特許第5668275号(P5668275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5668275SOIウェーハの製造方法及び貼り合わせ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668275
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】SOIウェーハの製造方法及び貼り合わせ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20150122BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-94164(P2009-94164)
(22)【出願日】2009年4月8日
(65)【公開番号】特開2010-245396(P2010-245396A)
(43)【公開日】2010年10月28日
【審査請求日】2011年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】森川 靖之
(72)【発明者】
【氏名】森本 信之
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−216365(JP,A)
【文献】 特開平07−226350(JP,A)
【文献】 特開2004−052098(JP,A)
【文献】 実開昭55−022140(JP,U)
【文献】 特開昭52−146174(JP,A)
【文献】 特開昭50−012971(JP,A)
【文献】 特開2000−164588(JP,A)
【文献】 特開2004−221447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼り合わせ対象の2枚のウェーハのうち、少なくとも一方のウェーハの貼り合わせ面に酸化膜が形成された前記2枚のウェーハを、前記酸化膜を介して重ね合わせて容器内の載置台に載置した後、前記容器内を減圧して、前記減圧が完了した後に、前記ウェーハを押圧して前記ウェーハ同士の接合を開始させることを特徴とするSOIウェーハの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のSOIウェーハの製造方法において、
前記載置台の載置面は凹状に形成されていることを特徴とするSOIウェーハの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のSOIウェーハの製造方法において、
前記載置台の載置面は水平方向に対して0°を超え5°以下傾斜して形成され、前記載置台の周りには前記ウェーハの移動を規制する少なくとも3つの支持部材が立設されていることを特徴とするSOIウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOIウェーハの製造方法及び貼り合わせ装置に係り、特に、減圧雰囲気でSOIウェーハを接合して貼り合わせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン製の2枚のウェーハを大気圧雰囲気で貼り合わせてSOI(Silicon on Insulator)ウェーハを製造する際に、貼り合わせ界面に空気が閉じこめられてボイドが発生するのを防止するため、減圧雰囲気でウェーハ同士を貼り合わせるSOIウェーハの製造技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸化膜を形成した2枚のウェーハのうち、一方のウェーハをチャンバー内に設けた載置面が平坦な載置台に載置し、載置したウェーハの上側にスペーサを介して他方のウェーハを載置し、真空ポンプでチャンバー内を減圧した後、スペーサを引き抜いて上側のウェーハを落下させてウェーハ同士を接合して貼り合わせる技術が記載されている。すなわち、減圧完了までウェーハ同士を接触させないで、所定の減圧雰囲気になってからウェーハの接合を開始させて、ボイドの発生を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−216365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、チャンバー内の減圧時に、チャンバー内に不可避的に存在するパーティクルや有機物などの異物が、ウェーハの貼り合わせ面に付着することについては考慮されていない。つまり、真空ポンプによる排気によってチャンバー内に気流が生じ、その気流がスペーサで維持したウェーハ同士の隙間に侵入し、気流に同伴した異物がウェーハの貼り合わせ面に付着する。そのため、異物が付着したままウェーハ同士を接合することになり、異物が付着した位置のウェーハ同士の接合が阻害され、貼り合わせ界面にボイドが残るという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、減圧時の気流に伴う異物により発生するボイドを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、ウェーハ同士の間にスペーサを挿入しなくても、ウェーハ同士の接合がすぐには開始しないことを知見した。つまり、ウェーハ同士を重ね合わせて載置しても、ウェーハ同士の間に空気層が残っている間は、この空気層の厚みの分だけウェーハ同士に隙間が形成されていることを見いだした。これは、平坦なウェーハの貼り合わせ面に形成される空気層がウェーハの周縁から抜け出るために一定の時間が必要になるからである。
【0008】
これらの知見に基づいて、上記課題を解決するため、本発明のSOIウェーハの製造方法は、貼り合わせ対象の2枚のウェーハのうち、少なくとも一方のウェーハの貼り合わせ面に酸化膜が形成された2枚のウェーハを、酸化膜を介して重ね合わせて容器内の載置台に載置した後、容器内を減圧してウェーハ同士の接合を開始させることを特徴とする。
【0009】
これによれば、ウェーハ同士を重ね合わせて載置しても、重ね合わせ面の空気層によって接合が開始しない。この空気層は極めて薄いから、減圧によって生じた気流がウェーハ同士の隙間に侵入することを抑制できる。また、ウェーハの自重によって圧縮されているから、ウェーハ同士の隙間の圧力が容器内よりも高くなるので、気流の侵入を抑制できる。その結果、気流に同伴した異物がウェーハの貼り合わせ面に付着することを減少でき、異物により発生するボイドを低減できる。
【0010】
また、載置台の載置面を凹状に形成することが好ましい。例えば、従来は、載置台の載置面を凸状に形成して、載置される2枚のウェーハを凸状に変形させて、ウェーハ同士の貼り合わせ面の中心部の空気層を薄くすることにより、空気層の空気の抜けを促進して、ウェーハ同士の接合を中心部から速やかに開始させるようにしている。これに対して、載置面を凹状に形成すると、載置面側に位置する下のウェーハを載置台の凹面に併せて凹状に変形するが、上のウェーハの変形は下のウェーハの変形に追従し難いため、ウェーハ間の隙間が薄くなる箇所が1点(中心部)に集中しにくくなり、ウェーハ同士の貼り合わせ面の中心部の空気層を薄くする作用が働きにくくなると推察される。そのため、ウェーハ同士の接合開始を遅らせる方向にコントロールできると考えられる。
【0011】
また、載置台の載置面を水平方向に対して0°を超えて5°以下傾斜させることが好ましい。これによれば、上側のウェーハにかかる重力の一部を支持部材で受けることができるから、空気層にかかるウェーハの自重を低減でき、ウェーハ同士の隙間から空気層が抜けにくくできる。その結果、ウェーハ同士の接合開始を遅らせる方向にコントロールできる。
【0012】
また、減圧後にウェーハ同士を押圧することが好ましい。これにより、貼り合わせ面の間に存在する空気の抜けを促進でき、ウェーハ同士の接合にかかる時間を短縮できる。
【0013】
一方、本発明の貼り合わせ装置は、貼り合わせ対象の2枚のウェーハのうち、少なくとも一方のウェーハの貼り合わせ面に酸化膜が形成された2枚のウェーハが収容される容器と、容器内に設けられ2枚のウェーハが重ね合わされ載置される載置台と、載置台の周りに前記ウェーハの外径に合わせて立設される少なくとも3つの支持部材と、前記容器内を排気して減圧する減圧手段を備え、載置面を凹状や0°を超えて5°以下傾斜させて形成することができる。
【0014】
この場合において、載置面をウェーハの貼り合わせ面よりも小さく形成することが好ましい。これによれば、載置面の周りに立設させた支持部材の位置をウェーハの径に応じて調整することにより、1つの装置で種々の径のウェーハを接合できる。
【0015】
また、載置面の上方に設けた押圧部材でウェーハ同士を押圧することにより、貼り合わせ面の間に存在する空気の抜けを促進でき、ウェーハ同士の接合にかかる時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、減圧時の気流に伴う異物により発生するボイドを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1のSOIの製造方法の実施に用いる貼り合せ装置の概略構成図である。
図2】実施形態2の貼り合せ装置の概略構成図である。
図3】実施形態3の貼り合せ装置の概略構成図である。
図4】ウェーハ同士の接合を示す概念図である。
図5】外周側にボイドが発生したウェーハを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
まず、図1を用いて実施形態1のSOIウェーハの製造方法を実施できる貼り合わせ装置を説明する。図示のように貼り合わせ装置1は、減圧チャンバ3内に貼り合わせ対象の2枚のウェーハ、例えば、支持側のウェーハ6と半導体デバイスが形成される活性側のウェーハ7を収容できるようになっている。減圧チャンバ3内は、パーティクルや有機物などの異物が少ない清潔な雰囲気に維持されている。減圧チャンバ3には、図示していない減圧手段、例えば、真空ポンプが備えられ減圧チャンバ3内を減圧できるようになっている。減圧チャンバ3内には、ウェーハ6、7が載置されるステージ8が設けられている。ステージ8は、ウェーハ6、7の形状に応じて、例えば、載置面が円形に形成されている。ステージ8は、載置面よりも大きい板部材9に取り付けられている。板部材9は、板部材11を介して減圧チャンバ3内に取り付けられている。板部材9には、ステージ8の載置面の外周と接する少なくとも3つのガイドピン13が立設されている。ガイドピン13は、ウェーハ6、7の外周に接するようにステージ8方向に進退できるようになっている。なお、図示をわかりやすくするために、図1はガイドピン13を2本のみ記載して他のガイドピンの図示を省略した。
【0019】
ステージ8の載置面の上方には、ウェーハ6、7を押圧する押圧手段15が設けられている。押圧手段15は、アーム17と押圧部材19により構成されている。押圧部材19は、アーム17の一端に取り付けられてステージ8の載置面上方に位置するようになっている。アーム17には、例えば、図示していない動力手段が設けられ、アーム17を上下方向に移動させて押圧部材19をウェーハ7に接触させて、所定の押圧力で押圧してウェーハ6、7同士の接合を開始できるようになっている。減圧チャンバのアーム17が取り付けられた側壁と対向する位置の側壁には、図示していない挿入口が形成されている。挿入口は、ウェーハ6、7が通過できる寸法に形成されている。挿入口には、開閉自由な扉21が備えられ、扉21を閉めることで挿入口を密閉できるようになっている。なお、押圧手段15は本実施形態に限定されず、例えば、ウェーハ6、7の上方から錘を載置するなど周知の押圧手段を使用できる。また、挿入口の位置や挿入口の密閉手段は本実施形態に限定されず適宜選択できる。
【0020】
次に、実施形態1のSOIウェーハの製造方法を説明する。ウェーハ6、7は、周知の方法で製造した単結晶シリコンインゴットを薄円板状にスライスして形成されている。薄板状に形成されたウェーハ6、7を、例えば、粗研磨した後、必要なエッチング処理及び研磨処理し、表面を平坦度の高い鏡面に仕上げる。鏡面に仕上げたウェーハ6、7のうち、例えば、ウェーハ7を酸素雰囲気で加熱し、貼り合わせ面に酸化膜(SiO)を形成する。酸化膜を形成した後ウェーハ6、7を、例えば、SC−1で洗浄する。これにより、ウェーハ6、7に付着した異物を除去できるとともに、ウェーハ6、7の貼り合わせ面にOH基(親水基)を付着させてウェーハ6、7の貼り合わせ面を親水状態にできる。なお、酸化膜をウェーハ6のみに形成することができ、ウェーハ6及び7の両方に酸化膜を形成することもできる。また、SC−1による洗浄に代えて、希フッ酸とオゾン水によるフッ酸・オゾン洗浄によりウェーハ6、7を洗浄することができる。
【0021】
洗浄したウェーハ6、7のうち、ウェーハ6を挿入口から減圧チャンバ3内に入れてステージ8の平坦な載置面に載置する。ウェーハ6を載置した後、ウェーハ7を挿入口から減圧チャンバ3内に入れて酸化膜を形成した貼り合わせ面をウェーハ6側に向け、ウェーハ7をウェーハ6に重ね合わせて載置する。この際、ウェーハ6とウェーハ7の間には空気層が存在するので、ウェーハ7はウェーハ6とは接触せずに浮いた状態で維持される。ガイドピン13を所定の位置に動かしてウェーハ6、7に当接させ、ウェーハ6、7のズレを修正するとともに、ウェーハ6、7の移動を規制して、扉21を閉めて真空ポンプで減圧チャンバ3内の空気を排気して減圧する。この減圧の完了までは、極めて薄い空気層の厚さの分だけウェーハ6、7の間に隙間が維持される。これにより、真空ポンプによって発生した気流が、ウェーハ6、7の間に侵入しにくく、かつ、ウェーハ6、7の接合が開始しない状態が維持される。なお、減圧時間は、ウェーハ6、7の間の空気層が抜けて、ウェーハ6、7の接合が開始する前に減圧が完了するよう設定する。なお、ガイドピン13によるウェーハ6、7のズレの修正は、減圧前に行う必要はなく、ウェーハ6、7の接合が開始する前に適宜行うことができる。
【0022】
所定の減圧値、例えば、50kPa以下になって減圧が完了した後に、アーム17をステージ8に向けて動かして押圧部材19でウェーハ7を押圧する。これにより、ウェーハ6、7の重ね合わせ面の周縁からの空気の抜けを促進して空気層が減少することにより、ウェーハ6、7の接合開始までの時間を短縮できる。空気層が減少してウェーハ6、7が接触すると、ウェーハ6、7の貼り合わせ面に付着させたOH基同士が水素結合を開始し、ウェーハ6、7同士の接合が開始される。ウェーハ6、7を接合させた後、減圧チャンバ3内を常圧に戻して扉21を開け、接合させたウェーハ6、7を取り出して適宜必要な処理を施す。
【0023】
これによれば、ウェーハ6、7同士を重ね合わせてステージ8に載置しても、重ね合わせ面の空気層により、ウェーハ6、7の接合が開始しない離間寸法、言い換えると、OH基同士の水素結合が開始しない離間寸法を維持できる。そして、この空気層は極めて薄いから、真空ポンプの減圧によって生じた気流がウェーハ6、7間の隙間に侵入することを抑制できる。また、ウェーハ7の自重によって空気が圧縮されるから、ウェーハ6、7同士の隙間の圧力が減圧チャンバ3内よりも高くなり、空気層が存在する間はウェーハ6、7同士の周縁から空気が抜け続けるから、気流の侵入を抑制できる。その結果、ウェーハ6、7の貼り合わせ面に付着する異物を減少でき、異物により発生するボイドを低減できるから、半導体デバイスの歩留まりを向上できる。なお、ウェーハ6、7を重ね合わせても空気層により隙間が維持される原理は、例えば、周知の潤滑の理論が考えられる。
【0024】
なお、実施形態1は押圧手段15でウェーハ6、7同士を押圧しているが、ウェーハ6、7同士を押圧することなく、ウェーハ6、7同士を接合させることができる。つまり、ウェーハ6、7の間から自然に空気層が抜けるとウェーハ7が落下してウェーハ6、7同士が接触し、ウェーハ7の自重によってウェーハ6、7が接合する。
【0025】
また、実施形態1のSOIウェーハの製造方法を実施する貼り合わせ装置は本実施形態に限定されるものではなく、ウェーハ6、7を重ね合わせた後減圧でき、所定の減圧雰囲気でウェーハ6、7の接合を開始できる貼り合わせ装置を用いることができる。
【0026】
なお、扉21により挿入口が密閉されたことを検知する検知手段と、検知手段の信号に応じて真空ポンプの動作を制御する制御手段を設け、挿入口が密閉された後に自動で真空ポンプを動作させて減圧チャンバ3内を減圧するよう構成できる。
【0027】
また、実施形態1は、支持側のウェーハ6をステージ8に載置した後、活性側のウェーハ7を支持側のウェーハ6に重ね合わせたが、これに限定されるものではない。例えば、活性側のウェーハ7をステージ8に載置した後、支持側のウェーハ6を支持側のウェーハ7に重ね合わせてウェーハ同士を接合して貼り合わせることができる。
【0028】
(実施形態2)
図2を用いて本発明の実施形態2のSOIウェーハの製造方法及び貼り合わせ装置を説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、ステージ8の載置面を凹状に形成し、ウェーハ6、7を凹状の載置面に載置するようにした点である。また、ステージ8の載置面の径を、ウェーハ6、7の貼り合わせ面の径より小さく、例えば、貼り合わせ面の径の半分にした点である。その他の構成は実施形態1と同一であるから同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
これによれば、ステージ8の載置面を凹状に形成したので、載置面側に位置するウェーハ6がステージ8の凹面に併せて凹状に変形するが、上のウェーハ7の変形はウェーハ6の変形に追従し難いため、載置面を凸状に形成する場合に比べウェーハ6、7同士の貼り合わせ面の中心部に空気層を薄くする作用が働かない。その結果、ウェーハ6、7同士の接合開始を遅らせる方向にコントロールできる。
【0030】
また、ステージ8の載置面の径をウェーハ6、7の径より小さくしたので、種々の径のウェーハ6、7を1つの貼り合わせ装置1で接合できる。つまり、ステージ8の径がウェーハ6、7より小さいから、ガイドピン13の進退移動がステージ8により阻害されず、ウェーハ6、7の径に応じてガイドピン13をウェーハ6、7の外周に当接でき、重ね合わせたウェーハ6、7のズレを修正できる。
【0031】
なお、実施形態2のステージ8の載置面の径をウェーハ6、7の径と同じ大きさにすることができる。
【0032】
また、押圧部材19の位置は本実施形態に限定されないが、載置面が平坦な位置、つまり、載置面の外周側に位置させてウェーハ6、7を押圧することで、押圧による貼り合わせ面に加わる力の伝播を均一にでき、ボイドなどの欠陥の少ないウェーハを安定して製造できる。
【0033】
(実施形態3)
図3に実施形態2の変形例とした実施形態3のSOIウェーハの製造方法及び製造装置を説明する。実施形態3が実施形態2と相違する点は、板部材9と板部材11の間に楔30を挿入し、押圧部材19側の板部材9の端部を持ち上げて、ステージ8の載置面をθ(0°を超えて5°以下)傾斜させた点である。そして、傾斜させた載置面にウェーハ6、7を載置するようにした点である。その他の構成は実施形態2と同一であるから同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
これによれば、ステージ8の載置面を水平方向に対して0°を超えて5°以下傾斜できるから、ウェーハ7にかかる重力の一部をガイドピン13で受けることができる。また、ガイドピン13でウェーハ6、7の移動を規制できる。その結果、空気層にかかるウェーハ7の自重を低減でき、ウェーハ6、7同士の隙間から空気層が抜けにくくできる。また、減圧時に空気層が減少してウェーハ6、7が接しやすくなる場合でも、ウェーハ6にかかるウェーハ7の自重が小さいから、ウェーハ6、7の接合開始を遅らせるようにコントロールできる。
【0035】
なお、楔30を用いることなく減圧チャンバ3を傾けて、ステージ8の載置面を水平方向に対して0°を超えて5°以下傾斜させることができる。
【0036】
また、ステージ8の載置面を水平方向に対して0°を超えて5°以下傾斜させることで、ステージ8を平坦にしても重ね合わせて載置したウェーハ6、7の接合開始を抑制でき、載置面が平坦な簡便な構成のステージ8を使用できる。
【実施例】
【0037】
表1に本発明の実施例1、2と比較例のボイド発生率を示す。実施例1は実施形態2のSOIの製造方法で製造したSOIウェーハであり、実施例2は実施形態3のSOIの製造方法で製造したSOIウェーハであり、比較例は、ウェーハ同士の間にスペーサを挿入し、スペーサでウェーハ同士の間隔を開けたまま減圧した後、スペーサを除去してウェーハ同士を接合したSOIウェーハである。そして、実施例1、2及び比較例のSOIウェーハを超音波探傷計で測定し、ボイドの発生によるボイド不良を観察し、SOIウェーハのボイド不良の発生率を求めた。超音波探傷計の測定位置は、SOIウェーハの外周から2mm〜5mm中心側の領域と、SOIウェーハの外周から5mmの位置より中心側の領域を測定した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すとおり、ウェーハ同士の間にスペーサを挿入した状態で減圧した比較例は、ウェーハ外周部の外周から5mmより中心側の領域のボイド不良発生率が11%であった。これは、減圧時に発生した気流がスペーサで形成した隙間に侵入し、気流に同伴した異物がウェーハの貼り合わせ面に付着した状態でウェーハ同士が接合したためである。これに対し、ウェーハ同士を重ね合わせた後減圧した実施例1、2は、同領域のボイド不良発生率は1%と比較例より10%低かったことから、減圧時の気流がウェーハ同士の間に侵入しにくくなり、異物によるボイドの発生を低減できたといえる。
【0040】
なお、実施例1、2及び比較例のウェーハ外周部の外周から2〜5mmの範囲の領域には、ボイドによる不良が認められなかった。これは、図4に示すとおり減圧条件下でウェーハ31の中心側33から外周側35へ接合させると、ウェーハ外周部の外周から2〜5mmの範囲の領域では、ウェーハ31間の隙間から空気が抜けやすく、かつ、減圧チャンバ3内は空気分子が減少しているから、ウェーハ31の貼合せ界面に空気が残りにくいためである。
【0041】
また、図4に示すようなウェーハの外縁が反る所謂ロールアップ形状のウェーハ31同士を接合させる場合は、減圧雰囲気でウェーハ31同士を接合することが好ましい。つまり、ロールアップ形状のウェーハ31同士を重ね合わせると、図4に示すとおりウェーハ31の外縁部同士が先に接触して接合時に空気が抜けにくくなり、図5に示すとおり、ウェーハ31の外周側に微小なボイドが発生する。そのため、減圧雰囲気でウェーハ31同士を接合することで、空気を抜けやすくできる。さらに、減圧すると減圧チャンバ3内の空気量が減少するから、貼り合わせ界面に閉じこめられる空気量を減少でき、ウェーハ31の貼り合わせ界面に発生するボイドを低減できる。
【符号の説明】
【0042】
1 貼り合わせ装置
3 減圧チャンバ
6 ウェーハ
7 ウェーハ
8 ステージ
13 ガイドピン
15 押圧手段
図1
図2
図3
図4
図5