(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナノ繊維層が、前記微孔膜のサイズ等級と同一であるかこれより大きいサイズ等級を有し、および圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのイソプロピルアルコール(IPA)について、20秒〜200秒のIPA流下時間を特徴とし、
前記微孔膜が、0.206MPaを超えるバブルポイント、および圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのイソプロピルアルコールについて、500秒を超えるIPA流下時間を特徴とし、
前記フィルタ部材は、前記ナノ繊維層に積層された不織支持体をさらに含み、および圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのIPAについて、前記微孔膜単独でのIPA流下時間を100秒より上回ることがないIPA流下時間を特徴とし、
前記ポリマー系ナノ繊維の直径が50ナノメートル〜200ナノメートルの範囲であり、並びに
0.1%(wt/wt)〜0.3%(wt/wt)の界面活性剤を含む液体中の約25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する前記フィルタ部材の粒子保持能が、単層膜のカバレッジ1%〜単層膜のカバレッジ30%のフィルタ部材上での被験粒子カバレッジで、同一条件下での前記約25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する前記微孔膜単独での液体粒子保持能よりも大きい、
請求項1に記載のフィルタ部材。
前記被験液体が、0.1%(w/w)Triton X−100水溶液であり、前記被験液体中でのフィルタ部材の液圧降下が、室温にて流量30ミリリットル/分で、前記被験液体中の微孔膜単独での前記圧力降下よりも0%から15%少なく、並びに
前記被験粒子カバレッジが、単層膜のカバレッジ1%〜単層膜のカバレッジ5%であり、および0.1%(wt/wt)〜0.3%(wt/wt)の界面活性剤を含む前記液体が、0.1%(w/w)Triton X−100を含む液体である、
請求項7に記載のフィルタ部材。
【発明を実施するための形態】
【0021】
さまざまな組成物および方法について説明するが、本発明は、ここに記載の特定の分子、組成物、デザイン、方法論またはプロトコルに限定されるものではなく、これらを変更してもよい旨を理解されたい。また、以下の説明で用いる用語は特定の態様または実施形態を説明するだけのためのものであって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかに示される場合を除いて、複数の同じものをも含み得ることに注意されたい。よって、たとえば、「ナノ繊維」といえば、1つ以上のナノ繊維ならびに当業者間で周知の等価物を示す。別途定義しない限り、本明細書で用いる技術用語および科学用語はいずれも、当業者に一般に理解されるものと同じ意味である。本明細書に記載のものに類似または等価な方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験に使用可能である。本明細書で言及した刊行物についてはいずれも、その内容全体を援用する。本明細書に記載のいかなる事項も、従来の発明を理由として本発明がそのような開示に先行する権利を持たない旨を認めるものと解釈されるべきではない。「任意の」または「任意に」とは、そのあとに記載される事象または状況が生じることもあれば生じないこともあり、その記載に当該事象が生じ例と生じない例を含むことを意味する。本明細書における数値はいずれも、明示の有無を問わず、「約」という表現によって修飾可能なものである。「約」という表現は、通常、表記の値と等価(すなわち、同じ機能または結果を有する)であると当業者がみなすであろう数の範囲を示す。いくつかの実施形態では、「約」という表現は提示された値の±10%を示し、他の実施形態では、「約」という表現が提示された値の±2%を示す。組成物および方法について、さまざまな成分またはステップを「含む(comprising)」(「含む(including)がこれに限定されるものではない」を意味するように解釈される)という表現で説明されるが、この組成物および方法は、さまざまな成分およびステップ「から本質的に構成される(consist essentially of)」か、「からなる(consist of)」ことが可能であり、そのような言い回しは、本質的にクローズドな構成要素群またはクローズドな構成要素群を定義するものとして解釈されるべきである。
【0023】
フォトレジスト濾過では、ナイロン微孔膜フィルタを用いると良好な濾過性能が得られ、短絡欠陥も少ない。集積回路の線幅が幅方向に小さくなり続けているので、より小さな粒子に対する高効率のフィルタが必要とされている。さらに小さな粒子に対する保持能を持つフィルタを提供しようとするひとつの試みに、ナイロン膜を
サイズ等級がさらに小さな第2の微孔膜層と併用することがある。超高分子量のポリエチレン膜を使用して、このようなフィルタを構成することが可能である。このタイプの複合材料フィルタの濾過効率は高いが、それに対応して圧力降下/流れの制約も大きくなる。理論に拘泥されるものではないが、圧力降下が大きくなるのは、ナイロン微孔膜フィルタ層の非多孔質部分が、下にある微孔超高分子量ポリエチレン膜の孔に重なることによるものと考えられている。
【0024】
歴史的に、液体から粒子を除去するための方法は、除去対象となる粒子の
サイズ等級に孔径が近いフィルタ濾材を用いるものであった。よって、0.1ミクロンの粒子を液体から除去するには、一般に
サイズ等級が0.1〜0.2ミクロン未満の膜を使用していた。50ナノメートル(nm)の粒子を除去するには、
サイズ等級が100nm未満のフィルタ濾材、たとえば75nm〜50nm前後またはそれ未満のフィルタ濾材を用いることが可能である。これは、液体流からサブミクロンレベルの粒子を除去する上で一般的になされていることである。これは、空気流やガス流で普通になされる、フィルタの孔径が通常は除去対象となる粒子の
サイズよりも少なくとも十倍大きいのとは異なっている。現在向こう数年でゲート長を30ナノメートルまで小さくすることが想定されている半導体の製造時には、加工用の液体化学物質や他の洗浄液からの25ナノメートルを超える粒子の除去が、半導体の収率を決める鍵になる。
【0025】
液体からの粒子の濾過に用いられている従来のひとつの微孔膜に、平均実測バブルポイントベースで
サイズ等級が10nm〜50nmなどの対称UPE(UPEは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とも呼ばれる)微孔膜がある。これらの微孔膜には、
サイズ等級が実測バブルポイントベースで100nmなどの微孔膜に比して孔径が小さいことで、流れすなわち流下時間の高さに若干の制約がある。
サイズが小さめの微孔膜の流れの制約を相殺するために、流動損失を減らして高い粒子保持率を保つ非対称の孔径または
サイズ等級分布を有するUPE微孔膜が開発されている。非対称微孔膜は、膜の大きめの孔や開放部分での液体の流れを改善しつつ、膜の小さめで締まった孔の部分で粒子を除去する。これらの非対称微孔膜では、液体流からの良好な25ナノメートル粒子除去効率が得られる。
【0026】
本発明者らは、液体濾過の場合、多孔質ナノ繊維層と微孔膜との組み合わせを使用して、小アスペクトの粒子、たとえば0.144ミクロン以下の粒子、0.1ミクロン以下の粒子、0.055ミクロン以下の粒子、場合によっては30ナノメートル以下の粒子、さらに別の場合は、約21nm〜24nmとアスペクトの大きい粒子で、微孔膜単独の場合と比して圧力降下を実質的に同一または抑えて、保持能がさらに大きい多孔質フィルタ部材を得られることを発見した。この微孔膜と多孔質ナノ繊維層との組み合わせによって、微孔膜単独と比して、場合によってはこれに附随する圧力降下の増大や流下時間の延長を伴うことなく、粒子保持能が改善される。
【0027】
図1は、微孔膜30との間にナノ繊維層20が介在した不織多孔質支持層10と、第2の不織多孔質支持層40とを示すフィルタ部材の分解図である。フィルタ部材では、層同士が互いに接触して単一のフィルタ部材を形成する。層の厚さは一定の縮尺で示したものではない。本発明のいくつかの態様では、微孔膜の孔構造が非対称であり、最大の孔を有する微孔膜の側面が、積層されたナノ繊維層と対向または接触している。層には、プリーツがあってもよい。
【0028】
図2Aは、第1の多孔質支持層またはドレナージ層204と、多孔質支持層204に積層された微孔膜208と、微孔膜208に積層されたナノ繊維層212と、ナノ繊維層212に積層された不織多孔質支持層216と、不織多孔質支持層216に積層された第2の多孔質支持層またはドレナージ層220と、を有する本発明の一態様を示す図である。本発明のいくつかの態様における層には、プリーツがあってもよい。
図2Bは、2つ以上のナノ繊維層を含む本発明の一態様を示す図である。
図2Bにおいて、フィルタ部材は、第1の支持層またはドレナージ層230と、支持層またはドレナージ層230に積層された微孔膜234と、微孔膜234に積層された第1のナノ繊維層238と、第1のナノ繊維層238に積層された第1の不織層242と、第1の不織層242に積層された第2のナノ繊維層246と、第2のナノ繊維層246に積層された第2の不織層250と、不織層250に積層された第2の支持層またはドレナージ層254と、を有する。ナノ繊維層212、238、246は、ナノ繊維(図示せず)のサブ層で独立に構成されるものであってもよい。本発明のいくつかの態様における層には、プリーツがあってもよい。
図2Aおよび
図2Bに示す層の厚さは、一定の縮尺で示したものではない。
【0029】
本発明の一態様は、微孔膜に積層されたポリマー系ナノ繊維の層を含む液体フィルタ部材であり、被験液体中でのフィルタ部材の液圧降下が、被験液体中での微孔膜の液圧降下と実質的に同一であるか、あるいはその液圧降下未満である。フィルタ部材は、界面活性剤の存在下にて、場合によってはふるい条件または本質的にふるい条件下で、被験粒子に対して粒子保持能を有し、これは被験粒子に対する微孔膜の同じ試験条件下での粒子保持能より大きい。ナノ繊維層は、本発明のいくつかの態様で被験粒子より
サイズ等級が大きいものとして特徴付けられ、また、ナノ繊維層は、フィルタ部材の被験粒子単層膜被覆率が大きくなるにつれて、被験液体中での界面活性剤の存在下で全体としての粒子保持能が増していく。本発明のいくつかの態様は、ナノ繊維層用の多孔質支持体をさらに含み、微孔膜に積層されたポリマー系ナノ繊維の層が多孔質支持体と微孔膜との間に位置決めすなわち、両者間に介在している。本発明のいくつかの態様では、微孔膜が、サイズ分布または構造が非対称の孔を有し、微孔膜の非対称性については、微孔膜断面のSEM画像から判断することが可能である。
【0030】
本発明の態様では、フィルタ部材におけるさまざまな多孔質層および微孔層のバブルポイントまたは
サイズ等級を、ほぼ同一あるいは、微孔膜から始まって外側の多孔質支持層に向けて移動するにつれて層ごとに下がるようにすることができる。本発明のいくつかの態様では、微孔膜から始まって外側の多孔質支持層に向けて移動するにつれて層ごとに、フィルタ部材におけるさまざまな層のバブルポイントを下げることが可能であり、
サイズ等級は次第に大きくなる。たとえば
図2Bに示すように、微孔膜234のバブルポイントを最大にすることが可能であり、ナノ繊維層238のバブルポイントを微孔膜234のバブルポイントより低くでき、不織層242のバブルポイントをナノ繊維層238のそれより低くできるといった具合である。フィルタ部材における各層のバブルポイントについては、層を分離して好適な液体中で各々のバブルポイントを測定することで、判断可能である。
【0031】
本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層は、厚さ約5ミクロン〜10ミクロンであればよく、ナノ繊維層のIPAバブルポイントまたはこれと同等のものによる
サイズ等級は、約0.2ミクロン以下であり得る。ナノ繊維層の
サイズ等級は、ほぼ除去対象となる粒子より大きいものであってもよく、IPAバブルポイントによって判断可能なものである。たとえば、25ナノメートルの粒子を除去する場合、ナノ繊維層の
サイズ等級は約200nm〜約250nmであり得る。このナノ繊維層または同様のナノ繊維層と、HFE 7200バブルポイントまたは同等のもので測定した規定
サイズ等級が5nmまたは10nmの非対称膜、たとえば非対称UPE微孔膜とを組み合わせると、同様の試験条件下で単にUPE微孔膜単独の場合よりも25nmの粒子保持能が改善される。また、このナノ繊維層または同様のナノ繊維層と、IPAバブルポイントまたはこれと同等のものによる規定
サイズ等級が3nmまたは5nmの非対称微孔膜、たとえばUPE微孔膜とを組み合わせることで、同様の試験条件下でUPE微孔膜単独の場合よりも25nmの粒子保持能が改善される。この保持能の改善は、ナノ繊維層の大きな
サイズ等級を考慮すると、完全に想定外である。本発明の他の利点として、粒子保持能の改善とともにフィルタ部材を介した圧力降下の減少がある、あるいは圧力降下の有意な増加がない点があげられる。同様の粒子保持能または改善された粒子保持能を有する本発明のフィルタ部材のいくつかの態様では、ナノ繊維と微孔膜との組み合わせについての圧力降下が、微孔膜単独で測定した圧力降下よりも、約0%〜15%小さく、他の態様では約0%〜10%小さく、さらに他の態様では0%〜5%小さい。同様の粒子保持能または改善された粒子保持能を有する本発明のフィルタ部材のいくつかの態様では、ナノ繊維と微孔膜との組み合わせについての圧力降下が、フィルタ部材における微孔膜単独での圧力降下の±15%以内である。同様の粒子保持能または改善された粒子保持能を有するフィルタ部材の他の態様では、ナノ繊維と微孔膜との組み合わせについての圧力降下が、フィルタ部材における微孔膜単独での圧力降下の±10%以内である。同様の粒子保持能または改善された粒子保持能を有するフィルタ部材のさらに他の態様では、ナノ繊維と微孔膜との組み合わせについての圧力降下が、フィルタ部材における微孔膜単独での圧力降下の±5%以内である。界面活性剤を用いる場合に(本質的にふるい条件またはふるい条件)pH6〜pH7、界面活性剤または湿潤剤(非ふるい条件)を使用しない場合であればpH6〜pH8の範囲の濾過液体中、同様の粒子保持能または粒子保持能の改善ならびに圧力降下の減少が、本発明者らによって観察された。
【0032】
ドレナージ層、たとえば
図2Aの層204および220は、フィルタ部材の他の層に用いられるさまざまなポリマーで作られるポリマーネットであってもよい。ドレナージ層の
サイズ等級は、隣接する層の
サイズ等級と同一であるか、これよりも大きい。一実施形態では、ドレナージ層がポリエチレンで作られ、このようなネットはDelstar,Delewareから入手可能である。
【0033】
本発明の一態様は、バブルポイント測定によって判断した場合に、規定された0.01ミクロン〜0.1ミクロンの微孔膜を含むフィルタ部材であり、場合によっては、微孔膜のイソプロピルアルコールのバブルポイントが30ポンドパースクエアインチ(psi)を上回るか、206,000パスカル(0.206MPa)を上回る。本発明の態様では、微孔膜はさらに、圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのIPAについて、IPA流下時間が500秒を超え、場合によっては500秒〜6500秒の範囲であることを特徴とする。フィルタ部材は、不織多孔質支持体の表面にナノ繊維層を有する不織多孔質基材または不織多孔質支持体を含み、ナノ繊維層のナノ繊維は、エレクトロスピニングによって不織多孔質支持体上に形成され、直径が25ナノメートル〜250ナノメートルの範囲であり、場合によっては直径50ナノメートル〜200ナノメートルの範囲である。ナノ繊維層は、圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのIPAについて、イソプロピルアルコール(IPA)流下時間が20秒〜200秒であることを特徴とする。ナノ繊維層の
サイズ等級は、IPAバブルポイント測定またはこれと等価なもので測定した場合に、0.01ミクロン〜0.5ミクロン、場合によっては0.1ミクロン〜0.3ミクロンであり得る。フィルタ部材流下時間は、圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのIPAについて、微孔膜の流下時間の100秒以内である。フィルタ部材は、単層膜のカバレッジ10%以上、いくつかの態様では単層膜のカバレッジ10%〜単層膜のカバレッジ30%で、0.3wt%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)界面活性剤を用いて、約25ナノメートルのDuke Scientific G−25蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する液体粒子保持能が、同一条件下での25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する微孔膜の液体粒子保持能と実質的に同一またはフィルタ部材の液体粒子保持能のほうが大きくなるようなものである。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層が不織支持体と微孔膜との間に介在する。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層が、微孔膜のポリマー組成物とは異なるポリマー組成物を含むか、そのようなポリマー組成物からなるものであるため、水性被験液体中でのナノ繊維層のゼータ電位と微孔膜層のゼータ電位が異なっている。本発明のいくつかの態様では、微孔膜がUPEで製造され、ナノ繊維層がナイロン材料であり、不織支持体がナイロン材料である。
【0034】
ナノ繊維層と微孔膜とを含むフィルタ部材は、被験液体からの単層膜のカバレッジ1%〜単層膜のカバレッジ5%で、粒子および0.1%wt/wtのTriton X−100界面活性剤を用いて、約25ナノメートルのDuke Scientific G−25蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する液体粒子保持能が、同一条件下にて同じ25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対して、微孔膜単独の液体粒子保持能と実質的に同一またはこれより大きいものであり得る。フィルタ部材は、微孔膜単独よりも圧力降下が小さい。本発明のいくつかの態様では、フィルタ部材は、被験液体から単層膜のカバレッジ1%で((0.1%(w/w)Triton X−100界面活性剤を用いて)約25ナノメートルのDuke Scientific G−25蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する液体粒子保持能が、同一条件下にて同じ25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する微孔膜単独の液体粒子保持能よりも5%以上大きく、フィルタ部材は、被験液体から単層膜のカバレッジ5%で(0.1%(w/w)Triton X−100界面活性剤を用いて)約25ナノメートルのDuke Scientific G−25蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する液体粒子保持能が、同一条件下にて同じ25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する微孔膜の液体粒子保持能よりも25%以上大きい。このフィルタ部材は、微孔膜単独よりも圧力降下が小さい。
【0035】
本発明の一態様は、Entegrisから入手した10ナノメートルのUPE微孔膜と、ナノ繊維層(ナイロンナノ繊維直径60ナノメートル〜150ナノメートル、厚さ5ミクロン、Finetexによって形成される重量ベース2g/m
2)を有する多孔質不織支持体(Asahi−kasei(旭化成)NO5040)とを組み合わせたものである。ナノ繊維は、旭化成から供給される基材上にエレクトロスピニングして、Finetexによって形成される。
【0036】
本発明の態様は、微孔濾過膜と隣接するポリマー系ナノ繊維を含む少なくとも1つのナノ繊維層を含むフィルタ部材を含み、ナノ繊維層におけるナノ繊維の一部が、微孔膜の孔の一部の上に積層される。ナノ繊維層は多孔質であり、粒子の単層膜のカバレッジが単層膜約1%〜30%で、ふるい粒子保持能または非ふるい粒子保持能が、特定
の粒子サイズに対する微孔膜単独でのふるい粒子保持能または非ふるい粒子保持能よりも小さい。フィルタ部材の微孔膜とナノ繊維層とを組み合わせることで、ナノ繊維層または微孔膜のいずれかが単独である場合のふるい粒子保持能または非ふるい粒子保持能より大きい粒子保持能を得られ、微孔膜と隣接するナノ繊維層の組み合わせでの圧力降下は、微孔膜単独での圧力降下と実質的に同一またはそれ未満である。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層が不織支持体と微孔膜との間である。本発明の他の態様は、ナノ繊維の1つ以上の層と、微孔膜と、不織支持体の1つ以上の層と、1つ以上の別の支持層またはドレナージ層とを含むフィルタ部材を含む。
【0037】
実質的に同一の圧力降下またはほぼ同一の圧力降下とは、フィルタ部材での圧力降下が微孔膜単独の±15パーセント以内である本発明の態様における複合膜またはフィルタ部材を示し、本発明のいくつかの態様では、フィルタ部材での圧力降下が微孔膜単独の±10パーセント以内であり、本発明のさらに他の態様では、フィルタ部材での圧力降下が微孔膜単独の±5パーセント以内である。
【0038】
本発明の態様では、多孔質ナノ繊維層の厚さが、0.005ミクロン〜30ミクロンの範囲であり得る。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層の厚さが2ミクロン〜10ミクロンである。本発明の他の態様では、ナノ繊維層の厚さが5ナノメートル〜20ナノメートルであり得る。ナノ繊維層の厚さは、微孔膜および任意の支持層との組み合わせで、圧力降下が微孔膜の圧力降下単独の場合と実質的に同一またはこれより小さいフィルタ部材を得られるように選択される。
【0039】
説明および特許請求の範囲の目的で、微孔膜という用語は、超多孔質膜、ナノ多孔質膜、微孔膜などの用語で説明されることもある多孔質膜を含む形で用いられる。これらの微孔膜は、ゲル、粒子、コロイド、細胞、ポリオリゴマーを含むがこれに限定されるものではない供給流成分(保持液)を保持し、かたや孔よりも実質的に小さい成分はその孔を通過して透過液流に入る。供給流における成分の微孔膜による保持能は、動作条件、たとえば膜面流速および界面活性剤の使用、pH、これらの組み合わせに左右される可能性があり、微孔膜孔の大きさ、構造および分布に対する粒子の大きさおよび構造(硬質粒子またはゲル)に左右される可能性もある。
【0040】
本発明の態様では、ナノ繊維の直径または平均ナノ繊維径が、25ナノメートル〜250ナノメートルの範囲であり得る。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維は、直径が200ナノメートル以下である。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維の平均直径は、75ナノメートル〜200ナノメートルであり得る。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維の直径が200ナノメートル以下、あるいは繊維の平均直径が75ナノメートル〜200ナノメートルであり、支持層上のナノ繊維の空気透過性が1.4秒/200mlを上回る。
【0041】
多孔質または微孔ナノ繊維層の
サイズ等級は、フィルタ部材内で積層されるか接触する微孔膜表面の
サイズ等級と少なくとも同程度であるか、これよりも大きいことが可能である。たとえば、非対称微孔膜の開放側が約1ミクロンのIPAバブルポイントによってサイズ規定されている場合、ナノ繊維層の
サイズ等級は、約1ミクロン以上でなければならない。微孔膜と積層されたナノ繊維の対向面の孔の相対サイズも、SEM分析で評価可能である。
【0042】
本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層の
サイズ等級が、0.01ミクロン〜0.65ミクロンの範囲であることができる。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層の
サイズ等級が0.18ミクロン〜0.28ミクロンであり、他の態様では、約0.18ミクロン〜0.24ミクロンであり、さらに他の態様では、約0.2ミクロンである。
【0043】
本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層は、イソプロピルアルコール(IPA)バブルポイント測定または3M(商標)からのHFE 7200などの溶媒中でのバブルポイント測定によって判断可能なバブルポイントによって特徴付けることが可能である。ナノ繊維層のIPAバブルポイントは、約5psi〜約100psiの範囲であり得る。本発明の一態様では、多孔質ナノ繊維層は、平均IPAバブルポイントが7psi〜15psiである。本発明の他の態様では、多孔質ナノ繊維層は、平均IPAバブルポイントが15psi〜20psiである。本発明の他の態様では、ナノ繊維層のIPAバブルポイントが約20psi〜約25psiである。本発明のさらに他の態様では、多孔質ナノ繊維層の平均IPAバブルポイントが24psi〜32psiである。さらに他の態様では、多孔質ナノ繊維層の平均IPAバブルポイントが32psi〜50psiである。さらに他の態様では、多孔質ナノ繊維層の平均IPAバブルポイントが50psi〜83psiである。
【0044】
本発明のいくつかの態様におけるナノ繊維層では、ナノ繊維層は、IPAバブルポイントが20psi±5psi、試験方法ASTM D737−96(Frazier)で測定した125Paでの透気度が1.2立方フィート/分(cfm)〜1.4cfmであることを特徴とし得る。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層は、0.18ミクロン〜0.28ミクロン規定で、バブルポイントが20psi±5psi、およびまたは透気度が1.2cfm〜1.4cfmである。ナノ繊維層の
サイズ等級が、下にある微孔膜の
サイズ等級とほぼ同一であるか、これより大きいと、フィルタ部材での圧力降下が小さくなって好都合である。
【0045】
ナノ繊維は、ナノ繊維に形成可能な本発明の態様におけるポリマーで構成される。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層は、ポリアミドまたはポリアミドを含むポリマーから形成可能である。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維のポリアミドが、ナイロン6、ナイロン6,6などである。本発明の他の態様では、ナノ繊維を形成するポリマーが、ポリ(エーテルスルホン)である。いくつかの態様では、本発明、ナノ繊維は表面エネルギが下にある微孔膜ポリマーより高く、たとえば、ナイロンはUPEより表面エネルギが高い。本発明の他の態様では、ナノ繊維層は水性被験液体中で微孔膜とはゼータ電位が異なる。
【0046】
多孔質ナノ繊維層は、伝統的なエレクトロスピニングまたはエレクトロブローイングなどのエレクトロスピニング、特定の状況では、メルトブローイングまたは他のそのような好適なプロセスによって生成可能なナノ繊維を含むか、あるいは当該ナノ繊維からなるものであり得る。伝統的なエレクトロスピニングは、米国特許第4,127,706号明細書に記載の技術であり、その教示内容全体を参照により本明細書に援用する。そこでは、溶液中のポリマーに高電圧を印加して、ナノ繊維および不織マットを形成する。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層の坪量が0.1グラム/1平方メートル〜5グラム/1平方メートルである。本発明の他の態様では、ナノ繊維層の坪量が1グラム/1平方メートル〜3グラム/1平方メートルである。本発明の他の態様では、ナノ繊維層の坪量が約1.7g/m
2〜2g/m
2である。これよりも坪量の小さなナノ繊維層であれば、製造するにあたって一層経済的かつ使用する時間と材料が少なくてすむことがある。
【0047】
ナノ繊維層は、自立するものであってもよいし、不織多孔質基材または不織多孔質支持体上に形成することも可能であり、微孔膜の上に形成可能でもあり、これらの組み合わせであってもよい。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層を不織支持体から剥離することが可能である。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層が不織支持体と微孔膜との間に介在する。本発明のいくつかの態様では、支持体または不織支持体は任意である。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層は、微孔膜、不織多孔質支持体またはウェブでスピンニングヘッドを前後に1回以上の動かすなどの方法で作られるナノ繊維のサブ層を含むものであってもよい。ナノ繊維サブ層の各々におけるナノ繊維組成物、
サイズ等級、繊維径は、同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
ナノ繊維層を形成可能な支持体は、液体を透過可能であり、本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層と微孔膜との組み合わせの流下時間が微孔膜単独の流下時間と本質的に同一またはそれ以下になるよう選択される。ナノ繊維を形成可能な支持体を使用して、プリーツ形成/カートリッジ組立プロセスへのナノ繊維ウェブの強度を得ることが可能である。支持体がデプスタイプの濾材であってもよいため、これがフィルタ濾材として作用することもある。ナノ繊維層と支持体との組み合わせが、フィルタカートリッジにおける濾材の一部を形成する。本発明のいくつかの態様では、
図1に示すような微孔膜を有する支持体上のナノ繊維層の流下時間が、微孔膜単独の流下時間と本質的に同一であるか、ほぼ同一である。本発明のいくつかの態様では、支持体が不織材料である。支持体または不織支持体が、最終的な液体用途と化学的に適合する。不織支持体の非限定的な例として、ポリアミド(PA)製のものがあげられ、(Nylon)6、Nylon 6,6、アラミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、PES(ポリエーテルスルホン)などであるがこれに限定されるものではない、さまざまなナイロンを含み得る。PA6とは、(Nylon)6またはNylon 6とも呼ばれるポリアミド6を示す。本発明のいくつかの態様では、不織支持体が、他のプロセスで他の不要な材料(汚染物)がウェブに混入されにくくするよう、熱結合されたNylon 6樹脂を含む。本発明の一態様では、ナノ繊維層が形成される支持体は、フィルタ部材の流下時間に影響しないか、実質的に影響しない、旭化成から入手可能なナイロン、NO5040である。本発明のいくつかの態様では、不織支持体上のナノ繊維層の流下時間が、約20秒〜200秒の範囲である。不織物の坪量はその厚さと関連し、圧力損失を最小限にするよう選択可能であり、フィルタパックへの組立に合った正しい数のプリーツが得られるよう選択されてもよい。不織物が厚くなればなるほど、フィルタカートリッジの固定径の遠心管での遠心処理に合うプリーツ数が減少する。本発明のいくつかの態様では、不織支持体の坪量が約40グラム/1平方メートル〜約30グラム/1平方メートルである。本発明の他の態様では、不織支持体の坪量が1平方メートル/約(40±5)グラムである。
【0049】
本発明のいくつかの態様における微孔膜は、微孔UPE膜のレース状の空洞細孔構造を含む形態を有することが可能であり、あるいはいくつかの態様では、膜が微孔PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜のストリングおよびノード形態を含む。いくつかの態様では、微孔膜の形態がレース状の開放構造である。微孔膜は、イソプロピルアルコールまたは3M(商標)HFE−7200中でバブルポイント測定によって判断される
サイズ等級が0.1ミクロン未満であり得る。いくつかの態様では、イソプロピルアルコールまたは3M(商標)HFE−7200中でのバブルポイント測定によって判断される微孔膜の
サイズ等級が0.005ミクロン〜0.25ミクロンである。本発明の他の態様では、微孔膜は、イソプロピルアルコールまたは3M(商標)HFE−7200中でのバブルポイント測定によって判断される
サイズ等級が約0.005ミクロン〜約0.05ミクロンである。本発明のさらに他の態様では、微孔膜は、イソプロピルアルコールまたは3M(商標)HFE−7200中でのバブルポイント測定によって判断される
サイズ等級が約0.003ミクロン〜約0.05ミクロンであり得る。本発明のさらに別の態様では、イソプロピルアルコールまたは3M(商標)HFE−7200中でのバブルポイント測定によって判断される微孔膜の
サイズ等級が、約0.001ミクロン〜約0.05ミクロンであり得る。
【0050】
本発明の態様における微孔膜は、対称または非対称として説明可能である。対称微孔膜は、平均サイズが膜全体で実質的に同一の孔によって特徴付けられる孔のサイズ分布を有する多孔質構造を有する。非対称微孔膜では、膜全体で孔のサイズがまちまちであり、通常、締まった側の片面から膜の他の表面すなわち開放側に向かってサイズが大きくなる。本発明のいくつかの態様では、微孔膜が、膜のスキムされた側が液体透過性であるスキムされた膜であってもよい。他のタイプの非対称性も周知である。たとえば、膜の厚さ内の位置で細孔径が最小細孔径になる(砂時計形)。非対称微孔膜は、同一の規定細孔径および厚さの対称微孔膜に比してフラックスが高めの傾向にある。また、孔の大きな側が濾過される流体流と対向し、事前濾過作用が生じる非対称微孔膜を使用することが可能である。本発明の態様における微孔膜は、対称、非対称、砂時計からなる群から選択される孔構造を有し得る。本発明のいくつかの態様では、微孔膜の孔構造が非対称である。ナノ繊維層は、非対称膜の締まった側または開放側のどちら側にも積層可能である。本発明のいくつかの態様では、非対称膜を用いる場合、細孔径が最大の微孔膜側すなわち開放側が、重なっているナノ繊維層と対向またはこれと接触する。本発明の他の態様では、微孔膜の孔構造が非対称であり、細孔径が最小の微孔膜側すなわち締まった側が、重なっているナノ繊維層と対向またはこれと接触する。本発明のいくつかの態様では、微孔膜の孔構造が非対称であり、
サイズ等級約0.001ミクロン〜約0.01ミクロン(測定されたバブルポイントは75〜150psiである)で孔が最小になる側を持ち,孔が大きめの微孔膜である開放側が、下にあるナノ繊維層と接触する。
【0051】
本発明のいくつかの態様では、微孔膜が、PES、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−パーフルオロアルキルビニルエーテル)、(PFA)のように熱可塑性であってもよく、アルキルは、プロピル、メチルまたはこれらの混合物、ポリアミド、ナイロン6またはポリオレフィンである。他の態様では、膜はフルオロポリマーまたはパーフルオロポリマー(PTFEなど)であってもよい。本発明のいくつかの態様では、微孔膜が超高分子量ポリエチレンである。超高分子量ポリエチレンは、極めて長い鎖を有する熱可塑性ポリエチレンの態様であり、分子量数が百万単位、たとえば100万またはそれより多くの単位で、通常は200〜600万である。本発明のいくつかの態様では、微孔膜がUPEを含むか、これからなる。
【0052】
微孔膜は、平均IPAバブルポイントすなわち、3M(商標)からのHFE−7200などの別の溶媒を用いて表面張力を補償する等価なバブルポイントが、約20psigを超えるものであり得、場合によっては30psigを超え、さらに他の場合は約50psigを超えるものであり得る。いくつかの態様では、微孔膜が、平均IPAバブルポイントすなわち、3M(商標)からのHFE−7200などの別の溶媒を用いて表面張力を補償する等価なバブルポイントが、20psig〜150psigであり得る。
【0053】
本発明の態様では、微孔膜は、3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが75psi〜90psi、場合によっては平均バブルポイントが約85psi(586,054Pa)である。本発明のいくつかの態様では、微孔膜は、3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが95psi〜110psi、場合によっては平均バブルポイントが約100psi(689,476Pa)である。本発明のいくつかの態様では、微孔膜は、3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが115psi〜125psi、場合によってはバブルポイント平均が約120psi(827,371Pa)である。本発明のさらに他の態様では、3M(商標)からの液体HFE−7200中での非対称膜の平均バブルポイントが140psi〜160psiである。微孔膜は対称であっても非対称微孔膜であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかの態様では、微孔膜は、3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが75psi〜90psi、場合によっては平均バブルポイントが約85psi(586,054Pa)で、10ナノメートル規定の非対称膜と呼ばれる、Entegris, Inc.製の非対称UPE膜であり得る。本発明のいくつかの態様では、微孔膜が、3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが95psi〜110psi、場合によっては平均バブルポイントが約100psi(689,476Pa)で、5ナノメートル規定の非対称膜と呼ばれる、Entegris, Inc.製の非対称UPE膜であり得る。本発明のいくつかの態様では、微孔膜が、Entegris, Inc.製で、3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが115psi〜125psi、場合によってはバブルポイント平均が約120psi(827,371Pa)である、3ナノメートル規定の非対称膜と呼ばれる、非対称UPE膜であり得る。
【0055】
本発明のいくつかの態様では、微孔膜が、圧力0.10MPaかつ温度21℃で、500ミリリットルのIPAについて、350秒〜6500秒、場合によっては500秒〜6500秒のIPA流下時間によってさらに特徴付けられる。3M(商標)からの液体HFE−7200中での平均バブルポイントが75psi〜90psiの非対称0.005ミクロン(5nm)UPE膜のIPA流下時間は、0.1MPa圧力、21℃で、500mlのIPAについて、5000秒〜7000秒の範囲であり得る。
【0056】
理論に拘泥されるものではないが、微孔膜単独の場合と比して圧力降下をほとんど増やさないかまったく増やさずに、微孔膜の孔径を効率的に小さくし、粒子保持能を改善するような方法で、ナノ繊維層のナノ繊維は、本発明の態様におけるフィルタ部材の微孔膜の孔の一部を覆うことが可能なものである。
【0057】
本発明の態様におけるフィルタ部材および微孔膜のふるい特性の試験に、さまざまな界面活性剤を使用することが可能である。本発明のいくつかの態様では、界面活性剤が、親水性のポリエチレンオキシド基(平均で9.5のエチレンオキシド単位を有する)と炭化水素脂溶性または疎水性基とを有する、非イオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはTriton X−100(Triton X−100(C
14H
22O(C
2H
4O)
nである。炭化水素基は、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル基)である。使用する界面活性剤の量は、臨界ミセル濃度(CMC)より上で選択可能である。CMCより上の界面活性剤濃度は、流体の表面張力を監視するための表面張力計を用いて測定可能である。本発明のいくつかの態様では、界面活性剤が、ふるい条件または本質的にふるい条件を与える0.1%(w/w)〜0.3%(w/w)の範囲である。界面活性剤を用いると、微孔膜、ナノ繊維層、任意の支持体材料の非ふるい作用が最小限になり、粒子保持能試験でふるい条件または本質的にふるい条件が得られる。これらのふるい条件(または本質的にふるい条件)下で、フィルタ部材または微孔膜などの構成要素の粒子保持能は、ふるい濾過特性によって濾過が支配される有機液体、フォトレジストなどの組成物、フィルタ部材あるいは、有機液体を含有する微孔膜の反射防止コーティング、他の同様の液体中でのフィルタ部材の粒子保持能特性と相関可能であると想定される。
【0058】
本発明のいくつかの態様では、フィルタ部材の液圧降下を、流量30ミリリットル/分で、室温にて、0.1%(w/w)Triton X−100水溶液を含有する液体供給液を用いて測定する。本発明の態様では、液体供給液を用いて測定されるフィルタ部材の圧力降下が、液体供給液を用いて測定される微孔膜の圧力降下未満である。本発明のいくつかの態様では、フィルタ部材の圧力降下が、液体供給液を用いて測定される微孔膜の圧力降下よりも、0psi〜2psi小さいまたは0%〜15%小さい。本発明のいくつかの態様では、フィルタ部材の圧力降下または流下時間が、温度、圧力および液体供給液組成物の同一条件下で測定した場合に、微孔膜の圧力降下または流下時間よりも、約0%〜15%小さく、他の態様では0%小さい〜10%小さく、さらに他の態様では0%小さい〜5%小さい。
【0059】
IPA流下時間は、500ミリリットルのイソプロピルアルコールを、温度21℃、圧力97,900Pa(約0.1MPaまたは約14.2psid)で、面積12.5cm
2の微孔膜単独またはフィルタ部材(たとえば、微孔膜、ナノ繊維層、任意の支持体)の47ミリメートルのディスクに流すのに必要な時間である。
【0060】
バブルポイントとは、空気流ポロシメータを用いる平均IPAバブルポイントを示す。場合によっては、微孔膜バブルポイントとは、HFE−7200(3M(商標)、St. Paul,MNから入手可能)中で測定した平均バブルポイントを示す。HFE 7200測定バブルポイントに1.5または約1.5を乗じることで、HFE−7200バブルポイントをIPAバブルポイント値に変換可能である。3M(商標)HFE−7200は、エトキシ−ノナフルオロブタンであり、報告された表面張力は25℃で13.6mN/mである。
【0061】
ナノメートルサイズの蛍光ポリスチレンラテックス(PSL)ビーズを使用して、「Sub−30 nm Particle Retention Test by Fluorescence Spectroscopy」, Yaowu, Xiao, et al, Semicon China, March 19〜20, 2009, Shanghi, China(その内容全体を本明細書に援用する(米国仮特許出願第61/168,776号明細書(その全体を参照により本明細書に援用する))も参照のこと)に記載された方法および材料で、本発明のフィルタ部材および微孔膜を特徴付けることが可能である。本発明のいくつかの態様では、蛍光ナノ粒子が、25ナノメートルでの粒子の公称直径を一覧にしたDuke Scientificによって流通しているG25粒子である。しかしながら、20ナノメートル〜30ナノメートル、場合によっては21ナノメートル〜24ナノメートルの範囲の粒子も使用可能である。フィルタ部材の評価に用いられる蛍光粒子単層膜の被覆率は、1%〜30%であり得るが、これより低いか高い他の被覆率も使用できる。
【0062】
本発明のいくつかの態様では、フィルタ部材が、0.3wt%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)界面活性剤を用いて、単層膜のカバレッジ10%〜単層膜のカバレッジ30%で、被験液体からの25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する液体粒子保持能が、同一の試験条件下で、25ナノメートルの蛍光ポリスチレンラテックスビーズに対する微孔膜単独の液体粒子保持能と実質的に同一であるか、これより大きい。本発明のいくつかの態様では、微孔膜が超高分子量ポリエチレンを含む。
【0063】
本発明のいくつかの態様では、液体が、任意に界面活性剤を含有し、任意にpHの範囲が約pH6〜約pH7で、場合によってはpH約pH8またはpH8.5ですらある水溶液であり得、または水であり得る。いくつかの態様では、液体は、フォトレジストまたは現像液などの液体組成物または有機溶媒であり得る。
【0064】
筐体に接着または実装された本発明の態様におけるフィルタ部材を含むフィルタカートリッジまたはフィルタ装置を製造可能である。たとえば、フィルタカートリッジは、任意の円筒形コア、コア周囲の任意のドレナージ層、ドレナージ層に積層された微孔膜、第1の多孔質支持体を有する微孔膜上の第1のナノ繊維層、任意の別のナノ繊維層(各々が第1のナノ繊維および第1の支持層に積層された多孔質支持体を有する)、外側のナノ繊維および支持層を囲む任意の外側のドレナージ層、微孔膜およびナノ繊維層を支持し、これを囲む任意のケージを含み得る。これらの構成要素を筐体に挿入し、さまざまな流入口および流出口を有し得るエンドキャップに結合可能である。微孔膜およびナノ繊維層は、コアの周りに巻回可能なものであり、あるいは任意の支持体およびドレナージ層と一緒にプリーツを形成してプリーツパックにしてもよい。フィルタ部材を含むフィルタカートリッジの非限定的な例として、実施例3(Optimizer(登録商標)スタイルのカートリッジ、Entegris, Inc., Billerica, MA)および実施例5(Impact(登録商標)スタイルのカートリッジ、Entegris, Inc. Billerica, MA)に記載されているものがあげられる。
【0065】
ナノ繊維層またはサブ層の繊維径については、フィルタ部材の層におけるナノ繊維の無作為試料のSEM分析および測定によって判断可能である。これらの測定で得られる平均繊維径を使用して、各ナノ繊維層の平均繊維径を計算することが可能である。
【0066】
「スパンオン(span on)」という表現は、ウェブまたは不織支持体をエレクトロスピニング装置のスピニングヘッド/ダイの下に通し、ウェブまたは支持体上でナノ繊維の繊維が紡糸されるプロセスを説明するのに用いられる。
【0067】
本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維層が不織支持体と結合されず、支持体不織物から剥離できるものである。多孔質または不織支持体の坪量については、ウェブ(特定面積)の質量をグラム単位で測定し、これを平方メートル単位で測定した支持体面積で割って判断可能である。ナノ繊維層の場合、坪量は、ある面積のナノ繊維層を支持体から剥離し、その質量をグラム単位で測定した上で、剥離したナノ繊維試料の面積で割って判断可能である。
【0068】
2つ以上のナノ繊維および支持層を有する本発明のいくつかの態様では、別の支持層がこれに続くナノ繊維層に積層され、それが異なる質量、組成、空隙率、重量またはこれらの任意の組み合わせを有し得る。たとえば、第1の支持層のある第1のナノ繊維と積層された第2の支持層を含む第2のナノ繊維層とを有するフィルタ部材の場合、重量が小さい材料を第2の支持層に使用して、第2の支持層の厚さを小さく保つとともに、フィルタに同一数のプリーツを可能にしてもよい。本発明のいくつかの態様では、ナノ繊維の別の層が、第1のナノ繊維層または他のナノ繊維層とは異なる組成、繊維径または重量ベースを有するものであり得る。
【実施例】
【0069】
実施例1
5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜単独;5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜を約0.2ミクロン規定のナイロンナノ繊維層に積層したもの;5nm規定の非対称UPE微孔膜と約0.2ミクロン規定のナイロン微孔膜との併用について、粒子保持能および圧力降下試験を実施した。この実施例の0.2ミクロン規定のナノ繊維層は、約21psi〜約25psiであったナノ繊維層のIPAバブルポイントに基づくものである。同様の条件下でのIPA中での0.25ミクロン規定のUPE膜のIPAバブルポイントは、20〜29psiであった。5nm規定の非対称UPE微孔膜は、3M(商標) HFE−7200中でのバブルポイント測定を特徴とするものであった。そのバブルポイントは95psi〜110psiであった。
【0070】
試験条件(25ナノメートルの負に荷電した蛍光PSL粒子を水に入れ、フィルタ部材または微孔膜および供給液を0.1%Triton X−100で処理)下で、5nm規定の非対称UPE上に0.2ミクロン規定のナイロンナノ繊維を有するフィルタ部材試料と、5nm規定の非対称UPE上の0.2ミクロン規定のナイロン膜の試料で、5ナノメートルの非対称微孔UPE膜単独の場合に比して、25ナノメートル蛍光粒子の有意によりよい保持能が認められた。
【0071】
0.2ミクロン規定のナイロンナノ繊維および5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜を有するフィルタ部材は、0.2ミクロン規定のナイロン膜を有する5ナノメートルの非対称UPE微孔膜(17psi)よりも圧力降下(13psi)が小さかった。また、(同じく驚くべきことに)UPE膜(15psi)自体よりも圧力降下が小さかった。
【0072】
理論に拘泥されるものではないが、UPE膜単独に比して、5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜を用いる場合の0.2ミクロン規定のナイロンナノ繊維の保持能の改善と、0.2ミクロン規定のナイロン膜を有する5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜の保持能の改善は、おそらくはナイロンナノ繊維またはナイロン膜のふるい作用ならびに別の非ふるい作用によるものである。しかしながら、この実施例における界面活性剤の存在が、吸着および非ふるい作用を最小限に抑えていると想定される。
【0073】
非対称UPE膜は、発明の名称MULTILAYER POROUS MEMBRANE AND PROCESS OF MANUFACTURE(その開示内容全体を参照により本明細書に援用する)で(国際公開2006/069307)中、YenおよびPatelが開示した方法および材料で製造可能である。
【0074】
この実験では、90ミリメートル(mm)のディスク膜クーポンに、5ppbの蛍光粒子(Duke Scientific G25)を界面活性剤溶液(DIW中0.1%Triton X−100)に懸濁させたもので負荷をかけた。
【0075】
試験のために、5ナノメートル規定の非対称UPE膜をホルダに配置(開放層を上に)し、0.2ミクロン規定のナイロンナノ繊維または0.2ミクロン規定のナイロン膜のいずれかをその上に配置した。すべての試料をIPA溶媒で湿らせ、15ポンドパースクエアインチ(psi)すなわち(103421Pa)の圧力を上流で印可して完全性を試験した。次に、クーポンをDI水で10分間洗浄した。DI洗浄後、膜を界面活性剤溶液(0.1%(w/w)Triton X−100)で5分間処理した。クーポンホルダに残っている容量の水を除去するために、約100ミリリットルの供給液をクーポンホルダのベントからフラッシュした。この水は、試験の極めて最初の段階での希釈の原因となり得るものであり、「誤」保持能につながる可能性がある。次に、保持能試験を開始する前に供給試料をベントから回収した。約30ミリリットル/分の一定流量で、保持能試験を実施した。ナイロンナノ繊維層を有する5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜の場合、実測圧力降下は約13ポンドパースクエアインチ(psi)(89632Pa)であった。0.2ミクロン規定のナイロン膜を有する5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜の場合、同一流量での実測圧力降下は約17psi(117211Pa)であった。5ナノメートル規定の非対称UPE膜単独の場合、実測圧力降下は約15psi(103421Pa)であった。合計で5つの濾液試料を試験管内に回収しつつ、分析バランスを用いて膜での1%〜5%の単層膜吸着量値を測定した。
【0076】
Hitachi F−7000蛍光分光計にて蛍光分光法を実施した。G25粒子の励起/発光波長を468/506nmと選択し、カットオン光学フィルタを導入して発光スペクトルに干渉励起光が出現するのを最小限に抑えた。
【0077】
0.2ミクロンのナイロンナノ繊維を5ナノメートルのUPE微孔膜上に有する5ナノメートルの非対称UPE微孔膜を含む試料;0.2ミクロンのナイロン微孔膜を5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜上に含む試料;5ナノメートル規定の非対称UPE微孔膜単独の試料での試験時に回収した濾液溶液の蛍光スペクトルを得た。保持能試験の結果を表1にまとめておく。
【0078】
【表1】
【0079】
ナイロンナノ繊維層の概算保持能は、単層膜のカバレッジ1%の場合に約77%、単層膜のカバレッジ5%の場合に69%である。ナノ繊維層に対する圧力降下を0.1psiと小さく抑えるための流量制御が現実問題として困難であるがゆえに、これらの結果にはばらつきがあった。
【0080】
これらの結果には再現性があり、ナイロンナノ繊維を有する5nm規定の非対称UPE微孔膜のほうが、非対称微孔UPE膜単独よりも粒子保持能が高く、圧力降下が少ない(約13パーセント少ない)ことを示している。5nm規定の非対称UPE膜と0.2ミクロンの微孔ナイロン膜0.2とを組み合わせると、UPE微孔膜単独またはナイロンナノ繊維を有する5nm規定の非対称UPE微孔膜のいずれと比較しても保持能は改善されるが圧力降下が大きく(約13パーセント大きく)なった。
【0081】
実施例2
この実施例は、界面活性剤の存在下、10%単層膜(ML)粒子カバレッジ、20%単層膜粒子カバレッジ、30%ML粒子カバレッジでのフィルタ部材クーポン試料上の25ナノメートルの蛍光粒子保持能ならびに、ポリアミドナノ繊維層、さまざまなサイズ規定のUPE微孔膜、ポリアミドナノ繊維層と微孔UPE膜との組み合わせのバブルポイントおよびイソプロピルアルコール流下時間を比較する。
【0082】
微孔UPE膜クーポンは粒子保持能試験に単独で、あるいは、フィルタ部材クーポンを作るためにポリアミドナノ繊維層と組み合わせての試料。Entegris(Chaska,MN)から微孔UPE膜を得た。この実施例で評価したUPE微孔膜試料として、0.01ミクロン規定(3M(商標)HFE−7200中でのバブルポイント70psi〜83psi)、0.02ミクロン規定(3M(商標)HFE−7200中でのバブルポイント55psi〜64psi)、0.03ミクロン規定(IPA中でのバブルポイント68psi〜83psi)、0.05ミクロン規定(IPA中でのバブルポイント50psi〜63psi)UPE膜があげられる。Finetexによってナノ繊維層を作製し、これはポリアミドであった。微孔膜クーポン試料は、90ミリメートルのディスクであった。Duke Scientificから製品番号「G25」で得られる約25ナノメートルの蛍光PSLビーズを使用した。粒子保持能試験のために、0.27ppmのPSLビーズを0.3%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)界面活性剤中に含有し、合計容量30mLの溶液で、膜試料に3回負荷をかけて、10%MLカバレッジを達成した。界面活性剤を使用すると、ナイロン材料の非ふるい作用が最小限になり、粒子保持能試験でのふるい条件または本質的にふるい条件が得られる。この試験スタンドを
図6に示す。試験圧力は0.04MPa/0.10MPa(0.01ミクロンUPE)とした。これらの試験の結果を
図3、
図4、
図5に示す。
【0083】
これらの試験の結果から、UPE0.01ミクロンの微孔膜と比較すると、0.01ミクロンのUPEとポリアミドナノ繊維との組み合わせで、流動損失が2.2%増、界面活性剤の存在下では、被験液体が30%MLで保持能14%増、20%MLで保持能8.3%増、10%MLで保持能2.2%増につながることがわかる。
【0084】
これらの試験の結果から、UPE0.02ミクロンの微孔膜と比較すると、0.02ミクロンのUPEとポリアミドナノ繊維との組み合わせで、流動損失が1.7%減、界面活性剤の存在下では、被験液体が30%MLで保持能13.6%増、20%MLで保持能3.6%増、1%MLで保持能1.4%減につながることがわかる。
【0085】
【表2】
【0086】
これらの試験の結果から、UPE0.03ミクロンの微孔膜と比較すると、0.03ミクロンのUPEとポリアミドナノ繊維との組み合わせで、流動損失が4.1%増、界面活性剤の存在下では、被験液体が30%MLで保持能23.7%増、20%MLで保持能3.9%増、10%MLで保持能0%増につながることがわかる。
【0087】
これらの試験の結果から、UPE0.05ミクロンの微孔膜と比較すると、0.05ミクロンのUPEとポリアミドナノ繊維との組み合わせで、流動損失が2.7%増、界面活性剤の存在下では、被験液体が30%MLで保持能16.2%増、20%MLで保持能6.2%増、10%MLで保持能1.6%減につながることがわかる。
【0088】
表2の結果からわかるように、ナノ繊維層を用いると、界面活性剤の存在下、被験液体中で、フィルタ部材の被験粒子単層膜被覆率を高めつつ、微孔膜に比して、全体としての粒子保持能が大きくなる。これらの試験の結果から、ナノ繊維層を有する試料クーポンでの粒子吸着量が増すと、すなわち10%ML、20%MLなど、フィルタ部材の全体としての吸着能力への寄与率も大きくなる。
【0089】
複合膜またはフィルタ部材のPSL保持能を
図3に示す。このフィルタ部材の30%単層膜保持能を
図4に示し、このフィルタ部材のIPA流下時間を
図5に示す。
【0090】
IPA流下時間試験の結果から、微孔膜単独と微孔膜およびナノ繊維層の組み合わせとの流下時間の差が約±4%異なることがわかる。30%MLカバレッジでの粒子保持能について、微孔膜およびナノ繊維の組み合わせでの保持能が、UPE膜単独より14%〜24%高くなる。膜のPSL粒子カバレッジが10%MLから30%MLまで徐々に直線的に増すにつれて、UPE微孔膜単独の保持性能が小さくなる。逆に、(UPE+ナノ繊維)の組み合わせによる保持能はそれほど低下しない。
【0091】
2つの試料(UPEおよびUPE+ナノ繊維)の保持性能の差は、単層膜のカバレッジが大きくなるにつれて大きくなる。これは、ナノ繊維と微孔膜との組み合わせであれば、UPE微孔膜単独よりも経時的な保持能が高いことを示している。
【0092】
実施例3
この実施例は、非対称微孔UPE膜のみまたはナイロン不織支持体上のナイロンナノ繊維と同一の非対称微孔UPE膜との組み合わせのいずれかで作製した3つの4インチのOptimizer(登録商標)D規定のフィルタカートリッジ装置で圧力降下、粒子離脱試験、粒子保持能を測定するものである。Optimizer(登録商標)Dフィルタは、Entegris(Chaska, MN)製である。この実施例用に作製した当該フィルタカートリッジ装置を、圧力降下試験、粒子保持能試験、粒子離脱試験で評価した。あるフィルタカートリッジ装置(Optimizer(登録商標)D Asy5nm)をEntegrisの5ナノメートルの非対称UPE膜で用意したが、他の2つの装置(Optimizer(登録商標)D Asy5nm SP)については5nmの非対称UPE膜と0.2um規定のナイロンナノ繊維の層(NNF1+UPEまたはNNF2+UPEと略記)で用意した。
【0093】
フィルタカートリッジ装置についての別の情報を表3にまとめておく。
【0094】
【表3】
【0095】
Finetexから得たナイロンナノ繊維を不織ナイロン支持体に適用して、フィルタ装置を作製した。ナノ繊維層を5ナノメートルの非対称UPE膜の開放側に向けて配置し、別のポリエチレン裏打ち層を得た。ナイロン不織物、ナイロンナノ繊維、5ナノメートルの非対称UPE微孔膜、ポリエチレン裏材を含む組み合わせをエンドキャップで結合し、試験用にプロトタイプのフィルタカートリッジ装置を形成した。Entegris, Inc.から非対称の5nm微孔膜を入手した。これは、3M(商標)HFE−7200でのバブルポイント95psi〜110psiを特徴とするものである。
【0096】
ナノ繊維層は、直径約60ナノメートル〜約150ナノメートルの繊維を有していた。ナノ繊維層の厚さは約5ミクロン、IPAバブルポイントで判断したナノ繊維層の規定
サイズは0.2ミクロンであった。
【0097】
5ナノメートルの非対称UPE微孔膜だけを有するフィルタ装置では、ナイロンナノ繊維および非対称の5ナノメートルのUPE微孔膜で作製した装置での場合よりも圧力降下が大きかった。
【0098】
使用したG25粒子は、25ナノメートルでの粒子の公称直径を一覧にしたDuke Scientific(Thermo Fisher Scientific Inc.,(Waltham, MA))によって流通しているものであったが、実験室での測定では、Brookhaven Instrument Corporation製の動的光散乱機器、モデルBI−2005Mで約21ナノメートル〜24ナノメートルの粒子径が示される。
【0099】
試験の前に、3つのフィルタをまずはイソプロピルアルコール(IPA)で湿らせ、続いてDI水で約30分間フラッシュした。
【0100】
この実施例の3つのフィルタ装置を、
図6に示すような単一のバイパステストスタンドで一緒に試験した。脱イオン(DI)水中での粒子負荷時には1リットル/分の流量を用いた。次に、DI水中のG25蛍光粒子ならびに、非ふるい作用を除外するための界面活性剤(Triton X−100)を添加したものでフィルタに負荷をかけた。界面活性剤については、圧力容器を用いて、臨界ミセル濃度(CMC)より上の0.1%界面活性剤濃度を目標とする一定流量で、フィルタの上流に注入した。界面活性剤濃度がCMCの上に保たれるようにするために、表面張力計を用いて流体の表面張力を監視した。30ダインの値が0.1%濃度に相関している。
【0101】
界面活性剤を加えると、達成可能な流量が約0.8LPMに減少した。この流量を用いて、界面活性剤とともにすべてのフィルタの保持能を試験した。G25蛍光粒子を既知の濃度でフィルタの上流に45分間注入した。5分ごとにフィルタの上流と下流の両方で試料を回収し、Hitachi F−7000 FL蛍光分光計で測定した。
【0102】
すべての装置に対して同時に一定流量のG25蛍光粒子で負荷をかけた。各装置からの上流および下流の溶液の蛍光シグナルを測定した。
【0103】
この実施例のために用意したすべての試験フィルタ装置で、静的およびパルス脱落下、同様の粒子離脱性能が認められたことから、ナノ繊維の繊維がプロセスの液体流に放出すなわち離脱していないことがわかる。すべての装置で、低めのpH6ならびに中性のpH7の条件にて、DI水中にてG25蛍光粒子の良好かつ同程度の保持能が認められた。pH8で試験した場合に、すべての装置でG25蛍光粒子の保持能が低下することが観察されたことから、高めのpH条件では非ふるい作用が落ちることがわかる。
【0104】
上流の溶液に界面活性剤を加えると、すべてのフィルタのG25粒子保持能が低下し、これによって非ふるい保持能作用も低下した(保持能は主にふるいによる)ことから、DI水中における
サイズ25nmの粒子の保持能は、かなりの部分が非ふるい作用によるものであることが示唆される。界面活性剤を加えると、非対称の5ナノメートルのUPE微孔膜だけを用いたフィルタと、非対称の5ナノメートルのUPE微孔膜とナイロンナノ繊維層の両方を用いた装置の粒子保持能を区別できる。低めのpH6および中性のpH7の条件では、非対称の5ナノメートルのUPE微孔膜とナイロンナノ繊維膜とを有する装置の粒子保持能が、非対称の5ナノメートルのUPE微孔膜だけを用いた装置の場合よりもわずかによいことが、一貫して観察される。これらの結果から、別のナイロンナノ繊維層を有する装置のほうが非ふるい作用が高いことが示唆される。
【0105】
しかしながら、非ふるい作用が低下する高めのpH8では、粒子保持能の区別がはっきりしない。ナイロンナノ繊維を有する装置で最初は高めの保持能が観察されるが、試験の最後には保持能が低下する。理論に拘泥されるものではないが、観察された保持能は、フィルタが複数回にわたって使用され、前の試験から影響を受けた結果の可能性がある。本発明者らは、各試験を新しいフィルタで実施すれば、異なるpHおよび界面活性剤条件で、保持能をさらに区別しやすいのではないかと考えている。
【0106】
DI水を各フィルタカートリッジ装置に一連の流量で流し、フィルタでの圧力降下を観察して、フィルタの圧力降下を測定した。UPE微孔膜だけを用いたフィルタは、5nmのUPE膜と0.2ミクロン規定のナイロンナノ繊維層とを用いたフィルタよりも圧力降下が大きかった。
図7のグラフを参照すると、約650ml/分の流れで、ナノ繊維とUPE微孔膜とを用いたフィルタの圧力降下が、UPE微孔膜のみのフィルタで測定した圧力降下よりも約11%以上(すなわち12%)少ない。
【0107】
もうひとつの試験の組では、ナノ繊維およびUPE微孔膜を用いたフィルタと、UPE微孔膜だけを用いたフィルタの圧力降下を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)のような有機液体を用いて測定した。
図8に示す結果から、ナノ繊維およびUPE膜を用いる装置では、UPE膜単独の装置よりも圧力降下が小さいことがわかる。PGMEについてこのグラフを参照すると、約0.5リットル/分の流量で、ナノ繊維およびUPEを用いたフィルタの圧力降下は、UPE膜のみを用いたフィルタで測定した圧力降下よりも約21%以上(22%など)低い。
【0108】
DI水を1リットル/分でフィルタに流し、フィルタの下流で光学粒子カウンタ(OPC)を用いて粒子数を測定して、3つのフィルタカートリッジ装置の粒子離脱性能を試験した。各フィルタを一定の圧力で少なくとも1時間試験し、系の圧力を1時間にわたって30秒ごとにスパイクするパルス条件下でフィルタに負荷をかけた。
【0109】
図9、
図10、
図11の結果から、3つのフィルタカートリッジ装置すべてがその離脱およびパルス離脱性能で同程度であることがわかり、ナノ繊維がフィルタの粒子離脱を増すわけではないことが示される。
【0110】
フィルタカートリッジ装置に、DI水中のG25蛍光粒子で負荷をかけた。フィルタの上流に、粒子を45分間注入し、粒子分析用の試料をフィルタの上流と下流で5分ごとに回収した。次に、試料を蛍光分光計で測定した。45分間の粒子注入の結果から、どのフィルタ(NNF1+UPE、NNF2+UPEおよびUPEのみ)も界面活性剤なしでpH6(
図10)およびpH7(
図9)での粒子保持能が極めて良好かつ同程度であることがわかる。pH8で界面活性剤を使用しない(
図11)と、すべてのフィルタの保持能が低下するが、NNF1+UPEおよびNNF2+UPEフィルタ部材はUPEのみのフィルタより保持能が大きいことから、これらの高pH条件での非ふるい条件下ですら、NNF1+UPEおよびNNF2+UPEのフィルタ部材では比較的大きなサイズの規定ナイロンナノ繊維層を用いた場合にすらもふるい保持能が良好であることが示される。
図10では、ポイントが本質的に互いに重なるため、わかりやすくするためにトレンドラインを割愛してある。
【0111】
再度、G25蛍光粒子を用いるが、今度は非ふるい作用をなくすために界面活性剤をプロセス流に加えてフィルタを試験した。界面活性剤を一定速度で注入し、フィルタで0.1%濃度を達成した。この濃度はCMCより上であった。
【0112】
表面張力計で測定して下流のプロセス溶液が安定した界面活性剤濃度に達したら、G25粒子を既知の濃度でフィルタの上流に注入した。5分ごとにフィルタの上流と下流で試料を回収し、蛍光分光計で測定した。界面活性剤を用いて粒子を45分間注入した結果(
図12および
図13)から、すべてのフィルタで保持能が低下したことがわかる。理論に拘泥されるものではないが、これらの結果は、DI水だけで保持能が高くなるのは、大部分が非ふるい作用によるものであることを示唆している。しかしながら、低めのpH6および中性のpH7では、フィルタ部材NNF1+UPEおよびNNF2+UPEにUPEおよびNylonナノ繊維膜を併用すると、UPE膜だけのフィルタよりも保持能が改善される。
【0113】
実施例4
表4にまとめたこの実施例の結果から、異なる支持層上の直径の異なるナノ繊維の透気度、流下時間および保持能がわかる。
【0114】
この実施例は、異なる支持体(不織物、一つの例では微孔膜)上のナノ繊維の直径が有し得る、透気度および液体流下時間に対する作用を測定するものである。準備した試料では、不織支持層のほうが、ナノ繊維層よりもこれらの実施例での
サイズ等級がかなり大きい。
【0115】
【表4】
【0116】
ナノ繊維の直径は、約50ナノメートル〜約1600ナノメートルの範囲であった。以下の図では、支持層(PET不織物、ポリプロピレン(PP)不織物、PA不織物)、ナノ繊維(ポリアミドナノ繊維(PA NF)、PESナノ繊維)、微孔膜(UPE)のさまざまな組み合わせ、さまざまな層の厚さ、層の順序、表中での試料の表示(NF−1、NF−2など)を
図14にあげておく。
【0117】
この試験の結果から、異なる支持体(不織物、一つの例では微孔膜)上のナノ繊維の直径が有し得る、透気度および液体流下時間に対する作用が認められた。不織支持層のほうがナノ繊維層よりもこれらの実施例での
サイズ等級がかなり大きい。さまざまな試料が、ナノ繊維径の範囲が約150ナノメートル未満または平均ナノ繊維径が300nm未満、たとえば200ナノメートルまたは150ナノメートルの試料の場合、支持体上のナノ繊維の透気度が1.4sec/200ミリリットルを超え、これらはpH6で0.055ミクロンの粒子に対して約90%PSL保持能を超え、さらに高い保持率を達成可能であることを示している。NF層の厚さが5〜20ミクロンの試料NF−1、NF−4、NF−5、NF−6は、透気度が1.75sec/200ml〜24.1sec/200mlの範囲であり、0.1ミクロンの粒子やこれより大きな粒子に対してPSL粒子保持能が88%〜100%である。
【0118】
実施例5
この実施例は、ナノ繊維の1つ以上の層、微孔膜、不織多孔質支持体、1つ以上の別の支持層またはドレナージ層を含むフィルタ部材を示すものである。
【0119】
バブルポイント、プリウェットフロー、圧力降下、粒子保持能試験用に、6つの修飾されたImpact(登録商標)2 V2スタイル装置を入手した。3つの装置はEntegrisの3nm非対称UPE膜を有する形で作られ、他の3つの装置はEntegrisの5nm非対称UPE膜を有する形で作られた。UPE膜は、Yenら、2005年12月21日にファイルされた、特許協力条約に基づく国際公開第2006/069307号パンフレット(その内容全体を参照により本出願に援用する)に開示された方法で作製される非対称膜である。UPE微孔膜を有するImpact(登録商標)2フィルタは、Entegris Inc.,(Billerica, MA)から入手可能である。
【0120】
この実施例は、0.2μmのNylonナノ繊維からなる別の層を用いる場合と用いない場合とで、Impact(登録商標)2装置の粒子保持能を示すものである。各々3nmおよび5nm規定のUPE膜に対する3つの装置の組の中で、1つの装置をUPE膜だけを用いて作製し、他の2つの装置を、UPE膜と、0.2μm規定のNylonナノ繊維からなる別の1つまたは2つの層とを用いて作製した。
【0121】
【表5】
【0122】
この実施例では、すべての保持能試験(異なるpH6〜8、異なる流量)を同一の装置で実施した。本発明者らは、それぞれの試験を新しい装置で実施すれば、異なるpHおよび流量で、さらに保持能を区別しやすくなるであろうと考えている。
【0123】
1つ以上のNylonナノ繊維層は、厚さが約2ミクロン、平均
サイズ等級0.2ミクロンまたは約0.2ミクロンであった。ナノ繊維の直径は、100ナノメートル〜150ナノメートルまたは約100ナノメートル〜約150ナノメートルの範囲であった。ナノ繊維層の
サイズ等級については、微孔膜で用いたものと同一のバブルポイント技術を用いて判断した。ナノ繊維層におけるナノ繊維の直径の平均を、繊維の無作為試料のSEMによって測定し、値を平均した。
【0124】
旭化成から入手した不織スパンボンド多孔質支持体を使用し、この不織多孔質支持体の2つのバージョンを、5040および5030と表示し、坪量はそれぞれ40g/m
2または30g/m
2である。ナイロンナノ繊維をこの不織多孔質支持体上に成膜した。Delstar、Delewareから入手可能なポリエチレン製のポリマーネットを、外側のドレナージ層として使用した。表6では、このネットを「PEネット」と略記する。
【0125】
表5または表6の試料フィルタについて、0.34MPaで60秒間漏洩試験した。試料を5分間低周波洗浄した。装置の可視的なIPAバブルポイント(BP)を装置ごとに測定した。各試料を水でフラッシュした後、装置ごとに水流量試験を実施した。次に、これらの装置を以下のようにして洗浄した。1回目の酸洗浄(60%IPA、0.1NのHClで3時間);2リットル/分で水を用いて5分間酸抽出;2回目の酸洗浄(60%IPA、0.1NのHClで12時間);2リットル/分で水を用いて5分間酸抽出。ユニットを70℃で乾燥させた。
【0126】
試験の前に、装置を約250ミリリットルのイソプロピルアルコール(IPA)でフラッシュし、微孔膜を十分に湿らせた。装置を完全に脱気した後、DI水で30分〜60分間フラッシュした。
【0127】
3ナノメートルの非対称微孔膜を含む1つ以上のナノ繊維層を有するフィルタ部材試料の場合のプリウェット水の流量についての表6に示す結果から、圧力0.06MPaでのリットル/分単位の流量が、2層のナノ繊維(0.06MPaで0.25リットル/分)でほぼ同一(0%)であり、1層のナノ繊維(0.06MPaで0.022リットル/分)では流量が約12%少ないことがわかる。5ナノメートルの非対称微孔膜を含む1つ以上のナノ繊維層を有するフィルタ部材を用いた場合のこの実施例の結果から、圧力0.06MPaでのリットル/分の流量が、2層のナノ繊維(0.06MPaで0.38リットル/分)では約7%少なく、1層のナノ繊維(0.06MPaで0.41リットル/分)では流量がほぼ同一(0%)であることがわかる。
【0128】
【表6】
【0129】
一連の流量で各装置にDI水を流し、装置での圧力降下を観察することで、装置の圧力降下を測定した。
図15および
図16に、3nmおよび5nmの装置の圧力降下をまとめておく。3nmまたは5nmのUPE膜を用いた装置では、1層または2層のナノ繊維を有する装置の圧力降下が、0ml/分〜約220ml/分の流量範囲でほぼ同一または実質的に同一であった。0ミリリットル/分〜約220ミリリットル/分の流量範囲では、3nmの非対称微孔UPE膜のみを用いた装置の場合に約220ml/分で約6.8psiの圧力降下が認められたのに対し、2層または1層のナノ繊維および3nmの非対称微孔UPE膜を用いた装置では、
図15に示すように、約220ml/分でわずかに大きな圧力降下である約7.6psiおよび約7.8psi(それぞれ約12パーセントおよび15パーセント大きい)であった。0ミリリットル/分〜約220ミリリットル/分の流量範囲では、5nmの非対称微孔UPE膜のみを用いた装置の圧力降下が約220ml/分で約6.8psiであったのに対し、2層または1層のナノ繊維および5nmUPE膜を用いた装置では、
図16に示すように、約220ml/分でわずかに小さな圧力降下である約6.1psiおよび約6.2psi(それぞれ約7.5パーセントおよび6パーセント小さい)であった。
【0130】
図6に示す単一のバイパス試験スタンドで、すべての装置の粒子保持能を一緒に試験した。UPE膜、特に3nmUPE膜の圧力降下がゆえに、DI水を用いる場合の最大流量を0.5リットル/分(lpmまたはLPM)とした。DI水の上流ストリームに界面活性剤を注入する場合、流量をさらに落として3ナノメートル(nm)UPE装置で用いた最大流量が0.36LPMであった。0.36LPMの流量は、3nmのUPE装置すべてを試験した流量であった。比較のために、5nmのUPE装置を流量0.36LPMで試験し、流量0.5LPMでも評価した。
【0131】
粒子保持能試験の場合、G25粒子を界面活性剤であるTriton(登録商標)−X 100と組み合わせ、非ふるい濾過作用を大幅に小さくした。約6wt%の界面活性剤ストックをタンクで別に調製し、攪拌しながら十分に溶解させた。この濃縮界面活性剤溶液は、1週間を超えても安定していることが見出された。圧力容器を用いて、臨界ミセル濃度(CMC)より上の0.1%界面活性剤濃度を目標とする一定流量で、濃縮界面活性剤溶液を装置の上流に注入した。界面活性剤濃度がCMCの上に保たれるようにするために、表面張力計を用いて流体の表面張力を監視した。0.1%濃度に相関している31ダインの値を、界面活性剤注入の5分後に測定した。粒子で負荷をかける前に、界面活性剤を注入して装置全体に少なくとも10分間安定した流れを確立し、各々の装置での上流および下流の対照試料を回収した。同様に、pHポンプを用いて必要な量の0.1%水酸化カリウムKOHまたは0.1%HCL溶液を加えて、プロセス流のpHを制御した。
【0132】
装置の上流に、既知の濃度で30分間、G25粒子を注入した。試料フィルタ装置の上流と下流の両方で5分ごとに試料を回収し、上流および下流試料の粒子をHitachi F−7000 FL分光計で測定した。
【0133】
蛍光粒子保持能試験(界面活性剤あり)。最初に、非ふるい作用を大幅に抑えるために界面活性剤をプロセス流に加えた状態で、3nmのUPE装置をG25蛍光粒子で試験した。各装置の流量:3nmのUPE、3nmのUPE+1層NF、3nmのUPE+2層NFは、0.36LPMに維持した。5分前後で下流のプロセス溶液が安定した界面活性剤濃度に達したら、粒子で負荷をかける前に各装置の上流および下流で対照試料を回収した。次に、G25粒子を既知の濃度で30分間装置の上流に注入した。装置の上流および下流で5分ごとに試料を回収し、蛍光分光計で測定した。
【0134】
図17、
図18、
図19はそれぞれ、中性(pH約6.5)、低pH4.0、高pH8.5の条件で試験した3nmのUPE装置の粒子保持能データである。低pHおよび中性pH(
図17および
図18)では、UPE膜と0.2μmのNylonナノ繊維からなる別の層を有する装置での25nm粒子の保持能が、UPE膜だけの装置での場合に比して、有意に向上している。UPE微孔膜と0.2μmのNylonナノ繊維からなる2つの層を含む装置、特に高めの単層膜のカバレッジで、保持能がさらに改善される。界面活性剤を用いて非ふるい作用が大幅に小さくなっても、これらの結果は別のNylonナノ繊維層を有する装置が、UPE膜だけの装置ほどは影響されないことを示唆している。UPE膜上にNylonナノ繊維層が存在すると、非ふるい作用が大きくなり、よって極めて小さな25nmの粒子の保持能が有意に改善されるようにみえる。
【0135】
同一の装置をpH8.5で試験すると、UPEだけの装置とUPEに別の層で0.2umのNylonナノ繊維を併用した装置との保持能の区別が、中性や低いpHのときほど顕著には見られない。Nylonナノ繊維からの非ふるい作用が、高いpHではそれほど強くはない可能性が極めて高い。
【0136】
図20に示すように、5nmのUPE微孔膜を有する装置では、pH6.5、0.36リットル/分の試験で30分間のフロースルー後、ナノ繊維の1つ以上の層を有する装置の保持能が、UPE微孔膜単独の装置の保持能に比して約4〜6倍である。
図21に示すように、5nmのUPE微孔膜を有する装置の場合、pH6.5、0.5リットル/分の試験で30分間のフロースルー後、ナノ繊維の1つ以上の層を有する装置の保持能が、UPE微孔膜単独の装置の保持能に比して約4〜5倍である。
【0137】
図20に示すように、5nmのUPE膜を有する装置でも同様の結果が観察された。試験条件(流量、pH、粒子吸着量)は、3nmのUPE膜の装置と同様である。5nmの装置を0.36LPMではなく0.5LPMという高めの流量で試験すると(
図21参照)、同様の結果が得られる。UPEだけの装置の保持能と、0.2umのNylonナノ繊維の別の層を有する装置の保持能との違いは極めて大きい。しかしながら、この高めの流量では、Nylonナノ繊維の2つの層を有する装置で、1層のNylon NFを有する装置と比して保持能の大きな改善が認められない。
【0138】
これらの試験の結果から、pHおよび流量の同様の条件下で、全体としての保持能は5nmのUPE膜の場合より3nmのUPE膜のほうがよく、この結果は3nmおよび5nmの膜装置を有する装置の流量で一貫している。
【0139】
低めと中性のpHで界面活性剤を加えて25nmの粒子での負荷をかけると、UPE微孔膜だけの装置に比して、UPE膜と0.2umのNylonナノ繊維および多孔質支持体の別の層を有する装置で保持能が有意に改善されることがわかる。また、2層のNylonナノ繊維を有する装置では、特に高めの単層膜粒子カバレッジで、保持能のさらなる改善が認められる。
【0140】
界面活性剤を加えると非ふるい作用が大幅に小さくなるとはいえ、理論に拘泥されるものではないが、これらの結果は、Nylonナノ繊維層からの非ふるい作用が、UPE膜だけの装置に比して比較的高いことを示唆している。
【0141】
高めのpH8.5で、たとえば
図19、UPEだけの場合とUPE+別のNylonナノ繊維層の装置との場合での保持能の違いが、
図18に示す同一の装置で低めのpH条件の場合の保持能に比して小さくなる。しかしながら、3nmのUPEおよび2層のナイロンナノ繊維(2009−247−5)を用いる場合の保持能は、流量0.36リットル/分で30分後に3nmのUPEのみ(2009−247−1)の場合の保持能の約2倍である。理論に拘泥されるものではないが、Nylonナノ繊維からの非ふるい作用が高めのpHでは小さくなるのかもしれない。
【0142】
この実施例の結果から、1つ以上のナノ繊維層および微孔膜を有するフィルタ部材が、フィルタ部材に用いられている微孔膜単独の場合と実質的に同一の圧力降下を示し(
図15および
図16)、pH6.5、0.36LPMで界面活性剤を用いると、25nmPSL粒子に対するフィルタ部材の保持能が、
図18に示すように3nmの微孔膜で30分後に40パーセントまたは約40パーセントから50パーセントまたは約50パーセントの範囲で改善され、
図20に示すように5nmの微孔膜では30分後に50パーセントまたは約50パーセントから60パーセントまたは約60パーセントの範囲で改善されることがわかる。
【0143】
以上、特定の実施形態を参照して本発明について詳細に説明したが、他の態様も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨および範囲は、本明細書に含まれる説明および態様に限定されるものではない。