(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)の総量と前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]が1/99〜99/1である、請求項1に記載の粘度指数向上剤。
前記ファルネセン以外の共役ジエンが、イソプレン、ブタジエン及びミルセンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物からなる、請求項1〜7のいずれかに記載の粘度指数向上剤。
芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含む共重合体をアニオン重合により得る重合工程、及び前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加する工程を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の粘度指数向上剤の製造方法。
芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体をアニオン重合により得る重合工程、及び前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加する工程を有する、請求項11に記載の粘度指数向上剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[粘度指数向上剤]
本発明の粘度指数向上剤は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含む共重合体(以下、「共重合体」と略称する場合がある。)の水素添加物(以下、「水添共重合体」と略称する場合がある。)からなる粘度指数向上剤であって、前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量が1〜100質量%であり、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)の含有量が0〜99質量%であり、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合が50モル%以上水素添加されている、粘度指数向上剤である。
【0008】
本発明の粘度指数向上剤を構成する水添共重合体は、ブロック共重合体の水素添加物及びランダム共重合体の水素添加物のいずれであってもよい。
すなわち、本発明の粘度指数向上剤は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体」と略称する場合がある。)からなっていてもよい。
また、本発明の粘度指数向上剤は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)、前記ファルネセン由来の構造単位(b1)及び前記ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)がランダムに重合してなるランダム共重合体の水素添加物(以下、「水添ランダム共重合体」と略称する場合がある。)からなっていてもよい。
【0009】
<芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)>
上記の共重合体は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を含む。この芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン及びジビニルベンゼンが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンがより好ましく、スチレンが更に好ましい。
なお、本発明において、1分子中に芳香族基及び共役ジエン結合の両方を有する化合物は、構造単位(b)の由来成分である共役ジエンには含めず、構造単位(a)の由来成分である芳香族ビニル化合物に含めるものとする。但し、構造単位(a)中における、この1分子中に芳香族基及び共役ジエン結合の両方を有する化合物に由来の構造単位の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0010】
<共役ジエン由来の構造単位(b)>
上記の共重合体は、共役ジエン由来の構造単位(b)を含む。この共重合体は、構造単位(b)として、ファルネセン由来の構造単位(b1)を含んでいるが、更にファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を含んでいてもよい。
この共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量は、1〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは55〜100質量%、より更に好ましくは60〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
また、この共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)の含有量は0〜99質量%であり、好ましくは0〜60質量%、より好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
ファルネセンは、サトウキビ等の植物から抽出される糖を原料として、微生物を利用して工業的に製造することができる。そして、本発明の粘度指数向上剤は、かかるファルネセンを原料として得られるため、少ない環境負荷にて製造することができる。
【0011】
(ファルネセン由来の構造単位(b1))
構造単位(b1)の由来成分であるファルネセンは、α−ファルネセン及び下記式(I)で表されるβ−ファルネセンのいずれでもよく、両者を併用してもよい。
構造単位(b1)中におけるβ−ファルネセン由来の構造単位の含有量は、共重合体の製造容易性、並びに油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0013】
(ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2))
上記の共重合体は、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を含んでいてもよい。構造単位(b2)の由来成分であるファルネセン以外の共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−フェニル−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン及びクロロプレンが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ブタジエン、イソプレン及びミルセンの少なくとも1種がより好ましく、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも1種が更に好ましい。
【0014】
<その他の構造単位(c)>
上記の共重合体は、上記構造単位(a)、(b1)及び(b2)の他に、その他の構造単位(c)を含んでもよい。
この構造単位(c)の由来成分としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
<共重合体>
本発明における共重合体は、上記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び上記共役ジエン由来の構造単位(b)を含む。なお、当該共重合体は、更に上記構造単位(c)を含んでいてもよい。
当該共重合体中における、当該構造単位(a)及び構造単位(b)の合計含有量は、油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上である。
また、同様の観点から、当該共重合体を構成する構造単位の総量中における、当該構造単位(c)の含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
共重合体中における、構造単位(a)の含有量は、油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、好ましくは1〜99質量%、より好ましくは2〜90質量%、更に好ましくは3〜85質量%、より更に好ましくは5〜80質量%、より更に好ましくは10〜50質量%、より更に好ましくは15〜45質量%である。
構造単位(a)の総量と構造単位(b)の総量との質量比[(a)/(b)]は、油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは2/98〜90/10、更に好ましくは3/97〜85/15、より更に好ましくは5/95〜80/20、より更に好ましくは10/90〜50/50、より更に好ましくは15/85〜45/55である。
本発明における共重合体は、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。次に、これら2種類の共重合体について説明する。
【0016】
(ブロック共重合体)
本発明における共重合体は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体であってもよい。
ここで言う「主体とする」とは、重合体ブロック(A)については重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を50質量%以上含むことをいい、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を70質量%以上含むものが好ましく、90質量%以上含むものがより好ましい。また、同様に重合体ブロック(B)については重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて前記共役ジエン由来の構造単位(b)を50質量%以上含むことをいい、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を65質量%以上含むものが好ましく、80質量%以上含むものがより好ましい。
【0017】
前記重合体ブロック(B)はファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有するものが好ましい。ここで、構造単位(b1)及び(b2)の好ましい具体例及び含有量比としては、上記したとおりである。
【0018】
さらに、前記重合体ブロック(b)は本発明の目的を損なわない範囲内で、他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量有していてもよい。かかる他の共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物等のアニオン重合可能な共重合性単量体が挙げられる。これら他の共重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記した他の共重合性単量体に由来する構造単位を有する場合、それらの結合形態は、ランダム状、テーパード状のいずれでもよい。
前記重合体ブロック(b)が前記その他の共重合性単量体に由来する構造単位を含有する場合、その含有量は35質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。中でも、油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から重合体ブロック(A)をA、重合体ブロック(B)をBで表したときに、(A−B)
l、A−(B−A)
m、B−(A−B)
n(l、m、nはそれぞれ独立して1以上の整数である)で表される、各ブロックが直線状に結合した形態、及び(A−B)
pX、(B−A)
qX(p、qはそれぞれ独立して3以上の整数を表し、Xはカップリング剤残基である)で表される、各ブロックが放射線状に結合した形態が好ましい。
前記結合形態としては、油の粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、A−Bで表されるジブロック共重合体、またはA−B−Aで表されるトリブロック体が好ましい。
また、ブロック共重合体が、重合体ブロック(A)を2個以上又は重合体ブロック(B)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックは、同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック共重合体における2個の重合体ブロック(A)において、それぞれの芳香族ビニル化合物は、その種類が同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
前記重合体ブロック(A)のピークトップ分子量は、油の粘度指数向上効果および油組成物の製造容易性の観点から、10,000以上60,000以下であることが好ましく、15,000以上50,000以下であることがより好ましい。重合体ブロック(A)のピークトップ分子量が10,000より小さいと油の粘度指数向上効果が低下する場合がある。また60,000より大きいと、得られるブロック共重合体の油への溶解性が低下するため、油の粘度指数向上効果が得られない場合がある。なお、ブロック共重合体が重合体ブロック(A)を2個以上有する場合は、そのうちの少なくとも1個の重合体ブロックのピークトップ分子量が上記範囲内であることが好ましい。
また、前記ブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)および(A’)から選ばれる少なくとも1つの重合体ブロックと、前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロックを(B)とを含み、その結合形態がA−BまたはA−B−A’であり、かつ重合体ブロック(A’)のピークトップ分子量が1,000以上10,000未満であるブロック共重合体がより更に好ましい。重合体ブロック(A’)のピークトップ分子量としては、1,000以上8,000以下であることが特に好ましい。重合体ブロック(A’)のピークトップ分子量が10,000未満であると、水添ブロック共重合体は油組成物中でゲル状ネットワークを形成することが防止されるため、得られる油組成物の40℃および100℃での動粘度の上昇が抑制され、潤滑油としての使用が容易である。
重合体ブロック(A)および(A’)のピークトップ分子量は、ブロック共重合体の合成中に、反応液の一部をサンプリングし、後述する実施例に記載した方法で測定することにより求められる。
【0021】
(ランダム共重合体)
また、本発明における共重合体は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)、前記ファルネセン由来の構造単位(b1)及び前記ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)がランダムに重合してなるランダム共重合体であってもよい。
【0022】
<水添共重合体>
本発明の粘度指数向上剤を構成する水添共重合体は、上記の共重合体を水素添加してなり、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合が50モル%以上水素添加されている、すなわち水素添加率が50モル%以上であるものである。
ここで、水素添加率は、共重合体1モルあたりに含まれる共役ジエン由来の二重結合のモル数をM1とし、水添共重合体1molあたりに含まれる共役ジエン由来の二重結合のモル数をM2とすると、下記式により表される値である。
水素添加率=(1−M2/M1)×100(モル%)
この水素添加率は、油の耐熱性やせん断安定性、また粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。なお、この水素添加率は、後述する実施例に記載した方法により求めることができる。
【0023】
水添共重合体のピークトップ分子量(Mp)は、油組成物の製造容易性及び油の粘度指数の観点から、4,000〜1,500,000が好ましく、9,000〜1,200,000がより好ましく、20,000〜1,100,000が更に好ましく、100,000〜800,000が最も好ましい。
なお、本明細書におけるピークトップ分子量(Mp)は、後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
【0024】
水添共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が更に好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、水添ブロック共重合体の粘度のばらつきが小さい。
【0025】
[水添共重合体の製造方法]
水添共重合体は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含む共重合体をアニオン重合により得る重合工程、及び前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加する工程を経ることにより、好適に製造できる。水素添加工程については、後述する水添ブロック共重合体の水素添加工程と同様の方法で行うことができる。
次に、水添ブロック共重合体の製造方法について、より詳細に説明する。
【0026】
[水添ブロック共重合体の製造方法]
水添ブロック共重合体は、前記芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)を主体とする重合体ブロック(A)と前記共役ジエン由来の構造単位(b)を主体とする重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体をアニオン重合により得る重合工程、及び前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合を50モル%以上水素添加する工程を経ることにより、好適に製造できる。
【0027】
<重合工程>
ブロック共重合体は、溶液重合法又は特表2012−502135号公報、特表2012−502136号公報に記載の方法等により製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法としては、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンを逐次添加して、ブロック共重合体を得ることが好ましい。
アニオン重合開始剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属;前記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド系希土類金属を含有する化合物等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ金属を含有する化合物、有機アルカリ金属化合物が好ましい。
【0028】
このような有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン等の有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして用いてもよい。
重合に用いる有機アルカリ金属化合物の使用量は、ブロック共重合体の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ビニル化合物とファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンの総量に対して0.01〜3質量%の範囲である。
【0029】
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量には特に制限はない。
【0030】
ルイス塩基は、ファルネセン由来の構造単位(b1)及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えば、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;ピリジン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物等が挙げられる。ルイス塩基を使用する場合、その量は、通常、アニオン重合開始剤1モルに対して0.01〜1000モル等量の範囲であることが好ましい。
【0031】
重合反応の温度は、通常、−80〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃の範囲である。重合反応の形式は回分式でも連続式でもよい。重合反応系中の芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンの存在量が特定範囲になるように、重合反応液中に各単量体を連続的あるいは断続的に供給するか、また、重合反応液中で各単量体が特定比となるように順次重合することで、ブロック共重合体を製造できる。
重合反応は、メタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合停止剤として添加して停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いでブロック共重合体を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することによりブロック共重合体を単離できる。
【0032】
{変性共重合体}
本重合工程では、前記のように未変性のブロック共重合体を得てもよいが、以下のように変性したブロック共重合体を得てもよい。
後述の水素添加工程の前に、前記ブロック共重合体を変性してもよい。導入可能な官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物等が挙げられる。
ブロック共重合体の変性方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4−トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N−ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011−132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の共重合体に無水マレイン酸等をグラフト化して用いることもできる。
官能基が導入される位置はブロック共重合体の重合末端でも、側鎖でもよい。また上記官能基は1種又は2種以上を組み合わせてもよい。上記変性剤は、アニオン重合開始剤に対して、通常、0.01〜10モル等量の範囲であることが好ましい。
【0033】
<水素添加工程>
前記方法により得られたブロック共重合体を水素添加する工程に付すことにより、水添ブロック共重合体を得ることができる。水素添加する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、水素添加反応に影響を及ぼさない溶媒にブロック共重合体を溶解させた溶液に、チーグラー系触媒;カーボン、シリカ、けいそう土等に担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム金属を有する有機金属錯体等を、水素添加触媒として存在させて水素化反応を行う。水素添加工程においては、前記したブロック共重合体の製造方法によって得られたブロック共重合体を含む重合反応液に水素添加触媒を添加して水素添加反応を行ってもよい。本発明においては、パラジウムをカーボンに担持させたパラジウムカーボンが好ましい。
水素添加反応において、水素圧力は0.1〜20MPaが好ましく、反応温度は100〜200℃が好ましく、反応時間は1〜20時間が好ましい。
【0034】
ブロック共重合体中の重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率は、油の耐熱性やせん断安定性、また粘度指数及び高温高せん断粘度を向上させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。なお、水素添加率は後述する実施例に記載の方法により算出できる。
【0035】
[油組成物]
本発明の油組成物は、基油と、前述の粘度指数向上剤とを含む。
この油組成物は、エンジンオイル、自動変速装置液、ギア潤滑油及び油圧油として好適に使用することができる。
この油組成物中における粘度指数向上剤の含有量は、好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜7質量%であり、更に好ましくは0.2〜5質量%であり、より更に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0036】
<基油>
基油としては、中間留分燃料、合成及び天然の潤滑油、未精製油及び産業油などの燃料油が挙げられる。基油は、パラフィン系、ナフテン系及び芳香族の少なくとも1種であってもよい。また、基油は、天然油又は合成的に調製された油の少なくとも1種であってもよい。
<他の添加剤>
本発明の油組成物は、さび止め剤、酸化防止剤、界面活性剤、流動点降下剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、消泡剤、摩擦調整剤、極圧剤、1つ又はそれ以上のさらなる粘度指数向上剤などの他の添加物も含有し得る。
<油組成物の製造方法>
本発明の油組成物は、本分野で周知の製造方法を用いて製造することができる。
例えば、本発明の油組成物は、上記の基油と、上記の粘度指数向上剤とを混合することによって製造することができる。混合は、周知の混合装置を用いて行うことができる。
混合は、加熱しながら行うのが好ましい。加熱温度は、好ましくは80〜180℃である。
【0037】
本発明の油組成物を、エンジンオイル、自動変速装置液、ギア潤滑油、油圧油等に用いる場合には、その40℃における動粘度が40〜120mm
2/secの範囲が好ましく、50〜70mm
2/secの範囲が好ましい。また、同様の観点から、100℃における動粘度が6〜25mm
2/secの範囲が好ましく、8〜15mm
2/secの範囲がより好ましい。当該範囲内であると、上記用途に用いた際、車の燃費を低減させることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、β−ファルネセン(純度97.6質量%Amyris Biotechnology社製)は、3Åのモレキュラーシーブにより精製し、窒素雰囲気下で蒸留することで、ジンギベレン、ビサボレン、ファルネセンエポキシド、ファルネソール異性体、E,E−ファルネソール、スクアレン、エルゴステロール及びファルネセンの数種の二量体等の炭化水素系不純物を除き、以下の重合に用いた。
【0039】
(1)分子量分布(Mw/Mn)、及びピークトップ分子量(Mp)の測定
各実施例及び比較例で得られた水添ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。また、この分子量分布(Mw/Mn)のピークの頂点の位置を、ピークトップ分子量(Mp)とした。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
【0040】
(2)水素添加率の測定方法
各実施例及び比較例において、ブロック共重合体及び水素添加後の水添ブロック共重合体をそれぞれ重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子社製「Lambda−500」を用いて50℃で
1H−NMRを測定した。水添ブロック共重合体中の重合体ブロック(B)の水素添加率は、得られたスペクトルの4.5〜6.0ppmに現れる炭素−炭素二重結合が有するプロトンのピークから、下記式により算出した。
水素添加率={1−(水添ブロック共重合体1モルあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のモル数)/(ブロック共重合体1モルあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のモル数)}×100(モル%)
【0041】
(3)動粘度
JIS K2283に準拠して、40℃及び100℃における動粘度を測定した。
(4)粘度指数
JIS K2283に準拠して粘度指数を測定した。
(5)高温高せん断粘度
ASTM D4683に準拠して、150℃における高温高せん断粘度を測定した。
【0042】
〔実施例1〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)51.0gを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)2.34kgを加えて1時間重合させ、引き続いてβ−ファルネセン10.9kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)2.34kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(A1)」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(A1)の各種物性の測定結果を表1に示す。
得られた水添ブロック共重合体(A1)を粘度指数向上剤として用い、出光興産株式会社製パラフィン系オイル「ダイアナフレシアS−32」を基油として用い、これら基油に対して水添ブロック共重合体(A1)を表2に示すとおりに配合し、窒素置換した耐圧容器中で加熱温度120℃にて、回転速度350rpmにて6時間混合することにより、油組成物を得た。この油組成物について、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
〔実施例2〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)40.6gを仕込み、50℃に昇温した後、β−ファルネセン13.0kgを加えて2時間重合させ、引き続いてスチレン2.59kgを加えて1時間重合を行うことにより、ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレンジブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレンジブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(A2)」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(A2)の各種物性の測定結果を表1に示す。
次いで、得られた水添ブロック共重合体(A2)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
〔実施例3〕
表1に記載の配合にしたがったこと以外は、実施例2と同様にして水添ブロック共重合体(A3)及び油組成物を製造し、上記した評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0045】
〔実施例4〕
表1に記載の配合にしたがったこと以外は、実施例1と同様にして水添ブロック共重合体(A4)及び油組成物を製造し、上記した評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0046】
〔実施例5〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)118.4gを仕込み、50℃に昇温した後、β−ファルネセン5.43kgとブタジエン4.32kgの混合物を加えて2時間重合させ、引き続いてスチレン5.85kgを加えて1時間重合を行うことにより、ポリ(β−ファルネセン/ブタジエン)−ポリスチレンジブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリ(β−ファルネセン/ブタジエン)−ポリスチレンジブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(A5)」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(A5)の各種物性の測定結果を表1に示す。
次いで、得られた水添ブロック共重合体(A5)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
〔実施例6〕
水添ブロック共重合体(A5)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例5と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0048】
〔実施例7〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)104.9gを仕込み、50℃に昇温した後、β−ファルネセン4.88kgとイソプレン4.88kgの混合物を加えて2時間重合させ、引き続いてスチレン5.85kgを加えて1時間重合を行うことにより、ポリ(β−ファルネセン/イソプレン)−ポリスチレンジブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリ(β−ファルネセン/イソプレン)−ポリスチレンジブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(A6)」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(A6)の各種物性の測定結果を表1に示す。
次いで、得られた水添ブロック共重合体(A6)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
〔実施例8〕
水添ブロック共重合体(A6)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例7と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0050】
〔比較例1〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)98.6gを仕込み、50℃に昇温した後、イソプレン8.36kgを加えて2時間重合させ、引き続いてスチレン5.34kgを加えて1時間重合することによりポリイソプレン−ポリスチレンジブロック共重合体を含む反応液を得た。該反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリイソプレン−ポリスチレンジブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(B1)」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(B1)の各種物性の測定結果を表1に示す。
次いで、得られた水添ブロック共重合体(B1)を粘度指数向上剤として用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0051】
〔比較例2〕
水添ブロック共重合体(B1)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は比較例1と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0052】
〔比較例3〕
表1に記載の配合にしたがったこと以外は、比較例1と同様にして水添ブロック共重合体(B2)及び油組成物を製造し、上記した評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0053】
〔比較例4〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン62.4kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)79.4g、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン375gを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)0.47kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン6.86kgとブタジエン6.86kgの混合物を加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.40kgを加えて1時間重合することによりポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。該反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「水添ブロック共重合体(B3)」と称する)を得た。各種原料の配合と、得られた水添ブロック共重合体(B3)の各種物性の測定結果を表1に示す。
次いで、得られた水添ブロック共重合体(B3)と基油との配合を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、油組成物を得て、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
〔比較例5〕
基油(出光興産株式会社製パラフィン系オイル「ダイアナフレシアS−32」)をそのまま比較例5として用いて、上記した評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1及び2より、実施例1〜8の水添ブロック共重合体は、植物由来の原料(β−ファルネセン)から製造された粘度指数改良剤でありながらも、油の粘度指数及び高温高せん断粘度の向上効果に優れる。また、比較例1〜4の水添ブロック共重合体を用いた場合と同等以上に油の粘度指数向上効果に優れることが分かる。さらに、実施例2〜8の水添ブロック共重合体は、40℃および100℃の動粘度が十分に低いため、自動車の省燃費効果にも優れる。
本発明は、油の粘度指数及び高温高せん断粘度の向上効果に優れる粘度指数向上剤等を提供する。本発明の粘度指数向上剤は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位(a)及び共役ジエン由来の構造単位(b)を含む共重合体の水素添加物からなる粘度指数向上剤であって、前記共役ジエン由来の構造単位(b)の総量中における、ファルネセン由来の構造単位(b1)の含有量が1〜100質量%であり、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)の含有量が0〜99質量%であり、前記共役ジエン由来の構造単位(b)中の炭素−炭素二重結合が50モル%以上水素添加されている、粘度指数向上剤である。