【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の洗浄方法のうち第1の本発明は、硫酸溶液と過酸化水素水とを混合した後、混合液を加熱して被洗浄材の洗浄に供
し、
前記洗浄後の混合液の一部または全部を回収し、回収した前記溶液に前記加熱後の混合液の一部を加えて貯液した後、前記混合液として循環使用することを特徴とする。
第2の本発明の洗浄方法は、前記第1の本発明において、前記混合液が前記加熱前に60〜100℃の温度を有することを特徴とする。
第3の本発明の洗浄方法は、前記第1または第2の本発明において、前記混合液は、前記加熱後に150〜220℃の温度を有することを特徴とする。
第4の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記混合液の加熱を10秒以内で行い、該混合液を、加熱後20秒以内に前記洗浄に使用することを特徴とする。
第5の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記混合液は、硫酸濃度が70〜92質量%であることを特徴とする。
第6の本発明の洗浄方法は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて
、回収した
前記溶液に、前記硫酸溶液と過酸化水素
水の一方または両方を添加し前記混合液として循環使用することを特徴とする。
第7の本発明の洗浄方法は、前記第6の本発明において、前記洗浄における洗浄結果に従って、前記洗浄後の混合液の循環使用比率を調整することを特徴とする。
第8の本発明の洗浄方法は、前記第
1〜第7の本発明のいずれかにおいて、
前記貯液における前記溶液
の温度を120〜150℃
とし、前記混合液として循環使用することを特徴とする。
第9の本発明の洗浄方法は、前記第
1〜第
8の本発明のいずれかにおいて、回収した前記溶液を冷却することを特徴とする。
第
10の本発明の洗浄方法は、前記第
1〜第
9の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄後の混合液の水分を一部除去して前記循環使用することを特徴とする。
【0008】
また、第
11の本発明の洗浄システムは、過硫酸溶液と過酸化水素水とを混合して貯液する混合貯液部と、前記混合貯液部から供給される混合液を通液しつつ加熱する加熱器と、前記加熱器から供給される加熱した混合液を洗浄液として用いる洗浄部と、
前記混合貯液部と前記洗浄部との間で、前記加熱器を介して前記混合液を循環させる循環ラインと、を備え、
さらに、前記循環ラインに、前記洗浄部で洗浄に用いた混合液を回収して貯液する回収貯液部が介在し、
前記加熱器と前記洗浄部との間で前記循環ラインから分岐して、前記回収貯液部に加熱された前記混合液の一部を供するバイパスラインを備えることを特徴とする。
第
12の本発明の洗浄システムは、前記第
11の本発明において、前記加熱器は、入液部から出液部に至る通液時間が10秒以内とされ、入液された60〜100℃の混合液を150〜220℃に加熱して出液するものであることを特徴とする。
第
13の本発明の洗浄システムは、前記第
11または第
12の本発明において、前記混合貯液部は、前記混合液を60〜100℃に保持するものであることを特徴とする。
第14の本発明の洗浄システムは、
前記第11〜第13の本発明のいずれかにおいて、前記回収貯液部は、前記硫酸溶液と過酸化水素水の一方または両方を添加するものであることを特徴とする。
第15の本発明の洗浄システムは、前記第
11〜第14の本発明のいずれかにおいて、前記回収貯液部は、回収した溶液を120〜150℃に保持するものであることを特徴とする。
第16の本発明の洗浄システムは、前記第
11〜第
15の本発明のいずれかにおいて、前記洗浄部の下流側であって、前記混合貯液部または該混合貯液部に至るまでに前記混合液を冷却する冷却器を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、硫酸溶液と過酸化水素水とを混合した後、加熱する構成とすることによって、混合液を洗浄に使用する際には、高温になって優れた洗浄効果を得ることを可能にし、該加熱前には混合液の温度を使用時よりも低くすることで過酸化水素の無駄な消費を抑えるとともに、硫酸と過酸化水素とが十分かつ均一に混合され、カロ酸などの酸化性物質が効果的に生成され、洗浄時に十分な濃度でカロ酸を含む溶液を用いることが可能になる。なお、硫酸溶液と過酸化水素水の混合がより均一になされるように、混合液を貯液し、これを加熱に供するのが望ましい。
【0010】
上記混合液は、前記加熱前に60〜100℃の温度を有するのが望ましい。加熱前に100℃を超えると、加熱前に過酸化水素が無駄に消費され、洗浄時のカロ酸濃度を十分に得ることが難しくなる。一方、60℃未満であると、混合後に加熱する際の加熱負担が大きくなり、短時間で加熱することが難しくなり、加熱中にカロ酸が自己分解して濃度が低下するおそれがある。このため、加熱前の混合液の温度は上記範囲が望ましい。
なお、硫酸溶液と過酸化水素水とは混合した際に、溶解熱によって昇温するので、硫酸溶液と過酸化水素水とは低温にして混合するのが望ましい。昇温の程度は濃度や混合比率によっても異なるが、例えば硫酸溶液と過酸化水素水とを混合前に40℃以下としておくのが望ましい。
【0011】
なお、混合に際し、硫酸溶液と過酸化水素水とは、体積比で10:1〜1.5:1の範囲の混合比率で混合するのが望ましい。これは10:1よりも硫酸が多いとカロ酸の生成濃度が低くなりすぎ、1.5:1よりも過酸化水素が多いと混合後の硫酸濃度が低くなりすぎ、レジスト剥離性能が低下するためである。
【0012】
上記混合液は、短時間で加熱して時間を置くことなく洗浄に供するのが望ましい。
その理由は、式(3)(4)に示すような平衡反応により、高温になると徐々にカロ酸の分解が進む方に平衡が移動して酸素を放出してしまい、酸化剤としての機能を失うからである。また、カロ酸は高濃度硫酸溶液中では下記式(5)に示すような平衡反応により、その一部はペルオキソ二硫酸(H
2S
2O
8)になると考えられる。ペルオキソ二硫酸はカロ酸より更に強力な酸化剤と言われているが、高温では急速に分解してカロ酸に戻る方に平衡が移動することが知られている。さらには、高温によりカロ酸やペルオキソ二硫酸から非常に酸化力の強い硫酸ラジカルの生成が顕著になるが、硫酸ラジカルは化学的に不安定なため短時間で分解して硫酸に戻ってしまうと考えられる。
【0013】
H
2SO
5+H
2O→H
2SO
4+H
2O
2 (3)
H
2O
2→H
2O+1/2O
2 (4)
H
2SO
5+H
2SO
4→H
2S
2O
8+H
2O (5)
【0014】
よって、硫酸と過酸化水素水とを混合した後の加熱は急速に行い、できるだけ短時間で被洗浄材上に供給しなければならない。
この場合、混合液の加熱後の温度は150〜220℃が望ましい。混合液の温度が150℃未満であると、カロ酸の自己分解による酸化力が十分に得られず、洗浄効果が十分ではない。一方、220℃を超えるとカロ酸の自己分解が短時間で進んでしまい、洗浄時に十分な洗浄効果が得られなくなる。したがって、混合液の加熱後の温度は上記範囲が望ましい。なお、同様の理由で下限を160℃、上限を200℃とするのが一層望ましい。なお混合液を液状に保持する必要があるので、混合液温度の上限値は混合液中の硫酸の濃度に対応する沸点以下とする。
なお混合液は、加熱を10秒以内で行い、加熱後、20秒以内に前記洗浄に使用するのが望ましい。さらには、前記加熱を5秒以内、加熱後の時間を10秒以内とするのが一層望ましい。上記加熱を短時間で行うために、一過式の加熱器などを用いることができ、該加熱器の加熱源として近赤外線を用いることができる。
【0015】
洗浄に際しては、混合液を被洗浄材に吹付けたり、滴下したりして洗浄を行う枚葉式の洗浄部を利用することができる。ただし、本発明としてはこれに限定されず、混合液に被洗浄材を浸漬などするバッチ式の洗浄部を利用することもできる。
【0016】
なお、本発明では、種々の被洗浄材を対象にして洗浄を行うことができるが、シリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を対象にして洗浄処理をする用途に好適である。さらに具体的には、半導体基板上に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離プロセスに利用することができる。また、半導体基板上に付着した微粒子、金属などの異物除去プロセスに利用することができる。
また、本発明は、シリコンウエハなどの基板上に付着した汚染物を高濃度硫酸溶液で洗浄剥離するプロセスに利用することができ、アッシングプロセスなどの前処理工程を省略してレジスト剥離することができる。
【0017】
本発明で洗浄に用いた混合液は、その後、廃棄することができるが、一部または全部を回収して再利用することも可能である。この場合、回収した溶液(以下回収溶液という)に、必要に応じて硫酸溶液と過酸化水素の一方または両方を添加して液中にカロ酸やペルオキソ二硫酸を再度生成し、洗浄および加熱前の混合液として循環使用する。該混合液は、前記と同様に加熱後、洗浄に供される。特に本発明では、硫酸溶液と過酸化水素水を混合した後、加熱することで洗浄効果が高められるので、過酸化水素水の混合比率を小さくして硫酸溶液の希釈を限定的な範囲に留めることができ、溶液の循環使用がより容易になる。
溶液の回収、循環使用の方法では、使い捨て式に比べて酸化剤濃度は低くなるが、その後、高温に加熱されるのでレジストのイオンドーズレベルなどにもよるが十分な剥離効果が得られる。
【0018】
前記のように、混合液を一過式で用いて廃棄すると、薬品コストが嵩み、運転コストの大半を占めることになる。このため、洗浄に用いた混合溶液の少なくとも一部を回収して循環使用することで運転コストを大幅に低減することができる。
洗浄した混合溶液は全量を回収して循環使用してもよく、また、一部を破棄して残部を回収して循環使用するようにしてもよい。洗浄の際にウエハに付着して少量ずつ液量が減少するので、これを補うために循環使用に際し、硫酸溶液および過酸化水素を添加する。このとき所望の濃度になるように添加量を調整する。
【0019】
なお、洗浄後の溶液の回収割合については予め定めて実行する他、洗浄結果の変化に従って、回収割合、すなわち循環使用比率を調整するようにしてもよい。洗浄結果は、洗浄後の溶液におけるTOC(全有機炭素)濃度の測定などによって把握することができる。すなわち、TOC濃度の測定によって洗浄効果の低下が見られる場合には、洗浄後の溶液の回収割合を小さくし、洗浄結果が良好であれば、洗浄後の溶液の回収割合を大きくするように調整できる。
また、洗浄に用いた溶液を回収して循環使用する際に、該溶液を冷却してカロ酸などの早期の分解を抑制するのが望ましい。該冷却は、冷却器などを用いて行うことができる。
【0020】
なお、洗浄後の溶液を回収する際に、回収溶液を一旦貯液して、混合溶液側に供するようにしてもよい。この貯液において、被洗浄材の洗浄によって溶液に移行した有機物などを溶液に含まれるカロ酸などによって、さらに分解することができる。このため、回収溶液は適度な温度を有するのが望ましく、120〜150℃の温度範囲において回収溶液を貯液するのが望ましい。回収溶液の温度は、洗浄側から供給される際に、次第に降温するので、必要に応じて溶液を冷却したり、加熱したりして適度な温度に調整してもよい。
【0021】
回収溶液の温度が120℃未満であると、溶液に移行した有機物などの分解が十分になされず、一方、回収溶液の温度が150℃を超えると、カロ酸などの自己分解が早期に進行し、その後、洗浄に用いた際のカロ酸などの濃度が低くなって洗浄効果を低下させる。
また、貯液されている回収溶液には、加熱直後で洗浄使用前の混合溶液の一部を添加して有機物等の分解の促進を図るようにしてもよい。また、この添加によって回収溶液の温度を調整する機能も得られる。すなわち、回収溶液を貯液している際に、溶液が自然冷却によって温度が必要以上に低下するのを回避でき、回収溶液を加熱する手段を設けることなく回収溶液の温度調整を行うことができる。
回収溶液を貯液した後、該溶液は、硫酸溶液と過硫酸溶液とを混合して貯液している混合液に加えるのが望ましい。これにより加熱前の溶液が均一になり、洗浄に際し、バラツキのない洗浄能力が得られる。
【0022】
なお、混合溶液を回収して循環使用する際に過酸化水素水の添加によって硫酸が次第に希釈されるが、溶液中の水分を一部除去することで硫酸濃度を高く保つことができる。この液を循環使用することにより溶液を再び酸化力の強い状態に調製することができる。このとき、洗浄排液の一部を廃棄したり、必要に応じて若干の硫酸を加えて液量を調節しても良い。
なお、水分除去の方法は、本発明としては特に限定されるものではなく、例えば空気のストリッピングによって水分を蒸発させる放散塔や、水分を蒸発させる加熱蒸発器などを用いることができ、その他の既知のものを用いることができる。