(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669290
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】試験及び測定機器並びに信号データ識別方法
(51)【国際特許分類】
G01R 23/173 20060101AFI20150122BHJP
G01R 13/20 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
G01R23/173 J
G01R13/20 N
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-260110(P2008-260110)
(22)【出願日】2008年10月6日
(65)【公開番号】特開2009-92660(P2009-92660A)
(43)【公開日】2009年4月30日
【審査請求日】2010年7月1日
【審判番号】不服2013-23026(P2013-23026/J1)
【審判請求日】2013年11月25日
(31)【優先権主張番号】11/869,637
(32)【優先日】2007年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シゲツネ・トリン
【合議体】
【審判長】
酒井 伸芳
【審判官】
中塚 直樹
【審判官】
新川 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−170988(JP,A)
【文献】
特開平2−138877(JP,A)
【文献】
特開2006−186994(JP,A)
【文献】
特開平9−304121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/173
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験信号に対応する複数の位相値を得る信号入力手段と、
複数の上記位相値と位相シグネチャとの差分に上記位相シグネチャに対応するマグニチュード・シグナチャに基づく重み付けを適用して比較する検出器と、
該検出器の出力がしきい値以内の時にトリガ信号を発生する比較器と
を具える試験及び測定機器。
【請求項2】
被試験信号に対応する複数の位相値を得るステップと、
複数の上記位相値と位相シグネチャとの差分に上記位相シグネチャに対応するマグニチュード・シグナチャに基づく重み付けを適用して比較するステップと、
上記比較ステップにおける比較結果がしきい値以内の時にトリガ信号を発生するステップと
を具える信号データ識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、試験及び測定機器に関し、特に、検出判定基準に基づいてトリガ信号を提供する試験及び測定機器並びに信号データ識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の実時間スペクトラム・アナライザ10のブロック図を示し、入力プロセッサ20が入力RF(無線周波数)信号又は他の関心信号を受ける。入力プロセッサ20は、ロウパス・フィルタ22及びその後に続くミキサ24を有する。このミキサ24は、局部発振器26を用いて、ろ波された入力信号を中間周波数(IF)信号に変換する。このIF信号はバンドパス・フィルタ28を通過し、アナログ・デジタル(A/D)変換器30に供給され、更なる処理のためにデジタル信号となる。このデジタル信号をデジタルIF直交プロセッサ31に入力して、このデジタル信号から同相(I)信号及び直角位相(Q)信号を得る。これらI及びQ信号は、プロセッサ32に入力されて、モニタ34での表示用に実時間処理される。このモニタ34は、周波数対時間の表示を行う。また、I及びQ信号は、取込みメモリ36及びトリガ発生器40にも入力する。トリガ発生器40が事象を検出すると、トリガが発生し、その後の処理のために、トリガ事象の前、後及び/又はその期間中、取込みメモリ36がデータを保持するようにする。その後の処理は、プロセッサ32又は別のプロセッサ(図示せず)が行ってもよい。実時間分析、又は後処理分析の如き非実時間分析に対して、後処理を用いてもよい。プロセッサ32は、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、FPGA、又は一般目的に用いる如き汎用プロセッサ、若しくはパーソナル・コンピュータにより実現してもよい。
【0003】
トリガ事象を定義する特定条件に応答して、トリガ発生器は、トリガ信号を出力する。メモリ制御器は、トリガ信号に応答してI−Qデータを捕捉すると言われている。いくつかの実施例において、I−Qデータを取り込む即ち捕捉する動作は、既にメモリに取り込まれたデータを保持することにより達成されるので、通常の取込み処理期間中は上書きされない。他の実施例において、その後の処理のために、I−Qデータを一時メモリから、より持続性のあるメモリ又は他の蓄積媒体に転送する。所望動作に応じて、トリガ信号前のある期間、トリガ信号に続くある期間、又はこれらの組合せた期間からI−Qデータをトリガ信号に応答して捕捉又は蓄積してもよい。いくつかの実施例において、定義されたトリガ事象に合致する信号に対応するI−Qデータも捕捉し、蓄積する。
【0004】
ワード・トリガは、一般的には、トリガ回路、トリガ信号、そしてある場合には、結果がトリガ信号となる信号事象の形式に交換可能に関係する。最新の通信システムがより複雑になるにつれ、トリガは益々高度になってきている。非常な長期間にわたって存在できる信号内に非常に稀に生じる種々の信号又は信号異常を識別することが一層望まれている。これらシステムにおいては、問題が存在することがわかっているが、その問題の原因を分離したり識別したりすることが困難かもしれない。このことは、問題が間欠性の時には、特に正しい。事象に対応するデータを見つけるためには、時間又は日にちのオーダでの長いデータ記録を試験しなければならない。
【0005】
【特許文献1】特開2006−329979号公報
【特許文献2】特開2006−038866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信号が益々複雑となってきているので、より複雑な信号又は信号異常でトリガをできるようにするには、時間領域での簡単なレベル・トリガ及び周波数領域での周波数マスク・トリガでは不充分である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の試験及び測定機器は、被試験信号に対応するマグニチュード値又は位相値を得る信号入力手段(52又は62)と;マグニチュード値又は位相値を変調シグネチャと比較する検出器(58)と;この検出器の出力がしきい値以内の時にトリガ信号を発生する比較器(60)とを具えている。なお、括弧内の参照符号は、単に実施例との対応関係を示すのみである。
また、本発明は、変調トリガにマッチングする信号データを識別する方法であって;被試験信号のマグニチュード値又は位相値を得るステップ(52又は62の動作:810又は910)と;マグニチュード値又は位相値を変調シグネチャと比較するステップ(58の動作:820/920)と;被試験信号の一部が変調シグネチャとマッチングしたことを示すステップ(60の動作:830/930)とを具えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
よって、本発明の試験及び測定機器は、変調シグネチャ・トリガが可能となる。この変調シグネチャ・トリガは、マグニチュード(大きさ)シグネチャ又は位相シグネチャの如き変調シグネチャに対して入力信号を比較する手段を具えている。検出器は、マグニチュード値又は位相値を対応変調シグネチャと比較する。しきい値内で発生するエラー計算によるなどしてマッチング(一致)が指示されると、トリガ信号又は他の指示が発生する。いくつかの実施例において、トリガ信号に基づいて被試験信号を捕捉、即ち、取り込む。他の実施例においては、マッチングが指示された際に、マーカが蓄積信号に関連してもよい。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例による実時間スペクトラム・アナライザは、トリガ事象の結果として、1組のI及びQデータ・サンプルを捕捉、即ち取り込むことができる。本発明によるトリガ・システムの実施例において、トリガ事象は、マグニチュード(大きさ)位相データ・セットに基づくことができる。ユーザは、測定の前に、時間領域で期待される又は望ましい波形を提供でき、機器は、入力データ・サンプルを比較し、各サンプルに対して提供された波形とのマッチング(一致)があるか否かの評価を行う。
【0010】
図2は、マグニチュード・データの比較に基づくトリガ発生器40を示す。マグニチュード・データに基づくトリガは、振幅変調信号(AM信号)内の特定のシグネチャを見つけるのに非常に適する。一実施例において、マグニチュード・プロセッサ(信号入力手段)52は、I信号及びQ信号データ・サンプルに基づいてマグニチュードを計算して、ユーザが提供した波形との比較のためにマグニチュード値を与える。マグニチュード値をシフト・レジスタ54に供給する。このシフト・レジスタ54は、マグニチュード値をシフトし、シフトされたマグニチュード値がユーザが供給した又は選択したマグニチュード・シグネチャ56と比較される。比較を行って、マグニチュード値がシフトする各時点にてマッチングが存在するかしないかを求める。これにより、入力するマグニチュードが所望パターンを越えて実施的に移動することができ、所望マグニチュード・シグネチャとのマッチングがあるかを判断する。デコード58は、二乗したマグニチュード・エラーの和を計算する。総てが理想的で、入力する信号が正確にシグネチャと同じならば、マグニチュード・エラーの結果は零であろう。しかし、実際の信号を扱う場合、しきい値を用いるので、その結果が充分に零に近いと、比較器60は、トリガ信号を発生する。しきい値は、試験測定機器に対して予め決まっていてもよいし、又は、ユーザがしきい値を設定してもよい。しきい値が高すぎて設定されていると、トリガ発生器40は、偽の位置でトリガを発生する。しきい値が所望の低よりも低すぎると、信号が見過ごされる。
【0011】
測定を行う際、被試験信号(SUT)からのマグニチュード値は、マグニチュード・シグネチャと同じスケール(縮尺)である必要はない。被試験信号は、シグネチャに対して、スケーリング(縮尺調整)でき、ある一定のレベル・シフトができ、又は、これらの両方が可能である。よって、本発明によるトリガ・システムの実施例において、検出器58は、スケーリング係数を提供し、マグニチュード・シグネチャをスケーリングするので、入力信号及びスケーリングされたマグニチュード・シグネチャのスケーリングががマッチングする。一実施例において、見積りエラー(ベクトルe)が最小になるように、スケーリング係数を見積もる。他の実施例において、見積りエラーが最小になるようにシフト・レベルを見積る。さらに別の実施例においては、見積りエラーが最小になるように、スケーリング係数及びシフト・レベルの両方を見積る。本発明の一実施例において、最小二乗推定を用いて、このスケーリング係数を見つける。例えば、エラーを最小にするための基本として次の式を用いることができる。
【0012】
【数1】
【0013】
ここで、サンプル信号(サンプリングされた信号)はベクトルyであり、シグネチャはベクトルxであり、スケーリング係数はaであり、一定レベル・シフト即ちオフセットはbである。このエラーは、信号内の熱ノイズも含んでいる。別の実施例において、入力信号がスケーリングされ、及び/又はオフセットされて、マグニチュード・シグネチャとマッチングする。
【0014】
図3は、本発明の実施例の基本的な動作を説明するための理想化された比較を示す。
図3のAにおいて、理想化された被試験信号に対応する入力信号は、マグニチュード又は位相のいずれかである変調信号と比較される。
図3のBに示すように、変調シグネチャに対応する入力信号の領域が変調シグネチャに並ぶまで、入力信号をシグネチャに沿って移動させる。この点において、理想的な場合、これら2つの信号が理想的にマッチングし、零のエラー計算となり、これを用いて、トリガ信号を生成する。理想的な場合、時間的に連続的な信号及び連続的なシグネチャを用いて、比較を行う。実際には、これは現実的ではない。被試験信号を測定するとき、スケーリング及び一定レベル・シフトなどの未知の要素があるかもしれない。これは、被試験信号は測定機器が発生したものではなく、いくつかの場合、ユーザが被試験信号のソースを制御できないかもしれないためである。さらに、連続信号及びシグネチャの比較を行うことは現実的ではないので、
図4に示すように、信号をサンプリングし、シグネチャと比較すべき一連のポイントを発生する。
図3及び
図4に示す如く、必要に応じて、マッチングが検出されるまで、被試験入力信号をシグネチャに沿って移動させる。この動作は、信号値をシフトする
図2のシフト・レジスタ54に対応する。これにより、新たな信号を受信するに従い、入力信号をシフトできる。別の実施例において、被試験信号の一部を提供して、信号をシフトしてマッチングを探せる。
【0015】
マッチングが見つかると、トリガ信号が発生し、信号を識別するか取り込む。いくつかの実施例において、被試験信号を取込みメモリ又は他のストレージにI及びQ信号として取込み、トリガ信号により、このメモリに重ね書きではなくセーブされる。別の実施例においては、トリガ信号により、取込みメモリの関係部分が、ハード・ドライブの如き長時間ストレージ装置に蓄積される。設定に応じて、事象をトリガの起因となる事象の前、期間中、及び/又は後の信号情報がトリガにより取込み又はセーブされる。本発明の実施例において、発生すべきトリガ信号の原因となる被試験信号の部分に関連した信号情報を取り込む。
【0016】
図5に示す他の実施例において、トリガの基本として位相情報を用いる。トリガのこの形式は、例えば、周波数変調(FM)信号のシグネチャでトリガするのに有用である。FM信号の包絡線の振幅は、より一定のため、上述のマグニチュード・トリガはFM信号にとって不適当である。しかし、位相情報を用いて、FM
信号のシグネチャ・トリガを提供できる。
図5に示すように、被試験信号から得たI及びQ信号に基づいて、位相プロセッサ(信号入力手段)62にて位相値を発生する。この位相値をシフト・レジスタ54に供給する。このシフト・レジスタ54は、位相値をシフトするので、これら位相値を、供給される又はユーザが選択した位相シグネチャ66と比較する。比較を行って、
位相値がシフトされる各時点で、マッチングが存在するか否かを判断する。これにより、所望パターンにわたって入力位相値を効果的に移動させて、位相シグネチャとのマッチングがあるかを見る。検出器68は、スケーリングした位相シグネチャにフィットする直線を提供し、エラーを計算する。総てが理想的ならば、マッチングがある場合、位相エラーの結果は零となる。しかし、実際の信号を扱う場合、しきい値を用いるので、結果が零に充分近いとき、比較器60がトリガ信号を発生する。マグニチュード・シグネチャ・トリガに関連して上述したように、しきい値がこの場合にプリセットされるか、ユーザがしきい値を決めることができるようにしてもよい。
【0017】
位相又は周波数変調信号に対して、変調の深さをスケーリングできるし、又はいくらか一定レベルをシフトできる。さらに、信号及びシグネチャの間には周波数オフセットがあるかもしれない。未知のパラメータが見積りエラーを最小にする可能性を予測して、位相シグネチャとの良好な比較が行える。次の関係を用いて、スケーリング係数、周波数オフセット及び一定周波数シフト(又はオフセット)を見積もることができる。
【0018】
【数2】
【0019】
ここで、サンプリングされた信号がベクトルyであり、シグネチャがベクトルxであり、時間がベクトルtであり、スケーリング係数がaであり、周波数オフセットがΔfであり、一定周波数シフト(又はオフセット)がbであり、エラー・ベクトルがeである。
【0020】
上述の如く、適切なスケーリング、周波数オフセット及び位相シフト値を見積もることにより、シグネチャ・ベクトルxを調整する。当業者に理解できる如く、代わりに信号ベクトルyをスケーリングするのと同様な値を見積もることも同様に可能である。
【0021】
最小シフト・キーイング(MSK)変調の場合のように信号の周波数偏差が既知ならば、本発明の別の実施例では、確度がより効果的に得られるように見積るのに必要な係数の数を減らす固定スケーリング係数aを提供する。位相及び周波数オフセットを用いて、被試験信号から位相シグネチャを識別する。
図6に示すように、シフト・レジスタに蓄積された位相値から位相シグネチャ66を引く(マイナスの加算)。検出器78は、直線を位相差にフィットさせ、エラーを計算する。位相シグネチャ及び入力信号がマッチングすると、位相エラーが零に近い。位相エラーがしきい値未満のとき、比較器60がトリガ信号を発生する。
【0022】
マグニチュード・シグネチャ及び位相シグネチャの両方に関連して上述したいくつかの実施例において、直線のフィットを検出の一部として計算する。本発明の実施例において、最小二乗推定(LSE)を用いて、直線を求める。例えば、同じ形式の式を用いる。
y=Hθ+e
二乗したエラーを最小とするため、最小二乗フィットにより、パラメータ・ベクトルθを見積もることができる。推定量θは、
【0023】
【数3】
【0024】
となり、これは、次の式を導く。
【0025】
【数4】
【0026】
この結果の最小二乗エラー(LSE)は、次のようになる。
【0027】
【数5】
【0028】
ここでIが識別マトリクスである。最後に、LSEを所定しきい値と比較して、トリガ信号を発生するか否かを判断する。
【0029】
本発明の他の実施例を
図7に示す。
図6に関連して上述したのと同様に、検出器内で、位相差をトリガ計算の基として用いる。この実施例においては、マグニチュード情報を用いて、位相検出用の重み係数を提供する。マグニチュードが減ると位相情報内のノイズの影響が増加するので、位相検出を重み付けするマグニチュード情報を用いることは有用である。不十分な信号対ノイズ比の影響を避ける1つの方法として、高い信号マグニチュードに対応するこれら値に大きな重みを与える。これは、良好な信号対ノイズ比となる傾向がある。対応する位相シグネチャ66に関連するマグニチュード・シグネチャ80が、重み付け係数を与えるのに用いるマグニチュード値を提供する。一実施例においては、重み付けされた最小二乗推定(WLSE)を用いる。大きな信号が良好な信号対ノイズ比(SNR)を有するので、大きな値は、小さなマグニチュード・シグネチャではなく、大きなマグニチュード・シグネチャを有する信号の部分に関係する。推定量は、次のようになる。
【0030】
【数6】
【0031】
ここで、Wが重み付け用の正則非対称マトリクスである。これは、一般的に、エラー相関マトリクスRの逆数である。この場合、対角の要素は、マグニチュード・シグネチャの二乗値であり、総てのエラー要素が互いに独立していると仮定すれば、他の要素は零である。マグニチュード・シグネチャが次の形式ならば、
【0032】
【数7】
【0033】
マトリクスWは、次のようになる。
【0034】
【数8】
【0035】
推定量は、次のようになる。
【0036】
【数9】
【0037】
ここで、yが位相差ベクトルである。LSEは、次のようになる。
【0038】
【数10】
【0039】
図8は、被試験信号の一部がシグネチャとマッチするときを識別するために、マグニチュード・シグネチャとして変調シグネチャを用いる方法を示す。ステップ810に示すように、被試験信用にマグニチュード値を得る。これら値は、入力信号又はストレージ媒体から得ることができる。I−Qデータ値の如きいくつかの他のフォーマットに基づいてマグニチュード値を計算することにより、これらマグニチュード値を求めてもよいし、又は、直接的に提供できる。ステップ820にて、マグニチュード値をマグニチュード・シグネチャと比較する。本発明の実施例において、マグニチュード・シグネチャに関連するマグニチュード値をシフトし、各シフトにて比較を行って、マグニチュード値がしきい値内にマッチングするか否かを調べる。いくつかの実施例において、マグニチュード値をシフトする一方、他の実施例においては、マグニチュード・シグネチャをシフトする。点線で示すように、ステップ822及び824は、オプションである。ステップ822において、スケーリングを調整するので、マグニチュード値及びマグニチュード・シグネチャが同じスケールに近づく。これは、エラー計算を最小にするスケーリング値を計算することにより達成できる。シフト値は、マグニチュード・シグネチャの複数のマグニチュード値のいずれかに関連してもよい。同様に、ステップ824において、相対オフセットを計算する。例えば、エラーを計算し、それをしきい値と比較することにより比較動作を行うと、ステップ830は、被試験信号の一部がマグニチュード・シグネチャにマッチングしたことを示す。第1実施例において、トリガ信号を提供することにより、この指示を行う。別の実施例においては、マグニチュード・シグネチャに対応するマグニチュード値の一部にマーカを関係させて、この指示を行う。
【0040】
図9は、位相シグネチャの如き変調シグネチャを用いて、被試験信号の一部が直ぐにマッチングするときを識別する方法を示す。ステップ910に示すように、被試験信用の位相値を求める。これら値は、入力信号から、又は、ハード・ドライブ、USBドライブ、フラッシュ・メモリなどの如き蓄積媒体から得ることができる。位相値は、直接得てもよいし、I−Qデータ値の如きいくつかの他のフォーマットに基づいた値を計算して求めてもよい。ステップ920にて、位相値を位相シグネチャと比較する。実施例において、位相値及び位相シグネチャを互いに直接比較して、エラー計算を実行する。別の実施例において、位相シグネチャを位相値から引いて、直線フィットを実行して、これら値を互いに比較する。本発明の実施例において、位相シグネチャに対して位相値をシフトし、各シフトの後に比較することにより、比較動作を実行して、マッチングがしきい値内であるか否かを調べる。いくつかの実施例において、位相値をシフトする一方、他の実施例では、位相シグネチャをシフトする。点線で示すように、ステップ922、924、926及び928は、オプションである。ステップ922において、変調の深さのスケーリングを調整して、良好な比較を行う。第1実施例において、位相シグネチャに関連したスケーリング値を調整する。第2実施例において、位相値に関連したスケーリング値を調整する。同様に、ステップ924及び926にて、相対周波数オフセット又は一定位相シフトを夫々計算する。再び、位相シグネチャ又は位相値のいずれかに関連して、これらを計算できる。いずれかの方法で、これら処理の結果としての位相値及び位相シグネチャの間の相対関係は、比較動作を行うのに用いるエラー計算を最小にする。ステップ928にて、適用する位相シグネチャに対応するマグニチュード・シグネチャに基づく重み係数を用いて、更にエラー計算を減らす。これには、信号対ノイズ比アーティファクトを減らす重み付けを提供する。例えば、エラーを計算し、それをしきい値と比較することにより、比較動作を行うと、ステップ920は、被試験信号の一部が位相シグネチャとマッチングしたことを指示する。第1実施例において、トリガ信号を発生することにより、この指示を行う。別の実施例では、位相シグネチャに対応する位相値の一部にマーカを関連させることにより、この指示を行う。
【0041】
上述の実施例では、ASIC、FPGA又は他のカスタム化した回路の如きハードウェアにて、実時間トリガを実現した。これをハードウェアにて実現することにより、実時間で比較を行え、トリガ信号を発生できる。これは、サンプルを逃すことなく、サンプル・レートを低下させることなく、トリガを発生できることを意味する。別の実施例において、これら構成及び動作を、プログラマブル・プロセッサで実行するソフトウェアにて実現できる。これらプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、又はソフトウェアを実行できる他のプロセッサである。これにより、後処理分析では、変調シグネチャへのマッチングを識別できる。ハードウェアを用いてこの動作を実時間で実行する更に別の実施例では、トリガ発生器40を用いて、後処理分析を行う。この実施例において、プロセッサ32は、取込みメモリ36又は他のストレージからデータをトリガ発生器40に供給する。変調シグネチャに対するマッチングが見つかると、トリガ信号を用いて、蓄積心に関連したマーカを提供する。これは、
図10に示すように、メモリに直接トリガを書き込んで、又は、通信パス(図示せず)をプロセッサ32に戻して、実現できる。
【0042】
位相シグネチャ及びマグニチュード・シグネチャの両方を組合せて、被試験信号の特定の外観を見つけることができる。例えば、各比較器のトリガ信号をアンド処理して、位相シグネチャ・トリガをマグニチュード・トリガと組合せて、ロジック状態が合ったときに、結果としてのトリガ信号を発生できる。代わりに、位相シグネチャ・トリガ及びマグニチュード・シグネチャ・トリガのオア処理して、トリガを構成できる。
【0043】
更に別の実施例では、上述のシグネチャ・トリガを連続的に実現して、複雑なトリガを見つけることができる。第1トリガは、第1方法又は第1シグネチャを用い、続くトリガは、異なる方法又は異なるシグネチャを用いて、より複雑なシグネチャを含む被試験信号の一部を見つけることができるトリガ・システムを構成できる。
【0044】
変調シグネチャ・トリガは、シンボル・シーケンスにおけるシンボル・パターンの検索に有用である。最近のデジタル変調は、位相情報を用いてメッセージを伝送する。しかし、絶対的な位相及び絶対的なタイミングは、レシーバにとってはしばしば未知である。絶対的な位相及び時間を決定するために、固定のシンボル・パターンを見つけることは助けになる。本発明の実施例は、パターン検索を簡略化している。シンボル・パターン検索による通常のシンボルは、総ての位相パターンを準備し比較する必要がある。特に、変調形式がオフセット直角位相シフト・キーイング(OQPSK)又は同様な変調形式であると、従来のシンボル検索は、同相第1シンボル・シーケンス及び直角位相第1シンボル・シーケンスという2つの形式のデコードされたシンボル・シーケンスを探さなければならなかった。本発明の実施例は、半分のシンボルで所望シンボル・シグネチャを準備することで、半分のシンボル・シフトを扱っている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】実時間スペクトラム・アナライザの形式の従来の試験測定機器を示すブロック図である。
【
図2】マグニチュード・シグネチャを用いた変調シグネチャ・トリガを示す図である。
【
図3】信号及びシグネチャに理想的な比較を示す図である。
【
図4】個別のサンプリング・データ・ポイントに基づいた比較を示す図である。
【
図5】位相シグネチャを用いた変調シグネチャ・トリガを示す図である。
【
図6】被試験信号の位相値及び位相シグネチャの間の差を用いた変調シグネチャ・トリガを示す図である。
【
図7】更に、重み付け係数を与えるためにマグニチュード・シグネチャを提供する
図6に示す変調シグネチャ・トリガを示す図である。
【
図8】マグニチュード・シグネチャに基づく本発明の方法の実施例の流れ図である。
【
図9】位相シグネチャに基づく本発明の方法の実施例の流れ図である。
【
図10】後処理分析用のトリガ発生器の利用を示すブロック図である。
【0046】
10 実時間スペクトラム・アナライザ
20 入力プロセッサ
22 フィルタ
24 ミキサ
26 局部発振器
28 バンドパス・フィルタ
30 A/D変換器
31 直交プロセッサ
32 プロセッサ
34 表示器
36 取込みメモリ
40 トリガ発生器
52 マグニチュード・プロセッサ(信号入力手段)
54 シフト・レジスタ
56、80 マグニチュード・シグネチャ
58 検出器
60 比較器
62 位相プロセッサ(信号入力手段)
66 位相シグネチャ