特許第5666762号(P5666762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666762
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/012 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   G01B5/012
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2007-21087(P2007-21087)
(22)【出願日】2007年1月31日
(65)【公開番号】特開2008-185535(P2008-185535A)
(43)【公開日】2008年8月14日
【審査請求日】2009年11月27日
【審判番号】不服2013-17606(P2013-17606/J1)
【審判請求日】2013年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 武
【合議体】
【審判長】 森 竜介
【審判官】 中塚 直樹
【審判官】 新川 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭59−501875(JP,A)
【文献】 特開昭56−53401(JP,A)
【文献】 実開昭62−117508(JP,U)
【文献】 特開平1−32108(JP,A)
【文献】 特開2004−255494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブと被測定物とを相対変位させながら被測定物の測定対象部にプローブを接触させ、そのときの相対変位量から被測定物の寸法等を測定する測定機であって、
エアを供給または吸引するエア制御手段を備え、
前記プローブは、
前記被測定物の測定対象部と当接される接触子が先端に設けられた触針と、
前記エア制御手段に接続され前記接触子近傍にエアを噴出または前記接触子近傍からエアを吸引する洗浄手段と、
前記触針を覆うように設けられた触針保護部と、を備え、
前記触針保護部は、外周面と、内周面と、前記外周面及び前記内周面と略平行に設けられたエア流路とを備え、前記接触子側の端部に前記エア流路の開口部を有する中空部材であり、前記接触子から離れた位置から前記接触子に近接する位置に近づくに従って径が小さくなる筒形状であり、前記触針の基端から、前記触針の中心位置よりも先端側までを覆い、
前記触針は、前記触針保護部の前記開口部に挿通され、
前記洗浄手段は、前記触針保護部に設けられ、前記触針保護部内の前記エア流路および前記開口部を介して、前記触針と略同じ方向にエアを噴出または吸引する
ことを特徴とする測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の測定機であって、
前記プローブは、エアガイドを介して移動可能に設けられた可動部材に取り付けられ、
前記エア制御手段は、前記洗浄手段および前記エアガイドにエアを供給する
ことを特徴とする測定機。
【請求項3】
請求項2に記載の測定機であって、
前記可動部材は、前記エアガイドに使用されたエアを前記洗浄手段に誘導するエア誘導手段を有し、
前記エア制御手段は、前記エアガイドおよび前記エア誘導手段を介して前記洗浄手段にエアを供給する
ことを特徴とした測定機。
【請求項4】
請求項1に記載の測定機であって、
外部から遮断された温度制御空間と、
所定の温度のエアを前記温度制御空間に供給し前記温度制御空間の温度を制御する温度制御手段と、を備え、
前記プローブは、前記温度制御空間の内部に設けられ、
前記温度制御手段は、前記エア制御手段として前記洗浄手段に所定の温度のエアを供給する
ことを特徴とした測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブで被測定物の寸法や形状等を測定する三次元測定機等の測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の寸法や形状等を測定する測定機として、三次元測定機が知られている。
従来の三次元測定機は、例えば、基台を備え、この基台上には水平なテーブルが設けられるとともに、水平な一方向(Y方向)に移動可能なコラムが立設されている。コラムには、当該コラムの移動方向と水平面内で直交する方向(X方向)に移動可能にサドルが設けられ、このサドルには、上下方向(Z方向)にスライド可能なスピンドルを介してプローブが設けられている。
このプローブは、本体に上下方向にスライド可能に取り付けられる触針、および、この触針の先端に取り付けられた接触子を備えている。
このような三次元測定機では、テーブル上に載置された被測定物に対して、プローブを適宜3方向に移動させ、接触子を被測定物表面の測定対象部に当接させて座標を検出し、被測定物の寸法や形状等を求める。
【0003】
ところで、被測定物の測定対象部にゴミや切り屑等が付着していると、スパイクノイズ等による測定誤差が発生し、正確な測定を行うことができない。そのため、被測定物の寸法や形状等の測定にあたっては、予め被測定物の測定対象部をきれいに洗浄する必要がある。
そこで、例えば、三次元測定機による被測定物の形状測定を実施する前に、溶剤をしみこませた産業用ワイパーで被測定物の測定対象部を拭いたり、スプレーやエアブロー等を用いて被測定物に高圧のエアを吹き付け、被測定物の測定対象部に付着したゴミや切り屑等を取り除くことが行われている。
また、特許文献1には、プローブ先端近傍に気体を吹き付ける洗浄装置を備え、被測定物の測定面に付着した塵等を取り除きつつ被測定物の形状測定を実施することができる洗浄装置付測定機が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−35325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の洗浄形式では、次のような課題がある。
例えば、産業用ワイパーで被測定物の測定対象部を拭く場合には、強く拭くと測定対象部に傷が発生する場合がある。スプレーやエアブロー等を用いて洗浄する場合には、被測定物の測定対象部にスプレーやエアブロー等のエアの吐き出し口を近づけた際に、吐き出し口がプローブの触針および接触子や、被測定物の測定対象部に接触し、これらを破壊するおそれがあり、また、エアの吐き出し圧力により繊細な構造を有する触針を曲げたり破壊するおそれがある。
特許文献1に記載の洗浄装置付測定機においても、触針に対して斜めからエアを吹き付けるため、触針に向かって直接エアが噴出され、エアの吐き出し圧力により繊細な構造を有する触針を曲げたり破壊するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、触針や接触子を破壊したり被測定物の測定対象部に傷をつけたりすることなく清浄な測定対象部を確保でき、測定の信頼性を向上させることができる測定機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の測定機は、プローブと被測定物とを相対変位させながら被測定物の測定対象部にプローブを接触させ、そのときの相対変位量から被測定物の寸法等を測定する測定機であって、エアを供給または吸引するエア制御手段を備え、前記プローブは、前記被測定物の測定対象部と当接される接触子が先端に設けられた触針と、前記エア制御手段に接続され前記接触子近傍にエアを噴出または前記接触子近傍からエアを吸引する洗浄手段と、前記触針を覆うように設けられた触針保護部と、を備え、前記触針保護部は、外周面と、内周面と、前記外周面及び前記内周面と略平行に設けられたエア流路とを備え、前記接触子側の端部に前記エア流路の開口部を有する中空部材であり、前記接触子から離れた位置から前記接触子に近接する位置に近づくに従って径が小さくなる筒形状であり、前記触針の基端から、前記触針の中心位置よりも先端側までを覆い、前記触針は、前記触針保護部の前記開口部に挿通され、前記洗浄手段は、前記触針保護部に設けられ、前記触針保護部内の前記エア流路および前記開口部を介して、前記触針と略同じ方向にエアを噴出または吸引することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、エア制御手段に接続された洗浄手段が、接触子近傍にエアを噴出または接触子近傍からエアを吸引するので、測定に先立って被測定物の測定対象部に付着した塵等を除去することができる。
すなわち、プローブの接触子を被測定物の測定対象部近傍に移動させ、洗浄手段によりエアを噴出すれば、測定対象部に付着した塵等を吹き飛ばして除去することができる。また、洗浄手段によりエアを吸引すれば、測定対象部に付着した塵等を吸引して除去することができる。これにより、清浄な測定対象部を確保して測定の信頼性を向上させることができ、高精度な測定が可能となる。
【0009】
また、従来のように産業用ワイパー、スプレーやエアブロー等を用いて測定対象部を洗浄する必要がなくなるため、スプレーやエアブロー等のエアの吐き出し口の接触により触針や接触子を破壊したり、被測定物の測定対象部に傷をつけたりすることがない。洗浄のために、産業用ワイパー、スプレーやエアブロー等を用意する必要がなくなるので、測定作業の効率化を図ることができる。
さらに、洗浄手段が、触針と略同じ方向にエアを噴出または吸引するので、触針に向かって直接エアが噴出されることがなく、触針に斜めから力が加わることもなく、エアの吐き出し圧力により繊細な構造を有する触針が曲がったり破損することを防止できる。
したがって、本発明の測定機は、触針や接触子を破壊したり被測定物の測定対象部に傷をつけたりすることなく清浄な測定対象部を確保でき、測定の信頼性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記プローブは、前記触針を覆うように設けられた触針保護部を備え、前記洗浄手段は、前記触針保護部に設けられることを特徴とする
このような構成によれば、洗浄手段が、触針を覆うように設けられた触針保護部に設けられるので、触針保護部により触針を保護しつつ、洗浄手段により被測定物の測定対象部に付着した塵等を除去することができる。
【0011】
本発明において、前記触針保護部は、前記接触子側の端部に開口部を有する中空部材であり、前記触針は、前記触針保護部の前記開口部に挿通され、前記洗浄手段は、前記触針保護部内の中空部および前記開口部を介してエアを噴出または吸引することを特徴とする
このような構成によれば、エア制御手段により供給された空気の流れが触針と異なる方向であったとしても、洗浄手段が、触針保護部内の中空部および開口部を介してエアを噴出または吸引するので、洗浄手段によるエアの噴出または吸引を触針と略同じ方向とすることができる。これにより、繊細な構造を有する触針の破損を防止しつつ、接触子近傍の塵等を適切に除去することができる。
【0012】
本発明において、前記プローブは、エアガイドを介して移動可能に設けられた可動部材に取り付けられ、前記エア制御手段は、前記洗浄手段および前記エアガイドにエアを供給することが好ましい。
このような構成によれば、エア制御手段が、洗浄手段およびエアガイドの双方にエアを供給するので、洗浄手段専用のエア制御手段を設ける必要がない。これにより、測定機を小型化するとともに製造コストを抑えることができる。また、洗浄手段専用のエア制御手段を設ける場合と比べ、測定の省電力化を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記可動部材は、前記エアガイドに使用されたエアを前記洗浄手段に誘導するエア誘導手段を有し、前記エア制御手段は、前記エアガイドおよび前記エア誘導手段を介して前記洗浄手段にエアを供給することが好ましい。
このような構成によれば、可動部材が、エアガイドに使用されたエアを洗浄手段に誘導するエア誘導手段を有し、エア制御手段が、エア誘導手段を介して洗浄手段にエアを供給するので、エア制御手段から洗浄手段にエアを供給するための配管を設ける必要がなく、測定機の構成を簡略化することができる。
【0014】
本発明において、測定機は、外部から遮断された温度制御空間と、所定の温度のエアを前記温度制御空間に供給し前記温度制御空間の温度を制御する温度制御手段と、を備え、前記プローブは、前記温度制御空間の内部に設けられ、前記温度制御手段は、前記エア制御手段として前記洗浄手段に所定の温度のエアを供給することが好ましい。
このような構成によれば、温度制御手段が、所定の温度のエアを温度制御空間に供給するとともに、エア制御手段として洗浄手段に所定の温度のエアを供給するので、洗浄手段専用のエア制御手段を設ける必要がない。これにより、測定機を小型化するとともに製造コストを抑えることができる。また、洗浄手段専用のエア制御手段を設ける場合と比べ、測定の省電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の各実施形態の測定機は、プローブがX軸Y軸Z軸方向の3方向に移動自在な三次元測定機である。
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態の三次元測定機の正面図を示す。
本実施形態の三次元測定機1は、図1に示すように、基台2を備えている。
この基台2上には、被測定物Wを載置する水平なテーブル3が設けられるとともに、紙面直交方向(Y軸方向)に水平移動自在なコラム4が立設されている。
コラム4には、Y軸方向と直交する水平方向(X軸方向)に移動自在なサドル5が設けられ、このサドル5には、可動部材であるスピンドル8がエアガイド7を介して上下方向(Z軸方向)へ移動可能に設けられ、このスピンドル8の先端にプローブ6が設けられている。
また、三次元測定機1は、エアガイド7にエアを供給するエア制御手段9(図2参照)を備える。
【0016】
図2に、プローブ6近傍の概略断面図を示す。
プローブ6は、図2に示すように、スピンドル8の下端面の略中心部に設けられた検出部60と、検出部60に挿通して支持されている触針62と、触針62を覆うように設けられた触針保護部63と、触針保護部63に設けられ接触子61近傍にエアを噴出する洗浄手段64と、を備える。
スピンドル8は、略円柱形状の部材であり、スピンドル8を覆うように設けられた略円筒形状のエアガイド7により上下方向にスライド可能に支持されている。また、スピンドル8は、エアガイド7に使用されたエアを洗浄手段64に誘導するエア誘導手段81を有する。エア誘導手段81は、スピンドル8の外周面下端部とスピンドル8の下端面とをつなぐように設けられた複数のL字状孔部81Aである。
【0017】
エアガイド7は、図2に示すように、エア制御手段9と接続されており、エア制御手段9から供給されたエアをスピンドル8に対して噴出する噴出部71を備える。噴出部71から噴出されたエアにより、スピンドル8は上下方向にスライド可能に支持される。噴出部71から噴出されたエア、すなわちエアガイド7に使用されたエアは、その後、スピンドル8の外周面とエアガイド7の内周面との間の空間7A、および、スピンドル8のL字状孔部81Aを通過してスピンドル8の下端面に噴出する。
【0018】
プローブ6の触針62は、先端に被測定物Wの測定対象部と当接される略球形の接触子61を有し、他端がスピンドル8の下端面の略中心部に設けられた検出部60に支持される略棒状の部材である。
検出部60は、スピンドル8の下端面の略中心部に設けられ触針62を支持するとともに、触針62の上下方向(Z方向)への変位量を検出する。
触針保護部63は、接触子61側の端部に開口部63Aを有する中空部材であり、その開口部63Aには、触針62が挿通されている。触針保護部63は、接触子61側ほど径の小さい略円筒形状の外形を有し、開口部63Aと逆側の端部は、触針保護部63の外周面がスピンドル8の外周面と連続するように、スピンドル8の下端面に固定されている。
【0019】
洗浄手段64は、触針保護部63内の中空部63Bおよび触針保護部63の開口部63Aにより構成される。洗浄手段64は、エアガイド7に使用されL字状孔部81Aを介してスピンドル8の下端面に噴出されたエアを、触針保護部63内の中空部63Bおよび開口部63Aを介して接触子61近傍に噴出させる。
【0020】
このような三次元測定機1を用い、被測定物Wの寸法や形状等を測定する方法を説明する。
まず、洗浄手段64を用いて被測定物Wの測定対象部を洗浄する。
図3に、測定対象部を洗浄する際のプローブ6先端近傍の断面図を示す。
はじめに、エア制御手段9を操作して、エアガイド7へのエアの供給を開始する。
すると、図3に示すように、エアガイド7の噴出部71からエアが噴出され、プローブ6が上下方向に移動可能に支持される。エアガイド7に使用されたエアは、その後、スピンドル8の外周面とエアガイド7の内周面との間の空間7A、および、スピンドル8のL字状孔部81Aを通過してスピンドル8の下端面に噴出する。このエアは、さらに、触針保護部63内の中空部63Bおよび開口部63Aを介して接触子61近傍に噴出する。このとき、開口部63Aからのエアの噴出は、触針62と略同じ方向となる。
【0021】
次に、コラム4、サドル5、スピンドル8を操作し、プローブ6を適宜3方向に動かして、接触子61を被測定物Wの測定対象部近傍に移動させる。すると、図3に示すように、開口部63Aからのエアの噴出により測定対象部近傍の塵D等を吹き飛ばして除去することができる。
測定対象部の洗浄終了後は、通常の三次元測定機1と同様に、プローブ6を適宜3方向に移動させ、接触子61を被測定物Wの測定対象部に当接させて座標を検出し、被測定物Wの寸法や形状等を求める。
【0022】
本実施形態によれば、以下に示すような効果がある。
(1) プローブ6の接触子61を被測定物Wの測定対象部近傍に移動させ、洗浄手段64によりエアを噴出させることで、測定対象部に付着した塵D等を吹き飛ばして除去することができる。これにより、清浄な測定対象部を確保して測定の信頼性を向上させることができ、高精度な測定が可能となる。
(2)従来のように産業用ワイパー、スプレーやエアブロー等を用いて測定対象部を洗浄する必要がなくなるため、スプレーやエアブロー等のエアの吐き出し口の接触により触針62や接触子61を破壊したり、被測定物Wの測定対象部に傷をつけたりすることがない。洗浄のために、産業用ワイパー、スプレーやエアブロー等を用意する必要がなくなるので、測定作業の効率化を図ることができる。
【0023】
(3)洗浄手段64が、触針62と略同じ方向にエアを噴出するので、特許文献1に記載の洗浄装置付測定機のように、被測定物Wとの位置関係に合わせて洗浄装置を回動させる洗浄装置の駆動機構を設けなくても、プローブ6の接触子61を被測定物Wの測定対象部近傍に移動させ、洗浄手段64にエアを噴出させれば、測定対象部近傍の塵D等を適切に除去することができる。
(4)エアの噴出または吸引が触針62と略同じ方向だから、触針62に向かって直接エアが噴出されることがなく、エアの吐き出し圧力により繊細な構造を有する触針62が破損することを防止できる。
【0024】
(5)洗浄手段64が、触針62を覆うように設けられた触針保護部63に設けられるので、触針保護部63により触針62を保護しつつ、洗浄手段64により被測定物Wの測定対象部に付着した塵D等を除去することができる。
(6)洗浄手段64が、触針保護部63内の中空部63Bおよび開口部63Aを介してエアを噴出するので、洗浄手段64によるエアの噴出を触針62と略同じ方向とすることができる。これにより、繊細な構造を有する触針62の破損を防止しつつ、接触子61近傍の塵D等を適切に除去することができる。
本実施形態では、特に、触針保護部63が、接触子61側ほど径の小さい略円筒形状の外形を有するので、中空部63B内に供給されたエアの噴出方向が触針62の方向からずれていたとしても、触針保護部63の内周面によりエアの進行方向が矯正される。よって、より確実に触針62と略同じ方向のエアの噴出を得ることができる。
【0025】
(7)エア制御手段9が、洗浄手段64およびエアガイド7の双方にエアを供給するので、洗浄手段64専用のエア制御手段9を設ける必要がない。これにより、三次元測定機1を小型化するとともに製造コストを抑えることができる。また、洗浄手段64専用のエア制御手段9を設ける場合と比べ、測定の省電力化を図ることができる。
(8)スピンドル8が、エアガイド7に使用されたエアを洗浄手段64に誘導するエア誘導手段81を有し、エア制御手段9が、エア誘導手段81を介して洗浄手段64にエアを供給するので、エア制御手段9から洗浄手段64にエアを供給するための配管を設ける必要がなく、三次元測定機1の構成を簡略化することができる。
【0026】
[第2実施形態]
図4に、本発明の第2実施形態の三次元測定機1の、プローブ6近傍の概略断面図を示す。
ここにおいて、本実施形態は、スピンドル8およびエア制御手段9の構成と、プローブ6へのエアの供給方法とが、前述の第1実施形態と異なる。その他の構成および作用は同一であるから、同一符号を付してそれらの説明を省略する。
本実施形態の三次元測定機1は、外部から遮断された温度制御空間Aと、所定の温度のエアを温度制御空間Aに供給し温度制御空間Aの温度を制御する温度制御手段91と、を備える。
【0027】
温度制御手段91は、配管910,911を介して温度制御空間Aに所定温度のエアを供給する。また、温度制御手段91は、エア制御手段9として、配管910,912を介して洗浄手段64に所定の温度のエアを供給する。
本実施形態のプローブ6は、温度制御空間Aの内部に設けられる。スピンドル8には、エア誘導手段81が設けられておらず、プローブ6の触針保護部63には、温度制御手段91からの配管912が接続されている。配管912は、触針保護部63の外周面から内周面まで貫通しており、配管912の端部であるエア噴出部912Aは、触針保護部63の中空部63Bに位置している。
【0028】
このような三次元測定機1を用い、被測定物Wの測定対象部を洗浄する方法を説明する。
図5に、本実施形態の洗浄手段64を用いて測定対象部を洗浄する際のプローブ6先端近傍の断面図を示す。
はじめに、温度制御手段91を操作して、温度制御空間Aおよび洗浄手段64への所定の温度のエアの供給を開始する。
すると、図5に示すように、配管912のエア噴出部912Aから触針保護部63の中空部63Bにエアが噴出される。このエアは、さらに、触針保護部63内の中空部63Bおよび開口部63Aを介して接触子61近傍に噴出する。このとき、開口部63Aからのエアの噴出は、触針62と略同じ方向となる。
次に、コラム4、サドル5、スピンドル8を操作し、プローブ6の接触子61を被測定物Wの測定対象部近傍に移動させる。すると、図5に示すように、開口部63Aからのエアの噴出により測定対象部近傍の塵D等を吹き飛ばして除去することができる。
【0029】
本実施形態によれば、上述の第1実施形態の効果(1)ないし(6)と略同じ効果に加えて、次のような効果がある。
(9)温度制御手段91が、所定の温度のエアを温度制御空間Aに供給するとともに、エア制御手段9として洗浄手段64に所定の温度のエアを供給するので、洗浄手段64専用のエア制御手段9を設ける必要がない。これにより、三次元測定機1を小型化するとともに製造コストを抑えることができる。また、洗浄手段64専用のエア制御手段9を設ける場合と比べ、測定の省電力化を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
(i)上述の第1実施形態において、スピンドル8がエア誘導手段81を備え、エア制御手段9が、エア誘導手段81を介して洗浄手段64にエアを供給する構成を例示したが、これに限定されない。
例えば、図6に示すように、スピンドル8がエア誘導手段81を備えず、エア制御手段9が、配管900,901を介してエアガイド7に、配管900,902を介して洗浄手段64に、エアを供給する構成としてもよい。
この場合、第1実施形態と異なり、新たな配管902を設ける必要があるが、一つのエア制御手段9により、エアガイド7および洗浄手段64の双方にエアを供給でき、洗浄手段64が触針62と略同じ方向にエアを噴出することができるから、第一実施形態と略同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0031】
(ii)上述の各実施形態において、エアガイド7または温度制御空間Aにエアを供給するエア制御手段9により、洗浄手段64にもエアを供給する構成を例示したが、これに限らない。例えば、図7に示すように、洗浄手段64専用のエア制御手段9を備える構成としてもよい。この場合でも、洗浄手段64が触針62と略同じ方向にエアを噴出することができ、上述の各実施形態と略同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0032】
(iii)上述の各実施形態において、接触子61近傍にエアを噴出する洗浄手段64を例示したが、これに限定されない。
例えば、図8および図9に示すように、プローブ6が、接触子61近傍からエアを吸引する洗浄手段64を備える構成としてもよい。
【0033】
図8に示す変形例において、スピンドル8は、スピンドル8の軸と略平行に設けられたエア流路82と、スピンドル8の下端面にエア流路82の開口部を覆うように設けられたフィルタ83と、を有する。
フィルタ83は、空気を通過させ、塵D等を通過させない膜等により形成されている。エア流路82のフィルタ83と逆側の端部は、図示しないエア制御手段9と接続されている。ここで、エア制御手段9は、エアを吸引するエア吸引ポンプである。洗浄手段64は、エア流路82、フィルタ83、触針保護部63の中空部63Bおよび開口部63Aにより構成される。
【0034】
この場合、洗浄手段64は、エア流路82、触針保護部63の中空部63Bおよび開口部63Aを介して接触子61近傍からエアを吸引する。これにより、洗浄手段64が被測定物Wの測定対象部に付着した塵D等を吸引して除去することができ、上述の各実施形態と略同様の優れた作用効果を得ることができる。
また、エア流路82の開口部を覆うように設けられたフィルタ83が、空気を通過させ、塵D等を通過させない膜等により形成されるので、被測定物Wの測定対象部から吸引された塵D等が、フィルタ83により除去される。したがって、塵D等がエア制御手段9であるエア吸引ポンプに吸引され、エア吸引ポンプに故障等のトラブルが発生することがない。
なお、フィルタ83と同様のフィルタを、プローブ6とエア制御手段9とを結ぶ配管の一部や、エア制御手段9に設けられ配管が接続されるエア吸引部等に設けてもよい。この場合でも、塵D等を除去しエア吸引ポンプのトラブルを防止することができる。また、触針保護部63の中空部63Bに強力な旋回気流を形成するような構成とすれば、重い塵D等とエアとを分離することができる。この場合、フィルタ83を設けなくても、塵D等をエアから分離し中空部63Bに蓄積することができる。
【0035】
図9に示す変形例において、スピンドル8は、スピンドル8内の外周面寄りにスピンドル8の軸と略平行に設けられたエア流路82を有する。触針保護部63は、その外周面と内周面との間に、外周面および内周面と略平行に設けられたエア流路631を有する。
スピンドル8下端面のエア流路82の開口部は、触針保護部63上端面のエア流路631の開口部と当接しており、これにより、スピンドル8のエア流路82と触針保護部63のエア流路631とが連通されている。エア流路82のエア流路631と逆側の端部は、図示しないエア制御手段9と接続されている。ここで、エア制御手段9は、エアを吸引するエア吸引ポンプである。触針保護部63下端面のエア流路631の開口部631Aは、図9の下方、すなわち被測定物Wの測定対象部に対向している。洗浄手段64は、スピンドル8のエア流路82、触針保護部63のエア流路631、エア流路631の開口部631Aにより構成される。
【0036】
この場合、洗浄手段64は、スピンドル8のエア流路82、触針保護部63のエア流路631、エア流路631の開口部631Aを介して接触子61近傍からエアを吸引する。これにより、洗浄手段64が被測定物Wの測定対象部に付着した塵D等を吸引して除去することができ、上述の各実施形態と略同様の優れた作用効果を得ることができる。
なお、本変形例のエア制御手段9は、圧縮エアを供給するエア圧縮ポンプであってもよい。この場合でも、測定対象部に付着した塵D等を吹き飛ばして除去することができ、上述の各実施形態と略同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0037】
(iv) 上述の各実施形態において、測定に先立って被測定物Wの測定対象部を洗浄する方法を例示したが、これに限定されない。
例えば、図10に示すように、測定と被測定物Wの測定対象部の洗浄とを同時に行っても良い。図10においては、上述の第1実施形態と同様のプローブ6の接触子61を被測定物Wの測定対象部に当接させて座標を検出しつつ、開口部63Aからエアを噴出して測定対象部近傍の塵D等を吹き飛ばして除去している。
この場合でも、開口部63Aからエアを噴出しながら接触子61を被測定物Wの測定対象部に当接させれば、エアのほうが接触子61より先に測定対象部に到達して塵D等を除去することができるので、接触子61が測定対象部に当接したときには、測定対象部は清浄な状態となっている。したがって、スパイクノイズ等による測定誤差を防止することができ、上述の各実施形態と略同様の優れた作用効果を得ることができる。
また、この場合、測定および洗浄を同時に行うことができるので、測定にかかる時間を短縮し、作業の効率化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、プローブで被測定物の寸法や形状等を測定する三次元測定機等の測定機として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1実施形態に係る三次元測定機の正面図。
図2】本発明の第1実施形態に係る三次元測定機のプローブ近傍の概略断面図。
図3】本発明の第1実施形態に係る三次元測定機を用いて、被測定物の測定対象部を洗浄する際のプローブ先端近傍の断面図。
図4】本発明の第2実施形態に係る三次元測定機のプローブ近傍の概略断面図。
図5】本発明の第2実施形態に係る三次元測定機を用いて、被測定物の測定対象部を洗浄する際のプローブ先端近傍の断面図。
図6】本発明の第1実施形態の変形例に係る三次元測定機のプローブ近傍の概略断面図。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る三次元測定機のプローブ近傍の概略断面図。
図8】本発明の実施形態の変形例に係る三次元測定機を用いて、被測定物の測定対象部を洗浄する際のプローブ先端近傍の断面図。
図9】本発明の実施形態の変形例に係る三次元測定機を用いて、被測定物の測定対象部を洗浄する際のプローブ先端近傍の断面図。
図10】本発明の第1実施形態に係る三次元測定機を用いて、被測定物の測定対象部を洗浄する際のプローブ先端近傍の断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 三次元測定機
6 プローブ
7 エアガイド
8 スピンドル
9 エア制御手段
61 接触子
62 触針
63 触針保護部
63A 開口部
63B 中空部
64 洗浄手段
91 温度制御手段
81 エア誘導手段
A 温度制御空間
D 塵
W 被測定物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10