(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の透明電極層、発光層及び第二の透明電極層をこの順に備える両面発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の少なくとも一方の表面に直接又は間接的に設けられた出光面構造層とを備える面発光素子であって、
前記出光面構造層は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子とは反対側の表面に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の前記一方の表面に対して平行な平坦面部と、前記平坦面部に対して傾斜した斜面部とを含む凹凸構造を有し、
前記平坦面部は、一方向に延在する帯状面部を含み、
前記帯状面部は、前記帯状面部が延在する方向において幅が変化していて、
前記斜面部を、前記平坦面部に対して垂直な方向に、前記平坦面部に対して平行な平面へと投影して形成される投影面積が、前記平坦面部の合計面積の0.1倍以下である、面発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。なお、以下の説明においてある方向に沿うとは、ある方向と平行であることを意味する。
【0013】
〔1.第一実施形態〕
図1及び
図2はいずれも本発明の第一実施形態に係る面発光素子を説明する図であって、
図1は面発光素子を模式的に示す斜視図であり、
図2は
図1に示す面発光素子を線1a−1bを通り出光面に対して垂直な面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る面発光素子10は、矩形の平板状の構造を有する装置であり、両面発光型の有機EL素子140と、この有機EL素子140の少なくとも一方の表面に直接または間接的に設けられる出光面構造層100とを備える。有機EL素子140は、少なくとも第一の透明電極層141、発光層142及び第二の透明電極層143をこの順に備え、その表面144及び145の両方から発光できるようになっている。本実施形態では、第一の透明電極層141及び第二の透明電極層143が透明電極層となっているため、発光層142からの光は、第一の電極層141及び第二の電極層143をそれぞれ透過して、表面144及び145を通って有機EL素子140の外部へと射出する。したがって、以下の説明においては表面144及び145を「発光面」と呼ぶ。
【0015】
前述したように、有機EL素子140の発光面144には出光面構造層100が設けられている。本実施形態では、出光面構造層100は発光面144に接するように直接に設けられているものとする。
さらに、本実施形態の面発光素子10は上述した部材以外にも構成要素を備えていてもよい。本実施形態では、有機EL素子140の発光面145に封止基材151が設けられているものとする。
【0016】
したがって、面発光素子10は、封止基材151と、有機EL素子140と、出光面構造層100とをこの順に備える。このような面発光素子10では、出光面構造層100における有機EL素子140とは反対側の表面10Uを通って光が射出し、また、封止基材151における有機EL素子140とは反対側の表面10Dを通って光が射出する。なお、表面10U及び10Dは、面発光素子10の最も外側に位置し、この表面10U及び10Dを通って面発光素子10の外部へ光が射出するため、表面10U及び10Dを「出光面」と呼ぶ。
【0017】
〔1−1.有機EL素子〕
例えば有機EL素子140として例示するように、有機EL素子は、通常、2層以上の電極層と、これらの電極層間に設けられ、電極から電圧を印加されることにより発光する発光層と、を備える。
【0018】
有機EL素子は、基板上に有機EL素子を構成する電極、発光層等の層を形成し、さらにそれらの層を覆う封止部材を設け、基板と封止部材で発光層等の層を封止した構成とされるのが一般的である。
【0019】
前記発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択しうる。発光層中の発光材料は1種類に限らず、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、発光層は1層に限らず、光源としての用途に適合すべく、一種の層単独又は複数種類の層の組み合わせとしてもよい。これにより、白色又はそれに近い色の光を発光するものとし得る。
【0020】
本発明において、有機EL素子を構成する電極層は、いずれも透明な材料により形成されている透明電極層である。ここで「透明」であるとは、光学部材に用いるのに適した程度の光線透過率を有する意味である。例えば、面発光素子10が全体として後述する所望の全光線透過率を有する程度に高い光線透過率を有する電極を、透明電極層として用いてもよい。このように高い透明性を有する透明電極層を備えることにより、発光層で発生した光の取出効率を向上でき、また、面発光素子を通じて向こう側を明瞭に見通すことができる。なお、透明電極層の材料は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに透明電極層は1層のみを備える単層構造の層であってもよく、2層以上の層を備える複層構造の層であってもよい。
【0021】
有機EL素子140は、第一の透明電極層141と第二の透明電極層143との間に、発光層142に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層及び電子注入層等の他の層(図示せず。)をさらに有していてもよい。また、有機EL素子140は、第一の透明電極層141及び第二の透明電極層143に通電するための配線、発光層142の封止のための周辺構造等の任意の構成要素をさらに備えていてもよい。
【0022】
透明電極層及びその間に設ける層を構成する材料としては、特に限定されないが、具体例として下記のものを挙げることができる。
透明電極層の材料としてはITO(酸化インジウムスズ)等を挙げることができる。
正孔注入層の材料としてはスターバースト系芳香族ジアミン化合物等を挙げることができる。
正孔輸送層の材料としてはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
黄色発光層のホスト材料としてはトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができ、黄色発光層のドーパント材料としてはテトラセン誘導体等を挙げることができる。
緑色発光層の材料としてはピラゾリン誘導体等を挙げることができる。
青色発光層のホスト材料としてはアントラセン誘導体等を挙げることができ、青色発光層のドーパント材料としてはペリレン誘導体等を挙げることができる。
赤色発光層の材料としてはユーロピウム錯体等を挙げることができる。
電子輸送層の材料としてはアルミニウムキノリン錯体(Alq)等を挙げることができる。
【0023】
上記のもの又はその他の発光層を適宜組み合わせて、積層型又はタンデム型と呼ばれる、補色関係にある発光色を発生する発光層としてもよい。補色関係の組み合わせは、例えば、黄/青、又は緑/青/赤等としてもよい。
【0024】
〔1−2.出光面構造層〕
出光面構造層100は、面発光素子10の最も外側に位置する出光面10Uを備える。出光面10Uは、出光面構造層100の有機EL素子140とは反対側の表面であり、面発光素子10としての出光面、即ち、面発光素子10から装置外部に光が射出する際の出光面である。
【0025】
出光面10Uは、巨視的に見ると、有機EL素子140の発光面144と平行な面であり、面発光素子10の主面と平行である。しかし、出光面10Uは、微視的に見ると、凹凸構造を有するため、凹部又は凸部上の面は発光面144と非平行な角度をなしうる。そこで、以下の説明において、出光面に対して平行又は垂直であるとは、別に断らない限り、凹部又は凸部を無視して巨視的に見た出光面に対して平行又は垂直であることをいう。また、面発光素子10は、別に断らない限り、かかる出光面10Uが水平方向と平行で且つ上向きになるよう載置した状態で説明する。
さらに、構成要素が「平行」又は「垂直」であるとは、本発明の効果を損ねない範囲、例えば±5°の範囲内で誤差を含んでいてもよい。
【0026】
出光面構造層100は、凹凸構造層111及び基材フィルム層112を含む複層体110と、基板としての支持基板131と、複層体110及び支持基板131を接着する接着層121とを備える。
凹凸構造層111は、面発光素子10の一方の表面(即ち面発光素子10の一方の出光面側の最外層。図中の上側)に位置する層である。凹凸構造層111の表面である出光面10Uには凹凸構造が形成されている。凹凸構造については詳しくは後述するが、この凹凸構造は、有機EL素子140の発光面144に対して平行な平坦面部113及び114と、これらの平坦面部113及び114に対して傾斜した斜面部115とを有して構成されている。具体的には、凹凸構造層111の出光面10Uは、平坦面部114を底面とし、かつ斜面部115を側面とする複数の凹部116と、隣り合う凹部116間の隙間部分に相当する平坦面部113とを有して構成される。ここで、斜面部が平坦面部に対して傾斜するとは、斜面部が平坦面部と平行でないことを表す。
【0027】
なお、本明細書においては、図面は模式的な図示であるため、出光面10U上には僅かな個数の凹部116のみを示しているが、実際の面発光素子においては、一枚の面発光素子の出光面上に、これよりも遥かに多い数の凹部を設けてもよい。
【0028】
(凹凸構造の説明)
以下、出光面10Uの凹凸構造について、図面を参照して詳細に説明する。
図3は、面発光素子10の出光面10Uの一部を、面発光素子10の厚み方向から見た様子を拡大して模式的に示す部分平面図である。また、
図4は、凹凸構造層111を、
図3の線3aを通り出光面10Uに対して垂直な面で切断した断面を模式的に示す部分断面図である。なお、前記の線3aは、一列の凹部116の全ての平坦面部114の上を通る線であるものとする。また、以下の説明において「厚み方向」とは、特に断らない限り、面発光素子の厚み方向を指す。
【0029】
図3に示すように、出光面10Uは、複数の凹部116と、これらの凹部116間の隙間部分である平坦面部113とを備えている。各凹部116は、それぞれ四角錐の頂部を底面と平行に切り取った形状(角錐台形状)である。各凹部116は、その底部分に相当する四角形状の平坦面部114と、この四角形の四辺からそれぞれ延びる4面の斜面部115とにより構成されている。具体的には、凹部116を構成する四面の斜面部115は、いずれも台形状である。また、斜面部115と平坦面部113との境界線117は、四角形を構成している。すなわち、本実施形態では、凹部116は、四角錐台形状である。
【0030】
出光面10Uが平坦面113及び114と斜面115とを有する凹凸構造を有することにより、凹凸構造を有さない場合と比較して、面発光素子10では、出光面10Uを通した光の取出効率を高めることができる。すなわち、平坦面部113及び114で内部反射することにより取り出すことができなかった光であっても、斜面部115を通ってであれば取り出すことができるので、光の取出効率を向上させることができる。
【0031】
凹部116は、通常、位置が離散的になるように設けられる。ここでは、複数の凹部116は、出光面10Uに対して平行で互いに直交する2方向X及びYに沿って配列されている。具体的には、凹部116は、ある間隔を空けて、直交する2方向X及びYに沿って連続して配置されている。前記の2方向X及びYにおいて、隣り合う凹部116の間には隙間が設けられていて、この隙間が平坦面部113を構成している。したがって、出光面10Uにおいては、通常、平坦面部114の周囲には斜面部115が位置し、斜面部115の周囲(ひいては、凹部116の周囲)には平坦面部113が位置している。
【0032】
図5及び
図6は、面発光素子10の出光面10Uの一部を、面発光素子10の厚み方向から見た様子を拡大して模式的に示す部分平面図である。なお、
図5においては、方向Xに沿って延在する帯状面部113Xに斜線を付して示す。また、
図6においては、Y方向に沿って延在する帯状面部113Yに斜線を付して示す。
図5及び
図6に示すように、平坦面部113には、一方向Xに沿って延在する一群の帯状面部113Xと、別の一方向Yに沿って延在する一群の帯状面部113Yとが含まれる。ここで、帯状面部113X及び113Yはいずれも平坦面部113に含まれる面部であるので、本実施形態では周囲の斜面部115よりも厚み方向の外側に位置する。このため、帯状面部113X及び113Yは、周囲の斜面部115よりも突出した面部となっている。
【0033】
また、帯状面部113X及び113Yは、いずれも厚み方向から見た形状が帯状の面部である。帯状面部113Xが延在する方向Xと帯状面部113Yが延在する方向Yとが平行でないので、帯状面部113Xと帯状面部113Yとは複数の交差部分113Zにおいて交差している。このため、帯状面部113X及び帯状面部113Yを厚み方向から見ると、全体として格子状となっている。
【0034】
さらに、帯状面部113X及び113Yは、当該帯状面部113X及び113Yが延在する方向X及びYにおいて、幅が変化している。ここで「幅が変化する」とは、帯状面部113X及び113Yが延在する方向X及びYにおいて帯状面部113X及び113Yの幅が不均一であることをいう。
この際、帯状面部113X及び113Yの幅の変化は、不連続であってもよいが、製造が容易であるために連続的であることが好ましい。ここで、帯状面部113X及び113Yの幅の変化が連続的であるとは、帯状面部113X及び113Yが延在する方向X及びYの一端から他端に行くにしたがって、当該帯状面部113X及び113Yの幅が次第に大きくなるか小さくなっていくことにより、方向X及びYにおいて帯状面部113X及び113Yの幅が不均一となっていることを意味する。
【0035】
本実施形態では、帯状面部113Xの幅は方向Xにおいて変化していて、例えば
図5に示すように方向Xの一端における帯状面部113Xの幅L
1と他端における帯状面部113Xの幅L
2とは異なっている。また、帯状面部113Yの幅は方向Yにおいて変化していて、例えば
図6に示すように方向Yの一端における帯状面部113Yの幅L
3と他端における帯状面部113Yの幅L
4とは異なっている。
【0036】
帯状面部113X及び113Yの幅が、その延在する方向X及びYにおいて変化していることにより、面発光素子10を観察した場合に、帯状面部113X及び113Yのスジが視認されることを防止でき、ひいては格子ムラを防止することができる。このように帯状面部113X及び113Yの視認を防止できる理由は必ずしも定かではないが、本発明者の検討によれば、帯状面部113X及び113Yの幅を不均一にすることにより、帯状面部113X及び113Yの形状の規則性を低下させられるためと推察される。例えば従来のように帯状面部の幅を均一にすると厚み方向から見た場合の出光面の面形状の規則性が高くなるので、その高い規則性に応じて出光面での反射光の見え方にも一定の規則性が生じ、この規則性が帯状面部のスジが見える原因となっていたと考えられる。また、従来のように出光面の面形状の規則性が高いと、帯状面部の周囲の斜面の周期的構造に起因して干渉及び回折が生じ、これらの干渉及び回折によって光が強められたり弱められたりすることも、帯状面部のスジが見える一因であったと考えられる。これに対し、帯状面部113X及び113Yの幅を不均一にすれば出光面の面形状の規則性が低くなるので、帯状面部がスジとして視認されることを抑制できるものと推察される。
【0037】
延伸する方向が異なる帯状面部が交差している場合、交差する帯状面部の厚み方向の位置が異なっていれば、それらの帯状面部の幅は容易に特定できる。しかし、本実施形態のように、交差する帯状面部113X及び113Yの厚み方向の位置が同じである場合、交差部分113Zでの帯状面部113X及び113Yの幅は明確には特定できない場合がある。この場合には、交差部分113Z以外の帯状面部113X及び113Yの幅が変化していれば、帯状面部113X及び113Yの視認を防止できる。帯状面部113X及び113Yは、交差部分113Z以外の帯状面部113X及び113Yで反射、回折、干渉などを生じた光が見られることにより、視認されていると考えられるためである。
【0038】
帯状面部113X及び113Yが一方の端部から他方の端部にかけて次第に幅が広くなる形状である場合、その幅が広くなっていく向きは、同じでもよく、異なっていてもよい。例えば
図5では、帯状面部113Xの幅が図中左端から図中右端にかけて広くなっていく帯状面部(
図5において上から一番目の帯状面部113X)と、図中右端から図中左端にかけて広くなっていく帯状面部(
図5において上から二番目の帯状面部113X)とが同じ出光面10Uに混在している例を示したが、これらを何れか一方に揃えてもよい。
また、各帯状面部113X及び113Yの寸法は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0039】
具体的な帯状面部113X及び113Yの寸法は、本発明の効果を損なわない限り任意である。例を挙げると、帯状面部113X及び113Yの幅は、通常5.0μm以上、好ましくは7.5μm以上、より好ましくは10.0μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。帯状面部113X及び113Yの幅を前記範囲の下限値以上とすれば光の取出効率を効果的に高めることができ、上限値以下とすれば面発光素子10を通じて反対側を肉眼で見通しやすくできる。
【0040】
さらに、各帯状面部113X及び113Yの幅が変化する程度は、帯状面部113X及び113Yの幅及び長さにもよるが、本発明の効果を奏する観点から好適な範囲を挙げると、当該帯状面部113X及び113Yの幅の最大値と最小値との比(最大値/最小値)で、通常1.1以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上であり、通常3以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
【0041】
図7は、面発光素子10の出光面10Uの斜面部115を、平坦面部113及び114に対して垂直な方向に、平坦面部113及び114に対して平行な平面900へと投影した様子を模式的に示す投影図である。なお、本実施形態では、平坦面部113及び114に対して垂直な方向は、出光面10Uに対して垂直な方向、及び、面発光素子10の厚み方向に対して平行な方向に一致する。また、平坦面部113及び114に対して平行な平面900は、出光面10Uに対して平行な平面となる。ただし、前記の平坦面部113及び114に対して平行な平面900は、面発光素子10が有する平面ではなく、斜面部115の投影面積を測定するために設定される投影平面である。また、
図7において、面発光素子10の出光面10Uの斜面部115を、平坦面部113及び114に対して垂直な方向に、平坦面部113及び114に対して平行な平面900へと投影した投影像901には斜線を付して示す。
【0042】
図7に示すように、本実施形態の面発光素子10において、斜面部115を、平坦面部113及び114に対して垂直な方向に、平坦面部113及び114に対して平行な平面900へと投影して形成される投影面積が、平坦面部113及び114の合計面積の、通常0.1倍以下、好ましくは0.05倍以下、より好ましくは0.01倍以下である。また、平坦面部113及び114の合計面積に対する斜面部115の投影面積の比の下限は、通常0.0001倍以上、好ましくは0.0005倍以上、より好ましくは0.001倍以上である。
【0043】
これにより、面発光素子10の向こう側を見通せるようになる。従来の片面発光型の面発光素子に設けられる凹凸構造を両面発光型の面発光素子に適用した場合、通常は斜面部の割合が大きくなることによりヘイズが大きくなり、面発光素子の向こう側を見通せなくなる。これに対し、平坦面部113及び114の合計面積に対する斜面部115の投影面積の割合を前記の範囲に収めると、出光面10Uに対して垂直な方向から見た場合の凹凸構造によるヘイズの向上を抑制できる。したがって、本実施形態の面発光素子10によれば、凹凸構造を有しながらもヘイズの上昇を抑制できるので、シースルーを損なわないようになっている。
【0044】
さらに、本実施形態の面発光素子10によれば、外部衝撃により凹凸構造の欠け等が生じることを防止でき、ひいては出光面10Uの機械的強度を向上させることができる。一般に、面に凹凸構造があると、その面に衝撃が加えられた場合に当該凹凸構造の一部に力が集中し、破損を招きやすくなる傾向がある。ところが、本実施形態の面発光素子10では、平坦面部113の厚み方向の位置を揃えて均一で平坦な面としているため、外部から出光面10Uに加えられる力又は衝撃によって凹凸構造層111の一部に力が集中することを抑制できるようになっている。このため、凹凸構造層111の破損を防止し、良好な光取り出し効率と、面発光素子10の出光面10Uの高い機械的強度とを両立させることができるようになっている。
【0045】
さらに、
図4に示すように、出光面10Uにおける平坦面部113と平坦面部114との高低差Hの最大値は、好ましくは22μm以下であり、21.5μm以下もしくは21.0μm以下としてもよい。なお、下限は、通常0.1μm以上であり、0.15μm以上もしくは0.2μm以上としてもよい。ここで、高低差とは、厚み方向における距離をいう。したがって、本実施形態における平坦面部113と平坦面部114との高低差Hは、凹部116の深さのことを意味する。
【0046】
平坦面部113と平坦面部114との高低差Hの最大値をこのような範囲に収めることにより、出光面10Uの法線方向に対して傾斜した方向(斜め方向)から見た場合にも面発光素子10の向こう側を見通すことができるようになる。斜面部115の面積割合が大きいと、斜め方向から出光面10Uを見た場合のヘイズが大きくなる傾向がある。これに対し、平坦面部113及び114の合計面積(全面積)に対する斜面部115の投影面積の割合が前記の範囲に収まり、且つ、平坦面部113と平坦面部114との高低差Hの最大値が前記の範囲に収まることにより、斜め方向から見た場合のヘイズの向上を抑制できるので、斜め方向から面発光素子10を見た場合でもシースルーを損なわないようにできる。
【0047】
図4に示すように、斜面部115は、平坦面部113及び114に対して、通常80°以上、好ましくは81°以上、より好ましくは82°以上、また、通常90°未満、好ましくは89°以下、より好ましくは88°以下の傾斜角度θで傾斜していることが好ましい。すなわち、斜面部115はいずれも平坦面部113及び114に対して平行でない面であるが、これらの斜面部115と平坦面部113及び114とがなす角度θが前記の範囲に収まることが好ましい。このように斜面部115の傾斜角度θが大きいことにより、光の取出効率を安定して高めることができる。また、傾斜角度θが小さい場合と比べ、傾斜角度θが大きいと斜面部115一つあたりの前記投影面積を小さくできるので、出光面10Uに対して垂直な方向から見た場合に面発光素子10の向こう側をより明瞭に見通しやすくなる。出光面10Uに対して垂直な方向は面発光素子10の正面方向に相当し、通常はこの正面方向から面発光素子10の向こう側を見通す頻度が高いと想定されるため、前記の利点は実用上、有用である。
【0048】
また、本実施形態では、全ての斜面部115の傾斜角度θは、同じ大きさに設定されているが、特に限定されず異なっていてもよい。
【0049】
凹凸構造層111の厚みTは、前記の平坦面部113と平坦面部114との高低差Hの最大値との関係で、適切な範囲にすることが好ましい。例えば、凹凸構造層111の材料として、凹凸構造層111の耐久性の維持に有利な硬質の材料を用いた場合、凹凸構造層111の厚みTを薄くしたほうが面発光素子10の可撓性を高めることが可能となり、面発光素子10の製造工程における凹凸構造層111の取り扱いが容易となるので、好ましい。具体的には、平坦面部113と平坦面部114との高低差Hの最大値と凹凸構造層111の厚みTとの差は、0〜30μmであることが好ましい。
【0050】
凹部116が並ぶ方向X及びYにおいて、凹部116のピッチPは、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下である。ピッチPが前記範囲の下限値以上となることにより光の取出効率を向上させることができ、上限値以下となることにより透明性を高くできる。
【0051】
凹凸構造層111の厚さTは、特に限定されないが、1μm〜70μmであることが好ましい。本実施形態では、凹凸構造層111の厚さTとは、凹凸構造が形成されていない基材フィルム層112側の面と、平坦面部113との距離のことである。
また、基材フィルム層112の厚さは、20μm〜300μmであることが好ましい。
【0052】
(複層体の材料の説明)
出光面構造層100は、複数の層からなるものとしうるが、単一の層からなってもよい。所望の特性を備えた出光面構造層100を容易に得る観点からは、複数の層からなることが好ましい。本実施形態では、
図1に示すように、出光面構造層100は、凹凸構造層111と基材フィルム層112とを組み合わせた複層体110を含むようになっているものとする。これにより、性能の高い出光面構造層100を容易に得ることができる。
【0053】
凹凸構造層111及び基材フィルム層112は、通常、透明樹脂により形成する。本実施形態においては、出光面構造層100を構成する各層が、光学部材に用いるのに適した光線透過率を有するものとしうる。例えば、出光面構造層100全体として80%以上の全光線透過率を有するものとする。
【0054】
透明樹脂は、特に限定されず、透明な層を形成することができる各種の樹脂を用いてもよい。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂を挙げることができる。なかでも熱可塑性樹脂は熱による変形が容易であるため、また紫外線硬化性樹脂は硬化性が高く効率が良いため、凹凸構造層111の効率的な形成が可能となり、それぞれ好ましい。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリレート系、シクロオレフィンポリマー系等の樹脂を挙げることができる。また、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン/チオール系、イソシアネート系等の樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂としては、複数個の重合性官能基を有するものを好ましく用いることができる。なお、前記の樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0056】
なかでも、複層体110を構成する凹凸構造層111の材料としては、出光面10Uの凹凸構造を形成しやすく且つ凹凸構造の耐擦傷性を得やすいという観点から、硬化時の硬度が高い材料が好ましい。具体的には、7μmの膜厚の樹脂層を基材上に凹凸構造が無い状態で形成した際に、鉛筆硬度でHB以上になるような材料が好ましく、H以上になる材料がさらに好ましく、2H以上になる材料がより好ましい。一方、基材フィルム層112の材料としては、凹凸構造層111の形成に際しての取り扱い、並びに、複層体110を成形した後の複層体110の取り扱いを容易とするために、ある程度の柔軟性があるものが好ましい。このような材料を組み合わせることにより、取り扱いが容易で且つ耐久性に優れる複層体110を得ることができ、その結果、高性能の面発光素子10を容易に製造することができる。
【0057】
このような材料の組み合わせは、それぞれの材料を構成する樹脂として、上に例示した透明樹脂を適宜選択することにより得ることができる。具体的には、凹凸構造層111の材料を構成する透明樹脂として、アクリレート等の紫外線硬化性樹脂を用い、一方、基材フィルム層112の材料を構成する透明樹脂として、脂環式オレフィンポリマー製のフィルム(後述するゼオノアフィルム等)や、ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0058】
本実施形態のように、出光面構造層100が凹凸構造層111と基材フィルム層112とを含む場合、凹凸構造層111と基材フィルム層112との屈折率はできるだけ近くする態様としてもよい。この場合、凹凸構造層111と基材フィルム層112との屈折率差は、好ましくは0.1以内、さらに好ましくは0.05以内である。
【0059】
凹凸構造層111、基材フィルム層112等の出光面構造層100の構成要素となる層の材料として、シースルー性を阻害しない範囲で、光拡散性のある材料を用いてもよい。これにより、シースルー性を維持しつつ、出光面構造層100を透過する光を拡散させることができ、観察角度による色味の変化等の不具合を更に低減し得る。
【0060】
光拡散性のある材料としては、例えば、粒子を含んだ材料、2種類以上の樹脂を混ぜ合わせて光を拡散させるアロイ樹脂、等を挙げることができる。なかでも、光拡散性を容易に調節できるという観点から、粒子を含んだ材料が好ましく、特に粒子を含んだ樹脂が特に好ましい。
【0061】
粒子は、透明であってもよく、不透明であってもよい。粒子の材料としては、例えば、金属及び金属化合物、並びに樹脂等が挙げられる。金属化合物としては、例えば、金属の酸化物及び窒化物を挙げることができる。金属及び金属化合物の具体例を挙げると、銀、アルミのような反射率が高い金属;酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、窒化珪素、錫添加酸化インジウム、酸化チタン等の金属化合物;などを挙げることができる。一方、樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。なお、粒子の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0062】
粒子の形状は、例えば、球状、円柱状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、星型状等の形状としうる。
【0063】
さらに、樹脂組成物は、必要に応じて任意の成分を含んでいてもよい。当該任意の成分としては、例えば、フェノール系、アミン系等の劣化防止剤;界面活性剤系、シロキサン系等の帯電防止剤;トリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系等の耐光剤;などの添加剤を挙げることができる。
【0064】
(支持基板)
図1に示すように、本実施形態の面発光素子10は、有機EL素子140と複層体110との間に、支持基板131を備える。支持基板131を備えることにより、面発光素子10に、たわみを抑制する剛性を与えることができる。また、支持基板131として、有機EL素子140を封止する性能に優れて、且つ、製造工程において有機EL素子140を構成する層をその上に順次形成することを容易に行い得る基板を備えることにより、面発光素子10の耐久性を向上させ、且つ製造を容易にすることができる。
【0065】
支持基板131を構成する材料の例としては、通常、透明な材料を用いる。その材料の例を挙げると、ガラス、樹脂などが挙げられる。なお、支持基板131の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0066】
支持基板131を構成する材料の屈折率は、特に制限されないが、1.4〜2.0とすることが好ましい。
支持基板131の厚さは、特に限定されないが、0.1mm〜5mmであることが好ましい。
【0067】
(接着層)
本実施形態の面発光素子10は、複層体110と支持基板131との間に接着層121を備える。接着層121は、複層体110の基材フィルム層112と支持基板131との間に介在して、これらの2層を接着する層である。
接着層121の材料である接着剤は、狭義の接着剤(23℃における剪断貯蔵弾性率が1〜500MPaであり、常温で粘着性を示さない、いわゆるホットメルト型の接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。具体的には、支持基板131あるいは基材フィルム層112に近い屈折率を有し、且つ透明な材料を適宜用いうる。より具体的には、アクリル系接着剤あるいは粘着剤が挙げられる。接着層の厚さは、5μm〜100μmであることが好ましい。
【0068】
〔1−3.封止基材〕
本実施形態の面発光素子10は、発光面145に封止基材151を備える。封止基材151は、発光面145に直接接するように設けてもよい。また、発光面145と封止基材151との間に、充填材や接着剤等の任意の物質が存在していてもよいし、空隙が存在していてもよい。空隙には、発光層142の耐久性を大きく損なう等の不都合がない限りは空気やその他の気体が存在してもよいし、空隙内を真空としてもよい。
【0069】
封止基材151としては、有機EL素子140を封止でき、発光面145から発せられる光を透過させる任意の部材を用いることができる。例えば、支持基材131と同様の部材を用いることができる。
【0070】
〔1−4.製造方法〕
面発光素子10の製造方法は、特に限定されない。例えば、支持基板131の一方の面に有機EL素子140を構成する各層を積層する工程と、凹凸構造層111及び基材フィルム層112を有する複層体110を用意する工程と、用意した複層体110を接着層121を介して支持基板131の他方の面に貼付する工程と、有機EL素子140の支持基板131とは反対側の面に封止基材151を設ける工程とを行うことにより製造してもよい。なお、前記の各工程は、所望の面発光素子10が得られる限り順番に制限はない。
【0071】
凹凸構造層111及び基材フィルム層112を有する複層体110の製造は、例えば、所望の形状を有する金型等の型を用意し、この型を凹凸構造層111を形成する材料の層に転写することにより行いうる。より具体的な方法としては、
(方法1)基材フィルム層112を構成する樹脂組成物Aの層及び凹凸構造層111を構成する樹脂組成物Bの層(凹凸構造はまだ形成されていない)を有する未加工複層体を用意し、かかる未加工複層体の樹脂組成物B側の面上に、凹凸構造を形成する方法;及び
(方法2)基材フィルム層112の上に、液体状態の樹脂組成物Bを塗布し、塗布された樹脂組成物Bの層に型を当て、その状態で樹脂組成物Bを硬化させ、凹凸構造層111を形成する方法
などを挙げることができる。
【0072】
方法1において、未加工複層体は、例えば樹脂A及び樹脂Bを共押出する押出成形により得ることができる。未加工複層体の樹脂B側の面上に、所望の表面形状を有する型を押し当てることにより、凹凸構造を形成することができる。
より具体的には、長尺の未加工複層体を押出成形により連続的に形成し、所望の表面形状を有する転写ロールとニップロールとで未加工複層体を加圧し、それにより、連続的な製造を効率的に行うことができる。転写ロールとニップロールとによる挟み圧力は、好ましくは数MPa〜数十MPaである。また転写時の温度は、樹脂Bのガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg以上(Tg+100℃)以下である。未加工複層体と転写ロールとの接触時間はフィルムの送り速度、すなわちロール回転速度によって調整でき、好ましくは5秒以上600秒以下である。
【0073】
方法2において、凹凸構造層111を構成する樹脂Bとしては、紫外線等のエネルギー線により硬化しうる樹脂を用いることが好ましい。かかる樹脂Bを、基材フィルム層112上に塗布し、型を当てた状態で、塗布面の裏側(基材フィルム層の、樹脂Bを塗布した面とは反対側)に位置する光源から、紫外線等のエネルギー線を照射し、樹脂Bを硬化させ、その後型を剥離することにより、樹脂Bの塗膜を凹凸構造層111とし、複層体110を得ることができる。
【0074】
〔1−5.主な利点の説明〕
本実施形態の面発光素子10は上述したように構成されているため、有機EL素子140の発光面144から発せられる光は出光面構造層100を透過して出光面10Uを通って出光し、発光面145から発せられる光は封止基材151を透過して出光面10Dを通って出光する。
【0075】
この際、出光面10Uが平坦面部113及び114並びに斜面部115を含む凹凸構造を有するため、出光面10Uを通して光を高効率で取り出すことができる。
【0076】
また、帯状面部113X及び113Yの幅を、その延伸する方向X及びYにおいて変化させたため、当該帯状面部113X及び113Yが視認されることを防止でき、更には、格子ムラが生じることも防止できる。
【0077】
さらに、面発光素子10が備える層がいずれも透明であるため、面発光素子10では、一方の出光面10Uに入射した光は面発光素子10を透過して他方の出光面10Dを通って出光できるようになっており、また、他方の出光面10Dに入射した光も面発光素子10を透過して一方の出光面10Uを通って出光できるようになっている。さらに、本実施形態では、平坦面部113及び114の合計面積に対する斜面部115の投影面積の割合を所定の範囲に収めてあるので、ヘイズを抑制できる。したがって、面発光素子10を通じて反対側を肉眼で明瞭に見通すことができるようになり、シースルータイプの面発光素子を実現できる。
【0078】
具体的には、面発光素子10は、面発光素子10全体として、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の全光線透過率を有する。なお、上限は理想的には100%であるが、通常は90%以下である。
【0079】
さらに、面発光素子10では凹凸構造の形状を適切に設定してあるので、面発光素子10のヘイズは、面発光素子10全体として、通常10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下と小さい値になっている。なお、下限値は理想的にはゼロであるが、通常は0.1%以上である。
【0080】
〔2.第二実施形態〕
第一実施形態においては、有機EL素子の2つの発光面のうち一方の発光面に凹凸構造を配置するようにしたが、両方の出光面に凹凸構造を配置するようにしてもよい。以下、その例を、図面を用いて説明する。
【0081】
図8は本発明の第二実施形態に係る面発光素子を模式的に示す斜視図である。
図8に示すように、本発明の第二実施形態に係る面発光素子20は、封止基材151の代わりに出光面構造層100を備えること以外は、第一実施形態に係る面発光素子10と同様である。これにより、面発光素子20は、有機EL素子140の2つの発光面144及び145の両方に、出光面構造層100を備えることになる。したがって、面発光素子20は、2つの出光面10U及び10Dの両方に凹凸構造を有することになる。なお、本実施形態では、2つの出光面に、それぞれ同じ形状の凹凸構造層を設けているが、必ずしもこのような形態には限定されず、一方の出光面の凹凸構造の形状と、他方の出光面の凹凸構造の形状を異なるものとしてもよい。
【0082】
本実施形態の面発光素子20は上述したように構成されているため、有機EL素子140の発光面144から発せられる光は出光面10Uを通って出光し、発光面145から発せられる光は出光面10Dを通って出光することになる。この際、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、出光面10U及び出光面10Dの両方において、帯状面部113X及び113Y(
図3参照)の視認を防止できる。さらに、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0083】
〔3.第三実施形態〕
第一及び第二実施形態においては、同じ出光面10Uにおける平坦面部113と平坦面部114との高低差Hを一定にしたが、この高低差Hを不揃いにして寸法差を設けるようにしてもよい。中でも、出光面10Uを通って出光する出射光及び出光面10Uで反射した反射光の一方又は両方の干渉をもたらす差異を超える寸法差を設けると、前記の出射光及び反射光の一方又は両方の干渉による虹ムラを抑制できるため、好ましい。ここで、出光面通って出光する出射光には、有機EL素子が発した光だけでなく、当該出光面の反対側から面発光素子へ入射して面発光素子を透過した透過光も含む。以下、このような凹凸構造の例を、図面を用いて説明する。
【0084】
図9は本発明の第三実施形態に係る凹凸構造層の断面を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、本発明の第三実施形態に係る凹凸構造層311の表面である出光面30Uには、平坦面部314を底面とし斜面部315を側面とする凹部316と、平坦面部317を底面とし斜面部318を側面とする凹部319とが、それぞれ複数設けられている。また、凹部316及び319の間には隙間が設けられていて、この隙間が平坦面部313を構成している。
【0085】
本実施形態の出光面30Uにおいて、平坦面部313は、第一実施形態の平坦面部113と同様に、出光面30Uに対して平行で互いに直交する2方向に沿って延在する2群の帯状面部を含み、この帯状面部の幅はそれぞれの帯状面部が延在する方向において変化している。また、斜面部315及び318の投影面積は、第一実施形態と同様に、平坦面部313、314及び317の合計面積の通常0.1倍以下となっている。
【0086】
ここで、凹部316の深さ(すなわち、平坦面部313と平坦面部314との高低差)H
316は、凹部319の深さ(すなわち、平坦面部313と平坦面部317との高低差)H
319よりも小さくなっている。この場合、凹部316の深さH
316と凹部319の深さH
319との間に、出射光及び反射光の一方又は両方の干渉をもたらす差異を超える寸法差H
319−H
316があると、干渉による虹ムラを抑制できる。この際、前記の寸法差H
319−H
316は、出射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差であってもよいが、出射光よりも反射光の方が虹ムラへの影響が大きい傾向があるので、反射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差であることが好ましく、出射光及び反射光の両方の干渉をもたらす差異を超える寸法差であることがより好ましい。より具体的には、前述した寸法差が無い場合には、凹凸構造層311の上面における平坦面部313、314および317での反射光と凹凸構造層311の下面での反射光との間で干渉が起こり、虹ムラが生じていた。しかしながら、表面の凹凸構造に前記所定の寸法差を備えることにより、反射光間の干渉を抑えることができ、出光面30Uにおける虹ムラを抑えることができる。
【0087】
前記の干渉をもたらす差異を超える寸法差とは、有機EL素子から発せられた出射光の干渉を例に挙げると、例えば、出射光の中心波長の、通常0.62倍以上、好ましくは1.5倍以上の寸法差である。この寸法差を設けることにより、虹ムラの発生を抑制することができる。かかる寸法差の上限は特に限定されないが、好ましくは、出射光の中心波長の60倍以下である。
【0088】
上記数値範囲は、以下に示す知見から確認している。すなわち、凹部の深さを全て揃える態様で設計した構造層において、凹部の深さに170nm以上の誤差が生じると干渉が発生して虹ムラが現れるという場合に、かかる虹ムラを発生させる誤差の最小値の2倍以上の高さの寸法差を敢えて設けると、虹ムラの発生を抑制することができることが分かっている。さらに、凹部の深さを全て揃える態様で設計した構造層において、凹部の深さに標準偏差でσ1nm(≒60nm)のバラツキが生じると干渉が発生し虹ムラが現れるという場合、6×σ1nm(=360nm)以上の寸法差を敢えて設けることにより、虹ムラの発生を抑制することができることが分かっている。上記2つの知見により、出射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差は、面発光素子が出光する光の中心波長の0.62倍以上であると示すことができる。
【0089】
また、同様の理由から、透過光及び反射光の干渉では、干渉をもたらす差異を超える寸法差は、透過光及び反射光の中心波長の、通常0.62倍以上、好ましくは1.5倍以上の寸法差であり、また通常60倍以下の寸法差である。ただし、通常は、透過光及び反射光は自然光であり、任意の波長を含む光であるため、反射する光の中心波長を決定することは難しい。そこで、虹ムラの原因となる光が可視光であることに鑑みて、通常は、可視光の中心波長である550nmを反射する光の中心波長として、前記の寸法差を設定する。
【0090】
さらに、本実施形態のように凹凸構造が寸法差を有するようにした場合でも、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、出光面30Uにおいて、帯状面部の視認を防止できる。さらに、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0091】
また、平坦面部同士の高低差以外の要素において、前記の寸法差を設けた場合でも、同様の効果を得ることができる。例えば、平坦面部同士の高低差、帯状面部の最大幅、凹部又は凸部等の繰り返し構造のピッチ、などの要素群のうち1つ以上の要素において前記の寸法差があれば、同様に虹ムラを抑制することができる。
【0092】
〔4.第四実施形態〕
本発明に係る出光面構造層は、有機EL素子を備える面発光素子であれば、任意のものに適用できる。したがって、有機EL素子に対して対称な層構造を有する面発光素子に対して上述した出光面構造層を設けてもよく、有機EL素子に対して非対称な層構造を有する面発光素子に対して出光面構造層を設けてもよい。例えば、有機EL素子に対して非対称な層構造を有する面発光素子に出光面構造層を適用してもよい。以下、その例を、図面を用いて説明する。
【0093】
図10は本発明の第四実施形態に係る面発光素子を模式的に示す斜視図である。
図10に示すように、本発明の第四実施形態に係る面発光素子40は、有機EL素子140の第二の透明電極層143と封止基材151との間に不活性ガス層461を備えること以外は第一実施形態に係る面発光素子10と同様である。
【0094】
不活性ガス層461は外部から浸入する酸素及び湿気が有機EL素子140を劣化させないように保護する層であり、窒素ガス等の不活性ガスが充填された層である。なお、通常は面発光素子40の側面は図示しない封止部材で封止されるため、不活性ガス層461内のガスが外部に漏れ出すことは無い。
【0095】
この面発光素子40は、有機EL素子140の一方の発光面145側にだけ不活性ガス層461を有する点で、有機EL素子140に対して非対称な層構造を有する。このような面発光素子40であっても、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、出光面30Uにおいて、帯状面部の視認を防止できる。さらに、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0096】
〔5.その他〕
本発明の面発光素子について実施形態を示して説明したが、本発明は更に変更して実施してもよい。
例えば、上述した実施形態では、全ての帯状面部が、その延在する方向において幅が変化している形態を示したが、一部の帯状面部は、その延在する方向において幅が均一になっていてもよい。
【0097】
また、例えば、上述した実施形態では出光面に凹部を設け、この凹部により平坦面部と斜面部とを有する凹凸構造を構成したが、凹部の代わりに凸部を設けてもよい。凹部の代わりに凸部を設けた場合、平坦面部は通常は周囲の斜面部よりも厚み方向の内側の位置(すなわち、発光面144に近い位置)に位置する。このため、その平坦面部に含まれる帯状面部も、周囲の斜面部よりも窪んだ面部となる。このような場合も、帯状面部の幅を、当該帯状面部が延在する方向において変化させることにより、帯状面部が視認されることを防止できる。具体例を挙げると、第一実施形態で説明した出光面10Uの凹凸構造を反転した形状の凹凸構造を有する出光面は、凹部116を反転させた四角錐台形状の凸部が離散的に形成された出光面となる。この出光面を厚み方向から見た場合、
図3,5及び6に示すのと同様の形状となり第一実施形態と同様の利点を得ることができる。さらに、例えば、同じ出光面に凹部と凸部とを混在させてもよい。
【0098】
また、例えば、出光面に形成される凹部及び凸部の形状は、四角錐台形状以外の形状でもよい。具体例を挙げると、三角形、五角形、六角形等の四角形以外の形状の底面を有する角錐台形状などが挙げられる。さらに、角錐形状、角柱形状等であってもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、出光面の全面に分布する凹部又は凸部として、同じ種類の形状(具体的には、四角錐台形状)からなるもののみが分布しているものを示したが、出光面には異なる形状の凹部又は凸部が混在していてもよい。例えば、大きさの異なる凹部又は凸部が混在していたり、三角錐台形状及び四角錐台形状の凹部又は凸部が混在していたり、異なる傾斜角度の斜面部が混在していたりしてもよい。
【0100】
また、例えば、平坦面部及び斜面部の位置、向き、形状、数及びこれらの組み合わせは、実施形態のものに限られず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で変更してもよい。
具体例を挙げると、平坦面部は、上述した実施形態のように高さ位置を2段階に揃えて設ける以外にも、
図11に示すように1段階に揃えて設けてもよい。
図11は、本発明の別の実施形態に係る凹凸構造層の断面を模式的に示す断面図である。
図11に示す凹凸構造層511においては、錐形状の凹部516の側面として斜面部515が設けられ、隣り合う凹部516間の隙間に高さ位置を揃えて平坦面部513が設けられている。このように平坦面部の高さ位置を1段階に揃える場合でも、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができ、また、出光面50Uにおいて帯状面部の視認を防止できる。なお、平坦面部の高さ位置を1段階で揃える場合、平坦面部同士の高低差はゼロになるが、この場合でも凹部又は凸部の高さHに寸法差を設けると、出射光及び反射光の一方又は両方の干渉による虹ムラを抑制できる。
【0101】
また、例えば、
図12に示すように、平坦面部の高さ位置を3段階以上に揃えるようにしてもよい。
図12は、本発明の別の実施形態に係る凹凸構造層の断面を模式的に示す断面図である。
図12に示す凹凸構造層611において凹部616は平坦面部614及び617並びに斜面部615及び618を有する。また、底面として平坦面部614の周囲に斜面部615が設けられ、斜面部615の周囲に平坦面部617が設けられ、平坦面部617の周囲に斜面部618が設けられ、隣り合う凹部616間の隙間に平坦面部613が設けられている。このように平坦面部の高さ位置を3段階以上の複数段階で揃える場合でも、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができ、また、出光面60Uにおいて帯状面部の視認を防止できる。なお、平坦面部の高さ位置を3段階以上の複数段階で揃える場合、厚み方向の平坦面部の高低差の最大値は、
図12において符号H
MAXで示す寸法となる。
【0102】
また、上述した実施形態のように斜面部を平坦な平面とする以外にも、
図13に示すように曲面としてもよい。
図13は本発明の別の実施形態に係る構造層の断面を模式的に示す断面図である。
図13に示す凹凸構造層711においては、凹部716の底面として平坦面部714が設けられ、平坦面部714の周囲に、平坦面部714からの距離が離れるにつれて次第に傾斜角度が増加又は減少する曲面状の斜面部715が設けられ、斜面部715の周囲に平坦面部713が設けられている。このように斜面部715が曲面となっている場合でも、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができ、また、出光面70Uにおいて帯状面部の視認を防止できる。
【0103】
また、例えば、上述した実施形態では、帯状面部として、方向Xに沿う群と方向Yに沿う群の2群設けたが、一方向に沿う帯状面部を1群だけ設けるようにしてもよく、3方向以上に沿う帯状面部を3群以上設けるようにしてもよい。さらに、異なる方向に沿って複数群の帯状面部を設ける場合、それらの帯状面部が交差する角度は90°に限定されず、例えば60°など、任意の角度にしてもよく、ランダムにしてもよい。
【0104】
また、例えば、上述した実施形態では発光面に直接に接するように出光面構造層を設けたが、出光面構造層は他の層を介して発光面に設けられていてもよい。他の層としては、例えば、有機EL素子を外気及び湿気から保護するガスバリア層、紫外線を遮断する紫外線カット層などが挙げられる。
【0105】
さらに、例えば、上述した実施形態では、出光面構造層としては、凹凸構造層、基材フィルム層、接着層及び支持基板からなるものを示したが、出光面構造層は、これらよりも少ない層から構成されたものであってもよく、又は逆にこれらの層に加えて任意の層をさらに含むものであってもよい。例えば、凹凸構造層の表面にさらにコーティング層を有し、これが出光面の凹凸構造を規定するものであってもよい。
【0106】
〔6.用途〕
本発明の面発光素子は、例えば、照明器具、バックライト装置及び表示装置等の用途に用いてもよい。
照明器具は、本発明の面発光素子を光源として有し、さらに、必要に応じて、光源を保持する部材、電力を供給する回路等の任意の構成要素を備える。
また、バックライト装置は、本発明の面発光素子を光源として有し、さらに、必要に応じて、筐体、電力を供給する回路、出光する光をさらに均一にするための拡散板、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を含む。バックライト装置の用途は、液晶表示装置等、画素を制御して画像を表示させる表示装置、並びに看板等の固定された画像を表示させる表示装置のバックライト等が挙げられる。
さらに、表示装置としては、例えば有機ELディスプレイ装置などが挙げられる。また、前記のバックライト装置を備える液晶表示装置等も、表示装置に含まれる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
以下の説明において、量を示す「部」及び「%」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0108】
〔実施例1〕
(複層体の製造)
ロール状の基材フィルム(商品名「ゼオノアフィルム」、日本ゼオン株式会社製、脂環式構造含有重合体樹脂のフィルム、厚さ100μm、屈折率1.53)に、ウレタンアクリレートを主成分とするUV硬化樹脂(屈折率1.54)を塗布して塗膜を形成し、かかる塗膜上に金属モールドを押し付けた。この状態で、紫外線を1.5mJ/cm
2照射し塗膜を硬化させ、凹凸構造を有する凹凸構造層(25μm)を形成した。
【0109】
図14は、実施例1で用いた金属モールドの製造の様子を説明するため、金属モールドの切削される面の一部を模式的に示す平面図である。
図14に示すように、凹凸構造を作製する金属モールドは、頂角5°、先端幅50μmの切削バイトを用いて、以下の手順に従って切削して作製した。
(1)型とする金属板の一方の面上において、面内のある方向に沿って、ある切削ピッチPで切削する。この1回目の切削により形成された切削跡801は、
図14では一点鎖線で示す。
(2)切削開始位置802および切削ピッチPが1回目の切削と同じになるように設定して、再び切削を行う。この切削での切削方向は、既に形成された切削跡801と、今回の切削により形成される切削跡803とが重複し、切削終了位置804での切削面幅の合計が切削バイトの先端部幅のおよそ切削回数倍(例えば、2回目の切削であれば2倍)以下となる方向とする。例として、2回目の切削により形成された切削跡803を、
図14に実線で示す。
(3)さらに前記(2)で説明した切削を、切削終了位置804における切削面幅の合計が所望の切削面幅となる回数だけ行う。通常、切削終了位置804における切削面幅が、切削により形成される溝の最大切削面幅となる。この最大切削面幅は、切削バイトの先端部幅の3倍以内であれば、切削方向の角度を調整することによって任意に変更できる。これにより、その延在方向において溝幅が連続的に変化した第一群の溝が、金属モールドに形成される。
(4)第一群の溝を形成するために1回目に切削した方向に対して所定の交差角度で交差する方向に沿って、前記の(1)〜(3)の切削方法で切削を行い、第一群の溝に交差する第二群の溝を、金属モールドに形成する。
【0110】
図15は、実施例1で用いた金属モールドの一部を、切削方向の一方に対して垂直な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図15に示すように、実施例1では、切削ピッチPを200μm、最大切削面幅を150μm、第一群の溝と第二群の溝との切削方向の交差角度を90°とした。作製した金属モールド805に形成された溝806は、面内における切削面幅Wが、その延伸方向において50μmから150μmで連続的に変化していた。また、切削により形成される溝806の深さはH
1〜H
5の順で5段階に変え、こうして形成される5本の溝806を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。本実施例においては、繰り返し単位に含まれる溝806の深さH
1〜H
5は、H
1が19.4μm、H
2が19.7μm、H
3が20.0μm、H
4が20.3μm、およびH
5が20.6μmとなるようにした。
【0111】
図16は、実施例1で得られた凹凸構造層の一部を、金属モールドの切削方向のうちの一方に対して垂直な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図16に示すように、得られた凹凸構造層807の表面には、金属モールドに形成された溝に対応して四角錐台形状の凹部808を多数有する凹凸構造が形成され、凹部808の底には平坦面部809が形成され、また、凹部808同士の間には複数の平坦面部810が形成された。このうち、平坦面部810は、金属モールドの切削方向に平行に延在する帯状面部となっている。
【0112】
また、この凹凸構造層807において、凹部808の斜面部811の平坦面部809及び810に対する平均傾斜角度は87.5°であった。また、平坦面部809及び810の合計面積に対する斜面部811の投影面積の比は0.03であった。さらに、平坦面部809と平坦面部810との高低差の最大は20.6μmであった。
【0113】
(透明有機EL素子の製造)
主面に透明電極層が形成されたガラス基板上に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホール阻止層、電荷発生層、金属酸化物層及び陰極を、この順に形成した。各層を形成した材料と膜厚は下記の通りである。
【0114】
・透明電極層:ITO 300nm
・ホール注入層:三酸化モリブデン(MoO
3)5nm
・ホール輸送層:NS−21[新日鉄化学株式会社製]及びMoO
3 20nm、さらにNS−21 5nm、合計25nm
・発光層:NS−21及びEY52(e−Ray Optoelectronics Technology社(以下、e−Ray社とする)製)20nm、さらにEB43及びEB52(共にe−Ray社製)30nm、合計50nm
・ホール阻止層:ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq) 5nm
・電荷発生層:Liq及びDPB 35nm、さらにアルミニウム 1.5nm、さらにNS−21及びMoO
3 10nm、合計37.5nm
・金属酸化物層:MoO
3 5nm
・陰極:ITO 100nm
【0115】
ホール注入層から金属酸化物層までの形成は、真空蒸着装置内に透明電極層を既に形成したガラス基板を設置し、上記のホール輸送層から金属酸化物層までの材料を抵抗加熱式により順次蒸着させることにより行なった。系内圧は5×10
−3Paで、蒸発速度0.1〜0.2nm/sで行った。その後、陰極層のITOは、対向ターゲット型スパッタ法により製膜した。これを、UV硬化樹脂を用いて、別のガラス板により封止し、透明有機EL素子1を得た。得られた透明有機EL素子1に通電し駆動させたところ、良好な白色の発光が得られ、正面方向及び斜め方向共に、透明性が優れていた。なお、ここで正面方向とは発光面の法線方向に平行な方向を指し、斜め方向とは発光面に対して45°傾斜した方向を指す。
【0116】
(面発光素子1の製造)
得られた透明有機EL素子1に、凹凸構造層を形成した基材フィルムを粘着層(アクリル系樹脂、屈折率1.49、日東電工社製、CS9621)を介して貼り合せ、透明有機EL素子1−粘着層−基材フィルム−凹凸構造層との層構成を有する面発光素子1を得た。得られた面発光素子1を通電して発光させ、面発光素子1の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0117】
〔実施例2〕
図17は、実施例2(及び後述する実施例3〜9及び比較例2〜5)で用いた金属モールドを、その切削終了位置において、一方の切削方向に対して垂直な平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
切削バイトを、頂角が30.0°、先端幅が100.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を20.0μmとし、切削ピッチP
1〜P
5を400μmにし、さらに溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を、W
1が100μm、W
2が150μm、W
3が200μm、W
4が250μm、W
5が300μmとなるようにし、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として繰り返し切削を行った。
以上のこと以外は実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造し、面発光素子2を製造した。
【0118】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は75.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.09であり、平坦面部の高低差の最大は20.1μmであった。得られた面発光素子2を通電して発光させ、面発光素子2の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0119】
〔実施例3〕
切削バイトを、頂角が20.0°、先端幅が100μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を30.0μmでとし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が450μm、P
2が475μm、P
3が500μm、P
4が525μm、P
5が550μmとなるようにし、さらに溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を200μmとし、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。
以上のこと以外は実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み35μm)を製造して、面発光素子3を製造した。
【0120】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は80.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.05であり、平坦面部の高低差の最大は30.1μmであった。得られた面発光素子3を通電して発光させ、面発光素子3の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0121】
〔実施例4〕
切削バイトを、頂角が30.0°、先端幅が150μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、溝の深さH
1〜H
5を、H
1が24.4μm、H
2が24.7μm、H
3が25.0μm、H
4が25.3μm、およびH
5が25.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が360μm、P
2が380μm、P
3が400μm、P
4が420μm、P
5が440μmとなるようにし、さらに溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を300μmとし、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。
以上のこと以外は実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み30μm)を製造して、面発光素子4を製造した。
【0122】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は75.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.09であり、平坦面部の高低差の最大は25.6μmであった。得られた面発光素子4を通電して発光させ、面発光素子4の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0123】
〔実施例5〕
切削バイトを、頂角が8.0°、先端幅が50.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を20.0μmとし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が180μm、P
2が190μm、P
3が200μm、P
4が210μm、P
5が220μmとなるようにし、さらに溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を、W
1が50μm、W
2が75μm、W
3が100μm、W
4が125μm、W
5が150μmになるようにし、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子5を製造した。
【0124】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は86.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.04であり、平坦面部の高低差の最大は20.1μmであった。得られた面発光素子5を通電して発光させ、面発光素子5の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0125】
〔実施例6〕
切削バイトを、頂角が25.0°、先端幅が50.0μmのものに変更した
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が19.4μm、H
2が19.7μm、H
3が20.0μm、H
4が20.3μm、H
5が20.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5が400μmとなるようにし、さらに溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を、W
1が50μm、W
2が62.5μm、W
3が75μm、W
4が87.5μm、W
5が100μmになるようにし、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子6を製造した。
【0126】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は77.5°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.09であり、平坦面部の高低差の最大は20.6μmであった。得られた面発光素子6を通電して発光させ、面発光素子6の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0127】
〔実施例7〕
切削バイトを、頂角が5.0°、先端幅が50.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が19.4μm、H
2が19.7μm、H
3が20.0μm、H
4が20.3μm、H
5が20.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が180μm、P
2が190μm、P
3が200μm、P
4が210μm、P
5が220μmとなるようにし、溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を、W
1が50μm、W
2が75μm、W
3が100μm、W
4が125μm、W
5が150μmになるようにし、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子7を製造した。
【0128】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は87.5°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.03であり、平坦面部の高低差の最大は20.6μmであった。得られた面発光素子7を通電して発光させ、面発光素子7の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0129】
〔実施例8〕
切削バイトを、頂角が5.0°、先端幅が25.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が19.4μm、H
2が19.7μm、H
3が20.0μm、H
4が20.3μm、H
5が20.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が180μm、P
2が190μm、P
3が200μm、P
4が210μm、P
5が220μmとなるようにし、溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を、W
1が25.0μm、W
2が37.5μm、W
3が50.0μm、W
4が62.5μm、W
5が75.0μmになるようにし、第一群の溝と第二群の溝との交差角度を60°となるようにした。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子8を製造した。
【0130】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は87.5°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.03であり、平坦面部の高低差の最大は20.6μmであった。得られた面発光素子8を通電して発光させ、面発光素子8の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0131】
〔実施例9〕
切削バイトを、頂角が10.0°、先端幅が60.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が14.4μm、H
2が14.7μm、H
3が15.0μm、H
4が15.3μm、H
5が15.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が180μm、P
2が190μm、P
3が200μm、P
4が210μm、P
5が220μmとなるようにし、溝の切削終了位置における切削面幅W
1〜W
5を、W
1が60.0μm、W
2が90.0μm、W
3が120.0μm、W
4が150.0μm、W
5が180.0μmになるようにし、第一群の溝と第二群の溝との交差角度を60°となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして金属モールドを製造した。Ni電鋳(厚み約300μm)にて、この金属モールドから反転した形状の型を製造した。こうして得られた型を、凹凸構造層を形成する転写型としたこと以外は、実施例1と同様にして凹凸構造層(厚み20μm)を製造し、面発光素子9を製造した。
【0132】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は85.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.04であり、平坦面部の高低差の最大は15.6μmであった。得られた面発光素子9を通電して発光させ、面発光素子9の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0133】
〔比較例2〕
切削バイトを、頂角が20.0°、先端幅が10.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が19.4μm、H
2が19.7μm、H
3が20.0μm、H
4が20.3μm、H
5が20.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を100.0μmとした。
さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして、溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにした。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子10を製造した。
【0134】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.32であり、平坦面部の高低差の最大は20.6μmであった。
得られた面発光素子10を通電して発光させ、面発光素子10の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0135】
〔比較例3〕
切削バイトを、頂角が40.0°、先端幅が10.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を5.0μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が31.5μm、P
2が33.3μm、P
3が35.0μm、P
4が36.8μm、P
5が38.5μmとなるようにした。
さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして、溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにした。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み10μm)を製造し、面発光素子11を製造した。
【0136】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.40であり、平坦面部の高低差の最大は5.1μmであった。
得られた面発光素子11を通電して発光させ、面発光素子11の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0137】
〔比較例4〕
切削バイトを、頂角が20.0°、先端幅が30.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が24.4μm、H
2が24.7μm、H
3が25.0μm、H
4が25.3μm、H
5が25.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が90.0μm、P
2が95.0μm、P
3が100.0μm、P
4が105.0μm、P
5が110.0μmとなるようにした。
さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして、溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにした。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み30μm)を製造し、面発光素子12を製造した。
【0138】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.28であり、平坦面部の高低差の最大は25.6μmであった。
得られた面発光素子12を通電して発光させ、面発光素子12の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0139】
〔比較例5〕
切削バイトを、頂角が30.0°、先端幅が50.0μmのものに変更した。
また、
図17に示すように、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を、H
1が24.4μm、H
2が24.7μm、H
3が25.0μm、H
4が25.3μm、H
5が25.6μmとなるようにし、切削ピッチP
1〜P
5を、P
1が90.0μm、P
2が95.0μm、P
3が100.0μm、P
4が105.0μm、P
5が110.0μmとなるようにした。
さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして、溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにした。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み30μm)を製造し、面発光素子13を製造した。
【0140】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.26であり、平坦面部の高低差の最大は25.6μmであった。
得られた面発光素子13を通電して発光させ、面発光素子13の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0141】
[評価]
(光取り出し量)
実施例1で得られた透明有機EL素子1、並びに実施例1〜9及び比較例2〜5で得られた面発光素子1〜13について、プログラム(プログラム名「ASAP」、Breault Reserch社製)を用いた光学シミュレーションで、発光層の光度を1lmとし、両面からでてくる光度を算出した。得られた値を表1〜3に示す。なお、表1〜3において「貼合面」欄の数値は、凹凸構造層が設けられて凹凸構造を有する出光面からの光取出量を表し、「裏面」欄の数値は、凹凸構造層の無いガラス表面からの光取出量を表す。また、透明有機EL素子1については比較例1として取り扱う。比較例1において、「貼合面」欄の数値および「裏面」欄の数値は、いずれも、凹凸構造層の無いガラス表面からの光取出量を表す。
【0142】
(凹凸構造層の透明性)
実施例1〜9並びに比較例2〜5で得られた凹凸構造層について、プログラム(プログラム名「ASAP」、Breault Reserch社製)を用いた光学シミュレーションで、平行光透過率と拡散光透過率を算出し、凹凸構造層の透明性を表す数値として、(拡散光透過率)/(平行光透過率+拡散光透過率)×100を算出した。この数値が低いほど、厚み方向から見た透明性に優れることを表す。得られた値を表1〜3に示す。
【0143】
(格子ムラ)
実施例1〜実施例9、および比較例2〜比較例5で得られた面発光素子1〜13について目視観察し、格子ムラの有無を確認した。実施例1〜実施例9は凹凸構造層に含まれる平坦面部の幅が変化しているため、格子ムラがほとんど観察されず優良であった。
【0144】
(視認性)
5mm×5mmサイズの文字を配列した表示面の50cm手前に、透明有機EL素子1および面発光素子1〜13を非点灯状態で配置し、透明有機EL素子1および面発光素子1〜13を通して、正面方向および斜め方向から文字を観察した。文字がにじみやゆがみが無くはっきり見えるものを「優」、にじみやゆがみがあるが、文字が読み取れるものを「良」、にじみやゆがみが多く、文字がはっきり読み取れないものを「不良」とした。結果を表1〜3に示す。
【0145】
(虹ムラ)
実施例1〜実施例9、および比較例2〜比較例5で得られた面発光素子について目視観察し、虹ムラの有無を確認した。実施例1〜実施例4、および比較例2〜比較例5は、いずれも凹凸構造の高低差を所定範囲で不揃いとしているため、凹凸構造層の表裏面での反射光における干渉に基づく虹ムラがほとんど観察されず優良であった。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
〔実施例10〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が5.0°、先端幅が50.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を20.0μmとなるようにし、溝の切削終了位置における切削面幅Wを100.0μmになるようにし、切削ピッチPを200.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子14を製造した。
【0150】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は87.5°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.03であり、平坦面部の高低差の最大は20.1μmであった。
得られた面発光素子14を通電して発光させ、面発光素子14の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0151】
〔実施例11〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が40.0°、先端幅が100.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を10.0μmとなるようにし、溝の切削終了位置における切削面幅Wを200.0μmになるようにし、切削ピッチPを300.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み15μm)を製造して、面発光素子15を製造した。
【0152】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は70.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.08であり、平坦面部の高低差の最大は10.1μmであった。
得られた面発光素子15を通電して発光させ、面発光素子15の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0153】
〔実施例12〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が15.0°、先端幅が100.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を27.0μmとなるようにし、切削終了位置における切削面幅Wを300.0μmになるようにし、切削ピッチPを400.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み32.0μm)を製造して、面発光素子16を製造した。
【0154】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は82.5°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.04であり、平坦面部の高低差の最大は27.1μmであった。
得られた面発光素子16を通電して発光させ、面発光素子16の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0155】
〔実施例13〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が30.0°、先端幅が200.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を25.0μmとなるようにし、切削終了位置における切削面幅Wを400.0μmになるようにし、切削ピッチPを500.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚30.0μm)を製造して、面発光素子17を製造した。
【0156】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は75.0°であった。また、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.07であり、平坦面部の高低差の最大は25.1μmであった。
得られた面発光素子17を通電して発光させ、面発光素子17の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
【0157】
〔比較例6〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が20.0°、先端幅が10.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を20.0μmとなるようにし、切削ピッチPを100.0μmとし、さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み25μm)を製造して、面発光素子18を製造した。
【0158】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の合計面積に対する斜面部の投影面積の比は0.32であり、平坦面部の高低差の最大は20.1μmであった。
得られた面発光素子18を通電して発光させ、面発光素子18の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0159】
〔比較例7〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が40.0°、先端幅が10.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を5.0μmとなるようにし、切削ピッチPを35.0μmとし、さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み10μm)を製造して、面発光素子19を製造した。
【0160】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の面積に対する斜面部の投影面積の比は0.40であり、平坦面部の高低差の最大は5.1μmであった。
得られた面発光素子19を通電して発光させ、面発光素子19の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0161】
〔比較例8〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が20.0°、先端幅が30.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を25.0μmとなるようにし、切削ピッチPを100.0μmとし、さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み30μm)を製造して、面発光素子20を製造した。
【0162】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の面積に対する斜面部の投影面積の比は0.28であり、平坦面部の高低差の最大は25.1μmであった。
得られた面発光素子20を通電して発光させ、面発光素子20の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0163】
〔比較例9〕
図15に示すように、切削バイトを、頂角が30.0°、先端幅が50.0μmのものに変更し、金属モールドに形成する溝の高さH
1〜H
5を25.0μmとなるようにし、切削ピッチPを100.0μmとし、さらに、各方向への切削はそれぞれ1回だけ行うようにして溝が延在する方向において切削面幅が均一になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属モールドを製造し、さらに凹凸構造層(厚み30μm)を製造して、面発光素子21を製造した。
【0164】
製造された凹凸構造層の凹凸構造が形成された面において、平坦面部の面積に対する斜面部の投影面積の比は0.26であり、平坦面部の高低差の最大は25.1μmであった。
得られた面発光素子21を通電して発光させ、面発光素子21の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が劣っていた。
【0165】
[評価]
実施例10〜13及び比較例6〜9で得られた面発光素子14〜21について、上述した要領で、光取り出し量及び透明性を評価した。結果を表4及び表5に示す。
【0166】
また、実施例10〜実施例13、および比較例6〜比較例9で得られた面発光素子14〜21について目視観察したところ、多少の虹ムラが存在するものの、使用態様によっては問題視されない程度のものであった。
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】