(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5668159
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】高周波チョークコイルとCATV機器
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20150122BHJP
H03H 7/06 20060101ALI20150122BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20150122BHJP
H03H 7/09 20060101ALI20150122BHJP
H01F 19/04 20060101ALI20150122BHJP
H01F 19/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H03H7/06
H03H7/075 Z
H03H7/09 Z
H01F19/04 Z
H01F19/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-63895(P2014-63895)
(22)【出願日】2014年3月26日
【審査請求日】2014年3月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114226
【氏名又は名称】ミハル通信株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正美
(72)【発明者】
【氏名】北越 愛菜
【審査官】
▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−017638(JP,A)
【文献】
特開2010−130368(JP,A)
【文献】
実開昭58−127709(JP,U)
【文献】
実開平07−029815(JP,U)
【文献】
特開2001−060520(JP,A)
【文献】
実開昭60−183381(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H1/00−H03H7/54
H01F17/00−H01F17/08
H01F37/00−H01F37/02
H01F 19/00
H01F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁心の外周に巻線が数回巻かれた高周波チョークコイルにおいて、
前記巻線は高周波接続端側が2ターン以上密巻きされ、アース接続端側が均等(ほぼ均等を含む)間隔で巻かれ、一端側が高周波回路に接続され、他端側が高周波的にアースに接地されるものであり、
ダンパー抵抗器が、前記巻線のアース接続端側に当該巻線と並列に接続され、
ジャンパー線(結合線)が、前記磁心の外周に巻かれ、その両端部を接地することによって、巻線と電磁結合できるようにして、前記巻線に伝送される高周波信号中の特定周波数帯域の共振信号が前記結合線を通してアースに接地されるようにした、
ことを特徴とする高周波チョークコイル。
【請求項2】
請求項1記載の高周波チョークコイルにおいて、
結合線が絶縁線であり、その外周に樹脂チューブを被せたものである、
ことを特徴とする高周波チョークコイル。
【請求項3】
高周波回路を備えたCATV機器において、
請求項1又は請求項2記載の高周波チョークコイルが、高周波回路の入力端と出力端との間に当該高周波回路と並列に設けられ、
高周波チョークコイルの巻線の高周波接続端側が前記高周波回路に接続され、アース接続端側が高周波的にアースに接地され、結合線の両端がアースに接地された、
ことを特徴とするCATV機器。
【請求項4】
高周波回路を備えたCATV機器において、
CATV機器が高周波回路と分岐回路を備えた分岐器であり、
請求項1又は請求項2記載の高周波チョークコイルが、高周波回路の入力端と出力端との間に当該高周波回路と並列に設けられ、高周波チョークコイルの巻線の高周波接続端側が前記高周波回路に接続され、アース接続端側が高周波的にアースに接地され、結合線の両端がアースに接地され、
請求項1又は請求項2記載の高周波チョークコイルが、分岐回路の入力端と分岐回路のアース接続端との間に当該高周波回路と並列に設けられ、当該高周波チョークコイルの巻線のアース接続端側が高周波的にアースに接地され、結合線の両端がアースに接地された、
ことを特徴とするCATV機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CATVシステムをはじめとする共聴設備で用いられる高周波チョークコイルに関し、重畳して伝送される高周波信号と電源電流とを分岐(分離)するのに使用される高周波チョークコイルと当該高周波チョークコイルが組み込まれたCATV機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CATVシステムには、増幅器、ラインスプリッター、パワーインジェクター、タップオフ等の各種機器(以下、これらを「CATV機器」と総称する)が同軸ケーブルで接続される。これらCATV機器の動作に必要な電源電流(機器駆動用電源電流)は、同軸ケーブルに、テレビジョン信号(高周波信号)と重畳させて伝送し、分岐回路などで高周波信号と分離してCATV機器に供給されている。
図5(a)に示すものは増幅器、ラインスプリッター、パワーインジェクター等のCATV機器であり、高周波チョークコイルL
1、L
2と、コンデンサC
1、C
2で構成される。入力端INからの入力信号のうち、直流又は低周波である電源電流は、電流阻止コンデンサC
1、C
2、C
3で阻止されて高周波回路に流れず、チョークコイルL
1、L
2を通過して出力端OUTに出力され、出力端OUTに接続されている同軸ケーブルに供給されて次のCATV機器に供給される。他方、高周波信号は、チョークコイルLで阻止されてコンデンサC
1、C
2を通過して、出力端OUTに出力される。
【0003】
図5(b)に示すものは分岐器等のCATV機器であり、高周波チョークコイルL
1、L
2、L
3、L
4とコンデンサC
1、C
2、C
3、C
4、C
5で構成される。この場合も入力端INからの入力信号のうち、直流又は低周波である電源電流は、電流阻止コンデンサC
1、C
2で阻止されて高周波回路に流れず、チョークコイルL
1、L
2を通過して出力端OUTに出力され、出力端OUTに接続されている同軸ケーブルに供給されて次のCATV機器に供給される。他方、高周波信号はチョークコイルL
1、L
2で阻止されてコンデンサC
1、C
2を通過して、出力端OUTに出力される。直流又は低周波である電源電流は電流阻止コンデンサC
1、C
2で阻止されて高周波回路に流れず、チョークコイルL
1、L
2を通過して出力端OUTに出力され、出力端OUTに接続されている同軸ケーブルに供給されて次のCATV機器に供給される。また、高周波チョークコイルL
3、L
4とコンデンサC
4、C
5で構成される分岐端BRでは、直流又は低周波である電源電流は電流阻止コンデンサC
1、C
4で阻止されて高周波回路に流れず、チョークコイルL
3、L
4を通過して分岐端BRに出力され、分岐端BRに接続されている同軸ケーブルに供給されて次のCATV機器に供給される。他方、高周波信号はチョークコイルL
3、L
4で阻止されてコンデンサC
1、C
4を通過して、分岐端BRに出力される。直流又は低周波である電源電流は電流阻止コンデンサC
1、C
4で阻止されて高周波回路に流れず、チョークコイルL
3、L
4を通過して分岐端BRに出力され、分岐端BRに接続されている同軸ケーブルに供給されて次のCATV機器に供給される。
【0004】
通常、高周波チョークコイルはインダクタンスを大きくするため棒状の磁心(通常フェライトコア)を用い、その外周に絶縁線を巻いてある。高周波チョークコイルには浮遊容量があるため、チョークコイル自体のインダクタンスLと浮遊容量Cにより共振回路が構成され、その共振回路が同軸ケーブルで伝送される高周波信号の特定周波数帯域に共振して現われ、高周波信号の伝送特性に悪影響を与える(入出力端間の高周波損失が大きくなる)ことが知られている。この損失は、高周波回路による損失、コンデンサC
1、C
2による損失、チョークコイルLによる損失の和である(特許文献1)。
【0005】
前記問題を回避するため、チョークコイルにダンパー抵抗器を並列接続することが知られているが、ダンパー抵抗器を接続すると高周波信号の損失が増大するという難点がある。従来、この問題を解決する手段として、複数のコイルをフェライトコアの外周に間隔をあけて直列接続した分割コイルに抵抗性リングを接続したもの(特許文献1)や、分割コイルの巻き数を変えて夫々のコイルが異なる自己共振周波数を持たせて、これら自己共振周波数が、高周波チョークコイルの使用周波数帯域中で分散するように選定されたもの(特許文献2)が提案されている。特許文献2では、それら分割コイルの一部にダンパー抵抗器を並列接続することも提案されている。
【0006】
CATVシステムでは、広い周波数範囲にわたって高周波信号を伝送する必要があるため、CATV機器内で使用する高周波チョークコイルには、高周波信号の伝送帯域内に悪影響を与えない(部分共振がない、広帯域に亘って伝送損失が少ない)ことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−17638号公報
【特許文献2】特開2001−60520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決課題は、高周波チョークコイルの自己共振による高周波信号の損失が少なく、広帯域化が可能な高周波チョークコイルと当該高周波チョークコイルが組み込まれたCATV機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高周波チョークコイルは、磁心の外周に巻線が数回巻かれた高周波チョークコイルにおいて、前記巻線は高周波接続端側が2ターン以上密巻きされ、アース接続端側が均等(ほぼ均等を含む)間隔で巻かれ、一端側が高周波回路に接続され、他端側が高周波的にアースに接地されるものであり、ダンパー抵抗器が、前記巻線のアース接続端側に当該巻線と並列に接続され、ジャンパー線(結合線)が、前記磁心の外周に巻かれ、その両端部を接地することによって、巻線と電磁結合できるようにして、前記巻線に伝送される高周波信号中の特定周波数帯域の共振信号が前記結合線を通してアースに接地されるようにしたものである。前記高周波チョークコイルにおいて、結合線が絶縁線(コイル用の巻線)であり、その外周に樹脂チューブを被せたものでもよい。
【0010】
本発明のCATV機器は、高周波回路を備えたCATV機器において、前記高周波チョークコイルが、高周波回路の入力端と出力端との間に当該高周波回路と並列に設けられ、高周波チョークコイルの巻線の高周波接続端側が前記高周波回路に接続され、アース接続端側
が高周波的にアースに接地され、結合線の両端がアースに接地されたものとすることができる。本発明のCATV機器は、高周波回路を備えたCATV機器において、CATV機器が高周波回路と分岐回路を備えた分岐器であり、前記高周波チョークコイルが、高周波回路の入力端と出力端との間に当該高周波回路と並列に設けられ、高周波チョークコイルの巻線の高周波接続端側が前記高周波回路に接続され、アース接続端側
が高周波的にアースに接地され、結合線の両端がアースに接地され、前記高周波チョークコイルが、分岐回路の入力端と分岐回路のアース接続端との間に当該高周波回路と並列に設けられ、当該高周波チョークコイルの巻線のアース接続端側
が高周波的にアースに接地され、結合線の両端がアースに接地されたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高周波チョークコイル及びCATV機器には、次のような効果がある。
(1)ダンパー抵抗器をコイルに並列に接続しているので、チュークコイルの自己共振による周波数特性の劣化を抑えることができる。
(2)コイルの周囲に結合線を巻いてその両端をアースに接地してあるので、自己共振による共振信号が結合線と電磁結合してアースに接地されるため、高周波帯域の損失が低減して広帯域化が可能になる。
(3)ダンパー抵抗器と結合線の双方を設けることにより、チョークコイルの自己共振による特性劣化と高周波信号の損失低減という双方の課題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の高周波チョークコイルの一例を示す正面図。
【
図2】本発明の高周波チョークコイルを組み込んだCATV機器の一例を示す結線図。
【
図3】本発明の高周波チョークコイルを組み込んだCATV機器の他例を示す結線図。
【
図4】(a)はダンパー抵抗器を接続した場合と接続しない場合の高周波チョークコイルの高周波伝送特性の違いを比較したグラフ、(b)はダンパー抵抗器を接続した高周波チョークコイルの周囲に結合線を配置した場合と配置しない場合の高周波チョークコイルの高周波伝送特性の違いを比較したグラフ。
【
図5】(a)(b)は本発明のCATV機器の異なる例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(高周波チョークコイルの実施形態)
本発明の高周波チョークコイル1の一例を、図面を参照して説明する。この実施形態では、高周波チョークコイル1をCATVシステムで用いる場合を一例として説明するが、本発明の高周波チョークコイル1は、CATVシステム以外の共聴設備において使用することもできる。
【0014】
図1に示す高周波チョークコイル1は、磁心2の外周に絶縁線(巻線)3がコイル状に巻回されてコイルが形成されている。この実施形態では、磁心2がフェライトコアであり、巻線3が絶縁線である。磁心2、巻線3には、これら以外のものを使用することができる。
【0015】
巻線3は一端側(高周波回路接続側)7が2ターン密巻きされており、他端側(アース接続側)が均等(略均等を含む)間隔で1ターン巻きされている。巻線3の巻き方はこれ以外であってもよく、例えば、磁心2の全長に均一間隔で巻回したもの、ランダムな間隔で巻回されたもの、数ターンずつ密巻きしたもの等であってもよい。
【0016】
図1ではダンパー抵抗器5が高周波チョークコイル1のアース接続端4側に並列接続され、ジャンパー線(結合線)6を高周波チョークコイル1のアース接続端4側に巻いて両端部をアースに接続してある。この場合、結合線6は隣接する巻線3の間に配置してある。ダンパー抵抗器5の抵抗値は高周波チョークコイル1の巻線3の線径や巻き方と磁心2の材質などの条件によっても異なるが数百Ω〜数キロΩ程度が適し、結合線6には絶縁線の外周に樹脂チューブ(例えば、ポリウレタン製チューブ:絶縁チューブ)を被せたものを使用してある。また、高周波チョークコイル1の巻線3と同じものを使用してもよい。
【0017】
前記のようにダンパー抵抗器5を接続することにより高周波領域への影響を低減することができ、結合線6を巻いてアースに接地することにより、高周波信号の損失を低減することができる。結合線6は巻線3間に巻くことにより配線位置が安定し、巻線3と並行に配列することにより電磁結合し易くなって、高周波チョークコイル1の自己共振による共振信号をアースに確実に落すことができる。
【0018】
結合線6の配置箇所は任意に変更することができるが、本件出願人の実験では、結合線6をコイルのアース接続端4側に配線すると顕著な効果が認められた。結合線6は複数本配置することもできる。
【0019】
ダンパー抵抗器5を接続した場合と接続しない場合の高周波伝送特性の違いを比較したグラフを
図4(a)に、結合線6をコイルのアース接続端4側に配置した場合としない場合の高周波伝送特性の違いを比較したグラフを
図4(b)に示す。
【0020】
図4(a)に示すように、ダンパー抵抗器5を接続しない場合は、250MHz付近と450MHz付近(共振周波数部分)においてディップが生じるが、ダンパー抵抗器5を接続することによって、当該周波数付近でのディップが解消される。しかし、単にダンパー抵抗器5を接続しただけの場合、
図4(b)に示すように、1000MHz付近でレベルが急激に落ち込むことが見られる。これに対し、ダンパー抵抗器5を接続し、更に結合線6を配置した場合(本発明の場合)、1000MHz付近でも高周波レベルが落ち込むことなく、高いレベルを維持しており、広帯域特性が低減しない(向上している)ことがわかる。
【0021】
図2は
図1の等価回路である。CATV機器用の電源電流は、テレビジョン信号などの高周波信号に重畳して伝送される。このうち、テレビ信号(高周波信号)は高周波チョークコイル1で阻止されてコンデンサC
1、C
2を通過し、電源電流(直流又は低周波)はコンデンサC
1、C
2で阻止されて高周波チョークコイル1を通過する。
【0022】
(CATV機器の実施形態)
本発明のCATV機器の一例として増幅器、ラインスプリッター、パワーインジェクター等の一例を
図2に、分岐器等の一例を
図3に示す。
図2は
図5(a)に示すCATV機器に本発明の高周波チョークコイル1を組み込んだ場合である。
図3は
図5(b)に示すCATV機器に本発明の高周波チョークコイル1を組み込んだ場合である。
図2、
図3の5が
図1におけるダンパー抵抗5、
図2、
図3の6が
図1におけるジャンパー線6である。
【符号の説明】
【0023】
1 高周波チョークコイル
2 磁心
3 絶縁線(巻線)
4 アース接続端
5 ダンパー抵抗器
6 ジャンパー線(結合線)
7 高周波回路接続側
8 高周波回路
C
1〜C
5 コンデンサ
L
1〜L
4 インダクタンス
【要約】 (修正有)
【課題】自己共振による高周波信号の損失が少なく、広帯域化が可能な高周波チョークコイルとCATV機器を提供する。
【解決手段】巻線3と並列にダンパー抵抗器5を接続し、磁心2の外周に結合線6を巻き、結合線の両端部を接地し、巻線と結合線が電磁結合することによって巻線に伝送された高周波信号の共振信号が結合線を通してアースに接地されるようにした。巻線の一端側を高周波回路に接続し、他端側を高周波的にアースに接地し、結合線を巻線のアース接地端4側に巻いてもよい。巻線の高周波接続7側を2ターン以上密巻きし、アース接地側を均等間隔で1ターン巻きし、結合線を隣接する巻線間に巻線と並行に巻くことにより、結合線の巻き位置を安定させ、巻線と結合線とが電磁結合し易くなるようにしてもよい。
【選択図】
図1