【実施例】
【0061】
  以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
  本実施例では、まず、1,2の工程を経て、反応性基(a)を担体表面に修飾するための分子を製造した。反応性基(a)は、モノマーAの反応性基(b)に対応する。
【0063】
  [担体表面修飾用分子の製造]
<工程1:3−アジドプロピルトリエトキシシランの合成>
  既知の方法(Eur.J.Org.Chem.,2006,2934−2941)に従い、式(1)で表される3−クロロプロピルトリエトキシシラン3.0g(12.5mmol)から、式(2)で表される3−アジドプロピルトリエトキシシランを得た(収量:2.12g(8.60mmol),収率:69%)。反応スキームを以下に示す。
【0064】
【化5】
【0065】
<工程2:1−アジドウンデカン−11−チオールの合成>
  既知の方法(Langmuir.,2004,20(4),1051−1053)を参考に、式(3)で表される1−ブロモウンデカン−11−オールから、式(7)で表される1−アジドウンデカン−11−チオールを合成した。
  具体的には、アルゴン雰囲気下、式(3)で表される1−ブロモウンデカン−11オール2.51g(10.0mmol)とアジ化ナトリウム1.95g(30.0mmol)をDMF  45mlに懸濁し、70℃で3時間加熱攪拌した。過剰なアジ化ナトリウムをろ過で取り除いた後、反応溶液を減圧濃縮した。残渣にイソプロピルエーテルを加え、水で2回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して、式(4)で表される1−アジドウンデカノールを得た(収量:2.13g(10.0mmol),収率:100%)。
  次に、式(4)で表される1−アジドウンデカン−11−チオール2.07g(9.70mol)とメタンスルホニルクロリド2.29g(20.0mmol)の脱水THF  60ml溶液に、アルゴン雰囲気下、トリエチルアミン2.02g(20.0mmol)の脱水THF20ml溶液を滴下し、そのまま室温で3時間攪拌した。反応溶液をろ過し、生成した塩を除いた後、減圧濃縮した。残渣にイソプロピルエーテルを加え、1M塩酸、水、NaHCO
3水溶液で洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して、式(5)で表される1−アジドウンデカン−11−メチルスルホナートを得た(収量:2.70g(9.27mmol),収率:96%)。
  続いて、式(5)で表される1−アジドウンデカン−11−メチルスルホナート2.70g(9.27mmol)とカリウムチオアセテート2.10g(18.6mmol)をメタノール80mlに溶解し、アルゴン雰囲気下、2.5時間加熱還流した。反応溶液を減圧濃縮し、残差に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を更に水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して、式(6)で表される1−アジドウンデカン−11−チオアセテートを得た。(収量:2.27g(8.36mmol),収率:90%)
  最後に、式(6)で表される1−アジドウンデカン−11−チオアセテート2.27g(8.36mmol)をメタノール150mlに溶解した後、濃塩酸8mlを添加し、アルゴン雰囲気下、5時間加熱還流した。反応溶液に水を加えた後、メタノールを減圧で除き、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を更にNaHCO
3水溶液、水、ブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して、式(7)で表される1−アジドウンデカン−11−チオールを得た(収量:1.92g(8.38mmol),収率:100%)。反応スキームを以下に示す。
【0066】
【化6】
【0067】
  3の工程を経て、本発明に用いる可逆的付加開裂連鎖移動剤(以下、連鎖移動剤と称する。)であるブチルベンジルトリチオカルボナートを製造した。
【0068】
  [連鎖移動剤の製造]
<工程3:ブチルベンジルトリチオカルボナートの合成>
  既知の文献(日本化学会誌,1987,7,1408−1413)を参考に、式(8)で表されるベンジルメルカプタンから、式(10)で表されるブチルベンジルトリチオカルボナートを合成した。
  具体的には、式(8)で表されるベンジルメルカプタン1.24g(10.0mmol)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク―7−エン(DBU)1.52g(20.0mmol)を脱水ベンゼン10mlに溶解し、アルゴン雰囲気下、二硫化炭素1.52g(20.0mmol)をゆっくり滴下し、室温で30分攪拌した。この反応溶液に1−ブロモブタン1.37g(10.0mmol)の脱水ベンゼン5ml溶液を滴下し、室温で18時間攪拌した。反応溶液をベンゼンで希釈し、セライトでろ過した。ろ液を1M塩酸、水、ブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して、式(10)で表されるブチルベンジルトリチオカルボナートを得た(収量:2.48g(9.67mmol),収率:97%)。反応スキームを以下に示す。
【0069】
【化7】
【0070】
  4の工程を経て、本発明のモノマー(A)を製造した。
【0071】
  [モノマー(A)の製造]
<工程4:アクリル酸−4−ペンチニルエステルの合成>
  式(11)で表される4−ペンチン−1−オールとアクリル酸クロリドから、式(13)で表されるアクリル酸−4−ペンチニルエステルを合成した。
  具体的には、式(11)で表される4−ペンチン−1−オール2.83g(40.0mmol)とトリエチルアミン4.45g(44.0mmol)を脱水THF  40mlに溶解し、氷浴で冷却しながら、表(12)で表されるアクリル酸クロリド3.98g(44.0mmol)の脱水THF  40ml溶液を滴下した。その後、氷浴を外し、室温で5時間攪拌した。反応溶液をろ過し、生成した塩を除去した後、減圧濃縮した。残渣にイソプロピルエーテルを加え、NaHCO
3水溶液、塩化アンモニウム水溶液、ブラインで洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して粗生成物得た。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:10)で精製し、式(13)で表されるアクリル酸−4−ペンチニルエステルを得た(収量:1.90g(13.8mmol),収率:35%)。反応スキームを以下に示す。
【0072】
【化8】
【0073】
  5又は6の工程を経て、本発明のモノマー(B)を製造した。
【0074】
  [モノマー(B)の製造]
<工程5:β−アクリル酸エチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテートの合成>
  既知の方法(Biomacromolecule,2004,5(1),224−231)を参考に、式(14)で表されるβ体リッチのD−ラクトース−オクタアセテートと、式(15)で表されるヒドロキシエチルアクリレートとから、式(16)で表されるβ−アクリル酸エチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテートを合成した。
  具体的には、式(14)で表されるβ体リッチのD−ラクトース−オクタアセテート10.0g(14.7mmol)と、式(15)で表されるアクリル酸ヒドロキシエチルエステル2.06g(17.7mmol)とを、アルゴン雰囲気下、脱水ジクロロメタンに溶解し、氷浴で冷却しながら、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(46〜49%)6mlを滴下した。そのまま2時間攪拌した後、氷浴を外し、更に室温で18時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、NaHCO
3水溶液、水で洗浄、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して粗生成物得た。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトン:ジクロロメタン=1:30→1:25)で精製した後、メタノール/水で再沈澱を行い、式(16)で表されるβ−アクリル酸エチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテートを得た(収量:5.36g(7.30mmol),収率:50%)。反応スキームを以下に示す。
【0075】
【化9】
【0076】
<工程6:β−アクリルアミジルエチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテートの合成>
  既知の方法(Aust.J.Chem.,1998,51,31−35)に従い、式(17)で表される1−アミノエタノールと、式(18)で表されるアクリル酸クロリドとから、式(19)で表される2−ヒドロキシエチルアクリルアミドを合成した。次に、既知の方法(Biomacromolecule,2004,5(1),224−231)を参考に、式(14)で表されるβ体リッチのD−ラクトース−オクタアセテートと、式(19)で表される2−ヒドロキシエチルアクリルアミドとから、式(20)で表されるβ−アクリルアミジルエチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテートを合成した。
  具体的には、式(17)で表される1−アミノエタノール30ml(0.50mol)を脱水ジクロロメタン300mlに溶解し、氷浴で冷却しながら式(18)で表されるアクリル酸クロリド20ml(0.25mol)の脱水ジクロロメタン100ml溶液を滴下した。そのまま氷浴で冷却しながら3時間攪拌した後、生成した塩をろ過で除き、ろ液を減圧濃縮し、式(19)で表される2−ヒドロキシエチルアクリルアミドを合成した(収量:15g(0.13mol),収率:52%)。
  次に、式(14)で表されるβ体リッチのD−ラクトース−オクタアセテート10.0g(14.7mmol)と式(19)で表される2−ヒドロキシエチルアクリルアミド2.03g(17.7mmol)をアルゴン雰囲気下、脱水ジクロロメタンに溶解し、氷浴で冷却しながら、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(46〜49%)6mlを滴下した。そのまま2時間攪拌した後、氷浴を外し、更に室温で18時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、NaHCO
3水溶液、水で洗浄、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水、減圧濃縮して粗生成物得た。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1→酢酸エチル)で精製し、式(20)で表されるβ−アクリル酸エチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテートを得た(収量:6.22g(8.48mmol),収率:58%)。反応スキームを以下に示す。
【0077】
【化10】
【0078】
  7,8,9,又は10の工程を経て、糖鎖ポリマーを製造した。
【0079】
  [糖鎖ポリマーの製造:ホモポリマータイプ(1)]
<工程7:Poly−Lac(OAc)
7−Aの合成>
  式(16)で表されるβ−アクリル酸エチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテート1.47g(2.0mmol)と、式(10)で表されるブチルベンジルトリチオカルボナート26mg(0.10mmol)と、AIBN  1.6mg(10μmol)とを脱水DMF  10mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で4日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱を行い、更に得られた沈澱を少量のクロロホルムに溶解し、イソプロパノール/イソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(21)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−Aを得た(収量:445mg,回収率:30%)。反応スキームを以下に示す。
  反応溶液の一部を減圧濃縮した粗生成物の
1HNMR(CDCl
3)を測定し、積分比から算出したモノマーの転化率は43%であった。また、精製後のポリマーをGPC(ポリスチレンスタンダード)で測定した数平均分子量(Mn
cal)は3842、分子量分布(Mw/Mn)は1.20、Mn
calから算出した平均重合度(n
cal)は4.9であった。なお、分子量分布が狭いことから、この重合反応はRAFT機構で進行したと考えられる。よって、モノマーの転化率から算出した理論的な平均分子量(Mn
th)は6574、平均重合度(n
th)は8.6であった。
【0080】
【化11】
【0081】
  [糖鎖ポリマーの製造:ホモポリマータイプ(2)]
<工程8:Poly−Lac(OAc)
7−AAの合成>
  式(20)で表されるβ−アクリルアミジルエチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテート1.10g(1.5mmol)と、式(10)で表されるブチルベンジルトリチオカルボナート13mg(0.050mmol)と、AIBN  1.6mg(10μmol)とを脱水DMF  8mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で4日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱を行い、更に得られた沈澱を少量のクロロホルムに溶解し、イソプロパノール/イソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(22)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−AAを得た(収量:555mg,回収率:50%)。反応スキームを以下に示す。
  なお、工程7と同様の方法にて測定し、算出したモノマーの転化率は60%、Mn
calは4785、Mw/Mnは1.20、n
calは6.2、Mn
thは13463、n
thは18であった。
【0082】
【化12】
【0083】
  [糖鎖ポリマーの製造:コポリマータイプ(1)]
<工程9:Poly−Lac(OAc)
7−A−co−HEAの合成>
  式(16)で表されるβ−アクリル酸エチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテート1.47g(2.0mmol)と、式(15)で表されるアクリル酸ヒドロキエチルエステル232mg(2.0mol)と、式(10)で表されるブチルベンジルトリチオカルボナート26mg(0.10mol)と、AIBN  3.3mg(20μmol)とを脱水DMF  10mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で4日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱を行い、更に得られた沈澱を少量のクロロホルムに溶解し、イソプロパノール/イソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(23)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−A−co−HEAを得た(収量:1.04g,回収率:53%)。反応スキームを以下に示す。
  なお、工程7と同様の方法にて測定し、算出したモノマーの転化率は70%(2種類のモノマー全体として)、Mn
calは5186、Mw/Mnは1.28であった。
【0084】
【化13】
【0085】
  [糖鎖ポリマーの製造:コポリマータイプ(2)]
<工程10:Poly−Lac(OAc)
7−AA−co−HEAAの合成>
  式(20)で表されるβ−アクリルアミジルエチルオキシ−D−ラクトース−ヘプタアセテート1.46g(2.0mmol)と、式(19)で表される2−ヒドロキシエチルアクリルアミド230mg(2.0mmol)と、式(10)で表されるブチルベンジルトリチオカルボナート26mg(0.10mmol)と、AIBN  1.6mg(10μmol)とを脱水DMF  10mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で4日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱を行い、更に得られた沈澱を少量のクロロホルムに溶解し、イソプロパノール/イソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(24)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−AA−co−HEAAを得た(収量:770mg,回収率:39%)。反応スキームを以下に示す。
  なお、工程7と同様の方法にて測定し、算出したモノマーの転化率は45%(2種類のモノマー全体として)、Mn
calは4930、Mw/Mnは1.18であった。
【0086】
【化14】
【0087】
  11,12,13又は14の工程を経て、本発明の共重合体を製造した。
【0088】
  [本発明の共重合体の製造:糖鎖ポリマーがホモポリマータイプ(1)]
<工程11:Poly−Lac(OAc)
7−A−b−Alkyne−Aの合成>
  式(21)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−A  384mg(Mn
cal=3842、Mn
th=6574)と、式(13)で表されるアクリル酸−4−ペンチニルエステル69mg(0.50mol)と、AIBN  5.0mg(30μmol)とを脱水DMF  3mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で6日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(25)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−A−b−Alkyne−Aを得た(収量:341mg,回収率:75%)。反応スキームを以下に示す。
  反応溶液の一部を減圧濃縮した粗生成物の
1HNMR(CDCl
3)を測定し、積分比から算出したモノマーの転化率は100%であった。また、精製後のポリマーをGPC(ポリスチレンスタンダード)で測定した数平均分子量(Mn
cal)は3712、分子量分布(Mw/Mn)は1.19であった。なお、分子量分布が狭いことから、この重合反応は、RAFT機構で進行したと考えられる。よって、マクロ連鎖移動剤のMn
thとモノマーの転化率とから算出した理論的な平均分子量(Mn
th)は7757、平均重合度はn
thが8.6、m
thが8.6であった。
【0089】
【化15】
【0090】
  [本発明の共重合体の製造:糖鎖ポリマーがホモポリマータイプ(2)]
<工程12:Poly−Lac(OAc)
7−AA−b−Alkyne−Aの合成>
  式(22)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−AA  540mg(Mn
cal=4785、Mn
th=13463)と、式(13)で表されるアクリル酸−4−ペンチニルエステル55mg(0.40mol)と、AIBN  3.3mg(20mmol)とを脱水DMF  4mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で6日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(26)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−AA−b−Alkyne−Aを得た(収量:526mg,回収率:88%)。反応スキームを以下に示す。
  なお、工程11と同様の方法にて測定し、算出したモノマーの転化率は100%、Mn
calは4452、Mw/Mnは1.23、Mn
thは14840、平均重合度はn
thが18、m
thが10であった。
【0091】
【化16】
【0092】
  [本発明の共重合体の製造:糖鎖ポリマーがコポリマータイプ(1)]
<工程13:Poly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aの合成>
  式(23)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−A−co−HEA  1.04g(Mn
cal=5186)と、式(13)で表されるアクリル酸−4−ペンチニルエステル83mg(0.60mmol)と、AIBN  4.9mg(30μmol)とを脱水DMF  10mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で6日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(27)で表されるPoly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aを得た(収量:807mg,回収率:72%)。反応スキームを以下に示す。
  なお、工程11と同様の方法にて測定し、算出したモノマーの転化率は100%、Mn
calは3502、Mw/Mnは1.32であった。
【0093】
【化17】
【0094】
  [本発明の共重合体の製造:糖鎖ポリマーがコポリマータイプ(2)]
<工程14:Poly−[Lac(OAc)
7−AA−co−HEAA]−b−Alkyne−Aの合成>
  式(24)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−AA−co−HEAA  742mg(Mn
cal=4930)と、式(13)で表されるアクリル酸−4−ペンチニルエステル207mg(1.50mmol)と、AIBN  4.9mg(30μmol)とを脱水DMF  5mlに溶解し、シュレンク管で3回凍結脱気を行った後、アルゴン雰囲気下、70℃で6日間加熱攪拌した。反応溶液をイソプロピルエーテルに滴下して再沈澱による精製を行い、式(28)で表されるPoly−[Lac(OAc)
7−AA−co−HEAA]−b−Alkyne−Aを得た(収量:718mg,回収率:76%)。反応スキームを以下に示す。
  なお、工程11と同様の方法にて測定し、算出したモノマーの転化率は78%、Mn
calは5594、Mw/Mnは1.23であった。
【0095】
【化18】
【0096】
[担体表面への糖鎖ポリマーブラシの形成]
  糖鎖ポリマーブラシを担体表面に形成する方法は、担体表面にアジド基を修飾する第1の工程、合成した本発明の共重合体の末端アルキン部分と第1の工程において担体表面に修飾したアジド基とのクリック反応を行う第2の工程、及び糖鎖の保護基を外す脱保護反応を行う第3の工程で行う。なお、共重合体の状態で脱保護を行っておくことで、第3の工程は省略することができる。各工程における反応進行度は、水滴の接触角の変化で確認した。
【0097】
(1)第1の工程:担体表面へのアジド基の修飾
  アジド基を修飾する担体には、ガラス基板(スライドガラス)と金蒸着ガラス基板を用いた。これら担体表面に付着した有機物等の汚れは、表面反応の促進を阻害する可能性がある。そこで、オゾン洗浄機で15分間処理した後、メタノールをかけ流して洗浄し、乾燥させた担体を用いた。
【0098】
(1−1)ガラス基板表面の修飾
  ガラス基板表面へのアジド基の修飾は、シランカップリング反応により行った。シランカップリング剤には、工程1にて合成した式(2)で表される3−アジドプロピルトリエトキシシランを用いた。3−アジドプロピルトリエトキシシランの1vol%トルエン溶液を調製し、脱脂綿でガラス基板表面に薄く塗布し、ヘアドライアーで数秒間加熱と乾燥を3回繰り返した。
【0099】
(1−2)金蒸着ガラス基板表面の修飾
  金蒸着ガラス基板表面へのアジド基の修飾は、金とチオール基の反応により行った。アルカンチオールは、金表面上に自己組織化単分子膜(SAM)を形成することが知られていることから、金蒸着ガラス基板を、工程2にて合成した式(7)で表される1−アジドウンデカン−11−チオールの0.2vol%トルエン溶液に浸漬し、18時間放置した。
【0100】
(2)第2の工程:クリック反応
  第1の工程においてアジド基を修飾した担体表面上に、工程14にて合成した式(28)で表されるPoly−[Lac(OAc)
7−AA−co−HEAA]−b−Alkyne−Aの粉末を少量(1cm
2当たり1mg未満)ふりかけた後、クリック反応溶液を塗布し、18時間放置した。クリック反応溶液には、硫酸銅(II)・5水和物10mgとアスコルビン酸ナトリウム15mgとを、THF/ミリQ水(20ml/5ml)溶液に溶解したものを用いた。反応終了後は、担体表面をアセトン、メタノール、ミリQ水の順でよく洗浄し、乾燥した。
【0101】
(3)第3の工程:糖鎖の脱保護反応
  糖鎖の脱保護反応は、既知の方法(Biomacromolecule,2004,5,224−231)を参考に行った。第2の工程においてクリック反応させた担体を、ヒドラジン一水和物の3vol%  DMSO溶液に浸漬し、密閉状態で5時間放置した。反応終了後は、担体表面をアセトン、メタノール、ミリQ水の順でよく洗浄し、乾燥した。
【0102】
[反応進行度の確認:接触角の測定]
  担体表面における糖鎖ポリマーブラシの形成は、担体表面の接触角を測定することにより確認した。糖鎖ポリマーブラシが担体表面に形成されていれば、担体表面における水酸基の密度が高まり、親水性が高くなると考えられるからである。
  ガラス基板については、第3の工程の脱保護を部分的に行い、脱保護されている部分と脱保護されていない部分の接触角を比較した。なお、接触角はガラス基板2枚(1枚当たり4ヶ所測定)の平均値を求めた。
  金蒸着ガラス基板については、第2の工程のクリック反応を部分的に行い、更に第3の工程の脱保護を部分的に行い、各工程後の接触角を比較した。なお、接触角は金蒸着ガラス基板1枚(1枚当たり10ヶ所測定)の平均値を求めた。
  室温(約23℃)下、空気中で担体表面にイオン交換水(ミリQ水)2μlを滴下し、担体表面と水滴との接触角を測定した。測定装置には、表面張力計(協和界面科学社製DropMaster−500,解析ソフトウエアーFAMAS使用)を用いた。
【0103】
  ガラス基板については、脱保護していない部分の接触角が67.6°であるのに対し、脱保護した部分の接触角は41.8°であり、脱保護した部分の方が26°程度小さな値を示した。
  金蒸着ガラス基板については、第1の工程後(アジド基の修飾後)の接触角が67.1°であり、第2の工程後(クリック反応後)の接触角が65.8°であるのに対し、第3の工程後(脱保護反応後)の接触角は51.8°であり、脱保護した部分の接触角が最も小さな値を示した。
  以上の結果から、ガラス基板、金蒸着ガラス基板のいずれの担体においても、各工程の反応は進行し、表面に糖鎖ポリマーブラシが形成されたことが示唆された。
【0104】
[糖鎖ポリマーブラシの評価]
  1.レクチンの特異的結合とタンパク質の非特異的吸着による評価
  (QCMセンサーのセンシング面への糖鎖ポリマーブラシの形成)
(1)第1の工程:センシング面へのアジド基の修飾
  QCMセンサー(イニシアム社製,AFFINIX  Q,27MHz)のセンサーチップのセンシング面に、ピラニア洗浄溶液(濃硫酸:過酸化水素水=3:1)を塗布し、10分間放置した後、水洗し、更に1%SDS溶液を綿棒につけて軽くこすり洗いした後、水洗し乾燥した。
  センシング面は、金の薄膜でできていることから、第1の工程(アジド基の修飾)は、金とチオール基の反応により行った。センシング面を、工程2にて合成した式(7)で表される1−アジドウンデカン−11−チオールの0.2vol%トルエン溶液に浸漬し、2時間放置した。
【0105】
(2)第2の工程:クリック反応
  第1の工程においてアジド基を修飾したQCMセンサーのセンシング面上に、工程11にて合成した式(25)で表されるPoly−Lac(OAc)
7−A−b−Alkyne−A、又は工程13にて合成した式(27)で表されるPoly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aの粉末を少量(1cm
2当たり1mg未満)ふりかけた後、クリック反応溶液を塗布し、18時間放置した。
  クリック反応溶液には、硫酸銅(II)・5水和物10mgとアスコルビン酸ナトリウム15mgとを、t−BuOH/ミリQ水(1:1)⇒(10ml/10ml)溶液に溶解したものを用いた。反応終了後は、センシング面をアセトン、メタノール、ミリQ水の順でよく洗浄し、乾燥した。
【0106】
(3)第3の工程:糖鎖の脱保護反応
  糖鎖の脱保護反応は、既知の方法(Biomacromolecule,2004,5,224−231)を参考に行った。第2の工程においてクリック反応させたQCMセンサーのセンシング面に、ヒドラジン一水和物の3vol%  DMSO溶液を塗布して2時間放置することを2回繰り返し行った。反応終了後は、センシング面をアセトン、メタノール、ミリQ水の順でよく洗浄し、乾燥した。
【0107】
  (レクチンの特異的結合の確認)
  レクチンには、ラクトースのレクチンであるRCA
120(フナコシ社製)を用いた。測定装置には、QCMセンサーを用いた。QCMセンサーの付属のガラス製セルに、予め減圧脱気したイオン交換水(ミリQ水)8mlを入れ、これに上記方法により糖鎖ポリマーブラシを表面に形成したセンサーチップを浸漬し、25℃で攪拌(850rpm)した。この状態で周波数が一定になるまで待機した後、RCA
120(5mg/ml)8μlを添加し、周波数変化を記録した。
【0108】
  (タンパク質の非特異的吸着の確認)
  タンパク質には、BSA(シグマ社製)を用いた。QCMセンサーの付属のガラス製セルに、予め減圧脱気したイオン交換水(ミリQ水)8mlを入れ、これに上記方法により糖鎖ポリマーブラシを表面に形成したセンサーチップを浸漬し、25℃で攪拌(850rpm)した。この状態で周波数が一定になるまで待機した後、BSA(5mg/ml)8μlを添加し、周波数変化を記録した。更に続いて、周波数が一定になるまで待機した後、RCA
120(5mg/ml)8μlを添加し、周波数変化を記録した。
【0109】
  Poly−Lac(OAc)
7−A−b−Alkyne−Aを固定化して形成した糖鎖ポリマーブラシの評価結果を
図3(A),(B)に、Poly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aを固定化して形成した糖鎖ポリマーブラシの評価結果を
図4(A),(B)に示す。Poly−Lac(OAc)
7−A−b−Alkyne−A、Poly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aともに、BSAでは周波数の変化がほとんど認められなかったのに対し、RCA
120では1500〜2000Hzの周波数の変化が認められた。このことから、本発明の共重合体を固定化し、糖鎖ポリマーブラシを形成したセンシング面が、レクチン(RCA
120)と特異的結合を示し、タンパク質の非特異的吸着をほとんど示さないことが確認された。
【0110】
  2.ラット初代肝実質細胞の接着による評価(I)
  (培養基板表面への糖鎖ポリマーブラシの形成)
(1)第1の工程:ガラス基板表面へのアジド基の修飾
  ガラス基板表面へのアジド基の修飾は、シランカップリング反応により行った。シランカップリング剤には、工程1にて合成した式(2)で表される3−アジドプロピルトリエトキシシランを用いた。3−アジドプロピルトリエトキシシランの1vol%トルエン溶液を調製し、脱脂綿でガラス基板表面に薄く塗布し、ヘアドライアーで数秒間加熱と乾燥を3回繰り返した。
【0111】
(2)第2の工程:クリック反応
  第1の工程においてアジド基を修飾したガラス基板表面上に、工程13にて合成した式(27)で表されるPoly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aの粉末を少量(1cm
2当たり1mg未満)ふりかけた後、クリック反応溶液を部分的に塗布し、18時間放置した。なお、クリック反応溶液には、硫酸銅(II)・5水和物10mgとアスコルビン酸ナトリウム15mgとを、t−BuOH/ミリQ水(1:1)⇒(10ml/10ml)溶液に溶解したものを用いた。反応終了後は、ガラス基板表面をアセトン、メタノール、ミリQ水の順でよく洗浄し、乾燥した。
【0112】
(3)第3の工程:糖鎖の脱保護反応
  糖鎖の脱保護反応は、既知の方法(Biomacromolecule,2004,5,224−231)を参考に行った。第2の工程においてクリック反応させたガラス基板を、ヒドラジン一水和物の3vol%  DMSO溶液に浸漬し、密閉状態で5時間放置した。反応終了後、ガラス基板表面をアセトン、メタノール、ミリQ水の順でよく洗浄し、乾燥した後、これを培養基板として用いた。
【0113】
(細胞接着の確認)
  細胞接着による評価には、細胞表面にラクトース認識サイトの存在が知られているラット初代肝実質細胞(ヘパトサイト)を用いた。
  ラット(7週齢、オス)からコラゲナーゼ溶液により肝細胞を分離し、遠心分離(50×g,2min)を3回行い、肝細胞を精製した。この精製した肝細胞を、上記培養基板に、3.0×10
6cells播種し、培養した。なお、培養基板全体への細胞接着を避けるために、肝細胞の培養には無血清のWilliams’E培地(50ml  FBS,10mlペニシリン−ストレプトマイシン)を用いた。
【0114】
  培養結果を
図5に示す。図中の矢印は、培養基板上のPoly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aを固定化した位置を示す。ヘパトサイトは、Poly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−Aにより糖鎖ポリマーブラシを形成した部位にのみ選択的に、球状で接着することが確認された(
図5の点線より下側)。
【0115】
  3.ラット初代肝実質細胞の分化機能に対する効果(I)
  試験には、2.と同様にラット肝実質細胞を用いた。ラット(7週齢、オス)からコラゲナーゼ溶液により肝細胞を分離し、遠心分離(50×g,2min)を3回行い、肝細胞を精製した。この精製した肝細胞を無血清のWilliams’E培地を用いて1×10
5cells/mlに調整した細胞懸濁液を、12wellプレートに1×10
5cells/wellになるように細胞を播種し(2ml/well)、培養した。なお、基板には、ラクトースグリコポリマー(Poly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−A)基板とゼラチン修飾基板とを用いた。ラクトースグリコポリマー基板表面への糖鎖ポリマーブラシの形成は、上記2.(1)〜(3)と同様の方法にて行った。培養6時間後に、Williams’E培地(添加因子無し,10%  FBS,2%ペニシリン−ストレプトマイシン)と、Williams’E培地(添加因子有り,10%  FBS,2%ペニシリン−ストレプトマイシン,10
−6M  Insulin,10
−7  Dexamethasone,0.3mg/ml  L−glutamine)とに培地交換を行った。
【0116】
  そして、1,2,3,4日目に細胞の形態を観察するとともに、MTTアッセイ及びアルブミン産生量の測定を行った。なお、MTTアッセイは常法に従った。アルブミン産生量の測定は、以下の方法により行った。
(1)培地の上澄みを1ml採取し、−80℃で保存した。
(2)96wellプレートに5000倍希釈した一次抗体(rabbit  anti  rat  IgG)を100μlずつ加えて、1時間静置した。
(3)well内の溶液を吸い取り、洗浄液(0.02%  Tween  20−PBS溶液)で3回洗浄した。
(4)0.1%  BSA−PBS溶液を200μl加えて、30分間静置した。
(5)well内の溶液を吸い取り、洗浄液(0.02%  Tween  20−PBS溶液)で3回洗浄した。
(6)試料溶液を100μlずつ加えて、1時間静置した。
(7)well内の溶液を吸い取り、洗浄液(0.02%  Tween  20−PBS溶液)で3回洗浄した。
(8)二次抗体(goat  anti  rat  albumin  IgG)を100μlずつ加えて、1時間静置した。
(9)well内の溶液を吸い取り、洗浄液(0.02%  Tween  20−PBS溶液)で3回洗浄した。
(10)発色試薬(SAT  Blue)を50μlずつ加えて、well内の溶液が青色になるまで反応させた。
(11)溶液が青くなった後、反応停止液(1M  H
2SO
4溶液)を50μlずつ加えた。
(12)マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定することにより、アルブミン産生量を測定した。
【0117】
  培養結果を
図6に示す。ラクトースグリコポリマー基板は、ゼラチン修飾基板よりも、アルブミン産生量が高かった。このことから、ラクトースグリコポリマー基板では、初代肝細胞の分化機能が活性化され、且つ、維持されることが明らかとなった。これは、ラクトースグリコポリマー基板によれば、細胞がアシアロ糖タンパク受容体を介し、且つ、球状で接着されるためであると思われる。
【0118】
  4.ラット初代肝実質細胞の分化機能に対する効果(II)
  試験には、上記2.と同様にラット肝実質細胞を用いた。ラット(7週齢、オス)からコラゲナーゼ溶液により肝細胞を分離し、遠心分離(50×g,2min)を3回行い、肝細胞を精製した。この精製した肝細胞を無血清のWilliams’E培地を用いて1×10
5cells/mlに調整した細胞懸濁液を、12wellプレートに1×10
5cells/wellになるように細胞を播種し(2ml/well)、培養した。なお、基板には、ラクトースグリコポリマー(Poly−[Lac(OAc)
7−A−co−HEA]−b−Alkyne−A)基板とゼラチン修飾基板とを用いた。ラクトースグリコポリマー基板表面への糖鎖ポリマーブラシの形成は、上記2.(1)〜(3)と同様の方法にて行った。培養6時間後に、Williams’E培地(EGF無し,10%  FBS,2%ペニシリン−ストレプトマイシン,10
−6M  Insulin,10
−7  Dexamethasone,0.3mg/ml  L−glutamine)と、Williams’E培地(EGF有り,10%  FBS,2%ペニシリン−ストレプトマイシン,10
−6M  Insulin,10
−7  Dexamethasone,0.3mg/ml  L−glutamine,EGF  50ng/ml)と、に培地交換を行った。
【0119】
  そして、1,2,3,4日目に細胞の形態を観察するとともに、MTTアッセイ及びアルブミン産生量の測定を行った。なお、MTTアッセイは常法に従った。アルブミン産生量の測定は、上記と同様の方法により行った。
【0120】
  培養結果を
図7に示す。ラクトースグリコポリマー基板は、ゼラチン修飾基板よりも、アルブミン産生量が高かった。このことから、ラクトースグリコポリマー基板では、初代肝細胞の分化機能が活性化され、且つ、維持されることが明らかとなった。これは、ラクトースグリコポリマー基板によれば、細胞がアシアロ糖タンパク受容体を介し、且つ、球状で接着されるためであると思われる。
【0121】
  5.ラット初代肝実質細胞の接着による評価(II)
  試験には、2.と同様にラット肝実質細胞を用いた。ラット(7週齢、オス)からコラゲナーゼ溶液により肝細胞を分離し、遠心分離(50×g,2min)を3回行い、肝細胞を精製した。この精製した肝細胞を無血清のWilliams’E培地(2%ペニシリン−ストレプトマイシン)を用いて5×10
4cells/mlに調整した細胞懸濁液に、アシアロフェツィン(ASF)を濃度10μg/mlとなるように添加し、4℃で30分間プレインキュベートした。また、アシアロフェツィン濃度0μg/mlの細胞懸濁液も同様に、4℃で30分間プレインキュベートした。その後、12wellプレートに1×10
5cells/wellになるように細胞を播種し、37℃で6時間培養した。
【0122】
  培養結果を
図8,9に示す。
図8に示すように、ゼラチン修飾基板(ASF  10μg/ml)では、接着阻害が認められなかった。これに対して、ラクトースグリコポリマー基板(ASF  10μg/ml)において、接着阻害が認められた(
図9)。このことから、ラクトースグリコポリマー基板は、糖鎖特異的に初代肝細胞を接着できる表面であると思われる。
【0123】
  以上の結果から、ラクトースグリコポリマーはブラシ構造を有しているので、ラクトースに特異的な肝細胞接着を容易に達成することができたものと考えられる。そして、添加因子やEGFを添加することによって、更にアルブミン産生能の有意な上昇が認められたものと考えられる。