(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の一般式(A)で表されるブロック共重合体Aと、下記の一般式(B)で表されるブロック共重合体Bとを含有してなるブロック共重合体組成物であって、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が36/64〜85/15であり、
ブロック共重合体組成物の重合体成分の全繰返し単位において、芳香族ビニル単量体単位が占める割合が27〜70重量%であるブロック共重合体組成物。
Ar1a−Da−Ar2a (A)
(Arb−Db)n−X (B)
(一般式(A)および(B)において、Ar1aおよびArbは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2aは、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、DaおよびDbは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xはカップリング剤の残基であり、nは3以上の整数である。)
下記の一般式(P)で表されるブロック共重合体P、下記の一般式(Q)で表されるブロック共重合体Q、および下記の一般式(R)で表されるブロック共重合体Rを含有してなり、
ブロック共重合体Pの量と、ブロック共重合体Qおよびブロック共重合体Rの合計量との重量比(P/(Q+R))が、10/90〜80/20であり、
ブロック共重合体Qの量と、ブロック共重合体Rの量との重量比(Q/R)が、15/85〜85/15であり、
ブロック共重合体組成物の重合体成分の全繰返し単位において、芳香族ビニル単量体単位が占める割合が27〜70重量%であり、
ブロック共重合体P〜R以外の重合体成分の含有量が、重合体成分全体に対して、20重量%以下であるブロック共重合体組成物。
Ar1p−Dp−Ar2p (P)
(Arq−Dq)2−Xq (Q)
(Arr−Dr)m−Xr (R)
(一般式(P)、(Q)、および(R)において、Ar1p、Arq、およびArrは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2pは、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Dp、Dq、およびDrは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xqは、単結合、またはカップリング剤の残基であり、Xrは、カップリング剤の残基であり、mは3以上の整数である。)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のブロック共重合体組成物は、2種のブロック共重合体を含有する態様(第1態様)と、少なくとも3種のブロック共重合体を含有してなる態様(第2態様)との、2つの態様に分けることができる。以下、本発明のブロック共重合体組成物を、各態様に分けて説明する。
【0029】
1.第1態様
まず、本発明のブロック共重合体組成物の第1態様について説明する。本態様のブロック共重合体組成物は、2種のブロック共重合体を含有してなるものである。本態様のブロック共重合体組成物を構成する2種のブロック共重合体の一方であるブロック共重合体Aは、下記の一般式(A)で表される、互いに異なる重量平均分子量を持つ2つの芳香族ビニル重合体ブロックを有する、直鎖状の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
【0031】
上記の一般式(A)において、Ar1
aは、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2
aは、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D
aは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックである。
【0032】
また、本態様のブロック共重合体組成物を構成する2種のブロック共重合体の他方であるブロック共重合体Bは、下記の一般式(B)で表される、分岐状のブロック共重合体である。
【0034】
上記の一般式(B)において、Ar
bは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜15000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D
bは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、Xはカップリング剤の残基であり、nは3以上の整数である。
【0035】
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a,Ar2
a,Ar
b)は、芳香族ビニル単量体単位により構成される重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、2−メチル−4,6−ジクロロスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、同じ芳香族ビニル単量体を用いても良いし、異なる芳香族ビニル単量体を用いることもできる。
【0036】
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a,Ar2
a,Ar
b)は、それぞれ、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)などの共役ジエン単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。各芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
【0037】
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
a,D
b)は、共役ジエン単量体単位により構成される重合体ブロックである。共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体としては、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。共役ジエン重合体ブロックをイソプレン単位で構成することにより、柔軟性に優れ、より低い永久伸びを有するブロック共重合体組成物を得ることができる。これらの共役ジエン単量体は、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各共役ジエン重合体ブロックにおいて、同じ共役ジエン単量体を用いても良いし、異なる共役ジエン単量体を用いることもできる。さらに、各共役ジエン重合体ブロックの不飽和結合の一部に対し、水素添加反応を行っても良い。
【0038】
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
a,D
b)は、それぞれ、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。各共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
【0039】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Aは、上記一般式(A)で表されるように、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a)、特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D
a)および比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
a)が、この順で直鎖状に連なって構成される非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a)の重量平均分子量(Mw(Ar1
a))は、6000〜15000であり、7000〜14000であることが好ましく、8000〜13000であることがより好ましい。Mw(Ar1
a)がこの範囲を外れると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがある。また、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
a)の重量平均分子量(Mw(Ar2
a))は、40000〜400000であり、42000〜370000であることが好ましく、45000〜350000であることがより好ましい。Mw(Ar2
a)が小さすぎると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがあり、Mw(Ar2
a)が大きすぎるブロック共重合体Aは、製造が困難である場合がある。
【0040】
なお、本態様において、重合体や重合体ブロックの重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
【0041】
ブロック共重合体Aにおいて、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
a)の重量平均分子量(Mw(Ar2
a))と、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a)の重量平均分子量(Mw(Ar1
a))との比(Mw(Ar2
a)/Mw(Ar1
a))は、特に限定されないが、通常2.6〜67であり、4〜40であることが好ましく、4.5〜35であることがより好ましい。ブロック共重合体Aをこのように構成することによって、より低い永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。
【0042】
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D
a)のビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合が占める割合)は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。
【0043】
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D
a)の重量平均分子量(Mw(D
a))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、30000〜150000であることが好ましく、35000〜100000であることがより好ましい。
【0044】
ブロック共重合体Aの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常40〜90重量%であり、45〜87重量%であることが好ましく、50〜85重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体A全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常50000〜500000であり、80000〜470000であることが好ましく、90000〜450000であることがより好ましい。
【0045】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Bは、上記一般式(B)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
b)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D
b)とが結合してなるジブロック体(Ar
b−D
b)が、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
b)側が末端となるように、カップリング剤残基(X)を介して3個以上結合してなる分岐状のブロック共重合体である。ブロック共重合体Bが有する複数の芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
b)の重量平均分子量(Mw(Ar
b))は、それぞれ、6000〜15000であり、7000〜14000であることが好ましく、8000〜13000であることがより好ましい。Mw(Ar
b)がこの範囲を外れると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがある。1分子中に複数存在する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar2
b))は、上記の範囲内であれば、等しくても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいことが好ましい。また、これら複数の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar
b))は、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a)の重量平均分子量(Mw(Ar1
a))と、実質的に等しいことがより好ましい。
【0046】
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)のビニル結合含有量は、1〜20モル%であり、2〜15モル%であることが好ましく、3〜10モル%であることがより好ましい。このビニル結合含有量が高すぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなるおそれがある。また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D
a)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
【0047】
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)の重量平均分子量(Mw(D
b))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、30000〜150000であることが好ましく、35000〜100000であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)の重量平均分子量(Mw(D
b))は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D
a)の重量平均分子量(Mw(D
a))と実質的に等しいことが好ましい。これらの重量平均分子量が実質的に等しいことにより、得られるブロック共重合体組成物が、より高い弾性率を有し、弾性に富んだものとなる。
【0048】
ブロック共重合体Bの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体B全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常35000〜450000であり、50000〜400000であることが好ましく、70000〜350000であることがより好ましい。
【0049】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B、ならびにこれらを構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
【0050】
本態様のブロック共重合体組成物に含有されるブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比(A/B)は、36/64〜85/15であり、38/62〜80/20であることが好ましく、40/60〜75/25であることがより好ましい。このような比で各ブロック共重合体が含有されることにより、ブロック共重合体組成物が高い弾性率と小さい永久伸びとを併せ持つものとなる。この比が小さすぎると、ブロック共重合体組成物の弾性率が不十分となり、この比が大きすぎると、ブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなる。
【0051】
本態様のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bのみを重合体成分として含むものであって良いが、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の重合体成分を含むものであっても良い。本態様のブロック共重合体組成物に含まれ得るブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の重合体成分としては、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、芳香族ビニル単独重合体、共役ジエン単独重合体、芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、およびこれらの分岐型重合体あるいは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。本態様のブロック共重合体組成物において、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外の重合体成分の含有量は、重合体成分全体に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0052】
本態様のブロック共重合体組成物は、含まれる重合体成分全体の全繰返し単位において、芳香族ビニル単量体単位が占める割合(以下の記載において、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量ということがある)が、27〜70重量%であり、30〜60重量%であることが好ましく、40〜50重量%であることがより好ましい。全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が小さすぎると、得られるブロック共重合体組成物の弾性率が不十分となり、全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が大きすぎると、得られるブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなる。この全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体A、ブロック共重合体Bおよびこれら以外の重合体成分、それぞれの芳香族ビニル単量体単位の含有量を勘案し、それらの配合量を調節することにより、容易に調節することが可能である。なお、ブロック共重合体組成物を構成する全ての重合体成分が、芳香族ビニル単量体単位および共役ジエン単量体単位のみにより構成されている場合であれば、Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従って、ブロック共重合体組成物の重合体成分をオゾン分解し、次いで水素化リチウムアルミニウムにより還元すれば、共役ジエン単量体単位部分が分解され、芳香族ビニル単量体単位部分のみを取り出せるので、容易に全体の芳香族ビニル単量体単位含有量を測定することができる。
【0053】
本態様のブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常50000〜500000であり、60000〜450000であることが好ましく、70000〜400000であることがより好ましい。また、本態様のブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、通常1.01〜10であり、1.03〜5であることが好ましく、1.05〜3であることがより好ましい。
【0054】
また、本態様のブロック共重合体組成物のメルトインデックスは、特に限定されないが、ASTM D−1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定される値として、通常1〜70g/10分であり、3〜65g/10分であることが好ましく、5〜60g/10分であることがより好ましい。この範囲であれば、ブロック共重合体組成物のフィルムなどへの成形性が良好となる。
【0055】
本態様のブロック共重合体組成物は、重合体成分以外の成分を含んでいてもよく、例えば、軟化剤、粘着付与剤、酸化防止剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、架橋剤、架橋促進剤などの添加剤を必要に応じて配合しても良い。
【0056】
本態様のブロック共重合体組成物を得る方法は特に限定されない。例えば、従来のブロック共重合体の製法に従って、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとをそれぞれ別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分や各種添加剤を配合した上で、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。ただし、特に望ましい構成を有する本態様のブロック共重合体組成物をより生産性よく得る観点からは、次に述べる本態様のブロック共重合体組成物の製造方法が好適である。
【0057】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法は、下記の(1)〜(5)の工程からなる。
【0058】
(1):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程
(2):上記(1)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程
(3):上記(2)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、3官能以上のカップリング剤を添加し、ブロック共重合体Bを形成する工程
(4):上記(3)の工程で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Aを形成する工程
(5):上記(4)の工程で得られる溶液から、ブロック共重合体組成物を回収する工程
【0059】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する。用いられる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などを用いることができる。有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられ、その具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物や、メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4−ジリチオ−エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物、さらには、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
【0060】
重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。また、他の重合開始剤の具体例としては、ネオジム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0061】
重合開始剤の使用量は、目的とする各ブロック共重合体の分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用する全単量体100gあたり、通常、0.01〜20ミリモル、好ましくは、0.05〜15ミリモル、より好ましくは、0.1〜10ミリモルである。
【0062】
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒が使用される。鎖状炭化水素溶媒としてはn−ブタン、イソブタン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、neo−ペンタン、n−ヘキサン等の、炭素数4〜6の鎖状アルカンおよびアルケンを例示することができる。また、環式炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
重合に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、重合反応後の溶液における全ブロック共重合体の濃度が、通常、5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは20〜50重量%になるように設定する。
【0064】
ブロック共重合体組成物を得る際に、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。このルイス塩基化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、本態様の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0065】
また、重合反応時にルイス塩基化合物を添加する時期は特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すれば良い。例えば、重合を開始する前に予め添加しても良いし、一部の重合体ブロックを重合してから添加しても良く、さらには、重合を開始する前に予め添加した上で一部の重合体ブロックを重合した後さらに添加しても良い。
【0066】
重合反応温度は、通常10〜150℃、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜90℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5〜10時間である。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
【0067】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合することにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。この活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
a)とブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
b)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量に応じて決定される。
【0068】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、この活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液が得られる。この際用いる共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)の重量平均分子量を有するように決定される。
【0069】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、この活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、3官能以上のカップリング剤を添加する。
【0070】
添加されるカップリング剤は、重合体の活性末端と反応しうる官能基を1分子中に3個以上有するカップリング剤(すなわち、3官能以上のカップリング剤)であれば、特に限定されず、任意の3官能以上のカップリング剤を用いることができる。3官能のカップリング剤としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。4官能のカップリング剤としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。5官能以上のカップリング剤としては、例えば、1,1,1,2,2−ペンタクロロエタン,パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらのなかでも、4官能のカップリング剤が好ましく用いられ、なかでも、4官能性ハロゲン化シランまたは4官能性アルコキシシランが特に好ましく用いられる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0071】
添加される3官能以上のカップリング剤の量は、ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの比に応じて決定され、重合体の活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、重合体の活性末端に対してカップリング剤の官能基が0.15〜0.90モル当量となる範囲であり、0.20〜0.70モル当量となる範囲であることが好ましい。
【0072】
以上のように、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基が1モル当量未満となる量で、3官能以上のカップリング剤を添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)のうちの一部の共重合体において、共役ジエン重合体ブロック同士がカップリング剤の残基を介して結合され、その結果、ブロック共重合体組成物のブロック共重合体Bが形成される。そして、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の残り一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
【0073】
なお、本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、本態様を逸脱しない範囲で、3官能以上のカップリング剤に加えて、2官能のカップリング剤を併用しても良い。2官能のカップリング剤を併用することにより、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)が2つ結合されて、それにより得られる直鎖状の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体が、ブロック共重合体組成物に含有されることとなる。2官能のカップリング剤の例としては、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズを挙げることができる。
【0074】
次の工程では、以上のようにして得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加する。溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、カップリング剤と反応せずに残った活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Aの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
a)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
a)の目的とする重量平均分子量に応じて決定される。この芳香族ビニル単量体を添加する工程により、ブロック共重合体Aを構成することとなる、非対称な芳香族ビニル‐共役ジエン‐芳香族ビニルブロック共重合体が形成され、その結果、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液が得られる。なお、この芳香族ビニル単量体を添加する工程の前に、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含む溶液に、共役ジエン単量体を添加しても良い。このように共役ジエン単量体を添加すると、添加しない場合に比べて、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D
a)の重量平均分子量を大きくすることができる。また、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む溶液に、活性末端の当量より少ない量で重合停止剤(水、メタノールなど)を添加してもよい。このように重合停止剤を添加すると、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の活性末端が失活し、それにより得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)が、ブロック共重合体組成物に含有されることとなる。
【0075】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、以上のようにして得られるブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液から、目的とするブロック共重合体組成物を回収する。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。例えば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、ブロック共重合体組成物がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体組成物は、常法に従い、ペレット形状などに加工してから使用に供しても良い。
【0076】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法によれば、ブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれのブロック共重合体を個別に製造し混合する場合に比して、極めて優れた生産性で目的のブロック共重合体組成物を得ることができる。しかも、得られるブロック共重合体組成物は、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの重量平均分子量が、本態様のブロック共重合体組成物として、特に望ましいバランスを有するので、高い弾性率と小さい永久伸びとが高度にバランスされた組成物となる。
【0077】
本態様のブロック共重合体組成物の用途は特に限定されず、例えば、伸縮性フィルム、手袋、エラスティックバンド、コンドーム、OA機器、事務用などの各種ロール、電気電子機器用防振シート、防振ゴム、衝撃吸収シート、衝撃緩衝フィルム・シート、住宅用制振シート、制振ダンパー材などに用いられる成形材料用途、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラーなどに用いられる粘着剤用途、衛生用品や製本に用いられる接着剤用途、衣料、スポーツ用品などに用いられる弾性繊維用途などの用途に用いることができる。これらのなかでも、本態様のブロック共重合体組成物は、高い弾性率と小さい永久伸びとを併せ持ち、しかも、繰り返し伸縮させても弾性率が変化し難いものであることから、紙おむつや生理用品などの衛生用品などに用いられる伸縮性のフィルムの材料として特に好適に用いられる。
【0078】
本態様のブロック共重合体組成物をフィルムに成形する方法は、特に限定されず、従来公知のフィルム成形法を適用できるが、平滑なフィルムを良好な生産性で得る観点からは、押出成形が好適であり、なかでもT−ダイを用いた押出成形が特に好適である。T−ダイを用いた押出成形の具体例としては、単軸押出機や二軸押出機に装着したT−ダイから、温度150〜250℃で溶融したブロック共重合体組成物を押出し、引き取りロールで冷却しながら、巻き取る方法が挙げられる。引き取りロールで冷却する際に、フィルムを延伸しても良い。また、フィルムを巻き取る際に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、不織布または離型紙からなる基材の上にブロック共重合体組成物の溶融物をコーティングしながらフィルム化しても良いし、ブロック共重合体組成物の溶融物をこれらの基材で挟み込むようにしてフィルム化しても良い。そのようにして得られたフィルムは、基材と一体の形態のままで使用しても、基材から剥がして使用してもよい。なお、本態様のブロック共重合体組成物は、押出成形などの分子配向が起こり易い成形法を適用した場合であっても、全ての面方向に亘って均質な力学的性質を有する、等方性の高いフィルムを与えるものである。したがって、本態様のブロック共重合体組成物では、得られるフィルムに分子配向に基づく異方性が付与されることを望まない場合(たとえば、紙おむつや生理用品などの衛生用品に用いられる伸縮性のフィルムとして用いる場合に、その衛生用品の装着感を普通の下着のものと近いものとしたい場合)であっても、押出成形などの分子配向が起こり易い成形法を適用してフィルムを成形することができ、しかも、異方性が生じることに基づく厚さなどのムラが生じ難く、生産性よくフィルムを成形することができるものである。
【0079】
本態様のブロック共重合体組成物から得るフィルムの厚さは、用途に応じて調整されるが、紙おむつや生理用品などの衛生用品用のフィルムとする場合には、通常0.01〜50mm、好ましくは0.03〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmである。
【0080】
本態様のブロック共重合体組成物から得られるフィルムは、他の部材と積層して使用することもできる。例えば、本態様のブロック共重合体組成物から得られるフィルムをスリット加工した後、これにホットメルト接着剤などを塗布してテープとし、このテープを縮めた状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、またはこれらの積層体に接着し、テープの縮みを緩和することにより、伸縮性のギャザー部材を形成することができる。さらに、その他用途に応じ、公知の方法に従って適宜加工し、例えば、伸縮性シップ用基材、手袋、手術用手袋、指サック、止血バンド、避妊具、ヘッドバンド、ゴーグルバンド、輪ゴムなどの伸縮性部材として用いることができる。
【0081】
2.第2態様
次に、本発明のブロック共重合体組成物の第2態様について説明する。本態様のブロック共重合体組成物は、少なくとも3種のブロック共重合体を含有してなるものである。
本態様のブロック共重合体組成物を構成する3種のブロック共重合体のうちの1種であるブロック共重合体Pは、下記の一般式(P)で表される、互いに異なる重量平均分子量を持つ2つの芳香族ビニル重合体ブロックを有する、直鎖状の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。
【0083】
一般式(P)において、Ar1
pは、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar2
pは、重量平均分子量が40000〜400000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D
pは、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックである。
【0084】
本態様のブロック共重合体組成物を構成する3種のブロック共重合体の別の1種であるブロック共重合体Qは、下記の一般式(Q)で表される、直鎖状のブロック共重合体である。
【0086】
一般式(Q)において、Ar
qは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D
qは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、X
qは、単結合、またはカップリング剤の残基である。
【0087】
本態様のブロック共重合体組成物を構成する3種のブロック共重合体のさらに別の1種であるブロック共重合体Rは、下記の一般式(R)で表される、分岐状のブロック共重合体である。
【0089】
一般式(R)において、Ar
rは、それぞれ、重量平均分子量が6000〜20000の芳香族ビニル重合体ブロックであり、D
rは、それぞれ、ビニル結合含有量が1〜20モル%の共役ジエン重合体ブロックであり、X
rはカップリング剤の残基であり、mは3以上の整数である。
【0090】
ブロック共重合体P、ブロック共重合体Q、およびブロック共重合体Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p,Ar2
p,Ar
q,Ar
r)は、芳香族ビニル単量体単位により構成される重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックの芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0091】
ブロック共重合体P、ブロック共重合体Q、およびブロック共重合体Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p,Ar2
p,Ar
q,Ar
r)は、それぞれ、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体および含有量としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0092】
ブロック共重合体P、ブロック共重合体Q、およびブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
p,D
q,D
r)は、共役ジエン単量体単位により構成される重合体ブロックである。共役ジエン重合体ブロックの共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0093】
ブロック共重合体P、ブロック共重合体Q、およびブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
p,D
q,D
r)は、それぞれ、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体および含有量としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0094】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Pは、上記一般式(P)で表されるように、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p)、特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D
p)および比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
p)が、この順で直鎖状に連なって構成される直鎖状で非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p)の重量平均分子量(Mw(Ar1
p))は、6000〜20000であり、7000〜18000であることが好ましく、8000〜15000であることがより好ましい。Mw(Ar1
p)がこの範囲を外れると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがある。また、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
p)の重量平均分子量(Mw(Ar2
p))は、40000〜400000であり、42000〜370000であることが好ましく、45000〜350000であることがより好ましい。Mw(Ar2
p)が小さすぎると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがあり、Mw(Ar2
p)が大きすぎるブロック共重合体Pは、製造が困難である場合がある。
【0095】
ブロック共重合体Pにおいて、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
p)の重量平均分子量(Mw(Ar2
p))と、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p)の重量平均分子量(Mw(Ar1
p))との比(Mw(Ar2
p)/Mw(Ar1
p))は、特に限定されないが、通常2〜67であり、4〜40であることが好ましく、4.5〜35であることがより好ましい。ブロック共重合体Pをこのように構成することによって、より低い永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。
【0096】
ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)のビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合が占める割合)は、上記「1.第1態様」の項に記載したブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D
a)と同様とすることができる。
【0097】
ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)の重量平均分子量(Mw(D
p))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、35000〜150000であることが好ましく、45000〜100000であることがより好ましい。
【0098】
ブロック共重合体Pの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量およびブロック共重合体P全体としての重量平均分子量は、上記「1.第1態様」の項に記載したブロック共重合体Aと同様とすることができる。
【0099】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Qは、上記一般式(Q)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
q)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D
q)とが結合してなるジブロック体(Ar
q−D
q)2個が、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
q)側が末端となるように、直接単結合で、またはカップリング剤の残基を介して、結合してなる直鎖状の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体である。ブロック共重合体Qが有する2個の芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
q)の重量平均分子量(Mw(Ar
q))は、それぞれ、6000〜20000であり、7000〜18000であることが好ましく、8000〜15000であることがより好ましい。Mw(Ar
q)がこの範囲を外れると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがある。1分子中に2個存在する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar
q))は、上記の範囲内であれば、等しくても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいことが好ましい。また、これら複数の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar
q))は、ブロック共重合体Pの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p)の重量平均分子量(Mw(Ar1
p))と、実質的に等しいことがより好ましい。
【0100】
ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)のビニル結合含有量としては、上記「1.第1態様」の項に記載したブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)と同様とすることができる。
また、ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
【0101】
ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)の重量平均分子量(Mw(D
q))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、35000〜150000であることが好ましく、45000〜100000であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw(D
q))がこの範囲であることにより、より低い永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。また、ブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)の重量平均分子量(Mw(D
q))は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)の重量平均分子量(Mw(D
p))と実質的に等しいことが好ましい。これらの重量平均分子量が実質的に等しいことにより、得られるブロック共重合体組成物が、より高い弾性率を有し、弾性に富んだものとなる。
【0102】
ブロック共重合体Qの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、上記「1.第1態様」の項に記載したブロック共重合体Bと同様とすることができる。また、ブロック共重合体Q全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常60000〜400000であり、80000〜300000であることが好ましく、100000〜200000であることがより好ましい。
【0103】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Rは、上記一般式(R)で表されるように、特定の重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
r)と特定のビニル結合含有量を有する共役ジエン重合体ブロック(D
r)とが結合してなるジブロック体(Ar
r−D
r)が、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
r)側が末端となるように、カップリング剤残基(X)を介して3個以上結合してなる分岐状のブロック共重合体である。ブロック共重合体Rが有する複数の芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
r)の重量平均分子量(Mw(Ar
r))は、それぞれ、6000〜20000であり、7000〜18000であることが好ましく、8000〜15000であることがより好ましい。Mw(Ar
r)がこの範囲を外れると、得られる組成物の永久伸びが不十分となるおそれがある。1分子中に3個以上存在する芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar
r))は、上記の範囲内であれば、等しくても、互いに異なるものであっても良いが、実質的に等しいことが好ましい。また、これら複数の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw(Ar
r))は、ブロック共重合体Pの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p)の重量平均分子量(Mw(Ar1
p))およびブロック共重合体Qの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
q)の重量平均分子量(Mw(Ar
q))の少なくとも一方と実質的に等しいことが好ましく、これらの両方と実質的に等しいことがより好ましい。
【0104】
ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
r)のビニル結合含有量は、上記「1.第1態様」の項に記載したブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D
b)と同様とすることができる。また、ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
r)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)およびブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)の少なくとも一方のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましく、これらの両方のビニル結合含有量と実質的に等しいことがより好ましい。
【0105】
ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
r)の重量平均分子量(Mw(D
r))は、特に限定されないが、通常20000〜200000であり、35000〜150000であることが好ましく、45000〜100000であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw(D
r))がこの範囲であることにより、より低い永久伸びとより高い弾性率とを有し、弾性に富んだブロック共重合体組成物を得ることができる。また、ブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
r)の重量平均分子量(Mw(D
r))は、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)の重量平均分子量(Mw(D
p))およびブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)の重量平均分子量(Mw(D
q))の少なくとも一方と実質的に等しいことが好ましく、これらの両方と実質的に等しいことがより好ましい。
【0106】
ブロック共重合体Rの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常10〜35重量%であり、12〜32重量%であることが好ましく、14〜30重量%であることがより好ましい。また、ブロック共重合体Rの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Qの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量と実質的に等しいことが好ましい。ブロック共重合体R全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、通常80000〜800000であり、100000〜600000であることが好ましく、120000〜400000であることがより好ましい。
【0107】
本態様のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体P、ブロック共重合体Qおよびブロック共重合体R、ならびにこれらを構成する各重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、通常1.1以下であり、好ましくは1.05以下である。
【0108】
本態様のブロック共重合体組成物に含有されるブロック共重合体Pの量と、ブロック共重合体Qおよびブロック共重合体Rの合計量との重量比(P/(Q+R))は、特に限定されないが、10/90〜80/20であることが好ましく、36/64〜80/20であることがより好ましく、38/62〜80/20であることがさらに好ましく、40/60〜75/25であることが最も好ましい。このような比で各ブロック共重合体が含有されることにより、ブロック共重合体組成物における高い弾性率と小さい永久伸びとのバランスが特に優れたものとなる。一方、この比が小さすぎると、ブロック共重合体組成物の弾性率が不十分となるおそれがあり、この比が大きすぎると、ブロック共重合体組成物の永久伸びが大きくなりすぎるおそれがある。
【0109】
また、本態様のブロック共重合体組成物に含有されるブロック共重合体Qの量とブロック共重合体Rの量との重量比(Q/R)も、特に限定されず、任意の値とすることができるが、15/85〜85/15であることが好ましく、17/83〜83/17であることがより好ましく、20/80〜80/20であることがさらに好ましい。このような比でブロック共重合体Qとブロック共重合体Rとが含有されることにより、ブロック共重合体組成物のフィルムなどへの成形性が特に良好となり、また、ブロック共重合体組成物が、押出成形などの分子配向が起こり易い成形法を適用した場合であっても、特に等方性の高い成形体を与えるものとなる。
【0110】
本態様のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体P〜Rのみを重合体成分として含むものであって良いが、ブロック共重合体P〜R以外の重合体成分を含むものであっても良い。本態様のブロック共重合体組成物に含まれ得るブロック共重合体P〜R以外の重合体成分としては、ブロック共重合体P〜R以外の芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、芳香族ビニル単独重合体、共役ジエン単独重合体、芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、およびこれらの分岐型重合体、あるいは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。本態様のブロック共重合体組成物において、ブロック共重合体P〜R以外の重合体成分の含有量は、重合体成分全体に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0111】
本態様のブロック共重合体組成物では、含まれる重合体成分全体の全繰返し単位において、芳香族ビニル単量体単位が占める割合は、上記「1.第1態様」の項に記載したブロック共重合体組成物と同様とすることができる。この全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体P、ブロック共重合体Q、ブロック共重合体Rおよびこれら以外の重合体成分、それぞれの芳香族ビニル単量体単位の含有量を勘案し、それらの配合量を調節することにより、容易に調節することが可能である。
【0112】
本態様のブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量および分子量分布は、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0113】
また、本態様のブロック共重合体組成物のメルトインデックスは、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0114】
本態様のブロック共重合体組成物は、重合体成分以外の成分を含んでいてもよく、このような重合体成分以外の成分としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0115】
本態様のブロック共重合体組成物を得る方法は特に限定されない。例えば、従来のブロック共重合体の製法に従って、ブロック共重合体P、ブロック共重合体Q、およびブロック共重合体Rをそれぞれ別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分や各種添加剤を配合した上で、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。ただし、特に望ましい構成を有する本態様のブロック共重合体組成物をより生産性よく得る観点からは、次に述べる本態様のブロック共重合体組成物の製造方法が好適である。
【0116】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法は、下記の(6)〜(10)の工程からなる。
【0117】
(6):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程
(7):上記(6)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程
(8):上記(7)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基の総量が1モル当量未満となる量で、2官能のカップリング剤、および3官能以上のカップリング剤を添加し、ブロック共重合体Q、およびブロック共重合体Rを形成する工程
(9):上記(8)の工程で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Pを形成する工程
(10):上記(9)の工程で得られる溶液から、ブロック共重合体組成物を回収する工程
【0118】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する。用いられる重合開始剤、その使用量、重合に用いる溶媒およびその量としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0119】
ブロック共重合体組成物を得る際に、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。このルイス塩基化合物およびその添加する時期としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0120】
重合反応温度は、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0121】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合することにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。この活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Pの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1
p)、ブロック共重合体Qの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
q)およびブロック共重合体Rの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar
r)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量に応じて決定される。
【0122】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、この活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液が得られる。この際用いる共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Qの共役ジエン重合体ブロック(D
q)やブロック共重合体Rの共役ジエン重合体ブロック(D
r)の重量平均分子量を有するように決定される。
【0123】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、この活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、2官能のカップリング剤および3官能以上のカップリング剤を添加する。この際のこれらのカップリング剤の添加量は、溶液に含有される活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の活性末端に対して、カップリング剤の官能基(重合体の活性末端と反応しうる官能基)の総量が1モル当量未満となる量とする。
【0124】
この工程で添加される2官能のカップリング剤は、重合体の活性末端と反応しうる官能基を1分子中に2個有するものであれば特に限定されず、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2―クロロプロペンなどを用いることができる。これらのなかでも、2官能性ハロゲン化シランまたは2官能性アルコキシシランが特に好ましく用いられる。これらの2官能のカップリング剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0125】
また、この工程で添加される3官能以上のカップリング剤の種類も特に限定されず、重合体の活性末端と反応しうる官能基を1分子中に3個以上有するものであれば、特に限定されず、任意の3官能以上のカップリング剤を用いることができる。3官能のカップリング剤としては、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0126】
この2官能のカップリング剤および3官能以上のカップリング剤を添加する工程において、これらのカップリング剤を添加する順序は特に限定されず、どちらか一方を添加した後、他方を添加しても良いし、両方を同時に添加しても良い。
【0127】
添加される2官能のカップリング剤および3官能以上のカップリング剤の総量は、目的とするブロック共重合体組成物におけるブロック共重合体Pの量と、ブロック共重合体Qおよびブロック共重合体Rの合計量との重量比(P/(Q+R))に応じて決定すればよく、溶液に含有される活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の活性末端に対して、カップリング剤の官能基の総量が1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、重合体の活性末端に対してカップリング剤の官能基の総量が0.15〜0.90モル当量となる範囲であり、0.20〜0.70モル当量となる範囲であることが好ましい。また、添加される2官能のカップリング剤と3官能以上のカップリング剤との量比は、目的とするブロック共重合体組成物における、ブロック共重合体Qの量とブロック共重合体Rの量との重量比(Q/R)に応じて決定すればよく、例えば、(2官能のカップリング剤の官能基/3官能以上のカップリング剤の官能基)のモル比で、0.17〜5.7となる範囲であることが好ましく、0.25〜4.0となる範囲であることがより好ましい。
【0128】
以上のように、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含有する溶液に、その活性末端に対してカップリング剤の官能基の総量が1モル当量未満となる量で、2官能のカップリング剤および3官能以上のカップリング剤を添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)のうちの一部は、共役ジエン重合体ブロック同士がそれぞれのカップリング剤の残基を介して結合され、その結果、ブロック共重合体Qおよびブロック共重合体Rが形成される。そして、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の残り一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
【0129】
次の工程では、以上のようにして得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加する。溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、カップリング剤と反応せずに残った活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体組成物を構成する、ブロック共重合体Pの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
p)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2
p)の目的とする重量平均分子量に応じて決定される。この芳香族ビニル単量体を添加する工程により、ブロック共重合体Pを構成することとなる、非対称な芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルブロック共重合体が形成され、その結果、ブロック共重合体P〜Rを含有する溶液が得られる。なお、この芳香族ビニル単量体を添加する工程の前に、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)を含む溶液に、共役ジエン単量体を添加しても良い。このように共役ジエン単量体を添加すると、添加しない場合に比べて、ブロック共重合体Pの共役ジエン重合体ブロック(D
p)の重量平均分子量を大きくすることができる。また、カップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む溶液に、活性末端の当量より少ない量で重合停止剤(水、メタノール、フェノールなど)を添加してもよい。このように重合停止剤を添加すると、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)の活性末端が失活し、それにより得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(ジブロック体)が、ブロック共重合体組成物に含有されることとなる。
【0130】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法では、以上のようにして得られるブロック共重合体P〜Rを含有する溶液から、目的とするブロック共重合体組成物を回収する。回収の方法は、常法に従えばよく、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0131】
本態様のブロック共重合体組成物の製造方法によれば、ブロック共重合体P〜Rを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれのブロック共重合体を個別に製造し混合する場合に比して、極めて優れた生産性で目的のブロック共重合体組成物を得ることができる。しかも、得られるブロック共重合体組成物は、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの重量平均分子量が、本態様のブロック共重合体組成物として、特に望ましいバランスを有するので、高い弾性率と小さい永久伸びとが高度にバランスされた組成物となる。
【0132】
本態様のブロック共重合体組成物の用途は特に限定されず、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0133】
本態様のブロック共重合体組成物をフィルムに成形する方法は、特に限定されず、従来公知のフィルム成形法を適用でき、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0134】
本態様のブロック共重合体組成物から得るフィルムの厚さは、用途に応じて調整されるが、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0135】
本態様のブロック共重合体組成物から得られるフィルムは、他の部材と積層して使用することもできる。例えば、上記「1.第1態様」の項に記載したものと同様とすることができる。
【実施例】
【0136】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0137】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0138】
〔ブロック共重合体およびブロック共重合体組成物の重量平均分子量〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。装置は、東ソー社製HLC8220、カラムは昭和電工社製Shodex KF−404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0139】
〔各ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
【0140】
〔スチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ−25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
【0141】
〔イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいてイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
【0142】
〔ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
【0143】
〔ブロック共重合体組成物のスチレン単位含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0144】
〔イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0145】
〔フィルムの引張弾性率〕
2枚のフィルムを用いて、一方を成形時の溶融流れ方向に沿って測定し、他方を成形時の溶融流れ垂直方向に沿って測定した。測定手順は以下の通りである。ORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC−1210を用いて、引張速度300mm/minで100%まで伸張させ、その過程における50%伸張時の引張応力を測定し、50%伸張時におけるフィルムの引張弾性率を求め、1回目伸張時の引張弾性率として記録した。溶融流れ垂直方向の測定については、さらに、次の測定を行なった。1回目の測定で100%伸張させたフィルムを、伸張がない状態まで戻した後、再度、引張速度300mm/minで100%まで伸張させ、その過程における50%伸張時の引張応力を測定し、50%伸張時におけるフィルムの引張弾性率を求め、2回目伸張時の引張弾性率として記録した。なお、引張弾性率が高いものほど高い弾性率を有すると言え、(溶融流れ方向の引張弾性率/溶融流れ垂直方向の引張弾性率)の比が1に近いものほど引張弾性率の異方性が小さいと言え、(1回目の測定の引張弾性率/2回目の測定の引張弾性率)の比が1に近いものほど伸縮による弾性率の変化が小さいと言える。
【0146】
〔フィルムの永久伸び〕
ASTM 412に準拠して上記のテンシロン万能試験機を用いて測定した。具体的には、サンプル形状はDieAを使用し、伸張前の標線間距離を40mmとしてフィルムを伸び率200%で伸張させ、そのままの状態で10分間保持した後、はね返させることなく急に収縮させて、10分間放置後、標線間距離を測定し、下式に基づいて永久伸びを求めた。
永久伸び(%)=(L1−L0)/L0×100
L0:伸張前の標線間距離(mm)
L1:収縮させて10分間放置後の標線間距離(mm)
なお、この測定では、2枚のフィルムを用いて、一方を成形時の溶融流れ方向に沿って測定し、他方を成形時の溶融流れ垂直方向に沿って測定し、それぞれの値を記録した。
【0147】
〔フィルム成形性〕
ブロック共重合体組成物の成形性(成形安定性)の指標として、フィルムの伸張粘度を測定した。測定手順は以下の通りである。測定装置としてTAインスツルメント社製のARESレオメーター、測定治具にARES−EVF伸張粘度測定冶具を用い、測定条件として伸張速度10秒−1、測定時間1.5秒、測定温度200℃で行った。サンプルとしてブロック共重合体を、150℃、2分間、熱プレスすることにより作成した厚さ1mmのフィルムを幅10mm、長さ20mm形状に切断したものを用いた。この条件により、フィルムの100%伸張時および350%伸張時の伸張粘度を測定した。100%伸張時の伸張粘度が高すぎると、成形性に劣るといえ、また、350%伸張時の伸張粘度が、100%伸張粘度に比べ低下した場合(350%時伸張粘度/100%時伸張粘度の値が1未満の場合)は、成形安定性に劣るといえる。
【0148】
〔実施例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)5.10ミリモルおよびスチレン1.60kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム169.9ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてテトラクロロシラン29.7ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Bとなる分岐状のスチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン3.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Aとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール339.8ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、各ブロック共重合体およびブロック共重合体組成物の重量平均分子量、各スチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のスチレン単位含有量、ブロック共重合体組成物のスチレン単位含有量ならびにイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量を求めた。これらの値は、表2に示した。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
以上のようにして得られた反応液100部に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、実施例1のブロック共重合体組成物を回収した。得られた組成物は、押出機の先端部に水中ホットカット装置を備えた単軸押出機に供給し、平均直径5mmで平均長さが5mm程度の円筒状のペレットとした。
【0152】
次いで、実施例1のブロック共重合体組成物のペレットを、T−ダイを装着した二軸押出機を用いて、200℃で加熱溶融し、20分間連続して押し出すことにより、厚さ0.2mmのフィルムに成形した。この実施例1のフィルムについて、引張弾性率と永久伸びを測定した。この結果は、表2に示す。なお、フィルムの成形条件の詳細は、以下の通りである。
【0153】
組成物処理速度 :15kg/hr
フィルム引き取り速度 :10m/min
押出機温度 :投入口140℃、T−ダイ160℃に調整
スクリュー :フルフライト
押出機L/D :42
T−ダイ :幅300mm、リップ1mm
【0154】
〔実施例2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA5.56ミリモルおよびスチレン1.55kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム185.0ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてテトラクロロシラン35.2ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Bとなる分岐状のスチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。次いで、反応器にメタノール9.25ミリモルを添加することにより、一部のスチレン−イソプレンブロック共重合体の活性末端を失活させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン3.25kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Aとなるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール370.0ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以下の操作は、実施例1と同様にして、実施例2のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、実施例2のフィルムを得て、このフィルムについて測定を行なった。その結果を表2に示す。
【0155】
〔実施例3〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、テトラクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、実施例3のフィルムを得た。実施例3のブロック共重合体組成物およびフィルムについては、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0156】
〔比較例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA5.00ミリモルおよびスチレン1.90kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム166.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン50.0ミリモルおよびテトラクロロシラン12.5ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および分岐状のスチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。この後、活性末端を有するスチレン−イソプレンブロック共重合体が残留していると考えられる反応液に、メタノール333.4ミリモルを添加してよく混合し、活性末端を失活させた。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以下の操作は、実施例1と同様にして、比較例1のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例1のフィルムを得て、このフィルムについて測定を行なった。その結果は表2に示す。
【0157】
〔比較例2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA7.90ミリモルおよびスチレン3.00kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム263.2ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン7.00kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてテトラクロロシラン62.4ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、分岐状のスチレン−イソプレンブロック共重合体を形成させた。この後、活性末端を有するスチレン−イソプレンブロック共重合体が残留していると考えられる反応液に、メタノール526.4ミリモルを添加してよく混合し、活性末端を失活させた。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以下の操作は、実施例1と同様にして、比較例2のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例2のフィルムを得て、このフィルムについて測定を行なった。その結果は表2に示す。
【0158】
〔比較例3〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン40.0kg、TMEDA0.95ミリモルおよびスチレン4.30kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム63.6ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。さらに引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にスチレン0.50kgを10分間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール127.2ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以下の操作は、実施例1と同様にして、比較例3のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例3のフィルムを得て、このフィルムについて測定を行なった。その結果は表2に示す。
【0159】
〔比較例4〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、テトラクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例4のフィルムを得た。比較例4のブロック共重合体組成物およびフィルムについては、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0160】
表2から、以下のようなことが分かる。すなわち、本発明のブロック共重合体組成物から得られるフィルムは、高い弾性率と小さい永久伸びとを兼ね備えるものであり、しかも、引張弾性率の異方性が小さく、伸縮による弾性率の変化が小さいものである(実施例1〜3)。これに対して、本発明のブロック共重合体組成物の構成と異なる組成物では、高い弾性率を有させるために全体のスチレン(芳香族ビニル)単位含有量を高くすると、永久伸びが大きいものとなり、伸縮による弾性率の変化も大きいものとなる(比較例3、4)。永久伸びを小さくするために全体のスチレン(芳香族ビニル)単位含有量を低くすると、弾性率が低くなり(比較例1、2)、また、弾性率の異方性が発現する結果、引っ張る方向によっては、永久伸びが大きくなるものがあった(比較例2)。したがって、本発明のブロック共重合体組成物の構成と異なる組成物は、高い弾性率と小さい永久伸びとを両立することができないものであった。
【0161】
〔実施例4〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)4.80ミリモルおよびスチレン1.55kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム160.8ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.20kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、テトラクロロシラン7.2ミリモルを添加し、30分間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Rとなる分岐状のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、ジメチルジクロロシラン50.6ミリモルを添加して、さらに1時間カップリング反応を行い、ブロック共重合体Qとなる直鎖状のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン3.25kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、ブロック共重合体Pとなる直鎖状で非対称なスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール321.6ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表3にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、各ブロック共重合体およびブロック共重合体組成物の重量平均分子量、各ブロック共重合体の重量比、各スチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のスチレン単位含有量、ブロック共重合体組成物のスチレン単位含有量ならびにイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量を求めた。これらの値は、表4に示した。
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
以上のようにして得られた反応液100部に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、実施例4のブロック共重合体組成物を回収した。得られた組成物は、押出機の先端部に水中ホットカット装置を備えた単軸押出機に供給し、平均直径5mmで平均長さが5mm程度の円筒状のペレットとした。
【0165】
次いで、実施例4のブロック共重合体組成物のペレットを、T−ダイを装着した二軸押出機を用いて、200℃で加熱溶融し、20分間連続して押し出すことにより、厚さ0.2mmのフィルムに成形した。この実施例4のフィルムについて、引張弾性率と永久伸びを測定し、また、実施例4のブロック共重合体組成物について、フィルム成形性の評価を行なった。この結果は、表5に示す。なお、フィルムの成形条件の詳細は、上記の通りである。
【0166】
【表5】
【0167】
〔実施例5〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、ジメチルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、およびメタノールの量を、それぞれ表3に示すように変更したこと以外は実施例4と同様にして、実施例5のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、実施例5のフィルムを得た。実施例5のブロック共重合体組成物およびフィルムについては、実施例4と同様の測定を行った。その結果を表4および表5に示す。
【0168】
〔比較例5〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA1.9ミリモルおよびスチレン1.50kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム128.8ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン7.00kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.50kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール257.6ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、実施例4と同様の測定を行なった。これらの値は、表4に示した。以下の操作は、実施例4と同様にして、比較例5のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例5のフィルムを得て、このフィルムについて測定を行なった。その結果を表5に示す。
【0169】
〔比較例6および比較例7〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレンおよびメタノールの量を、それぞれ表3に示すように変更したこと以外は比較例5と同様にして、比較例6および比較例7のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例6および比較例7のフィルムを得た。比較例6および比較例7のブロック共重合体組成物およびフィルムについては、実施例4と同様の測定を行った。その結果を表4および表5に示す。
【0170】
〔比較例8〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA4.50ミリモルおよびスチレン3.14kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム80.0ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合し、ついでn−ブチルリチウム220.0ミリモルを添加し、続いてスチレン1.99kgを30分にわたり連続添加し、重合を1時間継続した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン2.88kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。さらに次いで、スチレン1.99kgを30分間連続添加し、スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、2種の直鎖状のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール600.0ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。得られた反応液の一部を取り出し、実施例4と同様の測定を行なった。これらの値は、表4に示した。以下の操作は、実施例4と同様にして、比較例8のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例8のフィルムを得て、このフィルムについて測定を行なった。その結果を表5に示す。
【0171】
〔比較例9および比較例10〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレンおよびメタノールの量を、それぞれ表3に示すように変更したこと以外は比較例8と同様にして、比較例9および比較例10のブロック共重合体組成物を回収し、ペレットとして、比較例9および比較例10のフィルムを得た。比較例9および比較例10のブロック共重合体組成物およびフィルムについては、実施例4と同様の測定を行った。その結果を表4および表5に示す。
【0172】
表4および表5から、以下のようなことが分かる。すなわち、本発明のブロック共重合体組成物を用いてなるフィルムは、高い弾性率と小さい永久伸びとを兼ね備えるものであり、しかも、引張弾性率の異方性が小さく、フィルムの成形性および成形安定性にも優れるものである(実施例4,5)。これに対して、本発明のブロック共重合体組成物以外の組成物を用いた場合では、高い弾性率を有させるために全体のスチレン(芳香族ビニル)単位含有量を高くすると、永久伸びが大きいものとなる(比較例6〜9)。永久伸びを小さくするために全体のスチレン(芳香族ビニル)単位含有量を低くすると、弾性率が低くなる(比較例5および比較例10)。また、弾性率の異方性が発現し、フィルムの成形性および成形安定性にも劣るものであった(比較例5〜10)。