(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維長250μm以下の成分が80質量%以上で63〜250μmの長さ範囲の短繊維を10質量%以上含む竹粉末とプラスチックとを1:9〜8:2の重量比で含有する組成物を溶融成形して得られるストランド状成形体を溶融成形してなり、比重が1〜2の範囲であることを特徴とする敷設用成形体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0018】
本実施の形態に係る竹は、高温で分解する成分である植物由来のセルロース繊維、より低温で分解するヘミセルロース、および広い温度範囲で分解するリグニンを主成分として含有する。竹は、均質で大量に存在し、剛性に優れた繊維質成分が多い。
【0019】
竹は、広義には、イネ目イネ科タケ亜科のうち、木本のように茎が木質化する種の総称である。日本に生育する竹は600種あるといわれており、そのうちの代表的なものとして、マダケ、モウソウチク(孟宗竹)、ハチク等が挙げられる。
【0020】
本実施の形態において用いる竹の種類を限定するものではない。また、本実施の形態において、竹とは幹、枝、葉、および根からなる総体的なものを意味するが、とりわけ、セルロース繊維成分が豊富な維管束鞘を大量に含む幹部が好適である。
【0021】
竹は、その主要な構成成分として、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンからなる。ヘミセルロースはセルロースとリグニン、あるいはセルロース同士を結合させる接着剤の役割を担っている。このヘミセルロースは、例えば、生竹粉末を高分子材料にブレンドして高温で成形した際、分解生成物、いわゆる竹酢液成分が揮発し、ブレンド体の物性を低下させるのみならず、臭気による作業環境の悪化を引き起こす。
【0022】
本実施の形態にかかる竹粉末とは、竹を粉砕して得られる微細な成分の集合体であり、竹の維管束鞘に由来するセルロース結晶が束状に集まった短繊維状成分と柔組織に由来する粒子状成分とが共存する。総体としての形状は、繊維長1000μm以下の成分が80質量%以上含む粉末である。好ましくは、繊維長1000μm以下の成分が90質量%以上であり、さらに好ましくは、繊維長1000μm以下の成分が95質量%以上であることが望ましい。
【0023】
本実施の形態にかかる竹粉末成分の質量%は、倍率を調整可能な顕微鏡観察で得られた1cm×1cm画像中の繊維について直接測定し、繊維長と繊維径から円筒状と仮定して求められる体積が質量と実質的に比例関係にあることに基づいて、繊維長の累積頻度%を測定して、これを質量%と置き換える方法により得る。なお、繊維長が所定の範囲内にある粉末成分の質量比率の概略値は、篩い分け法により簡便に得ることもできる。
【0024】
竹粉末はそれ自体が不融性であるため、プラスチックとの混合組成物を溶融成形する時に流動性を阻害するおそれがあり、射出成形においては特に高い流動性が要求される。竹粉末の繊維長および質量範囲を上記の範囲とすることで溶融時の流動性が確保される。
【0025】
竹粉末は、平均アスペクト比が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。平均アスペクト比の上限は特にないが、100を超えると成形性に問題が生じる可能性が有る。ここでアスペクト比は、繊維長/繊維径の比として表わされる。アスペクト比が大きいということは、より細長い繊維状の形態であることを意味している。
【0026】
一般に、アスペクト比が大きい竹粉末は、プラスチックとともに溶融成形された際に、強化繊維としての機能を発現することができる。さらに、繊維同志の接触が起こり易く、結果として帯電防止性能をより向上させることができる。優れた帯電性能を発現するためには、平均アスペクト比が5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
【0027】
本実施の形態に係る竹粉末の製造方法は、竹を100〜300℃で加熱処理した後、目的の繊維長分布になるまで粉砕することによって実施される。
【0028】
本実施の形態に係る加熱処理とは、加熱空気下での単純加熱、加圧加熱水蒸気下での加熱、および常圧加熱水蒸気下での加熱などを意味し、好ましい加熱処理法としては、100〜300℃に加熱された常圧過熱水蒸気を竹に接触させる方法が、より効果的に加熱処理できるため望ましい方法である。ここで、常圧過熱水蒸気とは、定容積状態で加熱して得られる加圧飽和水蒸気と異なり、膨張できる状態で100℃の水蒸気をさらに加熱して得られる、標準気圧下で100℃以上の水蒸気をいう。
【0029】
過熱処理条件としては、100℃未満では、竹の水蒸気処理効果が小さく、処理に長時間を要する。さらに、300℃を超える温度では、竹の分解が必要以上に進行しやすく、セルロース成分の劣化が起こりやすくなってしまい、コンポジットの強度への寄与が低下してしまうので好ましくない。加熱水蒸気処理温度としては、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは、170〜210℃の範囲である。加熱処理時間は処理温度に対して反比例し、高温では短時間、低温では長時間を必要とする。通常、30分から3時間の範囲で実施される。
【0030】
加熱処理後の竹は、易分解性のヘミセルロース成分が優先的に分解され、部分的に揮発・除去されているため、セルロース繊維とリグニン構造間の接着組織を解かれた竹の剛直な組織は、容易に粉砕することができる。破砕および粉砕は、適宜、一般公知の破砕・粉砕装置を用いて行うことができる。また、このとき、粗粉砕後に微粉砕を行う2段粉砕処理を行ってもよい。好適に用いられる破砕・粉砕装置を例示すれば、例えば、ハンマーミル、カッターミル、ピンミル、クラッシャーミル、ボールミル、ロッドミル、バーミル、ディスクミル、ブレードミル、振動ミル、およびこれらの方法を2種以上組み合わせた複合粉砕方法である。
【0031】
粉砕された竹粉末は、そのままでも本実施の形態例に係る敷設用成形体の成分として使用できるが、より高度な特性を発現させるために、分級操作によって、粒度分布を制御することも好適に行われる。分級操作に用いる方法としては、一般公知の分級方法が何ら制限なく使用できる。好適に用いられる分級方法を例示すれば、例えば、篩分級、気流式分級、渦遠心式分級、静電分離型分級などであり、これらに超音波や縦および横振動などの負荷を様々に組み合わせた分級方法がある。具体的には、振動ふるい装置、サイクロン、風力分級装置、および回転ドラム型
静電分離装置などが好適な分級装置である。これらの装置を用いて、本発明の実施の形態に係る敷設用成形体用の竹成分が作製される。
【0032】
つぎに、本実施の形態例に係るプラスチック材料について説明する。本実施の形態例に係る敷設用成形体(以下、これを単に成形体ということがある。)は、本実施の形態例に係る竹粉末とプラスチック材料を、1:9〜8:2の質量比で配合した組成物から成形される。本実施の形態例に係る竹粉末とプラスチック材料の質量比は、3:7〜7:3であることがより好ましく、4:6〜6:4であることがさらに好ましい。
【0033】
竹粉末の質量割合が10%未満では炭酸ガスの削減効果が小さいばかりでなく、竹粉末による成形体の比重増大効果が低減する。さらに、竹粉末に基づく帯電防止性能が効果的に発現しないおそれがある。一方、80%を超える割合では溶融成形性が低下し、たとえ成形できたとしても得られた成形体の機械的強度の低下をまねくおそれがある。
【0034】
本実施の形態に係るプラスチック材料としては、竹粉末との複合化が可能なプラスチック材料であれば、なんら制限なく用いることが可能である。とりわけ、熱可塑性樹脂は、溶融成形により、より意匠性の高い成形体を製造することが可能であるため、より好適に用いられる。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、竹粉末と複合化が可能なものあれば何ら制限無く用いることが可能である。好適に用いられる熱可塑性樹脂を例示すると、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリスチレンやアクリロニトニル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトニル−スチレン(AS)樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)樹脂などのスチレン系樹脂類;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などの芳香族ポリエステル類;ビスフェノールA型ポリカーボネート(PC)などの芳香族ポリカーボネート類;ナイロン−6やナイロン−6,6などのポリアミド類;ポリ乳酸やポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリテトラメチルグリコリド、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル類等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、入手の容易さと成型性の容易さの観点からポリオレフィン類が、また比重が1よりも大きく耐衝撃特性に優れているという点からABS樹脂などのスチレン系樹やPETなどの芳香族ポリエステル類、PCなどの芳香族ポリカーボネート類が特に好適である。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
熱可塑性樹脂以外にも、熱可塑性である熱硬化性樹脂のプレポリマーを用いることができる。代表的な熱硬化性樹脂のプレポリマーとしては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シラン架橋ポリエチレン、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、架橋ゴムなどのプレポリマーである。これらの熱硬化性樹脂のプレポリマーの中でも、本発明に係る竹粉末との複合化の容易さなどから、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂などのプレポリマーが好適である。
【0037】
本実施の形態例に係るプラスチック材料は、使用済みの回収プラスチックであることが、炭酸ガスの発生抑制の観点から好適に用いられる。このような回収プラスチックとしては、容器包装リサイクル法、家電リサイクル用、自動車リサイクル法、および資源有効利用促進法によって回収・分別されるプラスチック材料が好適に用いられる。
【0038】
本実施の形態に係る成形体の溶融成形方法は、竹粉末を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることのできる方法であれば、公知の方法を何ら制限無く利用することができる。例えば、熱可塑性樹脂を熱溶融させて、竹粉末にせん断応力をかけながら練り込む溶融混練法、熱可塑性樹脂を溶剤に溶解し、竹粉末を加えて分散させた後に、溶剤を気化除去する溶液混合法、熱したロール上で熱可塑性樹脂を柔らかくし、その上に竹粉末を添加し、熱ロールによって圧着しながら練り込むカレンダー成型法などがある。これらの複合化の方法の中でも、効率性と汎用性の点で溶融混練法が最も好適である。
【0039】
溶融混練法としては、具体的には、射出成型機を用いた射出成型法、押出成形機を用いた押出成形法、ブロー成型機を用いたブロー成形法等があり、さらに押出成形法によって作製したシート状の成形体を原料に、真空成型機を用いた真空成型法や圧縮成型機を用いた圧縮成型法による深絞り成形が好適に用いられる。これらの成形法の中でも、汎用性と拡張性等の点から、射出成型法と押出成形法がより好適に用いられる。
【0040】
射出成形とは、加熱溶融させた材料を金型キャビティー内に射出注入し、冷却・固化させる事によって成形品を得る方法であり、スプルーおよびランナーと呼ばれる部分を通って、成形体の金型キャビティー内に溶融した竹粉末含有樹脂溶融物が充填される。ここで、竹粉末は溶融しないので、溶融流動性を必要とする射出成型を実施する際には、流動性に優れた熱可塑性樹脂が選択される。
【0041】
押出成形とは、加熱されたシリンダーの中でスクリューの回転に伴うせん断応力と発熱により溶融・混合した材料をダイスの押出口から一定速度で押し出しながら冷却固化させる成形法である。射出成型のような高い流動性は必要としないので、押出口から押し出された後、変形しないような粘性の高い高分子量の熱可塑性樹脂が選択される。さらに、押出成形においては、スクリューによる混練が効果的に行われる。スクリューの形状および回転方向は様々にあり、用途目的に応じて選択可能である。敷設用成形体の製造においては、より混練度を高めるために、二軸同方向回転スクリューによる混練がより好適な方法である。
【0042】
本実施の形態に係る成形体の製造方法において、例えば、射出成型機を用いて成形する場合、高い溶融流動性が要求され、また、金型内に充填する前にスクリーンを通してサイズの大きい不融物を濾取するため、竹粉末の繊維長が比較的短い方に多く分布している方が成形性には有効である。一方、押出成形機を用いて成形体を成形する場合、長い繊維状の成分を含む竹粉末は、溶融した熱可塑性樹脂の中で配向して流動する。そのため、結果として配向した繊維状の竹粉末を含むコンポジットが得られ、繊維強化による機械的物性の向上が発現しやすく好適な製造方法の態様である。
【0043】
熱可塑性樹脂に代えて熱硬化性樹脂のプレポリマーを用いる場合も上記した製造方法を用いることができるが、このとき、竹粉末と熱硬化性樹脂のプレポリマー、および必要に応じて硬化剤を混合した組成物を硬化反応が進行しない条件で溶融成型し、その後、加熱や水蒸気、光照射などの刺激により硬化させることで、機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
【0044】
本実施の形態に係る成形体の比重は1〜2の範囲である。竹粉末成分は、その真比重が約1.5であり、プラスチック材料に竹粉末をブレンドすることによりコンポジットの比重が増大し、側溝への排水時に水に浮遊することを抑制することができる。
【0045】
竹粉末とブレンドするプラスチック材料として、比重が1よりも大きく耐衝撃特性に優れているという点からABS樹脂などのスチレン系樹やPETなどの芳香族ポリエステル類、PCなどの芳香族ポリカーボネート類が特に好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。また、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法、自動車リサイクル法の実施に伴い回収分別された当該樹脂であれば、炭酸ガス発生抑制の観点から、より好ましく用いられる。
【0046】
成型体の比重を増大させる目的で、無機フィラーを添加することも好適な対応である。無機フィラーとしては、竹粉末やプラスチック材料に何ら影響を及ぼさないものであれば、何ら制限なく一般公知の無機フィラーを,比重を増大させる目的で添加することができる。好適に用いられる無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、シリカ、砂などが用いられる。これらの無機フィラーの好ましい添加量は、プラスチック材料に対して、1〜100質量%の範囲である。この質量範囲内において、溶融成形性や機械的物性を著しく犠牲にすることなく、比重の増大が可能である。
【0047】
以上説明した本実施の形態に係る敷設用成形体の製造方法によって、溶融成型性、機械的性質、および帯電防止性に優れた成形体を効率的に得ることができる。
【0048】
本実施の形態に係る成形体は、道路や鉄道に沿って設置された側溝および電子機器部品やオートメーション機器を設置した室内の床に敷設された際、相応の物理的荷重が負荷される。本成形体は、その荷重に対して十分な耐久性を有する。負荷しうる最も大きな荷重は、車両の重量が負荷した場合である。例えば車重20tの半分の負荷が10cmの幅で懸った場合、1cm幅で耐えるべき荷重は1000kgであり、成形体の厚みが5cmの時、1cm
2当たりに負荷される曲げ荷重は約20MPaである。従って、本成形体に要求される耐荷重は20MPa以上の曲げ強度であり、本発明の成形体の曲げ強度は、実施例に示したように20MPa以上である。
【0049】
成形体の曲げ強度は次のような方法で評価される。竹粉末とプラスチック材料の溶融成形体をペレット状にした後、射出成形機を用いて曲げ試験用の試験片を作製し、JIS‐K−7171に従って、曲げ強度を求める。
【0050】
本実施の形態例に係る成形体が示す帯電防止機能発現のメカニズムはいまだ明確ではないが、後述する実施例で示す通り、プラスチック材料に竹粉末を添加することにより得られる敷設用成形体は、表面抵抗率が10
14Ω/□を下回り、より好ましくは、10
13Ω/□を下回る。竹粉末の添加量に応じて竹粉末コンポジットの表面抵抗率が低減される。
【0051】
表面抵抗率は、JIS‐K‐6911に準拠して測定する。表面抵抗率とは別に、帯電防止性を簡易的に評価する方法として、タバコの灰が付着し始める高さ方向の距離で判断するアッシュテストがある。アッシュテストは、帯電処理されたシート状のサンプルをタバコの灰の上部から近づけ、タバコの灰が付着し始める高さ(これを付着距離と定義する。)を評価する方法である。付着距離が小さいほど帯電防止性が高い。プラスチック材料に竹粉末を添加することにより得られる成形体は、付着距離が好ましくは18cmを下回り、より好ましくは10cmを下回る。
【0052】
以上から、本実施の形態例に係る敷設用成形体は、道路や鉄道に沿って設置された側溝および電子機器部品やオートメーション機器を設置した室内の床に敷設される用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明の範囲を制限するものではない。
【0054】
<竹粉末の製造例1> 孟宗竹(直径約12cm、長さ約40cm、重量約1kg)を以下の仕様の直本工業社製過熱水蒸気処理装置に入れ、210℃、3hの条件で過熱水蒸気処理を行った。なお比較例として、過熱水蒸気処理をしていない孟宗竹(上記寸法)についても、同じ装置を用いて破砕・微粉砕試験を試みたが、孟宗竹の強度が大きいため、粉砕不可であった。 処理した孟宗竹を取り出し、下記の粗および微粉砕装置を用いて7000rpmで粗粉砕した後、さらに7000rpmで粉砕を行った。さらに、下記の篩装置を用いて、60メッシュ(目開き250μm)パスの竹粉末を作製した。 過熱水蒸気処理装置の仕様: 蒸気発生部: ヒーター容量 6.3kW 換算蒸発量 9.45kg/h 最高使用圧力 0.11MPa 処理槽: ヒーター容量 8kW 庫内寸法 W590×D385×H555 mm 粉砕装置の仕様: 粗破砕 : 奈良機械製作所製 HM−5型 微粉砕 : 奈良機械製作所製 自由粉砕機
M−2型 水分測定装置の仕様: 島津製作所製水分計MOC−120H 篩装置の仕様: アズワン株式会社製ミニふるい振とう機 MVS−I
【0055】
<竹粉末の繊維長分布および平均アスペクト比の測定> 竹粉末の繊維長および繊維径、平均アスペクト比の測定は下記の光学顕微鏡を用いて行った。光学顕微鏡の倍率は、竹粉末の繊維長のサイズに合わせて変化させた。 光学顕微鏡: キーエンス社製VH−5000型
図1に60メッシュパス成分(竹粉末)の光学顕微鏡写真を示し、
図2に60メッシュパス成分の繊維長分布ヒストグラムを示した。
【0056】
図1の竹粉末の光学顕微鏡写真から、水蒸気処理および粉砕処理された竹粉末は、短繊維状の成分と異形粒子状成分の混合物であることがわかる。単繊維状成分はセルロース結晶からなる維管束鞘に由来するものであり、異形粒子状成分は柔構造に由来するものである。
図2の繊維長分布観測結果から、60メッシュパス成分は、繊維長が1000μm以下の成分が90質量%に達していることがわかった。以上のように、60メッシュ(目開き250μm)の篩を通過した中に、目開き以上の繊維長の成分が存在するのは、繊維が縦方向に篩の目の間を通過することを意味している。 光学顕微鏡観察により測定した60メッシュパス成分の平均アスペクト比は8.35であった。
【0057】
(溶融成形体製造実施例1〜2) 製造例1で作製した竹粉とポリプロピレン(PP)(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY−6)を質量比20/80 および50/50(wt%/wt%)で混合し、さらに無水マレイン化PPを1wt%添加しドライ混合を行った。均一混合した試料を二軸混練エクストルーダーに供給し、所定の過熱条件(ホッパー温度80℃、スクリュー左190℃、スクリュー右200℃、出口210℃、スクリュー回転数15rpm、スクリュー内滞留時間 約5分)で溶融成形を行い、先端のダイスより押し出し、竹−PPコンポジットのストランド状成形体を作製した。ストランド状成形体をペレット状に切り出し、井元製作所製IMC−18D1型簡易射出成形機を用いて、210℃で射出成形を行い、直方体の溶融成形体(長さ:20mm、幅:5mm、厚さ:2mm)を作製した。さらに、敷設用成形体として側溝用蓋を意図して直方体の射出成形体(
図3)を作製した。
【0058】
(溶融成形体製造実施例3〜4) 製造例1で作製した竹粉とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)(UMG−ABS製、MFR=35.8)を質量比20/80 および50/50(wt%/wt%)で混合した。均一混合した試料を二軸混練エクストルーダーに供給し、所定の過熱条件(ホッパー温度110℃、スクリュー左200℃、スクリュー右210℃、出口200℃、スクリュー回転数50rpm、スクリュー内滞留時間約3分)で溶融成形を行い、先端のダイスより押し出し、竹−PPコンポジットのストランド状成形体を作製した。ストランド状成形体をペレット状に切り出し、井元製作所製IMC−18D1型簡易射出成形機を用いて、220℃で射出成形を行い、直方体の溶融成形体(長さ:20mm、20mm、 幅:5mm、厚さ:2mm)を作製した。
【0059】
(溶融成形体製造実施例5〜6)製造例1で作製した竹粉とビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(PC)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)ユーピロンS−3000 MFR=15)を質量比20/80 および50/50(wt%/wt%)で混合した。均一混合した試料を二軸混練エクストルーダーに供給し、所定の過熱条件(ホッパー温度120℃、スクリュー左215℃、スクリュー右230℃、出口220℃、スクリュー回転数50rpm、スクリュー内滞留時間 約3分)で溶融成形を行い、先端のダイスより押し出し、竹−PPコンポジットのストランド状成形体を作製した。ストランド状成形体をペレット状に切り出し、井元製作所製IMC−18D1型簡易射出成形機を用いて、250℃で射出成形を行い、直方体の溶融成形体(長さ:20mm、幅:5mm、厚さ:2mm)を作製した。
【0060】
(溶融成形体製造実施例7) 製造例1で作製した竹粉とABS樹脂およびPC樹脂を質量比20/40/40(wt%/wt%/wt%)で混合した。均一混合した試料を二軸混練エクストルーダーに供給し、所定の過熱条件(ホッパー温度120℃、スクリュー左215℃、スクリュー右230℃、出口220℃、スクリュー回転数50rpm、スクリュー内滞留時間 約3分)で溶融成形を行い、先端のダイスより押し出し、竹−PPコンポジットのストランド状成形体を作製した。ストランド状成形体をペレット状に切り出し、井元製作所製IMC−18D1型簡易射出成形機を用いて、250℃で射出成形を行い、直方体の溶融成形体(長さ:20mm、幅:5mm、 厚さ:2mm)を作製した。
【0061】
<溶融成形体の比重の測定> 溶融成形体製造実施例1〜7で製造された直方体の溶融成形体の比重の測定は、23℃で一定容積の蒸留水中への成形体の浸漬に伴う重量増加量と容積増大量との比較から比重を測定した。得られた結果を表1に示した。<溶融成形体の曲げ強度の測定> 溶融成形体製造実施例1〜7で製造された直方体の溶融成形体の曲げ強度試験は、井元製作所製IMC−18E0型引張圧縮試験機を用いて曲げ試験(試験速度:10mm/min)を行った。得られた応力−歪み曲線(s−sカーブ)より曲げ強度、曲げ弾性率の算出を行った。得られた結果を表1に併記した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果から明らかなように、いずれの溶融成形体も比重が1.0以上であり、その曲げ強度は20MPa以上であった。
【0064】
<竹粉末の製造例2> 孟宗竹(直径約12cm、長さ約40cm、重量約1kg)を以下の仕様の直本工業社製過熱水蒸気処理装置に入れ、220℃で120分間、過熱水蒸気処理を行った。処理した孟宗竹を取り出し、下記の粗粉砕装置を用いて7000rpmで破砕した後、微粉砕装置を用いて7000rpmで粉砕を行った。さらに、下記の篩装置を用いて、140メッシュ(目開き106μm)と235メッシュ(目開き63μm)の篩を用いて分級処理することによって235メッシュパス成分と235〜140メッシュ間成分の2種類の竹粉末を作製した。 過熱水蒸気処理装置の仕様: 蒸気発生部: ヒーター容量 6.3kW 換算蒸発量 9.45kg/h 最高使用圧力 0.11MPa 処理槽: ヒーター容量 8kW 庫内寸法 W590×D385×H555 mm 粉砕装置の仕様: 粗破砕 : 奈良機械製作所製 HM−5型 微粉砕 : 奈良機械製作所製 自由粉砕機M−2型 水分測定装置の仕様: 島津製作所製水分計MPC−120H 篩装置の仕様: アズワン株式会社製ミニふるい振とう機 MVS−I
【0065】
<竹粉末の繊維長分布および平均アスペクト比の測定> 繊維長の測定および平均アスペクト比の測定を、下記の光学顕微鏡を用いて行った。光学顕微鏡の倍率は、竹粉末の繊維長のサイズに合わせて変化させた。 光学顕微鏡: キーエンス社製VH−5000型
図4に光学顕微鏡観察により測定した235メッシュパス成分の繊維長分布(サイズ分布)図を示し、
図5に235〜140メッシュ間成分の2種類の竹粉末の繊維長分布(サイズ分布)図を示した。
【0066】
図4の繊維長分布観測結果から、235メッシュパス成分は、繊維長が1000μm以下の成分が100質量%に達していることがわかった。
図5の繊維長分布観測結果から、235〜140メッシュ間成分も、繊維長が250μm以下の成分は37質量%であり、500μm以下の成分は80質量%、1000μm以下の成分は100質量%であることがわかった。以上のように、235メッシュ(目開き63μm)および140メッシュ(目開き106μm)という篩を通過した中に、目開き以上の繊維長の成分が存在するのは、繊維が縦方向に篩の目の間を通過することを意味している。 光学顕微鏡観察により測定した235メッシュパス成分の平均アスペクト比は3.0であった。一方、235〜140メッシュ間成分の平均アスペクト比は10.0であった。
【0067】
(帯電防止性成形体の製造実施例8〜13) 竹粉末の製造例2で得られた2種類の竹粉末(235メッシュパス成分と235〜140メッシュ間成分)とポリプロピレン(日本ポリプロピレン株式会社製ノバテックPP FY−6)を、竹粉末:ポリプロピレン=1:9、3:7、5:5(質量比)で混合し、これを井本製作所製ベント付2軸混練押出機160B型(同方向回転2軸スクリュー、スクリュー直径:15mm、L/D:25、ベント口数:1)を用いて溶融混練し、ストランド状成形体を作製した。ポリプロピレンとの複合化の溶融混練条件は、ホッパー下温度80℃、バレル内温度190℃、ダイス温度190℃、スクリュー回転数15rpmで行った。
【0068】
押出機を用いて製造したストランド状成形体は、井元製作所製熱プレス装置IMC−180Cを用いて、190℃で3分間、予備加熱を行った後に、12MPaの圧力で5分間加圧した。得られた厚さ約0.6mmのシートから、100mm×100mmのシート状成形体を切り出し、表面抵抗率測定とした。また比較例として、同様の熱プレス装置を用いて、同様のサイズのポリプロピレンシートを作成した。
【0069】
<シート状成形体の表面抵抗率測定> 表面抵抗率測定は、三菱化学社製ハイレスターUPを用いて、JIS-K‐6911に準拠して、プローブとしてUR−100(主電極φ50mm、ガード内径φ53.2mm)、印加電圧1000v、印加時間60秒、試験温度23℃の条件で行った。測定は、成形体サンプル毎に3回以上行い、その平均表面抵抗率を求めた。その結果を表2に示した。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の結果から明らかなように、竹粉末をポリプロピレンに添加することにより、表面抵抗率が10
14Ω/□以下となり、比較例のポリプロピレンに比べて帯電防止性能が格段に向上したことがわかる。また、平均アスペクト比の高い235〜140メッシュ間成分の竹粉末は、平均アスペクト比が小さい235メッシュパス成分の竹粉末に比べて、より優れた帯電防止性を示すことがわかった。