特許第5667613号(P5667613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667613演算増幅器及びそれを備えたパイプライン型A/Dコンバータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667613
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】演算増幅器及びそれを備えたパイプライン型A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/14 20060101AFI20150122BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20150122BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   H03M1/14 A
   H03F3/45 Z
   H03M1/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-214663(P2012-214663)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-72553(P2014-72553A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】江川 一樹
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−065249(JP,A)
【文献】 特開2007−201550(JP,A)
【文献】 特開2005−252326(JP,A)
【文献】 特開2009−253320(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0176977(US,A1)
【文献】 特表2005−529505(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/131215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
H03F 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力段と出力段の2段で構成されている演算増幅器において、
前記入力段が、
縦列接続された2つの差動対と、
前記縦列接続された差動対間の正極ノードと負極ノードとを短絡するスイッチと、
差動出力ノードと、
を備え、
前記出力段が、
差動入力端子に前記差動出力ノードが接続される差動増幅器と、
前記差動増幅器の差動入力端子と差動出力端子との間に接続されるコンデンサと、
を備え、
前記入力段は、さらに、
前記縦列接続された差動対間の前記正極ノードと前記負極ノードのそれぞれと前記出力段の差動増幅器の差動出力端子との間に接続される位相補償用のコンデンサと
を備えていることを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
隣接する前後2つのステージが、請求項1に記載の演算増幅器と、2つのスイッチトキャパシタ回路を備え、
前記演算増幅器の前記2つの差動対のうち、下段の差動対のゲート電極に前ステージのスイッチトキャパシタ回路のサミングノードが接続され、
上段の差動対のゲート電極に後ステージのスイッチトキャパシタ回路のサミングノードが接続されることを特徴とするパイプライン型A/Dコンバータ。
【請求項3】
前記2つのスイッチトキャパシタ回路が、動作する位相が反転の関係にあることを特徴とする請求項2に記載のパイプライン型A/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器及びそれを備えたパイプライン型A/Dコンバータに関し、より詳細には、演算増幅回路を2つのステージで共有する時に、各ステージで最適な位相補償を行うようにした演算増幅器及びそれを備えたパイプライン型A/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種画像センサや画像処理装置など、高速にアナログ信号をデジタル信号に変換することが必要な電子機器では、複数のA/Dコンバータを互いに縦列に接続して、複数のステージ構成とすることで、1クロックの間に複数のA/D変換処理を行うことのできるパイプライン型A/Dコンバータが用いられている。
この種のパイプライン型A/Dコンバータでは、各ステージに前段からの入力信号を増幅するための演算増幅器を内蔵する。各ステージの動作は、前段からのアナログ出力信号をサンプルするサンプル期間と、サンプルした信号を演算増幅器で増幅して次段に出力するホールド期間とから成り、隣り合うステージ間では、この期間は反転の位相関係にある。このうち、消費電力の大きい演算増幅器を実際に使用する期間はホールド期間のみである。そのため、消費電力の削減とチップ面積の削減の目的から、2つのステージで演算増幅器を共有する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図1は、非特許文献1に開示されているパイプライン型A/Dコンバータのブロック構成図で、Nステージから構成されるパイプライン型A/DコンバータA1を示している。パイプライン型A/DコンバータA1は、1.5ビット型のA/Dコンバータを内蔵するSTAGE1〜STAGENまでのN段のステージが縦列に接続され、各ステージからのA/D変換されたデジタル出力信号DO_1〜DO_Nは、エンコーダE1に入力され、エンコーダE1はそれらを演算した出力値ADOを出力する。
【0004】
図2は、図1に示したパイプライン型A/Dコンバータ内のある隣り合う2つのステージのブロック構成図で、図1に示したパイプライン型A/DコンバータA1内のある隣り合う2つのステージSTAGEIとSTAGEI+1の構成を示している。STAGEIとSTAGE(I+1)(以下、「STAGEI+1」と記す)は、MDACIとMDACI+1と、これらのMDAC間で共有されている演算増幅器A1とからなっている。
【0005】
図示していない前ステージからのアナログ差動出力信号Vip_i、Vin_iがMDACIのVip、Vinに入力され、MDACIのアナログ差動出力信号Vsp_i、Vsn_iが、演算増幅器A1のV1p、V1nに入力され、MDACI+1のアナログ差動出力信号Vsp_i+1、Vsn_i+1が、演算増幅器A1のV2p、V2nに入力され、演算増幅器A1のアナログ差動出力信号Vop、Vonが、MDACIとMDAC(I+1)(以下、「MDACI+1」と記す)の帰還経路Vfbp、Vfbnに入力され、さらに、MDACI+1の入力Vip、Vinと、図示していない次ステージのMDAC(I+2)(以下、「MDACI+2」と記す)に入力されている。
【0006】
図3は、図2に示したMDACIの回路構成図である。図3に示すMDACIは、コンデンサC1p、C2p、C1n、C2nと、スイッチSW1p、SW2p、SW3p、SW1n、SW2n、SW3nと、A/DコンバータA/D1と、D/AコンバータD/A1とから構成されている。MDACI+1も同様の構成であるが、動作するタイミングはすべてMDACIとは逆位相で動作する。
【0007】
図4は、図2に示した演算増幅器の回路構成図である。図4に示す演算増幅器A1は、入力段A1Aと出力段A1Bとから構成されている。入力段A1Aは、MDACI、MDACI+1のアナログ差動出力信号Vs1p、Vs1n、Vs2p、Vs2nが、差動のそれぞれに直列に接続されたNMOSM1p、M1n、M2p、M2nのゲートV1p、V1n、V2p、V2nに入力され、Vap、Vanのノード間には、差動間を短絡するスイッチSW1が接続され、負荷となる抵抗R1、R2がそれぞれ入力段A1Aの出力Mon、Mopと、電源間に接続されている。また、A1Aの出力Mop、MonとA1Bの出力とVop、Vonとの間に、位相補償のためのコンデンサを、差動のそれぞれに2対ずつ接続しており、そのうち1対はスイッチSW2p、SW2nによって短絡、解放ができるようになっている。
【0008】
図5は、図2に示したMDACI及びMDACI+1の動作を説明するためのタイミング図である。
φ1がハイレベルとなると、図3に示したMDACIのスイッチSW1p、SW2p、SW1n、SW2nはそれぞれ図に示す1の側のノードに接続し、SW3p、SW3nは短絡する。演算増幅器A1の入力となるVsp_i、Vsn_iは、アナログコモン電圧VIC_iに短絡するため、Vsp_i、Vsn_iもVIC_iを出力する。前ステージからのアナログ差動出力信号Vip_i、Vin_iは、コンデンサC1p、C2p、C2n、C1nにサンプルされるとともに、A/DコンバータA/D1に入力され、A/D1は入力された信号をアナログ信号からデジタル信号DO_iに変換し、エンコーダE1とD/AコンバータD/A1に出力する。D/AコンバータD/A1は、入力されたデジタル値に応じたアナログ値を出力する。
【0009】
φ2がハイレベルとなると、図3に示したMDACIのスイッチSW1p、SW2p、SW1n、SW2nはそれぞれ図に示す2の側のノードに接続し、SW3p、SW3nは解放となる。これにより、C2p、C2nにはD/AコンバータD/A1の出力がそれぞれ接続され、演算増幅器A1のアナログ差動出力信号はコンデンサC1p、C1nを通じて帰還が掛けられ、演算増幅器A1は次式で表される出力を行う。
VOP−VON=2(Vip−Vin)−Vdac
ここで、Vdacは、D/AコンバータDA1の出力である。
【0010】
MDACI+1は、逆位相で動作するため、MDACIのφ1がハイレベルの時と同様の動作をしている。そのため、MDACI+1は、演算増幅器の出力VOP、VONをコンデンサC1p、C2p、C2n、C1nにサンプルするとともに、A/DコンバータA/D1でアナログ信号からデジタル信号DO_i+1に変換し、エンコーダE1とD/AコンバータD/A1に出力する。D/AコンバータD/A1は、入力されたデジタル値に応じたアナログ値を出力する。演算増幅器A1の入力となるVsp_i+1、Vsn_i+1は、あるアナログコモン電圧VIC_i+1を出力する。
【0011】
演算増幅器A1は、SW1が解放し、SW2p、SW2nが短絡している。A1AのV1p、V1nにはMDACIのアナログ差動出力Vsp_i、Vsn_iが入力され、V2p、V2nにはMDAC_i+1のアナログ差動出力Vsp_i+1、Vsn_i+1が入力されているが、Vsp_i+1、Vsn_i+1は固定値VIC_i+1であるため、NMOSM2p、M2nは、差動対のNMOSM1p、M1nのカスコードとして働く。このため、カスコードがない場合に比べ、高い直流利得を得ることが出来る。また、MDACIが増幅動作をする時には、コンデンサC1、C2、C3、C4を出力段の入出力間に接続することでミラー効果を利用して位相余裕を確保している。
【0012】
再び、φ1がハイレベルとなると、MDACI+1の、スイッチSW1p、SW2p、SW1n、SW2nはそれぞれ図に示す2の側のノードに接続し、SW3p、SW3nは解放となる。これにより、C2p、C2nにはD/AコンバータD/A1の出力がそれぞれ接続され、演算増幅器A1のアナログ差動出力信号はコンデンサC1p、C1nを通じて帰還が掛けられ、演算増幅器A1は次式で表される出力を行う。
VOP−VON=2(Vip−Vin)−Vdac
ここで、Vdacは、D/AコンバータDA1の出力である。
【0013】
演算増幅器A1は、SW1が短絡し、SW2p、SW2nが解放される。A1AのV1p、V1nにはMDACiのアナログ差動出力Vsp_i、Vsn_iが入力され、V2p、V2nにはMDAC_i+1のアナログ差動出力Vsp_i+1、Vsn_i+1が入力されているが、Vsp_i、Vsn_iは固定値VIC_iであるため、NMOSM1p、M1nは、電流源となるMOSMcのカスコードとして動作する。この場合、差動対M2p、M2nには、カスコードがないため、MDACIが増幅動作をしている時と比べると直流利得は低い。しかし、通常、パイプライン型A/Dコンバータでは、後段のステージほど、演算増幅器に必要とされる直流利得は緩和されるので問題とならない。また、カスコードによる新たな極の生成がないことや、後段のステージほどスイッチトキャパシタ回路の単位コンデンサ容量が小さく帰還率が減少するため、後段のステージでは前段のステージに比べ、位相補償用のコンデンサを小さくすることが出来る。そのため、MDACI+1が増幅動作をする時には、コンデンサC1、C2のみを接続し、ミラー効果を利用して位相余裕を確保している。
【0014】
このように、従来技術では、MDACI、MDACI+1の電荷のサミングノードであるVsp_i、Vsn_i,Vsp_i+1、Vsn_i+1が、演算増幅器の差動対に常に接続されているため、サミングノードにサンプルされた電荷のエラーが少なく、非常に高い精度で演算増幅器の共有が可能である。また、手前のSTAGEIが増幅期間時は、差動対に対しカスコード接続されるため、高い直流利得を得ることが出来る。
【0015】
なお、演算増幅器としては、例えば、特許文献1のものがある。この特許文献1のものは、入力段と出力段とから構成され、入力段は、差動信号を入力する差動対のP型のMOSトランジスタと、この差動対のMOSトランジスタに定電流を供給する電流源として機能するP型のMOSトランジスタとを備えている。また、出力段は、カスコード電流源部から出力される信号が、N型のMOSトランジスタを能動負荷とするP型のMOSトランジスタにより増幅され、出力されるようになっている。また、位相補償を行うための抵抗とキャパシタとを含んでいる。また、例えば、特許文献2には、演算増幅器とスイッチトキャパシタ回路とを備えたパイプライン型A/Dコンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−333624号公報
【特許文献2】特開2010−114587号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】IEEE 2009 Custom Intergrated Circuits Conference “A 10b 50MS/s Opamp−Sharing Pipeline A/D With Current−Reuse OTAs”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、従来の演算増幅器の共有手段では、共有する2つのステージのうち、前段のステージでより大きな位相補償容量を接続する必要がある。そのため、スイッチによって位相補償容量を短絡、解放することで実現している。しかしながら、MOSスイッチで切り替えると、スイッチの抵抗値が電源電圧や製造上のばらつきなどによって大きく影響を受けるため、位相余裕を確保しづらくなるという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来の演算増幅器の共有手段を用いた際に、電源電圧や製造上のばらつきなどの影響を最小限に抑えるように位相補償を行うようにした演算増幅器及びそれを備えたパイプライン型A/Dコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、入力段(A2A)と出力段(A2B)の2段で構成されている演算増幅器(A2)において、前記入力段(A2A)が、縦列接続された2つの差動対(M1p,M1n,M2p,M2n)と、前記縦列接続された差動対間の正極ノード(Vap)と負極ノード(Van)とを短絡するスイッチ(SW1)と、差動出力ノード(Mop,Mon)と、を備え、前記出力段が、差動入力端子(A2B2の+,−)に前記差動出力ノードが接続される差動増幅器(A2B2)と、前記差動増幅器の差動入力端子(A2B2の入力+,−)と差動出力端子(A2B2の出力−,+)との間に接続されるコンデンサ(C1,C2)と、を備え、前記入力段は、さらに、前記縦列接続された差動対間の前記正極ノード(Vap)と前記負極ノード(Van)のそれぞれと前記出力段(A2B)の差動増幅器の差動出力端子(A2B2の出力−,+、つまりVOP,VON)との間に接続される位相補償用のコンデンサ(C3,C4)とを備えていることを特徴とする。(図6
【0020】
また、請求項2に記載の発明は、隣接する前後2つのステージ(STAGEI、STAGEI+1)が、請求項1に記載の演算増幅器(A2)と、2つのスイッチトキャパシタ回路(MDACI、MDACI+1)を備え、前記演算増幅器(A2)の前記2つの差動対(M1p,M1n,M2p,M2n)のうち、下段の差動対(M1p,M1n)のゲート電極に前ステージのスイッチトキャパシタ回路(MDACI)のサミングノード(図3のVsp,Vsn)が接続され、上段の差動対(M2p,M2n)のゲート電極に後ステージのスイッチトキャパシタ回路(MDACI+1)のサミングノード(図3のVsp,Vsn)が接続されることを特徴とするパイプライン型A/Dコンバータである。(図1乃至図3図6
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記2つのスイッチトキャパシタ回路が、動作する位相が反転の関係にあることを特徴とする。(図2及び図3図6
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来の演算増幅器の共有手段を用いた際に、電源電圧や製造上のばらつきなどの影響を最小限に抑えるように位相補償を行いようにしたパイプライン型A/Dコンバータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】非特許文献1に開示されているパイプライン型A/Dコンバータのブロック構成図である。
図2図1に示したパイプライン型A/Dコンバータ内のある隣り合う2つのステージのブロック構成図である。
図3図2に示したMDACIの回路構成図である。
図4図2に示した演算増幅器の回路構成図である。
図5図2に示したMDACI及びMDACI+1の動作を説明するためのタイミング図である。
図6】本発明に係る演算増幅器の実施例を説明するための回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図6は、本発明に係る演算増幅器の実施例を説明するための回路構成図である。上述した従来技術との差異は、図2に示した演算増幅器A1だけであるので、演算増幅器以外の図については割愛してある。
本実施例の演算増幅器は、入力段A2Aと出力段A2Bの2段で構成されている。この入力段A2Aは、縦列接続された2つの差動対M1p,M1n,M2p,M2nと、縦列接続された差動対間の正極ノードVapと負極ノードVanとを短絡するスイッチSW1と、縦列接続された差動対間の正極ノードVapと負極ノードVanのそれぞれと出力段A2Bとの間に接続される位相補償用のコンデンサC3,C4とを備えている。
【0024】
つまり、本実施例における演算増幅器A2は、入力段A2Aと出力段A2Bとから構成されている。入力段A2Aは、MDACI、MDACI+1のアナログ差動出力信号Vs1p、Vs1n、Vs2p、Vs2nが、差動のそれぞれに直列に接続されたNMOSM1p、M1n、M2p、M2nのゲートV1p、V1n、V2p、V2nに入力され、Vap、Vanのノード間には、差動間を短絡するスイッチSW1が接続され、負荷となる抵抗R1、R2がそれぞれ入力段A2Aの出力Mon、Mopと電源間に接続されている。
【0025】
また、入力段A2Aの出力Mopと出力段A2Bの出力Vop間と、入力段A2Aの出力Monと出力段A2Bの出力Von間に、位相補償のためのコンデンサC1、C2が接続されており、さらに、VapとVop間とVanとVon間に位相補償のためのコンデンサC3、C4が接続されている。
続いて、図5に示したタイミング図に基づいて、本実施例の動作を信号の流れに沿って説明する。
【0026】
φ1がハイレベルとなると、図3のMDACIのスイッチSW1p、SW2p、SW1n、SW2nはそれぞれ図に示す1の側のノードに接続し、SW3p、SW3nは短絡する。演算増幅器A2の入力となるVsp_i、Vsn_iは、アナログコモン電圧VIC_iに短絡するため、Vsp_i、Vsn_iもVIC_iを出力する。前ステージからのアナログ差動出力信号Vip_i、Vin_iは、コンデンサC1p、C2p、C2n、C1nにサンプルされるとともに、A/DコンバータA/D1に入力され、A/D1は入力された信号をアナログ信号からデジタル信号DO_iに変換し、エンコーダE1とD/AコンバータD/A1に出力する。D/AコンバータD/A1は、入力されたデジタル値に応じたアナログ値を出力する。
【0027】
φ2がハイレベルとなると、図3のMDACIのスイッチSW1p、SW2p、SW1n、SW2nはそれぞれ図に示す2の側のノードに接続し、SW3p、SW3nは解放となる。これにより、C2p、C2nにはD/AコンバータD/A1の出力がそれぞれ接続され、演算増幅器A2のアナログ差動出力信号はコンデンサC1p、C1nを通じて帰還が掛けられ、演算増幅器A2は次式で表される出力を行う。
VOP−VON=2(Vip−Vin)−Vdac
ここで、Vdacは、D/AコンバータDA1の出力である。
【0028】
MDACI+1は、逆位相で動作するため、MDACIのφ1がハイレベルの時と同様の動作をしている。そのため、MDACI+1は、演算増幅器の出力VOP、VONをコンデンサC1p、C2p、C2n、C1nにサンプルするとともに、A/DコンバータA/D1でアナログ信号からデジタル信号DO_i+1に変換し、エンコーダE1とD/AコンバータD/A1に出力する。D/AコンバータD/A1は、入力されたデジタル値に応じたアナログ値を出力する。演算増幅器A2の入力となるVsp_i+1、Vsn_i+1は、あるアナログコモン電圧VIC_i+1を出力する。
【0029】
演算増幅器A2は、SW1が解放する。A2AのV1p、V1nにはMDACIのアナログ差動出力Vsp_i、Vsn_iが入力され、V2p、V2nにはMDAC_i+1のアナログ差動出力Vsp_i+1、Vsn_i+1が入力されているが、Vsp_i+1、Vsn_i+1は固定値VIC_i+1であるため、NMOSM2p、M2nは、差動対のNMOSM1p、M1nのカスコードとして働く。このため、カスコードがない場合に比べ、高い直流利得を得ることが出来る。また、コンデンサC1、C2、C3、C4はミラー効果が働き、位相余裕を確保している。
【0030】
再び、φ1がハイレベルとなると、MDACI+1の、スイッチSW1p、SW2p、SW1n、SW2nはそれぞれ図に示す2の側のノードに接続し、SW3p、SW3nは解放となる。これにより、C2p、C2nにはD/AコンバータD/A1の出力がそれぞれ接続され、演算増幅器A2のアナログ差動出力信号はコンデンサC1p、C1nを通じて帰還が掛けられ、演算増幅器A2は次式で表される出力を行う。
VOP−VON=2(Vip−Vin)−Vdac
ここで、Vdacは、D/AコンバータDA1の出力である。
【0031】
演算増幅器A2は、SW1が短絡し、SW2p、SW2nが解放される。A2AのV1p、V1nにはMDACiのアナログ差動出力Vsp_i、Vsn_iが入力され、V2p、V2nにはMDAC_i+1のアナログ差動出力Vsp_i+1、Vsn_i+1が入力されているが、Vsp_i、Vsn_iは固定値VIC_iであるため、NMOSM1p、M1nは、電流源となるMOSMcのカスコードとして動作する。この場合、コンデンサC3、C4は、差動対を形成するM2p、M2nの短絡されたソースノードに接続されているため、ミラー効果が生じない。そのため、コンデンサC1、C2のみミラー効果が働き、それによって位相余裕を確保している。
【0032】
このように、本発明では、コンデンサC3、C4が常に接続されているにも関わらず、STAGEIで帰還を掛けている時と、STAGEI+1で帰還を掛けている時とで、位相補償用のコンデンサの容量が都合のよいように変化し、プロセスや電源電圧変動に対して位相余裕を取りやすく出来る。これにより、消費電力やエリアを最小限に抑えることが可能となる。
また、本実施例では、コンデンサC3、C4をそれぞれVon、Vopに接続しているが、コンデンサC1、C2による位相補償容量を打ち消すようにしたければ、C3、C4の接続先を入れ替えてもよい。
【0033】
本発明は、上述した演算増幅器を備えたパイプライン型A/Dコンバータを実現している。つまり、本発明のパイプライン型A/Dコンバータは、隣接する前後2つのステージSTAGEI、STAGEI+1が、上述した演算増幅器A2と、2つのスイッチトキャパシタ回路MDACI、MDACI+1を備え、演算増幅器A2の2つの差動対M1p,M1n,M2p,M2nのうち、下段の差動対M1p,M1nのゲート電極に前ステージのスイッチトキャパシタ回路MDACIのサミングノードVsp,Vsnが接続され、上段の差動対M2p,M2nのゲート電極に後ステージのスイッチトキャパシタ回路MDACI+1のサミングノードVsp,Vsnが接続されている。また、2つのスイッチトキャパシタ回路は、動作する位相が反転の関係にある。
このようにして、従来の演算増幅器の共有手段を用いた際に、電源電圧や製造上のばらつきなどの影響を最小限に抑えるように位相補償を行いようにしたパイプライン型A/Dコンバータを実現することができる。
【符号の説明】
【0034】
A1,A2 演算増幅器
A1A,A2A 入力段
A1B,A2B 出力段
A1B1,A2B2 差動増幅器
図1
図2
図3
図4
図5
図6