【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例をもって本発明をさらに詳細に説明する。
【0070】
(実施例1)
製鉄所から搬入して、すり鉢状の山に積上げた製鋼スラグ約10トンに、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約4トンを注ぎこみ、重機を用いてこれらをよく混合し、新たな山を積み上げた。ここで用いた製鋼スラグは、元来、道路用路盤材向けの骨材として粒度調整されたもので、2mm以下のスラグ塊の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%であった。
【0071】
この混合物の山の頂点(深さ200mm)と中腹、ならびに山すその数箇所に温度計ならびに湿度計をセットした後に、全体をブルーシートで覆い発酵準備を完了した。この混合作業時に、水産残渣の水分はほとんど全て製鋼スラグの山に吸収され、山積み完了時も山すそからの流出は観察されなかった。
【0072】
この後、適宜、温度や湿度の観測、ならびに適宜、ブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0073】
図5に、水産残渣と製鋼スラグを混合、山積みした日からの経過日数に対する、外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、放置後しばらくは山内の温度は外気温とほぼ同じだが、図中に点線で示した10日を過ぎた頃から、発酵が活発となり山内部の温度が上昇しだし、20日すぎには60℃に達し、そこから約20日間は山内温度が60℃以上で推移し、発酵状態の継続が見られた。この間、数回、ブルーシートをめくり、重機を用いた切り替えし(混合)も行ったが、極端な温度低下は観察されなかった。
【0074】
20日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、温度が60℃となった発酵初期には約200ppm程度であったが、30日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、40日目以降の温度の低下に伴いその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、ブルーシートを取って発酵作業を終了した。この間、ブルーシートの外側では特段の異臭は感知されなかった。
【0075】
また、切り返しの時点で山内の材料を採取し、蒸留水によるしん透抽出・遠心分離法によって上透水を分離し、TOC(全有機炭素)や易分解性有機物の指標としての生物化学的酸素要求量(BOD)などの分析も実施したが、日数の経過とともにBODが低下し、有機物の分解が進行していることも確認できた。
【0076】
さらに当該試料の一部を樹脂に埋め込み、研磨作業によってその断面を磨きだし、EPMA測定を実施した結果、製鋼スラグ表面にC成分が薄い膜状に存在することも検出され改質状況を確認できた。
【0077】
このようにして製造された藻場造成用施肥材料をさらに1カ月ほど静置して完熟させたうえで、海洋汚染の防止に関する法律(環境庁告示第14号)の水底土砂判定基準の評価方法に基づき溶出試験を実施したところ、重金属など全ての元素について判定基準を満たしていることが確認できたため、約2トンを透水性の袋に小分けしながら鋼製の箱に充填し、藻類の成長が芳しくない海域(海底)に春先に設置した。
【0078】
設置に際して、設置前後の海水のpHを測定したが、いずれも約8.2を示し著しい変化は認められなかった。その後、該海域の藻場状況について観察を実施したところ、周辺海域に比べ、鋼製の箱の周辺の藻類の成長が良好なことも確認できた。
【0079】
(実施例2)
実施例1では数日間かけて近隣から搬入した水産残渣4トンをまとめて一括混合したが、現実的には1日あたりに発生する水産残渣の量には差もあることから、都度、発生する新鮮な残渣を追加投入する処理を行った。実施例1と同じ、道路用路盤材向けの骨材として粒度調整された2mm以下のスラグ塊の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%の製鋼スラグ約10トンをすり鉢状の山に積上げ、そこに近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約1トン/回を2日おきに注ぎこみ、重機を用いてこれらをよく混合した。
【0080】
処理開始から8日目に約4トンの水産残渣の混合が完了したので、山の頂点や中腹ならびに山すその数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆い発酵処理を開始した。この分割混合作業時にも、水産残渣の水分はほとんど全て、製鋼スラグの山に吸収され、山積み完了時も山すそからの流出は観察されなかった。
【0081】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0082】
図6に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、
図5に示した初期一括混合に比べると、必要な水産残渣の充填完了までに日数を要したために発酵開始が遅れた分、温度の上昇開始が数日、遅れたものの、しばらくは山内の温度は外気温とほぼ同じだが、2週間を過ぎた頃から発酵に伴い山内部の温度が上昇、25日目すぎには60℃に達し、そこから約20日間は山内温度が60℃以上で推移し、発酵状態の継続が見られた。この間、数回、ブルーシートをめくり、重機を用いた切り替えし(混合)も行ったが、極端な温度低下は観察されなかった。
【0083】
25日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、発酵初期には約200ppm程度であったが、35日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、45日目にはその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、ブルーシートを取って発酵作業を終了した。
【0084】
(実施例3)
発明者らは本発明を検討するまでは、破砕・加熱分解・発酵を同一釜内で連続処理するバイオメスク処理方式を用いて水産残渣から発酵魚粉の製造を行っていた。この方式では、蒸気加熱を用いて水産残渣を加熱、煮沸処理することで、水産残渣中の水分を減らすと同時に、内容物中の固形分を軟化させることができる。そこで、実施例3においては、実施例2に述べた分割混合処理に、この水産残渣の加熱を組み合わせる処理を実施した。
【0085】
具体的には、実施例1や2と同様に、道路用路盤材向けの骨材として粒度調整された2mm以下のスラグ塊の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%の製鋼スラグ約10トンをすり鉢状の山に積上げた上で、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約1トン/回を、上述の加熱用専用釜内にて加熱・煮沸処理を施し、これを2日おきに製鋼スラグの山に注ぎこみ、重機を用いてよく混合した。なお、保熱のために混合処理後は、都度、ブルーシートで全体を覆った。
【0086】
処理開始から8日目に約4トンの加熱水産残渣の混合が完了し、山の頂点や中腹ならびに山すその数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆い発酵処理を開始した。この分割混合作業時にも、水産残渣の水分はほとんど全て、製鋼スラグの山に吸収され、山積み完了時も山すそからの流出は観察されなかった。
【0087】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0088】
図7に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、
図6に示した加熱なしの分割混合に比べ、初日から水産残渣の熱分により山の温度が30℃程度となり、必要な水産残渣量の充填が完了した翌日から発酵に伴う山内部温度が上昇し、14日目には60℃に達して、そこから約20日間は山内温度が60℃以上を推移し、発酵状態の継続が見られた。この間も、数回、ブルーシートをめくり、重機を用いた切り替えし(混合)も行ったが、極端な温度低下は観察されなかった。
【0089】
15日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、発酵初期には約200ppm程度であったが、30日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、35日目にはその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、ブルーシートを取って発酵作業を終了できた。
【0090】
(実施例4)
これまでの実施例は、春から夏にかけての外気温が良好な状態での処理に関するものであるが、秋から冬場にかけて、特に寒冷地で温度が低い地域においては、従来の牛糞堆肥製造などでも補助的な加熱などに伴う発酵促進処理が必要と言われている。実施例3で述べた水産残渣の加熱を行ったケースがこのような寒冷地で有効かどうか、積雪前の10月から11月にかけて処理を実施した。
【0091】
これまでの実施例と同様の、道路用路盤材向けの骨材として粒度調整された2mm以下のスラグ塊の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%の製鋼スラグ約10トンをすり鉢状の山に積上げた上で、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約1トン/回を、上述の加熱用専用釜内にて加熱・煮沸処理を施し、これを2日おきに製鋼スラグの山に注ぎこみ、重機を用いてよく混合した。なお、保熱のために混合処理後は、都度、ブルーシートで全体を覆った。
【0092】
処理開始から10日目に約4トンの加熱水産残渣の混合が完了、山の頂点や中腹ならびに山すそ数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆い発酵処理を開始した。この分割混合作業時にも、水産残渣の水分はほとんど全て、製鋼スラグの山に吸収され、山積み完了時も山すそからの流出は観察されなかった。
【0093】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0094】
図8に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、
図7に示した夏季の加熱・分割混合に比べると、初日から山の温度が20℃程度であり、必要な水産残渣量の充填が完了した10日目以降も山内の温度は上昇せず発酵が開始しない状態であった。日数の経過とともに外気温も低下してきたため、約2週間後に山の底部に、内径20mmのSUS製パイプに穴あけしたもの3本を山すそから差込み、昼間の間、ブロアーを用いて送風を行った。
【0095】
この結果、外気温の低下にもかかわらず、送風開始から約1週間経過したあたりから温度があがりはじめ、30日経過時には山内温度は60℃に達して、そこから約20日間、外気温度が0℃を下回る日があるにもかかわらず山内温度が60℃以上を推移し、発酵状態の継続が見られた。
【0096】
適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、30日目あたりでは約200ppm程度であったが、40日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、45日目にはその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、送風を停止し発酵作業を終了させた。
【0097】
(実施例5)
本発明で用いる製鋼スラグは、先に
図3にも示したように道路用路盤材向けの骨材として粒度調整されたものであり、先の実施例では2mm以下のスラグ塊の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%のものを用いたが、山内の通気性の観点から2mm以下の粉分が多い場合に適正な処理が可能かどうかを確認するために、別途、製鉄所にて2mm以下のスラグ塊の質量比が約30%、5mm以下の質量比は約45%という製鋼スラグ、約10トンを調整して搬入し、それをすり鉢状の山に積上げた上で、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約1トン/回を、上述の加熱用専用釜内にて加熱・煮沸処理を施し、これを2日おきに製鋼スラグの山に注ぎこみ、重機を用いてよく混合した。なお、保熱のために混合処理後は、都度、ブルーシートで全体を覆った。
【0098】
混合処理開始から8日目に約4トンの加熱水産残渣の混合が完了し、山の頂点や中腹ならびに山すその数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆い発酵処理を開始した。この分割混合作業時にも、水産残渣の水分はほとんど全て、製鋼スラグの山に吸収され、山積み完了時も山すそからの流出は観察されなかった。
【0099】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0100】
図9に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温(○印)ならびに山の頂点部の温度の推移(▲印)を示す。この図には、先に
図7に示した粉分が適度な実施例3の測定結果も示したが(●印)、やはり粉分が多く通気性が低下するためか、10日を経過しても山の温度は実施例3ほどは上昇しない。但し、15日を経過したあたりから徐々にではあるが温度が上がり始めたため、20日目にブルーシートをめくり、重機にて山の切り崩しを行ったところ、その翌日から山内部温度が上昇し、25日目には60℃に到達、そこから約20日の間、山内温度は60℃以上を推移し、発酵状態の継続が見られた。
【0101】
25日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、発酵初期には約200ppm程度であったが、35日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、40日目にはその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、ブルーシートを取って発酵作業を終了した。
【0102】
(実施例6)
先に実施例5で、製鋼スラグの粉分が多い場合でも、切り返しなどの処理により本発明で発酵処理が行えることが確認されたが、逆に粉分が少ない場合にはどのようになるかの確認も実施した。
【0103】
製鉄所において、これまで用いてきた道路用路盤材向け骨材として粒度調整された製鋼スラグを、一端、5mmの篩で篩い分けて5mm以下を分級し、この篩下のスラグをさらに2mmの篩で篩い分けたうえで、2mm以下の粉状スラグをスラグ全体に対して質量比で5%、5mm以下のスラグは実施例5と同様の質量比で約35%となるように、再度、混合し直したものを準備し、搬入した。この2mm以下の質量比が約5%の製鋼スラグ、約10トンをすり鉢状の山に積上げた上で、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約1トン/回を、上述の加熱用専用釜内にて加熱・煮沸処理を施し、これを2日おきに製鋼スラグの山に注ぎこみ、重機を用いてよく混合した。なお、保熱のために混合処理後は、都度、ブルーシートで全体を覆った。
【0104】
この混合作業時に、2mm以下の質量比が約5%の製鋼スラグの山の場合、やはり粉分が少ないため水分の吸収能が低下し、混合初期には山すそから幾分、外に漏れ出す水分が観察されたが、この水分を製鋼スラグで覆うようにしてこれらをうまく吸収させて混合を完了させ、山の頂点や中腹ならびに山すそ数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆った。
【0105】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0106】
図10に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、粉分が少ないことに起因すると考えられる遊離石灰分の減少のためか、先に
図7に示した粉分が適度な実施例3の測定結果に比べると、山の温度が30℃程度と期間が少し長くなったが、12日目から温度の上昇がみられ、18日目には60℃に達して、そこから約20日間は山内温度が60℃以上を推移し、発酵状態の継続が見られた。この間も、数回、ブルーシートをめくり、重機を用いた切り替えし(混合)も行ったが、極端な温度低下は観察されなかった。
【0107】
20日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、発酵初期には約200ppm程度であったが、35日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、40日目にはその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、ブルーシートを取って発酵作業を終了できた。
【0108】
こうして製造された藻場造成用施肥材料をさらに1カ月ほど静置して完熟させたうえ、海洋汚染の防止に関する法律(環境庁告示第14号)の水底土砂判定基準の評価方法に基づき溶出試験を実施し、重金属など全ての元素について判定基準を満たしていることを確認したうえで、約1.5トンの該施肥材料と、別途準備した0.5トンの腐植物質とを混合しながら透水性の袋に小分けしつつ鋼製の箱に充填し、藻類が繁茂していない磯焼け海域に秋に設置した。設置に際し、設置前後の海水のpHを測定したが、いずれも約8.2を示し変化は認められなかった。海水の白濁も全く生じなかった。その後、冬季を経て翌年の春には、鋼製の箱の周辺に新たな藻類の繁殖(再生)が確認できた。
【0109】
(実施例7)
牛糞の堆肥化において、すでに発酵が完了したタネ堆肥を用いて効率を高める戻し堆肥の方法が有効であることは
図2にも示したが、この方法が本発明にも有効かどうかの処理を実施した。
【0110】
道路用路盤材向けの骨材として粒度調整された2mm以下のスラグ塊の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%の製鋼スラグ約5トンと、本発明方法で先に製造を行った藻場造成用施肥材料3トンを混ぜ合わせたうえですり鉢状の山に積上げで、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)4トンを、該山に注ぎこみ、重機を用いてよく混合した。
【0111】
混合完了後に、山の頂点や中腹ならびに山すそ数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆い発酵処理を開始した。この混合作業時にも、水産残渣の水分はほとんど全て、製鋼スラグの山に吸収され、山積み完了時も山すそからの流出は観察されなかった。
【0112】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0113】
図11に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、加熱を行っていない水産残渣にもかかわらず、混合から2日後には山の温度が上昇しはじめ1週間後には60℃に達し、そこから約20日間は山内温度が60℃以上を推移し、発酵状態の継続が見られた。この間、数回、ブルーシートをめくり、重機を用いた切り替えし(混合)も行ったが、極端な温度低下は観察されなかった。
【0114】
8日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したところ、2週間目には約200ppm程度であったが、20日を過ぎたあたりから徐々にその濃度が低下、25日目にはその濃度も50ppm以下となり有機物の分解は十分に進行したことが判明したため、30日目にブルーシートを取って作業を終了した。
【0115】
(比較例1)
本発明のポイントは、水産残渣の発酵処理時に製鋼スラグを用いて、通気性確保ならびに適度なアルカリ溶出にともなう発酵ならびに発熱(保熱)促進をもたらす点にある。この効果を見極めるため、製鋼スラグの代わりに、ほぼ類似の粒度分布(2mm以下の塊分の質量比が約20%、5mm以下の質量比は約35%)となるように天然骨材(大半がケイ砂ならびに花崗岩)を混合調整したものを準備し、処理を行った。
【0116】
粒度調整を行った天然骨材 約10トンをすり鉢状の山に積上げで、近隣の水産加工場から搬入したホッケと鮭の中骨を含む水産残渣(含水率 約85%)約1トン/回を、上述の加熱用専用釜内にて加熱・煮沸処理を施し、これを2日おきに山に注ぎこみ、重機を用いてよく混合した。なお、保熱のために混合処理後は、都度、ブルーシートで全体を覆った。
【0117】
この混合作業時に、天然骨材は製鋼スラグに比べて緻密質で吸水率が低いためか、水産残渣の水分はさほど吸収されず、山すそから殆どが外に漏れ出してしまった。この混合完了後に、山の頂点や中腹ならびに山すそ数箇所に温度計をセットし、全体をブルーシートで覆った。
【0118】
この後、適宜、温度の観測、およびブルーシートの内側に専用の臭気カバーを設置し、検知式ガス測定器を用いてアンモニア濃度を測定した。
【0119】
図12に、水産残渣を分割混合した日からの経過日数に対する外気温ならびに山の頂点部の温度の推移を示す。この図から、混合時には水産残渣の熱分により山の温度が30℃程度となり、必要な水産残渣量の充填完了まではほぼ同温度で推移したが、混合が完了した10日目以降も山の温度上昇はほとんど見られず、むしろ外気温と同じレベルまで温度が低下してしまい、切り返しを実施しても現象に変化はなく、発酵はほとんど進まなかった。
【0120】
10日目以降、適宜、山内のガス中のアンモニア濃度を測定したが、いつまでも約200ppm程度で、有機物の分解は観察できなかった。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。