(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記広バンドギャップ半導体BJTが、シリコンカーバイドベース、シリコンカーバイドコレクタ、及び、シリコンカーバイドエミッタを有するBJTを含み、前記MOSFETがシリコンカーバイドMOSFETを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の高電力IGBT。
前記高濃度ドープp型層の第1の側に存在するとともに前記ゲート電極の下に存在する前記nウェルの第1のチャネル領域が、前記高濃度ドープp型層の反対側に存在する前記nウェルの第2の領域と同じ濃度でドープされる、
ことを特徴とする請求項7に記載の高電力IGBT。
【背景技術】
【0003】
モータ駆動、機器制御、ロボット、照明バラスト、及びその他の用途における回路は、多くの場合、大きな電流を運んで高い阻止電圧をサポートできる半導体スイッチング素子を必要とする。バイポーラ接合トランジスタ(「BJT」)は、比較的大きな出力電流を処理して比較的高い阻止電圧をサポートする能力により、多くの高電力用途に最適なスイッチング素子となっている。
【0004】
当業者にはよく知られているように、BJTは、ドープ半導体材料で構成される三端子素子である。BJTは、半導体材料内に、互いにごく接近して形成された2つのp−n接合部を含む。動作時には、p−n接合部の一方に隣接する半導体材料の第1の領域(エミッタと呼ばれる)に電荷キャリアが入る。電荷キャリアの大半は、他方のp−n接合部に隣接する半導体材料の第2の領域(コレクタと呼ばれる)から素子を出る。コレクタ及びエミッタは、半導体材料の同じ導電型を有する領域内に形成される。コレクタとエミッタの間には、ベースとして知られている半導体材料の第3の領域が位置し、この領域は、コレクタ及びエミッタの導電型とは逆の導電型を有する。従って、BJTの2つのp−n接合部は、コレクタがベースに接触する箇所、及びベースがエミッタに接触する箇所に形成される。BJTのベースを通じて小電流を流すことにより、比例的により大きな電流がエミッタからコレクタに流れる。
【0005】
BJTは、「PNP」素子であっても、又は「NPN」素子であってもよい。PNP BJTでは、エミッタ及びコレクタが半導体材料のp型領域に形成され、この2つのp型領域の間に位置する半導体のn型領域にベースが形成される。NPN BJTでは、エミッタ及びコレクタが半導体材料のn型領域に形成され、この2つのn型領域の間に位置する半導体のp型領域にベースが形成される。
【0006】
トランジスタのベースを通じて電流を流すことによってBJTが「オン」になる(すなわち、エミッタからコレクタに電流が流れるようにバイアスがかかる)という点で、BJTは電流制御素子である。例えば、NPN BJTでは、通常、ベースに正電圧を印加してベース−エミッタのp−n接合部に順方向バイアスをかけることにより、トランジスタがオンになる。素子にこのようにバイアスがかかると、トランジスタのベースにホールが流れ込み、これらがエミッタに注入される。ベースはp型領域であり、このような領域ではホールが「通常の」電荷キャリアであることから、ホールは「多数キャリア」と呼ばれる。同時に、エミッタからベースに電子が注入され、コレクタへ向けて拡散する。p型ベース領域では、電子は通常の電荷キャリアではないので、これらの電子は「少数キャリア」と呼ばれる。
【0007】
素子のベースは、ベースとエミッタの間を流れる多数キャリアと再結合する少数キャリア(すなわち、NPN BJTのエミッタからベースに注入される電子)の割合を最小にするために、比較的薄い領域となるように形成される。コレクタに正電圧を印加することにより、コレクタ−ベース間のp−n接合部に逆方向バイアスが加わる。これにより、エミッタからベースに注入される電子のコレクタへの掃引が容易になる。エミッタ−コレクタ間電流には電子及びホール電流の両方が含まれるので、この素子は「バイポーラ」素子と呼ばれる。素子のベースを流れる電流の大部分が、エミッタ−コレクタ間電流を制御する。
【0008】
BJTは、素子を「オン」状態に保持するために、(コレクタ電流の1/5〜1/10などの)比較的大きなベース電流を必要とすることがある。高電力BJTのコレクタ電流が大きくなると、一般にベース電流需要も大きくなる。高電力BJTが必要とし得る比較的大きなベース電流を供給するために、比較的複雑な外部駆動回路が必要となることもある。これらの駆動回路を使用して、トランジスタを「オン」状態と「オフ」状態の間で切り替える電流をBJTのベースに選択的に供給する。
【0009】
高電力用途におけるスイッチング素子として使用できる別の周知のタイプの半導体トランジスタに、パワー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)がある。パワーMOSFETは、素子のゲート電極にゲートバイアス電圧を印加することにより、オン又はオフになることができる。例えば、n型MOSFETは、ゲート電極に正のバイアスが加わることに応答して素子のp型チャネル領域に導電性n型反転層が形成されるとオンになる。この反転層は、MOSFETのn型ソース領域とドレイン領域を電気的に接続し、この結果これらの間の多数キャリアの伝導を可能にする。
【0010】
パワーMOSFETのゲート電極は、薄い絶縁層によってチャネル領域から分離される。MOSFETのゲートがチャネル領域から絶縁されるので、MOSFETを導電状態に保持するため、又はMOSFETをオン状態とオフ状態の間で切り替えるためには、最小限のゲート電流があればよい。ゲートは、チャネル領域とともにキャパシタを形成するので、スイッチング中はゲート電流が低く保たれる。従って、スイッチング中には最小限の充電電流及び放電電流(「変位電流」)しか必要とされず、複雑度の低いゲート駆動回路が可能となる。さらに、MOSFET内の電流導電は多数キャリアの移動を通じてのみ行われるので、MOSFET素子では、BJT内に生じる過剰少数キャリアの再結合に伴う遅延が存在せず、スイッチング速度がBJTよりも数桁分速くなる。しかしながら、パワーMOSFETのドリフト領域は、少数キャリアの注入がないことによって生じる比較的高いオン抵抗を示すことがある。この結果、通常、パワーMOSFETの動作順方向電流密度は、パワーBJTと比較して相対的に低い値に制限される。
【0011】
バイポーラ電流導電とMOS制御された電流フローの組み合わせを具体化する素子も知られている。このような素子の一例に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(「IGBT」)があり、これは、パワーMOSFETの高インピーダンスゲートをパワーBJTの少ないオン状態導電損失と組み合わせる素子である。IGBTは、例えば入力側に離散的な高電圧nチャネルMOSFETを含み、出力側に離散的なBJTを含むダーリントンペアとして実現することができる。MOSFETは、BJTのベース電流を供給する一方で、外部駆動回路に対して最小限の負荷しか示さない。IGBTは、BJTの高温、高電流密度というスイッチング特性を、MOSFETの最小限の駆動要件と組み合わせることができる。
【0012】
図1は、従来のnチャネルIGBT5の簡易回路図である。
図1に示すように、IGBT5は、ダーリントンペアとして構成されたPNP BJT10及びMOSFET20を含み、MOSFETのチャネル電流がBJT10のベース12を駆動する。素子のn−型ドリフト領域は、抵抗13を示す。MOSFET20のゲート22に閾値電圧を印加することにより、MOSFET20のチャネル18を電流が流れてBJT10のゲート12を駆動し、これによりBJT10がオンになる。
【0013】
図2は、
図1のIGBT5のより完全な等価回路であり、n
+型MOSFETソース24、p型本体領域(すなわち、BJT10のコレクタ16)、及び素子のn
-型ドリフト領域によって形成される寄生NPNトランジスタ30を示している。
図2には、p型本体領域の水平抵抗17も示している。p型本体領域を流れる電流が十分に高い値に達すると、抵抗17に電圧降下が生じ、p型本体領域とn
+型MOSFETソース24の間のp−n接合部に順方向バイアスがかかる。この結果、寄生サイリスタの一部を形成する寄生トランジスタ30がオンになり、n
+型MOSFETソース24からp型本体領域に高レベルの電子が注入され、ゲート22を使用して素子内の電流フローを制御する能力が失われる。この状態は、一般に寄生サイリスタの「ラッチアップ」と呼ばれ、これが生じると、通常は素子が破損する。従って、寄生サイリスタのラッチアップを避けるために、IGBTを流れるオン状態の電流密度を制限するように注意しなければならない。このIGBTの特性は、IGBTのサージ電流耐量も制限する。
【0014】
多くのパワー半導体素子はシリコン(「Si」)で形成されるが、他の様々な半導体材料も使用されてきた。これらの代替材料の1つにシリコンカーバイド(「SiC」)がある。シリコンカーバイドは、例えば、広バンドギャップ、高絶縁破壊電界強度、高熱伝導率、高融点及び高飽和電子ドリフト速度などの潜在的に有利な半導体特性を有する。従って、シリコンカーバイドで形成された電子素子は、例えばシリコンなどの他の半導体材料で形成された素子に比べ、より高温、高電力密度、高速、高電力レベルで、及び/又は高放射密度の下で動作する能力を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を示す添付図面を参照しながら本発明をより完全に説明する。本発明は、多くの異なる形態で具体化することができるが、本明細書に示す実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全なものとし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供するものである。図面では、明確にするために、層及び領域のサイズ及び相対的サイズを誇張していることがある。ある要素又は層について、別の要素又は層に「接する(on)」、「接続される(connected to)」、又は「結合される(coupled to)」と記載する場合、これらが他の要素又は層に直接接し、接続され、又は結合されることもあり、或いは介在する要素又は層が存在することもある。対照的に、ある要素について、別の要素又は層に「直接接する(directly on)」、「直接接続される(directly connected to)」、又は「直接結合される(directly coupled to)」と記載する場合、介在する要素又は層は存在しない。本明細書で使用する「及び/又は(and/or)」という用語は、関連する記載項目の1又はそれ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。全体を通じて、同じ数字は同じ要素を示す。
【0025】
本明細書では、様々な領域、層及び/又は要素を説明するために第1の(first)及び第2の(second)という用語を使用するが、これらの領域、層及び/又は要素をこれらの用語によって制限すべきではない。これらの用語は、1つの領域、層又は要素を別の領域、層又は要素と区別するために使用するものにすぎない。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、後述する第1の領域、層又は要素を第2の領域、層又は要素と呼ぶことができ、同様に第2の領域、層又は要素を第1の領域、層又は要素と呼ぶこともできる。
【0026】
さらに、本明細書では、図面に示すような1つの要素と別の要素の関係を説明するために、「下部の(lower)」又は「底部の(bottom)」及び「上部の(upper)」又は「頂部の(top)」などの相対語を使用することがある。相対語は、図面に示す位置付けに加え、素子の異なる位置付けを含むことを意図するものである。例えば、図面内の素子を回転させれば、他の要素の「下部」側に存在するものとしてと説明される要素は、この他の要素の「上部」側に位置付けられるようになる。従って、「下部の」という例示的な用語は、図の特定の位置付けに応じて「下部」及び「上部」という両方の位置付けを含むことができる。同様に、図の1つに描かれた素子を回転させれば、他の要素の「下方(below)」又は「下位(beneath)」に存在するものとして説明される要素は、この他の要素の「上方(above)」に置かれるようになる。従って、「下方」又は「下位」という例示的な用語は、上方及び下方という両方の位置付けを含むことができる。
【0027】
本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する単数形の「1つの(英文不定冠詞)」及び「その(英文定冠詞)」は、その文脈で別様に明確に示していない限り、複数形も含むことが意図される。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用する場合、上述した特徴、ステップ、動作、要素、及び/又は構成部品の存在を示すが、1又はそれ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成部品、及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。
【0028】
本明細書では、概略図である断面図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。このため、例えば製造技術及び/又は製造公差などの結果として生じる、図示の形状からの変化を予想すべきである。従って、本発明の実施形態は、本明細書に示す特定の形状の領域に限定されると解釈すべきではなく、例えば製造に起因する形状の偏差を含む。例えば、長方形として図示又は記載する領域が、通常の製造公差に起因して、丸みのある又は湾曲した特徴を有することもある。従って、図示の領域は事実上概略的なものであり、これらの形状は、素子の領域の正確な形状を示すことを意図するものでも、本発明の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0029】
特に定めがない限り、本明細書で使用する(技術用語及び科学用語を含む)全ての用語は、本発明が属する技術の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。一般に使用される辞書で定義されるような用語については、本開示及び関連技術との関連におけるこれらの意味に従う意味を有すると解釈すべきであり、本明細書で明確に定義しない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されるものではない。
【0030】
シリコンカーバイドは、シリコンに比べて10倍高い電界(E−field)破壊を示すことができる広バンドギャップ半導体である。この高電界破壊に起因して、例えば高電圧4H−SiCスイッチング素子のドリフト領域の厚みは、同等の定格電圧を有するシリコン素子のドリフト領域の厚みの約1/10とすることができる。従って、4H−SiC高電圧バイポーラスイッチング素子では、ドリフト領域の厚みが減少することにより、ドリフト層の全伝導率変調を、シリコン素子で利用できるものよりも2桁分短い少数キャリア寿命によって達成することができる。4H−SiC素子で薄いドリフト層を使用できることにより、ドリフト層内の蓄積電荷もシリコン素子と比べて1桁小さくなる。これらの蓄積電荷及び少数キャリア寿命の減少を踏まえると、高電圧4H−SiCバイポーラ素子は、同等の定格電圧を有するシリコン素子に比べて、ターンオフ特性を最大3桁改善することができる。
【0031】
さらに、4H−SiCドリフト層のドーピング濃度が比較的高く、熱の発生がごく少ないことにより、4H−SiCを使用して(例えば15kVを上回る)極めて高い阻止電圧を有するパワー素子を製造できる一方で、シリコンパワー素子の最大阻止電圧はこれよりも(例えば約12kVに)制限される。従って、(13.8kV〜69kVなどの)中電圧駆動用途では、4H−SiCパワー素子を利用することにより、必要な阻止電圧を供給するために必要な総電力成分量を大幅に減少させることができる。
【0032】
12kVの阻止電圧を有するシリコンカーバイドnチャネル及びpチャネルIGBTを、4H−SiCに基づいて示した。これらの4H−SiC IGBTは、ドリフト層が伝導率変調されるため、優れたオン状態電流密度を示す。同時に、これらのIGBTは、制御しやすいMOSゲートを採用し、スイッチング特性がサイリスタよりもかなり高速である。
【0033】
図3は、従来のpチャネルIGBT100の回路図である。
図4は、
図3の従来のIGBT100の2つの単位セルの実施構成の断面図である。
【0034】
図3に示すように、IGBT100は、ベース112、エミッタ114及びコレクタ116を有するNPNシリコンカーバイドパワーBJT110を含む。IGBT100は、ゲート122、ソース124及びドレイン126を有するシリコンカーバイドパワーMOSFET120をさらに含む。シリコンカーバイドパワーMOSFET120のソース124は、シリコンカーバイドパワーBJT110のベース112に電気的に接続され、シリコンカーバイドパワーMOSFET120のドレイン126は、シリコンカーバイドパワーBJT110のコレクタ116に電気的に接続される。
図3に示すように、慣例により、BJT110のコレクタ116はIGBT100のエミッタ104であり、BJT110のエミッタ114はIGBT100のコレクタ106である。MOSFET120のゲート122は、IGBT100のゲート102としても機能する。
【0035】
IGBT100は、以下のように動作することができる。IGBT100のゲート102には、パワーMOSFET120にゲートバイアス電圧を印加するための外部駆動回路130が接続される。この外部駆動回路130が、MOSFET120の閾値電圧よりも高い電圧をIGBT100のゲート102に印加すると、ゲート102の下に、IGBT100のp
+エミッタ104(すなわち、BJTの110コレクタ116)をBJT110のベース112に電気的に接続するチャネル128として機能する反転層が形成される。p
+エミッタ領域104からチャネル128を通じてベース112にホールが注入される。このホール電流は、BJT110を駆動するベース電流として機能する。このホール電流に応答して、IGBT100のコレクタ106(すなわち、BJT110のエミッタ114)からベース112を通じてIGBT100のエミッタ104(すなわち、BJT110のコレクタ116)に電子が注入される。従って、シリコンカーバイドパワーMOSFET120は、シリコンカーバイドパワーBJT110を電流駆動素子から電圧駆動素子に変更し、これにより外部駆動回路130を単純化することができる。シリコンカーバイドパワーMOSFET120は、駆動トランジスタとして機能し、シリコンカーバイドパワーBJT110は、IGBT100の出力トランジスタとして機能する。
【0036】
図4は、(a)
図3のパワーMOSFET120の一部を形成するために使用される2つの個々のMOSFET120’、及び(b)
図3のパワーBJT110の一部を形成するために使用される2つの個々のBJT110’の概略断面図である。パワーIGBT100を形成するために、複数の個々のMOSFET120’が平行に実装され、複数の個々のBJT110’が平行に実装されていることが理解できよう。いくつかの実施形態では、個々のMOSFET120’を個々のBJT110’と空間的に分離できるのに対し、他の実施形態では、個々のMOSFET120’と個々のBJT110’を素子全体にわたって混合することができる。いずれにせよ、個々のMOSFET120’と個々のBJT110の組み合わせを、機能上IGBT100の単位セル100’と見なすことができる。
【0037】
図4に示すように、MOSFET120’及びBJT110’を、同じバルク単一結晶n型シリコンカーバイド基板140上に形成することができる。いくつかの実施形態では、基板140を省くことができる。基板140上には、p
+シリコンカーバイドフィールドストッパ層145が設けられる。p型フィールドストッパ層145をエピタキシャルに成長させ、例えば約0.2ミクロンの厚みとし、約5×10
17cm
-3の濃度にドープすることができる。フィールドストッパ層145上には、低濃度ドープp型(p−)シリコンカーバイドドリフト層150が設けられる。p型ドリフト層150は、例えば、約2×10
14cm
-3の濃度でドープした100マイクロメータ(μm)の厚みのエピタキシャル層とすることができる。低濃度ドープドリフト層150における少数キャリア寿命は、約2マイクロ秒(μs)である。ドリフト領域150上には、やはりエピタキシャルに成長できるp型シリコンカーバイド電流拡散層155が設けられる。p型シリコンカーバイド電流拡散層155の上面には、1対のシリコンカーバイドnウェル160が設けられる。個々のnウェル160の中心部には、p
+シリコンカーバイドエミッタ領域104’が形成される。p
+シリコンカーバイドエミッタ領域104’に隣接する個々のnウェル160の上部には、高濃度ドープn
+シリコンカーバイド層165を形成することもできる。個々の単位セルのn
+シリコンカーバイド領域165及びp
+シリコンカーバイド領域104’に接触するように抵抗接点175が形成され、n
+シリコンカーバイド基板140の裏側には抵抗接点180が形成される。p型シリコンカーバイド電流拡散層155、nウェル160の頂部、及びp
+シリコンカーバイドエミッタ領域104’上を覆って、シリコン酸化層などのゲート絶縁層170が形成される。最後に、このゲート絶縁層170上に、例えばシリコンカーバイド層などのMOSFETゲート122’が形成される。上述したように、このMOSFETゲート122’は、単位セル100’のゲート102’としても機能する。これにより、nウェル160の各々のp
+エミッタ領域104’とp型電流拡散層155の間にMOSFETチャネルが定められる。
【0038】
キャリア濃度に関しては、上述したp
+及びn
+導電型領域及びエピタキシャル層を、過度の製造欠陥を引き起こさずに可能な限り高濃度にドープすることができる。p型シリコンカーバイド領域を生成するのに適したドーパントには、アルミニウム、ホウ素又はガリウムがある。n型シリコンカーバイド領域を生成するのに適したドーパントには、窒素及びリンがある。
【0039】
p
+シリコンカーバイド領域104’は、IGBT100の各それぞれの単位セル100’のエミッタとして(及び、各IGBT100’の一部であるBJT110’のコレクタ116として)機能する。p型シリコンカーバイド層145、150、155は、BJT110’のベース112’として機能し、n
+シリコンカーバイド基板140は、BJT110’のエミッタ114’及びIGBT100’のコレクタ106’として機能する。p
+シリコンカーバイド領域104’は、それぞれのMOSFET120’のドレイン領域126’として機能し、p型シリコンカーバイド電流拡散層155は、MOSFET120’のソース領域124’として機能する。p
+シリコンカーバイド領域104’とp型シリコンカーバイド電流拡散層155の間のnウェル160の上部は、それぞれのMOSFET120’のチャネル128’を含む。
【0040】
図3及び
図4には、本発明の実施形態によるpチャネルIGBT100の単位セル100’の構造を示しているが、本発明の別の実施形態によるnチャネルIGBTを提供することもできる。例えば、このような1つの実施形態では、半導体層の各々の極性が逆になることを除き、
図4に示すものと同じ構造のnチャネルIGBTの単位セルを提供することができる。
【0041】
以下、再び
図4を参照しながら、単位セル100’の動作について説明する。MOSFET120’の閾値電圧を上回るバイアス電圧がゲート122’に印加されると、
図4の「ホール電流」とラベル表示した矢印で示すように、各MOSFET120’のチャネル128’を横切ってBJT110’のベースにホール電流が流れる。このベース電流のp型電流拡散層155を通る垂直伝導は、nウェル160間に定められたJFET領域を通る。このベース電流に応答して、各BJT110’のコレクタ116’(すなわち、
図4のSiC領域165)からnウェル160を通じて個々のBJT110’のエミッタ114’(すなわち、
図4の基板140)に電子電流が流れる。
【0042】
相互コンダクタンス及び最大制御可能電流密度は、nチャネルIGBTよりもpチャネルIGBTの方がかなり高い。この相違は、ホールに対する電子のキャリア移動度、すなわち、μ
e,bulk/μ
h,bulkによって説明することができ、4H−SiCでは約10になる。IGBTにおける電子電流とホール電流の比率は、キャリア移動度によって決定される。従って、4H−SiCでは、極性に関係なく、ホール電流よりも電子電流の方が約10倍大きい。nチャネル4H−SiC IGBTでは、(電子電流が優位を占めているので)電流のほとんどがMOSFETチャネルを流れ、従ってn型4H−SiC IGBTの相互コンダクタンス及び飽和電流(I
DSS)を、MOSFETチャネル移動度によって制限することができる。対照的に、4H−SiCpチャネルIGBTのMOSFETチャネルは、総電流のほんのわずかを運ぶにすぎず、電流のほとんどは広いベースNPN BJTのコレクタを流れ、この結果、利得が大幅に向上して飽和電流がかなり高くなる。
【0043】
ドリフト層の伝導率変調は、(基板からなどの)裏側からの少数キャリアの注入、及び注入された少数キャリアの拡散距離に依存する。温度が上昇するにつれ、同様にキャリア寿命も延びる。しかしながら、さらに速い速度で温度が上昇すると移動度は減少し、従って温度の上昇とともに拡散距離が減少する。4H−SiCバイポーラ素子では、より高い電子の移動度に起因して、同じキャリア寿命であれば、ホールの拡散距離よりも電子の拡散距離の方が約3倍大きい。従って、(ホールが少数キャリアである)nチャネルIGBTよりも、(電子が少数キャリアである)pチャネルIGBTの動作温度の範囲全体にわたってドリフト層の全伝導率変調を維持する方がずっと容易である。
【0044】
上述したように、残念ながらIGBTは、ある環境下でラッチアップを生じ得る寄生サイリスタを含む。例えば、
図4を参照すると、単位セル100’を流れる電子電流が増加するにつれ、個々のnウェル領域160と、これに関連するp
+エミッタ領域104’との間に電圧差が生じる。この電圧差が閾値量(例えば典型的なシリコンカーバイドIGBTでは約2.7ボルト)に達すると、nウェル領域160及びp
+エミッタ領域104’により形成されるp−n接合がオンになる。こうなると、たとえゲート122’に印加されるバイアス電圧を取り除いても、コレクタ116’からエミッタ114’に電子電流が流れ続けるようになる。従って、この閾値電流密度に達するとIGBT100の制御が失われる恐れがあるので、IGBT100は、p−n接合をオンにするのに必要な電流密度未満の電流密度でしか使用することができない。
【0045】
シリコンベースのIGBTにも、制御可能な電流密度に関する制限があるが、通常、シリコンにおける電子移動度はホール移動度の2〜3倍であり、これに対して、上述したように、4H−SiCベースIGBTのドリフト領域では、通常、電子移動度はホール移動度の10倍を超える。この結果、シリコンカーバイドIGBTでは、電流の大部分が、コレクタ116’からnウェル160を通じてエミッタ114’に流れる電子電流で構成される。従って、シリコンカーバイド内の電子及びホール移動度の顕著な違いに起因して、ラッチアップを引き起こすnウェルを流れる電流がより急速に形成されるので、本質的にシリコンカーバイドIGBTの方がラッチアップしやすい傾向にある。
【0046】
本発明の実施形態によれば、少数キャリア転換経路又は「少数キャリアダイバータ」として機能するシリコン層を有する高電圧シリコンカーバイドIGBTが提供される。本発明の実施形態によるシリコンカーバイドIGBT内に提供されるシリコン層は、素子を通じてかなりの割合の少数キャリア電流を運ぶことができる伝導経路を提供することができ、これによりIGBT構造のラッチアップの際に寄生サイリスタを形成するのに必要な、素子のオン状態電流密度が増加する。この結果、本発明の実施形態によるシリコンカーバイドIGBTは、制御可能な電流密度を大幅に増やすことができる。
【0047】
シリコンIGBTにおけるラッチアップを減少させる1つの技法は、ゲートの下に少数電流転換経路として機能するnウェルを配置することである。この少数電流転換経路には(50パーセントなどの)かなりの量の少数電流が流れることができ、これによりp−n接合部を通る電流フローが減少し、寄生サイリスタのラッチアップを伴わずに電流密度を大きくすることができる。
【0048】
シリコンカーバイドIGBTでは、素子のゲートの下にシリコンカーバイドnウェルを形成して、このような少数電流転換経路を提供することができる。しかしながら、セルピッチは大幅に増加する。対照的に、シリコンカーバイドIGBT内にシリコンnウェルを少数電流転換経路として形成した場合、狭いセルピッチを保持することができ、ゲートソース容量CGSも同様に減少する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、セル内に少数キャリアダイバータを有する単位セルを含むシリコンカーバイドIGBTが提供される。エピタキシャル素子構造にp−nヘテロ接合を提供することによって少数キャリアダイバータを形成することができ、少数キャリアダイバータを形成する半導体層は、シリコンカーバイドホモ接合の拡散電位よりも低い拡散電位を有する(本明細書では、「ホモ接合」とは、同じ基材から形成される2つの層のp−n接合のことを意味する)。例えば、いくつかの実施形態では、エピタキシャル素子構造に、素子のドリフト領域の導電型とは逆の導電型を有するポリシリコン膜を設けることによって少数キャリアダイバータを形成することができる。従って、例えば、本発明の実施形態によるpチャネルIGBTでは、少数キャリアダイバータをn型シリコン膜で構成することができる。少数キャリアダイバータにより提供される伝導経路は、かなりの量の総少数キャリア電流を素子のnウェルから離して転換させることができ、従って、素子内に存在する寄生サイリスタのラッチアップの発生を飛躍的に抑えることができる。従って、本発明の実施形態によるパワーシリコンカーバイドIGBTは、制御可能な電流密度を増加させることができた。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、(一例としてp−IGBT構造を使用する)素子内でイオン注入により少数キャリアダイバータを形成してp−n接合を形成する代わりに、例えば、導電層によってIGBTのエミッタに電気的に接続されるn
+ポリシリコン/p型シリコンカーバイドヘテロ接合が形成される。このn
+ポリシリコン/p型シリコンカーバイドヘテロ接合をJFETギャップ領域に配置して、少数キャリア電流(すなわち、pチャネルIGBT場合には電子電流)を埋め込みnウェルから離して転換させる。n型ポリシリコンとp型シリコンカーバイドの間の拡散電位は、例えば約1.2Vとすることができる。対照的に、シリコンカーバイドホモ接合の拡散電位は、例えば約2.7Vとすることができる。
【0051】
いくつかの本発明の実施形態によるp型4H−SiC IGBTの1対の単位セル200を
図5の断面図に示す。
図5に示す単位セル200は、例えば15kVの阻止能力を有するIGBTの一部とすることができる。単位セル200を一部とするIGBTは、
図3に示すIGBT100と同じ回路図を有することができる。
【0052】
図5に示すように、単位セル200は、高濃度ドープn
+4Hシリコンカーバイド基板240上に形成される。シリコンカーバイド基板240上には、中濃度ドープn型シリコンカーバイド注入層245が、例えばエピタキシャル成長によって形成される。このn型シリコンカーバイド注入層245上には、中濃度ドープp型シリコンカーバイドベース層250が形成される。このp型シリコンカーバイドベース層250上には、例えば、約150マイクロメータの厚みを有する(約1×10
14cm
-3以下などの)低濃度ドープp型ドリフトシリコンカーバイド層255が形成される。層245、250及び255は、全て4H−SiC層を含むことができる。
【0053】
さらに
図5に示すように、p型シリコンカーバイドドリフト層255の上面には、1対のシリコンカーバイドnウェル260が設けられる。各シリコンカーバイドnウェル260の中心部には、高濃度ドープp
+シリコンカーバイドエミッタ領域204が形成される。個々のp
+シリコンカーバイド領域204上、及び個々のシリコンカーバイドnウェル260の一部の上に、抵抗接点275が形成される。n
+シリコンカーバイド基板240の裏面には、抵抗接点280が形成される。p
-シリコンカーバイドドリフト層255、各nウェル260の一部、及び各p
+シリコンカーバイドエミッタ領域204の一部を覆って、シリコン酸化層などのゲート絶縁層270が形成される。最後に、このゲート絶縁層270上に、例えばシリコンカーバイド層などのゲート222が形成される。これにより、nウェル260の各々のp
+エミッタ領域204とp型シリコンカーバイドドリフト層255の間にMOSチャネルが定められる。
【0054】
素子のMOSチャネルを流れる電流は、ホール電流よりも電子電流の方が約1桁多いので、単位セル200を含むIGBTは、大幅な利得増大をもたらす。nチャネル4H−SiC MOSパワー素子又はpチャネル4H−SiC MOSパワー素子の両方では、通常、ゲート誘電体(すなわち、
図5のゲート絶縁層270)に非常に高い電界を印加して素子をオンにし、低MOS有効チャネル移動度を補償するので、この利得増大の特性は素子の信頼性にとって重要な意味を持つ。pチャネルIGBT内のMOSチャネルにはわずかな電流しか流れないのに対し、バイポーラトランジスタのNPN構造にはオン状態電流の大部分が流れるので、ゲート誘電体層に著しく低い電界を印加する一方で、適度に高いオン状態電流密度を達成することができる。従って、ゲート誘電体の信頼性を実質的に改善することができる。しかしながら、上述したように、この利得増大によって素子のNPN構造を通る電流が増加することにより、寄生サイリスタのラッチアップの可能性も高まる。従って、素子におけるラッチアップのリスクを低減又は最小化するように注意しなければならない。
【0055】
素子がサポートできる制御可能な電流密度を増加させるために、
図5のIGBT200は、p型シリコンカーバイドドリフト層255とヘテロ接合を形成するn
+ポリシリコン層290をさらに含む。このポリシリコン層290を、例えば化学蒸着又はスパッタリングにより、シリコンカーバイドnウェル260間のJFETギャップ領域内のp型シリコンカーバイドドリフト層255上に形成することができる。
図5に示すように、いくつかの実施形態では、ポリシリコン層290の底面がnウェル260の上面と実質的に整列するようにして、p型シリコンカーバイドドリフト層255の上面上にポリシリコン層290を形成することができる。
図5Aに示すように、他の実施形態では、p型シリコンカーバイドドリフト層255の中心部を窪ませて、ドリフト層255の凹領域内にポリシリコン層290を形成することができる。このような実施形態では、基板240の上方で、ポリシリコン層290の上面をnウェル260の上面の高さとほぼ同じにすることができる。
図5及び
図5Aの両方の実施形態では、ポリシリコン層290をエミッタ領域204に電気的に接続して、基板240からエミッタ領域204までの、ポリシリコン層290を流れる電流路を提供することができる。いくつかの実施形態では、ポリシリコン層290とエミッタ領域204の間の電気接続部を、例えば
図5に示す平面外の素子セルの隅に配置することができる。
【0056】
図5及び
図5Aの両方の実施形態では、ポリシリコン層290が、少数キャリア電流の大部分を埋め込みnウェル260から離して転換できる少数電流ダイバータとして機能する。nウェル260の電圧降下は、nウェルを通過する電流密度の関数であり、少数電流ダイバータ290が寄生サイリスタのラッチアップの発生を飛躍的に減少させることができるので、素子の制御可能な電流密度が潜在的に増加する。
【0057】
上述したように、
図5の実施形態では、ドリフト層255の上面上に、nウェル260間に配置されたドリフト層255のJFET領域の上方に存在するようにポリシリコン層290が形成される。代わりに、
図5Aの実施形態の場合のように、少数電流ダイバータ290をJFET領域内に配置した場合、ドリフト層255のJFET領域を通るベース電流を運ぶチャネルの幅が狭くなり、これによりJFET領域内の抵抗が増加することがある。この抵抗の増加は、IGBTのベース電流を減少させるように機能し、これがさらに素子全体の少数電流密度を減少させることがある。従って、
図5の実施形態のように、JFET領域の上方にポリシリコン層290を形成することにより、ドリフト層255のJFET領域内の抵抗の増加を抑えることができ、素子が大きな電流密度をサポートできるようになる。
【0058】
少数キャリアダイバータ290は、ゲート電極がゲート絶縁層を通じてp型ドリフト層255と直接重なる度合いも減少させる。この結果、少数キャリアダイバータ290を含めることにより、ゲート駆動回路がIGBTをオンにするために供給しなければならない電力を低減できるようになる。従って、本発明の実施形態によるIGBTは、恒常的なゲート駆動のために、スイッチング速度を速めることができる。
【0059】
図5に示すように、いくつかの実施形態では、ポリシリコン層290の上方及び/又は側方に存在するゲート絶縁層270の中心部の方を、nウェル260及びp
+シリコンカーバイド層204を覆って拡がるゲート絶縁層270の外側部分よりも厚くすることができる。この厚くした酸化層により、ゲート絶縁層270の中心部に印加される高電界を考慮した場合に生じ得る酸化層の劣化の影響を抑えることができる。
【0060】
図6Aは、
図3及び
図4の構造を有する従来の4H−SiC IGBTのトップ電極(すなわち、
図4の単位セル100’における電極175)の各々を通るシミュレートした電流フローを示すグラフである。
図6Bは、
図3のIGBT構造の単位セルの、IGBTが「オン」状態のときの素子の異なる領域を通る電流密度を示す簡略断面図である。
図6A及び
図6Bに示すように、高ドレイン電圧(すなわち、基板に印加される電圧)では、電流の大部分が、nウェル160及びn
+シリコンカーバイド領域165を流れる電子電流である。例えば、−20ボルトのドレイン電圧では、n
+シリコンカーバイド領域165を流れる電子電流が約30A/cm
2であるのに対し、p
+シリコンカーバイド領域104を流れるベースホール電流は15A/cm
2未満である。上述したように、nウェル160及びn
+シリコンカーバイド領域165を通る電流が大きくなるにつれ、IGBTは、寄生サイリスタの結果としてラッチアップする可能性がある。
【0061】
相対的に、
図7Aに、
図5AのIGBT200の構造を有する本発明の実施形態による4H−SiC IGBTのトップ電極の各々を通るシミュレートした電流フローを示している。
図7Bは、
図5AのIGBT構造の、IGBTが「オン」状態のときの素子の異なる領域を通る電流密度を示す簡略断面図である。
図7A及び
図7Bに示すように、高ドレイン電圧(すなわち、基板に印加する電圧)では、ポリシリコン少数電流ダイバータ290を流れる電子電流の量は、nウェル260及びn
+シリコンカーバイド領域265の一方を流れる電子電流の量とほぼ等しい。このことは、相当量の電子電流がnウェル260及びn
+シリコンカーバイド領域265から離れて転換され、これによりラッチアップの可能性が低下する一方で、素子を通じて大きな電流密度をサポートしていることを示す。この結果、n
+ポリシリコン/pシリコンカーバイド/n基板構造を有するトランジスタのコレクタ電流を表す総順方向電流の約3分の1が、素子のベースを導電する。従って、本発明のいくつかの実施形態による少数電流ダイバータを含めた結果、ラッチアップ電流密度を大幅に改善することができる。
【0062】
図5及び
図5Aの素子には、本発明の範囲から逸脱することなく数多くの変更を行うことができる。例えば、
図5及び
図5Aに示すシリコンカーバイドIGBTが各々平面構造を有するのに対し、トレンチ構造を有するMOSFETゲートを備えたIGBTに、本発明の実施形態による少数キャリアダイバータを同様に含めることもできる。別の例として、上述したIGBTがシリコンカーバイドIGBTで構成されるのに対し、他の実施形態では、シリコンカーバイドとは異なる広バンドギャップ半導体を使用することができ、及び/又は単結晶シリコン、シリコンゲルマニウムなどのポリシリコン以外の材料で少数キャリアダイバータを形成できることも同様に理解されよう。さらに他の実施形態では、少数キャリアダイバータの形状及び/又は位置が、
図5及び
図5Aに示す形状及び位置と異なってもよい。従って、これらの実施形態は限定を意図するものではなく、むしろ本発明の例示的な実施形態を例示するものであると理解されたい。
【0063】
上述したように、本発明の実施形態によるIGBTは、nウェル外部に電流のかなりの部分の経路を定めることができ、これにより、素子がラッチアップのリスクを高めずに、より大きな電流密度をサポートできるようになる。また、ポリシリコン少数電流ダイバータがコレクタからゲートを保護するので、ゲートドレイン入力容量を低減することができ、これによりゲート電荷を大幅に低減することができる。さらに、本発明の実施形態によるpチャネルIGBTでは、非常に大きな電子電流がもたらす利得増大により、低いゲート電界を印加して素子をオンにすることができるようになる。高電界を繰り返し印加することにより、素子のゲート酸化物が時間とともに劣化する可能性があるので、本発明の実施形態によるpチャネルIGBTに低い電界を印加できることにより、素子の安定性及び/又は信頼性を改善することができる。また、上述したIGBTを製造するための製造過程は、従来のIGBTの製造過程と一致する。
【0064】
以上、主にシリコン少数キャリアダイバータを含むシリコンカーバイド素子に関して本発明を説明したが、他の実施形態では、この素子は、例えば窒化ガリウム、セレン化亜鉛、又は他のいずれかのII〜VI族又はIII〜V族の広バンドギャップ化合物半導体などの、シリコンカーバイド以外の広バンドギャップ半導体を有することができると理解されたい。本明細書では、広バンドギャップという用語は、少なくとも1.4eVのバンドギャップを有するいずれかの半導体を含む。少数キャリアダイバータがシリコン以外の半導体を含むことができることも同様に理解されるであろう。
【0065】
特定の図を参照しながら上記の実施形態を説明したが、本発明のいくつかの実施形態は、追加の及び/又は介在する層、構造、又は要素を含むことができ、及び/又は特定の層、構造、又は要素を削除できることを理解されたい。本発明のいくつかの例示的な実施形態について説明したが、当業者であれば、本発明の新規の教示及び利点から大きく逸脱することなく、この例示的な実施形態に多くの修正を行えることを容易に理解するであろう。従って、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲には、全てのこのような修正が含まれることを意図している。従って、上述の内容は本発明の例示であり、開示した特定の実施形態に限定されると解釈すべきではなく、添付の特許請求の範囲には、開示した実施形態に対する修正及びその他の実施形態が含まれることを意図している。本発明は以下の特許請求の範囲により定義され、これには特許請求の範囲の同等物が含まれる。