【文献】
Masato Yoshioka ; Masahiro Kudo,"10-bit, 125MS/s, 40mW Pipelined ADC in 0.18μm CMOS",FUJITSU Scientific & Technical Journal,FUJITSU LIMITED,2006年 4月,2006-4(Vol.42, No.2),pp.248-257,URL,http://www.fujitsu.com/global/about/resources/publications/fstj/archives/vol44-2.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アナログ信号をサンプルホールドするサンプルホールド手段と、前記サンプルホールド手段によってホールドされた前記アナログ信号をディジタル信号に変換する複数のA/D変換手段と、複数の前記A/D変換手段から出力された複数の前記ディジタル信号を合成する演算手段と、複数の前記A/D変換手段によって行われる動作を制御する制御手段と、を備えるパイプライン型A/Dコンバータにおいて、
前記A/D変換手段は、
前記アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D副変換手段と、前記A/D副変換手段の変換結果に対応する基準電圧を生成する基準電圧生成手段と、前記基準電圧生成手段により生成された前記基準電圧と前記アナログ信号との差分信号を増幅する信号増幅手段とを備え、
前記信号増幅手段は、
所定の容量値をC(Cは正の数とする)とし、所定の分割数をN(Nは2以上の整数とする)とし、前記アナログ信号の増幅度をM(Mは2以上の整数とする)としたとき、夫々C/Nの容量値を有するN×M個の充放電素子と、スイッチング素子と、演算増幅器と、を備え、
前記基準電圧生成手段は、
所定の電圧をN倍した前記基準電圧を生成し、
前記制御手段は、
サンプル動作時に、N×M個の全ての前記充放電素子を用いて前記アナログ信号をサンプルし、ホールド動作時に、N×M個の全ての前記充放電素子のうちN個の前記充放電素子を用いて前記アナログ入力信号をM倍に増幅し、残りのN×(M−1)個の前記充放電素子を用いて増幅された前記アナログ入力信号に前記基準電圧生成手段により生成された所定の電圧をN倍した前記基準電圧を加減するように、動作を制御することを特徴とするパイプライン型A/Dコンバータ。
【背景技術】
【0002】
各種画像センサや画像処理装置等、アナログ信号をディジタル信号に変換することが必要な電子機器は、多くのデータを高速に処理することが求められる。このような処理を行うことができるように、複数のA/Dコンバータを互いに縦列に多段で接続して構成することで、1クロックの間に複数のA/D変換処理を行うことのできるパイプライン型A/Dコンバータが知られている。
【0003】
従来のパイプライン型A/Dコンバータとしては、例えば、非特許文献1のパイプライン型A/Dコンバータがある。
まず、
図10を参照して、従来の一般的なパイプライン型A/Dコンバータ100の構成を説明する。
図10は、従来の一般的なパイプライン型A/Dコンバータ100の構成を示すブロック図である。
【0004】
図10に示すパイプライン型A/Dコンバータ100は、サンプルホールド回路101、縦列接続されたk個のA/Dコンバータ102−1〜102−k、メモリ103、演算回路104および制御部105を備えて構成される。
サンプルホールド回路101は、アナログ入力信号Ainをサンプルホールドし、ホールドしたアナログ入力信号Ainを最初のA/Dコンバータ102−1に送出するための回路である。
【0005】
A/Dコンバータ102−1〜102−kは縦列接続され、各段に入力されるアナログ信号Vinに基づいて、各A/Dコンバータ102−1〜102−kが担当する分解能分のA/D変換を実施し、それぞれs桁のディジタル出力信号d
j(j=1,2,……,k)をメモリ103に送出する。また、A/Dコンバータ102−1〜102−kは、各段においてアナログ信号Vinと、ディジタル出力信号d
jのD/A変換結果とから得られるアナログ信号Voutを次段に送出する。
【0006】
メモリ103は、k個のA/Dコンバータ102−1〜102−kで決定された、それぞれs桁のディジタル出力信号d
jを受け取り格納する。すなわち、メモリ103には、少なくとも、k個のアドレスを有し、1つのアドレス当たりsビットのデータを記憶することができる半導体メモリ等を用いれば良い。
演算回路104は、メモリ103に格納されたディジタル出力信号d
jを合成して、Sビットのディジタル出力信号Doutを演算する。この演算回路104における演算方法は、以下の通りである。まず、d
kの最上位桁とd
k-1の最下位桁とを2進法で加算する。次に、この結果に基づいて、d
k-1の最上位桁とd
k-2の最下位桁とを、同じく2進法で加算する。以下、これを繰り返して、最後にd
1の最下位ビットと、d
2の最上位ビットとを足し合わせる。このように、すべてのd
jについて足し合わされた結果がディジタル出力信号Doutになる。
【0007】
制御部105は、内部で生成されるマスタクロック信号φに合わせて、アナログ信号Vinをサンプルホールドする動作を行うために、A/Dコンバータ102−1〜102−kの内部の各スイッチング素子を電気的に接続状態または切断状態のいずれか一方に切り替えるためのスイッチング素子制御信号φ1,φ2を生成するためのものである。
なお、A/Dコンバータ102−1〜102−kは同一の素子を有して構成される同じ回路であるため、
図11を参照して、A/Dコンバータ102−1の回路構成を説明する。
【0008】
図11は、担当する分解能が1.5ビットの場合のA/Dコンバータ102−1の回路構成を示す回路図である。分解能が1.5ビットとは、A/Dコンバータ102−1から出力されるディジタル出力信号が3値であることを示す。
図11に示すA/Dコンバータ102−1は、サンプルホールド用スイッチング素子121〜125、サンプルホールド用コンデンサ126,127、演算増幅器128、A/Dサブコンバータ129および多値出力回路130を備えて構成される。
【0009】
サンプルホールド用スイッチング素子121〜125は、制御部105から出力されるスイッチング素子制御信号φ1,φ2に基づいて、サンプルホールド動作を行うために電気的接続状態を接続状態または切断状態のいずれか一方に切り替えるためのものである。サンプルホールド用スイッチング素子121,122は、アナログ信号Vinを入力する入力端子と、サンプルホールド用コンデンサ126,127の入力端子との間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子123は、サンプルホールド用コンデンサ126,127の出力端子と、アナロググランドとの間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子124は、演算増幅器128の出力端子と、サンプルホールド用コンデンサ126の入力端子との間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子125は、多値出力回路130の出力端子と、サンプルホールド用コンデンサ127の入力端子との間に接続される。上記の各スイッチング素子は、スイッチング素子制御信号φ1,φ2がHレベルであるときに接続状態になり、スイッチング素子制御信号φ1,φ2がLレベルであるときに切断状態になる。
【0010】
サンプルホールド用コンデンサ126,127は、多値出力回路130から出力される基準電圧を基準にして、サンプルされたアナログ信号Vinに対応する電荷を充放電するためのものである。
演算増幅器128は、非反転(+)入力端子にアナロググランドが接続され、反転(−)入力端子にサンプルホールド用コンデンサ126,127が接続され、2個の入力端子に入力される信号の電位差を増幅するものである。
【0011】
A/Dサブコンバータ129は、図示しない2個のコンパレータから構成され、アナログ信号Vinをディジタル出力信号d
jに変換するためのものである。
多値出力回路130は、多値出力用スイッチング素子131〜133を備えて構成される。スイッチング素子131〜133は、所定の電圧である−Vref,0,+Vrefを出力する電圧源と、多値出力回路130の出力端子との間に接続され、A/Dサブコンバータ129の出力結果に基づいて、電気的接続状態を接続状態または切断状態のいずれか一方に切り替えるものである。そして、多値出力回路130は、ディジタル出力信号d
jに基づいて、スイッチング素子131〜133の電気的接続状態が切り替わることによって、−Vref,0,+Vrefのいずれか1つの基準電圧を出力する。VrefはA/D変換の入力レンジによって決定される所定の電圧であり、0はアナロググランドの電圧である。
【0012】
このA/Dコンバータ102−2の動作は、サンプル動作フェーズとホールド動作フェーズとに分かれており、サンプル動作とホールド動作とを交互に繰り返す。
まず、サンプル動作時に、サンプルホールド用スイッチング素子121〜123が接続状態となり、サンプルホールド用スイッチング素子124,125が切断状態となる。そして、前段のA/Dコンバータ102−1から入力されたアナログ信号Vinが、サンプルホールド用コンデンサ126,127にサンプルされる。また、A/Dサブコンバータ129は、前段のA/Dコンバータ102−1から入力されたアナログ信号Vinを、−1,0,1のいずれか1つの値にA/D変換して出力する。多値出力回路130は、A/Dサブコンバータ129の出力結果に基づいて、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれか1つの基準電圧を出力する。
【0013】
また、ホールド動作時には、サンプルホールド用スイッチング素子121〜123が切断状態となり、サンプルホールド用スイッチング素子124,125が接続状態となる。そして、コンデンサ126を演算増幅器128の出力端子と反転入力端子との間に接続し、帰還素子として用いる。これにより、アナログ信号Vinの電圧を2倍に増幅する。さらに、A/Dサブコンバータ129の出力結果に応じてスイッチング素子131〜133のいずれか1つの電気的接続状態が接続状態になり、コンデンサ127に、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれか1つの電圧が出力される。これにより、2倍に増幅されたアナログ信号Vinの範囲内で取りうるアナログ信号Voutが、次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まるようにする。このアナログ信号Voutが、A/Dコンバータ102−1の後段に接続されるA/Dコンバータ102−2のアナログ信号Vinとなる。
【0014】
続いて、
図12を参照して、A/Dコンバータ102−1のアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係を説明する。
図12は、A/Dコンバータ102−1のアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係をグラフに示す図である。
図12に示すグラフの横軸は、A/Dコンバータ102−1に入力されるアナログ信号Vinの電圧を示している。また、縦軸は、A/Dコンバータ102−1から出力されるアナログ信号Voutの電圧を示している。
【0015】
図中に矢印で示すように、アナログ信号Vinの取りうる電圧の範囲が、A/Dコンバータ102−1の入力レンジとなる。また、アナログ信号Vinの入力レンジの範囲内で、アナログ信号Voutの取りうる電圧の範囲が、A/Dコンバータ102−1の出力レンジ、つまりA/Dコンバータ102−2の入力レンジとなる。
上述したように、A/Dコンバータ102−1で2倍に増幅されたアナログ信号Vinから、A/Dサブコンバータ129の出力値に応じて決定される基準電圧を加減算することによって、A/Dコンバータのアナログ信号Voutが、次段のA/Dコンバータの入力レンジを超えないようにしている。
【0016】
ところで、ディジタルカメラ等の多くの電子機器に搭載されるパイプライン型A/Dコンバータでは、外部からの信号のオフセットや、パイプライン型A/Dコンバータ自身が持っている内部のオフセットをキャンセルする必要がある。このため、Sビットのディジタル出力信号Doutを出力することができるパイプライン型A/Dコンバータであっても、例えば、S+0.5ビット大きくディジタル値を出力することができなければならない。従って、パイプライン型A/Dコンバータが備える複数のA/DコンバータのうちのあるA/Dコンバータにおいて、入力レンジを通常より大きく取れるようにしている。一般的に、入力レンジを一番大きく取ることが可能となる最初のA/Dコンバータの入力レンジを、通常より大きく取れるようにする場合が多い。このため、パイプライン型A/Dコンバータ100において、最初のA/Dコンバータ102−1が入力レンジを通常より大きく取れるように構成された場合について、次に説明する。
【0017】
図13を参照して、入力レンジを通常より大きく取れるようにしたA/Dコンバータ102−1bの回路について説明する。
図13は、入力レンジを通常より大きく取れるようにしたA/Dコンバータ102−1bの回路構成を示す回路図である。
図13に示すA/Dコンバータ102−1bは、一例として、入力レンジを1.5倍に大きくし、ディジタル出力信号Doutの出力ビット数をS+0.5ビットに大きくしたものである。
【0018】
図11に示したA/Dコンバータ102−1と
図13に示したA/Dコンバータ102−1bとの差異は、多値出力回路130がさらに3個の多値出力用スイッチング素子131b〜133bを備え、サンプルホールド用スイッチング素子122b,125bおよびサンプルホールド用コンデンサ127bを備えて構成されている点である。
サンプルホールド用スイッチング素子125bは、サンプルホールド用スイッチング素子125と同様に、サンプルホールド用コンデンサ127に対応するサンプルホールド用コンデンサ127bと多値出力回路130との間に接続される。
【0019】
サンプルホールド用コンデンサ127bは、サンプルホールド用コンデンサ127に対応するものであるが、サンプルホールド用スイッチング素子122b,123を介して、両端子がアナロググランドに接続され、電荷をアナロググランドに放電してリセットすることができるようになっている。つまり、サンプルホールド用コンデンサ127bは、アナログ信号Vinに対応する電荷をサンプルホールドせず、0Vを基準として多値出力回路130から出力される基準電圧を加減算するものである。
【0020】
多値出力用スイッチング素子131b〜133bは、多値出力用スイッチング素子131〜133と同様に、A/Dサブコンバータ129の出力結果に基づいて、その電気的接続状態を切り替えるものである。A/Dサブコンバータ129は、図示しないコンパレータを4個備えているものを用いており、アナログ信号Vinに応じて−2,−1,0,1,2の5値のいずれかの1つの値を出力することができるようになっている。このため、多値出力回路130は、A/Dサブコンバータ129の出力結果に基づいて、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれかの1つの電圧を2組出力することができる。
【0021】
A/Dコンバータ102−1bにおいても、
図11のA/Dコンバータ102−1と同様に、スイッチング素子制御信号φ1,φ2によって、各スイッチング素子の電気的接続状態を切り替えることによってサンプル動作とホールド動作とを交互に繰り返す。
まず、サンプル動作時、サンプルホールド用スイッチング素子121〜123,122bが接続状態となり、サンプルホールド用スイッチング素子124,125,125bが切断状態となる。サンプルホールド用コンデンサ126,127に、アナログ信号Vinに対応する電荷がサンプルされる。また、サンプルホールド用コンデンサ127bは、0Vにリセットされる。
【0022】
また、ホールド動作時には、A/Dサブコンバータ129の出力結果に応じて、多値出力用スイッチング素子131〜133のいずれか1つと、多値出力用スイッチング素子131b〜133bのいずれか1つとが接続状態となる。そして、サンプルホールド用コンデンサ127,127bに、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれかの1つの基準電圧がそれぞれ出力される。これにより、2倍に増幅されたアナログ信号Vinから、2組分の基準電圧が加減算されて、A/Dコンバータ102−1のアナログ信号Vinの入力レンジを大きくしても、A/Dコンバータ102−1から出力されるアナログ信号Voutが、次段のA/Dコンバータ102−2の入力レンジの範囲内に収まるようになっている。
【0023】
続いて、
図14を参照して、A/Dコンバータ102−1bのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係を説明する。
図14は、A/Dコンバータ102−1bのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係をグラフに示す図である。
図14に示すグラフの横軸は、A/Dコンバータ102−1bに入力されるアナログ信号Vinの電圧を示している。また、縦軸は、A/Dコンバータ102−1bから出力されるアナログ信号Voutの電圧を示している。
【0024】
図中に矢印で示すように、このA/Dコンバータ102−1bの入力レンジは、
図12に示した入出力特性よりも1.5倍大きくなっている。但し、A/Dコンバータ102−1bの出力レンジは、A/Dコンバータ102−2の入力レンジの範囲内に収まっている。これは、このA/Dコンバータ102−1bが請け負うビットに応じた分だけ、パイプライン型A/Dコンバータの入力レンジが大きくなったことを意味する。最初のA/Dコンバータ102−1bは、Sビットのディジタル出力信号Doutのうちの最上位ビットを請け負っている。このため、最初のA/Dコンバータ102−1bの入力レンジが1.5倍に大きくなると、パイプライン型A/Dコンバータ100全体の入力レンジが1.5倍に大きくなり、ディジタル出力信号DoutをS+0.5ビットに大きくすることができる。
【0025】
図11では、担当する分解能が1.5ビットの場合のA/Dコンバータ102−1に関する説明であったが、担当する分解能は1.5ビットに留まらない。
図15は、担当する分解能が2.5ビットの場合のA/Dコンバータ102−1cの回路構成を示す回路図である。分解能が2.5ビットとは、A/Dコンバータ102−1cから出力されるディジタル出力信号が7値であることを示す。
【0026】
図15は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1と同様の素子を有して構成される回路であるが、担当する分解能が2.5ビットになることと、それによって、アナログ信号Vinの増幅度が4倍になる点が異なる。具体的には、サンプルホールド用スイッチング素子221〜229、サンプルホールド用コンデンサ230〜233、A/Dサブコンバータ235、および、多値出力回路236が
9個のスイッチング素子237〜245を備えている。また、多値出力回路236は、A/Dサブコンバータ235から出力されるアナログ信号Vinに応じて決まるディジタル値に基づいて、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれかの1つの電圧を3組出力することができるようになっている。
【0027】
サンプルホールド用スイッチング素子221〜229は、スイッチング素子制御信号φ1,φ2に基づいて、サンプルホールド動作を行うために電気的接続状態を接続状態または切断状態のいずれか一方に切り替えるためのものである。サンプルホールド用スイッチング素子221〜224は、アナログ信号Vinを入力する入力端子と、サンプルホールド用コンデンサ230〜233の入力端子との間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子225は、サンプルホールド用コンデンサ230〜233の出力端子と、アナロググランドとの間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子226は、演算増幅器234の出力端子と、サンプルホールド用コンデンサ230の入力端子との間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子227〜229は、多値出力回路236の出力端子と、サンプルホールド用コンデンサ231〜233の入力端子との間に接続される。上記の各スイッチング素子は、スイッチング素子制御信号φ1,φ2がHレベルであるときに接続状態になり、スイッチング素子制御信号φ1,φ2がLレベルであるときに切断状態になる。
【0028】
まず、サンプル動作時に、サンプルホールド用スイッチング素子221〜225が接続状態となり、サンプルホールド用スイッチング素子226〜229が切断状態となる。そして、アナログ信号Vinが、サンプルホールド用コンデンサ230〜233にサンプルされる。また、A/Dサブコンバータ235は、図示しないコンパレータを6個備えているものを用いており、アナログ信号Vinを、−3,−2,−1,0,1,2,3の7値のいずれか1つの値にA/D変換して出力する。多値出力回路236は、A/Dサブコンバータ235の出力結果に基づいて、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれかの1つの電圧を3組出力する。
【0029】
また、ホールド動作時には、サンプルホールド用スイッチング素子221〜225が切断状態となり、サンプルホールド用スイッチング素子226〜229が接続状態となる。そして、コンデンサ230を演算増幅器234の出力端子と反転入力端子との間に接続し、帰還素子として用いる。これにより、アナログ信号Vinの電圧を4倍に増幅する。さらに、A/Dサブコンバータ235の出力結果に応じてスイッチング素子237〜239,240〜242,243〜245の各々1つの電気的接続状態が接続状態になり、コンデンサ231〜233の各々に、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれか1つの電圧が出力される。これにより、4倍に増幅されたアナログ信号Vinの範囲内で取りうるアナログ信号Voutが、次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まるようになる。そして、このアナログ信号Voutが、後段に接続されるA/Dコンバータのアナログ信号Vinとなる。
【0030】
続いて、
図16を参照して、A/Dコンバータ102−1cのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係を説明する。
図16は、A/Dコンバータ102−1cのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係をグラフに示す図である。
図16に示すグラフの横軸は、A/Dコンバータ102−1cに入力されるアナログ信号Vinの電圧を示している。また、縦軸は、A/Dコンバータ102−1cから出力されるアナログ信号Voutの電圧を示している。
【0031】
図中に矢印で示すように、アナログ信号Vinの取りうる電圧の範囲が、A/Dコンバータ102−1cの入力レンジとなる。また、アナログ信号Vinの入力レンジの範囲内で、アナログ信号Voutの取りうる電圧の範囲が、A/Dコンバータ102−1cの出力レンジ、つまり次段のA/Dコンバータの入力レンジとなる。
上述したように、A/Dコンバータ102−1cで4倍に増幅されたアナログ信号Vinから、A/Dサブコンバータ235の出力値に応じて決定される基準電圧を加減算することによって、A/Dコンバータのアナログ信号Voutが、次段のA/Dコンバータの入力レンジを超えないようにしている。
【0032】
図17を参照して、入力レンジを通常より大きく取れるようにしたA/Dコンバータ102−1dの回路について説明する。
図17は、入力レンジを通常より大きく取れるようにしたA/Dコンバータ102−1dの回路構成を示す回路図である。
図17に示すA/Dコンバータ102−1dは、一例として、入力レンジを1.25倍に大きくし、ディジタル出力信号Doutの出力ビット数をS+0.25ビットに大きくしたものである。
【0033】
図15に示したA/Dコンバータ102−1cと
図17に示したA/Dコンバータ102−1dとの差異は、多値出力回路236がさらに3個の多値出力用スイッチング素子243b〜245bを備え、サンプルホールド用スイッチング素子224b,229b、およびサンプルホールド用コンデンサ233bを備えて構成されている点である。
サンプルホールド用スイッチング素子229bは、サンプルホールド用スイッチング素子229と同様に、サンプルホールド用コンデンサ233に対応するサンプルホールド用コンデンサ233bと多値出力回路236との間に接続される。
【0034】
サンプルホールド用コンデンサ233bは、サンプルホールド用コンデンサ233に対応するものであるが、サンプルホールド用スイッチング素子224b,225を介して、両端子がアナロググランドに接続され、電荷をアナロググランドに放電してリセットすることができるようになっている。つまり、サンプルホールド用コンデンサ233bは、アナログ信号Vinに対応する電荷をサンプルホールドせず、0Vを基準として多値出力回路236から出力される基準電圧を加減算するものである。
【0035】
多値出力用スイッチング素子243b〜245bは、多値出力用スイッチング素子243〜245と同様に、A/Dサブコンバータ235の出力結果に基づいて、その電気的接続状態を切り替えるものである。A/Dサブコンバータ235は、図示しないコンパレータを8個備えているものを用いており、アナログ信号Vinに応じて−4,−3,−2,−1,0,1,2,3,4の9値のいずれか1つの値にA/D変換して出力する。このため、多値出力回路236は、A/Dサブコンバータ235の出力結果に基づいて、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれかの1つの電圧を4組出力することができる。
【0036】
A/Dコンバータ102−1dにおいても、
図15のA/Dコンバータ102−1cと同様に、スイッチング素子制御信号φ1,φ2によって、各スイッチング素子の電気的接続状態を切り替えることによってサンプル動作とホールド動作とを交互に繰り返す。
まず、サンプル動作時、サンプルホールド用スイッチング素子221〜225,224bが接続状態となり、サンプルホールド用スイッチング素子226〜229,229bが切断状態となる。サンプルホールド用コンデンサ230〜233に、アナログ信号Vinに対応する電荷がサンプルされる。また、サンプルホールド用コンデンサ233bは、0Vにリセットされる。
【0037】
また、ホールド動作時には、A/Dサブコンバータ235の出力結果に応じて、多値出力用スイッチング素子237〜239のいずれか1つと、多値出力用スイッチング素子240〜242のいずれか1つと、多値出力用スイッチング素子243〜245のいずれか1つと、多値出力用スイッチング素子243b〜245bのいずれか1つとが接続状態となる。そして、サンプルホールド用コンデンサ231〜233,233bに、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれかの1つの基準電圧がそれぞれ出力される。これにより、4倍に増幅されたアナログ信号Vinから、4組分の基準電圧を加減算することで、A/Dコンバータ102−1dのアナログ信号Vinの入力レンジを大きくしても、A/Dコンバータ102−1dから出力されるアナログ信号Voutが、次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まるようになっている。
【0038】
続いて、
図18を参照して、A/Dコンバータ102−1dのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係を説明する。
図18は、A/Dコンバータ102−1dのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係をグラフに示す図である。
図18に示すグラフの横軸は、A/Dコンバータ102−1dに入力されるアナログ信号Vinの電圧を示している。また、縦軸は、A/Dコンバータ102−1dから出力されるアナログ信号Voutの電圧を示している。
【0039】
図中に矢印で示すように、このA/Dコンバータ102−1dの入力レンジは、
図16に示した入出力特性よりも1.25倍大きくなっている。但し、A/Dコンバータ102−1dの出力レンジは、次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まっている。これは、このA/Dコンバータ102−1dが請け負うビットに応じた分だけ、パイプライン型A/Dコンバータの入力レンジが大きくなったことを意味する。最初のA/Dコンバータ102−1dは、Sビットのディジタル出力信号Doutのうちの最上位ビットを請け負っている。このため、最初のA/Dコンバータ102−1dの入力レンジが1.25倍に大きくなると、パイプライン型A/Dコンバータ100全体の入力レンジが1.25倍に大きくなり、ディジタル出力信号DoutをS+0.25ビットに大きくすることができる。
なお、例えば、特許文献1及び2には、パイプライン型A/Dコンバータが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等の構成要素は同一符号によって示す。
(パイプライン型A/Dコンバータ10の構成)
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るパイプライン型A/Dコンバータ10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るパイプライン型A/Dコンバータ10の構成を示すブロック図である。
【0055】
図1に示すパイプライン型A/Dコンバータ10は、
図10に示したパイプライン型A/Dコンバータ100と同一の構成を備えて構成されるものであるが、A/Dコンバータ12−1〜12−kの内部の回路構成が、A/Dコンバータ102−1〜102−kの回路構成と異なる。
A/Dコンバータ12−1〜12−kのうち、最初のA/Dコンバータ12−1のみが入力レンジを大きくするために必要な素子を有して構成される回路である。また、A/Dコンバータ12−2〜12−kは、全て同じ回路構成である。
【0056】
なお、本実施形態では説明を分かりやすくするため、パイプライン型A/Dコンバータ10は、SビットのA/D変換処理を行い、A/Dコンバータ12−1〜12−kが担当する分解能はそれぞれ1.5ビットとし(この場合、入力信号は2倍に増幅される)、コンデンサの分割数は2(すなわち、N=2)とし、N×M=2×2=4個のコンデンサを用いて、入力レンジを1.5倍に大きくするものとして説明する。つまり、パイプライン型A/Dコンバータ10は、アナログ入力信号AinをS+0.5ビットのディジタル出力信号Doutに変換する。
【0057】
(A/Dコンバータ12−1の構成)
続いて、
図2を参照して、パイプライン型A/Dコンバータ10のA/Dコンバータ12−1の構成について説明する。
図2は、A/Dコンバータ12−1の構成を示すブロック図である。
図2に示すA/Dコンバータ12−1は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1と同様の構成を備えて構成されるものであるが、さらに、サンプルホールド用スイッチング素子121b,124bおよびサンプルホールド用コンデンサ126bを備える。また、多値出力回路130は、A/Dサブコンバータ129から出力されるアナログ信号Vinに応じて決まるディジタル値に基づいて、−N×Vref(V)=−2×Vref(V),0V,+N×Vref(V)=+2×Vref(V)のいずれかの1つの電圧を2組出力することができるようになっている。
【0058】
サンプルホールド用スイッチング素子121bは、アナログ信号Vinの入力端子とサンプルホールド用コンデンサ126bの入力側端子との間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子121bは、サンプルホールド用スイッチング素子121と同様に、アナログ信号Vinのサンプルホールド動作を行うために電気的接続状態を接続状態または切断状態のいずれか一方に切り替えるためのものである。
【0059】
また、サンプルホールド用スイッチング素子124bは、演算増幅器128の出力端子と、サンプルホールド用コンデンサ126bの入力側端子との間に接続される。サンプルホールド用スイッチング素子124bは、サンプルホールド用スイッチング素子124と同様に、アナログ信号Vinのサンプルホールド動作を行うために電気的接続状態を接続状態または切断状態のいずれか一方に切り替えるためのものである。
【0060】
A/Dコンバータ12−1のアナログ信号Vinをサンプルするために用いるサンプルホールド用コンデンサの数は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1のサンプルホールド用コンデンサの数の2倍である。但し、A/Dコンバータ12−1のサンプルホールド用コンデンサの容量値は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1のサンプルホールド用コンデンサの容量値の半分である。このため、A/Dコンバータ12−1の4個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127bの総容量は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1の2個のサンプルホールド用コンデンサ126,127の総容量と変わらない。
【0061】
A/Dコンバータ12−1においても、その動作は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1と変わらず、サンプル動作とホールド動作とを交互に行うものである。
まず、サンプル動作時に、サンプルホールド用スイッチング素子121,121b,122,122b,123が接続状態になり、サンプルホールド用スイッチング素子124,124b,125,125bが切断状態になる。そして、4個全てのサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127bを用いて、アナログ信号Vinに対応する電荷をサンプルするとともに、A/Dサブコンバータ129はアナログ信号Vinを−2,−1,0,1,2のいずかの値にA/D変換して出力する。
【0062】
A/Dコンバータ12−1の内部の4個のコンデンサ全てをサンプルホールド用コンデンサとして用いており、アナログ信号Vinをサンプルしないコンデンサが1つもない。このため、アナログ信号Vinをサンプルしないコンデンサが増えることによる熱雑音が、発生しない。
【0063】
また、ホールド動作時には、サンプルホールド用スイッチング素子121,121b,122,122b,123が切断状態になり、サンプルホールド用スイッチング素子124,124b,125,125bが接続状態になる。そして、2個のサンプルホールド用コンデンサ126,126bを演算増幅器128の出力端子と反転入力端子との間に接続して、帰還素子として用いることでアナログ信号Vinの電圧を2倍に増幅させる。さらに、残りの2個のサンプルホールド用コンデンサ127,127bには、A/Dサブコンバータ129の出力結果に応じて、多値出力回路130から−2×Vref(V),0V,+2×Vref(V)のいずれか1つの2倍された基準電圧を出力する。
【0064】
A/Dコンバータ12−1の内部の4個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127bのうち、2個のサンプルホールド用コンデンサ126,126bを演算増幅器128の出力端子と反転入力端子との間に接続される帰還素子として用いている。このため、演算増幅器128の帰還素子として用いられるコンデンサの容量に対する残りのコンデンサの容量の比が、従来技術のパイプライン型A/Dコンバータ100のように大きくならない。よって、帰還量が減少しないので、演算増幅器128に要求されるオープンループゲインを大きくしなくても良い。
【0065】
また、帰還素子として用いない残りの2個のサンプルホールド用コンデンサ127,127bに対して、A/Dコンバータ12−1における多値出力回路130から、2倍の基準電圧を出力する。このため、2倍に増幅されたアナログ入力Vinに、2倍の基準電圧が加減算される。このため、A/Dコンバータ12−1の入力レンジが1.5倍であっても、次段のA/Dコンバータ12−2の入力レンジの範囲内に収まるようにアナログ信号Voutを出力することができる。
【0066】
このように、サンプル動作時には、全てのコンデンサを用いてアナログ信号Vinのサンプルを行っているため、A/Dコンバータ12−1の入力レンジを大きくしても、熱雑音が大きくならない。また、ホールド動作時には、4個のうちの2個のコンデンサを演算増幅器128の出力端子と反転入力端子との間の帰還素子として用いているため、A/Dコンバータ12−1の入力レンジを大きくしても、帰還量が変わらず、その結果、演算増幅器128に要求されるオープンループゲインを大きくする必要もない。上述したようなA/Dコンバータ12−1によって、本来Sビットのディジタル出力信号Doutを出力するパイプライン型A/Dコンバータ10であっても、入力信号レンジを拡大すると共に、S+αビット(αは0以上)のディジタル出力信号Doutを出力することができる。
【0067】
なお、A/Dコンバータ12−2〜12−kについては、
図11に示したA/Dコンバータ102−1と同じ回路構成であっても良いが、A/Dコンバータ12−1で用いている±2×Vrefの電圧源をA/Dコンバータ12−2〜12−kでも利用することができるような回路構成とする良い。
そして、A/Dコンバータ12−1のアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係は、
図14と同じである。
【0068】
図中に矢印で示すように、このA/Dコンバータ12−1の入力レンジは、1.5倍に大きくなっている。但し、A/Dコンバータ12−1の出力レンジは、A/Dコンバータ12−2の入力レンジの範囲内に収まっている。これは、このA/Dコンバータ12−1が請け負うビットに応じた分だけ、パイプライン型A/Dコンバータの入力レンジが大きくなったことを意味する。最初のA/Dコンバータ12−1は、S桁のディジタル出力信号Doutのうちの最上位ビットを請け負っている。このため、最初のA/Dコンバータ12−1の入力レンジが1.5倍に大きくなると、パイプライン型A/Dコンバータ10全体の入力レンジが1.5倍に大きくなり、ディジタル出力信号DoutをS+0.5ビットに大きくすることができる。
【0069】
(A/Dコンバータ12−2〜12−kの構成)
続いて、
図3を参照して、パイプライン型A/Dコンバータ10が備える各A/Dコンバータ12−2〜12−kの構成について説明する。なお、A/Dコンバータ12−2〜12−kは同一の素子を有して構成される同じ回路であるため、A/Dコンバータ12−2の構成について説明する。
図3は、A/Dコンバータ12−2の構成を示すブロック図である。
【0070】
図3に示すA/Dコンバータ12−2は、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同じ素子を有して構成される回路であるが、多値出力回路130が多値出力用スイッチング素子131b〜133bを有しておらず、サンプルホールド用スイッチング素子125bによって0Vが固定で出力されるように構成されている点が異なる。
A/Dサブコンバータ129は、図示しないコンパレータを2個備えているものを用いており、アナログ信号Vinに応じて−1,0,1の3値のいずれかの1つの値を出力することができるようになっている。このため、多値出力回路130は、A/Dサブコンバータ121の出力結果に基づいて、−2×Vref(V),0V,+2×Vref(V)のいずれかの1つの基準電圧と、0Vの基準電圧とを2組出力することができる。
【0071】
A/Dコンバータ12−2においても、A/Dコンバータ12−1のアナログ信号Vinをサンプルするために用いるサンプルホールド用コンデンサの数は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1のサンプルホールド用コンデンサの数の2倍である。但し、上述したように、A/Dコンバータ12−1のサンプルホールド用コンデンサの容量値は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1のサンプルホールド用コンデンサの容量値の半分である。このため、A/Dコンバータ12−1の4個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127bの総容量は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1の2個のサンプルホールド用コンデンサ126,127の総容量と変わらない。
【0072】
また、A/Dコンバータ12−2における動作も、A/Dコンバータ12−1と同じであって、サンプル動作とホールド動作とを交互に行うものである。
まず、サンプル動作時に、サンプルホールド用スイッチング素子121,121b,122,122b,123が接続状態になり、サンプルホールド用スイッチング素子124,124b,125,125bが切断状態になる。そして、4個全てのサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127bを用いて、アナログ信号Vinに対応する電荷をサンプルする。同時に、A/Dサブコンバータ129は、アナログ信号Vinに応じて−1,0,1のいずれかの1つの値を出力する。
【0073】
また、ホールド動作時には、サンプルホールド用スイッチング素子121,121b,122,122b,123が切断状態になり、サンプルホールド用スイッチング素子124,124b,125,125bが接続状態になる。そして、2個のサンプルホールド用コンデンサ126,126bを演算増幅器128の出力端子と反転入力端子との間に接続される帰還素子として用いることで、アナログ信号Vinを2倍に増幅する。さらに、サンプルホールド用コンデンサ127には、A/Dサブコンバータ129の出力結果に応じて−2×Vref(V),0V,+2×Vref(V)のいずれか1つの2倍された基準電圧と、0Vの基準電圧との2組がそれぞれ出力される。これにより、2倍に増幅されたアナログ入力信号から、2組の基準電圧が加減算されて、アナログ信号Voutが次段のA/Dコンバータ12−3の入力レンジの範囲内に収まるようになっている。
【0074】
上述したように、A/Dコンバータ12−2は、±2×Vrefの電圧源を利用することができるようにした回路構成であって、それ以外の点は、入力レンジを大きくしていない
図11に示したA/Dコンバータ102−1と同じである。従って、A/Dコンバータ12−2の回路の伝達特性、熱雑音の発生する量、演算増幅器128に要求されるオープンループゲインについても、
図11に示したA/Dコンバータ102−1と全く同じである。
【0075】
(第1の変形例)
本実施形態におけるパイプライン型A/Dコンバータ10のA/Dコンバータ12−1〜12−kは、担当する分解能が1.5ビットで(この場合、入力信号は2倍に増幅される)、コンデンサの分割数は2(すなわち、N=2)とした場合の構成であったが、分割する対象は、必ずしもサンプルホールド用コンデンサに限定されない。
【0076】
図4は、担当する分解能が1.5ビットで(この場合、入力信号は2倍に増幅される)、コンデンサの分割数は1(すなわち、N=1)とした場合のA/Dコンバータ
12−1bの回路構成を示す回路図である。
図4に示すA/Dコンバータ12−1bは、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同様の素子を有して構成される回路であるが、特に、多値出力回路130が−2×Vref(V),−1×Vref(V),0V,+1×Vref(V),+2×Vref(V)のいずれか1つの基準電圧を出力する点が異なる。つまり、分割数が1(N=1)であるときには、多値出力回路130が、−Vref(V),0V,+Vref(V)のいずれか1つの電圧をL倍(Lは1以上の整数とする)し、その電圧を基準電圧して出力するようになっている。
【0077】
A/Dサブコンバータ129は、図示しないコンパレータを4個備えているものを用いており、アナログ信号Vinに応じて−2,−1,0,1,2の5値のいずれかの1つの値を出力することができるようになっている。但し、A/Dコンバータ12−1bのサンプルホールド用コンデンサの容量値は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1のサンプルホールド用コンデンサの容量値と同じである。A/Dコンバータ22−1の1個のサンプルホールド用コンデンサ126,127の総容量は、
図11に示したA/Dコンバータ102−1の2個のサンプルホールド用コンデンサ126,127の総容量と変わらない。
【0078】
そのサンプルホールド用コンデンサ126,127の2個全てをアナログ入力信号Vinのサンプルに用いる。また、2個のサンプルホールド用コンデンサ126,127のうち、1個のサンプルホールド用コンデンサ126を帰還素子として用いる。残りの1個のサンプルホールド用コンデンサ127に対して、多値出力回路130から−2×Vref(V),−1×Vref(V),0V,+1×Vref(V),+2×Vref(V)のいずれか1つの基準電圧を出力する。
【0079】
そして、A/Dコンバータ12−1bで、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同様にサンプル動作とホールド動作とを繰り返す。すると、2倍に増幅されたアナログ入力信号に、2倍の基準電圧が加減算されて、アナログ信号Voutが次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まるようになっている。
そして、A/Dコンバータ12−1bのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係は、
図14と同じである。
【0080】
図中に矢印で示すように、このA/Dコンバータ12−1bの入力レンジは、1.5倍に大きくなっている。但し、A/Dコンバータ12−1bの出力レンジは、A/Dコンバータ12−2の入力レンジの範囲内に収まっている。これは、このA/Dコンバータ12−1bが請け負うビットに応じた分だけ、パイプライン型A/Dコンバータ10の入力レンジが大きくなったことを意味する。最初のA/Dコンバータ12−1bは、S桁のディジタル出力信号Doutのうちの最上位ビットを請け負っている。このため、最初のA/Dコンバータ12−1bの入力レンジが1.5倍に大きくなると、パイプライン型A/Dコンバータ10全体の入力レンジが1.5倍に大きくなり、ディジタル出力信号DoutをS+0.5ビットに大きくすることができる。
【0081】
上述したように、サンプルホールド用コンデンサの数を増やさずに、全てのサンプルホールド用コンデンサを用いてアナログ信号Vinのサンプルを行う。また、そのうち半数のサンプルホールド用コンデンサをアナログ信号Vinを増幅するための帰還素子として用いて、残りのサンプルホールド用コンデンサを基準電圧を加減算するための素子として用いる。従って、アナログ信号Vinのサンプルしないコンデンサはない。また、演算増幅器128の帰還素子として用いられるコンデンサの容量に対する残りのコンデンサの容量の比は変わらないため、帰還量は減少しない。このため、演算増幅器128に要求されるオープンループゲインを大きくさせることなく、パイプライン型A/Dコンバータ10の入力レンジを拡大すると共に、ディジタル出力信号のビット数を大きくすることができる。
【0082】
(第2の変形例)
本実施形態におけるパイプライン型A/Dコンバータ10のA/Dコンバータ12−1〜12−kは、担当する分解能が1.5ビットで(この場合、入力信号は2倍に増幅される)、コンパレータ分割数は2(すなわち、N=2)とした場合の構成であったが、コンパレータの分割数は2に限定されない。
【0083】
図5は、担当する分解能が1.5ビットで(この場合、入力信号は2倍に増幅される)、コンパレータ分割数は3(すなわち、N=3)とした場合のA/Dコンバータ12−1cの回路構成を示す回路図である。
図5に示すA/Dコンバータ12−1cは、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同様の素子を有して構成される回路であるが、さらに、サンプルホールド用スイッチング素子121c,122c,124c,125cを備えている点、サンプルホールド用コンデンサ126c、127cを備えている点、多値出力回路130が3個のスイッチング素子131c,132c,133cを備えている点が異なる。つまり、A/Dコンバータ12−1cは、N=3とし、M=2とし、N×M=3×2=6個のコンデンサを用いて、入力レンジを2倍に増幅する。
【0084】
A/Dサブコンバータ129は、図示しないコンパレータを6個備えているものを用いており、アナログ信号Vinに応じて−3,−2,−1,0,1,2,3の7値のいずれかの1つの値を出力することができるようになっている。但し、A/Dコンバータ12−1cのサンプルホールド用コンデンサの容量値は、
図11に示したA/Dコンバータ102−2のサンプルホールド用コンデンサの容量値の1/N=1/3である。A/Dコンバータ12−1cの6個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,126c,127,127b,127cの総容量は、
図11に示したA/Dコンバータ102−2の2個のサンプルホールド用コンデンサ126,127の総容量と変わらない。
【0085】
そのサンプルホールド用コンデンサ126,127,126b,127b,126c,127cの6個全てをアナログ入力信号Vinのサンプルに用いる。また、6個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,126c,127,127b,127cのうち、3個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,126cを帰還素子として用いる。残りの3個のサンプルホールド用コンデンサ127,127b,127cに対して、多値出力回路130から−3×Vref(V),0V,+3×Vref(V)のいずれか1つの基準電圧を3組出力する。
【0086】
そして、A/Dコンバータ12−1cで、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同様にサンプル動作とホールド動作とを繰り返す。すると、2倍に増幅されたアナログ入力信号に、3組の3倍の基準電圧が加減算されて、アナログ信号Voutが次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まるようになっている。
続いて、
図6を参照して、A/Dコンバータ12−1cのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係を説明する。
図6は、A/Dコンバータ12−1cのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係をグラフに示す図である。
【0087】
図6に示すグラフの横軸は、A/Dコンバータ12−1cに入力されるアナログ信号Vinの電圧を示している。また、縦軸は、A/Dコンバータ12−1cから出力されるアナログ信号Voutの電圧を示している。
図中に矢印で示すように、このA/Dコンバータ12−1cの入力レンジは、
図11に示したA/Dコンバータ102−1の入力レンジよりも2倍大きくなっている。但し、A/Dコンバータ12−1cの出力レンジは、A/Dコンバータ12−2の入力レンジの範囲内に収まっている。これは、このA/Dコンバータ12−1cが請け負うビットに応じた分だけ、パイプライン型A/Dコンバータの入力レンジが大きくなったことを意味する。最初のA/Dコンバータ12−1cは、S桁のディジタル出力信号Doutのうちの最上位ビットを請け負っている。このため、最初のA/Dコンバータ12−1cの入力レンジが2倍に大きくなると、パイプライン型A/Dコンバータ10全体の入力レンジが2倍に大きくなり、ディジタル出力信号DoutをS+1ビットに大きくすることができる。
【0088】
上述したように、サンプルホールド用コンデンサの数を増やしても、全てのサンプルホールド用コンデンサを用いてアナログ信号Vinのサンプルを行う。また、そのうち半数の3個のサンプルホールド用コンデンサをアナログ信号Vinを増幅するための帰還素子として用い、残りの3個のサンプルホールド用コンデンサを基準電圧を加減算するために用いる。従って、サンプルホールド用コンデンサの数が増えても、アナログ信号Vinのサンプルしないコンデンサはない。また、サンプルホールド用コンデンサの数が増えても、演算増幅器128の帰還素子として用いられるコンデンサの容量に対する残りのコンデンサの容量の比は変わらないため、帰還量は減少しない。このため、演算増幅器128に要求されるオープンループゲインを大きくさせることなく、パイプライン型A/Dコンバータ10の入力レンジを拡大すると共に、ディジタル出力信号のビット数を大きくすることができる。
【0089】
(第3の変形例)
本実施形態におけるパイプライン型A/Dコンバータ10のA/Dコンバータ12−1〜12−kは、各々が担当する分解能が1.5ビット(この場合、入力信号は2倍に増幅)の構成であったが、各々が担当する分解能は1.5ビットに限定されない。
図7は、担当する分解能が2.5ビットで(この場合、入力信号は4倍に増幅される)、コンパレータ分割数は2(すなわち、N=2)とした場合のA/Dコンバータ12−1dの回路構成を示す回路図である。
【0090】
図7に示すA/Dコンバータ12−1dは、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同様の素子を有して構成される回路であるが、さらに、サンプルホールド用スイッチング素子122c〜122f,125c〜125fを備えている点、サンプルホールド用コンデンサ127c〜127fを備えている点、多値出力回路130が
12個の多値出力用スイッチング素子131c〜131f,132c〜132f,133c〜133fを備えている点が異なる。つまり、A/Dコンバータ12−1dは、N×M=2×4=8個のコンデンサを用いて、入力レンジを4倍に大きくする。
【0091】
A/Dサブコンバータ129は、図示しないコンパレータを6個備えているものを用いており、アナログ信号Vinに応じて−6,−5,−4,−3,−2,−1,0,1,2,3,4,5,6の13値のいずれかの1つの値を出力することができるようになっている。但し、A/Dコンバータ12−1dのサンプルホールド用コンデンサの容量値は、
図15に示したA/Dコンバータ102−1cのサンプルホールド用コンデンサの容量値の1/N=1/2である。A/Dコンバータ12−1dの8個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127b〜127fの総容量は、
図15示したA/Dコンバータ102−1cの4個のサンプルホールド用コンデンサ221〜224の総容量と変わらない。
【0092】
そのサンプルホールド用コンデンサ126,127,126b,127b,127c〜127fの8個全てをアナログ入力信号Vinのサンプルに用いる。また、8個のサンプルホールド用コンデンサ126,126b,127,127b〜127fのうち、2個のサンプルホールド用コンデンサ126,126bを帰還素子として用いる。残りの6個のサンプルホールド用コンデンサ127,127b〜127fに対して、多値出力回路130から−2×Vref(V),0V,+2×Vref(V)のいずれか1つの基準電圧を6組出力する。
【0093】
そして、A/Dコンバータ12−1dで、
図2に示したA/Dコンバータ12−1と同様にサンプル動作とホールド動作とを繰り返す。すると、4倍に増幅されたアナログ入力信号に、4組の2倍の基準電圧が加減算されて、アナログ信号Voutが次段のA/Dコンバータの入力レンジの範囲内に収まるようになっている。
続いて、
図8を参照して、A/Dコンバータ12−1dのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係を説明する。
図8は、A/Dコンバータ12−1dのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係をグラフに示す図である。
【0094】
図8に示すグラフの横軸は、A/Dコンバータ12−1dに入力されるアナログ信号Vinの電圧を示している。また、縦軸は、A/Dコンバータ12−1dから出力されるアナログ信号Voutの電圧を示している。
図中に矢印で示すように、このA/Dコンバータ12−1dの入力レンジは、
図15に示したA/Dコンバータ102−1cよりも1.75倍大きくなっている。但し、A/Dコンバータ12−1dの出力レンジは、A/Dコンバータ12−2の入力レンジの範囲内に収まっている。これは、このA/Dコンバータ12−1dが請け負うビットに応じた分だけ、パイプライン型A/Dコンバータの入力レンジが大きくなったことを意味する。最初のA/Dコンバータ12−1dは、S桁のディジタル出力信号Doutのうちの最上位ビットを請け負っている。このため、最初のA/Dコンバータ12−1dの入力レンジが1.75倍大きくなると、パイプライン型A/Dコンバータ10全体の入力レンジが1.75倍に大きくなり、ディジタル出力信号DoutをS+0.75ビットに大きくすることができる。
【0095】
尚、ここまでの広さの自段の入力レンジを必要としない場合は、多値出力回路130のスイッチング素子の個数を減らして、回路規模を小さくすることもできる。
図9は、入力レンジを
図15に示したA/Dコンバータ102−1cの入力レンジの1.25倍大きくしたA/Dコンバータ102−1eの回路構成を示す回路図である。
図9に示すA/Dコンバータ102−1eは、
図7に示したA/Dコンバータ12−1dが有していた多値出力回路130の6個の多値出力用スイッチング素子131e,132e,133e,131f,132f,133fが削除され、サンプルホールド用コンデンサ127e,127fの入力端子がサンプルホールド用スイッチ125e,125fを介して接地されている。この場合、A/Dコンバータ12−1eのアナログ信号Vinの入力レンジと、アナログ信号Voutの出力レンジとの関係は、
図18で示したグラフと全く同じとなる。
【0096】
上述したように、サンプルホールド用コンデンサの数を増やしても、全てのサンプルホールド用コンデンサを用いてアナログ信号Vinのサンプルを行う。また、そのうち2個のサンプルホールド用コンデンサをアナログ信号Vinを増幅するための帰還素子として用い、残りの6個のサンプルホールド用コンデンサを基準電圧を加減算するための素子として用いる。従って、サンプルホールド用コンデンサの数が増えても、アナログ信号Vinのサンプルしないコンデンサはない。また、サンプルホールド用コンデンサの数が増えても、演算増幅器128の帰還素子として用いられるコンデンサの容量に対する残りのコンデンサの容量の比は変わらないため、帰還量は減少しない。このため、演算増幅器128に要求されるオープンループゲインを大きくさせることなく、パイプライン型A/Dコンバータ10の入力レンジを拡大すると共に、ディジタル出力信号Doutのビット数を大きくすることができる。
【0097】
以上のように、本実施形態におけるパイプライン型A/Dコンバータ10においては、A/Dコンバータ12−1を構成するサンプルホールド用コンデンサの個数を、従来技術で必要なコンデンサの個数M個(Mはアナログ信号の増幅度)からN分割し、さらに基準電圧をN倍することで、基準電圧を加減算するために用いることが出来るコンデンサの数を増やしている。その結果、入力レンジを広げ、ディジタル出力信号のビット数を大きくすることを可能とする。この場合、全てのコンデンサでアナログ信号Vinをサンプルするため、入力レンジを広げたことによる熱雑音の増加は生じない。さらに、アナログ信号Vinを増幅するための帰還素子として用いるコンデンサと、残りのコンデンサの比はコンデンサを分割する前後で変わらないため、入力レンジを広げたことにより、演算増幅器に要求されるオープンループゲインを増加させることがない。
また、必ずしもサンプルホールド用のコンデンサを分割するのに限らず、基準電圧を分割(多く持つ)することにより、同様の特性を得ることが可能である。