およびスペーサーへのダメージが軽減できる。より好ましくは2回以上15回以下、さらに好ましくは2回以上10回以下、最も好ましくは3回以上7回以下である。
【0053】
還元剤の濃度については特に限定はないが、ホルミル基を処理する効率の観点から、0.0001M以上が好ましく、安全性の問題から2M以下であることが好ましく、より好ましくは、0.001M以上1M以下、さらに好ましくは0.01以上0.5M以下、特に好ましくは、0.02M以上0.25M以下、最も好ましくは0.05M以上0.1M以下である。
【0054】
ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基を熱処理する方法としては、特に限定はないが、反応速度的に有利であるという点から50℃以上が好ましく、担体およびスペーサーへのダメージの観点から150℃以下であることが好ましく、より好ましくは50℃以上130℃以下、さらに好ましくは80℃以上130℃以下である。
【0055】
ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基をアルカリで処理する方法としては、pHについては特に限定は無いが、pH10以上であると、効率良く処理できるため好ましい。pH13以下であると、担体およびスペーサーへのダメージを軽減できるため好ましい。さらに好ましくは、pH10以上pH12以下、特に好ましくは、pH11以上pH12以下である。
【0056】
ホルミル基を有する多孔質粒子にスペーサーを導入した後、反応に使われなかった多孔孔質粒子のホルミル基を封止剤で処理する方法としては特に限定は無いが、封止剤が多孔質担体上の活性基と反応する官能基を含有する低分子化合物であることが好ましい。低分子化合物であるほど、立体障害が少ないため、効率よく封止反応が進行する。なかでも、アミノ基を含有する低分子化合物を用いることが好ましく、これの一例として、リジン、グリシンやモノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等を挙げることができる。
【0057】
本発明の多孔質粒子に、スペーサーを導入した後、このスペーサー上にホルミル基を導入する方法として、過ヨウ素酸酸化法を挙げることができる。
【0058】
本発明で使用できる過ヨウ素酸および/または過ヨウ素酸塩等に特に限定は無いが、過ヨウ素酸ナトリウムや過ヨウ素酸カリウム等の過ヨウ素酸塩を作用させて、ホルミル基を導入することが好ましい。
【0059】
また、本発明の多孔質担体のホルミル基含量は、多孔質担体1mLあたり0.5μmol以上100μmol以下であることが好ましい。ホルミル基含量が多孔質担体1mLあたり0.5μmol以上であれば、アフィニティーリガンドを効率よく固定化でき、吸着体として用いた場合に、目的物の吸着量が大きくなるため好ましい。また、理由は定かではないが、驚くべきことに、ホルミル基含量が多孔質担体1mLあたり100μmol以下であれば、目的物の吸着量が大きくなりやすいため、好ましい。また、過ヨウ素酸および/または過ヨウ素酸塩を作用させてホルミル基を導入する方法を用いる場合、多孔質担体1mLあたりのホルミル基含量が100μmol以下であれば、多孔質担体の強度が大きくなりやすいため好ましい。
【0060】
ホルミル基含量のより好ましい範囲は多孔質担体1mLあたり1μmol以上50μmol以下であり、さらに好ましくは1μmol以上25μmol以下であり、特に好ましくは1μmol以上10μmol以下であり、最も好ましくは、2μmol以上7μmol以下である。ホルミル基含量は、特に限定は無いが、例えば、ホルミル基導入反応の、時間、温度、過ヨウ素酸および/または過ヨウ素酸塩等のホルミル化剤の濃度などによって、ホルミル基含量を調整することができる。
【0061】
ホルミル基含量の測定は、ホルミル基含有多孔質担体に、フェニルヒドラジン溶液を加え、40℃で1時間撹拌し、反応後の上澄みの吸収スペクトルをUVで測定し、フェニルヒドラジンの検量線からフェニルヒドラジン減少量を測定ことによって、ホルミル基含量を求めることが出来る。
【0062】
本発明者らは鋭意研究の結果、理由は定かではないが、酸を加えてpHを1〜6の範囲に調整された液中で、過ヨウ素酸、またはその塩を作用させて得られたホルミル基含有多孔質担体に、アミノ基含有リガンドを固定化し、吸着体とすると、驚くべき事に、目的物の吸着量が大きくなり、またアミノ基含有リガンドのリーク量が小さくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0063】
即ち本発明は、酸を加えてpHを1〜6の範囲に調整された液中で、過ヨウ素酸、またはその塩を作用させて得られたホルミル基含有多孔質担体に、アミノ基含有リガンドを固定化することを特徴とする吸着体の製造方法を提供する。
【0064】
前記過ヨウ素酸の塩としては特に限定は無く、過ヨウ素酸ナトリウムや過ヨウ素酸カリウム等を好適に用いることができる。
【0065】
また、本発明に使用できる前記酸については特に限定は無いが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、またはその塩等を用いることができる。また、クエン酸、酢酸、酒石酸、フタル酸、フマル酸、オレイン酸、乳酸、ラウリン酸等の有機酸、またはその塩を用いると、反応液のpHの緩衝効果が得られるため、より好ましい。
【0066】
前記過ヨウ素酸、またはその塩を作用させるpHの範囲は2〜5であることが好ましい。より好ましくは、pH2〜4.5、特に好ましくはpH2〜4である。
【0067】
前記過ヨウ素酸、またはその塩の濃度は、5mM以上300mM以下であることが好ましい。5mM以上であれば、ホルミル基を担体に導入しやすくなり、また300mM以下であれば、多孔質担体の強度が小さくなり難くいため好ましい。より好ましい前記過ヨウ素酸、またはその塩の濃度は、5mM以上250mM以下、さらに好ましくは5mM以上150mM以下である。
【0068】
本発明者らは、鋭意検討の結果、理由は定かではないが、驚くべきことに、過ヨウ素酸および/または過ヨウ素酸塩を0℃以上10℃以下の温度で作用させて得られたホルミル基含有多孔質担体に、アミノ基含有リガンドを固定化することを特徴とする吸着体の製造方法により、吸着体の目的物の吸着量が大きくなることを見出した。前記温度は、0℃以上8℃以下であることがより好ましい。
【0069】
本発明の多孔質担体の材質に特に限定は無いが、例えば、多糖類、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、およびこれらの誘導体等を挙げることができる。これらは、ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシ基を有する高分子材料やポリエチレンオキサイド鎖を有する単量体と他の重合性単量体との共重合体のようなグラフト共重合体等のコーティング層を有していてもよい。これらの中で多糖類や、ポリビニルアルコール等が、担体表面に活性基を導入しやすいため、好ましく用いることができる。
【0070】
なかでも、本発明の多孔質担体は多糖類を含有することがより好ましい。多糖類は産業的に容易に得ることが可能であり、また生体に対する安全性が高いため好ましい。本発明の多孔質担体に用いることができる多糖類に特に限定は無いが、例えば、アガロース、セルロース、デキストリン、キトサン、キチン、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0071】
また、本発明の多孔質担体は、セルロースおよび/またはセルロース誘導体を含有することがより好ましい。セルロースまたはセルロース誘導体を含有する多孔質担体は、機械的強度が比較的高く、強靱であるため破壊されたり微粒子を生じたりすることが少なく、カラムに充填した場合に液を高線速で流しても比較的圧密化し難いため好ましい。また、強度やコストの観点から本発明の多孔質担体の材質に最も好ましいのはセルロースである。
【0072】
多孔質担体は治療用(医療用)吸着体をはじめとする各種クロマトグラフィー用吸着体やアフィニティー吸着体として広く用いられているが、特に抗体医薬品精製の分野においては、抗体医薬品市場の大きな伸びに伴って、精製の大スケール化及び高線速化が積極的に行われている。精製の大スケール化及び高線速化に伴って、精製に用いられる吸着体、つまりは多孔質担体(または多孔質粒子)の強度を大きくする必要が生じる場合がある。多孔質担体(または多孔質粒子)の強度を大きくする方法としては、特に限定は無く、多孔質担体(または多孔質粒子)のマトリックス含量(例えば樹脂含量)を大きくする方法等が好ましいが、多孔質担体(または多孔質粒子)の細孔径が小さくなり難いという利点から、架橋剤を作用させて多孔質担体(または多孔質粒子)の強度を大きくすることがより好ましい。つまり、本発明の多孔質担体(または多孔質粒子)は、架橋されていることが好ましい。
【0073】
架橋剤や架橋反応条件に特に限定は無く、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリン等のハロヒドリンや、レソルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヒドロゲナートビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルオルトフタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の2官能以上のエポキシ化合物を作用させることによって、架橋を行うことができる。
【0074】
これら架橋剤を用いて、多孔質担体(または多孔質粒子)の強度を大きくする方法は特に限定は無いが、反応効率の観点から、これら架橋剤をアルカリ条件下で担体に作用させることが好ましい。架橋剤の投入方法には特に限定は無く、全使用量を反応初期から投入しても良いし、複数回に分けて反応を繰り返しても良く、また滴下ロート等を用いて、少量ずつ架橋剤を投入しても良く、また架橋剤が投入された反応容器に多孔質担体を投入しても良い。
【0075】
架橋反応の溶媒については特に限定は無いが、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン等の汎用有機溶媒や、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコールや、これらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。また、反応効率を高めるため、ソディウムボロヒドリド等の還元剤を共存させることがより好ましい。
【0076】
架橋反応時の温度については特に限定は無いが、反応速度的に有利であるという理由から0℃以上であることが好ましく、および/または安全性や多孔質担体(または多孔質粒子)へのダメージの観点から100℃以下であることが好ましく、官能基が失活し難いという理由から70℃以下であることがより好ましい。
【0077】
架橋反応は攪拌または振とうしながら行うことが好ましく、その1分間当りの回転数または回数は、特に限定は無いが、均一攪拌が可能で、且つ多孔質担体(または多孔質粒子)に物理的なダメージが加わらないという理由から1分間あたり1回以上1000回以下であることが好ましく、より好ましくは10回以上500回以下、さらに好ましくは30回以上300回以下、特に好ましくは50回以上200回以下、最も好ましくは75回以上150回以下であるが、各原料の比重の差や多孔質担体(または多孔質粒子)の強度に合わせて調整することが、好ましい。
【0078】
架橋反応時間については、特に限定は無いが、官能基の失活や担体へのダメージが少ないという理由から、ハロヒドリンを用いる場合は、1時間以上8時間以下、2官能以上のエポキシ化合物を用いる場合は、1時間以上、15時間未満であることが好ましく、架橋剤の反応性や、pHや、反応温度に合わせて調整することが、より好ましい。
【0079】
また本発明は、カルボン酸塩、金属ハロゲン化物、及び硫酸塩からなる群より、カルボン酸塩を必須成分として選ばれた1種以上の化合物で構成された水溶液中で、ホルミル基含有多孔質担体にアミノ基含有リガンドを固定化することが好ましい。
【0080】
前記カルボン酸塩としては特に限定は無いが、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、オレイン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等を用いることができ、特に好ましくはクエン酸ナトリウムである。
【0081】
前記カルボン酸塩の水溶液中の濃度には特に限定は無いが、0.01M以上5M以下であることが好ましい。0.01M以上であれば、リガンドの固定化量が大きくなりやすいため好ましく、5M以下であれば製造コストの観点から好ましい。より好ましい前記カルボン酸塩の水溶液中の濃度は0.05M以上3M以下、さらに好ましくは0.1M以上1.5M以下、特に好ましくは0.25M以上1M以下、最も好ましくは0.4M以上0.8M以下である。
【0082】
前記金属ハロゲン化物に特に限定は無いが、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を好適に用いることができる。また、前記金属ハロゲン化物の水溶液中の濃度には特に限定は無いが、0.001M以上1M以下であることが好ましい。0.005M以上であれば、目的物の吸着量が大きくなるため好ましく、1M以下であればコストの観点から好ましい。より好ましい前記金属ハロゲン化物の水溶液中の濃度は0.01M以上0.75M以下、さらに好ましくは0.05M以上0.5M以下、特に好ましくは0.075M以上0.5M以下である。
【0083】
また、本発明者らはさらに好ましい態様として、クエン酸塩及び/または硫酸塩を含有する反応液中で、ホルミル基含有多孔質担体にアミノ基含有リガンドを固定化すると、クエン酸塩及び/または硫酸塩を含有しない反応液を用いた場合に比べて、アミノ基含有リガンドの固定化量及び/または固定化率が大きくなることを見出した。このことは本発明に好適に用いることができる。
【0084】
本発明で用いることができるクエン酸塩または硫酸塩には特に限定は無いが、クエン酸塩としては、例えばクエン酸一ナトリウム、クエン酸一カリウムなどのクエン酸一アルカリ金属塩、クエン酸ニナトリウム、クエン酸ニカリウムなどのクエン酸ニアルカリ金属塩、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムなどのクエン酸三アルカリ金属塩、クエン酸一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸カルシウム、イソクエン酸又はその塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができ、更に水和物、無水物を問わず用いることができる。
【0085】
硫酸塩としては、例えば硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等のアルカリ金属硫酸塩を用いることができ、更に水和物、無水物を問わず用いることができる。
【0086】
また、これらクエン酸塩及び/または硫酸塩を含有する反応液中には、その他の物質を含んでいても良く、その他物質としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸塩、リン酸塩、酢酸、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、トリエチルアミン等のアミン類等を挙げることができる。
【0087】
また、本発明の製造方法において、前記反応液中におけるクエン酸及び/または硫酸塩の濃度については特に限定は無いが、0.01〜2Mであることが好ましい。クエン酸及び/または硫酸塩の濃度が0.01M以上であると、リガンドの固定化量及び/または固定化率が大きくなるため好ましい。また、クエン酸及び/または硫酸塩の濃度が2M以下であると、コストが小さくなり、また反応液の粘度が低くなるため好ましい。より好ましいクエン酸及び/または硫酸塩の濃度は0.05〜1.9M、さらに好ましくは0.1〜1.7M、特に好ましくは0.25〜1.5M、最も好ましくは0.4〜1Mである。
【0088】
また、これらクエン酸塩及び/または硫酸塩を含有する反応液中に含めることができる、前記その他の物質の濃度についても特に限定は無いが、0.001〜1Mであることが好ましい。前記その他の物質の濃度が0.001M以上であると、吸着体の諸性能が向上するため好ましい。また、前記その他の物質の濃度が1M以下であると、コストが小さくなり、また反応液の粘度が低くなり、更にはクエン酸及び/または硫酸塩による効果が発現しやすいため好ましい。より好ましい前記その他の物質の濃度は0.005〜0.7M、さらに好ましくは0.01〜0.5M、特に好ましくは0.05〜0.5M、最も好ましくは0.1〜0.25Mである。
【0089】
また、本発明の製造方法において、前記反応液のpHは特に限定は無いが、7〜13であることが好ましい。前記反応液のpHが7以上であれば、リガンドの固定化量及び/または固定化率が大きくなるため好ましい。また、前記反応液のpHが13以下であれば、吸着体の基材やリガンドへのダメージが少ないため好ましい。
【0090】
また、pHが11.5以上、13.0未満の反応液中で、ホルミル基含有多孔質担体にアミノ基含有リガンドを固定化すると、アミノ基含有リガンドの固定化量及び/または固定化率がより大きくなるため、より好ましい。pHは11.5以上、12.6未満であることがさらに好ましく、特に好ましくは11.5以上12.3未満であり、最も好ましくは11.6以上12.1未満である。pHの測定は、pHが3〜5、6〜7、9〜10の標準液を用いて3点校正を行ったpH計にて測定することができる。
【0091】
また、本発明者らは鋭意研究の結果、イミノ化、及びその還元反応の2段階反応からなる、ホルミル基含有多孔質担体へのアミノ基含有リガンドの固定化において、イミノ化反応後に安定化操作を実施すると、驚くべき事に安定化操作を実施しない場合に比べて、吸着体として使用した時の目的物の吸着量が大きくなることをも見出した。
【0092】
すなわち、本発明はイミノ化、及びその還元反応の2段階反応からなる、ホルミル基含有多孔質担体へのアミノ基含有リガンドの固定化において、イミノ化反応後に安定化操作を実施することを特徴とする、吸着体の製造方法をも提供する。
【0093】
本発明におけるイミノ化反応後の安定化操作とは、イミノ化反応後に、反応液のpHを、還元反応のpHの±1以内に調整し、還元剤を投入せずに攪拌、振とう、又は放置することを指す。
【0094】
また、前記安定化操作の時間については特に限定は無いが、1時間以上48時間以内であることが好ましい。安定化時間が1時間以上であれば、吸着体の目的物の吸着量がより大きくなるため好ましく、48時間以内であれば製造コストの観点からより好ましい。より好ましい安定化時間は1時間以上24時間以内、更に好ましくは1時間以上15時間以内、特に好ましくは2時間以上15時間以内である。
【0095】
また、前記イミノ化反応後の安定化操作は、pH2〜10で実施することが好ましい。安定化操作のpHが2以上であれば、製造装置の耐久性や安全性の観点から好ましく、pHが10以下であれば、吸着体の目的物の吸着量がより大きくなるため好ましい。安定化操作のより好ましいpHは2〜9、さらに好ましくは2〜8である。
【0096】
また、本発明のイミノ化反応、安定化操作、還元反応は、緩衝液中で行われることが、pHの安定性の観点から好ましい。本発明で用いることができる緩衝液については特に限定はなく、従来公知の緩衝液を好適に用いることができる。
【0097】
また、前記緩衝液が、二価以上のアニオンを擁しうる塩を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。理由は定かではないが、驚くべきことに、本発明のイミノ化反応、安定化操作、還元反応を、二価以上のアニオンを擁しうる塩を少なくとも1種類以上含有する緩衝液中で行うと、アミノ基含有リガンドの固定化量がより大きくなるため好ましい。二価以上のアニオンを擁しうる塩としては特に限定は無いが、例えば、クエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、琥珀酸塩、リンゴ酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩等のポリカルボン酸塩、燐酸塩、硫酸塩、炭酸塩等を用いることができる。
【0098】
緩衝液中の二価以上のアニオンを擁しうる塩の濃度には特に限定は無いが、0.01M以上5M以下であることが好ましい。0.01M以上であれば、リガンドの固定化量が大きくなりやすいため好ましく、5M以下であれば製造コストの観点から好ましい。より好ましい前記カルボン酸塩の水溶液中の濃度は0.05M以上3M以下、さらに好ましくは0.1M以上1.5M以下、特に好ましくは0.25M以上1M以下、最も好ましくは0.4M以上0.8M以下である。
【0099】
また、前記緩衝液がポリカルボン酸塩、及び/又は中性塩を含有することがより好ましい。中性塩としては特に限定は無いが、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0100】
また、前記緩衝液がクエン酸塩を含有することが、更に好ましい。クエン酸塩としては特に限定は無いが、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム等を挙げることができる。
【0101】
また、前記クエン酸塩を含有する緩衝液は、金属ハロゲン化物と硫酸塩のうち、少なくとも一種以上を含有することが好ましい。前記金属ハロゲン化物に特に限定は無いが、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を好適に用いることができる。また、前記金属ハロゲン化物及び/または硫酸塩の緩衝液中の濃度には特に限定は無いが、0.001M以上1M以下であることが好ましい。0.005M以上であれば、目的物の吸着量が大きくなるため好ましく、1M以下であればコストの観点から好ましい。より好ましくは0.01M以上0.5M以下、さらに好ましくは0.05M以上0.75M以下、特に好ましくは0.075M以上0.5M以下、最も好ましくは0.1M以上0.3M以下である。
【0102】
また、本発明者らはホルミル基含有多孔質担体に、アミノ基含有リガンドを固定化する際、有機ボラン錯体により、リガンドの固定化結合を安定化させると同時に、余剰ホルミル基を不活化させると、驚くべき事に、吸着体の目的物の吸着量が大きくなることをも見出した。
【0103】
即ち本発明は、ホルミル基含有多孔質担体に、アミノ基含有リガンドを固定化する際、有機ボラン錯体により、リガンドの固定化結合を安定化させると同時に、余剰ホルミル基を不活化させることを特徴とする吸着体の製造方法にも関する。ここで、余剰ホルミル基とは、多孔質担体上のホルミル基のうち、アミノ基含有リガンドの固定化に使用されず、残存したものを指す。この余剰ホルミル基が不活化されていないと、吸着体として使用した場合に、非特異吸着が起こる場合がある。
【0104】
本発明は、一般的には比較的弱い還元剤として使用される有機ボラン錯体を用いているにも関わらず、弱い還元剤を用いる際に通常不活化剤として使用される、アミノ基含有低分子量化合物(例えば、モノエタノールアミン、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等)、いわゆるブロッキング剤を用いずとも、余剰ホルミル基を不活化できることを特徴とする。
【0105】
また、前記有機ボラン錯体により、リガンドの固定化結合を安定化させると同時に、余剰ホルミル基を不活化させる操作は、カルボン酸塩を含有する反応液中で実施すると、リガンドの固定化結合の安定化、及び余剰ホルミル基の不活化がより促進されるため好ましい。
【0106】
本発明で使用できるカルボン酸塩には特に限定は無いが、例えば酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、琥珀酸塩、リンゴ酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩等を挙げることができ、これらのカチオン種としては特に限定は無いが、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等を用いることができる。なかでも、クエン酸塩、特にクエン酸のアルカリ金属塩が、コストの観点からも好適に用いることができる。また、カルボン酸塩の反応液中での濃度については特に限定は無いが、0.01M以上であると、リガンドの固定化結合の安定化と、余剰ホルミル基の不活化がより促進されるため好ましい。また、カルボン酸塩の濃度が2M以下であると、コストが削減できると共に、反応液の粘度が低くなり、操作性の面からもより好ましい。より好ましいカルボン酸塩の濃度は0.05〜1.9M、さらに好ましくは0.1〜1.7M、特に好ましくは0.25〜1.5M、最も好ましくは0.4〜1Mである。
【0107】
また、前記反応液中にはカルボン酸塩以外の物質が含有されていてもよく、例えば金属ハロゲン化物と硫酸塩のうち、少なくとも一種以上を含有することが好ましい。前記金属ハロゲン化物に特に限定は無いが、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を好適に用いることができる。また、前記金属ハロゲン化物及び/または硫酸塩の緩衝液中の濃度には特に限定は無いが、0.001M以上1M以下であることが好ましい。0.005M以上であれば、目的物の吸着量が大きくなるため好ましく、1M以下であればコストの観点から好ましい。より好ましくは0.01M以上0.5M以下、さらに好ましくは0.05M以上0.75M以下、特に好ましくは0.075M以上0.5M以下、最も好ましくは0.1M以上、0.3M以下である。
【0108】
また、前記有機ボラン錯体により、リガンドの固定化結合を安定化させると同時に、余剰ホルミル基を不活化させる操作が、1時間以上48時間以内であることが好ましい。前記操作が1時間以上であれば、リガンドの固定化結合の安定化と、余剰ホルミル基の不活化がより促進されるため好ましく、48時間以内であれば製造コストの観点から好ましい。より好ましい前記操作時間は、2時間以上24時間以下、さらに好ましくは3時間以上20時間以下、特に好ましくは4時間以上15時間以下、最も好ましくは5時間以上10時間以下である。
【0109】
また、本発明に使用できる前記有機ボラン錯体としては特に限定は無く使用することができるが、理由は定かではないが、驚くべきことに、前記有機ボラン錯体がアミンボラン錯体(アミノボランを含む)であれば、余剰ホルミル基の不活化がより促進しやすいため好ましい。本発明で使用できるアミンボラン錯体としては特に限定は無いが、例えば、4−(ジメチルアミノ)ピリジンボラン、N−エチルジイソプロピルアミンボラン、N−エチルモルホリンボラン、N−メチルモルホリンボラン、N−フェニルモルホリンボラン、ルチジンボラン、トリエチルアミンボラン、またはトリメチルアミンボラン、4−(ジメチルアミン)ピリジンボラン、N−エチルジイソプロピルアミンボラン、N−エチルモルホリンボラン、N−メチルモルホリンボラン、N−フェニルモルホリンボラン、ルチジンボラン、アンモニアボラン、ジメチルアミンボラン、ピリジンボラン、4−メチルピリジンボラン、N’N−ジエチルアニリンボラン、N’N−ジイソプロピルエチルアミンボラン、2,6−ルチジンボラン、ボランアミン、トリスジメチルアミノボラン、トリスメチルアミノボラン、ボラジン、1,3,5−トリメチルボラジン、2,4,6−トリメチルボラジン、ヘキサメチルボラジン等を挙げることができる。
【0110】
中でも、反応液中での溶解性や安全性の観点から、ジメチルアミンボランであることが特に好ましい。
【0111】
また、本発明のイミノ化反応、安定化操作、還元反応の操作温度は−10〜40℃であることが好ましい。−10℃以上であれば、反応液の流動性の観点からより好ましく、40℃以下であれば、アフィニティーリガンドや多孔質担体のホルミル基が失活し難いためより好ましい。より好ましい操作温度は−5〜35℃、さらに好ましくは0〜30℃である。
【0112】
また、本発明の吸着体のアフィニティーリガンドの導入量は、多孔質担体1mL当り、1mg以上500mg以下であることが好ましい。アフィニティーリガンドの導入量が多孔質担体1mL当り1mg以上であれば、目的物に対する吸着量が大きくなるため好ましく、500mg以下であれば、製造コストを抑制できるため好ましい。より好ましいアフィニティーリガンドの導入量は、多孔質担体1mL当り2mg以上120mg以下であり、さらに好ましくは3mg以上60mg以下であり、特に好ましくは4mg以上30mg以下であり、最も好ましくは4mg以上15mg以下である。
【0113】
また、本発明の吸着体のアフィニティーリガンドの導入量は、多孔質担体1mL当り、0.01μmol以上15μmol以下であることが好ましい。アフィニティーリガンドの導入量が多孔質担体1mL当り0.01μmol以上であれば、精製目的物に対する吸着量が大きくなるため好ましく、15μmol以下であれば、製造コストを抑制できるため好ましい。より好ましいアフィニティーリガンドの導入量は、多孔質担体1mL当り0.03μmol以上5μmol以下であり、さらに好ましくは0.05μmol以上2μmol以下であり、特に好ましくは0.1μmol以上0.75μmol以下であり、最も好ましくは0.1μmol以上0.5μmol以下である。
【0114】
アフィニティーリガンドの導入量は、固定化反応後の反応液上清中のアフィニティーリガンド由来の吸光度を測定することによって求めることができる。また、元素分析法を用いて、アフィニティーリガンドの導入量を求めることができる。例えば、アミノ基含有アフィニティーリガンドであれば、吸着体のN含量分析を行うことにより、アフィニティーリガンドの導入量を測定することができる。
【0115】
治療用(医療用)吸着体や抗体医薬品精製用吸着体などに用いられる場合のアフィニティーリガンドとしては、特に限定は無いが、例えば、抗体に特異性の高い抗原やタンパク質や、プロテインG、Lやその変異体、抗体結合活性を有するペプチド等を挙げることができる。特に、免疫グロブリン(IgG)等を特異的に吸着、溶出できる吸着体として、プロテインAをアフィニティーリガンドとして担体に固定化した吸着体が注目されている。プロテインAを固定化した吸着体は、リウマチ、血友病、拡張型心筋症の治療用吸着体として注目されている。また、抗体医薬精製の分野においては、IgG等の抗体の精製を大スケール、高速、及び低コストで行える吸着体が望まれている。このような観点から、本発明の吸着体は、アフィニティーリガンドとしてプロテインAが導入された吸着体であることが好ましい。
【0116】
本発明に用いることができるプロテインAには特に限定は無なく、天然物、遺伝子組み換え物等を制限なく使用することができる。また、抗体結合ドメイン及びその変異体を含むもの、融合蛋白質等であってもよい。また、菌体抽出物もしくは培養上清より、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー及び膜分離技術を用いた分子量分画、分画沈殿法等の手法から選択される精製法を組合せ、および/または繰り返すことにより製造された、プロテインAを用いることもできる。特に、国際公開特許公報WO2006/004067や米国特許公報US5151350に記載されている方法で得られたプロテインAであることが好ましい。
【0117】
また、本発明の吸着体は、これを用いて精製を行った場合、吸着体から目的物中に溶出したリガンドの濃度が、精製1回目〜3回目の平均値が50ppm以下であることが好ましい。目的物中に溶出したリガンドの濃度が、精製1回目〜3回目の平均値が50ppm以下であれば、治療や精製の安全性を高めることができ、さらに目的物の純度を高めることができ、精製においては後工程の煩雑さが軽減されるため好ましい。より好ましい目的物中に溶出したリガンドの濃度は、0ppm以上40ppm以下、さらに好ましくは0ppm以上30ppm以下、特に好ましくは0ppm以上25ppm以下、最も好ましくは0ppm以上20ppm以下である。目的物中に溶出したリガンドの濃度は、Steindl F. et al., Journal of Immunological Methods, Vol.235 (2000), 61-69、に記載の方法で求めることができる。
【0118】
本発明の吸着体のアミノ基含有リガンドのリーク量をさらに低減するために、吸着体を洗浄することが好ましい。洗浄剤や洗浄方法に特に限定は無いが、水、酢酸、アルコール、各種有機溶剤、pH2〜5の液体、pH8〜13の液体、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、緩衝剤、界面活性剤、尿素、グアニジン、グアニジン塩酸塩、その他の再生剤等の、少なくとも1種を含有する溶液等を通液、または投入して攪拌することが好ましい。また、同一または異なる溶液を用いて洗浄を複数回行うと、リガンドのリーク量がさらに減少するため好ましい。
【0119】
また、本発明の吸着体の、目的物の吸着量は、吸着体1mLあたり1mg以上であることが好ましい。目的物の吸着量が、吸着体1mLあたり1mg以上であれば、効率よく精製が行えるため好ましい。また目的物の吸着量が、吸着体1mLあたり100mg以下であれば、吸着した目的物を吸着体から溶出しやすいため好ましい。より好ましい吸着体の、目的物の吸着量は、吸着体1mLあたり5mg以上90mg以下であり、さらに好ましくは10mg以上80mg以下であり、特に好ましくは20mg以上70mg以下であり、最も好ましくは30mg以上60mg以下である。
【0120】
目的物の吸着量は、以下のようにして求めることができる。目的物の吸着量の求め方としては、特に限定は無いが、静的吸着量や動的吸着量によって求めることができる。例えば、静的吸着量を測定する場合は、pH7.4のリン酸バッファー(シグマ社製)で置換した吸着体0.5mLに対し、70mgの目的物を35mLのpH7.4のリン酸バッファー(シグマ社製)に溶解させた溶液を接触させ、25℃で2時間攪拌した後、上清中の目的物の減少量を測定することにより求めることができる。
【0121】
本発明の吸着体は、5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.03MPa以上3MPa以下、及び15%圧縮時の応力が0.06MPa以上5MPa以下であることが好ましい。
【0122】
吸着体の5%圧縮時の圧縮応力が0.01MPa以上、10%圧縮時の圧縮応力が0.03MPa以上、および15%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上であれば、高線速で通液しても圧密化を生じない吸着体が得られやすいため好ましい。また、吸着体の5%圧縮時の圧縮応力が1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が5MPa以下であれば、脆性が向上し、微粒子発生が抑制できるため好ましい。
【0123】
また、より好ましい圧縮応力は、5%圧縮時の圧縮応力が0.02MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.06MPa以上3MPa以下、及び15%圧縮時の応力が0.09MPa以上5MPa以下である。最も好ましくは、5%圧縮時の圧縮応力が0.04MPa以上1MPa以下、10%圧縮時の圧縮応力が0.08MPa以上3MPa以下、および15%圧縮時の圧縮応力が0.11MPa以上5MPa以下である。
【0124】
ここで、5%圧縮時の圧縮応力とは、吸着体が圧縮されて、初期体積より体積が5%減少した時の応力、10%圧縮時の圧縮応力とは、吸着体が圧縮されて、初期体積より体積が10%減少した時の応力、15%圧縮時の圧縮応力とは、吸着体が圧縮されて、初期体積より体積が15%減少した時の応力である。初期体積とは、吸着体を含むスラリーに振動を与えながら、吸着体の体積が減少しなくなるまで沈降させて充填した状態の体積である。
【0125】
また、本発明の吸着体の充填体積あたりの樹脂含量に特に限定は無いが、2%以上50%以下であることが好ましい。充填体積あたりの樹脂含量が2%以上であれば、大スケール、高線速で精製を行っても圧密化を生じない吸着体が得られるため好ましい。また、充填体積あたりの樹脂含量が50%以下であると、精製目的物を通すことができる十分な孔を確保することができるため好ましい。また、充填体積あたりの樹脂含量のより好ましい範囲は3%以上25%以下、さらに好ましくは4%以上15%以下である。
【0126】
充填体積あたりの樹脂含量は、多孔質担体体積が減少しなくなるまで沈降させて充填し、多孔質担体体積が1mLとなるよう多孔質担体量を調整する。この担体を105℃で12時間乾燥させ、ゲル1mLの乾燥重量(g)から、ゲル1mLあたりの乾燥重量パーセント、つまり樹脂含量を求めることができる。
【0127】
また、本発明の吸着体は、体積平均粒径が20μm以上1000μm以下であることが好ましい。多孔質担体の体積平均粒径が20μm以上であれば、圧密化が起こり難いため好ましく、1000μm以下であれば吸着体に用いた場合の目的物の吸着量が大きくなるため好ましい。多孔質担体の体積平均粒径のより好ましい範囲は、30μm以上250μm以下であり、さらに好ましくは40μm以上125μm以下であり、特に好ましくは50μm以上100μm以下であり、最も好ましくは60μm以上85μm以下である。体積平均粒径は、ランダムに選んだ100個の多孔質担体の粒径を測定して求めることができる。個々の多孔質担体の粒径は、個々の多孔質担体の顕微鏡写真を撮影して電子データーとして保存し、粒径測定ソフトウェア(メディアサイバーネティックス社製イメージプロプラス)を用いて、測定することができる。
【0128】
本発明の吸着体及び/または本発明の製造方法により製造された吸着体は、アフィニティークロマトグラフィーを用いた各種目的物の精製や、非特許文献3に示されるような各種精製方法や、治療用(医療用)吸着体に利用することができる。精製方法や治療方法には特に限定は無く、非特許文献1、2、3や、その他公知の方法を好適に用いる事ができる。
【0129】
さらに、本発明の吸着体は、目的物の精製を大スケール、高速且つ低コストで行うことを可能とする。よって、本発明の吸着体を用いた精製や治療は、直径0.5cm以上及び高さ3cm以上のカラムを用いることが好ましい。直径が0.5cm以上及び高さ3cm以上であれば、精製や治療を効率よく行うことができる。また、精製や治療の精度や効率の観点から、カラムの大きさは直径2000cm以下及び高さ5000cm以下であることが好ましい。
【0130】
より好ましいカラムの大きさは直径2cm以上200cm以下、高さ5cm以上300cm以下であり、さらに好ましくは直径5cm以上100cm以下及び高さ8cm以上150cm以下であり、特に好ましくは直径10cm以上85cm以下及び高さ12cm以上85cm以下であり、最も好ましくは直径20cm以上85cm以下及び高さ14cm以上35cm以下である。
【0131】
また、本発明の吸着体を用いた治療や精製は、線速100cm/h以上で通液する工程を有することが好ましい。線速100cm/h以上で通液する工程を有していれば、治療や精製を効率よく行うことができるため好ましい。また治療や精製の精度や装置の耐久性の観点から、本発明の吸着体を用いた治療や精製は、線速1000cm/h以下で行うことが好ましい。より好ましい精製の線速は150cm/h以上800cm/h以下、さらに好ましくは250cm/h以上750cm/h以下、特に好ましくは300cm/h以上700cm/h以下、最も好ましくは350cm/h以上700cm/h以下である。
【0132】
本発明の多孔質担体、およびそれを用いた吸着体、およびそれらの製造方法は、およびそれらを用いた精製方法は、本発明を用いない場合に比べて、精製を高速で行うことができ、純度が高く、また安全性の高い精製品を提供することができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、反応仕込み時の多孔質粒子、および多孔質担体の体積は、特に記載が無い限り、自然沈降体積である。自然沈降体積は、多孔質担体とRO水のスラリーを、計量容器に投入し、振動の無い状態で2時間以上静置して、これ以上体積が減少しなくなった状態の体積である。また、官能基含量、における多孔質担体の体積は、特に記載が無い限り、多孔質担体とRO水のスラリーを、計量容器に投入し、振動を与えながら、それ以上体積が減少しなくなるまで沈降させた状態の体積である。
【0134】
(ホルミル含量測定)
ホルミル基含量は、pH8の0.1Mリン酸バッファーで置換した多孔質担体(または多孔質粒子)2mLと、フェニルヒドラジンを溶解したpH8の0.1Mリン酸バッファー溶液2mLとを接触させ、40℃で1時間攪拌し、UV測定により反応液の上清の278nm付近の吸収極大の吸光度を測定し、これにより得られたフェニルヒドラジンの多孔質担体(または多孔質粒子)への吸着量として、見積もることができる。この時、フェニルヒドラジンの投入量は予想ホルミル基含量の3倍モルとし、フェニルヒドラジンの投入量に対して、多孔質担体(または多孔質粒子)への吸着量が15%以下、または45%以上であった場合は、フェニルヒドラジンの投入量を見直し、再度測定を行うものとしている。
【0135】
(圧縮応力測定)
内径15mmのガラス製メスシリンダーに多孔質粒子または吸着体の50vol%のスラリーを投入した。ガラス製メスシリンダーに振動を与えながら、多孔質粒子または吸着体の体積が減少しなくなるまで沈降させて充填し、多孔質粒子または吸着体の体積が4mLとなるよう多孔質粒子または吸着体量を調整する。この時の体積を初期体積とした。金属製ピストン(メスシリンダーの内壁と摩擦を生じず、且つ多孔質粒子または吸着体が溶出ないように加工したもの)を、20N用ロードセルを装着したオートグラフ(SHIMADZU製EZ−TEST)に取り付けた。多孔質粒子または吸着体の120vol%に相当する位置にピストンの底面を合わせた。気泡が入らないように、試験速度5mm/minでピストンを下降させ、多孔質粒子または吸着体を圧縮して体積を減少させ、任意の点の圧縮応力を測定する。
【0136】
(グルコサミン固定化量の定量)
多孔質担体1mLをグラスフィルター(TOP社製3G−2)に移し、ゲルの3倍量の0.01N水酸化ナトリウム溶液で3回置換し、RO水で、ゲルの3倍量で6回洗浄した。次に、5分間吸引ろ過(サクションドライ)し、酢酸(和光純薬工業製)で置換した。置換後のゲルを非水滴定用酢酸(和光純薬工業製)で50mLビーカーに移し、30mLまでメスアップした。これを、電位差自動滴定装置(KEM社製AT−610)を用いて、0.004N過塩素酸/酢酸(0.1M過塩素酸/酢酸溶媒を非水滴定用酢酸で希釈:和光純薬工業製)で滴定し、グルコサミン固定化量を求めた。
【0137】
(動的吸着量、及び目的物中にリークしたリガンド濃度測定)
(1)溶液作製
A液としてpH7.4リン酸バッファー(シグマ社製)、B液としてpH3.5の35mM酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製の酢酸、酢酸ナトリウム、RO水で調整)、C液として1M酢酸(和光純薬工業社製酢酸とRO水で調整)、D液として1mg/mLのヒトポリクローナルIgG溶液(バクスター社製ガンマガードとA液で調整)、E液として6M尿素、F液としてA液に対して0.2vol%の界面活性剤(和光純薬工業社製ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を添加した液、中和液として2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(シグマ社製トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとRO水で調整)を作製し、各溶液を使用前に脱泡した。
【0138】
(2)充填、準備
カラムクロマトグラフィー用装置として、AKTAexplorer 100(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、直径0.5cm、高さ15cmのカラムに22μmのメッシュを取り付け、本発明の吸着体をそれぞれ3mL入れ、線速450cm/hで20%エタノール水溶液(和光純薬工業社製エタノールとRO水で調整)を1時間通液して充填した。フラクションコレクターに15mLの採取用チューブをセットし、溶出液の採取用チューブについては、あらかじめ中和液を入れておいた。
【0139】
(3)IgG精製
A液を線速300cm/hで9mL通液し、次いでD液を、UVをモニターしながら、IgGが10%破過するまで線速300cm/hで通液した。次いで、A液を線速300cm/hで30mL通液し、B液を線速300cm/hで30mL通液してIgGを溶出させた。次にC液を線速300cm/hで9mL,E液を線速300cm/hで9mL通液した。吸着体の充填終了後からの操作をさらに2回繰り返すことにより、溶出液中のIgG量と、IgG中にリークしたリガンド濃度を求めた。
【0140】
(作製例1)
体積平均粒径が92μm、樹脂含量が6%、排除限界分子量が5000万の多孔質セルロース粒子(チッソ社製CK−A)を90μmのメッシュ(NONAKA RIKAKI製、ワイヤ径63μm)と分級機(筒井理化学器械社製300−MM)を用いて、2時間、湿式分級を行い、体積平均粒径83μmの多孔質粒子Aを得た。
【0141】
2.3Lの多孔質粒子AにRO水を加えて2.78Lとし、これをセパラブルフラスコに移した。ここに4NNaOH(和光純薬工業社製とRO水で調整)を0.246L加えた。また、水素化ホウ素ナトリウムを3.3g加え、水槽中で40℃に昇温させた。ここに架橋剤としてグリセロールポリグリシジルエーテルを含有するデナコールEX314(ナガセケムテックス社製)を1.64L投入し40℃で5時間攪拌した。反応終了後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で吸引ろ過しながら、多孔質粒子の20倍体積量のRO水で洗浄し、架橋多孔質粒子を得た。この架橋多孔質粒子の5%圧縮時の圧縮応力は0.020MPa、10%圧縮時の圧縮応力は0.049MPa、15%圧縮時の圧縮応力は0.080MPaであった。
【0142】
得られた架橋多孔質粒子にRO水を加えて、全量を架橋多孔質粒子の2倍体積量とし、ガラス製ビーカー(1L)に入れ、アルミ箔2枚で封をして、オートクレーブ(サクラ社製 高圧滅菌器ネオクレーブ)を用いて120℃で40分間加温した。室温まで放冷した後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で多孔質粒子の5倍体積量のRO水で洗浄し、エポキシ基がグリセリル基に変化した架橋多孔質粒子を得た。
【0143】
ついで、このオートクレーブ済の多孔質粒子2.3LにRO水を加えて2.78Lとし、これをセパラブルフラスコに移した。ここに4N−NaOH(和光純薬工業社製とRO水で調整)を0.246L加えた。また、水素化ホウ素ナトリウムを3.3g加え、水槽中で40℃に昇温させた。ここにデナコールEX314(ナガセケムテックス社製)を1.64L投入し40℃で5時間攪拌した。反応終了後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で吸引ろ過しながら、多孔質粒子の20倍体積量のRO水で洗浄し、架橋多孔質粒子を得た。この架橋多孔質粒子の5%圧縮時の圧縮応力は0.020MPa、10%圧縮時の圧縮応力は0.049MPa、15%圧縮時の圧縮応力は0.080MPaであった。
【0144】
得られた架橋多孔質粒子にRO水を加えて、全量を架橋多孔質粒子の2倍体積量とし、ガラス製ビーカー(1L)に入れ、アルミ箔2枚で封をして、オートクレーブ(サクラ社製 高圧滅菌器ネオクレーブ)を用いて120℃で40分間加温した。室温まで放冷した後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で多孔質粒子の5倍体積量のRO水で洗浄し、多孔質粒子Bを得た。
【0145】
(実施例1)
作成例1の多孔質粒子B、523mLに、RO水を加えて全量を784.5mLとして、2Lのセパラブルフラスコに入れ、これを25℃の恒温槽(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S)に取り付けた。次に、過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業製)をRO水に溶解させた、11.5mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を523mL作成し、セパラブルフラスコに加え、25℃で1時間、回転数120rpmで攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、濾液の伝導率が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄した。ついで、得られた多孔質粒子に、RO水を加えて全量を784.5mLとして、セパラブルフラスコに入れ、これを25℃の恒温槽(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S)に取り付けた。次に、過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業製)をRO水に溶解させ、11.5mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム溶液を作製し、523mLをセパラブルフラスコに加え、25℃で1時間、回転数120rpmで攪拌した(マゼラ Z)。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、洗浄ろ液の電気伝導度が5μS/cm以下になるまで洗浄し、多孔質粒子Cを得た。洗浄ろ液の電気伝導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。得られた多孔質粒子Cのホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、ホルミル基含量は多孔質粒子C1mLあたり68μmolであった。
【0146】
次いで、セパラブルフラスコに、1042mLの所に印をつけ、得られた多孔質粒子C521mLを、RO水を用いて移した。これを15℃の恒温槽(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S、投込冷却装置 ADVANTEC TBC120DA)に取り付け、反応溶液が15℃になるまで放置した。反応液が15℃になったことを確認後、これに多孔質粒子Cのホルミル基含有量の10倍モルの発酵グルコサミンK(協和発酵社製)を加え、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを11に合わせた。さらに、4N水酸化ナトリウムを用いてpHを11に微調整しながら、反応液全体の体積が1042mLになるよう、RO水を加え、15℃で5時間、回転数120rpmで攪拌した。
【0147】
次いで、2.96gの水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を加えて、1時間撹拌しながら反応させた。 反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で多孔質粒子の20倍体積量のRO水で洗浄した。洗浄後のゲルをセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコの1042mLの印までRO水を足し、2.96gの水素化ホウ素ナトリウムを加え25℃で1時間撹拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上でゲルの20倍体積量のRO水で洗浄した。さらに2回25℃で1時間水素化ホウ素ナトリウムの反応を繰り返し、最後の洗浄はグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で濾液の電気伝導度が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、グルコサミン化多孔質担体を得た。
【0148】
この多孔質担体のグルコサミン導入量は、多孔質担体1mLあたり17μmolであった。また、還元剤で処理しきれなかったグルコサミン固定化後のホルミル基量は、多孔質担体1mLあたり0μmolであった。
【0149】
得られたグルコサミン化多孔質担体109mLにRO水を加えて163.5mLとし、500mLのセパラブルフラスコに移した。次に、11.5mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を作製し、これをセパラブルフラスコに109mL加え、25℃で1時間、回転数120rpmで攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、濾液の電気伝導度が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、ホルミル基含有多孔質担体Dを得た。得られたホルミル基含有多孔質担体Dの5%圧縮時の圧縮応力は0.028MPa、10%圧縮時の圧縮応力は0.067MPa、15%圧縮時の圧縮応力は0.109MPaであった。ホルミル基含有量は多孔質担体D1mLあたり、6.2μmolであった。
【0150】
(実施例2)
作成例1の多孔質粒子B435mLに、RO水を加えて全量を652mLとして、2Lのセパラブルフラスコに入れ、これを25℃の恒温槽(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S)に取り付けた。次に、過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業製)をRO水に溶解させ、46.0mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業製)を作製し、217.5mLをセパラブルフラスコに入れ、25℃で15分、回転数120rpmで攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、濾液の伝導率が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、多孔質粒子Dを得た。得られた多孔質粒子Dのホルミル基含量を測定した結果、ホルミル基含量は多孔質粒子E1mLあたり45.6μmolであった。
【0151】
次いで、セパラブルフラスコに、820mLの所に印をつけ、得られた多孔質粒子E410mLを、ROを用いて移した。これを15℃の恒温槽(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S、投込冷却装置 ADVANTEC TBC120DA)に取り付け、反応溶液が15℃になるまで放置した。反応液が15℃になったことを確認したら、ここに多孔質粒子Dのホルミル基含有量の10倍モルの発酵グルコサミンK(協和発酵社製)を加え、4N水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)を加えてpHを11に合わせた。さらに、4N水酸化ナトリウムを用いてpHを11に微調整しながら、反応液全体の体積が1042mLになるよう、RO水を加え、15℃で5時間、回転数120rpmで攪拌した。
【0152】
次いで、2.33gの水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を加えて、1時間撹拌しながら反応させた。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上でゲルの20倍体積量のRO水で洗浄した。洗浄後のゲルをセパラブルフラスコに入れ、セパラブルフラスコの1042mLの印までRO水を足し、2.33gの水素化ホウ素ナトリウムを加え25℃で1時間撹拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上でゲルの20倍体積量のRO水で洗浄した。さらに5回25℃で1時間水素化ホウ素ナトリウムの反応を繰り返し、最終の洗浄はグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で濾液の電気伝導度が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、グルコサミン化多孔質担体を得た。
【0153】
この多孔質担体1mLあたりのグルコサミン導入量は、11.0μmol/mLであった。また、還元剤で処理しきれなかったグルコサミン固定化後のホルミル基量は、多孔質担体1mLあたり0.4μmolであった。
【0154】
得られたグルコサミン化多孔質担体80mLのRO水を加えて120mLとし、セパラブルフラスコに移した。次に、11.5mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム溶液を作製し、40mL加え、25℃で30分間、回転数150rpmで攪拌した(マゼラ Z)。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、濾液の伝導率が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、ホルミル基含有多孔質担体を得た。ホルミル基含有量は多孔質担体1mLあたり、3.4μmolであった。
【0155】
(実施例3)
グルコサミン固定化後の還元反応において、15℃1時間を1回、25℃1時間を6回行う代わりに、15℃1時間を1回、37℃1時間を2回とした以外は、実施例2と同様の方法にて、グルコサミン化多孔質担体、次いでホルミル基含有多孔質担体を得た。なお、グルコサミン化多孔質担体1mLあたりのグルコサミン導入量は、9.6μmol/mLであった。また、還元剤で処理しきれなかったグルコサミン固定化後のホルミル基量は、多孔質担体1mLあたり0.3μmolであった。また、ホルミル基含有多孔質担体のホルミル基含有量は多孔質担体1mLあたり、4.3μmolであった。
【0156】
(実施例4)
グルコサミン固定化後の還元反応において、15℃1時間を1回、25℃1時間を6回行う代わりに、15℃1時間を1回、50℃1時間を1回とした以外は、実施例2と同様の方法にて、グルコサミン化多孔質担体とホルミル基含有多孔質担体を得た。なお、グルコサミン化多孔質担体1mLあたりのグルコサミン導入量は、8.7μmol/mLであった。また、還元剤で処理しきれなかったグルコサミン固定化後のホルミル基量は、多孔質担体1mLあたり0.4μmolであった。また、ホルミル基含有多孔質担体のホルミル基含有量は多孔質担体1mLあたり、4.3μmolであった。
【0157】
(実施例5)
実施例1で得られたホルミル基多孔質担体109mLをグラスフィルター(TOP社製25G−2)上でpH11の0.5Mクエン酸ナトリウム(和光純薬工業製)+0.15M食塩(和光純薬工業製)バッファー327mLで置換した。pH11の0.5Mクエン酸ナトリウム+0.15M食塩バッファーを用い、置換後のホルミル基含有多孔質担体を、197.6mLの所に印をつけたセパラブルフラスコに入れた。ここに、国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が、52.85mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製PNXL30)を16.5mL加え、4NNaOH(和光純薬工業社製とRO水で調整)を用いてpHを11に調整し、反応液面を197.6mLに合わせ、恒温槽中で(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S、投込冷却装置 ADVANTEC TBC120DA)、4℃で12時間、回転数150rpmで攪拌ながら反応させた(マゼラ Z)。
【0158】
反応後、反応液のpHが6.8になるように4M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)を用いて調整した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業製)を0.309g加えて、4℃で1時間、ゆるやかに攪拌しながら反応させた。反応後、反応液の277nm付近の吸収極大の吸光度を測定した結果、アフィニティーリガンドであるプロテインAの導入量が、多孔質担体1mL当り、7.2mgであることがわかった。
【0159】
反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、洗浄後の担体をセパラブルフラスコに入れ、197.6mLの印の所までRO水を入れ、0.309gの水素化ホウ素ナトリウムを加えて25℃で1時間攪拌した。反応後、20倍量のRO水で洗浄した。次いで、3倍体積量の0.01M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)で置換し、置換した多孔質担体に0.01M塩酸を加えて全量を220mLとし、セパラブルフラスコに入れ、室温で30分間、攪拌しながら、酸洗浄を行った。
【0160】
酸洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、次いで、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、RO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を220mLとし、セパラブルフラスコに入れ、室温で20分間、攪拌しながら、アルカリ洗浄を行った。
【0161】
アルカリ洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄した。次に、多孔質担体の3倍量のpH7.4のPBS(SIGMA社製)で置換し後、RO水を用いて、洗浄濾液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄し、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄濾液の電導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。
【0162】
得られた吸着体の目的物としてヒトポリクローナルIgG(バクスター社製ガンマガード)を選択し、動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目37mg、2回目37mg、3回目38mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンドのIgGに対する濃度は、1回目38ppm、2回目20ppm、3回目19ppmであった。
【0163】
(実施例6)
実施例2で得られたホルミル基多孔質担体を用いて、実施例5と同様の方法にて、プロテインAを固定化した吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目37mg、2回目38mg、3回目39mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンドのIgGに対する濃度は、1回目23ppm、2回目19ppm、3回目19ppmであった。
【0164】
(実施例7)
実施例3で得られたホルミル基多孔質担体を用いて、実施例5と同様の方法にて、プロテインAを固定化した吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目34mg、2回目35mg、3回目36mgであった。また、精製IgG中にリークしたIgGに対するリガンド濃度は、1回目27ppm、2回目24ppm、3回目16ppmであった。
【0165】
(実施例8)
実施例4で得られたホルミル基多孔質担体を用いて、実施例5と同様の方法にて、プロテインAを固定化した吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目31mg、2回目32mg、3回目32mgであった。また、精製IgG中にリークしたIgGに対するリガンド濃度は、1回目16ppm、2回目16ppm、3回目8ppmであった。
【0166】
(実施例9)
プロテインA固定化温度を4℃から21℃に変更する以外は、実施例7と同様の方法にて、吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、34mgであった。
【0167】
(実施例10)
プロテインA固定化後に、水素化ホウ素ナトリウムを加える時に、粉末で加える代わりに、同量の水素化ホウ素ナトリウムをRO水に溶解させ、17mg/mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液を12.4mL作製し、25回に分けて1時間かけて全量を加えたこと以外は、実施例7と同様の方法にて、吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目39mg、2回目38mg、3回目39mgであった。
【0168】
(実施例11)
プロテインA固定化後に、水素化ホウ素ナトリウムを加える時に、粉末で加える代わりに、17mg/mLの水素化ホウ素ナトリウム溶液を0.5mL加えたこと以外は、実施例7と同様の方法にて、吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、2回目39mg、3回目39mgであった。
【0169】
(実施例12)
プロテインA固定化後に、一回目に水素化ホウ素ナトリウムを加える代わりに、ジメチルアミンボラン(和光純薬工業製)を水素化ホウ素ナトリウムと当モル量粉末で加えたこと以外は、実施例7と同様の方法にて、吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目36mg、3回目38mgであった。
【0170】
(比較例1)
グルコサミン固定化後に還元反応を行わない以外は、実施例1と同様にして、グルコサミン化多孔質担体とホルミル基含有多孔質担体Fを得た。この多孔質担体のグルコサミン導入量は、多孔質担体1mLあたり20.2μmolであった。また、還元剤で処理しきれなかったグルコサミン固定化後のホルミル基量は、7μmolであった。また、ホルミル基含有多孔質担体のホルミル基含有量は多孔質担体F1mLあたり、14.5μmolであった。得られたホルミル基多孔質担体を用いて、実施例5と同様の方法にて、プロテインAを固定化した吸着体を得た。得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目37mg、2回目38mg、3回目38mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンドのIgGに対する濃度は、1回目87ppm、2回目47ppm、3回目56ppmであった。
【0171】
(比較例2)
作成例1の多孔質粒子B、64mLに、RO水を加えて全量を96mLとして、セパラブルフラスコに入れ、これを25℃の恒温槽(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S)に取り付けた。次に、過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業製)をRO水に溶解させ、1.44mg/mLの過ヨウ素酸ナトリウム溶液を作製し、64mLをセパラブルフラスコに加え、25℃で1時間、回転数120rpmで攪拌した(マゼラ Z)。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、濾液の電気伝導度が5μS/cm以下となるまでRO水で洗浄し、ホルミル基含有多孔質担体Gを得た。得られたホルミル基含有多孔質担体Gのホルミル基含量を測定した結果、ホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり5.9μmolであった。
【0172】
このホルミル基多孔質担体54.5mLをグラスフィルター(TOP社製25G−2)上でpH11の0.5Mリン酸(和光純薬工業製)+0.15M食塩(和光純薬工業製)バッファー165mLで置換した。置換後のホルミル基含有多孔質担体にpH11の0.5Mリン酸(和光純薬工業製)+0.15M食塩(和光純薬工業製)バッファーを加えて全量を90.5mLとして、セパラブルフラスコに入れ、国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が、52.85mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製PNXL30)を8.25mL加え、恒温槽中で(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−2S、投込冷却装置 ADVANTEC TBC120DA)、4℃で12時間、回転数150rpmで攪拌ながら反応させた(マゼラ Z)。
【0173】
反応後、反応液のpHが8になるように4M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)を用いて調整した後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業製)を0.155g加えて、4℃で1時間、ゆるやかに攪拌しながら反応させた。反応後、反応液の276nm付近の吸収極大の吸光度を測定した結果、アフィニティーリガンドであるプロテインAの導入量が、多孔質担体1mL当り、6.7mgであることがわかった。
【0174】
反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、洗浄後の担体にRO水を加え109mLとし、セパラブルフラスコに移し、0.155gの水素化ホウ素ナトリウムを加えて25℃で1時間攪拌した。反応後、20倍量のRO水で洗浄した。次いで、3倍体積量の0.01M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)で置換し、置換した多孔質担体に0.01M塩酸を加えて全量を109mLとし、セパラブルフラスコに入れ、室温で30分間、攪拌しながら、酸洗浄を行った。
【0175】
酸洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、次いで、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、RO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を109mLとし、セパラブルフラスコに入れ、室温で20分間、攪拌しながら、アルカリ洗浄を行った。
【0176】
アルカリ洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄した。次に、ゲルの3倍体積量のpH7.4のPBS(SIGMA社製)で置換し後、RO水を用いて、洗浄濾液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄し、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄濾液の電気伝導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。
【0177】
得られた吸着体の動的吸着量と目的物中に溶出したリガンド量を求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目35mg、2回目35mg、3回目35mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンドのIgGに対する濃度は、1回目>100ppm、2回目>100ppm、3回目>100ppmであった。
【0178】
(比較例3)
チッソ社製CK−Aを分級しないこと以外は、作成例1と同様の方法で、架橋多孔質粒子を得た。次いで、この架橋多孔質粒子11mLにRO水を加えて全量を12.6mLとして、遠沈管(岩城硝子社製50mL)に入れ、さらに2M水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウムとRO水で調整)3.7mLをこれに加えて、40℃で30分加温した。液温が40℃に加温された後、エピクロロヒドリン(和光純薬工業社製)を1.3mL加えて、恒温振とう機(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−25)を用いて、40℃で2時間、100回/分で振とうしながら反応させた。
【0179】
反応終了後、グラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、多孔質粒子の20倍体積量のRO水で洗浄し、多孔質粒子1mLあたりのエポキシ含量が5.7μmolであるエポキシ化多孔質粒子を得た。このエポキシ化多孔質粒子9.5mLをグラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、pH10の0.5M炭酸バッファー(和光純薬工業社製の炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムと、RO水で調整)30mLを用いて置換した。置換後のエポキシ化多孔質粒子にpH10の0.5M炭酸バッファーを加えて全量を19mLとして、遠沈管(岩城硝子社製50mL)に入れ、さらにD(+)−グルコサミン塩酸塩(和光純薬工業社製)を0.18g加え、恒温振とう機(トーマス科学社製サーモスタティックウォーターバスT−25)を用いて、50℃で一晩、100回/分で振とうし、反応させた。
【0180】
反応後、グラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、グルコサミン含量が多孔質担体1mLあたり1.4μmolであるグルコサミン化多孔質担体を得た。得られたグルコサミン化多孔質担体10mLにRO水を加えて、全量を15mLとして、遠沈管(岩城硝子社製50mL)に入れた。次に115mgの過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を10mLのRO水に溶解させ、この過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を遠沈管に加えて、インキュベーター(イワキガラス社製インキュベーターLOW−TEMP ICB−151L)中で、ミックスローター(井内盛栄堂社製バリアブルミックスローターVMR−5)を用いて、25℃で1時間、100回/分で振とうしながら反応させた。
【0181】
反応後、グラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、多孔質担体の20倍体積量のRO水で洗浄し、ホルミル基含有多孔質担体を得た。得られたホルミル基含有多孔質担体のホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、ホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり5.9μmolであった。
【0182】
このホルミル基含有多孔質担体7.1mLをグラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、pH10の0.5Mリン酸+0.15M食塩バッファー(和光純薬工業社製リン酸水素2ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、RO水を用いて調整)30mLで置換した。置換後のホルミル基含有多孔質担体にpH10の0.5Mリン酸+0.15M食塩バッファーを加えて、全量を11.8mLとして、遠沈管(岩城硝子社製50mL)に入れ、国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が、52.6mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製PNXL28)を1.08mL加え、インキュベーター(イワキガラス社製インキュベーターLOW−TEMP ICB−151L)中で、ミックスローター(井内盛栄堂社製バリアブルミックスローターVMR−5)を用いて、4℃で12時間、100回/分で振とうしながら反応させた。
【0183】
反応後の反応液のpHが8になるように4M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)を用いて調整した後、水素化ホウ素ナトリウムを0.02g加えて、4℃で1時間、ゆるやかに振とうしながら反応させた。反応後、反応液の277nm付近の吸収極大の吸光度を測定した結果、アフィニティーリガンドであるプロテインAの導入量が、多孔質担体1mL当り、4.7mgであることがわかった。
【0184】
反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製17G−2)上で、RO水を用いて、洗浄濾液の電気伝導度が5μS/cm以下になるまで洗浄し、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。
【0185】
得られた吸着体の目的物としてヒトポリクローナルIgG(バクスター社製ガンマガード)を選択し、動的吸着量と目的物中にリークしたリガンド量を以下の方法で求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目22mg、2回目23mg、3回目27mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は、1回目297ppm、2回目214ppm、3回目198ppmであった。
【0186】
(作製例2)
作製例1と同様の方法で作製した多孔質粒子B100mLにRO水を加えて、全量を150mLとして、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れた。次に2.30gの過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を50mLのRO水に溶解させ、この過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をセパラブルフラスコに加えて、25℃で15分、150回/分で攪拌しながら反応させた。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質粒子の20倍体積量のRO水で洗浄し、多孔質粒子Hを得た。得られたホルミル基含有多孔質粒子のホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、ホルミル基含量は多孔質粒子1mLあたり57μmolであった。
【0187】
(実施例13)
作製例2と同様の方法で作製した99mLの多孔質粒子Hと99mLのRO水との1:1スラリーを15℃に調整した後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で15分間吸引ろ過(サクションドライ)した。得られたサクションドライ済みの多孔質粒子Iをガラス製のセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に全量投入した。その後、このセパラブルフラスコに3.3gのグルコサミン塩酸塩(協和発酵社製発酵グルコサミンK)を投入した。次いで、グルコサミン塩酸塩を溶解しながら15℃のRO水を加え、溶解後の反応液全量が180mLとなるように調整した。反応液を15℃に調整した後、4Nの水酸化ナトリウム水溶液とRO水を用いて、pHが10で、反応液全量が198mLとなるように調整した。次いで15℃で5時間、150回/分で攪拌した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を0.56g添加し、15℃で60分間、150回/分で攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の40倍体積量のRO水で洗浄した。
【0188】
「次に、洗浄後の多孔質担体をガラス製のセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に全量投入し、RO水を加えて、全量が198mLとなるように調整した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業社製)を0.56g添加し、15℃で60分間、150回/分で攪拌した。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の40倍体積量のRO水で洗浄した。」この「」内の操作を計2回行い、目的とする多孔質担体を得た。非水滴定により、この多孔質担体中のグルコサミン固定化量を測定した結果、担体の1mLあたり10μmolであった。
【0189】
(実施例14)
グルコサミン塩酸塩添加後に実施するpH調整にて、pHを9とした以外は、実施例13と同様の方法で目的の多孔質担体を作製した。このグルコサミン固定化量は、担体の1mLあたり10μmolであった。
【0190】
(実施例15)
グルコサミン塩酸塩添加後に実施するpH調整にて、pHを8とした以外は、実施例13と同様の方法で目的の多孔質担体を作製した。このグルコサミン固定化量は、担体の1mLあたり10μmolであった。
【0191】
(実施例16)
実施例13で作製した94mLの多孔質担体を、pH3の0.01Mクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)280mLで置換し、該バッファーを加え、全量を141mLとして、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れた。次に0.54gの過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を94mLのRO水に溶解させ、この過ヨウ素酸ナトリウム水溶液をセパラブルフラスコに加えて、5℃で40分、150回/分で攪拌しながら反応させた。反応後、グラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、多孔質担体の40倍体積量のRO水で洗浄し、ホルミル基含有多孔質担体を得た。得られた担体のホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、ホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり4μmolであった。
【0192】
92.8mLの上記ホルミル基含有多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、0.6Mクエン酸三ナトリウム+0.2M食塩バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、RO水を用いて調整)280mLで置換した。置換後の該多孔質担体に0.6Mクエン酸三ナトリウム+0.2M食塩バッファーを加えて全量を132mLとし、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が、52.8mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製PNXL35)を14.06mL加え、0.08Mの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製の水酸化ナトリウムとRO水で調整)を加えて反応液のpHを12に調整し、4℃で4時間、150回/分で攪拌しながら反応させた。
【0193】
反応後の反応液のpHが7になるように0.1Mクエン酸(和光純薬工業社製クエン酸一水和物とRO水で調整)を用いて調整した後、ジメチルアミンボランを408mg加えて、4℃で1時間、次いで25℃で8時間、いずれも150回/分で撹拌しながら反応させた。反応後、反応液の277nm付近の吸収極大の吸光度を測定した結果、アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、7.6mgであることがわかった。
【0194】
反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄した後、3倍体積量の0.1Mクエン酸(和光純薬工業社製クエン酸一水和物とRO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.1Mクエン酸を加えて全量を186mLとし、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、25℃で30分間、150回/分で振とうしながら、酸洗浄を行った。
【0195】
酸洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、RO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を186mLとし、全量をセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、25℃で20分間、150回/分で振とうしながら、アルカリ洗浄を行った。
【0196】
アルカリ洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、pH6の0.5Mクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)278mLで置換し、その後、RO水を用いて、洗浄ろ液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄した。
【0197】
続いて、20%エタノール水溶液(日本薬局方のエタノールとRO水で調整)で多孔質担体を置換し、さらに20%エタノール水溶液を用いて、250mLのポリ容器(サンプラテック社製)に入れ、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄ろ液の電導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。
【0198】
得られた吸着体の目的物としてヒトポリクローナルIgG(バクスター社製ガンマガード)を選択し、動的吸着量と目的物中にリークしたリガンド量を以下の方法で求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、担体1mLあたり37mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は24ppmであった。得られた吸着体のホルミル基含量を前述の方法で測定した結果、多孔質担体1mLあたり0.2μmolであった。
【0199】
(実施例17)
実施例14で作製した多孔質担体を用いた以外は、実施例16と同様の操作で目的とする吸着体を得た。このIgG動的吸着量は、担体1mLあたり37mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は22ppmであった。
【0200】
(実施例18)
実施例15で作製した多孔質担体を用いた以外は、実施例16と同様の操作で目的とする吸着体を得た。このIgG動的吸着量は、担体1mLあたり37mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は26ppmであった。
【0201】
(実施例19)
pH3のクエン酸バッファーの代わりにpH2のクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)を用いた以外は、実施例17と同様の操作で吸着体を作製した。このとき、ホルミル基含有多孔質担体のホルミル含量は多孔質担体1mLあたり6μmolであり、アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、7.2mgであった。また、IgG動的吸着量は35mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は38ppmであった。
【0202】
(実施例20)
pH3のクエン酸バッファーの代わりにpH5のクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)を用いた以外は、実施例17と同様の操作で吸着体を作製した。このとき、ホルミル基含有多孔質担体のホルミル含量は多孔質担体1mLあたり4μmolであり、アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、6.5mgであった。また、IgG動的吸着量は35mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は42ppmであった。
【0203】
(実施例21)
実施例1と同様の方法で作製した92.8mLのホルミル基含有多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、RO水を用いて調整)278mLで置換した。置換後のホルミル基含有多孔質担体に0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファーを加えて全量を130mLとし、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が、52.85mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製PNXL30)を14.04mL加え、4Mの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製の水酸化ナトリウムとRO水で調整)を加えて反応液のpHを11に調整した。さらに、pH11の0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、RO水を用いて調整)を用いて、反応液全量を168mLに調整した後、4℃で12時間、150回/分で攪拌しながら反応させた。
【0204】
反応後の反応液のpHが6.8になるように4M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)を用いて調整した後、水素化ホウ素ナトリウムを263mg加えて、4℃で1時間、150回/分で撹拌しながら反応させた。反応後、反応液の277nm付近の吸収極大の吸光度を測定した結果、アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、7.2mgであることがわかった。
【0205】
反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄した後、全量をセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、RO水を加えて、反応液全量が168mLとなるよう調整した。次いで、水素化ホウ素ナトリウムを263mg加えて、25℃で1時間、150回/分で撹拌しながら反応させた。反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄した後、3倍体積量の0.01M塩酸(和光純薬工業社製塩酸とRO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.01M塩酸を加えて全量を168mLとし、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、25℃で30分間、150回/分で振とうしながら、酸洗浄を行った。
【0206】
酸洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄し、次いで、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、RO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を168mLとし、全量をセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、25℃で20分間、150回/分で振とうしながら、アルカリ洗浄を行った。
【0207】
アルカリ洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、pH6の0.01Mクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)278mLで置換し、その後、RO水を用いて、洗浄ろ液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄した。続いて、20%エタノール水溶液(日本薬局方のエタノールとRO水で調整)で多孔質担体を置換し、さらに20%エタノール水溶液を用いて、250mLのポリ容器(サンプラテック社製)に入れ、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄ろ液の電導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。
【0208】
得られた吸着体の目的物としてヒトポリクローナルIgG(バクスター社製ガンマガード)を選択し、動的吸着量と目的物中にリークしたリガンド量を以下の方法で求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目36mg、2回目36mg、3回目37mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は、1回目69ppm、2回目47ppm、3回目36ppmであった。
【0209】
(実施例22)
0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファーの代わりに、0.025Mリン酸+1.5M硫酸ナトリウムバッファー(和光純薬工業社製リン酸水素二ナトリウム12水、硫酸ナトリウム、RO水を用いて調整)を用い、pH11の0.5Mクエン酸三ナトリウム+0.15M食塩バッファーの代わりに、pH11の0.025Mリン酸+1.5M硫酸ナトリウムバッファー(和光純薬工業社製リン酸水素二ナトリウム12水、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、RO水を用いて調整)を用いた以外は、実施例21と同様の方法で吸着体を作製した。アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量を実施例2と同様に求めた結果、多孔質担体1mL当り、7.4mgであることがわかった。
【0210】
(実施例23)
実施例21でpHを11に調整した操作を、pH12.5に変更した以外は、実施例21と同様の方法で吸着体を作製した。プロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、6.0mgで、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目33mg、2回目33mg、3回目33mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は、1回目が35ppmであった。
【0211】
(実施例24)
実施例21でpHを11に調整した操作を、pH13に変更した以外は、実施例21と同様の方法で吸着体を作製した。プロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、4.0mgで、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、1回目28mg、2回目33mg、3回目33mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は、1回目が23ppmであった。
【0212】
(実施例25)
実施例21でpHを11に調整した操作を、pH10に変更した以外は、実施例21と同様の方法で吸着体を作製した。プロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、4.0mgで、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、29mgであった。
【0213】
(実施例26)
実施例1と同様の方法で作製した92.8mLのホルミル基含有多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G−2)上で、0.6Mクエン酸三ナトリウム+0.2M食塩バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、RO水を用いて調整)280mLで置換した。置換後の多孔質担体Fに0.6Mクエン酸三ナトリウム+0.2M食塩バッファーを加えて全量を132mLとし、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、国際公開特許公報WO2006/004067に記載の方法で作製されたプロテインAの濃度が、52.8mg/mLのプロテインA含有溶液(カネカ社製PNXL35)を14.06mL加え、0.08Mの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製の水酸化ナトリウムとRO水で調整)を加えて反応液のpHを12に調整し、4℃で4時間、150回/分で攪拌しながら反応させた。反応後の反応液のpHが7になるように0.1Mクエン酸(和光純薬工業社製クエン酸一水和物とRO水で調整)を用いて調整した。1時間、同温度にて撹拌を継続した後、ジメチルアミンボランを408mg加えて、4℃で1時間、次いで25℃で5時間、いずれも150回/分で撹拌しながら反応させた。
【0214】
反応後の多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、多孔質担体の10倍体積量のRO水で洗浄した後、3倍体積量の0.1Mクエン酸(和光純薬工業社製クエン酸一水和物とRO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.1Mクエン酸を加えて全量を186mLとし、セパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、25℃で30分間、150回/分で振とうしながら、酸洗浄を行った。
【0215】
酸洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、3倍体積量の0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、RO水で調整)で置換した。次に、置換した多孔質担体に0.05M水酸化ナトリウム+1M硫酸ナトリウム水溶液を加えて全量を186mLとし、全量をセパラブルフラスコ(TOP社製500mL)に入れ、25℃で20分間、150回/分で振とうしながら、アルカリ洗浄を行った。
【0216】
アルカリ洗浄後、多孔質担体をグラスフィルター(TOP社製26G―2)上で、pH6の0.5Mクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)278mLで置換し、その後、RO水を用いて、洗浄ろ液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄した。続いて、20%エタノール水溶液(日本薬局方のエタノールとRO水で調整)で多孔質担体を置換し、さらに20%エタノール水溶液を用いて、250mLのポリ容器(サンプラテック社製)に入れ、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。RO水を用いて、洗浄ろ液の電導度が5μS/cm以下になるまで洗浄した。続いて、20%エタノール水溶液(日本薬局方のエタノールとRO水で調整)で多孔質担体を置換し、さらに20%エタノール水溶液を用いて、250mLのポリ容器(サンプラテック社製)に入れ、目的とするプロテインAを固定化した吸着体を得た。洗浄ろ液の電導度は、導電率計(EUTECH INSTRUMENTS製 ECTestr10 pure+)で測定した。
【0217】
得られた吸着体の目的物としてヒトポリクローナルIgG(バクスター社製ガンマガード)を選択し、動的吸着量と目的物中にリークしたリガンド量を以下の方法で求めた結果、IgG動的吸着量(5%ダイナミックバインディングキャパシティー)は、担体1mLあたり34mgであった。また、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は30ppmであった。
【0218】
(実施例27)
0.1Mクエン酸にてpH7に調整した後、同温度で行う撹拌継続時間を2時間とした以外は、実施例26と同じ操作として吸着体を得た。取得した吸着体のIgG動的吸着量は、担体1mLあたり36mgであった。
【0219】
(実施例28)
0.1Mクエン酸にてpH7に調整した後、同温度で行う撹拌継続時間を4時間とした以外は、実施例26と同じ操作として吸着体を得た。取得した吸着体のIgG動的吸着量は、担体1mLあたり37mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は22ppmであった。
【0220】
(実施例29)
0.1Mクエン酸にてpH7に調整した後、同温度で行う撹拌継続時間を6時間とした以外は、実施例26と同じ操作として吸着体を得た。取得した吸着体のIgG動的吸着量は、担体1mLあたり36mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は45ppmであった。
【0221】
(実施例30)
0.1Mクエン酸にてpH7に調整した後、同温度で行う撹拌継続時間を15時間とした以外は、実施例26と同じ操作として吸着体を得た。取得した吸着体のIgG動的吸着量は、担体1mLあたり37mgであった。
【0222】
(実施例31)
pH12にてプロテインAを反応させた後、1.6Mクエン酸にてpH3に調整し、その後同温度で行う撹拌継続時間を4時間とした以外は、実施例26と同じ操作とし、吸着体を得た。取得した吸着体のIgG動的吸着量は、担体1mLあたり36mg、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は30ppmであった。
【0223】
(実施例32)
0.1Mクエン酸にてpH7に調整した直後に、ジメチルアミンボランを加えたこと以外は、実施例26と同じ操作をして吸着体を得た。取得した吸着体のIgG動的吸着量は、担体1mLあたり31mg、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は22ppmであった。
【0224】
(実施例33)
作製例1で作製した多孔質粒子Bを、pH3のクエン酸バッファー(和光純薬工業社製クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、RO水を用いて調整)282mLで置換し、該バッファーを用いて液量を調整し、また、過ヨウ素酸ナトリウムを0.16gとした以外は、実施例32と同様の操作で吸着体を作製した。このとき、多孔質担体Eのホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり7μmolであり、アフィニティーリガンドであるプロテインAの固定化量は、多孔質担体1mL当り、5.0mgであった。また、IgG動的吸着量は31mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は36ppmであった。得られた吸着体のホルミル基含量は、多孔質担体1mLあたり0.2μmolであった。
【0225】
(比較例4)
ジメチルアミンボランを用いず、実施例16と同様の操作で吸着体を得た。得られた吸着体のホルミル基含量は多孔質担体1mLあたり2μmolであった。また、IgG動的吸着量は、担体1mLあたり27mgであり、精製IgG中にリークしたリガンド濃度は、615ppmであった。