(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板上に光学膜を形成する場合や、薄膜上に光学膜を形成する場合、さらには光学膜上に別の薄膜を形成する場合などにおいては、材料によっては薄膜間の密着力が弱く、膜が剥離してしまう虞がある。また、特許文献1に係る技術のようにスパッタ法では、イオンにより薄膜にダメージが加わってしまう虞がある。特許文献2には、特に、このような薄膜間の密着力を向上し、かつイオンによるダメージを低減し得る構成は開示されていない。
【0007】
なお、このような問題は、光学膜を形成する場合に限らず、任意の薄膜を形成する場合一般に存在する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、薄膜間の剥離を防止すると共に、イオンダメージのない薄膜を効率的に製造することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1の態様は、基板に薄膜を形成する成膜処理装置と、反応室内に供給される反応ガスを触媒体に接触させてラジカルを発生させ、当該ラジカルを基板に供給して当該基板の表面処理を行う表面処理装置とを備え、前記表面処理装置は、前記成膜処理装置の前又は後で基板の表面処理をするように設置され、前記表面処理装置は、
当該表面処理装置の一方面に設けられた開口部を封止し、着脱可能な扉と、前記反応室内に反応ガスを導入するガス導入手段と、
前記扉に設けられ、前記反応室内に設置された基板に対向配置されて通電により加熱される触媒体とを備え、
前記触媒体は、直線状に形成され、両端が前記扉の上部と下部にそれぞれ固定され、加熱された前記触媒体に前記反応ガスを接触させることによりラジカルを発生させ、当該ラジカルを、前記基板に供給することにより当該基板の表面処理を行うことを特徴とする成膜装置にある。
【0010】
かかる第1の態様では、表面処理により成膜処理装置で成膜される薄膜の密着力が向上するので、薄膜の剥離が防止される。かつ、スパッタ装置等を用いた場合に生じるイオンによるダメージが無い薄膜を製造できる。そして、このような薄膜を効率良く基板に形成することができる。
【0011】
特に、薄膜として光学膜を形成する場合、光学特性を低下させずに表面処理を行える。これにより、様々な種類の光学膜上に形成した他の薄膜の密着力を向上することができ、剥離が防止された薄膜を形成することができる。また、薄膜の剥離が防止され、かつ、イオンによるダメージが無い薄膜をより良好に製造できる。
さらに、扉を取り外し、触媒体を交換するなどの保守性が向上する。また、触媒体の両端部を扉の上部及び下部に固定するので、触媒体が安定している。これにより触媒体が他の部材等に絡むことなどを防止できる。
【0014】
本発明の第
2の態様は、
第1の態様に記載する成膜装置において、前記ガス導入手段は、前記反応ガスから生じたラジカルを前記反応室内に配置された基板の表面に均一に供給する
反応性ガス供給部を備え、前記反応性ガス供給部は、前記基板の外縁部及び基板の中央部分に対向配置されて反応性ガスを噴射する分配管を備えることを特徴とする成膜装置にある。
【0015】
かかる第
2の態様では、反応室に均一に反応性ガスを供給することができ、該反応性ガスが触媒体に接触して発生するラジカルを基板に対して均一に供給することができる。これにより、基板に表面処理をむらなく行うことができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する成膜装置において、
前記表面処理装置は、水素又はハロゲンを含む前記反応ガスを前記触媒体に接触させることにより水素ラジカル又はハロゲンラジカルを発生させ、当該水素ラジカル又はハロゲンラジカルを前記基板に供給することにより当該基板の表面の粗面化処理を行うことを特徴とする成膜装置にある。
【0017】
かかる第3の態様では、
水素ラジカル又はハロゲンラジカルにより基板の表面の粗面化処理を行うことができる。
【0020】
本発明の第
4の態様は、第
1〜第3の何れか一つの態様に記載する成膜装置において、前記扉の前記反応室の一部を構成する内面には、前記触媒体から放出される輻射の反射を防止する反射防止構造が設けられ、前記触媒体は、前記触媒体は、前記扉の前記内面に設けられた前記反射防止構造よりも前記基板側に配置されていることを特徴とする成膜装置にある。
【0021】
かかる第
4の態様では、基板が輻射で過熱されることを抑制し、基板の温度を好ましい温度範囲に制御し、良好な薄膜を形成することができる。
【0022】
本発明の第
5の態様は、第1〜第
4の何れか一つの態様に記載する成膜装置において、前記表面処理装置と前記成膜処理装置とを接続し、基板に表面処理及び成膜処理を連続的に行うことを特徴とする成膜装置にある。
【0023】
かかる第
5の態様では、インライン式の成膜装置が提供される。
【0024】
本発明の第
6の態様は、第1〜第
4の何れか一つの態様に記載する成膜装置において、前記表面処理装置と前記成膜処理装置とを搬送手段を介して接続し、基板に表面処理及び成膜処理を行うことを特徴とする成膜装置にある。
【0025】
かかる第
6の態様では、クラスタ式の成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、薄膜間の剥離を防止すると共に、イオンダメージのない薄膜を効率的に製造することができる成膜装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〈実施形態1〉
本発明の実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態のインライン式の成膜装置の構成を示す模式図である。
【0029】
インライン式の成膜装置1は、基板Sに対して所定の処理を行う複数の処理部を備える。具体的には、成膜装置1は、ロードロック室11と、加熱室12と、第1の成膜処理装置13と、表面処理装置14と、第2の成膜処理装置15と、アンロードロック室16を備え、これらがこの順でドアバルブ17を介して直列に接続されている。各室はそれぞれ独立に真空中で所定の処理を行うことが可能となっている。
【0030】
ロードロック室11は、図示しない真空ポンプが設けられ、ロードロック室11内を所定の真空度になるまで真空排気し、その真空度を保持することができるように構成されている。
【0031】
加熱室12は、図示しない真空ポンプが設けられ、加熱室12内を所定の真空度になるまで真空排気し、その真空度を保持することができる。そして、加熱室12には、図示しない加熱手段がその中央部に設けられ、加熱室12内に設置された基板Sを所定の温度まで昇温できるように構成されている。
【0032】
第1の成膜処理装置13及び第2の成膜処理装置15は、それぞれ基板が設置される基板設置部131、151と、各成膜手段が設置される成膜手段設置部132、152とからなる。基板設置部131、151と成膜手段設置部132、152とは、それぞれ開口が設けられ、これらの開口を介して両室は連通して成膜処理を行う成膜空間133、153を形成している。基板設置部131、151には図示しない真空ポンプが設けられ、第1の成膜処理装置13及び第2の成膜処理装置15の内部、即ち成膜空間133、153を所定の真空度になるまで真空排気し、その真空度を保持することができるように構成されている。
【0033】
成膜手段としては、公知の成膜手段を用いることができる。例えば、スパッタ法により成膜する場合には、ターゲット及びスパッタガス導入手段を設置して、成膜することができるように構成されている。また、CVD法により成膜する場合には、成膜ガス導入手段を設置して、成膜することができるように構成されている。
【0034】
アンロードロック室16は、図示しない真空ポンプが設けられ、アンロードロック室16内を所定の真空度になるまで真空排気し、その真空度を保持することができるように構成されている。
【0035】
表面処理装置14は、開口部を有し、内部に基板が設置される反応室141と、該反応室141の開口部を封止する封止扉142とを備えている。反応室141と封止扉142とで形成された表面処理空間143内には、表面処理手段が設置される。
【0036】
表面処理装置14には、図示しない真空ポンプが設けられ、表面処理装置14の内部、即ち表面処理空間143を所定の真空度になるまで真空排気し、その真空度を保持することができるように構成されている。
【0037】
表面処理手段は、所定の真空度に保持された反応室141内に反応ガスを供給し、反応室141内に設置された触媒体に当該反応ガスを接触させてラジカルを発生させ、当該ラジカルを基板Sに供給して基板Sの表面処理を行うものであるが、詳細については後述する。
【0038】
本実施形態のインライン式の成膜装置1は、基板Sを枠状の基板キャリア2によって略垂直に保持しながら、基板Sに対して処理を行う縦型搬送式の真空処理装置である。インライン式の成膜装置1には、ロードロック室11からアンロードロック室16に亘って、基板Sを搬送する第1搬送路21が設けられている。基板Sの搬送手段は特に限定されないが、例えば、第1搬送路21には、2本のレールが敷設されて、基板キャリア2が、このレール上を基板キャリア2底部に設けられた車輪で移動できるように構成されていてもよい。具体的には、基板キャリア2の下面はラックが設けられ、ロードロック室11、加熱室12、第1の成膜処理装置13、第2の成膜処理装置15及びアンロードロック室16にはモータの回転力で回転するピニオンギアが設けられているので、このラックとピニオンギアをかみ合わせて、モータの駆動力を基板キャリア2に伝達させて、基板キャリア2を搬送する。
【0039】
このような構成の成膜装置1により、基板Sは、基板Sは、第1搬送路21に沿って搬送され各処理が行われる。すなわち、基板Sは、ロードロック室11に搬入され、加熱室12で所定温度に加熱された後、第1の成膜処理装置13で所定の薄膜が形成され、表面処理装置14で当該薄膜に表面処理が行われ、第2の成膜処理装置15で、当該薄膜上に別の薄膜が形成される。そして、基板Sは、アンロードロック室16に搬入され、大気圧に調圧された後、成膜装置1の外部に搬出される。このように、一つの基板に対して連続的に複数の膜が形成されるため、効率良く基板に薄膜を形成することができる。
【0040】
ここで、
図2〜
図4を用いて表面処理装置14について詳細に説明する。
【0041】
図2に示すように、表面処理装置14は、反応室141と、封止扉142とを備えている。反応室141は、一方面に開口部144を有する凹形状に形成されている。また、反応室141の両側面には、第1の成膜処理装置13及び第2の成膜処理装置15の成膜空間133、153にそれぞれ連通して、基板Sの通路となる連通孔145が設けられている。
【0042】
封止扉142は、反応室141の開口部144を封止し、反応室141に着脱自在に設けられている。反応室141と封止扉142とで、基板Sが収納される表面処理空間143が形成されている。表面処理装置14には、この表面処理空間143内を真空に排気する真空ポンプ(特に図示せず)が接続されている。
【0043】
また、封止扉142の内面(反応室141の開口部144側の面)には、触媒体40から放出される輻射の反射を防止する反射防止構造146が全面に設けられている。この反射防止構造146の詳細については後述する。
【0044】
表面処理装置14には、表面処理空間143内に反応性ガスを供給するガス導入手段が設けられている。
【0045】
ガス導入手段は、反応性ガスが充填されたボンベ、供給圧調整器、流量調整器、供給/停止切換バルブ等(何れも図示せず)及び反応性ガスを基板Sに対して均一に供給する反応性ガス供給部30から構成されている。
【0046】
図3に、反応性ガス供給部30の構成を例示する。なお、
図3は、反応室141の正面図であるが、各構成物の関係を明示するため、反応室141と反応性ガス供給部30にはハッチングが施してある。
【0047】
反応性ガス供給部30は、反応室141の外部から内部に反応ガスの流路となる供給管31と、供給管31に連通して、基板Sに対向するように横向きの8の字状に形成された分配管32とから構成されている。分配管32には、特に図示しないが、分配管32内部の流路と外部とを連通する微小な噴射口が複数設けられている。
【0048】
このような構成の反応性ガス供給部30を設けることで、ボンベ等から供給された反応性ガスは、供給管31を介し、分配管32の噴射口から表面処理空間143内に供給される。
【0049】
本実施形態では、分配管32は、8の字状に形成され、基板Sの外縁部近傍だけでなく、基板Sの中央部分にも反応性ガスを噴射できるようになっている。これにより、表面処理空間143に均一に反応性ガスを供給することができ、該反応性ガスが後述する触媒体40に接触して発生するラジカルを基板Sに対して均一に供給することができる。
【0050】
反応性ガスとしては、水素を含むガス、例えばH
2ガス、PH
3(ホスフィン)ガス、B
2H
6(ジボラン)ガス、NH
3(アンモニア)ガスを用いることができる。また、ハロゲンを含むガス、例えば、NF
3ガス、CF
4ガス、C
3F
8ガス、C
2F
6ガス、F
2ガスを反応性ガスとして用いることもできる。
【0051】
また、
図2及び
図4に示すように、表面処理装置14は、表面処理空間143内に、触媒体40が配置されている。具体的には、触媒体40は、直線状に形成され、基板Sに対向するように封止扉142に取り付けられている。本実施形態では、基板S、分配管32、触媒体40の順に配置し、H字状に形成された触媒体40を用いた。
【0052】
H字状に形成された触媒体40の各端部は、上側の端部は、封止扉142に設けられた上側固定端子41に接続され、下側の端部は下側固定端子42にそれぞれ接続されている。
【0053】
上側固定端子41及び下側固定端子42は、図示しない直流電源又は交流電源が接続されている。触媒体40は、上側固定端子41及び下側固定端子42を介して電力の供給を受け、所定温度に加熱される。
【0054】
具体的には、触媒体40は通電加熱により、1000〜2000℃程度という高温に加熱される。触媒体40の材料としては高融点金属であるタングステンや、タンタル、イリジウム及びモリブデンからなる群から選択される何れか一つや、これらの合金が用いられる。他に、1000℃〜2000℃で溶融しない金属、例えば銅、鉄、ステンレス鋼、ニクロム等を用いることができる。
【0055】
このような構成の表面処理装置14では、ガス導入手段から反応性ガス供給部30を介して表面処理空間143内に反応性ガスが供給される。当該反応性ガスは、触媒体40に接触し、ラジカル化する。例えば、反応性ガスとして水素ガスを用い、触媒体40としてタングステンを用いた場合、通電により1000℃程度に加熱されたタングステンからなる触媒体40に接触した水素ガスは、活性化され、ラジカル化した水素が発生する。
【0056】
ラジカル化した水素は、基板Sに供給され、基板Sはラジカル化した水素により表面処理される。ここでいう水素ラジカルによる基板Sの表面処理とは、少なくとも、水素ラジカルにより基板Sに凹凸が形成されることをいう。
【0057】
すなわち、表面処理装置14では、基板Sは粗面化される。このようにラジカル化した水素などにより基板Sには凹凸が形成されて粗面化されるが、プラズマCVD装置やスパッタ装置で水素雰囲気による粗面化を行った場合よりも、基板Sに与えられるダメージは殆どない。これは、プラズマCVD装置やスパッタ装置では、イオンが発生し、これが基板Sにダメージを与えるからであり、本発明の表面処理装置14は、イオンが発生しないからである。
【0058】
このように、表面処理装置14では、基板Sにダメージを与えることなく粗面化をすることができる。
【0059】
ここで、成膜装置1は、上述したように、第1の成膜処理装置13の後、第2の成膜処理装置15の前に配置された表面処理装置14が基板Sの表面処理を行う。
【0060】
すなわち、表面処理装置14は、第1の成膜処理装置13で基板Sに形成された薄膜に対して表面処理が行われる。そして、第2の成膜処理装置15で、この表面処理が行われて粗面化した薄膜に別の薄膜が形成される。したがって、第2の成膜処理装置15は、粗面化されて接触面積が広くなった薄膜上に別途薄膜を形成するので、薄膜間の密着力が向上している。
【0061】
このようにインライン式の成膜装置1では、第1の成膜処理装置13及び第2の成膜処理装置15でそれぞれ形成する薄膜間の密着力を向上して薄膜の剥離を防止し、かつイオンによるダメージが無い薄膜を製造できると共に、一つの基板Sに対して連続的に複数の薄膜を形成できるので効率良く基板Sに薄膜を形成することができる。
【0062】
特に、薄膜として光学膜を形成する場合、表面処理装置14による表面処理は、光学特性を低下させる程の凹凸が形成されない。少なくとも、肉眼で認識できるほどの凹凸は形成されない。このように、光学特性を低下させずに凹凸を形成することができるので、様々な種類の光学膜上に形成した他の薄膜の密着力を向上することができ、薄膜の剥離を防止した薄膜を形成することができる。
【0063】
このような光学膜の材料に特に限定はないが、例えば、SiN、SiO、ITO、SnO
2、ZnOなどの反射防止膜、AlやAg等の金属系反射膜、アクリル系樹脂からなる薄膜、フォトレジストに用いる薄膜などの光学膜を表面処理の対象とすることができる。
【0064】
ここで、水素ラジカルを発生させるための触媒体40の温度は、1000℃程度であれば足りる。一方、成膜のためのガスを触媒体40で活性化させて成膜する場合においては、通常、1000℃よりも高い温度が必要となる。
【0065】
本発明に係る表面処理装置14は、触媒体40で水素ガスなどをラジカル化し、該ラジカルで表面処理を行うため、成膜は行わない。
【0066】
したがって、触媒体40の温度を最低限の温度にすることができる。触媒体40の寿命は、温度が低く熱疲労が小さいほど長いので、本発明の表面処理装置14は、触媒体40の寿命を長く保つことができる。これにより、装置のランニングコストを低く抑えることができる。
【0067】
さらに、仮に、成膜を行うためのガスを表面処理装置14に供給して成膜を行う場合は、分配管32が影となり、基板Sの分配管32に対向する領域には成膜し難いため、分配管32の位置・大きさ・範囲は相当制約される。しかしながら、成膜を行わずに表面処理を行う本発明に係る表面処理装置14では、基板Sに対向配置された分配管32の位置・大きさ・形状に影響されず、表面処理空間143の全体に亘って反応性ガスを行き渡らせることができ、該反応性ガスから触媒体40で水素ラジカルを発生させ、基板S全体に均一に供給できる。これにより、基板Sに表面処理をむらなく行うことができる。
【0068】
つまり、表面処理装置14では、分配管32の位置等は制約を受けることが無く、上述したような8の字状の分配管32を形成し、表面処理空間143全体に反応性ガスが行き渡るような設計上の自由度が向上する。
【0069】
また、本実施形態に係る表面処理装置14は、表面処理空間143を形成する封止扉142を反応室141に着脱自在とし、封止扉142に触媒体40を取り付けた。これにより、封止扉142を取り外し、触媒体40を交換するなどの保守性が向上する。また、封止扉142を取り外し、代わりに第1の成膜処理装置13の成膜手段設置部132を取り付けることで、表面処理装置14を別の成膜処理装置として転用することも容易に行うことができる。
【0070】
さらに、触媒体40を封止扉142に取り付けたことで、反応室141側に取り付けるよりも取り付けの自由度が向上している。また、触媒体40の両端部を封止扉142の上側固定端子41及び下側固定端子42に張った状態で固定したので、触媒体40が安定している。これにより触媒体40が他の部材等に絡むことなどを防止できる。
【0071】
また、上述したように、着脱式の封止扉142の内面には、触媒体40からの輻射の反射を防止する反射防止構造146が設けられている。これにより触媒体40からの輻射が封止扉142の内面を反射して基板Sが過剰に加熱することが防止される。
【0072】
これにより、基板Sの過熱を抑制し、基板Sの温度を好ましい温度範囲に制御し、良好な薄膜を形成することができる。
【0073】
ここで、反射防止構造146としては、触媒体40からの輻射を基板Sに反射させない構造であれば特に限定されない。次のような構造が挙げられる。例えば、封止扉142の内面をシリコン含有膜で覆う構造が挙げられる。シリコン含有膜によれば、触媒体40からの輻射を吸収するので、基板S側への反射を防止できる。また、反射防止構造146は、封止扉142の内面や、該内面に設けられたシリコン含有膜の表面に凹凸を設けた構造でもよい。これによれば、反射防止構造の内部において光路長を長くできるので、輻射をより効果的に吸収若しくは閉じ込めることができ、より確実に基板Sへの輻射の反射を防止できる。
【0074】
〈実施形態2〉
本発明の成膜装置はクラスタ式にも適用しても実施形態1に係る成膜装置と同様の作用効果を奏する。
【0075】
図5に示すように、本実施形態に係る成膜装置1Aは、ロードロック室50と、第1の成膜処理装置51と、表面処理装置52と、第2の成膜処理装置53と、これらロードロック室50、第1の成膜処理装置51、表面処理装置52及び第2の成膜処理装置53に基板Sを搬送すると共にロードロック室としての機能を兼ねる搬送室54と、を備えている。
【0076】
処理対象となる複数枚の基板Sが基板トレイ(図示せず)に略水平に保持されている。そしてこの基板トレイが基板キャリアに搭載された状態で成膜装置1Aに搬送される。つまり本実施形態の成膜装置1Aでは、基板トレイに略水平に保持された複数枚の基板Sに対して所定の処理が同時に行われる。
【0077】
ロードロック室50は、大気開放されており、搬送室54に次に供給される基板トレイが準備される。搬送室54には、搬送アームを有する搬送ロボット(図示せず)が設けられている。ロードロック室50から新たな基板トレイが供給されると、図示しない真空ポンプによって所定の真空度になるまで真空排気される。そして、その真空度が保持された状態で、第1の成膜処理装置51、表面処理装置52及び第2の成膜処理装置53の各装置に対して搬送ロボットにより搬送室54から基板トレイが搬送される。
【0078】
ロードロック室50、第1の成膜処理装置51、表面処理装置52及び第2の成膜処理装置53の各装置は、搬送室54の周囲に配され、ゲートバルブ55を介してそれぞれ搬送室54に接続されている。具体的には、ロードロック室50、第1の成膜処理装置51、表面処理装置52、第2の成膜処理装置53のそれぞれは、四角形の外形を有する搬送室54の各辺に対応してそれぞれ配置されている。例えば、本実施形態では、ロードロック室50、第1の成膜処理装置51、表面処理装置52及び第2の成膜処理装置53が、搬送室54の周囲に基板Sの処理順で配置されている。
【0079】
第1の成膜処理装置51及び第2の成膜処理装置53は、実施形態1の第1の成膜処理装置13及び第2の成膜処理装置15にそれぞれ対応するものであるので詳細な説明は省略する。
【0080】
図6を用いて、本実施形態に係る表面処理装置52について説明する。図示するように、表面処理装置52は、ポンプ等の真空排気手段61を備えた真空チャンバ62を有する。そして、真空チャンバ62内には、上面にヒーター等の加熱手段65が設けられた基板支持台64が設けられており、この加熱手段65上に第1の成膜処理装置51で形成された薄膜(図示なし)を有する基板Sが載置される。また、真空チャンバ62の天井部には、真空チャンバ62内に水素ガス(反応性ガス)を導入するシャワープレート等の水素ガス導入手段66が設けられている。そして、真空チャンバ62の上方には、水素ガス導入手段66と対向して、導入された水素ガスを接触させるように触媒体70が設けられている。この触媒体70によって、基板支持台64(ひいては基板S)と水素ガス導入手段66との間にラジカルを発生させるように構成されている。なお、触媒体70は、触媒体70が加熱されるように通電可能になっている。
【0081】
このような表面処理装置52で水素ラジカルを基板Sに供給するには、まず、基板支持台64上に設けられた加熱手段65上に基板Sを載置する。そして、加熱手段65により基板Sを所定温度に加熱する。また、真空排気手段61により真空チャンバ62内を所定の真空度まで排気すると共に、触媒体70に通電して触媒体70を所定温度に加熱する。そして、水素ガス導入手段66から水素ガスを真空チャンバ62内に導入し、水素ガスを触媒体70と接触させることにより水素ラジカルを発生させ、この水素ラジカルを基板S上に形成された薄膜に供給する。
【0082】
このように水素ラジカルを基板S上に供給することで、実施形態1と同様に、基板Sに設けられた薄膜上に凹凸を設けることができ、その後に第2の成膜処理装置53で形成される薄膜の密着性を向上させることができる。また、実施形態1と同様に、イオンによるダメージを与えることなく凹凸を基板Sに形成することができる。このように、本実施形態に係る成膜装置1Aによれば、基板Sにダメージが無く、かつ薄膜の密着性が向上した薄膜を、複数の成膜処理装置を用いて効率的に製造することができる。
【0083】
なお、第1の成膜処理装置51、表面処理装置52及び第2の成膜処理装置53の間で基板Sを搬送する構成としては、特に限定はない。本実施形態のように搬送ロボットであってもよいし、基板Sを搬送するコンベアであってもよい。
【0084】
〈実施形態3〉
本発明の成膜装置はインターバック式にも適用しても実施形態1に係る成膜装置と同様の作用効果を奏する。
【0085】
図7は、本実施形態に係るインターバック式の成膜装置の概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0086】
インターバック式の成膜装置1Bは、ロードロック室11と、加熱室12と、第1の成膜処理装置13と、表面処理装置14と、第2の成膜処理装置15とを備え、これらがこの順でドアバルブ17を介して直列に接続されている。各室はそれぞれ独立に真空中で所定の処理を行うことが可能となっている。
【0087】
成膜装置1Bの基板Sを搬送する搬送手段は次のように構成されている。成膜装置1Bには、ロードロック室11から第2の成膜処理装置15に亘って、基板Sを搬送する互いに平行な第1搬送路21及び第2搬送路22が設けられている。第1搬送路21が成膜手段設置部132、152側に設けられている。第2搬送路22は、実施形態1の第1搬送路22と同様の構成である。
【0088】
さらに、第2の成膜処理装置15には、基板キャリア2を第1搬送路21及び第2搬送路22間で移動させることができる経路変更手段(図示せず)が設けられている。即ち、第2の成膜処理装置15は、成膜室であると共に基板をトラバースするためのトラバース室としても機能するものである。経路変更手段は、例えば、基板キャリア2の外枠に設けられた突起部に経路変更手段のフック部を係合させ、その状態で基板キャリア2を安定支持して、基板キャリア2を第1搬送路21及び第2搬送路22間で平行移動させて搬送路を変更させることができるように構成されている。
【0089】
このような構成の成膜装置1Bにより、基板Sは、第1搬送路21に沿って搬送され各処理が行われる。すなわち、基板Sは、ロードロック室11に搬入され、加熱室12で所定温度に加熱された後、第1の成膜処理装置13で所定の薄膜が形成され、表面処理装置14で当該薄膜に表面処理が行われ、第2の成膜処理装置15で、当該薄膜上に別の薄膜が形成される。そして、基板Sは、一連の処理が実施された後、第2搬送路22に沿って搬出され、成膜装置1Bから取り出される。このように、一つの基板に対して連続的に複数の膜が形成されるため、効率良く基板に薄膜を形成することができる。
【0090】
〈他の実施形態〉
実施形態1〜実施形態3では、基板上に成膜された薄膜に対して表面処理を行ったが、これに限らず、最初に表面処理装置、次いで成膜処理装置で基板の処理を行うような構成としてもよい。すなわち、表面処理装置で基板に表面処理を施して凹凸を形成し、当該基板上に、薄膜を形成してもよい。この場合においても、基板との密着性が向上した薄膜を当該基板上に成膜することができる。
【0091】
また、上述した実施形態1〜実施形態3では、2つの成膜処理装置と1つの表面処理装置14とから構成されていたが、表面処理装置14が成膜処理装置の前、又は後において基板Sに表面処理を行えるならば、個数や配置に限定はない。また、第1の成膜処理装置13及び第2の成膜処理装置15で形成される薄膜の種類等に特に限定はない。任意の種別の薄膜を積層するに際して、一方の薄膜に表面処理を施して密着力を向上させる場合一般に、本発明を適用することができる。
【0092】
さらに、実施形態1及び実施形態3では、基板Sを垂直に配置した縦型のインライン式の成膜装置1及びインターバック式の成膜装置1Bについて説明したが、基板Sを水平に配置した横型のインライン式の成膜装置やインターバック式の成膜装置であっても同様の作用効果を奏する。