【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
<センチュウの防除効果の評価>
スクラレオールのセンチュウに対する防除効果を確認するため、以下の実施例1〜6及び参考例1の実験を行った。
【0027】
実施例1
<スクラレオール48時間処理の防除効果の検定>
適量のスクラレオールを、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオールの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度100μMになるよう希釈した。
次いで、滅菌したトマト(品種:桃太郎)の種子を予めよく洗浄した直径0.4mm以下の海砂を充填したプラスチックポット(7.5cm径)に播種し、25±1℃で制御された野外に設置したガラス温室内で栽培した。本葉が2枚展開したトマトをポットごと、バット(40cm長×30cm横×10cm高)の中に置き、根が完全に浸るまで2000mLの100μMスクラレオールもしくは対照区として0.1%メタノールを注入し、上記栽培条件下で48時間栽培した。48時間目に、スクラレオール液を捨て、代わりに水耕栽培液(1000倍希釈ハイポネックス溶液)を注入し、引き続き、栽培した。スクラレオール処理開始から1週間目で、ネコブセンチュウ300頭を根に接種し、上記栽培条件下で引き続き栽培した。接種1週間目で、全ての根を回収し、酸性フクシンを用いた定法に従ってネコブセンチュウを染色、実体顕微鏡下で根に侵入したセンチュウを計測した。
図1に、トマトにおけるセンチュウ感染に対するスクラレオール48時間処理の効果を示す。スクラレオールを根圏に48時間処理したトマト幼苗では、対照区と比較して処理の1週間後に高いセンチュウ侵入抑制効果が認められた。
【0028】
実施例2
<スクラレオール48時間処理による根の生長の影響の有無の検定>
適量のスクラレオールを、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオールの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度100μMになるよう希釈した。
次いで、滅菌したトマト(品種:桃太郎)の種子を予めよく洗浄した直径0.4mm以下の海砂を充填したプラスチックポット(7.5cm径)に播種し、25±1℃で制御された野外に設置したガラス温室内で栽培した。本葉が2枚展開したトマトをポットごと、バット(40cm長×30cm横×10cm高)の中に置き、根が完全に浸るまで2000mLの100μMスクラレオールもしくは対照区として0.1%メタノールを注入し、上記栽培条件下で48時間栽培した。48時間目に、スクラレオール液を捨て、代わりに水耕栽培液(1000倍希釈ハイポネックス溶液)を注入し、引き続き、栽培した。スクラレオール処理開始から1週間目で、全ての根を回収し、その重さを計測した。
図2に、トマト根の生長に対するスクラレオール48時間処理の効果を示す。スクラレオールはトマトの根の生長を阻害しなかった。
【0029】
実施例3
<スクラレオール1週間処理の防除効果の検定>
適量のスクラレオールを、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオールの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度100μMになるよう希釈した。
次いで、滅菌したトマト(品種:桃太郎)の種子を予めよく洗浄した直径0.4mm以下の海砂を充填したプラスチックポット(7.5cm径)に播種し、25±1℃で制御された野外に設置したガラス温室内で栽培した。本葉が2枚展開したトマトをポットごと、バット(40cm長×30cm横×10cm高)の中に置き、根が完全に浸るまで2000mLの100μMスクラレオールもしくは対照区として0.1%メタノールを注入し、上記栽培条件下で1週間栽培した。1週間目に、スクラレオール液を捨て、代わりに水耕栽培液(1000倍希釈ハイポネックス溶液)を注入し、引き続き、栽培した。スクラレオール処理開始から1週間目で、ネコブセンチュウ300頭を根に接種し、上記栽培条件下で引き続き栽培した。接種1週間目で、全ての根を回収し、酸性フクシンを用いた定法に従ってネコブセンチュウを染色、実体顕微鏡下で根に侵入したセンチュウを計測した。
図3に、トマトにおけるセンチュウ感染に対するスクラレオール1週間処理の効果を示す。スクラレオールを根圏に1週間処理したトマト幼苗では、対照区と比較して高いセンチュウ侵入抑制効果が認められた。
【0030】
実施例4
<スクラレオール1週間処理による根の生長の影響の有無の検定>
適量のスクラレオールを、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオールの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度100μMになるよう希釈した。
次いで、滅菌したトマト(品種:桃太郎)の種子を予めよく洗浄した直径0.4mm以下の海砂を充填したプラスチックポット(7.5cm径)に播種し、25±1℃で制御された野外に設置したガラス温室内で栽培した。本葉が2枚展開したトマトをポットごと、バット(40cm長×30cm横×10cm高)の中に置き、根が完全に浸るまで2000mLの100μMスクラレオールもしくは対照区として0.1%メタノールを注入し、上記栽培条件下で1週間栽培した。1週間目に、スクラレオール液を捨て、代わりに水耕栽培液(1000倍希釈ハイポネックス溶液)を注入し、引き続き、栽培した。スクラレオール処理開始から1週間目で、全ての根を回収し、その重さを計測した。
図4に、トマト根の生長に対するスクラレオール1週間処理の効果を示す。スクラレオール1週間処理はトマトの根の生長を阻害しなかった。
【0031】
参考例1
<類縁体の防除効果の検定>
下記式(2)の構造を有するスクラレオライドを適量、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオライドの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度100μMになるよう希釈した。
次いで、滅菌したトマト(品種:桃太郎)の種子を予めよく洗浄した直径0.4mm以下の海砂を充填したプラスチックポット(7.5cm径)に播種し、25±1℃で制御された野外に設置したガラス温室内で栽培した。本葉が2枚展開したトマトをポットごと、バット(40cm長×30cm横×10cm高)の中に置き、根が完全に浸るまで2000mLの100μMスクラレオライドもしくは対照区として0.1%メタノールを注入し、上記栽培条件下で48時間栽培した。48時間目に、スクラレオライド液を捨て、代わりに水耕栽培液(1000倍希釈ハイポネックス溶液)を注入し、引き続き、栽培した。スクラレオライド処理開始から1週間目で、ネコブセンチュウ300頭を根に接種し、上記栽培条件下で引き続き栽培した。接種1週間目で、全ての根を回収し、酸性フクシンを用いた定法に従ってネコブセンチュウを染色、実体顕微鏡下で根に侵入したセンチュウを計測した。
図5に、トマトにおけるセンチュウ感染に対するスクラレオライド48時間処理の効果を示す。スクラレオライドはセンチュウ侵入抑制効果を示さなかった。
【0032】
【化2】
【0033】
実施例5
<シロイヌナズナを用いた検定>
適量のスクラレオールを、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオールの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度100μMになるよう希釈した。
次いで、播種後2週間のシロイヌナズナ(アクセションcol-0)の幼苗を予めよく洗浄した直径0.4mm以下の海砂を充填したプラスチックポット(7.5cm径)に播種し、25±1℃で制御された野外に設置したガラス温室内で栽培した。ロゼット葉が展開したトマトをポットごと、バット(40cm長×30cm横×10cm高)の中に置き、根が完全に浸るまで2000mLの100μMスクラレオールもしくは対照区として0.1%メタノールを注入し、上記栽培条件下で48時間栽培した。48時間目に、スクラレオール液を捨て、代わりに水耕栽培液(1000倍希釈ハイポネックス溶液)を注入し、引き続き、栽培した。スクラレオール処理開始から1週間目で、ネコブセンチュウ300頭を根に接種し、上記栽培条件下で引き続き栽培した。接種1週間目で、全ての根を回収し、酸性フクシンを用いた定法に従ってネコブセンチュウを染色、実体顕微鏡下で根に侵入したセンチュウを計測した。
図6に、シロイヌナズナにおけるセンチュウ感染に対するスクラレオール48時間処理の効果を示す。スクラレオールを根圏に1週間処理したシロイヌナズナ植物では、対照区と比較して高いセンチュウ侵入抑制効果が認められた。
【0034】
実施例6
<抗センチュウ活性の有無の検定>
適量のスクラレオールを、メタノールに添加して均一になるまで攪拌することにより、スクラレオールの濃度が、100mMの薬剤を得、水によって最終濃度200μMになるよう希釈した。
次いで、ガラスシャーレ(9cm径)に2齢幼虫のネコブセンチュウ約100頭を含む5mLの水溶液を入れ、そこに等量(5mL)の200μMスクラレオールもしくは対照区として蒸留水を入れ、22±1℃で制御された人工気象室(暗室条件)で培養した。48時間後に実体顕微鏡下で生存しているセンチュウの数を計測した。
図7に、スクラレオールの殺センチュウ活性の有無を示す。スクラレオール処理区と対照区でセンチュウの生存数に差は認められなかったことから、スクラレオールは直接の殺センチュウ効果は有さないことを示す。