【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構から受託した省エネルギー・技術開発プログラム/革新的部材産業創出プログラム「革新的省エネセラミック製造技術開発」プロジェクト、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、低融点金属のろう付けを行なうと、得られる接合体の耐熱性や耐化学反応性が劣る傾向にある。ホットプレスを始めとする物理的圧着方法では、特殊な大型製造装置が必要となり、経済的に有利とは言えない。
【0008】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得るセラミックス接合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属元素又は半金属元素と非金属元素との化合物のセラミックスからなる被接合材間に、該化合物
と同組成の化合物の微粒子を含むシート状の成形体からなる接合材を配置し、かつ該被接合材と該接合材との間に、該金属元素
と同一の元素の単体又は半金属元素
と同一の元素の単体からなる層を配置して積層構造体を形成し、
該積層構造体に荷重を加えた状態で、該非金属元素の雰囲気下又は該非金属元素を含む化合物の雰囲気下に焼成を行なって該積層構造体を接合体となし、
前記接合体を、焼成時に加えた荷重と同等又はそれよりも低い荷重下に熱処理することを特徴とするセラミックス接合体の製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、金属元素又は半金属元素と非金属元素との化合物のセラミックスからなる被接合材間に、該化合物
と同組成の化合物の微粒子を含むシート状の成形体からなる接合材を配置し、かつ該被接合材と該接合材との間に、該金属元素
と同一の元素の単体又は該半金属元素
と同一の元素の単体と
、該非金属元素
と同一の元素の単体とを含む層を配置して積層構造体を形成し、
前記積層構造体に荷重を加えた状態で焼成を行なって該積層構造体を接合体となし、
前記接合体を、焼成時に加えた荷重と同等又はそれよりも低い荷重下に熱処理することを特徴とするセラミックス接合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、高い耐熱性及び耐化学反応性を有するセラミックス接合体を、ホットプレス炉等の大がかりな炉を用いることなく、目的とする接合体の組成に応じて、窒素雰囲気又は大気等の酸化雰囲気とした汎用の焼成炉を用いて容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の製造方法で用いられる被接合材であるセラミックスは金属元素又は半金属元素と非金属元素との化合物からなる。金属元素としては、セラミックスの形成可能なものであれば特に制限されず、例えばAl、Ti、Zr、Cr、Ta及びNbなどを用いることができる。これらの金属元素は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。半金属元素としても、セラミックスの形成可能なものであれば特に制限されず、例えばSi及びBなどを用いることができる。一方、これら金属元素又は半金属元素と化合物を形成する非金属元素としては、例えばC、N及びOなどが挙げられる。これら金属元素又は半金属元素と非金属元素との化合物の具体例としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化クロム、酸化タンタル、酸化ニオブ、シリカ(酸化ケイ素)、酸化ホウ素等の酸化物;窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物などが挙げられる。
【0014】
以上の各化合物はその種類によっては、異なる結晶系を有するものがあるが(例えばアルミナやチタニア等)、本発明においては、いずれの結晶系のものでも用いることができる。例えばアルミナにはαアルミナ、βアルミナ、γアルミナ等があるが、そのいずれをも用いることができる。また、前記の各化合物からなるセラミックスには、その安定性を高めることを目的として、他の化合物が含まれていてもよい。例えばセラミックスとして窒化ケイ素セラミックスを用いる場合には、助剤としてアルミナやイットリアを添加してもよい。
【0015】
前記の各化合物のセラミックスは、目的とするセラミックス接合体の用途に応じて種々の形状をとり得る。例えば直方体や立方体等の六面体、平滑な断面を有する円柱やパイプなどの形状をとり得る。尤も、接合すべき2つのセラミックスは、互いに面接触する部位を有していることが好ましい。当該部位を有していることで、接合部位におけるセラミックス接合体の強度を十分に高めることができる。
【0016】
被接合材である2つのセラミックスは、主材料が同じ化合物である限りにおいて同組成のものでもよく、あるいは異なる組成のものでもよい。
【0017】
本発明の方法を実施するには、被接合材である2つのセラミックスを、それらの接合面どうしが対向するように配置する。また、2つのセラミックス間に、該セラミックスを構成する化合物の微粒子を含むシート状成形体からなる接合材(以下「シート状接合材」とも言う。)を配置する。更に、各被接合材と接合材との間に、セラミックスを構成する化合物における金属元素単体又は非金属元素単体からなる層(以下、これらの層を総称して「金属層」とも言う。)をそれぞれ配置する。金属層の配置の態様には次の(イ)〜(ハ)の3種類がある。
(イ)各被接合材の接合面に、予め金属層を固着しておく態様。
(ロ)シート状接合材の各面に、予め金属層を形成しておく態様。
(ハ)被接合材及びシート接合材とは別に、独立した部材としての金属元素単体又は非金属元素単体からなる箔や、金属元素単体又は非金属元素単体の粉末を原料としたシート(以下、これらを総称して「金属箔」とも言う。)を、被接合材とシート状接合材との間に配置しておく態様。
【0018】
本発明においては、被接合材の形状や、接合面の広さ及び形状等に応じて、前記の(イ)〜(ハ)の1又は2以上の組み合わせを適切に採用することができる。(イ)及び(ロ)の態様を選択する場合、金属層は、例えば金属元素単体又は非金属元素単体の蒸着やスパッタリング等の各種真空薄膜形成手段や、金属箔の貼り付け等によって、被接合材の接合面や、シート状接合材の表面に固着することができる。
【0019】
金属層は、被接合材と接合材との接合性を高めるために用いられるものであり、後述する焼成によってセラミックスを構成する化合物へと変化する。この観点から、金属層の厚みは、前記の(イ)〜(ハ)のいずれの場合であっても、1〜500μm、特に2〜100μmであることが好ましい。
【0020】
シート状接合材は、被接合材を構成する化合物を主材料とする限りにおいて、被接合材であるセラミックスと同組成のものでもよく、あるいは異なる組成のものでもよい。また、シート状接合体は、長さ及び幅を有し、かつ長さ及び幅に比べて厚みが小さい二次元状の形状をしたものであり、その外形(輪郭)に特に制限はない。シート状接合体は、その全体が均一な厚みをもって被接合材の接合面を被覆することが重要である。
【0021】
シート状接合材を構成する化合物の微粒子は、その粒径が0.05〜10μm、特に0.1〜5μmであることが、低温での易焼結性と、焼結時の寸法収縮量の点から好ましい。この粒径は、例えば、JIS R1629に示されるレーザー回折・散乱方式の粒度分布測定方法によって測定される。
【0022】
上述したとおり、シート状接合材の厚みは均一であることが望ましい。またシート状接合材の厚みは、本発明によって得られる接合体の接合強度を十分に高くする観点から、20〜1000μm、特に50〜500μmであることが好ましい。
【0023】
シート状接合材は、2つの被接合材における接合面の全域を被覆するように配置されることが好ましい。尤も、本発明によって得られる接合体の接合強度が十分に高くすることができる限りにおいて、接合面の一部を被覆しない状態でシート状接合材が配置されてもよい。
【0024】
先に述べた(イ)〜(ハ)の態様のうち、(イ)及び(ハ)の態様では、シート状接合材は、被接合材を構成する化合物の粒子を含む成形体単独から構成される。これに対して(ロ)の態様の場合には、被接合材を構成する化合物の粒子を含むシート状の成形体の各面に金属層が配置された一体的な部材の態様となる。この部材を用いれば、被接合材の接合面に金属層を固着させておく必要がないので、製造が簡略化される。したがって、この部材は、2つのセラミックスからなる被接合材を接合するための接合用部材として有用である。
【0025】
被接合材、金属層、及びシート状接合材を配置して積層構造体を形成したら、この積層構造体に荷量を加えた状態で焼成を行なう。意外にも、本発明者らの検討の結果、積層構造体に加える荷重が極めて低くても、十分な接合強度を有する接合体が得られることが判明した。詳細には、積層構造体に加える荷重は、0.01〜0.5MPa、特に0.02〜0.1MPaという低荷重で十分である。したがって本発明によれば、装置の大型化や複雑化という不都合を回避することができる。この範囲よりも高荷重を積層構造体に加えることは何ら妨げられないが、この範囲よりも高荷重を加える場合には装置が大型化又は複雑化する傾向にあるので、積極的にこの範囲よりも高荷重を加える必然性はない。
【0026】
焼成の雰囲気は、被接合材のセラミックスを構成する化合物における非金属元素の雰囲気又は該非金属元素を含む化合物の雰囲気とすることができる。例えば被接合材のセラミックスを構成する化合物が酸化物である場合、焼成の雰囲気は、酸素(O
2)ガス雰囲気又は酸素ガスを含む雰囲気とすることができる。簡便には大気雰囲気を用いることができる。また、被接合材のセラミックスを構成する化合物が窒化物である場合、焼成の雰囲気は、窒素(N
2)ガス雰囲気若しくはアンモニア等の含窒素化合物ガス雰囲気又はこれらのガスを含む雰囲気とすることができる。
【0027】
焼成の雰囲気の圧力は、例えば酸素(O
2)ガス含有雰囲気として大気を用いる場合には、大気圧とすることができる。また、窒素ガスを用いる場合には、好ましくは0.1〜0.9MPa、更に好ましくは0.3〜0.9MPaとすることができる。
【0028】
焼成温度は、セラミックスの種類にもよるが、一般に700〜1850℃、特に1000〜1800℃とすることが好ましい。この温度範囲に到達するまで、室温から昇温速度0.5〜10℃/minで昇温を行なうことが好ましい。特に、温度が1000〜1200℃まで到達したら、昇温速度を高めて前記の焼結温度まで到達させることが好ましい。つまり、目的の焼成温度に到達するまで、昇温速度を2段階(低昇温速度とそれに引き続く高昇温速度)に調節することが好ましい。これによって、接合部位において、金属層と非金属元素との反応(例えば酸化や窒化)が進行して、接合強度が高まるので好ましい。この昇温速度は、室温からの昇温速度よりも高いことを条件として、3〜10℃/minとすることが好ましい。
【0029】
また、低昇温速度の段階と、それに引き続く高昇温速度の段階とで、焼成の雰囲気が異なるようにしてもよい。例えば低昇温速度の段階よりも、高昇温速度の段階の方が、雰囲気の圧力が高くなるようにすることができる。こうすることで、例えば、低昇温速度の段階で生成した反応生成物が、高温で再分解するのを抑制できるという有利な効果が奏される。
【0030】
焼成時間は、1〜3時間、特に2〜3時間とすることが好ましい。これらの条件で焼成を行なうことで、2つの被接合材を容易にかつ確実に固相接合することができる。
【0031】
前記の焼成によって、2つの被接合材が接合されてなるセラミックス接合体が得られる。この接合体を次いで熱処理に付す。熱処理は、接合体における固相接合部位の焼結を更に進行させ、接合強度を一層高める目的で行われる。したがって、本熱処理は焼成時と同等又はそれよりも低い荷重下に行われる。低荷重下に熱処理を行なえることは、装置の大型化や複雑化を招来しない点から有利である。ここで言う「焼成時よりも低い荷重」とは無荷重の状態も含む。
【0032】
熱処理は、先に説明した焼結から引き続き行ってもよく、あるいは焼結の終了後、接合体を所定の温度、例えば室温まで冷却した後に行ってもよい。熱処理の雰囲気は、一般には、焼結と同様の雰囲気で熱処理を行なうことで、満足すべき結果が得られる。
【0033】
熱処理の温度は、セラミックスの種類にもよるが、1300〜1900℃、特に1500〜1800℃に設定することが、固相接合部位の焼結を一層進行させる観点から好ましい。また、熱処理の温度は、先に説明した焼結の温度との関係で、焼結の温度よりも高くすることが、拡散及び粒成長による接合材と被接合材との一体化の点から好ましい。この場合、焼結の温度をT
0とし、熱処理の温度をT
1としたとき両者はT
0≦T
1の関係にあることが好ましい。同様の理由によって、熱処理の時間は2〜12時間、特に4〜12時間であることが好ましい。
【0034】
このようにして、目的とするセラミックス接合体が得られる。この接合体は、被接合材であるセラミックス単体で測定されたJIS R1601による室温での四点曲げ強度の約25%〜約75%という高い接合強度を有するものとなる。また、得られた接合体においては、被接合材どうしの接合部位に異種元素が実質的に存在しないので、耐熱性や耐化学反応性が高いものとなる。
【0035】
以上の製造方法の別法として以下に述べる方法を採用することもできる。まず、金属元素又は半金属元素と非金属元素との化合物のセラミックスからなる被接合材間に、該化合物の微粒子を含むシート状の成形体からなる接合材を配置する。この操作までは、上述の製造方法と同様である。次に、被接合材と接合材との間に、前記の金属元素単体又は半金属元素単体と、非金属元素単体とを含む層を配置して積層構造体を形成する。例えば被接合材を構成するセラミックスが炭化ケイ素(SiC)セラミックスである場合には、接合材として、炭化ケイ素の微粒子を含むシート状の成形体を用い、該接合材と被接合材との間に、ケイ素単体及び炭素単体を含む層を配置する。一例として、ケイ素単体の粉末と炭素単体の粉末との混合粉末を配置することができる。
【0036】
なお、金属元素又は半金属元素と非金属元素との化合物の微粒子を含むシート状の成形体からなる接合材の各面に、該金属元素単体又は該半金属元素単体と該非金属元素単体とを含む層が配置されてなる部材は、これを単独で取り扱うことができる一体的な部材の態様となる。したがって、この部材は、2つのセラミックスからなる被接合材を接合するための接合用部材として有用である。
【0037】
このようにして積層構造体が形成されたら、積層構造体に荷重を加えた状態で焼成を行なって該積層構造体を接合体となす。上述の製造方法では、焼成時の雰囲気中から反応物(例えば酸素や窒素)が供給されるが、本製造方法においては、被接合材と接合材との間に反応物が予め準備されているので、焼成時の雰囲気はアルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0038】
焼成によって、前記のケイ素単体の粉末と炭素単体の粉末との混合粉末の反応が生じて炭化ケイ素が生成する。これとともに、生成した炭化ケイ素が、被接合材と接合材との接合を促進させる。その後は、上述の製造方法と同様に、焼成時に加えた荷重と同等又はそれよりも低い荷重下に熱処理を行なう。この熱処理も、不活性ガス雰囲気下で行なうことができる。
【0039】
前記の焼成を行なう場合の温度条件及び荷重は、上述の製造方法と同様とすることができる。熱処理の温度条件も、上述の製造方法と同様とすることができる。
【0040】
本製造方法で得られたセラミックス接合体も、上述の製造方法で得られたセラミックス接合体と同様に、被接合材であるセラミックス単体で測定されたJIS R1601による室温での四点曲げ強度の約25%〜約75%という高い接合強度を有するものとなる。また、得られた接合体においては、被接合材どうしの接合部位に異種元素が実質的に存在しないので、耐熱性や耐化学反応性が高いものとなる。
【0041】
このようにして得られたセラミックス接合体は、例えばヒーターチューブや熱電対用保護管、ロータリーキルン用炉芯管、ローラーハースキルン用ローラー等の焼成炉部材や、内張り材、ライナー、撹拌羽根材、搬送用ローラー等の耐摩耗性機械装置部材、薬品やスラリー等搬送用パイプ部材等の多くの用途に有用である。
【0042】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば上述の説明では、理解の助けとするために2つの被接合材の接合を例に挙げたが、被接合材の接合個数はこれに限られず、1回の製造工程において3つ以上の被接合材を同時に接合してもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0044】
〔実施例1〕
被接合材として、市販の高純度アルミナセラミックス(Al
2O
3純度 99.5%以上、気孔率1%以下)を用いた。この被接合材は、長さ35mm、幅35mm、厚さ2.5mmの板状のものであった。この被接合材の一面に、真空蒸着によって、金属アルミニウムからなる層を固着した。層の厚みは3μmとした。接合材として、市販の低温焼結性高純度αアルミナ粉体(一次粒子径0.1μm)を、ドクターブレード法により成形し、厚さ50μmにしたシート状の接合材を用いた。この接合材の寸法は、長さ35mm、幅35mmであった。
【0045】
図1(a)に示すように、2つの被接合材10A,10Bを、それらのアルミニウム蒸着面11A,11Bどうしが対向するように配置し、かつ両接合材10A,10B間にシート状の接合材12を配置して、適当な圧力で圧着することで、
図1(b)に示す積層構造体20を得た。この積層構造体20を焼成炉内に設置し、その上に重りを載置して0.02MPaの荷重を加えた。焼成の温度プログラムは次に示すとおりとした。すなわち、大気下に室温から1100℃まで1℃/minの速度で昇温を行った。温度が1100℃に達したら、昇温速度を5℃/minに高めて引き続き昇温を行い1550℃まで加熱した。この温度を2時間保持して焼成を行った後、5℃/minの速度で降温を行い室温まで冷却した。このようにしてアルミナセラミックス接合体1を得た。
【0046】
次いで、
図1(c)に示すように、焼成炉内において、重りによって0.02MPaの荷重を加えたアルミナセラミックス接合体1を、大気下に室温から5℃/minの速度で昇温を行い1600℃まで加熱した。この温度を12時間保持して熱処理を行った後、5℃/minの速度で降温を行い室温まで冷却した。このようにして実施例1のアルミナセラミックス接合体lを得た。
【0047】
このようにして得られたアルミナセラミックス接合体について、接合面が中央部に位置するように研削加工により試験片を切り出した。この試験片を用い、JIS R1601による室温での四点曲げ強度による接合強度の測定を行ったところ、96MPaの接合強度を示した。被接合材であるアルミナセラミックス単体の四点曲げ強度は384MPaである。
【0048】
〔実施例2〕
被接合材として、市販の窒化ケイ素セラミックス(助剤としてY
2O
3及びAl
2O
3を含有する。)を用いた。この被接合材は、長さ20mm、幅20mm、厚さ20mmのブロック状のものであった。
【0049】
これとは別に、被接合材と同じ成分組成になるように、市販の窒化ケイ素粉末(平均粒径0.5μm)にイットリアとアルミナの各粉末を添加した混合粉末を調製し、この混合粉末をドクターブレード法によって厚さ100μmに成形しシート状の接合材を得た。この接合材の各面に、市販の金属シリコン粉末(平均粒径1.5μm)をドクターブレード法によって厚さ50μmに成形し、3層構造のシート状の接合用部材を得た。このシート状接合用部材の寸法は、長さ20mm、幅20mmであった。
【0050】
2つの被接合材の接合面どうしを対向させ、かつその間にシート状接合用部材を配置した。そして、適当な圧力で圧着することで、積層構造体を得た。この積層構造体を焼成炉内に設置し、その上に重りを載置して0.02MPaの荷重を加えた。焼成の温度プログラムは、0.1MPaの窒素雰囲気下で、室温から10℃/minの速度で昇温を行い1200℃まで加熱して、この温度で2時間保持した後、炉内の窒素雰囲気圧力を0.9MPaに変更し、10℃/minの速度で更に昇温を行い1800℃まで加熱した。この温度を6時間保持して熱処理を行った後、5℃/minの速度で降温し室温まで冷却した。このようにして窒化ケイ素セラミックス接合体を得た。
【0051】
次いで、焼成炉内において、重りによって0.02MPaの荷重を加えた窒化ケイ素セラミックス接合体を、大気下に室温から10℃/minの速度で昇温を行い1800℃まで加熱した。この温度を6時間保持して熱処理を行った後、5℃/minの速度で降温を行い室温まで冷却した。このようにして実施例2の窒化ケイ素セラミックス接合体を得た。
【0052】
得られた窒化ケイ素セラミックス接合体について、接合面が中央部に位置するように研削加工により試験片を切り出した。この試験片を用い、JIS R1601による室温での四点曲げ強度による接合強度の測定を行ったところ、560MPaの接合強度を示した。被接合材である窒化ケイ素セラミックス単体の四点曲げ強度は750MPaである。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1において、被接合材の接合面に、金属アルミニウムからなる層を固着させなかった。これ以外は実施例1と同様の操作を行った。しかし、被接合材であるアルミナセラミックスどうしを接合させることはできなかった。
【0054】
〔比較例2〕
実施例2において、窒化ケイ素粉末にイットリアとアルミナの各粉末を添加した混合粉末からなるシート状の成形体の各面に、金属シリコン粉末からなる層を形成しなかった。これ以外は実施例2と同様の操作を行った。しかし、被接合材である窒化ケイ素セラミックスどうしを接合させることはできなかった。