(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
皮膚においてメラニンは紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、次いで、5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防・改善するため、即ち美白のためには、メラニンの産生を抑制すること、或いは既に産生したメラニンを淡色漂白することが有効であると考えられる。
【0003】
また、グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドであり、細胞内の主要なシステイン残基を有する化合物である。細胞内におけるグルタチオンの役割はラジカルの捕捉、酸化還元による細胞機能の調節、各種酵素のSH供与体であり、抗酸化成分としても知られている。グルタチオンの作用発現はそのシステイン残基に由来すると考えられている。しかし、皮膚中のグルタチオン量は、加齢に伴って低下することが報告されており、このことが皮膚における酸化防御能を低下させ、細胞のDNA及びタンパク質などの構成成分にダメージを与える一因であると考えられている。
つまり、皮膚におけるグルタチオン産生の促進は、作用発現の主体であるシステイン残基を増加させることから、加齢により衰える酸化ストレスの防御を高め、かつ紫外線による酸化ストレスに対する傷害を抑制することにつながり、皮膚の老化の予防、治療、あるいはシミ等の色素沈着に対する改善が期待できると考えられる。
これまでに、グルタチオン産生促進作用を有するものとして、例えばビルベリー抽出物又はウォルナット抽出物(例えば、特許文献1参照)、クチナシ属植物の抽出物(例えば、特許文献2参照)、などが開示されている。
【0004】
また、皮膚や関節の老化又は病的状態により細胞機能が低下してくると、生体ヒアルロン酸量は減少し、その結果、皮膚の乾燥、肌荒れ、ハリ、弾力性の減少、シミ、シワの増加、あるいは関節の湿潤性悪化による関節痛等を引き起こす。
このような状態を改善すべく、皮膚にはヒアルロン酸、自然保湿因子等の生体成分を配合した化粧料を塗布したり、また、関節には直接ヒアルロン酸を注入するなどの方法がとられているが、ヒアルロン酸を外から与えても根本的機能改善にはならず、充分な効果は期待できない。特に、ヒアルロン酸は、皮膚からはほとんど吸収されないという問題がある。
このため、単にヒアルロン酸そのものを外から補給するのではなく、本来ヒトが備え持っている生体の自己回復力を利用し、ヒトの皮膚線維芽細胞自身のヒアルロン酸産生能を促進させることによって、生体の機能を根本的に改善する物質の開発が期待されている。そこで、ヒアルロン酸産生促進作用を有する物質を天然物から抽出することが試みられている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0005】
また、表皮は、角化細胞の分裂とその後の分化により、常に新しい角質細胞を作り出すことで、外界からの種々の刺激から皮膚を守る防御機能を有する。特に、角化細胞の分化過程において、有棘層から顆粒層にかけてインボルクリン等のタンパク質が発現し、酵素トランスグルタミナーゼ−1の作用によって架橋され、角化細胞を包み込む不溶性の細胞膜様構造体であるコーニファイドエンベロープ(以下、「CE」と称する)を形成し、角質細胞の細胞骨格及び構造の安定性に寄与する。
しかし、様々な要因で表皮におけるトランスグルタミナーゼ−1或いはインボルクリンの産生量が減少すると、CE形成が不完全な状態となり、角化が正常に行われなくなる。その結果、角質バリア機能及び皮膚の保湿機能が低下し、肌荒れや乾燥肌等の皮膚症状を呈するようになると考えられる。
このようなことから、角化細胞の表皮におけるインボルクリンやトランスグルタミナーゼ−1の産生を高め、CEの形成を促進して角化を正常化することにより、乾燥や紫外線等の外部刺激に伴う皮膚バリア機能の低下を抑制し、肌の乾燥や肌荒れなど、様々な皮膚症状を予防・改善することができると考えられる。
【0006】
しかしながら、現在までのところ、安全性、環境性、及び生産性に優れ、味、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚化粧料、美容用飲食物、医薬、研究用試薬などとして広く使用可能なメラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(メラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、インボルクリン産生促進剤)
本発明のメラニン産生抑制剤は、ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記アルキルルチノースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メチルルチノシド、エチルルチノシド、ルチノシルグリセリンが好ましい。
本発明のグルタチオン産生促進剤は、ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記アルキルルチノースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メチルルチノシド、エチルルチノシド、ルチノシルグリセリンが好ましい。
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、少なくともメチルルチノシドを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のインボルクリン産生促進剤は、少なくともアルキルルチノースを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。前記アルキルルチノースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メチルルチノシド、エチルルチノシド、ルチノシルグリセリンが好ましい。
【0013】
<ルチノース>
前記ルチノースは、下記構造式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0014】
前記ルチノースの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ルチンにルチン分解酵素を作用させることにより製造することができる。
前記ルチンは、エンジュ(マメ科)、ソバ(タデ科)、ヘンルーダ(ミカン科)など天然の植物に広く分布するフラボノール配糖体の1種であり、動脈硬化、高血圧の予防等に有用な生理活性物質として知られており、下記構造式(X)に示されるように、クエルセチン(アグリコン)とルチノース(二糖)とが結合した構造を有している。
【化2】
【0015】
前記ルチン分解酵素としては、ルチンを分解してルチノースを切り出すことができる酵素であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エンジュ、ソバ、ヘンルーダなどの植物に由来する酵素、
Penicillium属に属する菌などの微生物に由来する酵素、などが挙げられる。これらの中でも、ダッタンそば種実に含まれるルチン分解酵素が、活性が高く、また、安全性の面で信頼性が高い点で、好ましい。
前記ルチン分解酵素は、精製されたものであってもよいし、未精製のものであってもよい。即ち、前記ルチン分解酵素を含有する植物や微生物の抽出液をそのまま用いてもよいし、植物体や微生物そのものを用いてもよい。
また、例えば、前記ダッタンそば種実に含まれるルチン分解酵素の場合、ダッタンそば種実、又はこの種実を挽いて調製したそば粉を抽出して抽出液(粗酵素液)を得、これを更に精製して得られた精製酵素を用いることが好ましい。しかしながら、ダッタンそばに含まれる酵素は活性が高いので、抽出液をそのまま用いても十分機能する。
【0016】
植物や微生物からのルチン分解酵素の抽出方法としては、特に制限はなく、通常、酵素の抽出に用いられる方法を適宜選択することができ、例えば、酢酸バッファー中で撹拌抽出する方法が挙げられる。
【0017】
前記ルチン分解酵素による処理の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、pH3〜9、温度80℃以下とすることが好ましく、pH5、温度40℃とすることがより好ましい。
【0018】
前記ルチノースは、メラニン産生抑制作用、及びグルタチオン産生促進作用を有しているため、それらの作用を利用して、メラニン産生抑制剤、及びグルタチオン産生促進剤として用いることができる。
【0019】
<アルキルルチノース>
前記アルキルルチノースは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化3】
ただし、前記反応式中、Rは、アルキル基を表す。
【0020】
前記アルキルルチノースの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルコールの存在下において、前記ルチンに前記ルチン分解酵素を作用させる方法が好ましい。これにより、下記反応式に示すように、ルチンに含まれるルチノースのアルキル基への転移が起こり、アルキルルチノースを生成することができる。
【化4】
ただし、前記反応式中、Rは、アルキル基を表す。
【0021】
前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、フェニルメタノール、2−フェノキシエタノール、1,2−エタンジオールおよび1,2,3−プロパントリオールなどが挙げられ、目的とする生成物に応じて適宜選択することができる。例えば、メタノールを用いると、メチルルチノシドを生成することができ、エタノールを用いると、エチルルチノシドを生成することができ、1,2,3−プロパントリオールを用いると、ルチノシルグリセリンを生成することができる。
【0022】
また、前記アルキルルチノースの製造方法としては、例えば、ダッタンそば種実、又はそれを製粉したそば粉にアルコール溶液を添加して反応させるだけでもよい。ダッタンそば種実には、通常のそば種実に比べて非常に多量のルチンが含まれる(通常のそば種実では約14mg%であるのに対して約1,300mg%;mg%は、そば種実100gに含まれるルチンのmg量を表わす)ためである。
【0023】
また、微生物に由来するルチン分解酵素を利用するにあたっては、微生物そのものから酵素を抽出する他に、その微生物が菌体外に酵素を分泌する場合、微生物を培養した培養液をそのまま粗酵素液として用い、この培養液に直接ルチン、及びアルコールを添加して反応させることにより前記アルキルルチノースを生成させることもできる。
【0024】
前記ルチン分解酵素による反応の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、pH3〜9、温度80℃以下とすることが好ましく、pH5、温度40℃とすることがより好ましい。
【0025】
−メチルルチノシド−
前記メチルルチノシドは、下記構造式(2)で表される化合物である。
【化5】
【0026】
前記メチルルチノシドは、メラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びインボルクリン産生促進作用を有しているため、それらの作用を利用して、メラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤として用いることができる。
【0027】
−エチルルチノシド−
前記エチルルチノシドは、下記構造式(3)で表される化合物である。
【化6】
【0028】
前記エチルルチノシドは、メラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、及びインボルクリン産生促進作用を有しているため、それらの作用を利用して、メラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤として用いることができる。
【0029】
−ルチノシルグリセリン−
前記ルチノシルグリセリンには、異性体が存在する。前記ルチノシルグリセリンの異性体としては、1−ルチノシルグリセリン(下記構造式(4)で表される化合物)、2−ルチノシルグリセリン(下記構造式(5)で表される化合物)が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0030】
前記ルチノシルグリセリンは、メラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、及びインボルクリン産生促進作用を有しているため、それらの作用を利用して、メラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤として用いることができる。
【0031】
前記メラニン産生抑制剤の有効成分として、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかのものが含まれていてもよく、その薬理学的に許容される塩が含まれていてもよい。また、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれか又はその薬理学的に許容される塩の、水和物又は溶媒和物が含まれていてもよい。また、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかは、前記メラニン産生抑制作用を損なわない限り、修飾又は置換されていてもよい。
【0032】
前記グルタチオン産生促進剤の有効成分として、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかのものが含まれていてもよく、その薬理学的に許容される塩が含まれていてもよい。また、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれか又はその薬理学的に許容される塩の、水和物又は溶媒和物が含まれていてもよい。また、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかは、前記グルタチオン産生促進作用を損なわない限り、修飾又は置換されていてもよい。
【0033】
前記ヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として、前記メチルルチノシドそのものが含まれていてもよく、その薬理学的に許容される塩が含まれていてもよい。また、前記メチルルチノシド又はその薬理学的に許容される塩の、水和物又は溶媒和物が含まれていてもよい。また、前記メチルルチノシドは、前記ヒアルロン酸産生促進作用を損なわない限り、修飾又は置換されていてもよい。
【0034】
前記インボルクリン産生促進剤の有効成分として、前記アルキルルチノースそのものが含まれていてもよく、その薬理学的に許容される塩が含まれていてもよい。また、前記アルキルルチノース又はその薬理学的に許容される塩の、水和物又は溶媒和物が含まれていてもよい。また、前記アルキルルチノースの少なくともいずれかは、前記インボルクリン産生促進作用を損なわない限り、修飾又は置換されていてもよい。
【0035】
前記薬理学的に許容される塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素塩、硝酸塩、硫酸水素酸塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、樟脳スルホン酸塩、スルファミン酸塩、マンデル酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、ステアリン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、パモン酸塩、フェニル酢酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、スルファニル酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、イセチオン酸塩、ギ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、エチルコハク酸塩、ラクトビオン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、アスパラギン酸塩、アジピン酸塩、ヨウ化水素酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0036】
本発明のメラニン産生抑制剤は、前記ルチノースのみからなるものであってもよいし、前記アルキルルチノースのみからなるものであってもよいし、前記ルチノース、及びアルキルルチノースからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。また、前記アルキルルチノースを2種以上含むものであってもよい。
前記メラニン産生抑制剤中の前記ルチノース、及びアルキルルチノースの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
本発明のグルタチオン産生促進剤は、前記ルチノースのみからなるものであってもよいし、前記アルキルルチノースのみからなるものであってもよいし、前記ルチノース、及びアルキルルチノースからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。また、前記アルキルルチノースを2種以上含むものであってもよい。
前記グルタチオン産生促進剤中の前記ルチノース、及びアルキルルチノースの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、前記メチルルチノシドのみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記ヒアルロン酸産生促進剤中の前記メチルルチノシドの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
本発明のインボルクリン産生促進剤は、前記アルキルルチノースからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。また、前記アルキルルチノースを2種以上含むものであってもよい。
前記インボルクリン産生促進剤中の前記アルキルルチノースの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
<その他の成分>
前記ルチノース、及びアルキルルチノースは、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアー、又はその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化して提供することができ、他の組成物(例えば、皮膚外用剤等)に配合して使用できるほか軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。この場合、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0041】
なお、本発明のメラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤は、必要に応じてメラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びインボルクリン産生促進作用を有する天然抽出物等を共に配合して用いることができる。
【0042】
前記メラニン産生抑制剤は、有効成分として含有されるルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかの作用により、メラニン産生抑制作用を発揮する。
前記グルタチオン産生促進剤は、有効成分として含有されるルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかの作用により、グルタチオン産生促進作用を発揮する。
前記ヒアルロン酸産生促進剤は、有効成分として含有されるメチルルチノシドの作用により、ヒアルロン酸産生促進作用を発揮する。
前記インボルクリン産生促進剤は、有効成分として含有されるアルキルルチノースの作用により、インボルクリン産生促進作用を発揮する。
【0043】
本発明のメラニン産生抑制剤によると、優れたメラニン産生抑制作用を通じて、例えば、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防・改善し、美白効果を得ることが可能となる。ただし、本発明のメラニン産生抑制剤は、これらの用途以外にもメラニン産生抑制作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0044】
本発明のグルタチオン産生促進剤によると、優れたグルタチオン産生促進作用を通じて、例えば、加齢により衰える酸化ストレスの防御を高め、かつ紫外線による酸化ストレスに対する傷害を抑制し、皮膚の老化の予防・改善、あるいは、シミ等の色素沈着を改善し、美白効果を得ることが可能となる。ただし、本発明のグルタチオン産生促進剤は、これらの用途以外にもグルタチオン産生促進作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0045】
本発明のヒアルロン酸産生促進剤によると、優れたヒアルロン酸産生促進作用を通じて、ヒトの皮膚の老化防止、関節炎等の予防・治療などに有効なヒアルロン酸を多量に産生させることができるので、化粧料などに好適に用いることができる。ただし、本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、これらの用途以外にもヒアルロン酸産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0046】
本発明のインボルクリン産生促進剤によると、優れたインボルクリン産生促進作用を通じて、例えば、角化細胞を包み込む不溶性の細胞膜様構造体であるCEの形成を促進して角化を正常化することにより、乾燥や紫外線等の外部刺激に伴う皮膚バリア機能の低下を抑制し、肌の乾燥や肌荒れ等、様々な皮膚症状を予防・改善することができ、皮膚の老化を予防・改善することが可能となる。ただし、本発明のインボルクリン産生促進剤は、これらの用途以外にもインボルクリン産生促進作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0047】
本発明のメラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤は、優れた作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。
【0048】
また、本発明のメラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤は、優れた作用を有するとともに、消化管で消化されないことが想定されることから、美容用飲食品又は医薬に配合するのに好適である。
また、本発明のメラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤は、優れた作用を有するので、メラニン、グルタチオン、ヒアルロン酸、及びインボルクリンの機能の研究や、メラニン、グルタチオン、ヒアルロン酸、及びインボルクリンに関連する疾患の研究のための試薬として好適に利用できる。
【0049】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかを含有してなり、更に必要に応じて適宜選択した成分を含有してなる。
前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかは、メラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤の形態であってもよい。
前記皮膚化粧料には、頭皮化粧料も含まれる。
前記アルキルルチノースとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メチルルチノシド、エチルルチノシド、ルチノシルグリセリンが好ましい。
【0050】
前記皮膚化粧料の用途としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス、などが挙げられる。
前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ルチノース、及びアルキルルチノースの少なくともいずれかに換算して0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜1質量%がより好ましい。
【0051】
前記皮膚化粧料には、更に必要に応じて本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲で、皮膚化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他の成分を添加することができる。
前記その他の成分としては、本発明の前記メラニン産生抑制作用、グルタチオン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びインボルクリン産生促進作用の妨げにならない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した成分が挙げられ、例えば、美白剤、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、などが挙げられる。
【0052】
なお、本発明のメラニン産生抑制剤、グルタチオン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びインボルクリン産生促進剤、並びに皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、製造例及び実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の製造例及び実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、「%」は「質量%」である。
【0054】
(製造例1:粗酵素液(ルチン分解酵素含有液)の調製)
ダッタンそば粉50gに20mM酢酸バッファー(pH5)1.5Lを加え、1時間撹拌抽出した後、東洋瀘紙製 No.1 濾紙で濾過することにより粗酵素液 1.41Lを得た。
【0055】
(製造例2:ルチノースの製造)
ルチン300μg、及び20mM酢酸バッファー(pH5)300μLを混合し、更に前記製造例1において調製した粗酵素液 100μLを加えて反応液を調製した。この反応液を40℃で3分間保持した後、75%アセトニトリルを溶媒として、Asahipak NH
2カラム(旭化成(株)製)に流速1mL/分で流し、RI検出器で検出を行なったところ、RT(リテンションタイム)=11分にピークが検出された。
前記ピークの物質について、
13C−NMRで構造解析を行なったところ、ルチノースであることが確認された。ルチノースの帰属データを表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
(製造例3:メチルルチノシドの製造)
ルチン300μg、メタノール60μL、及び20mM酢酸バッファー(pH5)240μLを混合し、更に前記製造例1において調製した粗酵素液 100μLを加えて反応液を調製した。この反応液を40℃で3分間保持した後、75%アセトニトリルを溶媒として、Asahipak NH
2カラム(旭化成(株)製)に流速1mL/分で流し、RI検出器で検出を行なったところ、RT(リテンションタイム)=6.77分にピークが検出された。
前記ピークの物質について、
13C−NMRで構造解析を行なったところ、メチルルチノシドであることが確認された。メチルルチノシドの帰属データを表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
(製造例4:エチルルチノシドの製造)
ルチン300μg、エタノール60μL、及び20mM酢酸バッファー(pH5)240μLを混合し、更に前記製造例1において調製した粗酵素液 100μLを加えて反応液を調製した。この反応液を40℃で3分間保持した後、75%アセトニトリルを溶媒として、Asahipak NH
2カラム(旭化成(株)製)に流速1mL/分で流し、RI検出器で検出を行なったところ、RT(リテンションタイム)=6.1分にピークが検出された。
前記ピークの物質について、
13C−NMRで構造解析を行なったところ、エチルルチノシドであることが確認された。
【0060】
(製造例5:ルチノシルグリセリンの製造)
ルチン300μg、1,2,3−プロパントリオール60μL、及び20mM酢酸バッファー(pH5)240μLを混合し、更に前記製造例1において調製した粗酵素液 100μLを加えて反応液を調製した。この反応液を40℃で3分間保持した後、75%アセトニトリルを溶媒として、Asahipak NH
2カラム(旭化成(株)製)に流速1mL/分で流し、RI検出器で検出を行なったところ、RT(リテンションタイム)=9.6分、及び10.6分にピークが検出された。
前記それぞれのピークの物質について、HPLCで分取した後、
13C−NMRで構造解析を行なったところ、RT=9.6分のピークが2−ルチノシルグリセリン、RT=10.6分のピークが1−ルチノシルグリセリンであることが確認された。1−ルチノシルグリセリンの帰属データを表3に、2−ルチノシルグリセリンの帰属データを表4に示す。
なお、後述する実施例の各試験では、1−ルチノシルグリセリンを使用した。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
(実施例1:メラニン産生抑制作用試験)
前記製造例1のルチノース、製造例2のメチルルチノシド、製造例3のエチルルチノシド、及び製造例4のルチノシルグリセリンを被験試料として用い、下記の試験方法により、メラニン産生抑制作用を試験した。
【0064】
B16メラノーマ細胞を、10質量%FBS含有のダルベッコMEM培地を用いて、37℃、5%CO
2下で培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10質量%FBS及び1mmol/L テオフィリン含有のダルベッコMEM培地で24.0×10
4cells/mLの濃度に希釈した後、48穴プレートに1穴当たり300μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で6時間培養した。培養終了後、10質量%FBS及び1mmol/L テオフィリン含有のダルベッコMEM培地で溶解した被験試料(試料濃度:100μg/mL、200μg/mL、400μg/mL)を各穴に300μL添加し、37℃、5%CO
2下で4日間培養した。培養終了後、各穴から培地を取り除き、2mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定し、メラニン産生量とした。
また、細胞生存率の測定のため、同様に培養後、400μLのPBS(−)で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで10質量%FBS含有のダルベッコMEM培地に溶解したニュートラルレッドを各穴に200μL添加した。37℃、5%CO
2下で2.5時間培養した後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各穴に200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
空試験として、10質量%FBS及び1mmol/L テオフィリン含有のダルベッコMEM培地のみで培養した細胞を同様の方法で試験した。
結果を表5に示す。
なお、メラニン産生抑制作用、及び細胞生存率の計算方法は以下の通りである。
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
細胞生存率(%)=(D/C)×100
ただし、前記式中、Aは「被験試料無添加での475nmにおける吸光度」、Bは「被験試料添加での475nmにおける吸光度」、Cは「被験試料無添加での540nmにおける吸光度」、Dは「被験試料添加での540nmにおける吸光度」を表す。
【0065】
【表5】
表5の結果から、ルチノース、メチルルチノシド、エチルルチノシド、及びルチノシルグリセリンが、メラニン産生抑制作用を有することが認められた。これらの中でも、エチルルチノシドが、最も強いメラニン産生抑制作用を示した。
【0066】
(実施例2:グルタチオン産生促進抑制作用試験 <B16メラノーマ細胞>)
前記製造例1のルチノース、製造例2のメチルルチノシド、製造例3のエチルルチノシド、及び製造例4のルチノシルグリセリンを被験試料として用い、下記の試験方法により、グルタチオン産生促進作用を試験した。
【0067】
B16メラノーマ細胞を、10質量%FBS含有のダルベッコMEM培地を用いて、37℃、5%CO
2下で培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10質量%FBS含有のダルベッコMEM培地で10×10
4cells/mLの濃度に希釈した後、48穴プレートに1穴当たり200μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。培養終了後、1質量%FBS含有のダルベッコMEM培地で溶解した被験試料(試料濃度:12.5μg/mL、50μg/mL、200μg/mL)を各穴に200μL添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養終了後、各穴から培地を取り除き、400μLのPBS(−)にて洗浄後、150μLのM−PER(登録商標)(PIERCE社製)を用いて細胞を溶解した。このうちの100μLを用いて総グルタチオンの定量を行なった。
即ち、96穴プレートに、溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mリン酸緩衝液50μL、2mM NADPH 25μL、及びグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mM 5,5’−dithiobis(2−nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度(OD)を測定し、ΔOD/分を求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオンを用いて作成した検量線をもとに算出した。得られた値は、総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式に従い、グルタチオン産生促進率を算出した。結果を表6に示す。
グルタチオン産生促進率(%)=(F/E)×100
ただし、前記式中、Eは「被験試料を添加しない細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)」、Fは「被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量」を表す。
【0068】
【表6】
表6の結果から、ルチノース、メチルルチノシド、エチルルチノシド、及びルチノシルグリセリンが、グルタチオン産生促進作用を有することが認められた。これらの中でも、ルチノシルグリセリンが、最も強いグルタチオン産生促進作用を示した。
【0069】
(実施例3:グルタチオン産生促進作用試験 <線維芽細胞>)
前記製造例1のルチノース、製造例2のメチルルチノシド、製造例3のエチルルチノシド、及び製造例4のルチノシルグリセリンを被験試料として用い、下記の試験方法により、グルタチオン産生促進作用を試験した。
【0070】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10質量%のFBS含有α−MEM培地を用いて、37℃、5%CO
2下で培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10
5cells/mLの濃度に10質量%のFBS含有α−MEM培地で希釈した後、48穴プレートに1穴当たり200μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。培養終了後、1質量%のFBS含有D−MEM培地に溶解した被験試料(試料濃度:12.5μg/mL、50μg/mL、200μg/mL)を各穴に200μL添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養終了後、各穴から培地を抜き、400μLのPBS(−)にて洗浄後、150μLのM−PER(登録商標)(PIERCE社製)を用いて細胞を溶解した。このうちの100μLを用いて、総グルタチオンの定量を行った。
即ち、96穴プレートに、溶解した細胞抽出液100μL、0.1Mリン酸緩衝液50μL、2mM NADPH 25μL、及びグルタチオンレダクターゼ 25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mM 5,5’−dithiobis(2−nitrobenzoic acid) 25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度(OD)を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオンを用いて作成した検量線をもとに算出した。得られた値は、総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記の式に従い、グルタチオン産生促進率を算出した。結果を表7に示す。
グルタチオン産生促進率(%)=(H/G)×100
ただし、前記式中、Gは「被験試料を添加しない細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)」、Hは「被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量」を表す。
【0071】
【表7】
表7の結果から、ルチノース、メチルルチノシド、エチルルチノシド、及びルチノシルグリセリンが、グルタチオン産生促進作用を有することが認められた。
【0072】
(実施例4:ヒアルロン酸産生促進作用試験)
前記製造例2のメチルルチノシドを被験試料として用い、下記の試験方法により、ヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
【0073】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて、37℃、5%CO
2下で培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10
5cells/mLの濃度にKGMで希釈した後、96穴プレートに1穴当たり100μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養終了後、KGMに溶解した被験試料(試料濃度:1.56μg/mL、6.25μg/mL、25μg/mL、100μg/mL)を各穴に100μL添加し、37℃、5%CO
2下で7日間培養した。培養終了後、各穴の培地中のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。結果を表8に示す。
なお、ヒアルロン酸産生促進率、及び細胞生存率の計算方法は、下記式に示す通りである。
ヒアルロン酸産生促進率(%)=(I/J)×100
細胞生存率(%)=(K/L)×100
ただし、前記式中、Iは「被験試料添加時のヒアルロン酸量」、Jは「被験試料無添加時のヒアルロン酸量」、Kは「被験試料を添加した細胞での540nmにおける吸光度」、Lは「被験試料を添加しない細胞での540nmにおける吸光度」を表す。
【0074】
【表8】
表8の結果から、メチルルチノシドは、濃度依存の有意なヒアルロン酸産生促進作用を有することが認められた。
【0075】
(実施例5:インボルクリン産生促進作用試験)
前記製造例2のメチルルチノシド、製造例3のエチルルチノシド、及び製造例4のルチノシルグリセリンを被験試料として用い、下記の試験方法により、インボルクリン産生促進作用を試験した。
【0076】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて、37℃、5%CO
2下で培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10
5cells/mLの濃度となるようにKGMで希釈した後、48穴プレートに1穴あたり200μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、KGMで溶解した被験試料(試料濃度:12.5μg/mL、50μg/mL)を各穴に200μLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で48時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ細胞表面に発現したインボルクリンの量を、モノクローナル抗ヒトインボルクリン抗体(SIGMA製)を用いたELISA法により測定(Bio−Teck Instruments製 プレートリーダー)した。得られた測定結果から、下記式によりインボルクリン産生促進率(%)を算出した。結果を表9に示す。
インボルクリン産生促進率(%)=(M/N)×100
ただし、前記式中、Mは「被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度」、Nは「被験試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度」を表す。
【0077】
【表9】
表9の結果から、メチルルチノシド、エチルルチノシド、及びルチノシルグリセリンが、インボルクリン産生促進作用を有することが認められた。
【0078】
(配合例1)
−ヘアトニック−
下記組成の育毛作用を有するヘアトニックを、常法により製造した。
・塩酸ピリドキシン・・・0.1g
・レゾルシン・・・0.01g
・D−パントテニルアルコール・・・0.1g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・l−メントール・・・0.05g
・1,3−ブチレングリコール・・・4.0g
・センブリエキス・・・0.1g
・ニンジンエキス・・・0.1g
・クジンエキス・・・0.1g
・メチルルチノシド(製造例3)・・・0.2g
・香料・・・適量
・精製水・・・残部(合計:100.00g)