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テトラフルオロエチレン系重合体(A)及び炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位を50質量%以上含むアルキルメタクリレート系重合体(B)を含む熱可塑性樹脂用添加剤であって、
前記炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位が、i−ブチルメタクリレート単位であり、
熱可塑性樹脂用添加剤100質量%中、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が1〜75質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が25〜99質量%であり、
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、熱可塑性樹脂用添加剤。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)及び炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位を50質量%以上含むアルキルメタクリレート系重合体(B)を含むラテックスを粉体化する熱可塑性樹脂用添加剤の製造方法であって、
前記炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位が、i−ブチルメタクリレート単位であり、
熱可塑性樹脂用添加剤100質量%中、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が1〜75質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が25〜99質量%であり、
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、熱可塑性樹脂用添加剤の製造方法。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックス及び炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位を50質量%以上含むアルキルメタクリレート系重合体(B)のラテックスを混合し、得られたラテックスを凝析する請求項6記載の熱可塑性樹脂用添加剤の製造方法。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)の存在下でアルキルメタクリレート(b1)を50質量%以上含む単量体成分(b)を重合し、得られたラテックスを凝析する請求項6記載の熱可塑性樹脂用添加剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂用添加剤は、テトラフルオロエチレン系重合体(A)を含む。
【0011】
本発明のテトラフルオロエチレン系重合体(A)は、テトラフルオロエチレン(a1)を含む単量体成分(a)を重合することにより得られる。
【0012】
単量体成分(a)は、テトラフルオロエチレン系重合体としての特性を損なわない範囲において、テトラフルオロエチレン(a1)と共重合可能なその他の単量体(a2)を含んでもよい。
その他の単量体(a2)としては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルが挙げられる。これらのその他の単量体(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
単量体成分(a)の組成比は、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れることから、単量体成分(a)100質量%中、テトラフルオロエチレン(a1)の含有率が80質量%以上、その他の単量体(a2)の含有率が20質量%以下であることが好ましく、テトラフルオロエチレン(a1)が90質量%以上、その他の単量体(a2)が10質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
単量体成分(a)の重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合方法が挙げられる。
【0015】
本発明のテトラフルオロエチレン系重合体(A)の質量平均分子量は、100万〜5000万であることが好ましく、300万〜3000万であることがより好ましい。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)の質量平均分子量が100万以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れる。また、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の質量平均分子量が5000万以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
【0016】
本発明のテトラフルオロエチレン系重合体(A)の質量平均粒子径は、50〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましい。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)の質量平均粒子径が50nm以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力が向上し、成形加工性に優れる。また、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の質量平均粒子径が1000nm以下であると、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の高いラテックス安定性が得られ、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の凝集物生成を抑制し、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
【0017】
本発明のテトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスの市販品としては、例えば、「フルオンAD911L」、「フルオンAD912L」、「フルオンAD915L」、「フルオンAD938L」、「フルオンAD939L」、「フルオンAD939E」(商品名、旭硝子(株)製)が挙げられる。これらのテトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂用添加剤は、炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位を50質量%以上含むアルキルメタクリレート系重合体(B)を含む。
【0019】
アルキルメタクリレート系重合体(B)中の炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位の含有率は、アルキルメタクリレート系重合体100質量%中、50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
アルキルメタクリレート系重合体(B)中の炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位の含有率が50質量%以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
【0020】
本発明の炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位を50質量%以上含むアルキルメタクリレート系重合体(B)は、炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(b1)を50質量%以上含む単量体成分(b)を重合することにより得られる。
【0021】
炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(b1)としては、例えば、炭素数2のエチルメタクリレート;炭素数3のn−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート;炭素数4のn−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート;炭素数5のn−ペンチルメタクリレート、1−メチルブチルメタクリレート、2−メチルブチルメタクリレート、3−メチルブチルメタクリレート、ジメチルプロピルメタクリレート、3−ペンチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート;炭素数6のn−ヘキシルメタクリレート、メチルペンチルメタクリレート、ジメチルブチルメタクリレート、エチルブチルメタクリレート、トリメチルプロピルメタクリレート、2−ヘキシルメタクリレート、3−ヘキシルメタクリレート、メチルシクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが挙げられる。これらの炭素数2〜6のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキルメタクリレート(b1)のアルキル基の炭素数が2以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の成形外観及び難燃性に優れる。また、アルキルメタクリレート(b1)のアルキル基の炭素数が6以下であると、アルキルメタクリレート系重合体(B)が充分なガラス転移温度を有し、得られる熱可塑性樹脂用添加剤の粉体取扱性が良好となる。
これらのアルキルメタクリレート(b1)の中でも、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れることから、アルキルメタクリレート(b1)のアルキル基の炭素数が4であるn−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートが好ましく、得られる熱可塑性樹脂用添加剤の粉体取扱性に優れることから、アルキル基が分岐構造であるi−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレートがより好ましく、特に得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れることから、i−ブチルメタクリレートが更に好ましい。
【0022】
アルキルメタクリレート(b1)を含む単量体成分(b)は、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性を損なわない範囲において、アルキルメタクリレート(b1)と共重合可能なその他の単量体(b2)を含んでもよい。
その他の単量体(b2)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアルキルアクリレート;メチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の炭素数2〜6でないアルキル基を有するアルキルメタクリレート;フェニル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類が挙げられる。これらのその他の単量体(b2)の中でも、アルキルメタクリレート系重合体(B)の熱分解の抑制の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートを用いることが好ましい。これらのその他の単量体(b2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
【0023】
単量体成分(b)の組成比は、単量体成分(b)100質量%中、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が50質量%以上、その他の単量体(b2)の含有率が50質量%以下であり、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が70質量%以上、その他の単量体(b2)の含有率が30質量%以下であることが好ましく、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が80質量%以上、その他の単量体(b2)の含有率が20質量%以下であることがより好ましく、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が90質量%以上、その他の単量体(b2)の含有率が10質量%以下であることが更に好ましい。
アルキルメタクリレート(b1)の含有率が50質量%以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
その他の単量体(b2)の含有率が50質量%以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
【0024】
その他の単量体(b2)としてメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートを用いることにより、アルキルメタクリレート系重合体(B)の熱分解が抑制される。
その他の単量体(b2)としてアルキルアクリレートを用いる場合の単量体成分(b)の組成比は、単量体成分(b)100質量%中、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が50〜99.9質量%、アルキルアクリレートの含有率が0.1〜50質量%、アルキルアクリレート以外のその他の単量体(b2)の含有率が49.9質量%以下であることが好ましく、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が70〜99.8質量%、アルキルアクリレートの含有率が0.2〜30質量%、アルキルアクリレート以外のその他の単量体(b2)の含有率が29.8質量%以下であることが好ましく、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が80〜99.7質量%、アルキルアクリレートの含有率が0.3〜20質量%、アルキルアクリレート以外のその他の単量体(b2)の含有率が19.7質量%以下であることがより好ましく、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が90〜99.5質量%、アルキルアクリレートの含有率が0.5〜10質量%、アルキルアクリレート以外のその他の単量体(b2)の含有率が9.5質量%以下であることが更に好ましい。
アルキルメタクリレート(b1)の含有率が50質量%以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。また、アルキルメタクリレート(b1)の含有率が99.9質量%以下であると、アルキルメタクリレート系重合体(B)の熱分解が抑制される。
アルキルアクリレートの含有率が0.1質量%以上であると、アルキルメタクリレート系重合体(B)の熱分解が抑制される。また、アルキルアクリレートの含有率が50質量%以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
アルキルアクリレート以外のその他の単量体(b2)の含有率が49.9質量%以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れ、アルキルメタクリレート系重合体(B)の熱分解が抑制される。
【0025】
単量体成分(b)の重合方法は、公知の重合方法を用いることができ、例えば、乳化重合、ソープフリー乳化重合、微細懸濁重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合が挙げられる。
これらの重合方法の中でも、テトラフルオロエチレン系重合体(A)とアルキルメタクリレート系重合体(B)の混合が容易であることから、乳化重合、ソープフリー乳化重合が好ましく、乳化重合がより好ましい。
【0026】
単量体成分(b)の重合方法として乳化重合やソープフリー乳化重合等の重合方法を用いる場合、その粒子構造は単層構造であっても多層構造であってもよいが、多層構造の場合、製造コストの観点から、3層以下であることが好ましい。
【0027】
乳化重合における乳化剤は、公知の乳化剤を用いることができ、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、高分子乳化剤、反応性アニオン性乳化剤、反応性ノニオン性乳化剤が挙げられる。
【0028】
アニオン性乳化剤としては、例えば、「ニューコール560SF」、「同562SF」、「同707SF」、「同707SN」、「同714SF」、「同723SF」、「同740SF」、「同2308SF」、「同2320SN」、「同1305SN」、「同271A」、「同271NH」、「同210」、「同220」、「同RA331」、「同RA332」(商品名、日本乳化剤(株)製);「ラテムルB−118E」、「レベノールWZ」、「ネオペレックスG15」(商品名、花王(株)製);「ハイテノールN08」(商品名、第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0029】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、「ノニポール200」、「ニューポールPE−68」(商品名、三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
【0030】
高分子乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0031】
反応性アニオン性乳化剤としては、例えば、「Antox MS−60」、「同MS−2N」(商品名、日本乳化剤(株)製);「エレミノールJS−2」(商品名、三洋化成工業(株)製);「ラテムルS−120」、「同S−180」、「同S−180A」、「同PD−104」(商品名、花王(株)製);「アデカリアソープSR−10」、「同SE−10」(商品名、(株)ADEKA製);「アクアロンKH−05」、「同KH−10」、「同HS−10」(商品名、第一工業製薬(株))が挙げられる。
【0032】
反応性ノニオン性乳化剤としては、「アデカリアソープNE−10」、「同ER−10」、「同NE−20」、「同ER−20」、「同NE−30」、「同ER−30」、「同NE−40」、「同ER−40」(商品名、(株)ADEKA製)、「アクアロンRN−10」、「同RN−20」、「同RN−30」、「同RN−50」(商品名、第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0033】
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
単量体成分(b)の重合における重合開始剤は、公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物;2,2’−アゾビス−{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス−{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス−{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス−[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩、2,2’−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩、2,2’−アゾビス−[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩、2,2’−アゾビス−{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩、2,2’−アゾビス−[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物が挙げられる。また、乳化重合により単量体成分(b)の重合を行う場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤を上記過硫酸化合物や上記有機過酸化物と組み合わせて用いることもできる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量は、5000〜500万であることが好ましく、7000〜100万であることがより好ましく、8000〜20万であることが更に好ましく、1万〜5万であることが最も好ましい。
アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量が5000以上であると、アルキルメタクリレート系重合体(B)が充分なガラス転移温度を有し、得られる熱可塑性樹脂用添加剤の粉体取扱性が良好となる。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量が500万以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
【0036】
質量平均分子量を調整する方法は、公知の方法を挙げることができ、例えば、重合開始剤量や連鎖移動剤量を調整する方法が挙げられる。
連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を用いることができ、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン等のメルカプタン;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限されるものではなく、用いる連鎖移動剤の種類や単量体成分(b)の組成に応じて適宜設定すればよい。
【0037】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均粒子径は、30〜1000nmであることが好ましく、30〜500nmであることがより好ましく、30〜300nmであることが更に好ましく、30〜100nmであることが最も好ましい。
アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均粒子径が30nm以上であると、乳化重合により製造することが可能である。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均粒子径が1000nm以下であると、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の粒子をアルキルメタクリレート系重合体(B)粒子により高度に被覆でき、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の凝集物生成を抑制し、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観及び難燃性に優れる。
【0038】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)は、1種を単独で用いてもよく、組成、分子量、粒子径等の異なる重合体2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の熱可塑性樹脂用添加剤は、テトラフルオロエチレン系重合体(A)及びアルキルメタクリレート系重合体(B)を含む。
【0040】
熱可塑性樹脂用添加剤の組成比は、熱可塑性樹脂用添加剤100質量%中、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が1〜75質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が25〜99質量%であることが好ましい。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が1質量%以上であると、得られる成形体の難燃性に優れ、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力が向上し、成形加工性に優れる。また、テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が75質量%以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れ、難燃性を低下させない。
アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が25質量%以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れ、難燃性を低下させない。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が99質量%以下であると、得られる成形体の難燃性に優れ、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力が向上し、成形加工性に優れる。
【0041】
尚、本発明の熱可塑性樹脂用添加剤を、表面外観に優れる成形体を得るために用いる場合と、難燃性に優れる成形体を得るために用いる場合とで、好ましい熱可塑性樹脂用添加剤の組成比は異なる。
【0042】
表面外観に優れる成形体を得るために用いる場合の熱可塑性樹脂用添加剤の組成比は、熱可塑性樹脂用添加剤100質量%中、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が1〜60質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が40〜99質量%であることが好ましい。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が1質量%以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力が向上し、成形加工性に優れる。また、テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が60質量%以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れる。
アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が40質量%以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観に優れる。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が99質量%以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力が向上し、成形加工性に優れる。
【0043】
難燃性に優れる成形体を得るために用いる場合の熱可塑性樹脂用添加剤の組成比は、熱可塑性樹脂用添加剤100質量%中、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が15〜75質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が25〜85質量%であることが好ましい。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が15質量%以上であると、得られる成形体の難燃性に優れる。また、テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が75質量%以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の難燃性を低下させない。
アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が25質量%以上であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の難燃性を低下させない。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が85質量%以下であると、得られる成形体の難燃性に優れる。
表面外観に優れ、かつ、難燃性に優れる成形体を得るために用いる場合の熱可塑性樹脂用添加剤の組成比は、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が15〜60質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が40〜85質量%であることが好ましく、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の含有率が20〜55質量%、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が45〜80質量%であることが好ましい。
テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が15質量%以上であると、得られる成形体の難燃性に優れる。また、テトラフルオロエチレン系重合体(A)中の含有率が60質量%以下であると、得られる成形体の表面外観に優れる。
アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が40質量%以上であると、得られる成形体の表面外観に優れる。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の含有率が85質量%以下であると、得られる成形体の難燃性に優れる。
【0044】
テトラフルオロエチレン系重合体(A)とアルキルメタクリレート系重合体(B)の混合方法は、例えば、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックス及びアルキルメタクリレート系重合体(B)のラテックスを混合するラテックスブレンド法、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の存在下で単量体成分(b)を重合する存在下重合法が挙げられる。
これらの方法の中でも、テトラフルオロエチレン系重合体(A)への熱履歴が少なくテトラフルオロエチレン系重合体粒子の凝集が抑制され、得られる成形体の表面外観に優れることから、ラテックスブレンド法が好ましい。
【0045】
ラテックスブレンド法及び存在下重合法で得られた熱可塑性樹脂用添加剤のラテックスから樹脂固形分を粉体化する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が挙げられる。これらの方法の中でも、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の凝集が抑制されることから、凝析法、スプレードライ法が好ましく、凝析法がより好ましい。
【0046】
凝析法は、例えば、熱可塑性樹脂用添加剤のラテックスを30〜90℃で凝析剤に接触させ、攪拌しながら凝析させてスラリーとし、脱水乾燥する方法が挙げられる。
凝析剤としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸;蟻酸、酢酸等の有機酸;硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び本発明の熱可塑性樹脂用添加剤を含む。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。また、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力向上効果及び得られる成形体の難燃性向上効果に優れることから、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0049】
本発明のポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体の単独重合体又はオレフィン類を主成分とする単量体混合物の共重合体を示す。
オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、前記樹脂の混合樹脂が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂として、エチレン系エラストマーやプロピレン系エラストマー等のポリオレフィン系エラストマーも挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力向上効果に優れることから、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリオレフィン系エラストマーが好ましく、ポリプロピレン、ポリオレフィン系エラストマーがより好ましい。
【0051】
本発明のポリオレフィン系樹脂の流動性は、メルトフローレートが0.1〜70g/10分であることが好ましく、メルトフローレートが0.2〜35g/10分であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが0.1g/10分以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性に優れる。また、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが70g/10分以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融張力向上効果に優れる。
尚、メルトフローレートは、ASTM D1238に準じて測定される。具体的には、荷重2.16kgの条件で、熱可塑性樹脂の種類に応じて規定されている温度、例えば、ポリエチレン系樹脂では190℃、ポリプロピレン系樹脂では230℃に加熱して、熱可塑性樹脂が溶融した状態で測定される。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の組成比は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、熱可塑性樹脂用添加剤の配合量が0.01〜20質量部であることが好ましく、熱可塑性樹脂用添加剤の配合量が0.1〜18質量部であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂用添加剤の配合量が0.01質量部以上であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性及び得られる成形体の難燃性に優れる。熱可塑性樹脂用添加剤の配合量が20質量部以下であると、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に優れ、得られる成形体の表面外観を悪化させない。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、充填剤、安定化剤、滑剤、発泡剤等の添加剤を含んでもよい。
特に本発明の熱可塑性樹脂用添加剤は、難燃剤と共に熱可塑性樹脂に配合すると、得られる成形体の難燃性が顕著に向上するため、好ましい。
【0054】
難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼン等のハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム塩、ポリリン酸メラミン塩等のリン酸塩系難燃剤;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機系難燃剤が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの難燃剤の中でも、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、リン酸塩系難燃剤が好ましく、環境負荷の観点から、リン酸エステル系難燃剤、リン酸塩系難燃剤がより好ましく、得られる成形体の難燃性に優れることから、リン酸塩系難燃剤が更に好ましい。また、リン酸塩系難燃剤の中でも、難燃剤の耐熱性に優れ、得られる成形体の着色が抑制されることから、ポリリン酸メラミン塩系難燃剤が好ましい。
ポリリン酸メラミン塩系難燃剤としては、例えば、「アデカスタブFP−2200」、「同FP−2100J」(商品名、(株)ADEKA製)、「MELAPUR200」、「同70」(商品名、チバ・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0055】
難燃剤の配合量は、難燃剤の種類にもよるが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、3〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
難燃剤の配合量が3質量部以上であると、得られる成形体の難燃性に優れる。難燃剤の配合量が50質量部以下であると、熱可塑性樹脂本来の特性を損なわない。
【0056】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸マグネシウム、マイカ、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラックが挙げられる。これらの充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
安定化剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;「チヌビン−770」(商品名、チバ・ジャパン(株)製)、「アデカスタブLA−57」(商品名、(株)ADEKA製)等のヒンダードアミン系光安定剤;「チヌビン1577FF」(商品名、チバ・ジャパン(株)製)、「アデカスタブLA−32」(商品名、(株)ADEKA製)等の紫外線吸収剤が挙げられる。これらの安定化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
滑剤としては、例えば、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸のナトリウム、カルシウム又はマグネシウム塩が挙げられる。これらの滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
発泡剤としては、公知の発泡剤を用いることができ、例えば、無機発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤が挙げられる。
【0060】
無機発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、空気、窒素が挙げられる。
揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素;トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、メチルクロリド、エチルクロリド、メチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウムが挙げられる。
これらの発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
発泡剤の配合量は、発泡剤の種類にもよるが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1〜25質量部であることが好ましい。
発泡剤の配合量が0.1質量部以上であると、発泡剤としての効果が得られる。また、発泡剤の比重が25質量部以下であると、安定な発泡成形が可能である。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の混合方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、押出混練、ロール混練等の溶融混練法が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の配合方法は、特に限定されることはなく、熱可塑性樹脂、本発明の熱可塑性樹脂用添加剤及び必要に応じて難燃剤等の添加剤を、一括で混合してもよく、熱可塑性樹脂の一部、本発明の熱可塑性樹脂用添加剤の全量及び必要に応じて難燃剤等の添加剤の全量を混合してマスターバッチを製造後、残りの熱可塑性樹脂を混合してもよい。
【0063】
本発明の成形体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる。
【0064】
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、例えば、押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形、真空成形、溶融紡糸が挙げられる。
【0065】
本発明の成形体は、表面外観に優れるため、光学シート等のシート材料、食品フィルム等のフィルム材料、家電用材料、OA機器用材料、自動車用材料、医療用材料、建築材料、電線用被覆材料等に好適である。特に、本発明の成形体は、難燃性に優れるため、家電用材料、OA機器用材料、自動車用材料、電線用被覆材料に好適である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を示す。
【0067】
実施例、比較例における各評価は、以下の方法により実施した。
【0068】
(1)重合率
得られたアルキルメタクリレート系重合体(B)のラテックス1gをアセトン10gで希釈した試料を、ガスクロマトグラフ(機種名「7890」、アジレント・テクノロジー(株)製)、カラム(商品名「HP−5」、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm、アジレント・テクノロジー(株)製)を用い、ラテックス中に残存する単量体成分(b)量を測定し、残存する単量体成分(b)量から単量体成分(b)の重合率を算出した。内部標準物質としては、メチルイソブチルケトンを用いた。
尚、実施例2及び比較例4における重合率は、得られた熱可塑性樹脂用添加剤のラテックスを用いて測定した。
【0069】
(2)質量平均粒子径
得られたアルキルメタクリレート系重合体(B)のラテックスをイオン交換水で希釈した試料を、粒度分布計(機種名「CHDF2000型」、MATEC社製)を用いて測定した。測定条件は、MATEC社が推奨する標準条件で行った。即ち、専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジ及びキャリア液を用い、液性をほぼ中性とし、流速1.4ml/分、圧力約4000psi(2600KPa)、温度35℃の条件で、ラテックス固形分濃度約3%の希釈試料0.1mlを測定に用いた。標準粒子径物質としては、粒子径既知の単分散ポリスチレンを20〜800nmの範囲で合計12点用いた。
尚、実施例2及び比較例4における質量平均粒子径は、得られた熱可塑性樹脂用添加剤のラテックスを用いて測定し、テトラフルオロエチレン系重合体(A)に由来する質量平均粒子径のピークでない方をアルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均粒子径とした。
【0070】
(3)質量平均分子量
得られたアルキルメタクリレート系重合体(B)のラテックスを乾燥させた固形分のテトラヒドロフラン可溶分を試料として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名「HLC−8220」、東ソー(株)製)、カラム(商品名「TSK−GEL SUPER HZM−M」、東ソー(株)製)を用い、溶離液テトラヒドロフラン、温度40℃の条件で測定した。質量平均分子量は、標準ポリスチレンによる検量線から求めた。
尚、実施例2及び比較例4における質量平均分子量は、得られた熱可塑性樹脂用添加剤のラテックスを用いて測定した。
【0071】
(4)粉体取扱性
得られた熱可塑性樹脂用添加剤を、8メッシュの篩に通過させ、通過した試料量を求め、以下の基準で粉体取扱性を評価した。
A:篩通過量が、80%以上
B:篩通過量が、65%以上80%未満
C:篩通過量が、50%以上65%未満
D:篩通過量が、50%未満
【0072】
(5)溶融張力
得られた熱可塑性樹脂組成物を、キャピラリー式レオメーター(機種名「ツインキャピラリーレオメーター RH−7型」、ROSAND社製)を用いて、ダイスφ1.0mm、L/D=16、温度190℃の条件で、一定量(0.54cm
3/分)で押出し、ストランドを一定速度(3m/分)で引き取った。
熱可塑性樹脂組成物の溶融張力は、熱成形性、ブロー成形性、発泡成形性等の成形加工性を判断する指標の1つであり、溶融張力の向上は成形加工性の向上と見なし得る。
【0073】
(6)メルトフローレート(MFR)
得られた熱可塑性樹脂組成物を、メルトインデクサ(機種名L243、TAKARA THERMISTOR社製)を用いて、ASTM D1238に準じて測定した。尚、加熱温度は、ポリプロピレン系樹脂の加熱温度として規定されている230℃で行った。
【0074】
(7)表面外観
得られた成形体(厚さ500μmのフィルム)中に存在する異物の数を評価した。評価手順としては、目視でフィルム1m
2(幅0.1m、長さ10m)の表面上に見られる凹凸に印を付け、印を付けた凹凸部を実体顕微鏡を用いて観察し、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の凝集物由来の凹凸のみをカウントし、以下の基準で表面外観を評価した。尚、赤外吸収スペクトル測定により、凹凸がテトラフルオロエチレン系重合体(A)の凝集物由来であるか確認することができる。
A:凹凸数が、100個以下
B:凹凸数が、101個〜300個
C:凹凸数が、301個〜1000個
D:凹凸数が、1001個以上
成形体の表面凹凸数は、熱可塑性樹脂中でのテトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性と成形体の表面外観を判断する指標の1つであり、成形体の表面凹凸数が少ないほど分散性と表面外観に優れる。
【0075】
(8)難燃性
得られた成形体(1/16インチの試験棒)のUL94V試験を行い、難燃性を評価した。
【0076】
[実施例1]
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、水176部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部、硫酸第一鉄0.00016部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00048部、アスコルビン酸0.384部を投入し、容器内を窒素置換した。次いで、内温を73℃まで昇温させ、i−ブチルメタクリレート78.4部、エチルアクリレート1.6部、クメンヒドロパーオキシド0.16部、n−オクチルメルカプタン0.8部の単量体混合物を1時間かけて滴下し、更に同温で1時間保持して、アルキルメタクリレート系重合体(B1)のラテックスを得た。ガスクロマトグラフより、単量体の重合率は99.9%以上であった。得られたアルキルメタクリレート系重合体(B1)の質量平均粒子径は70nm、質量平均分子量は3万であった。
次いで、内温を40℃とし、得られたアルキルメタクリレート系重合体(B1)のラテックス80部(アルキルメタクリレート系重合体(B1)の固形分換算)に、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスとして「フルオンAD939L」(商品名、旭硝子(株)製、質量平均粒子径300nm、固形分60質量%)を20部(テトラフルオロエチレン系重合体(A)の固形分換算)滴下し、1時間攪拌した。25℃まで冷却後、ラテックス混合物を、酢酸カルシウム5部を含む50℃の温水320部中に滴下した後、90℃まで昇温させ、凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて熱可塑性樹脂用添加剤(1)を得た。得られた熱可塑性樹脂用添加剤は粉体取扱性に優れた。
【0077】
[実施例2]
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスとして「フルオンAD939L」20部(テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスの固形分換算)、水176部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部、硫酸第一鉄0.00016部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00048部、アスコルビン酸0.384部を投入し、容器内を窒素置換した。次いで、内温を73℃まで昇温させ、i−ブチルメタクリレート78.4部、エチルアクリレート1.6部、クメンヒドロパーオキシド0.16部、n−オクチルメルカプタン0.8部の単量体混合物を1時間かけて滴下し、更に同温で1時間保持して、テトラフルオロエチレン系重合体(A)及びアルキルメタクリレート系重合体(B)を含むラテックスを得た。ガスクロマトグラフより、単量体の重合率は99.9%以上であった。
次いで、得られたラテックスを25℃まで冷却後、酢酸カルシウム5部を含む50℃の温水320部中に滴下した後、90℃まで昇温させ、凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて熱可塑性樹脂用添加剤(2)を得た。
【0078】
[実施例3]
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部を0.8部とした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(3)を得た。
【0079】
[実施例4]
n−オクチルメルカプタン0.8部を0.16部とした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(4)を得た。
【0080】
[実施例5]
n−オクチルメルカプタン0.8部を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(5)を得た。
【0081】
[実施例6]
i−ブチルメタクリレート78.4部をi−ブチルメタクリレート70.4部、メチルメタクリレート8部とした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(6)を得た。
【0082】
[実施例7]
i−ブチルメタクリレート78.4部をi−ブチルメタクリレート62.4部、メチルメタクリレート16部とした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(7)を得た。
【0083】
[実施例8
(参考例)]
i−ブチルメタクリレートをn−ブチルメタクリレートとした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(8)を得た。
【0084】
[実施例9]
実施例1と同様に、アルキルメタクリレート系重合体(B1)を得た。
得られたアルキルメタクリレート系重合体(B1)のラテックス95部(アルキルメタクリレート系重合体(B1)の固形分換算)に、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスとして「フルオンAD939L」を5部(テトラフルオロエチレン系重合体(A)の固形分換算)滴下し、1時間攪拌した。25℃まで冷却後、ラテックス混合物を、酢酸カルシウム5部を含む50℃の温水320部中に滴下した後、90℃まで昇温させ、凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて熱可塑性樹脂用添加剤(9)を得た。
【0085】
[実施例10]
実施例1と同様に、アルキルメタクリレート系重合体(B1)を得た。
得られたアルキルメタクリレート系重合体(B1)のラテックス50部(アルキルメタクリレート系重合体(B1)の固形分換算)に、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスとして「フルオンAD939L」を50部(テトラフルオロエチレン系重合体(A)の固形分換算)滴下し、1時間攪拌した。25℃まで冷却後、ラテックス混合物を、硫酸アルミニウム0.175部を含む80℃の温水375部中に滴下した後、90℃まで昇温させ、凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて熱可塑性樹脂用添加剤(10)を得た。
【0086】
[実施例11]
n−オクチルメルカプタン0.5部を0.1部とした以外は、実施例10と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(11)を得た。
【0087】
[比較例1]
i−ブチルメタクリレートをメチルメタクリレートとした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(12)を得た。
【0088】
[比較例2]
水174部、2−エチルヘキシルメタクリレート78.4部、エチルアクリレート1.6部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部、n−オクチルメルカプタン0.8部の混合液をホモミキサーにて10,000rpmで2分間攪拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で2回通過させ、安定な予備分散液を得た。この予備分散液に、クメンヒドロパーオキシドを0.16部加え、充分に攪拌した後、温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、60℃まで昇温させた。60℃に到達した時点で、水2部に硫酸第一鉄0.00016部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00048部、アスコルビン酸0.384部を溶解させた水溶液を添加し、重合を開始し、60℃で2時間保持した。ガスクロマトグラフより、単量体の重合率は99.9%以上であった。
次いで、内温を40℃とし、得られたアルキルメタクリレート系重合体(B2)のラテックス80部(アルキルメタクリレート系重合体(B2)の固形分換算)に、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスとして「フルオンAD939L」を20部(テトラフルオロエチレン系重合体(A)の固形分換算)滴下し、1時間攪拌した。25℃まで冷却後、ラテックス混合物を、酢酸カルシウム5部を含む50℃の温水320部中に滴下した後、90℃まで昇温させ、凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて熱可塑性樹脂用添加剤(13)を得たが、粉体取扱性に劣り、以後の評価を中断した。
【0089】
[比較例3]
i−ブチルメタクリレート78.4部をn−ブチルメタクリレート16部、メチルメタクリレート62.4部とした以外は、実施例1と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(14)を得た。
【0090】
[比較例4]
水240部、ドデシルメタクリレート30部、メチルメタクリレート28.8部、エチルアクリレート1.2部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、n−オクチルメルカプタン0.6部の混合液をホモミキサーにて10,000rpmで2分間攪拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で2回通過させ、安定な予備分散液を得た。この予備分散液に、クメンヒドロパーオキシドを0.12部加え、充分に攪拌した後、温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに投入し、60℃まで昇温させた。60℃に到達した時点で、水2部に硫酸第一鉄0.00012部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00036部、アスコルビン酸0.288部を溶解させた水溶液を添加し、重合を開始し、60℃で2時間保持した。
次いで、テトラフルオロエチレン系重合体(A)のラテックスとして「フルオンAD939L」を20部(テトラフルオロエチレン系重合体(A)の固形分換算)添加し、1時間攪拌した。その後、80℃まで昇温させ、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、水2部に硫酸第一鉄0.00004部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00012部、アスコルビン酸0.096部を溶解させた水溶液を添加し、メチルメタクリレート19.6部、エチルアクリレート0.4部、n−オクチルメルカプタン0.2部の単量体混合物を1時間かけて滴下し、更に同温で1時間保持して、テトラフルオロエチレン系重合体(A)及びアルキルメタクリレート系重合体(B)を含むラテックスを得た。ガスクロマトグラフより、単量体の重合率は99.9%以上であった。
次いで、得られたラテックスを25℃まで冷却後、酢酸カルシウム5部を含む50℃の温水320部中に滴下した後、90℃まで昇温させ、凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて熱可塑性樹脂用添加剤(15)を得た。
【0091】
[比較例5]
i−ブチルメタクリレートをメチルメタクリレートとした以外は、実施例9と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(16)を得た。
【0092】
[比較例6]
i−ブチルメタクリレートをメチルメタクリレートとした以外は、実施例10と同様に行い、熱可塑性樹脂用添加剤(17)を得た。
【0093】
用いた単量体成分(b)の組成、アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均粒子径及び質量平均分子量、熱可塑性樹脂用添加剤の製造方法及び粉体取扱性を、表1及び表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
尚、表1及び表2に記載の略号は、以下の化合物を示す。
MMA :メチルメタクリレート
n−BMA :ノルマルブチルメタクリレート
i−BMA :イソブチルメタクリレート
2−EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
DMA :ドデシルメタクリレート
EA :エチルアクリレート
n−BA :ノルマルブチルアクリレート
また、製造方法の欄に記載の略号は、以下の熱可塑性樹脂用添加剤の製造方法を示す。
X:ラテックスブレンド法
Y:存在下重合法
【0097】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜11で得られた熱可塑性樹脂用添加剤(1)〜(11)は、粉体取扱性に優れた。一方、比較例2で得られた熱可塑性樹脂用添加剤(13)は、アルキル基の炭素数が本発明の範囲より大きいアルキルメタクリレート系単量体単位を主成分としたアルキルメタクリレート系重合体(B)を用いたため、アルキルメタクリレート系重合体(B)のガラス転移温度が低く、粉体取扱性に劣った。
【0098】
[製造例1〜2]
熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂用添加剤を、表3記載の比率にて配合し、ハンドブレンドで混合した。その後、φ30mm同方向二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製、L/D=30)を用いて、スクリュー回転数200rpm、シリンダー温度200℃の条件で押出し、マスターバッチ(M1)及び(M2)を得た。
尚、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン(商品名「ノバテックPP FY−4」、日本ポリプロ(株)製)を用いた。
【0099】
製造例で得られたマスターバッチの組成を、表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
[実施例12〜30、比較例7〜20
(実施例19は参考例)]
熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂用添加剤を、表4〜表9記載の比率にて配合し、ハンドブレンドで混合した。その後、φ30mm同方向二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製、L/D=30)を用いて、スクリュー回転数200rpm、シリンダー温度200℃の条件で押出し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を80℃で12時間乾燥させ、Tダイを取り付けた単軸押出機((株)ジー・エム・エンジニアリング製、L/D=30)を用いて、スクリュー回転数20rpm、シリンダー温度200℃、Tダイ温度210℃の条件で、厚さ500μm、幅0.1mになるように製膜し、成形体(フィルム)を得た。
また、熱可塑性樹脂、難燃剤及び熱可塑性樹脂用添加剤を、表4〜表9記載の比率にて配合し、ハンドブレンドで混合した。その後、φ30mm同方向二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製、L/D=30)を用いて、スクリュー回転数200rpm、シリンダー温度200℃の条件で押出し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
尚、難燃剤として、リン酸塩系難燃剤(商品名「アデカスタブFP−2200」、(株)ADEKA製)を用いた。
得られた熱可塑性樹脂組成物を80℃で12時間乾燥させ、100t射出成形機(機種名「SE−100DU」、住友重機械工業(株)製)を用いて、成形温度200℃で成形し、成形体(1/16インチの試験棒)を得た。
【0102】
熱可塑性樹脂組成物の組成、溶融張力及びMFR、成形体の表面外観及び難燃性を、表4〜表9に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
尚、表4〜表9に記載の略号は、以下の化合物を示す。
PP1 :ポリプロピレン(商品名「ノバテックPP FY−4」、日本ポリプロ(株)製、メルトフローレート5g/10分)
PP2 :ポリプロピレン(商品名「ノバテックPP MA3」、日本ポリプロ(株)製、メルトフローレート12g/10分)
SEBS:水添スチレン系エラストマー(商品名「タフテック H1062」、JSR(株)製)
【0110】
表4及び5から明らかなように、実施例12〜21で得られた熱可塑性樹脂組成物は、成形加工性に優れ、得られた成形体は、表面外観及び難燃性に優れた。一方、比較例7、8、10で得られた成形体は、アルキル基の炭素数が1であるメチルメタクリレート単位を主成分としたアルキルメタクリレート系重合体(B)を用いたため、テトラフルオロエチレン系重合体(A)の分散性に劣り、表面外観及び難燃性に劣った。また、比較例9で得られた成形体は、アルキル基の炭素数が1と12のアルキルメタクリレート単位を含むアルキルメタクリレート系重合体(B)を用いたため、比較例7、8、10で得られた成形体と比べて表面外観がやや改善されたが、難燃性に劣った。更に、比較例11で得られた熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂用添加剤を配合していないので、成形加工性に劣り、得られた成形体は、難燃性に劣った。
【0111】
表6から明らかなように、表4及び5で用いた熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を用いても、同様の効果が得られることが確認できた。
【0112】
表7から明らかなように、熱可塑性樹脂用添加剤中のテトラフルオロエチレン系重合体(A)とアルキルメタクリレート系重合体(B)の組成が異なる熱可塑性樹脂用添加剤を用いても、同様の効果が得られることが確認できた。
【0113】
表8から明らかなように、熱可塑性樹脂用添加剤の配合量を変えても、同様の効果が得られることが確認できた。
【0114】
表9から明らかなように、マスターバッチを用いても、同様の効果が得られることが確認できた。